CHAPTER 7夜に備える日中ハック起きているときは何かと、無意識のうちに気が張っているものです。いろんなことに警戒心を高めて、ストレスや不安を感じながら日中を過ごしていると、寝床にもぐり込んですぐに眠れるくらいにあらゆる神経系統を落ち着かせるのは、なかなか難しいでしょう。この章では、ストレスを減らすためにできることや、スローダウンして心を落ち着ける方法など、日中に取り組める健康的な習慣の数々を紹介します。寝る時間になったら自然にスイッチオフできるように、ぜひ活用してみてください。日中を快適に過ごせて、夜はぐっすり眠れるなら、一石二鳥ですね!
153 朝は光のシャワーを浴びよう
おはようございます! 快眠の準備は、目覚めた瞬間から始まります。 起きたらカーテンをシャーッと開けて、すぐに日光を浴びましょう。朝の光はメラトニンを抑制し、覚醒ホルモンであるコルチゾールを分泌させます。起きてすぐに日光を 10分間浴びると、身体は睡眠へのカウントダウンを始めるのです。体内時計が設定されて、 24時間周期の概日リズム(自然な睡眠・覚醒サイクル)が維持できます。 具体的には、午前 7時頃に目覚めて日光を浴びると、約 16時間後の午後 11時頃に自然に眠たくなります。カーテンを閉め切って正午まで暗闇のなかにいると、眠くなる時間が午前 4時までずれ込んでしまい、落ち着かない夜を過ごすことになります。
154 眠りたいならサングラスはかけない
朝の光には、身体の概日リズムを調整するのに役立つ高輝度*のブルーライトが含まれています。 起きてすぐに太陽光を浴びると、体内時計がリセットされ、眠気をもたらすメラトニンの分泌が抑制されます。そして、不思議なことに、その 15 ~ 16時間後にはメラトニンの分泌量が増え始めて、眠くなるのです。 このように、朝浴びた太陽光の力は、その日の夜の睡眠にも影響しています。 太陽光に含まれるブルーライトには、非常に強いエネルギーがあります。この力を最大限に活用するためにも、起床後に朝日を浴びるのはもちろんのこと、外に出て最初の 10分間はサングラスをかけないようにしてください。日をさえぎるものがないほうが、光が目の光受容細胞に到達しやすくなります。光受容細胞には、体内時計を制御する脳に信号を送信するタンパク質が含まれています。 紫外線対策ですぐにサングラスをかける人も多いですが、夜にしっかり眠くなりたい人は、朝家を出たら少しの間は、何にもかけずにいましょう。*高輝度:光の輝きが非常に強いこと。
155 脳に休憩を与えよう
指先だけでいつでも簡単に操作できるスマホ、インターネットや携帯電話、 24時間オンエアしているテレビのおかげで、私たちはかつてないほどの大量の情報に日々さらされるようになりました。 問題は、増えた情報量に対して、脳が一度に何時間も集中できる構造にはなっていないことです。脳が完全に集中できるのは約 90分間です。 脳を休ませ、更新させ、そして回復させるためにも、短い「オフライン」の時間を設ける必要があります。日中にときどき、脳に短い休憩時間を与えるのが理想的と言えます。 約 90分ごとに、集中している作業の手を止めてみてはどうでしょうか? お茶を淹れたり、肩を回してみたり、短い散歩をしてみたり。 あるいは、座ったまま数分間(可能であればそれ以上)、空想にふけってみるのもいいですね。 脳にもダウンタイムが必要です。このような休息を脳に与えることで、最近の出来事や受け取ったすべての情報を処理する時間を確保できます。 脳にじゅうぶんな休憩がないと、ベッドに入る頃には頭がへとへとに疲れている上に、処理する情報が多すぎて、すんなり眠ることが難しくなるでしょう。
156 ティータイムを、脳のダウンタイムに
に休憩時間を与えるのを忘れないための、いい方法があります。 お茶やコーヒーを淹れるたびに、脳のスイッチを切るのです。 日本の茶道は、「今この瞬間」に静けさと幸福を見出すという点において、瞑想の一種と言えます。同様の儀式を、自分のお茶のカップで行うことができます。 仕事をしながらあわてて飲むのではなく、一連のプロセスすべてに意識を集中してください。携帯電話やタブレットは、手の届かない所へ置きましょう。 水が沸騰する音、立ち上る湯気、茶葉やコーヒーが蒸される香りに、完全に焦点を合わせてください。出来上がったお茶を置いて座ったら、ゆっくりと味わいながら飲みましょう。 甘い? ほろ苦い? 花の香り? フルーティ? 手に持った温かいカップの感触は? シンプルな日常の行いに没頭することが一種の瞑想になり、疲れを癒して心を鎮め、リラックスに役立ちます。日中にスローダウンすることを自分に気づかせるのはもちろんのこと、夜になってから眠る準備をするときにも、このお茶の瞑想は効果的です。
157 そして、ていねいに食べる
「今、ここ」に集中する心の状態を「マインドフルネス」と言います。マインドフルネスでいられるように脳を訓練することは、眠るときに雑念を追い払うのに役立ちます。 マインドフルネスは、 1日の間にくり返し実践することで、どんどん上達していきます。習熟度がアップすると、眠るときにも自然にできるようになります。 マインドフルネスを練習するのにおすすめなのは、食事の時間です。最初は難しく感じるかもしれません。というのも、何かをしながら片手間に食事をしたり、ランチタイムに急いで食べ物を詰め込んだり、夜にテレビを見ながら食べたりする人が多いからです。 食事のときにマインドフルネスを実践できたら、慣れてくれば、リラックスできるだけではなく、食べ物をもっと味わえるようにもなるでしょう。 携帯電話を見えない所に片づけて、テレビの電源を切り、静かに座ってください。最初のひと口を食べる前に、料理の皿を眺めます。色どりの豊かさに注目し、料理の匂いをかいで、これから食べるものの味を予想します。そして、だ液と味覚が刺激される感覚に浸ります。 食事を始めたら、目を閉じてゆっくりと噛み、さまざまな味や食感をしっかりと味わいます。ぴりっとする、甘い、塩辛い、ナッツの味……などなど。ひと口食べたら箸を置いて、時間をかけて徹底的に噛み、口のなかで混ざり合うさまざまな食材を感じます。 このように集中することで、「今、ここ」にしっかりと意識を向け続けることができます。 さらに嬉しい効果が! 意識してていねいに食べると、満腹感を認識しやすくなるため、食べすぎを防ぐこともできます。
