市場戦略の第一は「敵」を決めること
市場戦略とは、市場占有率を確保する戦略である。その戦略としてのランチェスター戦略を、実際にはどのように進めるのがよいのだろうか。
まず、ランチェスター戦略の定義づけを再認識しよう。
「ランチェスター戦略は、市場細分化が絶対条件であり、細分化した一つ一つのアリトリーの占有率を高めていく」という戦略だということである。
占有率を高めるためには、「敵」に勝たなければならない。そのための細分化なのだ。ということは、敵を決めなければ本当の意味での細分化はできないということを意味している。
敵を決めて初めて「敵に勝つための敵に勝る戦力はどれほどのものでなければならないか」を考えることができるからである。
過大な戦力投入はムダであり、不足する戦力では戦いに勝てないからムリである。そのムリは結果においては戦力のムダ使いになってしまうのである。
戦いというものは、我社の資源を最大限まで有効に使うととこそ肝要である。
だからこそ、社長は収集した情報を総合的に検討し、これに基づいて彼我の戦力の比較分析を、時間の許す限り様々な面から行なわなければならないのである。
その分析の上に立って、我社の限りある資源を、どのような市場において、どう使ったら敵に最も大きな損害を与えられるかを考え抜かなければならないのである。これが市場細分化の意味であり、これなくて市場戦略はないのである。
以上のことをまとめてみると、
市場戦略の展開は、
叩くべき敵を決めることを第一とし
その敵を叩くための企業資源の最有効使用を可能とする市場細分化を行ない
細分化された市場毎に最適な作戦計画をたて
この作戦を忠実に実行することである
、ということになるのである。
右のうち、四番目の「作戦を忠実に実行する」ということとそ、市場戦略上絶対的な重要度を持つということを夢にも忘れてはならないのである。
忠実に実行してこそ、初めてその作戦の適否も効果も分るのである。その通りやらないのでは、その作戦の適否も効果も分らない。
これでは作戦をそのまま継続すればいいのか、修正文は変更をしなければならないのかの今後の方針が立たないからである。これでは市場戦略も何もないのである。
このことで我々が思い出さなければならないのは、「三国史」におけるク街亭の戦い。である。
戦略的要衝「街亭」の守備を孔明に願って許された馬課は、孔明の指令に反して山頂に布陣し、貌の仲達軍に麓を包囲されて水の手を絶たれて壊滅し、このために濁軍は全面敗退してしまった。
もしも馬設が孔明の指令を守っていたならば濁軍の勝利に帰し、三国史は全く変わっていたであろう。孔明は軍紀を維持するために「泣いて馬課を斬る」ことになってしまったのである。軍紀は正せても、萄軍の敗戦の大痛手は取返しがつかなかったのである。
社員というものは、往々にしてこの馬課と同じことをやるのである。しかもベテランほど、優秀な社員ほどこれをやる危険が大きいのである。この実例を一つ紹介しトでつ。
J社では、毎年得意先の流通業者に対して、デッドストックの返品をお願いし、業者から非常に喜ばれていた。これはJ社の大きな強昧だったのである。これこそ、シアーズローパック社の方針「万一不満の節は委細なく御返金申しあげます」と同一の姿勢に基づく施策、だったのである。
ところが、ある優秀な社員が「社長の指令をそのまま実施するのでは誰にでもできる。それを一歩進めることこそセールスマンの大切な役割である」と思いこんでしまう。
「返品はお得意先と交渉してできるだけ防ぐことこそ会社のためだ」ということになり、これをやってしまった。お得意先では「口先だけはきれい事をいうが、やる事は違う」とJ社に対して大きな不信を持ってしまったのである。社員というものは、このようにク浅知恵。で勝手な行動をしがちな人種である。目先のことは考えても、社長の施策の意味するところを汲み取ることはできないという危険が常に伏在するものである。
私が会社にお手伝に伺うと、はじめに売上年計表や売上高ABC分析表の作成をお願いするが、その時に「この表は、必ず私の指示した通りのフォームや項目を守ザ〈ωこ〉」、そのフォームには長年の経験からくる様々な意味があるのだから』ということをクドいほど繰返して頼む。しかし、でき上がったものは、二社に一社は私のいう通りに作らずに、社員の創意(?)を加えて社員流のフォームにしたものになっているのである。
このくらい、社員という人種は上司の指令どおりにやろうとしないものなのである。しかも、それは社員の怠慢からではなくて、真剣に仕事に取組むところから生れるという厄介なものなのである。
いかなる動機であれ、決められた作戦計画どおり動かないものは必ず責任をとらせなければならない。さもないと作戦そのものが遂行できなくなってしまうのである。このことをよくよくセールスマンにいいきかせて、必ず作戦通り動かさなければならないのである。
作戦は、量と質との両面がある。まず量的作戦を決定し、これに質的作戦を重ねていくのである。それは次のようなものである。
6
(1)
戦略地域を決定し、占有率の目標を設定する
2)
戦略地域毎に戦略方針を決定し、流通業者(文はエンドユーザl)を選定す
る
(4) (3)
蛇口作戦を展開する
差別化作戦を地域作戦と組合わせる
というようになる。
このような作戦は、必ず社長自ら検討し、自らの責任において決定し、推進をするのである。決して他人任せにしてはならないのである。
て、役員、管理職、一般社員の意見は十分に耳を傾け、それぞれの役割の分担をさqL といっても、何もかも社長一人でやるという意昧ではない。すべての過程においせ、必要とあらば何回でも検討会や説明会を行なわなければならない。自ら行なうというのは、「衆智を集めてワンマン決定をする」という意味である。「経営戦略・利益戦略」篇において、佐伯勇氏の信条は、「独裁すれども独断せず」を紹介したが、これをいっているのである。
次節から市場戦略について段階毎にのべることとするが、巻末にク市場戦略構想書ψ を折りこんであるので、これを広げて本文と参照しながら読み進めていただきたいのである。
この構想書は、経常計画書が事業経営に無くてはならないのと同様に、市場戦略の推進には無くてはならないものである。
この構想書は、全社を一表にまとめた。基本構想書。と、基本構想書の個々のテリトリl毎に、そのテリトリーをさらに細分化した地域別構想書をつくるとよい。フォームは全く同じである。前者が。親。であれば後者は。子。の関係になる。ただし、戦略格付の低い、あまり重要でないテリトリlについては作る必要はない。をさらに細分化し、得意先別計画書まで作った。
この段階では、構想書より計画書と称したほうが適切であろう。さしずめ。孫。計S社のごときは、地域別構想画というところである。
さらに、得意先がチェーン店展開をしている場合には、。店舗別計画書。をつくることをお勧めする。これは。ひ孫。計画である。ここまで細分化が進めば立派で中のマhv。
「そこまで作らなくとも:::」と思われるかも知れないが、ここまで作ってこそ、社長の方針が本当の意味で末端まで示されたことになるのだ。もしも「面倒だ」と思われるのなら、それは自らの方針徹底に本気でない証拠であり、「そんな時間がない」と思われるのなら、ためしに作ってみていただきたい。それに費やされる時間など「大したことはない」というよりは「こんな短時間にできるとは思わなかった」という感想を持たれる筈である。
計画書というものは、多くの時間がかかるのは経営計画書ぐらいである。それ以外のものは意外なほど時間はかからないものである。市場戦略基本構想書でさえ二ー三時間あればできてしまうし、個別構想書はさらに短時間で済むのである。
そして計画書に費やす時間に比較して、その効力は造かに大きいのだ。その意味nHU円Lで、計画書作成に費やす時間こそ、まさに第一級のク時間有効使用法。なのである。
その実証は、経営計画をつくられた社長諸兄は、自分も自分の会社も全く生れ変わったほどの感じを受けることであるが、市場戦略構想書も、これをトコトンまで細分化した計画書まで、たとえ私の強制によってムリヤリ作らされた社長といえども、異口同音にその効果の大きいのに驚きの声をあげることで明らかなのである。作らずにアレコレいうよりも、ひとつ作ってみることをお勧めしたいのである。作った会社の勝ちである。
では、次節に移ることとするので、だきたいのである。これを広げたままで本文との対照をしながらお読みいただくと、その前に巻末の市場戦略構想書を広げていたよくご理解いただけると思う。
戦略地域を決定し、占有率目標を設定する
市場戦略構想書をご覧願いたい。
一番上の地域とは、自らの会社の全市場と計画期間に新たに進出したい市場について、社長の頭の中にある市場細分化構想をそのまま記入すればよい。は、重要地域は県別にし、全国的または全国的ではないが数県にわたる地域に販売戦を展開している場合にしまえばよい。
