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第 5講 悩みや不安に負けない!『朝型脳』をつくるヒント

37 感情に影響力大の代表的な神経伝達物質とは? 38 朝時間に脳の“切り替え力”を強化せよ 39 短時間でできる「プチ朝活」からスタート 40 『ベストエフォート方式』ならば“再起動”も OK 41 切り替えベタは、生まれ持った性格ではない 42 ひらめきを生み出す『デフォルト・ネットワーク』 43 「歩行禅」で脳内を整理し、心も身体も健康的に! 44 『セレンディピティ』習得に必要な 3つの心掛け 45 脳のオン・オフのスイッチを意識的にチェンジ 46 好きな音楽がもたらす最高のリラックス効果 47 「カレーはストレスや疲労抑制の効果大」はホント 48 オープンにする勇気は脳にもプラスの刺激 49 たったひと言のメッセージが脳や心にゆとりを生む

第 5講悩みや不安に負けない!『朝型脳』をつくるヒント

37 感情に影響力大の代表的な神経伝達物質とは? 不安にさいなまれてまったく集中できなかった……こんなこと、ありませんか? いつまで経っても怒りが収まらず、イライラした気持ちを周りにぶつけてみたり、目の前の仕事が手につかず、ダラダラと時間だけが過ぎ去ってしまった──。

こうした感情の浮き沈みは、私たちの脳内を駆けめぐる神経伝達物質や体内に分泌されるホルモンが大きく関与していることが、脳科学的にもわかっています。

脳と深いかかわりのある神経伝達物質は数十種類にもなりますが、ここでは代表的な神経伝達物質について簡潔に説明しましょう。

まずは、本書でも幾度となく登場してきた『ドーパミン』です。

この神経伝達物質が快楽や喜びをもたらす働きがあることは既に説明しました。

ドーパミンは私たちの精神面・運動機能面でも多大な影響を与えています。

好奇心や挑戦意欲などをかき立て、やる気や集中力を発揮させます。

新しいことに挑戦しようと思ったり、 1つのことに夢中になれるのは、このドーパミンのおかげです。

一方、同じ神経伝達物質でも、不安や恐怖などのネガティブな感情を引き起こすのが『ノルアドレナリン』です。

「ストレス社会」と言われて久しいですが、私たちが強いストレスを感じたときにも、この神経伝達物質が分泌されます。

こうした不安や恐怖、ストレスに対峙すると、ノルアドレナリンが分泌されて、覚醒や痛みの抑制を行う働きがあります。

また、怒りとも深いかかわりがあり、ノルアドレナリンが過剰に分泌されると、激しい興奮状態を引き起こすことがわかっています。

数多い神経伝達物質のなかで、最も分泌量が多いことも特徴の 1つです。

対照的に、精神の安定に深く関与している神経伝達物質が『セロトニン』。

身体の調節機能にもかかわっており、この神経伝達物質が分泌されることで、食欲や睡眠、体温などのバランスが保たれるのです。

このほかにも、モルヒネをはるかに上回る鎮痛効果があり、“脳内麻薬”の異名を持つ『ベータエンドルフィン』、学習や記憶を司る『アセチルコリン』なども代表的な神経伝達物質と言えるでしょう。

38 朝時間に脳の“切り替え力”を強化せよ 通常、こうした神経伝達物質の分泌量は、私たちの脳内できちんとコントロールされているのですが、ときに、ホルモンバランスが大きく崩れて過剰に分泌されたり、分泌量が少なくなることもあります。

