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四、占有率確保の条件

目次

ナンバーワンをつくる

占有率確保の条件の第一は、当然のこととして陥1をつくることである。ぬーになれば占有率が三十%以下というようなことは少ない。四十%以上というのも多いのである。こうなれば、市場のリーダーシップを完全に握ることができるのはいうまでもない。考えてもみていただきたい。陥2では占有率確保どころか、円i 陥ーから大きな圧力をかけられることは間違いないのだ。

「何が何でもMml」これこそ社長が夢にも忘れてはならない占有率確保の条件なのだ。それにもかかわらず、多くの中小企業の社長は陥1に関心を示さず、地域拡大、新規顧客開拓が何より好きなのである。この戦略こそ売上げ増大の最良策だと思つているのだ。これは、「現在の地域、現在の得意先では、これ以上売上げが増えない」、、、、、、、、、、という無意識の意識があるのだ。だから、現在の地域、得意先についての売上げ増

大の可能性など検討しようとする気などテンから無いのだからどうにも救われないのだ。それは、社長がお客様のところを廻ってみないところから生れる大錯覚なのである。さらにもう一つの理由がある。それは市場競争というものを全く研究していないところにある。新しい地域、得意先は、すでに敵の勢力範囲になっていることをこれまた全く考えないのである。不思議としかいいようのないこの考え方こそ、大方の社長の持っているものである。だから、いつまでたっても売上げなど伸びるわけがないのである。

この点の頭の切換えこそ最も大切なことである。「何が何でも陥1だ」という社長の意識こそ、実は占有率確保の大前提なのである。陥ーになるぞという執念がな

ワi くてぬーなど夢のまた夢である。

この執念があれば、「セールス任せ」というような阿呆なことは絶対にできない筈である。社長自ら外に出て様々な情報を集め、これを検討するということに自然になっていく。あとは本書を読んで作戦をたてていただきたい。

陥1の目標を決めなければならない。その目標は、先ず、

円ノ“

qJ

地域防ーになる

商品で陥ーになる

得意先で陥ーになる

という三つを考える。「どれにするか」だけでなく、「どれとどれを組合わせるか」を考える必要がある。

先ず、地域防ーになる可能性を考えてみる。この時にク市場細分化。の考え方をしなければならない。彼我の戦力を比較して、我軍の戦力のほうが強くなるまで細分化を行なうのである。

地域売上げで陥ーになれなくとも心配ない。我社の強い商品で陥ーになるごとを考えるのだ。

もっと細分化をすれば、「特定の得意先で特定の商品の納入高で陥1」というと司dころまで考えることができるのだ。ここまで細分化すれば、どんなに小さな会社でもMM1の目標は設定できるのだ。

こうして特定の得意先で我社の強い商品をひっさげてぬ1を実現する。次にもう一社で我社の強い商品で陥1を実現する、ということを繰返してゆげは、特定の地域においてその商品で陥ーになれる。次の地域で陥1を実現する、ということを次

次に繰返してゆけば、陥1の地域は次第に大きくなってゆき、窮極ではク全国一ψの占有率が実現するのである。

もう一つ別の道は、特定の得意先で特定の商品でぬーになったら、納入する商品の品種・品目を増やしてゆき、納入金額でぬーになる。納入金額で陥1の得意先を

次々につくっていくというようにしてついには地域陥ーから最後には「日本こということになる。これなら特定の商品だけで地ーになるより更によいわけで中のすQ。

以上に述べたことは考え方であって、こうすれば何もかもトントン拍子にいって日本一になれるということを云っているのではない。敵がそう易々と城を明け渡す筈がないのだ。そこが競争である。その競争に勝つための血みどろの戦いがあるのだ。

その戦いをただ漫然と進めていたのではダメであるし、「成せば成る」式の精神論だけでも戦いに勝てるわけはない。戦いには戦いの法があるのだ。その法の第一がこの陥ーになることなのだ。

それを市場原理に従い、?」れを利用して実現していくことこそ最も賢明な道であることを忘れないでいただきたいのである。

市場原理というものは、数多くの実戦の経験から生れたものであり、これを知ろうと知るまいと、これに左右されてしまうことは、本書においても既にのべている通りである。

そのMm1を獲得する戦略乙そ、ランチェスタl戦略であり、一法則・第二法則を実戦に応用していくのである。

ランチェスタlの第

ランチェスタlの法則は、云いかえると常に「敵に勝る資源を特定の地域・商品・得意先に集中する」ということである。

ということは、販売戦というものは会社の大小とは関係なく、特定の戦場におけ兵力の多い方が戦いに勝ち、ついには陥ーになるのである。

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守t る彼我の兵力量によって勝敗がきまるという意味である。

特定の戦場において、敵に勝る兵力を投入するといっても、その戦場には様々な要因がある。その中から、自らの会社に最も有利な戦いが進められるような作戦を選び、とれを推進しなければならない。