158 日中の水分不足は睡眠にも響く
夜中に目が覚める主な原因のひとつが、軽度の脱水です。喉の渇きに気づいたり、水分を求めて身体が動いたりすることがあります。おそらく、それが目覚めた理由だとは気づかない人も多いことでしょう。 英国の「ナチュラル・ハイドレーション・カウンシル」によると、女性は 1日に約 2リットル、男性は約 2. 5リットルの水分を必要とします。水を飲む以外にも、キュウリ、スイカ、レタス、セロリ、大根、トマト、ピーマンといった野菜や、ヨーグルトやスープなどから水分を摂取することができます。 1日に 2リットルの水を飲むのが辛い人は、ミントやレモンやベリー類を入れて、風味をつけてみましょう。 大きめのウォーターボトルを購入して、 200ミリリットル飲むごとに印をつけて時刻を書き込み、定期的に水分補給できていることを確認するのもおすすめの方法です。
159 座るのは窓際に限る
日中にたっぷりと自然光を浴びると、夜によく眠れるようになります。 『Journal of Clinical Sleep Medicine』誌の記事によると、窓際に座っていたオフィスワーカーは、窓のないオフィスで働いている人に比べて、平日の夜に平均 46分睡眠時間が長いことがわかったそうです。 できるだけ窓側の席を確保しましょう。それが無理なら、昼食を外でとるといった工夫をしてください。 日中に自然な日光をできるだけ多く浴びると、体内時計が光と闇の自然なリズムに調和しやすくなります。さらに、日光を浴びることで、気持ちが上向きになります。日光が足りないと、落ち込みや不安を感じやすくなり、そのことが不眠につながる可能性があります。
160 「心配タイム」をスケジュールに入れよう
寝る前にノートに心配事を書き出すというテクニックがあります。ノートに問題を「預ける」ことで、「心配するのをやめていい」という許可を自分に与えるのです。 その結果、安心して眠れるというわけです。 これをさらに進化させたのが、ノートに解決策を書き加えるという作戦です。心理学の研究から、「建設的に心配する」ことで、さらに眠りが改善できることが証明されています。こうすれば、布団に入ったときに、悩みに対処しなくてよくなるからです。要は、「心配事を早めに寝かしつける」ことで、就寝時に悩まされなくて済むのです。 米国の学術誌『 Behavioral Sleep Medicine』に掲載された研究から、被験者に心配事を書き出してもらったところ、解決策も一緒に書き出したグループのほうが、心配事だけを書いたグループに比べて、「就寝前の認知的覚醒」(心配な考えをくり返す状態)が少ないことがわかりました。 毎晩、就寝時刻に近すぎない時間(午後 6時頃など)に、 15分の「心配タイム」を設けましょう。その間は悩み事に意識を集中するのです。「建設的に心配する」ためには、自分を不安にさせている問題を書き出してから、解決策や、解決に向けて実行できる手順を書き出します。「明日の午前 10時に Aさんに電話する」「火曜日の午後に 1時間の休みをとって、その問題への最善策を検討する」といった具合です。完全に解決できていなくても、対策を講じたことで、状況を手中に収めることができるのです。 この手順だと、問題を見える化して解決に導くという方法に心を慣らすことができます。すると、就寝時に心配事が頭に浮かんで眠りを邪魔されそうになっても、「明日の『心配タイム』に対処すればいい」と自分に言い聞かせることができるようになります。「心配タイム」をベッド以外の場所に設定すれば、「ベッド」と「悩む場所」の関連性を断ち切るのにも役立ちます。長期的に見ると、「心配タイム」を設けることで、心配する頻度が減り、心配事に費やす時間を大幅に減らすことができるのです。
161 こまめに立つ
出勤して、オフィスのデスクに腰を下ろし、パソコンを開く……。統計によると、一部の人は、 1日に平均 7 ~ 10時間も座っているそうです。座っている時間が長いと、肥満や心血管疾患などのさまざまな健康障害に加えて、癌や腰痛、関節痛のリスクが高まることがわかっています。しかも、 1日中じっとしていると身体が疲れないので、眠くなりにくいのです。 だから、できる限り動きましょう。 健康の専門家の間で、 1日に座っていて大丈夫な時間の上限についての結論は出ていませんが、保健省(英国)から委託された報告書は、座っている時間を分割するために、 30分ごとに短時間の活動をすることを推奨しています。 机にタイマーを置いて、 30分ごとに立ち上がりましょう。何か他の作業をしたり、短い散歩をするのもいいでしょう。テレビの CM中はソファから立ち上がる、電話のときは立ったり歩き回ったりするのを習慣にします。一定時間動かないとアラーム音で催促してくれるウェアラブル活動量計を使ってみるのもいいですよ。
162 ビューティースポットを記録する
「マインドフルネス散歩」( HACK 163参照)のときに、絵のように美しい場所に遭遇したら、そのなかでも快適に感じる景色をひとつ選んで、そこにフォーカスしてください。木や花の色、草の匂い、鳥のさえずりなどを、五感のすべてを使って写真に収めるような感覚です。 その風景に、あなたは何を感じますか。 幸福? 感謝? 静けさ? 満足感? ストレスを感じて眠れないときは、このビューティースポットに意識を向けて、そこで感じた落ち着きと幸せを思い出しましょう。悩み事が薄れて、リラックスして眠ることができます。
163 「マインドフルネス散歩」とは?