すると……躁鬱状態に陥ったり、不安障害になったり、と心と身体に様々な悪影響を及ぼすことになります。

しかし、私たちは自分の意思で神経伝達物質をコントロールできません。

できることといえば、とにかく、身体を動かすことです。

前でも述べましたが、朝起きたあと、 1日のスタートで晴れやかな気分になるためには、太陽の光を浴びるのがイチバン。

朝の太陽光を浴びるとセロトニンが分泌され、体内時計をリセットし、精神の安定をもたらしてくれるからです。

本講ではこのように、朝時間を上手く使って、脳のスイッチを切り替えたり、リセットする方法を提唱していきます。

不安や悩みを解き放ち、脳をリラックスさせるにはどうしたら良いのか。

どうしても集中できず、とりとめのない嫌な思考がぐるぐる回っているときの対処法はあるのか。

さらには、朝イチバンのハイパフォーマンスな脳を、どうすれば維持できるのかを一緒に考えていきましょう。

適度な睡眠を取って、スッキリと目覚めた朝はとても気分が良いものです。

しかし、時間の経過とともに脳は疲労し、ストレスがたまっていきます。

ですから、脳のスイッチを上手に切り替える必要があるのです。

ここで紹介するのは、日常のなかで誰でも簡単に始められるものばかりです。

脳が持つ不思議なパワーをきちんと理解し、それを最大限に発揮させてください。

39 短時間でできる「プチ朝活」からスタート 作家・写真家・映画監督といった多種多様な顔を持ち、常に好奇心を失わずに世界中を冒険し続けている椎名誠さん。

私は椎名さんを“師”と仰いでいるのですが、椎名さんから以前、筋トレの課題を与えられたことがありました。

「腕立て・腹筋・スクワットを毎日 200回ずつやれ!」と。

始めた当初はかなりきつかった。

いきなり 200回ですから。

太ももや脇腹、上腕など身体のありとあらゆる部位の筋肉が悲鳴を上げました。

それでも、少しずつ身体が慣れ、習慣化することで、 4カ月間くらいは続いたと思います。

ですが……毎日続けるのがつらくなってリタイアしてしまいました。

それからしばらく経ってから、このように思い直したのです。

「200回という回数に縛られなくていい。

毎日、 10回でもいいんだ」 厳密な規則で自分を縛ることなく、できる範囲のことをやろう──。

そうマインドをチェンジしたことで、再度、筋トレを続けることができるようになりました。

椎名さんに対する罪悪感が消えなかったのは事実ですが、それでも、やらないよりははるかにマシだと思います。

朝時間の使い方も原理原則は同じです。

まずは自分ができる範囲、つまりは「プチ朝活」程度でスタートすれば良いのです。

大切なのは、行動に移すこと。

英語の原書であれば、 1ページを読破するだけでもかまいません。

それも難しければ数行でも OK。

英単語を数個だけ覚えるのでも問題ナシ! 最近では、 iPhone、 iPad、 Androidなどのスマートフォンや携帯端末があれば、どこでもインターネットができます。

通勤や通学途中で、世界のニュースを英語版サイトで閲覧し、どんな記事が書いてあるのか、その雰囲気だけでもちょこっと触れてみる……。

こんな朝時間の使い方も楽しいでしょう。

最初から高いハードルを設ける弊害は、脳が過度なストレスを感じてしまうことです。

「やっぱり続かなかった」「自分にはできなかった」と、自分を責めてストレスをためることほどバカらしい。

そう思いませんか。

できる範囲からでかまわない、ある程度習慣化してから徐々にハードルを上げ、脳への負荷を掛けていけば良し。

このように前向きに考えてください。

40 『ベストエフォート方式』ならば“再起動”も OK とても飽きっぽく、何事も短期間しか続かない……いわゆる“三日坊主”。

お寺の厳しい修行・戒律に耐えられなくて、わずか 3日間で逃げ出してしまう坊主が結構いたことから生まれた言葉ですが、むしろ私は、この言葉が持つポジティブな側面を大切にしたい。

どういうことかと言うと、「少なくとも 3日は続いた」「 1日でもできた」という一面です。

朝時間での活動も、連続記録にこだわる必要はありません。

「今からできることをしっかりやろう」「この場で最大の力を発揮しよう」と考えることで、脳のスイッチを切り替えます。

これが私が提唱する『ベストエフォート方式』です。

誰でも一度や二度は、やるべきことをサボってしまい、自己嫌悪に陥った経験があると思います。

そんなときに「なぜ、あのとき、もっと自分に厳しくなれなかったのだろう」「取り返しのつかないことをしてしまった……」などとクヨクヨしていると、脳は強いストレスを感じてしまいます。