それ以外は地方ブロック毎または「その他」と一括して作戦地域が一つ又は二つ程度の県にまたがっている程度ならば、経済圏または郡市別に細分化すればよい。
何れの場合にも県単位または都市別と一致しない場合には「除くOO」「含む××」というような表現をとればよい。次の世帯数(人口) はどちらか自社に都合のよい方をとればよい。
特殊な市場の場合||農協ならば農協数、病医院ならばその数、メッキ工場ならばその数という要領である。要は対象とする市場で、どんな顧客別に考えたらいいかである。
総需要は、金額でも数量でもよい。
競合会社は、大きさのランク順にその地域の売上高と占有率を記入する。売上高が分らなければ占有率の推定値を記入するだけでもよい。そして、そのうちのどの会社を我社、が叩かなければならないかをきめて、その社名の頭にO、Oなどの印をつけておけばよい。O印は攻撃目標、O印はマークする会社、という要領である。その次は流通業者である。これも競合会社の要領で、社名の頭に印をつけるとよ
メーカーの場合は競合会社はメーカー、流通業者は問屋または小売店ということになるし、商事会社や問屋の場合には競合会社は同業で、流通業者は小売店になる。
ここまでが、収集した市場情報を集約したものである。このように、市場の状況を一覧式にしてこれを全社的な視点から検討し、構想を練るのである。その次の欄の戦略格付以下が戦略の具体的な構想となる。ところで、市場においては現在販売活動が展開されているのであるから、この市場における戦略はク戦略的再編成。となるのである。そこで、まずこれから述べることとする。
まず戦略格付の考え方から述べよう。
O社にお伺いした時に、O社の府県別売上高表を見た社長が『おい、岩手県の売上げが一番少ない、もっと伸ばせ』と営業部長にハッパをかけた。では、他の府県Qdは十分な売上げがあるかというと、そんなところはいくつもない。何のことはない、「岩手県が一番売上げの少ない県だ」ということにしかすぎないのだ。世の社長の大部分はこういう考え方をする。だから売上げなど、いつまでたっても上がらないのである。
売上げが少ない地域というのは、そこの市場戦で我社が負けている姿である。そして、負けるには負けるだけの理由があるのだ。その最大なものは、遠隔地で営業活動の手が廻らないということである。この点を全く考えないで「もっと売上げを伸ばせ」というのは間違っている。そこの売上げを伸ばすには、新たにかなり大きな営業活動を展開しなければならないのだ。ということは、その地域がガラガラに空いているわけではない。必ずその地域に強い業者がいて、ガッチリと市場を押さえているのである。この点を全く考えずに『売上げを伸ばせ』といっても、そんこちらは非力な地域限界業者、少しくなことができるわけがないのだ。敵は強大、らいの戦力を投入したと乙ろで、僅かな成果しか上がらないのは目に見えている。その弱者が売上げを伸ばすには、敵より大きな兵力||セールスマンの数を投入し
既にかなりの実績をあげている地域から引抜いたら、その地域の売上げがガタガタA9n『U なければならない。そんなセールスマンをどこから持ってこいというのか。それをに崩れ、新規投入地域でも地域限界企業なるが故に急に戦力を増加したところで、一年や二年ではたいした効果はない。結局のところ、会社の売上げは急減し、たちまち赤字転落は間違いない。
売上げ最低地域の『売上げをあげろ」というのは、右の最悪事態を招く『最悪戦略をとれ」といっているのと同じなのである。口では「競争が激しくて:::』など
といいながら、その実、競争に勝つためにはどうしなければならないのか、というようなことは全く考えていないのである。口先だけで『売上げをあげろ』といっても、それはムリである。
戦いというものは、強いものが勝つという何とも当り前のことを先ず認識することである。そこから、「敵に勝つには、その戦場で敵より強くなくてはならない」ということが自然に導き出されてくるのだ。この点を認識していれば、「この戦場で敵に勝つにはどれだけの兵力が必要なのか」ということを検討するようになる。
もしも、我社の力で敵に勝る戦力を投入できないならば、戦場を変更するか、戦線のである。
を縮小して、その部分では敵より優勢であるという状態をつくりだすことが戦略なこの点を全く考えずに「大市場ならば沢山売れる」と信じ乙み、東京や大阪に営業所をつくり、三一人や五人の人員を配置しても戦いに勝てるわけがない。また、むやみに戦線を拡大し戦場を広げても、その一つ一つの戦場において敵より強くなければ敗戦の憂き目を見るだけなのである。
以上のことを、よくよく認識して市場戦にのぞまなければならないのである。当然のこととして戦略地域の決定とその優先順位、その地域での作戦は、(1)我社で陥1の地域でまず有利な戦いを進め、圧倒的な優勢を確保する。その目安は占有率四十%以上である。
qL
において優位に立ち、この優位性をフルに発揮して敵を叩き、かなり善戦してはいるが、まだ不十分な地域には新戦力を投入して先ず兵力陥1の地位を戦いとるo
mw まだ我社の勢力の弱い地域では、弱者の戦略に徹し、敵の弱点を衝いてその部分での戦果をあげ、これを次第に広げてゆく。
仙川我社の戦力が限界的な地域には、面戦略はとらず、拠点戦略とし、その拠点を守り抜く。つまり、完全な守勢である。
同我社の力の及、ばない地域には、兵力を投入するという愚をおかしてはならない。ムリにどこかの地域から兵力を引抜いて投入しても、それは戦力の消耗を来すだけである。それだけではない。兵力を引抜かれた地域において思わぬ大きな損害をうける。ということを心得ておかなければならない。
右のような考え方により、いよいよ戦略地域毎の格付を行なうのである。戦略格付は、現在の地域別占有率をべlスとして、占有率を確保する地域、占有率を優先的に高めたい地域、現状維持、成行きまかせ、手が廻らないため地域戦略でなく拠点戦略をとらざるを得ない地域、撤収、放棄などの戦略を決めていくのである。格付の一例を次に示してみよう。
(7) (6) (5) (4) (3) (2) (1)
Eヨ
放 撒 拠 成 安 重 耳支
重
点・・・・・・・・・・・:占有率四十%以上
点::::::占有率二十五%以上
定::::::占有率十%以上で現状維持でいく
円J
nHU
行
き::ji--占有率が下がっても止むを得ない地域
点・ji--:・現在の重要拠点だけを守り、地域戦略を展開しない地域
収・・・・・・・・・総引上げ
棄・・・・・・・・・・・・完全に捨てる地域
というような要領である。これを符号化して斗〈クA ψ ・66・6ψ というようにしてもよい。重点地域だが、一一一年後には四十%以上にしたい地域は4ψ に格上
げした上に、戦略(ストラテジー)のSをつけてクハ戸とする。占有率が二十%程円、υで、早急に二十五%以上にしたい地域はAに格上げしてパヂとする、というようにするのもよい。この戦略格付に基づいて、これを推進するための投入人員がその次に来る。もしも一人投入できない時は0・五人ということになるかも知れない。0・二人という場合もあろう。投入人員は、最重点・重点については必ず競合する敵の二倍の人員を投入する。
ギリギリでも一・五倍は絶対的に必要である。もしも敵に勝る投入人員を投入できないならば、地域を縮小してでも倍率を確保しなければならない。どうしても敵に勝る人員を投入できないならば、それは戦略格付としては重点ではない、〉」い・っこ口『Uとになってしまうのである。戦略格付だけは重点で、必要人員を投入しないのでは、格付自体が無意味になってしまうのである。
次の占有率目標は、三年間は最小限きめておく必要がある。目先一年間だけの占有率目標と、一二年間の目標を設定するのとでは、社長の考えに大きな違いが生れることを知らなければならない。
次の戦略方針は、箇条書で簡潔に記入するのがよい。それは、商品・得意先のスクラップ・アンド・ビルド、重点商品、重点得意先、キャンペーン、現物見本、試食販売、マネキン、配送、フォローなどについて、どのような差別化を行なうのか、ということを記入するのである。戦略の詳細については拙著「経営戦略・利益戦略」
「販売戦略・市場戦略」篇などを参照していただきたい。但し構想書に詳細を書く必要はない。「何をやるか」だけでよい。
次の販売促進については、訪問回数を記入する程度でよい。
蛇口作戦は、社長・営業所長については年間の日数、担当者については一カ月一人当りの訪問件数でよいだろう。以上でザッと説明したが、これは初めは決定事項を書くのではなくて、ク腹案ψ
備考欄には、上記以外の必要と思われる事項||備忘事項とでも考えればよい。というような感じで記入すればよい。これを何回も見直したり、プロジェクト計画などとの相互チェックなどで’自由に修正を加えるのである。
計画書というものは、総べてこのように初めに決定ではなく腹案を気軽に書きこみ、これを叩き台としたほうが優れたものができ上がるのである。家を建てる時に、頭の中だけに間取りを書いていて、これを検討しようとしてもうまくいかないものだ。とにかく間取図を書いて、これを眺めながらあちこち直したほうがよいのと同様である。