日中に休憩して散歩をすることで、夜の睡眠も改善します。 片方の足をもう一方の足の前に出すというシンプルな動作が、うつ病、不安、ストレスを軽減することが明らかになっています。 そして、学術誌『 Psychology of Sport and Exercise』に掲載された研究によると、マインドフルネス散歩を行うと、さらに効果が高まります。被験者は、座っているよりも歩いている間のほうがストレスのレベルが低いと報告しましたが、マインドフルネス散歩をした場合、さらに健康効果が増したことがわかったのです。 一瞬一瞬の体験に意識を向けることで、心が落ち着く効果が得られます。散歩のときに、次のような流れを意識してみてください。マインドフルネス散歩のコツ ❶一歩踏み出すときに、「歩く」という行為にフォーカスする。動作のプロセスに注意を向ける。地面に着く足や、足首、ふくらはぎ、膝の動きにも意識を向ける。 ❷次に、意識を周囲へと広げる。木の葉のざわめき、車道の音、顔にあたる風、地面の香りなど。一度にひとつの感覚を使って、見たり、聞いたり、匂いをかいだりすることに集中する。あらゆるものを、まるで初めて目にしたかのように見つめる。 このように歩くことは、一種のマインドフルネス瞑想です。心を鎮めるのに役立ち、「リラックス反応」を促します。 『JAMA Internal Medicine』誌に掲載された研究によると、 1日 20分のマインドフルネス瞑想は、眠りに問題のある成人の睡眠を改善したそうです。 1日のなかで、瞑想を取り入れた休憩を定期的にとれば、頭がすっきりして、ストレスが軽減します。 睡眠を邪魔する思考を追い払って、落ち着いた夜を迎えられますように。
164 日中もストレスを手放す呼吸をする
1日の間に定期的に休憩をとり、目を閉じて、身体のどこにストレスがたまっているかをチェックしましょう。肩? 首? お腹? あご? 額? 特定できたら、次の呼吸法を行ってください。ストレスを手放す呼吸法 ❶深くゆっくりと呼吸する。無理に息を吸わずに、心地良い呼吸を続ける。息を吸うとき、緊張している部分に吸い込んだ空気を送り込むのをイメージする。息を吐きながら、からんだ紐の結び目がほどけるように、緊張がゆるむことをイメージする。 ❷①の呼吸を、 6回くり返す。 ❸緊張がまだ残っていたら、その部分をそっと動かす。たとえば、肩や首を回したり、口を開け閉めしてあごをそっとゆるめたりなど。 ❹①~③をもう一度くり返す。 日中に緊張した部分は、ときどきこうしてゆるめましょう。眠る頃に身体がきつく巻かれたバネのようになるのを、防ぐことができます。短い昼寝をすると元気が回復し、集中力と注意力がアップします。
165 昼寝は午後 2時から 20分程度がベスト
以前は多くの専門家が、夜の睡眠の妨げになる可能性があるため、日中の仮眠は避けるようにアドバイスしていました。しかし現在では一部の専門家が、前日の夜にうまく睡眠がとれなかった場合は、昼寝をすることで、その日の夜の睡眠に影響を与えることなく、不足分を補えると考えています。 ただし、タイミングが非常に重要です。身体の深部体温は、午後 1 ~ 3時の間にわずかに下がります。これは、睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌するための脳への合図です。概日リズムの自然な落ち込みに合わせるとすれば、理想的な昼寝時間は午後 2時頃になります。 そして、タイミングに加えて、もうひとつ大事なことがあります。昼寝は短時間で切り上げましょう。理想的には 10 ~ 20分、長くても 30分を超えないように。これより長いと、目覚めるのが難しい深い睡眠のステージに入ってしまい、不機嫌になったり、眠る前よりも疲れを感じてしまうことがあります。「睡眠酩酊」という二日酔いのような状態になり、それが最長 30分続くこともあります。また、長すぎる昼寝は、夜の睡眠を妨げてしまうかもしれません。 昼寝には、嬉しい効果もあります。「眠るのは難しくない」と、脳に教え込むのに役立つのです。日中の昼寝には大きなプレッシャーがかからないので、リラックスしてすんなり眠れる可能性が高いのです。
166 夕方の電車やバスでは居眠り厳禁
帰宅途中にしのび寄る「昼寝の罠( =睡魔)」に気をつけてください。知らず知らずのうちにうとうとすると、夜の睡眠に悪影響を及ぼすかもしれません。仕事帰りの電車やバスのなか、揺れやエンジン音などのホワイトノイズ( HACK 079参照)は眠気を誘いますが、ぜひとも居眠りは我慢しましょう。 夕方に居眠りをすると、「ホメオスタシス(恒常性維持機構)からくる睡眠圧」が低下する可能性があります。これは、 1日の間に蓄積される、身体の睡眠への要求のことです。夕方は、小腹を満たすためにおやつを食べるような感覚で眠りをとるには遅すぎる時間帯だと考えてください。夕方の「眠りのおやつ」によって、その日の夜の「睡眠欲」が損なわれてしまうのです。 夕方の帰宅途中で居眠りをしてしまいそうなら、眠れないように立ったままでいるか、可能なら誰かとおしゃべりしながら帰りましょう。帰り道の一部(またはすべて)を徒歩にすれば、軽い運動と同時に仕事のストレスも解消でき、一石二鳥です。もちろん、快眠にも効果絶大です。
167 身体と脳に軽めのエクササイズを