それらの作戦の中から、代表的なものを選んで次節にのべることとする。その中から我社の与えられた条件のもとに何を選び、何と何を組合わせてゆくかは、社長自らが決める乙とだということを心得ていなければならない。

一点集中攻略法

一点集中主義こそ陥ーになるための最有力作戦である。非力であっても、いや非力であるほど一点集中主義は大切である。我社の力を只一点に集中してこそ、ランチェスタlの第二法則の教えに従うことである。

それは丁度、太陽の光線そのままでは何ともできなくとも、これをレンズで光を一点に集中するとその部分が高熱となり、穴を明けたり燃やしたり、さらには金属をも溶かすことさえ可能なのである。

この原理こそ一点集中である。たとえ我社の力は弱くとも、これを一点に集中的に投入することにより、その点では異常に強力な効果を生み出すことができるのである。

市場・顧客・競合会社を注意深く観察し、我社の置かれた立場と力と得手不得手を十分にわきまえた上で、作戦をたて、目標を決めて積極果敢な攻撃をかけて勝利をおさめなければならないのである。一点集中攻略と一口にいっても、様々な状況においての様々な作戦がある。それを考えてみよう。

地域集中

東海道新幹線で東京を発つと、静岡駅の手前で車窓の右側に「シャンソン化粧品」と大きく社名を書いた煙突が見えてくる。同社の本社工場である。

同社は全国的には限界企業であるが、静岡県では著名な高収益企業である。これたまものは、同社が創業以来とってきた訪問販売による一点集中戦略の賜である。

世間に多い商圏拡大主義と問屋依存をしていたならば、恐らくは今日のシャンソン化粧品とは程遠い低収益企業でしかなかったに違いない。シャンソンの地域戦略は静岡県内だけに限定し、徹底した顧客との密着作戦をとってきたことこそ成功の要因である。

地元の利を最大限に利用し、顧客密着作戦を脇目もふらず実行したから乙そ、資

主主

カネボウという制度品の大手と戦って今日の地位を確保できたのである。狭い地域で大きな占有率を得たからこそ、静岡県でも屈指の高収益をあげられたので

中のマhv。

そのシャンソンが、数年前からテレビの全国コマーシャルを行なっているが、ク力。がついたために全国コマーシャルを始めたのなら誠に立派である。

しかし、それが静岡県での成功によって余裕ができたからこの辺で全国コマlシヤルでも:::ということで、確固たる市場戦略がないのなら疑問である。私にはいまのところ、そのどちらなのかを判定する情報がないので何ともいえないのである。

東京都の八王子市にあるOハウスは中級の建売住宅会社である。他社に比を見ない高収益をあげている秘密は、お客様の要求を満たすとと以外は何も考えない社長。。

司iの姿勢にある。

優れた品質の上に、フォローは完壁ともいえる。昭和五十三年の二十号台風のときのことだったが、突風で傷んだお客様の家を最優先無償修理したのである。

0社の責任でもないのにである。お客様の信頼が更に高まったのはいうまでもない。お客様の信頼に支えられたO社の業績が極めてよいのは当然である。そのO社社長A氏の方針は、「八王子市から一歩も出ない」というものである。

完全な一点集中である。新市場へなど出なくとも、八王子市だけで何十年でもやっていける。不用意に他所へ進出などしたら、八王子市のお客様へのサービスがおろそかになってしまうというのである。

市場戦略云々ではなく、A氏のお客様サービスの信条によってではあるが、結果的には市場原理にかない、自らの力を知っているために長期安定高収益を確保しているのである。

A社はH市にある防災防犯機器のメーカーである。私がお伺いした当時は、大手

ハ吋》

門/ の聞にはさまれた限界企業で業績も思わしくなかった。先ず商品を改良し、次は市場戦略だった。限界企業の悲しさで地元の占有率さえ限界的だったのである。地元の占有率をまず高めることこそ重要であると判断した私は、社長に勧めて地元占有率向上作戦を開始した。

この作戦は私としても自信があるわけではなかった。限界企業の悲しさで、他に良いと分っている作戦があっても、それの推進が現実には遂行できないのである。

このようなことは、私が限界企業についていつもぶつかる事態なのである。その制約条件の中で作戦を遂行しなければならないのである。そのために、よくても悪くても地元作戦をやるより仕方がないといったほうが本当のところなのであった。

まず専任セールスマンを一人選んでもらい、会社を中心点とした半径十キロメlトルの範囲内の工事業者を対象とした定期訪問作戦を開始した。

三カ月たち、四カ月が過ぎても毎月の受注高は十万円にさえも達しないのである。半年すぎた頃には、社長がこの作戦に疑問を持ちだした。ムリもない、私にいわせたらよくこれまで我慢したというのがいつわらぬ感想なのである。たいがいは三カ