そうなると深みにはまる一方です。

過ぎ去った時間は取り戻せないのに、切り替えが上手くできず、未来の時間まで非生産的になっては非常にもったいとは思いませんか。

皆さんも朝時間を有効に活用するメリットは十分に実感しているはずです。

とはいえ、 1日の始まりは何かと慌ただしく、やろうと思っていたことが全然できなくて、落ち込むときもあるでしょう。

そんなときこそ、ベストエフォート方式を意識してください。

限られた状況下で、短時間で集中し、最大の成果を得るための努力をすれば良いのです。

限られた朝時間でやれることはたくさんあります。

3日続けてできたことは、一度休みを挟んだとしても、またできるようになる。

いつからでも再起動して、ベストを尽くす以外に道はない──。

ベストエフォート方式で、「再起動しても大丈夫!」と視点を変えることで、脳の切り替えも驚くほどスムーズに行えるようになるでしょう。

41 切り替えベタは、生まれ持った性格ではない ベストエフォート方式を話題にすると、必ずこのような意見が出てきます。

「自分は切り替えが下手だ。

そんなに上手くいくはずがない」「ベストを尽くす大切さはわかる。

でも……それができないから困っている」 ここで少し、脳の切り替えに関するお話をしましょう。

私たちの『前頭葉』に『眼窩前頭皮質』『背外側前頭前野』という領域があります。

前者は、現状を察知し、脳の活動を調整する働きがあると考えられています。

後者は、脳の司令塔の役割を担い、私たちが取るべき行動を指示します。

これらの部位を鍛えることで、やる気や集中力等の切り替えができるようになるのですが、そのためには、意識的な行動が求められます。

今から始められることに着手することで、眼窩前頭皮質や背外側前頭前野の神経回路が強化されていくわけです。

最大の敵は、ダラダラして行動に取り掛からないこと。

そのほかの神経回路と同様に何もしなければ強化できません。

繰り返し、繰り返し、刺激を与え続ける必要があります。

だからこそ、ベストエフォート方式を心掛けて、実際の行動に移して欲しいのです。

切り替えベタは生まれ持ったその人の性格ではありません。

何度も繰り返し訓練して、回路を鍛えているか否かといった、じつに単純な要因が大きいのです。

42 ひらめきを生み出す『デフォルト・ネットワーク』 私たちの脳には、『デフォルト・ネットワーク』と呼ばれる神経回路があります。

特定の目的を持たない行動、簡潔に言えば、ボーッとすることでこの神経回路が起動し、脳のメンテナンスを行う仕組みを持っています。

こんな経験はありませんか。

会社の自分の机で頭を振り絞って考えているのに、なかなか面白いアイデアが浮かんでこない。

ふと席を立ち、社外に出てぶらぶらと散歩をしていると、突然、グッドアイデアがひらめいてきた──。

このように、課題を前にして考え続け、いったん頭をリセットしたあとのひらめきは、デフォルト・ネットワークが関係しているのかもしれません。

何もないところからアイデアが突然生まれることはなく、それまでに培ってきた様々な経験や過去に蓄積された情報、これらが上手く組み合わさって、私たちは「アイデアがひらめく瞬間」に出逢えるわけです。

こうした観点から考えると、脳内のあちこちに散らばった情報が、デフォルト・ネットワークの起動によって再整理され、新しいアイデアを生み出すとも言えるでしょう。

デフォルト・ネットワークを鍛えるのにオススメなのが「禅」です。

以前、私は曹洞宗の禅僧である南直哉さんと対談し、それを共著というかたちで 1冊の本にまとめました。

南さんの禅宗で座禅をさせていただいたことがあるのですが、そのときに実感したのは、不安定な心を静めたり、脳をリセットする禅の効果でした。

ゆったりとした気持ちで座禅をしていると、頭のなかが徐々に“空っぽ”になっていきます。

脳がリラックスし、心も身体もゆったりとしてきて無心になる──こうした状態になったとき、デフォルト・ネットワークが起動します。

禅に対して、とっつきにくいイメージを持っている人も多いでしょうが、過剰に形式や格式にこだわったり、難しく考える必要はありません。

是非、朝時間に禅を取り入れてください。

アイデアに煮詰まったとき、少し不安や悩みに負けそうな自分がいるときに実践すると効果抜群! 呼吸をゆっくり整えながら、 5 ~ 10分くらい続けてみると、次第に心と身体が休まります。