眠りに問題のある高齢者を対象にした米国の研究から、身体と脳の両方に軽いエクササイズを行うほうが、身体と脳に厳しいトレーニングを行うよりも効果があることがわかりました。 被験者のグループは、週に 3回、各 1時間、エアロビクス体操または穏やかなストレッチのいずれかを行い、芸術・歴史・科学に関する講義の DVD視聴または認知的な要求の厳しい脳トレーニングのいずれかを行いました。 すると、睡眠の改善効果が最も高いと報告したのは、ストレッチ運動と教育用の DVD視聴を行ったグループでした。 知的好奇心を高める自然番組を見ながら、ストレッチをしてみませんか? 学びが深まるだけでなく、夜の寝つきも良くなるかもしれません。
168 セロトニン値を上げる
神経伝達物質のセロトニンは、脳内でメラトニンに変換されます。メラトニンは眠気をもたらす睡眠ホルモンです。そのため、体内のセロトニンが不十分であることが睡眠障害につながるのです。 日常生活で以下のことに気をつけると、セロトニンの分泌を自然に高めることができます。セロトニンの分泌をよくする生活習慣のコツ ❶できるだけ外に出て日の光を多く浴びる。 ❷楽しく運動をする。 ❸チーズ、牛乳、卵、大豆製品など、セロトニンの生成に役立つトリプトファンが豊富な食品をとる。
169 鳥は見るだけでもリラックス効果アリ!?
日中にスローダウンするために、誰にでも簡単にできることがあります。それは鳥を眺めることです。 5分休憩して庭に出たり、公園でランチを食べたり、職場の窓際に座ったりして、バードウォッチングを楽しみましょう。 『BioScience』誌に掲載された研究によると、居住地が田舎であっても都市部であっても、木や緑や鳥に囲まれていると、気分が上がり、安らぎを感じることができます。この研究から、人の不安の強さと、その人が見た鳥の数に相関性があることがわかりました。見た鳥の数が多ければ多いほど、ストレスが少なくなるのです。鳥の種類との関連性はなく、人なつっこいコマドリも、どこにでもいるカラスも、すべて心の健康を押し上げてくれたそうです。 自宅の庭やベランダにエサ箱や巣箱、水浴びスペースを設置して、鳥を観察しやすい環境を整えてもいいですね。近所の公園や川沿いの遊歩道を散歩するときに、ちょっと注意深く見てみましょう。きっと、家の周りにもさまざまな野鳥がいることに気がつくはずです。「日本野鳥の会」*がさまざまな情報を発信していますので、そういったサイトにアクセスしてみるのも面白いかもしれません。*日本野鳥の会 https:// www. wbsj. org
170 自分へのプレゼントに呼吸時間を
日中にときどき「呼吸休憩」をとりましょう。ストレスを解消して頭をすっきりさせる安らぎの時間が確保でき、夜眠るときまで重荷を抱えたままということがなくなります。 2分間の「呼吸休憩」の方法 ❶ゆったりした気分で、自分の 1分間の呼吸数(「吸って吐く」を 1回の呼吸とする)を、タイマーを使ってカウントする。 ❷ 1分間の呼吸数がわかったら、 2分間、呼吸に意識を向ける。これをこまめにやってみる(仕事中にストレスを感じたときに、こっそりやっても OK)。 例: 1分間に 7呼吸だったら、 2分間( 14呼吸)に、意識を向ける。 ❸呼吸に意識を向け続けて、目標回数に達するまで呼吸を数える。 ティッシュペーパーにエッセンシャルオイルを数滴たらして吸入すると、呼吸に集中しやすくなります。好みの香りでもいいですし、頭をすっきりさせるユーカリの香りもおすすめです。 パソコン、電話、冷蔵庫など、目につく所に「呼吸休憩」と書いたふせんを貼っておいて、日中ときどき気がついたときにやってみましょう。自分に呼吸の時間をプレゼントしてください。
171 人にやさしくしたほうが眠れるようになる
人に親切にしたり、ボランティア活動をしたりすると、気分が良くなるだけではないプラスの効果が得られます。親切は、与えたほうも幸せを感じ、前向きな気持ちになれるのです。 2013年に学術誌『 Annals of Behavioral Medicine』に発表された研究によると、人生に前向きな見通しを持ち、概して幸せを感じている人は、よく眠れるそうです。 他人に与えたり、自分よりも恵まれない人に関わったりすることで、自分が持っているものに対する感謝が深まります。人生に感謝する気持ちを持つことは、ストレスを減らすだけではなく、くよくよしたり、自分の問題を悲観的に考えたりといった、眠りの質に悪影響を与える思考を回避する力を強めてくれます。 長期的なボランティアに取り組む時間がない人は、「 1日ひとつ、小さな親切」を行いましょう。車で道を譲ったり、電車やバスで席を譲ったり、重い荷物を持っている人に手を貸してあげたり、ドアを押さえてあげたり……できることはたくさんあります。
172 「フリルフスリフ」なライフスタイルを