ノ、ドレ

月で挫けてしまう。二カ月であきらめてしまったという情けない会社さえある。石の上にも三年だ」とハッパをかけなければならないのである。一年過ぎても実績

しかし、ここでやめてしまったら元も子もない。『たった半年で挫けてどうする。は全く上がらなかった。社長のボヤキを聞きながら、『もう少しだ』と力をつけながら頑張らせた。

一年半を過ぎた時に、突知として売上げが伸びだし、三年目からはコンスタントに月商五百万円を上げることができるようになったのである。二年にわたる週一度の定期訪問によって、お客様との人間関係がすっかりできてしまい、次々と情報がきけるようになっていたのである。

「石の上にも三年」とは昔の人はよくぞ云ったものだと思う。それにしても一年半にもわたって、ろくな売上げもないのに、ジッと辛抱したセールスマンは立派である。本当に頭が下がる思いだ。ク商い。とはクあきずにやる。という意昧だと私に教えてくれたのは私の母親だったが、有難い教えである。

このセールスマンの辛抱、ねばりこそ我々は範としなければならないのである。三カ月や四カ月売れないからといってあきらめてしまうのでは、いつまでたっても販売に成功することなど覚つかないのである。

只一点に狙いを定め、二年間の定期訪問を続ければ、必ず道が開けることを我々は知っていなければならない。五回や六回で販売に成功すると思うのは誤りである。そこは、すでに長年にわたって先発の業者が商売をやって来ている地盤なのだ。それをたった二年でくつがえすことができるのも、一点集中による。集中効果ψの賜なのである。ランチェスタlのク第二法則。を夢忘るべからずである。

商品の集中

ナカパヤシはアルバム一品に集中して発展してきたといえよう。

同社のアルバムは、アルバムの欠点ーーというよりは消費者さえも気がつかなかったであろう潜在要求を見つけだし、「フエルアルバム」というキャッチフレlズめいた商品名をつけた商品を発売し、先発業者の商品とのク差別化。によって成功した。

「フエルアルバム」をひっさげて徹底した集中戦略をとったのである。大手は総合的には強いが、只一点を集中的に攻められた場合には、その点の防戦は必ずしも。。強くないことをこの実例は教えてくれる。

大手なるが故に一点だけの防戦は、かえって防戦が難しいといったほうがより正しいといえる。

その実証として、既に本書の九七頁にあげた仙台の衣料品問屋M社で、二十名程の限界企業が総合問屋から紳士物一本に絞り、僅か五1六年で東北地方の陥1になった実例を紹介したが、もう一つ、やはり限界企業でありながら成功した例を紹介しよう。

M市のS水産という魚問屋である。大手の間で苦戦を続けて全く行詰まってしまった時に、社長は思いきって「マグロ」一本に集中した。「マグロなら何でも」ということになると、大手の問屋もかなわない。料亭、鮪屋を核として販売をしたシ」?」?っ、アッという聞に売上げが伸びて黒字転換してしまったのである。

それならば、「カニ」専門問屋というのも成立つ筈である。こ「えび」専門問屋、のような専門問屋は、小さな問屋なればこそ成功するのであって、大手ではやりたくともできないのだ。ここに限界企業の活路がある。成功した時には限界企業ではなくて。大手ψ になってしまったのである。大手になれば生き残ることができるのである。

これを書きながら思い出した例があるのでつけ加えるが、ある雑貨問屋で「小売の商品だけを扱って成功しているという、私自身が意表を衝かれた価格百円以下」思いをしたことがある。

小企業だけでなく、大企業でも例はある。牧野フライス製作所の高級フライス、マキタ電機製作所の電気カンナ、キトlのチェーン、ブロック、アマダのコンタlマシンなどは、初めはみなそれぞれ一商品だけに限定して成功した例である。

一業種集中

K社はク寺院。だけを対象として全国六万のお寺のうち三万六千と取引をしている。寺院のような特殊な市場だけに、これといった競合会社はない。物品を買っても支払をすることなど忘れてしまうような人種を相手にするのは、クお守りψ の精神が必要であり、さらに壇家との関係もある。この社会に精通するまでの志耐と根気を必要とするだけに、誰でも簡単には取組めない業種であるために、競合は殆どないというごとである。

C社は旅行社であるが、学校だけを専門にしている。学校も特殊社会の一つであり、世事には疎い人種の面倒をよくみて成功しているのは、社長のO氏の顧客第一の姿勢があればこそであろう。

U社は、地域銀行だけを顧客とするギフト用品の専門企業である。ギフト業界の陥ーである「シャディ」にくらべれば遥かに小規模であるが、銀行専門業者としては独壇場といってよく、断然たる強昧を発揮している。

M社は陶器の化粧板専円であり、K社は高級呉服を専門店のみに販売している。何れも業界トップの座を占めて安定的高収益を確保し続けている。

半導体による床暖房システムを開発したM社(化粧板のM社とは違う) では、初めはいろいろな用途に目をつけて販売しようとした。苗床の下やゴルフ場のグリlンの下に埋め込んで土の温度をあげる法、屋根の融雪、タンクの保温、レノレのポイントの凍結防止、養豚室の保温など次々に試みたが、いずれも実験段階から脱け出ることができなかった。