リラックスした状態で、デフォルト・ネットワークを起動させ、創造性豊かな 1日を過ごしましょう。

43 「歩行禅」で脳内を整理し、心も身体も健康的に! オンとオフを切り替えたり、デフォルト・ネットワークを強化させるうえで、さらに私がオススメしたいのが「歩行禅」です。

イメージしづらい人は、「散歩の発展したもの」と捉えてください。

ただ 1つ違う点は、散歩はあれこれ考えながら行いがちですが、歩行禅は、読んで字の如く、「歩きながら禅を行う」──つまりは“無”の境地で歩くことです。

余計な邪念を持たず、ただひたすら何も考えずに歩きます。

禅と同様、難しく考える必要はありません。

ゆったりとした呼吸を心掛けながら試してみてください。

慣れないうちは、目や耳から入ってくる外部の情報に意識を奪われがちですが、そのうちに、頭のなかが空っぽになっていきます。

毎朝 10 ~ 20分程度でも歩行禅を行うことで、その驚くべき効果を実感するはずです。

大げさに聞こえるかもしれませんが、歩行禅との出逢いは、私の人生に大きな影響を及ぼしています。

朝起きたらすぐに外に出て、太陽の光を存分に浴び、そのまま歩行禅を。

短時間で脳がリラックスしていることを実感し、心も身体も清々しくなること間違いナシ! デスクワークが多く、椅子に 1日中座って仕事をしているビジネスパーソンは、昼休みや夕方の隙間時間を使って、試すのも一案です。

身体の疲労や心のストレスを取るのはもちろん、脳をアイドリングするうえでも効果があります。

44 『セレンディピティ』習得に必要な 3つの心掛け 偶然の幸運にめぐり逢う能力──これが『セレンディピティ』と呼ばれるもの。

例えば、数多くのヒット商品が、セレンディピティから生まれています。

私たちの日常生活に不可欠なヒット商品の多くは、最初から細部に至るまで明確なコンセプトを持って開発されたわけではありません。

誰もが知っている『ポストイット』。

自由に貼りつけ、剥がせる便利な付箋として、今や世界中で愛用されています。

じつは、この人気商品もセレンディピティがなければ生まれなかったかもしれません。

ポストイットの産みの親である 3 Mでは、元々、強力な粘着力を持った接着剤の開発をしていたのですが、逆に、粘着力の弱い接着剤ができてしまいました。

開発は完全な失敗だったのです。

そんなとき、開発者の一人が、教会である場面にめぐり逢います。

教会の聖歌隊のメンバーでもあった彼が、いつものように讃美歌集のページに挟んでいた 1枚のしおりが、ひらりと本から滑り落ちた瞬間……彼の頭のなかにあの革新的な商品を生み出すヒントがひらめいたのです。

こうした“偶然”があり、ポストイットは誕生したそうです。

何かを探しているときに、別の価値あるものを発見する能力や才能──これがまさにセレンディピティ。

予期せぬ偶然にめぐり逢い、それが思いもよらない幸運に発展した経験を、誰もが持っているのではないでしょうか。

セレンディピティの語源は、イギリス初代首相であるロバート・ウォルポールの息子、ホラス・ウォルポールが手紙のなかで「偶然の幸運に出逢う能力をセレンディピティと名づけよう」と記したのがきっかけだったそうです。