HACK 154や 159でも触れたように、屋外の自然光は体内時計を調整してくれます。身体には、眠りと目覚めの時間を知る仕組みが備わっていて、夜になると疲れ、朝になると目が覚めるのです。 電灯やテレビや iPadの光にさらされて、おまけに 1日の大部分を屋内で過ごしていると、不自然な光のパターンの影響で体内時計が混乱し、睡眠障害につながる可能性があります。 そこで、天候に関係なく屋外に出て自然に親しむという、ノルウェー人の「アウトドア愛」を見習ってみませんか。このライフスタイルは「フリルフスリフ( friluftsliv)」と呼ばれており、直訳すると「自由な空気の生活」という意味です。 多くの研究から、屋外で過ごすとうつの症状が和らぐことが証明されています。元気よく散歩したり、サイクリングで汗をかくのは素晴らしいですが、フリルフスリフを実践するのに、必ずしも活発に動く必要はありません。 たとえば、画材を持って庭に出て花をスケッチしたり、公園のベンチで本を読んだり、自然散策しながら鳥や空や昆虫の写真を撮ったり……屋外で過ごす時間を増やすだけで、体内時計が自然のリズムに合うようになります。日中に屋外でリラックスする習慣ができると、夜になれば眠くなるという自然な身体のリズムも、整うようになってきます。
173 ビタミン D不足に注意
ビタミン Dは健康な骨を維持するのに不可欠な栄養素です。しかし、英国では 5人に 1人が不足していると推定されています。屋内で過ごす時間が増え、紫外線の悪影響への不安から日光を避ける傾向にある日本人も、ビタミン D不足が指摘されています。 ある研究から、このビタミン D不足が睡眠不足につながることがわかりました。年配の男性を対象とした研究で、ビタミン Dが少ない人は寝つきが悪く、中途覚醒があって安眠できないという結果が得られたのです。学術誌『 Nutritional Neuroscience』に掲載された研究では、睡眠障害のある 20歳から 50歳までの被験者にビタミン Dのサプリメントを与えたところ、プラセボを与えられた被験者よりも、睡眠の改善が見られました。 ビタミン Dは、日光を浴びることによって皮膚で合成されます。肌を焼き続けるのはよくないですが、専門家は、 1日 1回か 2回、一度に 10分間日焼け止めなしで日光を浴びることを推奨しています。ビタミン D生成に最適な 1日の日光照射時間は、住む地域、季節、肌の色によって違うので、国立環境研究所地球環境研究センター*に掲載されている観測局ごとの目安を参考にするのもいいでしょう。 食事からもビタミン Dは摂れます。しいたけ、しめじなどのきのこ類、鮭やイワシなどの魚、イクラやアン肝、卵黄、牛乳など。食事から摂れないときはサプリメントを利用するのもいいでしょう。*国立環境研究所 地球環境研究センター「ビタミン D生成・紅斑紫外線量情報」 https:// db. cger. nies. go. jp/ dataset/ uv_ vitaminD/ ja/ climatology. html
174 新しい体験をする
新しいことを経験して脳を忙しくすると、夜にぐっすり眠れる可能性が高まります。毎日巣ごもり状態で、ほぼ同じ環境で過ごすと、脳のごく一部しか使われません。でも、海辺に出かけたり、普段は行かない公園に立ち寄ったりと、新しい光景や音に触れる機会があると、脳の灰白質を疲れさせることができ、夜にぐっすり眠れるようになるのです。 ラフバラ大学の専門家が実施した研究で、 4日間にわたって被験者の睡眠を監視しました。 3日間は実験室のなかで監視し、残りの 1日は観光ツアーに連れて行って新しく刺激的な環境を体験してもらいました。その結果、さまざまな体験をした日の夜のほうが、被験者は眠気を感じ、寝つきが早くなり、健康効果が高いとされる深い睡眠をとることができました。注目したいのは、疲れの大きな原因が運動によるものではないことです。同じ研究で、別のグループを広くて何もないホールに移動させ、そこでひたすら歩き回ってもらい、観光したグループと全く同じ量のエネルギーを消費してもらったところ、彼らには、睡眠の改善が何ひとつ見られなかったのです。 脳に毎日新しい経験を与えましょう。新しい環境に触れて何かを吸収するのです。大胆な行動に出る必要はありません。家の近所の公園や通りを観光客の気分で散策したり、いつもは通り過ぎる店をのぞいてみたり、入ったことがない美術館にふらっと立ち寄ってみたり。週末には、「行ったことのない場所」に出かけてみてください。
175 役立たない考えを打ち消す
HACK 051「眠れない夜だってある」では、眠りの邪魔をする非現実的な考えを打ち消す方法として、認知行動療法のアプローチを推奨しました。これを自然に行えるくらい上達させるには、夜だけではなく日中にも定期的にやってみて、生活の一部にしてしまいましょう。 日中に、頭のなかが不愉快な考えでいっぱいになり緊張してきたのを感じたら、いったん、その考えを「ストップ」させます。そして、もう一度思考に耳をすませ、それを打ち消してください。練習すればするほど上手になり、就寝時にも実行しやすくなります。 たとえば、こんな流れです。 次から次へと浮かぶ考えのせいで、あなたは不安になります。「あの仕事がまだ終わってないや」「今日はひどい 1日だった」「時間の無駄使いばっかりだったなぁ」「あーもう、ダメ」 「……終わった ー」 その考えが、「本当かどうか?」を自問します。たとえばこんな問いかけで。「もっとよく考えてみよう。それって、ホントにダメなことかな?」「そこまでくよくよするようなこと?」「見方を変えたら、良かったところもあったかも?」「どこかに改善点はない?」「悲観的になりすぎてるんじゃない?」 では、もう一度考えてみましょう。「本当かどうか?」を自問した後だと、次のように考え方が変化するのではないでしょうか?「確かにもっと時間をうまく使えたかもしれないけど、今日は他の仕事を完了できたんだ。かなりの成果を出せたほうじゃないかな?」「明日の昼休み返上でやれば、リカバーできるはず!」「大したことじゃないよ」 重要なのは、自分を不安にさせる考えを特定して、評価してみることです。ストレスを感じたときは、こう自分に問いかけてください。「私は何を考えている?」「今さっき、何を考えた?」「それは否定的で役に立たない考えじゃない?」「それは真実?」「別の見方をすることはできない?」 このテクニックが使えるようになったら、怖いものナシ! 否定感や誇張や間違った認識は、ストレスを強めて、 1日中あなたを緊張させてしまいますが、これを追い払うことができたら、眠る前にたっぷりと心をゆるめることができます。ぜひ練習してください!