ところが、それらの実験の一つに、福祉施設||病院、老人ホlム、保育園などがあったが、これが非常に好評だった。そこで、社長は思いきって販売促進の対象をこれらの福祉施設に限定して集中的な活動を行なったのである。これが成功した。

この成功で分ったことは、たとえ地域は飛び飛びであっても、同一市場||特に公共施設という特性のために、情報の伝播が早いということであった。一つの施設でこれを行なうと、たちまち評判が広がり、あちこちから視察にくる。いいと分ると直ちに翌期の予算に組込まれるという乙とになる。こうしてM社の床暖房は初めて事業として日の目を見ることができたのである。

一点集中攻略は、それが地域であれ、得意先であれ、商品であれ、業種であれ、資源の集中的投入による効果が非常に大きいのである。ランチュスタlの第二法則の教えるごとく二倍の投入は四倍の効果を生む。

弱者が強者と戦う場合に(新商品を発売する場合も同じ)強者に勝つ唯の戦略でFhu 。。それは、限られた我社の資源を最も有効に使用するというメリットだけでなく、あるという事業経営の根底をなすものであることを、われわれはよくよく認識していなければならないのである。

ところが、多くの会社ではこれを知らず、一点集中とは全く逆に自らの力以上に広範な地域に販売戦を展開したり、商品・得意先・市場を限定せず、ただ漫然と商品品種を増やしたり、新規得意先開拓にうつつを抜かすというようなことをやっている。これでは市場戦略も何もあったものではない。我社の力が小さければ小さいほど、販売増大を急げば急ぐほど一点集中攻略をしなければならないのである。

とはいえ、一点集中攻略はあくまでも占有率確保のための初期戦略と心得るべきである。一点における占有率確保に続いて、乙れの拡大が次の戦略となるからである。また、一品だけで陥1に甘んじていたら、それがどんな強力な商品であろうとも必ず斜陽化の時が来ることは間違いないのであるから、多品種化、多角化、総合化戦略が絶対に必要なのである。

面攻略法

ニ点攻略法

「クスリヒグチ」チェーン店展開に当って、チェーン店の数を当の樋口社長は、時の全国四万二千七百店の一%「四百二十七店」としたという。薬店のくせに「シニナ」というのである。現在は一千三百二十七店舗に変更したが、これは「四」をごとコこに分解したのだという説がある。

このクスリヒグチに典型的な三点攻略戦略を見るのである。〈第1図〉を参照していただきたい。

第一号店は、大阪の環状線の京橋駅近くの京阪本線京橋駅から京都方面に辿って四つ目の千林駅前であった。ダイエーの発祥もこの千林駅前である。第二号店は京橋駅付近、第三一号店は千林駅をさらに京都方面に辿った「枚方駅」近くであった。この第三号店は失敗だった。

一号店←二号店←三号店は京阪線に沿ったタ線。の展開だった。樋口社長は。線。の展開に失敗の原因があるのではないかと考えた。そこでク線。の展開をやめてク面。

千林と京橋を結ぶ線の東南方で千林||京橋を一辺とした正三角形の頂点付近のoo の展開を考えてみた。

徳庵に第四号店を開いた。これが成功した。ご?」に面戦略としての。三点攻略法。が生れたのである。以後、クスリヒグチでは三点攻略法を市場戦略の基本戦略として成長してきた。

三点攻略法の概念は、まず第一点を下ろすと、小型小売店の商圏としての半径五百メートルの地域でお客様をつかむ。第二点は第一点から二キロメートル隔てた点とする。第二点でも半径五百メートルの商圏で実績をあげる。すると、第一点との聞に一キロメートルの空白地帯ができる。ア」こが大切なところである。この空白を避けるのなら、第一点と第二点の距離は一キロメートルでなければならない。乙うすると一見水ももらさぬ布陣のように思われるが、長期的には勢力の重複が生れるのである。これを防止するために二キロメートル隔てるのである。第三点は、第一点と第二点を一辺とする正三角形の頂点に下ろす。第三点で半径五百メートルの商圏を確保する。これら三点の間と三角形の中心部に残る空白地帯は年とともに次第に埋まって消えてしまうのである。何とも巧妙な戦略である。この基本の三点から、次々と正三角形の頂点に点を下ろして勢力圏を拡大していくのである。

とはいえ、クスリヒグチの成功は三点戦略だけにあるわけではない。その巧妙な品揃えによるところも非常に大きい。小型店舗なるが故の商品の絞りこみが見事である。薬と消耗雑貨の二本建として回転率の高さを実現しているからである。