ただし、偶然の出来事や出逢いを「必然」に変えるには、以下の心掛けが求められます。

それは、「行動」「気づき」「受容」の 3つです。

その場で立ち止まっていても、幸運が向こうから訪れることはありません。

実際に「行動」を起こさなければ、何も始まらないのです。

何か行動を起こすのに、特定の目的や理由をつくらず、偶然的な出逢いを多く求めるべきなのです。

そのように行動するなかで、様々な人に出逢うことができます。

次に必要なのが「気づき」です。

セレンディピティを深めるためには、自分が出逢った人の存在や価値観に気づかなければいけません。

せっかく素晴らしい出逢いがあっても、その人の魅力や価値観に気づかなければ「偶然の興奮」を活かすことができないからです。

そして、この「気づき」を養うためには、常に自分の周辺にあるものに目を配る必要があります。

自分がつき合いやすい人ばかりに気を取られ、ほかの人に目を配ることができなければ、偶然の出逢いや興奮をみすみす取り逃がしてしまいます。

つまり、特定の誰かにしがみついていてはいけないのです。

最後に必要なのが「受容」です。

いくら「気づき」を養っても、それは自分には関係のない、自分の主義とは反するなどと拒絶している限りは、幸運にまで発展することはまずあり得ないでしょう。

固定概念を外し、自分が知らないことに対しても「受け入れる」気持ちを持つことが大切です。

こうした「受容」こそが、自分の人生観や価値観を変える大きなパワーになる事実を理解しておいてください。

セレンディピティには、「受容」する勇気が不可欠なのです。

なお、これらの詳細に関しては、私の著書である『脳を活かす仕事術」( PHP研究所刊)を参考にしてください。

45 脳のオン・オフのスイッチを意識的にチェンジ デフォルト・ネットワーク、セレンディピティが私たちに教えてくれることは、一度、目の前のテーマから離れて、外部に視野を向ける大切さです。

特定の環境下で、がむしゃらに頑張り続けることも重要でしょう。

しかし、それだけでは発想が煮詰まったり、思い込みからなかなか抜け出せなくなるケースも多い。

結果、次のステージにブレイクスルーできなくなってしまうのは、本当にもったいない話です。

本業に 8割の時間を割き、自分のやりたいこと、興味のわくことに 2割の時間を割くという有名なグーグルの『 20%ルール』。

頭がかたい経営者であれば、正規の雇用時間中の 2割を本業以外に費やすなど「論外だ」と憤慨するでしょう。

ですが、これまで説明してきた通り、グーグルが奨励するこのルールは、セレンディピティを活かした上手な時間の割り振りなのです。

本業に割り振った時間は業務に集中し、さらなる改善点や仕事のクオリティを上げるために全力を尽くす。

そして、あえて残りの 2割は本業から離れ、リラックスした状態で興味のあることに取り組む──。

それが、デフォルト・ネットワークを起動させたり、セレンディピティにつながって、新たな発見の源になるわけです。

こうした観点から、いかに朝時間を有効に活用できるかを考えてみてください。

前で紹介した歩行禅は、その 1つです。

そのほかにも目の前のテーマから自らを解放するために、推理小説の世界にはまり込むのも良いかもしれません。

もちろん、好きな本や漫画などでも問題ナシ! SNSを使って外部と交流し、新しい刺激を受けるのも面白いでしょう。

この点に関しては後ほどお話ししますが、新たな人との出逢いや交流は、脳のスイッチを切り替え、活性化させるうえで多大な力を発揮します。

朝起きて、すぐに本業に直結する仕事をこなすことも、一概には否定しません。

なかにはそのような時間割で、 1日の仕事をコントロールしている人もいるでしょう。

ただし、脳のオンとオフを意識的に切り替えることが、逆に仕事にも人生にもプラスの影響を及ぼすことが多い点を忘れないでください。

46 好きな音楽がもたらす最高のリラックス効果 好きな音楽を聞く、好きな映画を見る、好きな本を読む、好きな写真を撮る、好きなスイーツを食べる、好きなアイドルのコンサートに出掛ける──。