176 仕事のストレスは持ち帰らない
就業時間が終わると、さっそうとオフィスを後にして、仕事のことは一切考えない? 素晴らしいです! 数々の研究から、帰宅したときに仕事のストレスから心理的に距離が置ける人は、寝返りを打つことが少なく、夜の睡眠の質が上がることが証明されています。 でも、穏やかに休息をとるためには、日中に遭遇した不快な気持ちも払い落としておく必要があります。『ジャーナル・オブ・オキュペイショナル・ヘルス・サイコロジー』誌に掲載された研究によると、失礼な顧客や同僚の攻撃、上司の厳しい言葉といった日中のイヤな出来事をくよくよ思い出す人は、眠りの質が悪く、夜中に何度も目を覚ましてしまう傾向があります。 もちろん、仕事のストレスを家に持ち込まないようにするのは簡単なことではありません。でも、いくつかの手順を踏めば、リラックスできるのです(やけ酒をすることではありません!)。 大切なのは、心理的なダメージから回復するために、心にダウンタイムを与えることです。次のような「リカバリー体験」が役に立つと言われています。心理的に仕事から離れるためのコツ ❶「仕事」と「仕事以外」の間に、はっきりと線引きをする 職場を離れたら「仕事タイム」は終了、「余暇タイム」の始まりというように。 帰宅したらすぐに服を着替えて、今が自宅での余暇タイムであると脳に「知らせる」ようにする。在宅ワークの人なら、自分なりの「仕事終了」の儀式を決めておき、それを合図に余暇タイムに切り替える。たとえば、パソコンの電源を落とす、お気に入りのハンドクリームを塗る、窓を開けるなど、簡単なことで OK。 帰宅後も夜遅くまでプロジェクトの仕上げをしたり、仕事のメールに返信したりなど、心配や罪悪感から自宅で仕事をするのが当たり前の習慣になっていたら、それもやめる(多くの作業は、「今」やらなくても大丈夫なものと心得る)。 ❷リラックスする 交感神経と副交感神経は連携して機能するため、職場ではストレス反応がオンになり、家に帰るとリラクセーション反応がオンになる。この切り替えをスムーズにするために、仕事後に 30分ほど、落ち着くための作業をするのがおすすめ。バスに乗らずに家まで歩く。ゆったりと泳ぐ。店を見て回る。音楽を聞いたり本を読んだりするなど。できれば自宅でもリラックスタイムをスケジュールに入れると良い。庭をぶらぶらしたり、ベランダでぼーっとするだけでも ◎。 ❸プラス αに挑戦する やりがいのある体験や学習にチャレンジする。スキル磨きに役立つことがおすすめですが、仕事以外の活動に没頭することも大切。スポーツをしたり、夜間講座を受講したり、新しいレシピを考えたり、ボランティアをしたり。クロスワードのようなパズルに取り組むのも良い。
177 「やらないこと」を増やす
ストレスと睡眠には相関性があります。ストレスが強いと眠りにくくなり、睡眠不足だとストレスが増幅しやすくなります。だから、ぐっすりと眠りたいなら、やはり日常生活のストレスを軽減することがとても大切なのです。 現代社会において、多くの人が不安を感じる大きな要因は、仕事と責任の負荷がかかりすぎることです。ほとんどの人は、とにかく「やりすぎ」なのです。高く積み上げられた皿をずーっと回し続けているようなものです。 日中心に重くのしかかっている締め切りや任務といったやるべきことの数々は、夜になっても心のどこかに残っていることでしょう。「あれもやらなくちゃ」「これもしなくちゃ」と思えば思うほど、寝る前になっても緊張感が続いてしまいます。 今こそ行動を起こして「やること」と「やらないこと」の線引きをしましょう。 1週間を振り返ってみて、イヤだったことや、「これをしなければ時間があいたのに」と思うことを探してみてください。 削減できる部分はありますか? 単純化する方法はないでしょうか? 職場、学校、所属する団体や友人からの要求に「今日は対応できません」と言うことで、時間の浪費を防げませんか? 普段は「やります」と答えているかもしれません。でも、受け取ったすべての招待状に「出席します」と返事をする必要はないのです。ただでさえ時間がないときに、余分な仕事をする必要はありません。「やることリスト」を書く代わりに「やらないことリスト」を書いて、自分の重荷を減らしてください。 できる限り、「義務感や罪悪感から行うこと」よりも、「自分の幸せのために行うこと」を選択して、そこに意識を集中しましょう。 時間と心をダウンタイムのために使うと、ストレスが和らぎ、うまくいけば快眠にもつながります。じゅうぶんに休息できれば、人生がもたらす新しいストレスにもうまく立ち向かえるはずです。
178 ……でも、友人との時間は増やそう!