T住宅は、建売住宅と分譲マンションを主体としている。その市場戦略は徹底した一点集中主義から出発した。初めは東武線(東京の浅草駅から栃木県方面へ延びている) の蒲生駅前に本社営業所をかまえ、東武線の沿線だけに限定して高密度の販売活動を行なった。その範囲は、北は越谷駅から南は梅島駅付近までの三十キロメートルに限定し、その地域において大きな占有率を確保してしまった。特に本社営業所付近にいたっては、占有率七十%以上という信じられないような実績をあげている。

こうなると競合他社はどうにもならない。用地を子に入れようにも、殆どの地主とT社とは親しくなっており、他社ではなかなか買うことができない程になってし数百名の社員が次々と自分の家をその地域内にたてるので、地域密着性はますままっている。

す高くなっていく。セールスマンは、お客様を勧誘する時に「うちの社長の家はどこそこです。専務の家はどこで、営業部長はどこに住んでいます。何かありましたら近くですからご連絡をいただけば直ちに参上します』という調子である。これがなかなか有効だということである。フォローもよくやっている。いや、やらざるを得ないといえよう。将来建替えの時期が来た時には、極めて有利なことはいうまでもない。

越谷||梅島問で圧倒的な占有率を確保した上で、新たに進出したのは常磐線沿線である。まず第一の拠点として柏の水戸街道沿いに営業所を出した。梅島と越谷とどちらからも約三十キロメートルの地点である。ここに三点戦略が誕生し、線の戦略から面の戦略へと移行したのである。柏地区は新規とはいえ東武線沿線の強固な地盤の隣接地区であるために、何かと有利な戦いを最初から進められたのである。点から線へ、線から面への典型的な例である。とれはミクロでは三点攻略になっているが、これを関東地方全体から見ると、三点が一つになって一点集中になっているのである。

山口県の小野田市にあるS社は、ゆで麺のメーカーである。毎日、ゆでた麺を問屋・スーパー・レストラン・うどん店などに配送している。

あなたがS社長であったとしたら、どんなテリトリl戦略を展開するだろうか。〈第2図〉に主な市や町を記入してあるので、この地図で検討してみたらいかがでしようか。

小野田市と宇部市は隣接しているので||こういうのをタ複眼都市ψ という||一つとして考えて差支えない。三点攻略法とその展開がいとも簡単に頭に浮かんでくる筈である。

これは、誰がやっても市場戦略の初歩的な知識さえあれば、だいたい同じようなものになる筈である。それでいいのだ、ということは難しくも何ともないものであることを意味している。難しい理論や、ややこしい手法を必要とするものは、本当のところ実用的価値は低いのである。難しい手法は専門家にやらせればいいと思われるかも知れないが、これは甚だ疑問である。何故ならば専門家は事業というものをよく知らないからだ。事業を知らない専門家の見解や意見は、まずはトンチンカンになる。知ったかぶりな会計士、税理士のアドバイスが殆ど誤っているのは事業の経営を知らないからだが、これと同じようなことになるのが落ちだということを知っていなければならないのである。

三点攻略法というのは、一つの都市の中に三点を打って、これを広げてゆくというのもあり、県単位でその中に三点を打って面戦略を展開することもできる。地方ブロック単位でも、日本全国を単位にしてもよい。それどころか、世界を舞台とした三点戦略もある。

雑貨のメーカーで日本一のF社の世界戦略の構想は、日本・エジプト・ベネズエラの三カ国という三点戦略だった。

エジプトは、地中海を利用してその沿海国、そしてジブラルタル海峡を通って遠くイギリス・オランダ・ベルギーから北欧三固まで、またスエズ運河を利用して印度洋にも出られる。アフリカへは大西洋からでも印度洋からでも攻められるという文字通りの四通八達の絶好点である。

ベネズエラはパナマ運河を利用すれば海路で北米、南米全域をカバーできる。東南アジアへは、無論、日本から既に進出している。まさに世界中を隈なくカバーすることができるという三点攻略構想だった。

このように、三点攻略法はどこを対象とし、どのようにしてもよいのである。自由奔放な発想に基づく構想力こそこれを可能にするのである。

層別攻略法

D社の社長いわく『私の父は大八車一つで商売を始めましたが、初めのうちは三流の小売店だけを対象としていました。三流店でシッカリと実績をつけてから二流店を開拓してゆきました。二流店に強い地盤を築いて後に、はじめて一流店攻略というように、下のほうから固めていった戦法は正しかったと思います。そのために現在の我社があるのです』と。

これが層別攻略法である。「養老の瀧」は徹底して大衆客だけを狙い、レストランの「ロイヤル」はヤングに焦点を合わせている。

角一商店は顧客をクイーンサイズという層別攻略を行ない、さらに商品をニットFbnヨのスlツという絞りこみをして成功したのである。弱者の戦法としての層別攻略は、極めて有効である。ク小。が。大。に伍して生きてゆけるのも、このような絞りこみによるク集中効果。によってク大ψ に勝っているからである。