次に、全く新しい商品の市場戦略についての考え方を述べよう。
この場合には市場戦略構想書よりも白地図に書込みをした計画書のほうがピンとくる。
広島市のL社で浴用機器を製作発売した時である。商品も市場も、L社としては全く初めてであった。完全な新規参入である。当然のこととして、市場戦略は徹底した集中主義をとる必要がある。
戦略展開に先立って、市場の調査をした。第一次調査では全国的な市場調を行ない、品種別売上高の推移、主要メーカーの売上高、メーカー毎にその流通機構と流通マージンなどを調べた。
業界全体のアウトラインをつかんだ上で、第二次調査は県内の流通業者(問屋)、メーカーの営業所と陣容などであった。
それらの調査をふまえて、いよいよ戦略の樹立である。それは、第一次から第一次とした。その戦略方針は、
第一次作戦は、広島市とその周辺地域に限定し、集中的な蛇口作戦を展開する。占有率目標は当初は設定しなかった。
第二次作戦は、第一次作戦地域において二十五%の占有率を実現した時点で、
第二次作戦地域として広島県全域に販売活動を展開する。この場合に、第一次地域の戦力を割いてはならない。(戦力を割くのは、四十%を確保した時に検討する) 。。
第三次作戦は、第二次地域において二十五%の占有率を確保した後に県外として山口県と岡山県の何れかとする。(この場合にも第二次地域の戦力を割いてはならない) 。というものだった。
この戦略方針に基づいて、広島市とその周辺地域の販工店(販売と施工の両方を行なう店) のローラー調査を行なった。総数百八十店ほどであった。業者の名簿を入手し、市街地図で所在地を確かめ、先ず自動車を使つての予備調査をした。それは「店舗の外観を写真にとる」というものだった。乙の写真と目視の感じによって検討を加え、半数をふるい落とした。残った約九十店について戦略推進責任者である常務が訪問して挨拶を行ない、さらに数店のふるい落としを行なった。残った店に対して、いよいよ週一度の定期巡回訪問が開始された。
第一カ月目に数台の売上げがあった。翌月は十数台売れ、月毎の売上げに凹凸はあったが半年後には累計で百台を超えた。これは私にとっては思ってもみなかった実績であった。私の予測では、三カ月目に二1三台売れ、六カ月後に累計で二十台を超えればよいと思っていたからである。
しかし、社長や担当常務にとっては大誤算と感ぜられたのである。担当常務は、『先生、先発業者の壁がこんなにも厚いものとは思わなかった』という。私は~『凡円L談じゃない、望外の好成績だ』といろいろ説明するが、どうしても納得してもらえない。
社長は『一倉さん、広島だけではあまり売れそうもないから大阪に営業所を出したいが:::』といい出すのである。私は『社長、地元の地の利のあるところでさえ、
この程度だというのに、地の利もなく、コネもなく、ネームバリューもなく、しかも広島よりも激戦地の大阪で売れる筈がないのですよ』と押さえるのが大変である。私は、市場戦略のお手伝を依頼された時に『三年間はどんなことがあっても辛抱して下さい。それを覚悟されているのならお手伝しましょう』と申しあげて、了承してもらった上で始めたのに、半年でもうこの有様である。
そのうちに社長は『岡山市に知り合いの業者があるので、そこと話をつけて扱つてもらうごとにした』とか『今度、福岡市に営業所を出しました』とか、私に何も事前に話がなく、やたらに作戦地域の拡大である。
これでは市場戦略も何もあったものではない。作戦地域を拡大することだけが売上げ増大の道であると思いこんでいて、私の話など。馬の耳に念仏。なのである。いる。広島市とその周辺だけで三年でも五年でも辛抱しなければならない厳しい現
これでは市場戦略もへったくれもない。成功など夢と消えてしまうのは目に見えて実など全く知らずに、いたずらに地域を拡大してもダメなのだ。いくら説明しても分ってもらえない。というよりは聞く耳がないのだ。私との事前の約束など全く反故となってしまったのである。私は手を引くより外になかったのである。
この会社は下請加工業であるが、下請加工業は収益性が悪く、そのために収益性のよい自社商品を持ちたいという強い願望を持っている。L社の新商品もとのようなことから開発されたものであるが、下請加工業者には、事業活動で一番難しく、一番苦しいのは販売であるということが分らない。品物は作りさえすれば売れていくものだと思い込んでいるのである。
だからこそ、私は加工業で自社製品を売りたいという会社から依頼を受けた時には『三年間冷飯を喰うどころか、水を飲んで辛抱しなければならないが、その覚悟があるか』と質すことにしている。そして、その返答は『我慢する』というのだが、重ねて『いままで我慢できた会社はないのだ」というと『うちに限ってそんなことはない。どんなに辛くとも我慢する』といwつ。しかし、この我慢ができた会社は二カ月S社に至つては、事前調査の段階で『とても競争が激しくてダメだ』と断念
U 社しかない。O社は年、T社は六カ月、G社は三カ月、A社も三カ月、N社は二してしまった。
それに比較して流通業者や自社製品をもっている会社は辛抱強い。二年くらいは大抵の会社は辛抱する。そして成功する。I社に至つては、七1八年も辛抱した。今ではそれが収益の半分を賄う程になっているのである。
これらの会社で私が勧告した市場戦略は、加工業者と全く同じ。一点集中作戦。なのである。
下請加工業者にはいささか失礼だが、販売の苦しさを知らずに親会社にオンブして育ってきたために、ク鵬抜け。になってしまっている、といいたいのである。
新市場進出の難しさは、その市場に対する実績が文字通りタゼロ。だということである。それだけでも大変なごとだというのに、その市場には既に先発業者がガッチリと根を下ろしているのだ。この事実を多くの社長は全く見ようともしない。
「我社の進出市場には先発業者はいないのだ」と思いこんでいるのではないかとしか考えられないような行動をとる。その好例が、殆どの社長が設定する新市場に対する超過大の売上目標である。冗談じゃない。そこには既存の業者が長年の努力による地盤を築いている。それに反して、進出する方は完全なク新参者。なのだ。占有率クゼロクの業者が大敵に戦いを挑むのだ。ちょっとやそっとのことでは相手はビクともするものではないのだ。半年や一年は売上げなど期待するほうが間違つている。たとえ僅かでも売上げがあれば、それはむしろ大きな成功なのである。
これが社長には分らない。セールスマンの努力が足りないと叱りつける。それだけならまだしも、セールスマンの能力に疑いを持ち始める。ごんな扱いを受けるセlルスマンこそク受難者。である。セールスマンは社長をうらみ、信頼感を失っていく。ついには優秀なセールスマンが自信喪失してやめていく。このようになるのは総べて社長の責任である。
たとえ売上げは少なくとも、ジリジリと上がっている限り有望なのである。ク新参者。ク限界業者。という自らの立場をよく自覚し、敵に勝る資源と努力を投入し続けるのである。
難しく、苦しく、そして大切な戦いである。決して社員まかせにせず、社長自らの指導がなければならない。自ら開拓訪問を行ない、情報を検討し、敵の弱点を研究してこれを衝く作戦を練る。強い敵に勝つ道は、常に敵の弱点を衝き、この点に敵に勝る資源を集中的に投入すること以外にはないことを肝に銘じて根気強く推進することなのである。
新市場開拓ほど苦しいものはない。これが現実の姿なのである。この現実を全く認識せず、安易な考え方で初めから大きな期待をかけるのでは、絶対に成功することはあり得ないのである。
新市場で成功する道は、一に我慢、二に辛抱、三に根気、とでもいったらいいかもしれない。目先の成果が上がろうと上がるまいと、そんなことは切考えずにお客様のところを廻り続けることである。それが本当の意味での成果をあげる道なのである。
A社でその典型的な例があった。A社は住設機器のメーカーである。
A社の市場は、不思議なことに大部分が遠隔地で、地元は殆どクゼロ。に近かった。私は、地元がこれではいけないと感じたので社長に勧めて地元作戦を展開した。実質的には新地域であった。
作戦は、会社を中心とした半径十キロメートル程の完全な一点集中方式で、専任つdセールスマン一名で、選定した販工店に対して「週一固定期訪問」を実施した。
三カ月たっても毎月の売上高は十万円以下であり、六カ月たっても売上げはごく僅かしか伸びなかった。社長は、こんなととでは止めたほうがよいといい出した。ムリもない。社長はよく我慢したほうである。しかし、乙こで投げ出しては何にもならない。私は『成果が上がるのは三年目だ。まだたった六カ月だ』と気合を入れた。
一年たっても、徐々に売上げが上がってはいるの、だが、一カ月三十万円ほどが最高だった。
社長には『あと一年の辛抱だ』と説得につとめる。社長は内心はムダと思っていただろうが、よく我慢してくれた。