電話をかけて友人と会う約束をしましょう。 多くの研究から、温かい交流の場があると、長寿をはじめとするプラスの健康効果があることがわかっています。社会的つながりが幸福に与える影響を調べた研究のレビューによると、良好な友人関係を持つことで、喫煙をやめることと同じくらい、さらには運動して減量する以上に健康を高めることができます。 さらにグッドニュースがあります。人との交流は、身体を健康にするだけでなく、笑顔を増やすし、快眠にもつながるのです。 ある研究から、パソコンやスマホを使ってメッセージを送り合う代わりに、友人と通常よりも直接会う時間を増やした若者は、寝つきが良くなったことがわかりました。 シカゴ大学による別の研究では、孤独を感じる人は睡眠に問題があるというだけではなく、逆に睡眠の問題を抱えているという事実が孤独感を強めているという結果が得られました。 予定表がちょっと寂しい人は、友人と定期的に会う約束を入れてみましょう。あるいは、同じ趣味の人と交流できるクラブやサークルに参加してみるのもいいですね。
179 編み物や塗り絵のスローダウン効果
編み物はおばあちゃんがするもの、塗り絵は子どもがするもの、と決めつけていませんか? ゆったりした趣味をすると自然に心も身体もスローダウンして、心理学者が「フロー」と呼ぶ精神状態に入ることができます。フローに入ると、楽に完全に集中できて、気分が楽しくなり、ストレスとは無縁のポジティブな精神状態になれます。 『British Journal of Occupational Therapy』誌に掲載された研究結果は、編み物が実際に幸福度を高めることを示しています。調査の参加者は、編み物を行う頻度が多いほど幸福度が高まり、心が穏やかになったと報告しました。編み物のくり返しの作業が、心身を瞑想に近い状態へと誘うと考えられています。 塗り絵にも同様の効果があります。集中力が高まり、マインドフルネス瞑想( HACK 054、 163参照)を行っているときと似たような精神状態になります。楽しい作業に完全に没頭するからです。特に、複雑な幾何学的デザインの塗り絵をすると、不安やうつの症状が軽減することがわかっています。眠りに効果のある塗り絵ブックもいろいろと販売されています。 他にも、せわしない心を落ち着かせるのにジグソーパズルやガーデニングが役立ちます。カメラ持参で、花や鳥の写真を撮影する散歩もいいでしょう。庭や景観を自由にデザインできる箱庭づくりもおすすめです。 こういった趣味は心がスローダウンし、寝るときに興奮した状態にならなくて済みますよ。
180 先延ばしの癖を直す
確定申告は済みましたか? 次の通院の予約は? クレジットカードの請求書の支払いは? アカデミック・カレッジ・オブ・テルアビブとミシガン大学の研究によると、常に用事を先延ばしにする人は、「やることリスト」を常に片づけられる人に比べて、睡眠の問題に苦しむ可能性が最大 3倍高くなります。そして、被験者が先延ばしにすればするほど、睡眠の問題が悪化したそうです。 用事を先延ばしにする人は、寝る前に自分ができていないことをくよくよと考え、脳を緊張状態にさせてしまいます。その結果、眠れなくなると考えられています。疲れがとれず、翌日も作業を終えられず、ふたたび眠れない夜を迎える……という悪循環です。 面倒な作業をすべて片づけると、心の安らぎと穏やかな睡眠が得られます。先延ばしにする癖のある人は、次のヒントを参考に、「すぐやる力」を引き出してみましょう。先延ばしの癖を直すコツ ❶「やることリスト」に用事をすべて書き出す それぞれの用事を行う理由に焦点をあて(例:「確定申告書を出さないと延滞金が課せられるから」)、やり終えた後の爽快な気分を想像する。 ❷大きな用事は扱いやすいように小さく分割 一度に全部やろうとするとプレッシャーになるので、たとえば、確定申告書の「最初の 2ページだけ」を記入するというように。いったん手をつけ始めると(これが一番難しいのですが!)、勢いがついて、最後まで終わらせようという意欲が湧くもの。 ❸タイマーを 5分に設定 リストのなかに 5分で完了できそうな用事があれば、そのうちのひとつを選んでとりかかる。終わったら「やることリスト」に完了マークをつける。これが、次の用事にとりかかるためのタイマーを設定する動機づけになる。 ❹自分にごほうびを与える 手ごわい用事(または、その一部分)を完了したら、休憩とちょっとしたごほうびを自分に与える。コーヒーを飲んだり、お気に入りの音楽やラジオ番組を楽しんだりなど。 脳が、「用事の完了」と「その報酬」を関連づけるようになれば、しめたものです! 先延ばしにする癖と永遠にサヨナラできるかもしれません。
181 雨の日も風の日も「シス」を養う