同心円攻略法

この作戦には二種類ある。波紋型と城攻め型である。

波紋型というのは、最も普通で自然なものである。我社を中心として波紋のように同心円型に作戦を進めていくものである。城攻め型とは、その名の通り城を包囲して攻めるような作戦である。

事務用機器の販売会社T社の場合には、新たな戦略として、本社営業所のある市内からの波紋型をとらずに、まず市の周辺地域から定期蛇口訪問作戦を展開していった。その理由は、周辺地域に街地ほどではないがかなり大きな市場があったことと、競合他社の目が市街地域に多く向けられていると見られたからである。

この作戦は二年目の半ば頃から効果を発揮し、周辺地域の実績が上がっただけでゥ, .ハ可Uなく、市街地作戦でもこれが土台となって有利に戦いをすすめられたのである。

中小企業の社長は一般的にこの城攻めが苦手である、というよりも間違った攻め方をする。城というものは、本城を中心に出城や砦を配置している。本城を守るためのものであるのはいうまでもない。だから城を攻める時には、まず砦や出城を攻め落として本城を丸裸にしてしまう。大坂冬の陣の結果として、外濠を埋められた大坂城の夏の障を見れば分る。我軍の最小限の犠牲で敵に大きな打撃を与えるのが包囲作戦である。丸裸にされた本城の力は大幅に落ちてしまう。そこを攻め落とすのが最も効果的なのである。大坂夏の陣においては、もはや城にたてこもる乙ともできずに城外に出て優勢な敵と戦わなければならなかった豊臣方の敗戦の教訓を知らなければならない。

ところが、現代の中小企業の社長はこの作戦を知らない人が多い。砦も出城もそのままにしておいて、城の正面の最も広くて深い濠に障害物が設置され、最も防禦力の強いところに攻撃をかけるという愚をおかす。

本物の戦いならば大損害を受けるところであるが、販売戦においては損害が損害

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ny として現われずに、「売上げが上がらない」という感じ方をする社長はまだよい方で、「とにかく、これだけの売上げがあった」という成果として感じてしまうという乙とになる。これが陥し穴になっているのである。

販売に投入された我社の資源を、値引販売をも含めた投資というふうに考えて、その成果との比較を冷静にしてみたら、その敗戦の実態を正しく認識できるのである

戦いは常に敵の弱いところを攻めよ、という鉄則を守ることこそ社長として正しいのである。もしも敵が強大であれば、集中効果の法則に従って、敵に勝る威力を要点に集中発揮するという既述の作戦要務令の綱領を思い出していただきたいのである。

間接攻略法

K社は特殊塗装を業としており、その地域では大手である。

業界の競争はあったが、特殊なだけにあまり激しくなかった。第二次石油シヨツク後の不況時に、受注の減った小さな業者が、安値||それも相場の半値というメチャクチャな価格で注文をとりだしたのである。全くあきれたことで、長続きしないのは分りきっているが、困ったことにこれが業界の相場を崩してしまうのである。

K社も相場に追随しなければ受注が減る。対応策が分らずに私に対する相談となったのである。

いくら安値攻勢といっても、二割も下げれば十分に効果があるのだが、小企業の職人社長にはこれが分らない。大幅値下げをしなければ、大幅受注増はできないと思いこむらしい。困ったことではあるが、パカだと批判をしても事態に対処できるわけではない。これに価格で対抗したら安値競争になるだけで、事態をますます悪化させるだけである。私の勧告というのは次の通りであった。

『敵は営業能力がないための受注量不足のために安値に走ったのだから、その会社に仕事の注文を出せばよいだけのことである。これが対応策である。だから、あなたの会社で「仕事量が多すぎて乙なせないから応援を頼む」といって、仕事をさせればよい。敵は半値でもとるくらいだから、世間相場の二割安でだせばとびついてくる。仕事があれば安値受注どころか、トタンに姿勢が高くなって半値受注などから、K社としては営業力を強化して、その会社の分まで受注して、一1二割のピnu は「値上げしてくれなければできない」と開き直るのがパカのやることである。だンハネをして仕事を廻してやればよいのだ』というものだった。こうして自家薬簡中のものにしてしまうのが最良策なのである。

これだけの高等作戦がとれるようになれば立派である。こうした会社になることこそ肝要なのである。

これは単に値下げ競争を防ぐだけではなく、これ乙そ占有率を確保する有力な作戦の一つである。さらに、外作比率を高めるという企業の安全性と収益性と弾力性を同時に高めることができる。まさに一石数鳥の素晴らしい戦略なのである。

この戦略の威力は想像以上に大きいし、実戦への応用範囲は広いのである。それにもかかわらず、この戦略に気付いている社長は極めて少ない。そして不況になるとこの戦略とは全く逆に、外注を引上げて内作に切換えるという愚策をとるのが大部分の社長なのである。これは占有率確保の重大性を知らず、販売力の強化も供給力の増大も行なわないというク経営者の経営知らず。の結果に外ならないのである。