一年半を過ぎた時、突知として売上げが急上昇しだした。毎月五百万円ベlスである。この頃になると、セールスマンは業者と親しくなり、先方から様々な情報を提供してくれるようになった。今までの苦労が立派に報われたのである。三年目も順調な売上げが続いた。もう大丈夫である。タ石の上にも三年。とは昔の人はいみそれにしても立派だったのは担当のセールスマンである。よくも一年半も殆ど売じくも云ったものである。
れない訪問先を廻り続けたものである。これだけのブンン。の強いセールスマンは、そうザラにいるものではない。まさにA社のク宝。である。
このセールスマンは、この実績によって営業会議でも積極的に発言するようになった。やはり実績は強い。社長は、「このセールスマンに私は叱られています。「社長は何故僕にやらせたように他の人にもやらせないのか」というのです。社長もかたなしです』と嬉しそうであった。
最後に、産業機械の場合の戦略地域の決定はどうしたらよいのかという点が残つた。これについて考えてみよう。
プラント類や一基数千万円以上もするような大型機械の場合は、ユーザーの数が少ないから全国を一つの地域と考えて、ユーザーの一社一社を拠点と考えればよい。市場戦略構想書はク地域欄。を。会社名。とすればよい。
中小型の機械類は、地域と拠点を組合わせて考えればよい。「地域か拠点か」というようなタ二者択一。式に考える必要はない。ク二者択一。という考え方は、とらわれた考え方であって、これで考えると、どうしてもうまくいかないために『どちらがよいのでしょう」という質問が私のところに来ることになる。こういうのをタ石頭。という。もっと頭を柔らかくして、自由自在に考えることである。何も方式にとらわれることはない。要は「やり易い」ような考え方をすることである。
石頭では競争に敗れる危険が大きいのだ。石頭だと、状況がちょっと複雑になったり、変化が急になったり、例外的なことが発生したりすると頭が混乱してどうしたらよいか分らなくなるのである。
方式ややり方など、どうでもよいのだ。、単なる手段の問題なのだ。自由奔放に、その時々の状況に応じて変幻自在な手をうち、その時々の最も適切であると思われる手段方法を選べばよいのであることを心得ていなければならない。
戦略地域内の流通業者(又はエンドユーザl)を選定し、戦略格付を行なう
まず最初に考えなければならないのは、主たる敵を叩くには、「どんな問屋又は小売店を選、ばなければならないか」ということである。
問屋を選定する場合を考えてみよう。市場戦略的に見た場合に、クローズドテリト(地域内一社) か、ということにか、オープンテリトリー(地域内複数社)なる。
クローズドテリトリlの場合は極めてスッキリしている。問屋とすればプライドを満たされてご機嫌である。我社の商品同士のパッティングは起らない。だからといって安心はできない。問屋が懸命に売ってくれる保証があるわけではないし、値崩れが起らないわけでもないからである。
既に「販売戦略・市場戦略」篇のところで述べたように、問屋は我社に忠誠を誓つているのではなく、自らの会社に忠誠を誓っているのだということを思いだしていただきたい。問屋が売る気を起すのは、問屋(又はその中の事業部、営業所という場合もある) の売上高の一%以上になった時である。個人の好みや我社との人間関係とも関連するのだ。
値崩れも、我社の商品同士のパッティングはなくとも、他社との競合があることを忘れてはならない。
さらに問屋には得手不得手がある。デパートに強いがスーパーは弱い、都市はhE31 限巾RV-』日vqE、主L・刀君立ロl己uqL というような場合がかなりある。このような場合には、弱いところがソックリ抜けて補いようがない、という事態が起きる。
長期的に考えた場合には、その問屋の盛衰がある。代替りによる方針変更もある。こうした変化に対しても、クローズドテリトリlは弱い。
さらには、大問屋の場合には、各地に支店や営業所がある場合には、そちらで売られたら、そこには既に我社の得意先があって、ここでクローズドテリトリーが崩れる。といってこの問屋を避けたら、他に適当な問屋がない、というような様々な問題をハラんでいるのがクローズドテリトリーである。
だからといって、クローズドテリトリーが悪いというのではない。非常によい場合もある。
M社は高級階段セットという強い商品をもっている。これを完全なクローズドテリトリl方式で売って立派に成功している。それは、発売当初から明確な方針を出していたことによる。
M社では予めの市場調査によってテリトリ1の設定を行ない、どの問屋と取引するかを決め、その問屋へ話を持ちこむ時には決して社員まかせにせず、必ず社長自ら訪問する。そして先方の社長に面会する。ここで社長対社長の話合いが行なわれる
商品の説明とともに、相手に在庫負担||つまり資金負担を負わせないということである。現物見本だけを置いてもらい、売れた時に電話してもらえば、即時宅急便で送るというのである。問屋にしたらこんなよい話はない。「お客様の立場に立つ」とはこういうことをいうのだ。そして「テリトリーとしては、ここに限定してもらいたい。これよりハミ出ると他の得意先に迷惑がかかる。そのかわり、あなたの会社のテリトリーには他社は一切入って来ないようにする』ということを初めからハッキリとしておくのである。これは問屋に好評で、非常にうまくいっているのである。方針の強昧、そして明確な意思表示の強昧である。この二つが明確でないのが我が国の大かたの会社の弱昧なのだ。社長が市場戦略に関する何の方針も出さず、販売部門に「任せる」というのでは馬鹿殿様といわれでもいたし方がないのである。
オープンテリトリーは、そのメリットとデメリットがクローズドテリトリ!と反対になる。
流通業者はテリトリーを独占できないので面白くない気持を持つ。同士打ちが起り、値崩れも発生する。ローカルの場合は地場の業者と東京や大阪の業者の支店営業所などが三つ巴・四つ巴で争うこともあり、メーカーの社長がこれの調整をしなければならないし、業者の文句も聞かなければならない。
その半面、業者の強昧を生かして市場活動の穴を少なくすることができる。お役所に強い業者と民間に強い業者を組合わせる。都市部に強い業者と郡部に強い業者の両方と同時に取引できる。デパート・スーパー・専門店などそれぞれに強い業者を持つ、ということが可能になるというように自由度が高くなるのは大きな強昧で中のす匂クローズドかオープンかは一概にその優劣はきめられない。要は社長の状況判断と方針によって決めるものである。
なかんずく、我社の市場戦略方針に基づき、主たる敵と戦うときにどういう体勢がよいかということになる。
強者の場合には陥1を選ぶことができるが、弱者の場合にはまずは不可能だ。弱者の場合に考えられるのは、陥1に強いライバル意識を持つ陥2ということである。もっと弱い場合には、もっと下位でないとダメな場合もある。強大なメーカーが一位から三位までの業者を使っている、というようなケlスもある。様々なケ!スがあるけれども、どのようなケlスの場合にはどんな業者と組んだらよいかということについてク正解。があるわけではない。社長の判断によって決めるより外にはないのである。
その判断の基礎になるのは、「戦いを有利に進めるには、どうすべきか」ということ以外にはないのである。
いったん間違うと、修正するのは容易なことではないだけに、社長は市場戦略についての十分な素養を持っていなければならず、十分な情報が必要である。といって十分な情報など手に入ることは、まず不可能である。そのような状況の中で決断を下さなければならないのが社長というものである。
蛇口作戦を展開する
蛇口作戦乙そ市場戦略の決め手である。ク画龍。における。点崎。である。如何なる戦略を立てようと、コマーシャルに多額の費用を投入しようと、蛇口作戦で敵に後れをとったのでは、最後の勝利は覚つかないと思わなければならない。蛇口作戦において、敵に勝る兵力を投入することこそ勝利を不動のものとするのである。
その兵力とは、セールスマンの数ではなくて、特定のテリトリl又は特定得意先における訪問回数である。訪問回数において敵に勝ることなのである。それも単にセールスマンの訪問回数ではなくて、社長・役員・管理職・セールスマンの訪問回数の総計である。
社長は、手に入れたい占有率を獲得するために、自ら蛇口作戦の方針を決め、計画をたてて指導を行なうのである。セールスマンの自由意思に任せるが如きは市場戦を全く知らない卜lシロl社長である。販売が戦いである限り、作戦計画に基づく訪問が当然である。戦場で各人が自由意思に基づいて行動したら、それはク烏合FO の衆ψ になってしまい、戦いも何もあったものではないのである。セールスマンに行動の自由はないのである。
蛇口作戦で絶対的な重要度をもつのは、まさに社長自身の蛇口訪問である。私は、会社のお手伝をする時に、真っ先に社長にお願いというよりはタ強制。をするのが社長の蛇口訪問である。
この「社長学シリーズ」で、何十回となく繰返し繰返し強調しているのが社長の蛇口訪問であることは、絶対的な重要度を持っているからである。蛇口訪問をしない社長は、私の勧告の意昧を全くといっていいほど理解できないからである。