「世界幸福度調査」の上位 5か国に数えられるフィンランドの人々には、学ぶべきことがたくさんあります。『フィンランドの幸せメソッド SISU(シス)』の著者カトヤ・パンツァルによると、フィンランド人は、困難にうまく対処するのに役立つ独特の「折れない心」(シス)を持っています。 たとえば、不眠症の悩みを解決したいなら、薬を飲むよりも、内なる力であるシスを使って人事を尽くそうとします。フィンランド人にとっては、活動することが「薬」のようなものなのですね。 1日のなかにできるだけ多くの運動を組み込んで、こまめに身体を動かすのです。どんな天候であっても徒歩や自転車で通勤をするのも、その一例です。それから寒中水泳もします。冷水で泳ぐと、ストレスが軽くなるとと同時に、エンドルフィンと快楽ホルモンであるセロトニン、ドーパミン、オキシトシンを高める効果があります。 シスは、あきらめたり安易な道を選んだりしない「意志力」でもあります。可能であれば、雨が降っていても、すべての天候を受け入れる覚悟で、毎日健康的な屋外のエクササイズをしてみましょう。ある研究によると、屋外で歩いたり走ったりして 30分間運動した男性は、屋内で同じだけ運動した男性よりも寝つきが早く、質の高い睡眠をとることができました。 1年を通じてどんな天気のときでも使えるエクササイズ用のウェアを手に入れましょう。そして、雨の日も風の日も雪の日も、外で身体を動かすのです。気分が良くなり、睡眠が改善するでしょう。寒中水泳は無理だという人は、運動後のシャワーの仕上げに冷水を浴びましょう。
182 不眠だからと人生を一時停止させない
眠れない人の多くは、人生のさまざまな楽しみをあきらめています。友だちに会う約束をキャンセルしたり、エクササイズを減らしたりして、睡眠時間を取り戻すべく、昼寝をしたり、週末にゴロゴロしたり、夜に早めにベッドに入ったりするのです。 でも、人づきあいにブレーキをかけることは、実際には逆効果になる可能性があります。『サイエンス』誌に掲載された、ミバエの睡眠習慣を調べた興味深い研究があります(驚くべきことに、このハエは遺伝物質の多くを人間と共有しています)。研究者は、隔離していたハエが、仲間と交流したハエよりもはるかに睡眠時間が少ないことを発見しました。そして交流したグループ内のハエが必要とする睡眠の量は、交流するハエの数に比例して増加しました。 研究者は、交流すると自分ひとりでいるよりも豊かで多様な経験をするため、脳がそれを処理するために多くの睡眠を必要とするのだと推測しました。 睡眠不足になると、活動の意欲が低下するのは致し方ないことですが、それでも活動的に身体を動かすことが重要です。 ある研究によると、座る時間が長い不眠症の成人に、有酸素運動をするように指示をすると、運動をしなかった不眠症の成人に比べて、睡眠が大幅に改善しました。また彼らはエネルギーが増し、落ち込みが少なくなったと報告しました。 覚えておいてほしいのは、健康的な生活にはバランスが大切だということです。リラックスして休む時間も大事ですが、活発に過ごすことも大事です(仲間との夕食の約束をキャンセルしないでください!)。 重要なのは、睡眠と不眠症に意識が集中しないように、楽しい経験で人生を満たすことです。長期的には、豊かで充実した生活を送ることが、睡眠を改善するはずです。
183 自分を甘やかしてますか?
これまで見てきたように、ストレスと不眠症には確実な相関関係があり、ストレスを悪化させると上質な眠りが得られなくなります。ストレスと不眠のどちらが先に始まったのか、その判断は難しいです。でも、ひとつ確かなのは、人生に平穏さを取り戻すことが、夜の睡眠の改善に役立つということです。 最近、「セルフケア」という言葉がよく使われています。これは新しい概念ではなく、要するに「自分をいたわる」ということです。シンプルに言えば、セルフケアとは「健康的な食事とじゅうぶんな運動を確保すること」ですが、セルフケアによるストレス解消効果を高めるには、リラックスするための時間と空間を自分に与えることが重要です。 とりわけあなたが、普段から他人のニーズを優先するタイプなら、なおのことでしょう。「他人が何をしてほしいか」を予測しながら目配りして、世話をする立場にある人は、いつも神経をピリピリさせています。心身ともに、休息の時間が不足しているのです。神経が高ぶった状態でベッドに入ったらどうなるでしょうか? 言うまでもなく、眠るのに苦労するはずです。 だから、ときどき自分を甘やかすことが大切なのです。いい香りのお風呂につかる。好きな音楽を聞く。本を読んでリラックスする。友人とカフェでコーヒーを飲む。得意料理をつくる。自転車で走る。ヨガをする。好きなことをしていいんです。 今日から自分を甘やかす時間をスケジュールに書き入れましょう。セルフケアは予定に入れておいたほうが、実行しやすくなりますよ!
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