たくさん好きなものを持つことは、脳にとっても“幸せ”なことです。

これらのなかで、朝時間にすぐにでも実行できるのが、好きな音楽で脳を活性化することではないでしょうか。

例えば、朝目覚めた直後に、好きな音楽にしばし耳を傾ける。

あるいは、音楽を流しながら、同時に読書をしたり、勉強したりするのも脳を活性化させるうえで効果的な時間の使い方だと思います。

私たちは音から様々な刺激を受けているのですが、人間の脳は音楽を聞くと「情報」「感情」の 2つを解析します。

「鳥たちがさえずっている」「ドリルで道路に穴を掘っている」「子どもたちが騒いでいる」「赤ちゃんが泣いている」……というように、「これはなんの音なのか」──その情報を、私たちは音から受け取り、推測しています。

音楽の場合でしたら、「どんなメロディなのか」「いつ、誰と聞いた曲なのか」といった情報が、そうです。

感情面に関しては、人それぞれで受け取り方が異なりますが、耳から入ってくる音楽によって、切ない気持ちになったり、興奮や闘争心がかき立てられたり、心がリラックスしたりします。

音楽を聞き、脳が感情に関与することで、ポロポロと涙が出たり、新たな挑戦をしたくなるのですから、音楽の影響力はあなどれません。

過去には「クラシックはリラックス効果がある」と言われていました。

たしかに、楽曲の性質上、リラックス効果を生みやすい面があるかもしれません。

しかし、最近の調査では、こうした説と対立する結果が発表されています。

同じ楽曲であっても、クラシックが好きな人にはリラックス効果が認められ、クラシックに興味がない人には効果がさほど認められないと判明しました。

つまり、楽曲によって全員が同じ反応を示すわけではないのです。

むしろ、脳がリラックスしたり、刺激されたりする音楽は、その人が好きな音楽だと言えます。

脳は情報量が多いほど活性化する仕組みになっていますから、生演奏で聞くのが効果が最も高い。

この場合は朝時間とはいきませんが、ときにはコンサート会場などに足を運び、脳を活性化させてあげてください。

週末はコンサートに行く。

日中の隙間時間に好きな音楽を聞く。

好きな音楽を聞きなながら眠りにつく……。

朝時間はもちろん、日々の暮らしに好きな音楽をたびたび登場させることで、新たな刺激が脳に加わり、リラックス効果も得られるようになります。

47 「カレーはストレスや疲労抑制の効果大」はホント 脳に与えるリラックス効果という側面から、興味深い事実が判明しました。

生活にもとづいた“知恵”と言えるのですが、昔から、カレーにはやる気を増進させたり、集中力を高める効果があると信じられてきました。

ただ、その審議のほどはこれまで明らかにはされてこなかったのですが……。

そこで「カレーが私たちの脳や身体にどのような影響を及ぼすのか」──私のもとで博士号を取得した関根崇泰さんと、博士課程の星野英一君らの研究グループが中心となって実験を行いました。

まずは、 20名のモニターを以下のような 2チームに分けます。

①「スパイスの香りを嗅がせ、作業終了後にスパイスがたっぷり入ったカレーを食べるグループ」 ②「スパイスの香りをいっさい嗅がせず、作業終了後にスパイスを抜いたカレーを食べるグループ」 ここで被験者に行ってもらう作業とは、取り立てて難解なことではなく、根気が必要とされる単純作業ばかりです。

スパイスの香りを嗅いだあと、そしてカレーを食べ終わったあと、被験者の唾液から『アミラーゼ』の分量を分析しました。

唾液中に含まれるアミラーゼは、炭水化物を分解する酵素物質で、私たちのストレスレベルと関与することがわかっています。

アミラーゼの量が多い場合は、ストレスを感じている状態です。

逆にアミラーゼが少ないケースでは、ストレスをあまり感じていないと判断できます。

そして 2チームの結果を比較すると……。

②の「スパイスの香りをいっさい嗅がせず、作業終了後にスパイスを抜いたカレーを食べるグループ」から検出されたアミラーゼのほうが量が多いと判明しました。

カレーのスパイスに、ストレスの抑制効果が認められたわけです。

さらに、視覚や聴覚など、ある特定の外部刺激や現象に反応する『 ERP』という測定機器を使って、スパイスの香りを嗅ぎ、カレーを食べた人たちの脳波を調べたところ、この数値が大きく反応することもわかりました。