社長がお客様のところを廻らないで、セールスマンの報告だけではお客様の要求も、我社の欠点も、敵の情報も、ごく僅かしか得られない。セールスマンに次元の高い情報ーーー将来の方向とか現在の問題点などは絶対に話してはくれないのだ。そのセールスマンの生態について前章で述べたように、どこで何をしているのか分つたものではないのだ。これはセールスマンの行動云々というような次元の低いことではなく、市場戦略に大きな支障を来していることだと理解しなければならないのである。
強制によって仕方なく蛇口訪問をしたT社長は『一倉さんが蛇口訪問をせよという社長が蛇口訪問をしないのでは、市場戦略も何もあったものではないのだ。私の意昧が初めは全く理解できなかった。「何をいっているのだ」というような気持で、試しに廻ってみようと思って蛇口訪問を始めたのですが、廻ってみて博然としました。私が何も知らないということがよく分りました。「?」んなことでは我社の売上げが伸びないのは当然だ」と痛感させられました』と。T社長は夢中になって蛇口訪問を続けた。正直なもので、売上げはたちまち上がりだしたのである。それにはT社長自身がピックリしていたのである。
社長の蛇口訪問一回は、セールスマンの百四の蛇口訪問に勝る
ということを、私は社長の蛇口訪問から教わるのである。その意昧は、単に売上げが増大したり、お客様との人間関係がよくなることだけではなく、次元の高い数々の情報を得ることができるからである。
蛇口作戦を効果的に行なうためには訪問計画がなくてはならない。その作り方を述べよう。
まず第一に、訪問先の格付である。これは得意先別売上高ABC分析表を使うと便利である。格付は三段階で行なう。
第一段階は、単純に売上高による格付である。売上金額に応じて高い方からクラス分けを行ない、パM ・A・B・C- Dψ などとすればよい。
第二段階は一社一社を検討し、クラスの格上げ、格下げを行なう。現在売上げは多いがあまり伸ばしたくないとか、売上げを落とすべきだという得意先は格下げ、反対に戦略的にもっと伸ばさなければならないならば格上げである。
第三段階は、敵を、どの得意先で重点的に叩くかという戦闘目標の決定である。この得意先は戦略記号であるクsoを格付記号の頭につける。品。40という要陥ーだが敵の力もあなどれないとか、我社が陥2という領である。重要得意先で、ような場合は当然クSψ でなくてはならないのである。
格付ができたら、格付に応じたク定期訪問基準表。をつくるのである。〈第什表〉がそのクヒナ型。である。
訪問回数は格付毎に設定する。それぞれのランクの会社に、社長をはじめ営業所長、担当者別に何回訪問が基準であるかを決めたものである。このク基準。というのは、あくまでも全社的なものであって、乙れをそのまま総べての訪問先に適用するものではない。
実際の訪問回数は、個々の訪問先について市場戦略面からの検討を加えて修正を行なうo fAOランク以上は、十分なサービスを行なうのにその回数でよいか、どうか。クueなどでは、毎日訪問の必要がある大手得意先があるかもしれないし、クsoについては特に「必ず敵の二倍以上の訪問回数」を確保しなければならないという点からチェックを行なわなければならない。これをやらなければ。Sψ をつけた意味がない。集中効果の法則を、これによって実現するのである。
ところで、大会社や官公庁のように一社一庁で数人の人に会わなければならないような場合はどうするかという乙とになる。こういう場合には訪問回数ではなく、一人一コlルとしてコール数で示したほうがよい。そして、時間的には三コlル一社一人でよい会社の一社分と見合う見当である。
また、訪問先は得意先別ABC分析表以外に小売店がある。問屋やスーパーの本っ“ 部は得意先ではあってもタ蛇目。ではない。蛇口のクかなめ。である。
蛇口とは、この小売店のととであるから、問屋・スーパー毎に定期訪問する店をリストアップしておかなければならない。スーパーの場合に店舗フォローの訪問は問題ないが、問屋の場合には簡単にいかない場合がある。
それは、小売店訪問を喜、はない問屋があるからだ。その理由は、小売店を教えると直取引される危険があるからだ。これは問屋の狭量のせいではない。そういうことをする心ないメーカーが多数存在するからである。このようなメーカーに、問屋は煮え湯を飲まされた経験を多く持っているのだ。ではどうすればよいか。社長が問屋の社長に会って小売店訪問の趣旨をよく説明し
『直取引は絶対にしないことを約束する。必要とあらばク誓書。を入れる』といって説き伏せるよりない。これで了承してくれればよいが、そうとばかりいかない場合がある。このような時には、その問屋の蛇口訪問はできないのはいたし方ない。また、絶対にしてはならない。いったんは引下がり、あとは機を見て実例でもあげながら説得を試みるより仕方がない。説得が成功しなければ、それは我社の信用がまだ低いのだという自らの会社の反省の資とするのが正しい態度である。
右のような修正が一通りできたところで一カ月間の総訪問回数(大会社などは円L一一二Jlルを一回とみなす)を集計し、これをセールスマンの人数で割って一人カ月当りの訪問回数を算出してみていただきたい。この数字を見たT社長は『これだけの訪問回数を確保して、なお一人当りの訪問回数はタッタこれだけなのですね』と驚いていた。T社長の言をまつまでもなく、多くの会社で意外に少ないという乙とが分るのである。実績と比較してみると、実績の少なさに「今までうちのセlルスマンは何をしていたのか」というのが、いつわらぬ感想なのである。
訪問回数が少なすぎると思われるなら、ここでさらに訪問基準を修正するのである。多いか少ないかの基準としては、一人一カ月二百回というのが大よその基準であろう。遠距離の場合には、訪問可能な時間に対して割付ければよい。
-社の基準は一カ月二百回であるが、最高記録は五百四十回である。乙の記録は、毎夜遅くまでかかり、休日も休まないというスタミナとファイトの固まりみたいなセールスマンの記録だから、一般的な基準になるわけではないが、可能性の示唆にはなる。
いささか事情が違うが、ニッサンで十五年間トップセールスの座を守り続けた奥城良治氏の自らに課していた目標は一日百軒である。
年三百台、一日一台平均の売上げで、この記録は、自動車一台売る毎に作らなければならない面倒で時間のかかる書類作成に費やす時間を差引いて考えると、その凄さが分るのである。しかし、これも一般的な基準にはならず、回数自体は参考に
ならないが、貴重な教訓を含んでいる。その教訓とは、売上げを増加するには訪問回数を増加することであるというものである。
この法則は厳然として存在する。ウソだと思ったら、あなたの会社のデlタをとってみていただきたい。訪問回数の多いセールスマンのほうが売上高が大きいということが確認できる筈である。これはデlタを見るまでもなく帰社時刻が遅く、「よくやっているな」という感じのするセールスマンは売上高が大きいことに気がつく乙とだろう。
このような実例を数多く見せつけられている私は、訪問回数と売上高との関係に、ある法則があることに気付いたのである。これを私はク訪問回数の法則。と名付けている。それは二つある。
第一法則
セールスマンの売上高は過去二年間の訪問回数に比例する
第二法則
特定会社に対する競合会社の売上比率は過去二年間の訪問回数の二乗に比例する
というものである。ここにもク二乗法則。があるのだ。
この法則で注目しなければならないのは、「過去二年間」ということである。私の経験では、一年半ごろから急に売上げが上がりだし、一一年後にハッキリとした実績が現われる。三年目からは、この収穫を確実に享受することができるのだ。昔の人がク石の上にも三年ψ と云ったのは、このことを指しているのだな、と感ぜられるのである。訪問はお客様との人間関係を良くし、回数が多いのはその熱意をお客様が買ってくれるのであることを忘れないでもらいたい。だからこそ、ク集中効果の法則。が成立つのである。
その集中効果の法則を戦略方針に基づいて実現するものが、このク定期訪問基準表。に基づく全社的な活動なのである。社長は、自らの意図とこの基準表の意味するところをよくよく役員以下セールスマンに至るまで徹底させるための繰返し繰返
市場戦II鳴を展開する
しの説明と説得を行なわなくてはならないのである。
特にベテランセールスマンは、長年やってきた自らの訪問法が正しいと信じているだけに、説得には根気を要するのである。根負けをしたら市場戦に負けてしまうことを心得ていてもらいたいのである。とにかく、強制的に実施を要求しなければならない。その結果は、社長の要求なるが故に、総べて社長の責任であることをよく納得させなければならない。