販売力の強化や供給力の強化については、拙著「社長学シリーズ」の随所で説いているのだ。それは、非力の会社であろうと小さな会社であろうとも、心掛けと長期的な努力によって確実に手に入れることができるものなのである。力ではなく心掛けなのだ。そして、その心掛けが力を生むことになるのである。

どこから攻めるか

ク戦い。である限り勝たなければ意味はない。そして、勝つことこそ企業存続の絶対条件になるのだ。

では、勝つための条件は何かということになる。戦いというものは強いものが勝つという単純な原則がある。

この原則は、誰でも知りながら企業競争において、これ程無視される原則はない。

その理由は企業戦争においては敗れたという実感は、競争入札や安値競争で特定の得意先に対する特定の物件や商品を売り損った場合に感ずる程度で、「テリトリーで敗れた」という実感はあまりないところにある。せいぜい「あのテリトリーではあそこが強い」程度にしか感じない。これは敗戦意識には違いないが、「我社の死「勝敗は兵家の常である。それをいちいち気にしていたら何もできない」というηL 活に関する重大事態だ」という危機感はないのだ。

考え方によるものかも知れないが、それよりも大きな原因は、特定のテリトリlで、、、「売上げがゼロになった」という事態が先ずは起らないために売上げ実績という数字を、たとえそれが敗れた結果であっても成果として感じてしまう点にある。

これが恐ろしい。陥し穴。になっているのだ。たとえ売上げという成果があっても、生き残るための占有率より低かったり、占有率が下がったのでは完全なφ敗戦。なのだ。

このことを肝に銘じていなければならない。そして「戦うからには必ず勝たなくてはならない」と堅く心に誓ってこそ事業経営者である。では、戦えば必ず勝つ法は:::それがランチェスタl戦略であることは既にお分りになっていることである。

戦いに勝つにはク敵より強ければよい。のだ。そのためには、敵に勝る威力を要点に集中発揮すればよいのである。強者は自らの持てる力をフルに活用することを考え、弱者は要点に強者に勝る力を集中的に投入すれば目的を果たすことができる

まず、強者の攻め方を考えてみよう。作戦は、「現在で占有率四十%以上の地域・つ臼わけである。

商品・得意先を堅持して敵に明け渡さない」ということが先決である。これはさほど難しいものではない。もともと強いのだから油断さえしなければ大丈夫である。

次には、Mmーではあるが、まだ四十%の占有率を確保していないところを四十%以上にもってゆくことである。優先順位としてこれが正しいのであることを忘れてはならない。これによって陥1の地位を不動のものにすることができる。何といっても主導的占有率は強い上にメリットが大きいのである。ところが、世の多くの経営者の関心は、強者と弱者を問わず占有率の高いところから始めて、さらにさらに占有率を高めることの有利さを知らずに、占有率の低いところほど強い関心を示して『ここが低い、早く何とかせよ』というトンチンカンな指令を出すのである。

これは戦いの何たるかを知らないものだといわれでも仕方がない。このような考え方をするのは、まともな理由もなければ深く考えたわけでもない。ただ、「他所はもっと上がっているのだから、とこも上がる筈だ」という単純発想以外の何物でもないのだから困るのである。

正しい考え方は「他所よりも占有率が低いのは上がらない理由がある」ということである。遠隔地だとか、手不足だとかという我社の事情もさることながら、もつと重大な理由は「そこには強い敵がいる」という認識である。我社の占有率が低いからといって、そこが空白になっているわけではないのだ。

だから、そこでは我社は。弱者。の立場にあるのだ。ここは最も難しく、最も効果の上がりにくいところだということを知らなければならない。これが分っていれば、最も後廻しにするのが正しい策なのである。

次には、「陥2を叩くのはどこがよいか」ということになる。この戦略を推進するためには、「敵の弱点はどこか、何が苦手なのか」という設聞が大切である。最小の努力で最大の効果をあげるためにである。

敵の最も脆いところを衝くのが戦いのセオリーであることを知っていなければならない。こうすることは、結果において我社の占有率を高めることになるのはいうまでもない。

最後が「まだMmーになっていないところ」ということになるのである。とはいえのではない。「ここは捨てる」あるいは「成行きまかせだ」という決定も大切で立ぬーになっていないからといって、何が何でも陥1にしなければならないというも派な決定であることを心得ておいていただきたいのである。これだけの心のユトリを持たないと、不利な戦いや時期未到来の時に猪突をして大きな誤りをおかすことになる危険が伏在することを忘れてしまうのである。では、弱者の戦場選択はどのようにしたらよいのだろうか。

弱者は、自らの非力をよくよく認識するところから始めなければならない。基本的な態度は強者の死角、市場のスキ聞を衝くことである。ここに強者に勝る資源を投入し、ここでの強者になることである。一点集中である。