以上の結果から、「やる気を維持して、集中し続けている」という事実も明らかになったのです。

このように、私たちが経験的に体得していたカレーの“効用”が実証されたわけですが、朝時間に脳を活性化させる一助として、朝カレーを習慣づけることを検討してみてはいかがでしょう。

スパイスをイチから揃えて料理する必要はありません。

レトルトのカレーでも十分です。

朝の目覚めとともに太陽の光を浴びながら歩行禅。

家に戻ってからスパイスたっぷりの朝カレーを食べる。

手間を掛けずに、脳のパフォーマンスを高めるとっておきの方法だとは思いませんか。

48 オープンにする勇気は脳にもプラスの刺激 誰の心にも、しばらく開けていない、開けたくないほこりのたまった部屋があります。

見たくないので意識的に目をそらす、誰にも知られたくない開かずの部屋です。

例えば、仕事でも勉強でもかまいませんが、やろうとしていたことをサボってしまい、そのままの状態に放置していた場合などが当てはまります。

このような部屋は、たくさんのほこりでいっぱいなので、開けてその部屋を人に見せることが恥ずかしいと感じるはずです。

ところが、その部屋の窓を開けて、光や新鮮な空気を入れ、掃除をし始めると、だんだんとあるところから楽しくなってきます。

そのうちに、隠していたことを受け入れ、きれいになった部屋を人に見せられるようになってくる……自分の過去や現状を素直に受け入れ、オープンにすることは、脳にとってもプラスの刺激です。

以前、私は講演会でこのような質問を受けました。

「茂木先生、私は英語の勉強をずっとサボってしまっていて、これから朝の自由な時間だけでもやろうと決意したのですが、それでも大丈夫でしょうか?」 誰かに今抱えている感情や考えを投げ掛けることができる人は大丈夫! 自分の過去を受け入れ、前向きな 1歩を踏み出す行動がすでに始まっているからです。

脳のスイッチを切り替えたり、リラックスをするうえで大切なのは、抑制や拒絶をしないことです。

自分の過去であればなおさら、それを受け入れがたいものと拒絶するのではなく、どんどんオープンにしていきましょう。

49 たったひと言のメッセージが脳や心にゆとりを生む 朝イチバンに、感謝の気持ちを表現する──これは、自分の現状を素直に受け入れ、感情をオープンにするうえでとても効果があります。

「ありがとう」というひと言。

自分の大切なパートナーだったり、職場の人だったり、あるいは両親に向けて、この素晴らしいひと言を発してみてください。

感謝の言葉を発しているとき、心が癒されている事実に気づくはずです。

感謝の言葉は必ず自分にも返ってきます。

感謝のメッセージを伝えた瞬間、自分に与えられているたくさんの幸せの存在に気がつくはずです。

セレンディピティもそうでしたが、行動し、気づき、受容することで、偶然の幸せにめぐり逢えます。

自分が失ったものや手にしていないものを嘆いている段階では、新たな行動を起こすことはできません。

自分の過去と現在のプラス面に気づき、受容することで、新たな挑戦への意欲がわいてくるのです。

感謝の気持ちを表現することは、脳に対する「ゆとりの引き出し」をつくることにもつながります。

自分自身が発する言葉に愛情が表れ、その愛情ある言葉を受け取った相手も、あなたに感謝の気持ちを抱き、愛情を送り返してくれるのです。

感謝の対象は、人物だけに限定する必要はありません。

「今日」という幸せな 1日を迎えられた事実、朝にスッキリと目覚められた快感、自分の人生全般に対して……その対象はなんだって良いのです。

朝イチバンにあなたが発する「ありがとう」のひと言は、“ブーメラン効果”を引き起こし、さらなる感謝を生み出すことで、脳や心が幸せを感じるでしょう。

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