社員というものは、いつも結果の責任を上司から追及され続けているこれは全くの誤りであり、その誤りの責任は百%社長にある)だけに、自分のやり方に干渉されることを極端にきらい、自分のやり方を変えようとはしないからである。セールスマンを説得できなければ、市場戦略は最後のところで崩れてしまうことを忘れないでもらいたいのである。
この基準表は、三カ月毎に見直す必要がある。やってみると色々なことが分ってくる。それにつれて基準表も修正しなければならない点がでてくるからである。基準表だけでなく、訪問先の格付にも修正しなければならないことも起る。
要は実情とその変化に合わせて基準や格付を変えることである。大切なことは、いつでも常に基準があり、基準通りの活動を行なうことである。そして基準が実情に合わなくなったら、基準を修正してその通り行なうということである。「基準が実情に合わなくなったから基準通りやらない」というのは間違った考え方である。というのは、これでは各人が勝手な行動をとることになって、まさにク烏合の衆。である。基準通りやってこそ基準の善し悪しが分る。善し悪しが分らないのでは基準の直しようがない。もしも基準が悪いのであれば、その通りやれば悪い結果が生じ、基準が悪いーーそしてどこが悪いかが明らかになる。悪いところが分れば、どう直したらいいかが分るのだ。だから基準の直しようがあり、その結果として基準がより優れたものになる。この繰返しで基準がだんだん善くなってゆくのである。
基準書の特記事項の中に、「役員・非営業管理職の訪問基準は方針書による」という一項がある。この点について少しく説明しよう。
これらの人々は営業関係ではないからといってお客様の訪問をしなくともよいのではない。
H社にお伺いした時に、社長以下役員も非営業部門の管理職は全然お客様訪問をしなかった。私はそれらの人々にお客様訪問をさせるべきだと勧告した。お客様を訪問しないのでは、お客様の要求が分らないから、どうしても我社の立場が優先してしまう。これは極めて危険なのである。役員会ではお客様の要求が分らずに、営業担当重役だけの話から判断を下しているのだということだから、とんでもない誤った決定をするに決まっているのである。
私の勧告に従って、社長は早速お客様訪問を行なって自らの認識の誤りを悟ったが、役員のお客様訪問については営業部門からクレームがついた。『お客様のところへ行って大きな態度をとるのでお客様の感情を害してしまう。訪問をやめてもらいたい』というものだった。お客様とは問屋と小売店のことであるが、問屋は我社の家来だと思っていたからである。そしてH社は販売不振に泣いていたのである。
それから二年、H社長にお目にかかった時には、H社は業績を回復しており、しかもライバルとの格差を大幅に広げていた。役員会の様子をお伺いしてみると、最内L 近の役員会は、役員のお客様訪問の効果で、極めて活発で適切な意見の出る役員会に変わっているということだった。
H社の基準は
製造部長一1四月を除き、毎月二十社以上
総務部長毎月二十社以上
経理部長決算期の三カ月を除き、毎月十社以上
開発部長毎月三十社以上
となっている。全社をあげてのお客様訪問である。次は訪問計画である。〈第吃表〉をご覧願いたい。
まず第一には、計画は一カ月単位でなければならないということである。訪問基準が月単位になっているのと同様に、一カ月単位が最もよいからである。。週間訪問予定。なんていうのは、一人一人が勝手に訪問先を決めて、というよりは適当に訪問するかどうか分らない社名を書いたものにしかすぎない。全く論外である。
表の格付、訪問先、訪問回数は必ず社長が決めなければならない。訪問回数は既にのべたように、市場戦略的な修正を行なったものである。日付欄にO印で囲ってQd あるのは休日、口で四つであるのは調整日である。調整日というのは「訪問先を決めておかない日」であり、訪問予定日に何かの都合で訪問できなかった訪問先があった時に、この日に訪問をするという、いわばクッションに使う日である。この日がないと、訪問できなかった会社の訪問の取返しができないだけでなく、訪問回数不足会社が多くできて、計画そのものの意昧が失われてしまう危険があるのだ。計画どおり訪問しないのでは、市場戦略それ自体が崩れてしまうのである。調整日は一週間に一1 五日くらいでよい。
訪問日は、定期訪問であるから、月十二回といえば週三回、月四回というのなら週一回というようにする。弘以上の得意先については訪問の曜日をきめる必要がある。月八固なら月・木とか火・金という要領である。これを決めておくと、先方でこちらのぺlスに合わせてくれることが多いからである。今日、用事ができても『明日の訪問で間に合うから』とか、用事で留守になる時に「明後日にA社のB君が来る筈だから、こういう伝言をせよ』というようなことがあるのだ。
計画表の記入法は、訪問計画日の計画欄にO印をつける。展示会が十日・十一日の二日間行なわれるのなら、この二日間を通した線を引いて、その上に展示会と書けばよい。
訪問計画日の記入は、毎月決められた日までに、初めは管理職が部下を集めて記入法を説明して記入させる。なれてくれば担当者に記入させてよい。出来上がった計画書は、管理職がまとめて点検し、印をおしてきめられた日までに社長に提出する。初めのー二回は社長が点検印をおして返すようにする。なれできたら必ずしも社長に提出しなくともよい。管理職の責任で作成させるのだ。
実績の記入は、実績欄に丸印をつけ、計画欄の丸印の日付の早いものから矢印で実績欄の丸印と結ぶ。こうしていくと、一カ月たった時に計画欄の丸印から矢印が出ていないのは訪問が実施されなかったことを表わしていることになる。また、計画以外に訪問した場合は、訪問日に最も近い訪問計画日の丸印から矢印を出せばよい。つまり一つの丸印から複数の矢印が出ることになる。
蛇足ながら書添えると、訪問の丸印は必ず訪問した日に記入するということである。K社での例だが、計画日と訪問日がピタッと一致しているのでおかしいと思つて聞いてみると、訪問日にではなく計画日と同日の欄に記入していたという。社員というのは、乙の例に見られるように、自分の勝手な判断でどんな間違ったことをやっているか分らぬ人種であることを知ってもらいたい。「こうやっている筈だ」
と思っていると、とんでもないことをやっている危険があるのだ。ある会社で年計グラフを書いてもらった時に、左目盛と右目盛ということを教えたら、右目盛の売上げは右側から左へと書かれたのには、こちらが面喰らってしまったことがある。何をやり出すか分らぬのが社員だということを心得ておかないと、社長の指示を自分流に解釈してとんでもないことをやりかねないのが社員なのである。訪問実績の報告は、週間報告として管理職に提出させる程度でよいだろう。月過ぎたら、担当者毎に綴じ込むこと。これも「よきに計らえ」式にやると社員は
全員を一つのファイルに綴じ込むようなことを平気でやる。これでは訪問効果の測定や個人毎の訪問指導、次回訪問計画のチェックなどに不便である。というのは、いろいろな突発仕事があって訪問は計画どおりできないことがかなりある。これはいたし方ないとして、その対策をとらないと市場戦略の遂行ができなくなる。それは、主要得意先に対する訪問回数の不定である。ノlチェックでいると、担当者は次第に勝手なことをやりだす。つまり、敷居の高い訪問先や遠方の得意先は手抜きをして訪問しなくなるということだ。ク敵に勝る訪問回数。こそ市ないのだ。
場戦に勝つ道なのに、それが実施されないのでは。戦いψ もなにもあったものではだから、つAψランク以上の訪問先で訪問不足を起した時には、翌月は優先的に
市場戦|格を展開する
訪問し、一一カ月続けて訪問不足を起してはならない」という指導をしなければならない。この時に全員存二つの綴りにファイルしてしまったのでは不便である。訪問効果の測定も三カ月毎には行なう必要がある。チェックというものは、マ、ノツlマンで一社一社について行なわなければ効果が少ないのだが、この時も担当者別にファイルされていたほうが便利である。
もう一つ大切なチェックを紹介しよう。F社長いわく『訪問実績の検討をしたところいろいろなととが分りましたが、訪問計画を忠実に実行しているセールスマンと実行していないセールスマンを比較してみたら、新人は忠実に実行しているが、ベテランはどうもあまり忠実ではありません。そして忠実に実行している新人の方が売上げの伸びがよいのですよ』と。
これはK社だけではない。どこの会社でも全くといってよいほど閉じ現象が起つているのだ。とこに、4元上、げは訪問回数に比例する。という法則が厳然と存在し
だからこそ、社長は「何が何でも計画通り訪問させる」ことを強力に推進する必4q ていることが分る。要がある。ここに市場戦のク成否の鍵。があるのだ。
定期訪問も実施せずに、広告宣伝にいくら力を入れようと、金ばかりかかって成果のほどは知れたものなのである。そして、阿呆な社長ほどこのことを知らずにキャンペlンが販売促進の決め手だと思いこんでいる。まさに。天動説。の固まりである。敵に勝る訪問回数を確保してこそ、キャンペーンが本当に効果的なのである。
ところが戦いの成否の鍵を握る訪問が、社長や営業所長の目の届かないところで行なわれているというのが、これまた現実の姿である。本当のところ、訪問報告は百%の信頼性はない。特にベテランや要領マンの報告の信頼性は低い。この問題をどう解決したらいいのだろうか。
それは、前章の「セールスマンの生態を知れ」のとごろで紹介したように、時々セールスマンと同行する。営業日報(後述)を出さないもの、内容のおかしいもののチェックなどを行なっているうちに尻尾をつかむことができる。
その時は、目の玉の飛び出るほど叱らなければダメである。それがはばかられるのなら、クドクドと時間をかけて最も下手くそな叱り方をする。こうすると叱られつdる方ではウンザリしてしまう。相手に「叱られるのはコリゴリだ」と思わせるのが実は上手な叱り方なのである。叱っただけではダメだ。ウソをついて社長を編したのであるから、タ始末書。をとるのが当然である。始末書にはボーナスが減るというク副賞。を必ず授けなければならない。これは予め『訪問報告と報告書にウソがあった場合は公表し、ボーナスを減らす』ということを宣言しておくのだ。
二回目は始末書では済まない。降格・減俸と厳しくなる。三回やったらクビにしなければダメだ。ク規律ψ はあくまでも厳しくなければ戦いには勝てないのだ。これは行き過ぎでも何でもない。訪問計画が実施できないといって責任を追及しているわけではない。クウソ。をついたことに対するものだからだ。ウソで固めた報告など有害あって一利なしだ。戦いに負けて会社をつぶしたら、社長は何といって世間様に、社員とその家族に詫びたらいいのか。社長の社会的責任は重大なのだ。その責任を果たすための当然の行為にしか過ぎないのである。
訪問計画に基づいて、各セールスマンは巡回訪問をするのであるが、大切な訪問先は午前中に訪問することが大切である。といって訪問先の所在がそんなにうまく実施することである。午前中訪問は「大切なお得意様なので早々とお伺いいたしま
配置されているわけではない。要はあくまでもこの趣旨に沿って巡回計画をたててした」という意味合いがあるからだ。D社のN氏は『本当にそうですね。午後も遅くなってから訪問されると、「何だ、我社はドン尻か」と馬鹿にされたような気になりますからね」と私の主張に相槌を打っていた。
難しいのは工事業者である。建具屋などもこの部類に入るが、昼間は仕事に出ていて不在のことが多い。朝早くでは仕事に出る前で落着いて話はできない。そこで朝訪問して今夜の都合をきいて約束を取付けて、夜間訪問というようになる。タ朝駆け夜討ち。である。たいへんだからといって訪問しなければ他社に売上げをさらわれる、というシンドイものである。
訪問先でセールスマンはどんなことをしたらいいのかについては、マニュアルが必要である。これがないと、各人思い思いのやり方になってしまい、「個人差が大きくて」というボヤキになる。これをなくすのがマニュアルである。マニュアルを作ることは比較的やさしい。まずセールスマンを集めて訪問先でどんなことをし、どんな話をしているかを聞きだす。それをまとめて検討すればよい。
この場合に、「セールスマンのタブl」
「販売戦略・市場戦略」篇にあるから参照していただくとして、業績をあげているセールスマンとあまり芳しい成績をあげていないセールスマンの発言に注意していただきたい。どこが違うかがハッキリと分る。それと同時に、自分がいままで知何にウカツであったかを思い知らされるのである。こんなことをやっていて、よくも我社の商品が売れたものだ、と痛感させられるのである。
セールスマンの発言と、社長自らのお客様訪問で感じたことをツキ合わせて、マニュアルを作るのである。その実例は、拙著社長学シリーズ別巻三「経営マニユアル実例集」を参考にされたい。マニュアルで特に重要な点をいくつか述べてみよう。
わなければならない人が不在の場合には、。置名刺ψ をしてくる。傍の人に「よ必ず会わなければならない人と、会ったほうがよい人を決めておく。必ず会ろしく御伝え下さい」と頼むのはムダである。まず、伝えてはくれない。そんな義理はないからだ。相手に伝わらなければその訪問はムダになってしまうということをよくよく心得ていなければならない。
特別の用件がない限り五分以内とする。滞在時間は複数の人に会う場合にも一人五分以内とすること。五分あればかなりの話ができることがたくさんの社長の経験から云えるのである。従来の考え方は「知何に滞在時間を長くするか」というものである。そのために「セールスマンは豊富な話題を持たなければならない」とされている。「セールスマン話題集」というような本まである。
全くあきれ果てたことである。相手はヒマを持て余してセールスマンの話を待っているのではない。忙しい仕事を持っているのだ。その忙しい中から貴重な時聞を割いて会ってくれるのである。豊富な話題で長々と話をされるのは迷惑至極なのである。だから短時間で切上げるのがエチケットというものである。
極端な話として、「こんにちは、さようなら」でいいのである。これで訪問効果は十分なのだ。豊富な話題で相手の仕事の邪魔をすることはマイナス以外の何物でもないのである。
円くu
流通業者なら倉庫、小売店舗なら売場である。現場ではまず全体を見わたして訪問した場合に最初にゆくところは、メーカーならばそれを使っている現場、何か新しいものはないかを確かめる。あったら、それは何か、どこのメーカーか、などを見ておく。問屋なら全体の在庫量、我社の商品の在庫量など。売場では我社の商品の品切れ、陳列数、我社のフェースに他社品の侵入があれば取除き、フェースの整備を行なうなどである。品切れはメモして売場主任に渡すか、許されていれば補充である。
(4)
我社の売れ筋商品の情報。
というようなところである。
あとは、こちらの云いたいことは控え目に要領よく短時間で済ませることを心掛け、最も大切なお客様の云われることをよく聞くごとである。こう書けばいろいろあるが、定期的に訪問していれば、いつも色々な用件があるわけではないのだ。挨拶だけでサッサと引下がるのがよい。
次には営業日報である。私は沢山の営業日報を見てきたが、営業日報ほど不思議なものはない。というのは、どう考えてもそれらのものの殆どは営業日報ではなくてセールスマンのク労務管理日報。だからである。セールスマンの一日の行動を時間帯別に記入させ、どこを訪問したか、用件は何か、どれだけの時間がかかったか、在社時の仕事の内容は何であったか、車の走行キロメートルはどれだけであっというようなことを細々と書かなければならない。こんなものを貴重な時間を費やして書かせて、何をどうしようというのか。私には全く分らない。セールスマンが知何にイヤイヤながら書いているかを考えてやったことがあるのかといいたい。セールスマンがいやがるのは、それがムダであることを知っているからだ。
いうのは、誰もこの日報を真剣に検討してはくれないからだ。盲判をいくつかおして綴りこまれてそれで終りである。
そんなものは書かせなければいいのだが、そうすると何も報告する書類がなくなってしまう。これでは具合が悪いので書かせるだけなのだ。
こういうことになってしまうのは、「何を報告させたらいいか」ということが誰にも分っていないからに外ならないのだ。その理由は、販売というものが分っていないところにある。
販売というのは外部活動である。だから、その活動で得られた外部の情報を報告させるのが営業報告なのだ。こんな当り前の話はないのだ。それは〈第市表〉のようなものとなる。その第一はお客様から得られたお客様に関する情報、第二には競合会社||つまり敵状である。そして第三にセールスマン自体の意見である。セールスマンがどこを訪問したかは訪問計画表で報告されている。何をやったかは報告させても意昧がないから不要、注文をもらったら受注報告書とか出荷依頼票のようなものを発行するのだから、これまた日報に書かなくともよいのだ。とすると〈第氾表〉のようなものに落着くのである。
日報に、セールスマンの意見を書かせるわけは、?」れがないと外部情報のところに意見を書かれる危険がある。こうなると外部情報がゆがめられる。同時にセlルスマンの意見もボケてしまうからである。
この報告書は、社長がいちいち目を通すのが理想であるが、大きな会社では大変だから、営業管理職が目を通し、社長への報告は予め社長が「こういう種類の情報は即日報告」とか、「このような情報は全員の分をまとめて週一回社長の出社日に報告」というような指示を出しておけばよい。それを見て本人の日報を見る必要があると感じたものだけを見ればよい。
このような日報を見ると、セールスマンの情報収集力が知何に低いものであるかが分る。社長がお客様訪問で得た情報とあまりにも次元が違いすぎるのだ。これは能力や努力の問題ではなくて、セールスマンに次元の高い情報を期待することが間違っているのだ。お客様がセールスマンに次元の高い情報を提供する筈がない。社長が行くからこそ次元の高い情報を教えてくれるのである。だからこそ社長がお客様訪問することは絶対に必要なことなのである。
蛇口定期巡回訪問と並行して各種の販売促進を行なう。広告宣伝・見本市・展示会・特売・マネキン・試食など様々な活動がある。これらについては前掲の「販売戦略・市場戦略」篇を参照していただくとして、特に大切なのは、こちらから。販売促進企画。を持ちこむことである。これらのものは単にその内容だけでなく、販売目標を明示するほうが効果的である。それは相手に与える印象もさることながら、これを明示することによって、こちらも無責任なことはできないからである。いやでも真剣にならざるを得ないように自分自身を動機づけすることが大切なのである。
以上の様々な活動は、我社だけのことではなく、他社もやっていることだということを忘れてはならない。絶えず他社の活動に注意を払い、情報を収集してその対展示会や即売会などは先手をとったほうが勝ちである。内容も必ず敵に真似ので応に後れをとってはならないのである。きない特色を常に打ちだすことが大切であるのはいうまでもない。メーカーと問屋との共催、問屋と小売店との共同作戦も必要である。
そして、お互いに最も頭の痛い価格戦争がすべての活動に様々な影響をもたらす(価格についてはク価格戦争クとして後述するのでこれに譲ることとする) 。価格戦争では常に冷静に事態を見極めたものが勝ちであることを忘れないでもらいたいのである。
そして、くどいようだが、蛇口作戦こそ市場戦略の最後のク決め手。であることを肝に銘じ、根気強く、粘り強く推進することが勝利への道を開くのである。
チェックをどうするか
チェックこそ事態を明らかにし、新たな作戦への道を開くものである。必ず定期的に||月一回が適当||実施しなければならない。多くの会社で、チェックは営業会議で行なわれている。これは間違いである。
会議の席上でチェックするといっても、それは必ずマンツーマンになる。したがって、チェックを受けている当人以外の人は関係がない。というのは、一人一人の担当しているお客様は、それぞれ事情が違う。他の人に関係がないのだからチェック「我関せず」を受けている人以外はである。
「マンツーマンのやりとりが他の人の参考になる」と考える社長はお目出たいのだ。それは、社長だけがそう考えているのであって、そんなことに耳を傾けている社員などいない。
みんな自分のところにチェックが廻ってきたときに「何と云い訳しようか」ということぐらいしか考えてはないのだ。だから、会議でチェックを行なうのは誤りである。時間の関係で十分なチェックなどできる筈がないし、チエツクを受けていない人にとっては時間の浪費にしか過ぎないのである。時間を節約する筈の会議が、時間を浪費しているのだ。肝腎なのは時間ではなくて、チェックを十分に行なうことなのである。だから、当然のこととしてチェックは社長と営業部長あるいは営業所長、担当者などとマンツーマンで行なうのである。
検討はテリトリl毎、得意先毎というように個別チェックである。そのやり方については、社長学シリーズ第二巻「経営計画・資金運用」、第六巻「内部体勢の確立」篇でのべているので参照していただきたい。
その検討の結果としての新たな施策は、
(3) (2) (1)
目標突破地域または得意先は、方針の積極的推進
目標通りの場合は、質的な転換または方針持続
目標不達成の場合は、作戦の再検討
というのが大筋である。そして、施策の優先順位もまた右の順序である。というのは、施策というものは、成果の大きなものから順に行なっていくというだけのごとである。
それを逆に行なうのは、人情として犯し易い誤りで、大きな成果は期待できないのである。以上は大筋としての検討であるが、個別的なことでは敵の新商品攻勢と価格攻勢にさらされた時である。
新商品は、それが優れたものであるならば、我社の不利は覆うべくもない。あわてて敵より劣る我社の商品の値下げなどしても傷口を広げるだけである。それに対抗するより優れた商品の発売こそ真の対応策である。価格攻勢対策は後述する。
もう一つ、我社の側の弱点として、セールスマンが計画通りの蛇口訪問を怠っている場合である。これはベテランに多い。ベテランは、一匹狼的な一種の誇り(?)を持っていて、きまりきったコ1スを巡回するのをきらう。市場戦略の遂行にはこれが大きなネックになる。対策は市場戦略から外すこと以外にない。ベテランを「そんな勿体ない乙とを」といっていたらおしまいである。断乎外さなければならない。指令違反は絶対に見逃してはならないのだ。
実際にチェックを行なってみると、様々な見込み遣いが発見される。意外な伏兵が待ち構えていたりもする。思いもかけぬ抵抗や物凄い反撃を受けることもある。なかなか思う通りにはいかないものである。
たまたまうまくいって我社の占有率が上がっていくと、上位の会社から強力な圧力をかけられる。出る釘は打たれるのだ。それだけではない、陰謀・デマ・イミテlションなど様々な手段で攻めてくるのは、私がここで述べるまでもなく先刻ご承知のことである。それらのことについては後章の「市場戦争考」のところで述べることにするとして、以上のような様々な策謀の渦巻く中で事態を冷静に分析し、敵の弱点を看破し、我社の弱昧をカバーしながら有効な作戦を新たに立てて敵に攻勢をかけ、あるいは防戦し、戦いを有利に展開しなければならないのが総大将である社長の役割なのである。
セールスマンは何人必要か
私のお伺いするメーカーの殆どは、甚だしいセールスマン不定である。そして、その不足は致命的な大欠陥となっているのである。
さすがに流通業者では販売活動に甚だしく不足する会社はない。というよりはセールスマンの数が売上げを規制しているというのが本当である。
何れの場合でも、「我社で必要とするセールスマンは何人か」というような設問など考えてもみないのである。考えることはセールスマン一人当りの売上高である。
その売上高は、「多ければ多いほどよい」と思いこんでいる。「我社のセールスマンは不足しているのではないだろうか」などとは決して考えないのだ。セールスマンの増員を考えるのは、売上げのほうが伸びてどうにも手が廻らなくなった時である。これが売上げの伸びない重要な原因の一つである。売上げが伸びたからセlルスマンを増やすのではなくて、セールスマンの方を先に増やして売上げを伸ばすのが本当である。「そんなことをしたら採算がとれない」と考えるのは誤りである。このことについては社長学シリーズ第五巻「増収増益戦略」篇の二九O頁を参照していただきたい。メチャクチャな増員なら話は別、極端な増員をしない限り、セルスマンの増員で採算がとれなくなることは、まずは考えられないのであることを理解していただきたいのである。
それならば、「いったい何人のセールスマンが我社として適当か」ということになる。これが分らずにいたのでは。盲経営。ということになってしまう。
適当なセールスマンの人数というのは「我社が生き残るために必要な売上高を確保できる人数」である。これには、現在の売上高だけでなく、長期的な視野からの先行投資、新商品・新事業の推進に必要な人員などを総合的に検討しなければなら
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先ず市場戦略構想書をつくり、テリトリl毎の必要人員を算出する。さらにこの人員は定期訪問基準、月次訪問計画書などを作成するその都度、市場戦略構想書と相互チェックしていかなければならない。
こうして算出した人員は、多くの会社で社長が思ってもみなかった人数となることが多い。それに新規開拓、新商品、新事業に必要なセールスマンを加えてみるのである。
そこに算出された人員が「とてもこんなには持つことはできない」と感じたならば、社長が「これが限度だ」と思われる人員を、あらためて市場戦略構想書に割付けてみる。当然のこととして、それは縮小された戦略にならざるを得ない。「これでは消極的すぎる」と感じたならば、また再検討である。この時に、。増分計算。が役立つのだ。増分人員に対する増分売上げは意外に小さなものであることに気がつく筈である。
最後に増加セールスマンの人件費を織りこんだ利益計画をたててみる。これを既にでき上がっている利益計画と比較検討する。この際重要なことは、我社の現在の利益よりも長期的な観点から「我社の将来の利益をあげるため」に、現在の利益は減らしてもセールスマンの人員は思いきって増量することである。
このことについては、社長学シリーズ第四巻「新事業・新商品開発」篇のところでク未来事業ψ という考え方こそ事業経営に不可欠なものであることを強調しておいたので思い出していただきたいのである。
事業を発展させるためには、中小企業の最も弱い点であるク販売。とタ新事業。に社長の関心を集め、我社の将来のために、を打ってもらいたいのである。「今、何をしたらいいか」を考えて手
そして、積極的に市場戦略を進めたならば、そこには思った以上の成果が待っていることは間違いないことを確信してよいのである。
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