ここで陥ーになって、何としても四十%以上の占有率を手に入れるのである。それまではやたらと戦線を広げてはならない。たとえ狭い地域といえども圧倒的な強昧を持つこと乙そ、市場戦略の要諦である。こうすることによって初めて次の戦略を効果的に推進することができるのだ。そしてこれなら弱者にもできる。

これと並行して、もう一つ実現しなければならないことがある。

それは、この地域内において、「日本一、あるいは将来これで日本一になる」というク何か。をつくりあげることである。商品で日本一、技術で日本一、昧で日本

一、サービスで日本一、環境整備で日本てetc--::何でもよいから日本一をつ

くりあげることである。これは同時に社員に日本一の誇りをもたせることになるのである。日本一の誇りは想像以上に大きな力をもっているのである。この時期に日本一の実現の悲願をうちたてることが将来大成するための基礎的条件である。

本田宗一郎氏は、創業聞もない頃、オンボロ工場でドテラを着てイロリの火をかき立てながら世界制覇の大望をうちたてたのである。それは「世界一でなければ日本一ではない」というものだった。吹けば飛ぶような零細企業でも、眼は既に世界を見渡していたのである。

いやしくも事業を経営するからには、世界一とまではいかなくとも、少なくても「何かで日本一になる」くらいの気概は持ちたいものである。

日本一というのは、規模で日本一になることだけではない。いな、自らの力量も考えずに、規模の日本一を狙うのは悲願ではなくてク誇大妄想狂。でしかない。自らの力量以上のことをやっても、それは破綻に終る。自らの力をよくわきまえた上で、その力をク何か。に集中的に投入して、それで日本一になることであろう。

司inU円L 地域Mm1、そして何かで日本一、これを実現したら、あとはこの基礎の上に立つて、次の地域||我社の力で強者になれる地域に限定して作戦を進めてゆくので←めずQ。これが非常に難しいのである。我社の力を過信し、初心を忘れて戦線を拡大してしまうケlスが非常に多い。そして失敗する。

これは、丁度自動車運転免許のとりたては慎重な運転をしているが||そしてこの時期にはまずは事故は起さない||それがだんだんとなれてきて自分の思うように車が動くようになると、ついスピードを出し過ぎて事故を起すようになるのと全く同じである。初心忘るべからずである。

乙れは、私のコンサルティングにおいて、社長の誤りを指摘すると『そういわれれば、創業当時は一倉さんのおっしゃる通りのことをやっておりました』という述懐がしばしば聞かれることがこれを実証しているのである。

テリトリーをどう拡大してゆくか

北陸の某県のオフィス用什器の納入業者F社は、北陸三県にわたって強大な販路を持ち、その占有率は三十%を超えていた。

F杜は、この実績をふまえて東京に進出したのである。日本の最大市場で最激戦地への進出だけに、精鋭をよりすぐっての陣容であった。とはいえ、東京でそうやすやすと実績をあげるわけにはいかない。それでも必死の努力の甲斐があって売上げが上昇しだした。

しかし、それは恐らくは事実とはかなり喰い遣っていたのである。売上げは東京とその周辺だけにとどまらず、長野県にまでも及んでいたのである。

一方、地元である北陸三県の売上げが東京進出直後から下降に転じていった。営業活動が大幅に縮小したのだから当然であるが、それは第三者の立場であって、F社にとっては一大事である。折角苦労して手に入れた東京営業所の売上げは、地元の売上げ減で相殺されてしまった。

何のための東京進出だか分らなくなってしまった。こんなことなら地元だけにしておけばよかったと悔やんでも後の祭である。

戦いは非情である。少しでも市場から手を抜けば、それはたちまち売上げ減につQdnU ながるのだ。これを計算できなかったのが誤りだったのである。

ここに市場戦略の難しさがある。新市場への進出は、絶対に現在の占有率を落とさないということが前提条件になるのだ。新市場に進出したために、既得の占有率を落としたのでは、全く意昧をなさないからだ。落としてもよいのなら初めからとらないほうがよいのだ。ましてや、自らの地元としてかけがえのない地域なのである。

市場原理を知らず、ただいたずらな欲望だけで、自らの力も考えず、何の戦略ももたずに戦いを開始しても、その結果はかくの知しである。愚行としかいいようがないではないか。

多くの社長が、口では企業戦争を唱え、販売競争といいながら、「では、どこに敵が居り、その敵状はこうで、それに対してどのように戦うのか」というごとになると、殆ど何の実質的な検討も、具体的な計画もない。

もしもそれがあるとしたならば、たえず情報を収集し、これを分析し、敵の戦力をつかみ、我社との比較の上にたって作戦計画をたてる筈である。

そごには可能性とともに危険もあるととが分る。その危険はどんなものであり、これを避けるてだては何か、くらいは考えるのが当然である。

作戦をたててみれば、以上のような検討などせずに、過去の成果だけをたのみ、新市場への進出も過去のようにうまくいくと信じて可能性だけを考え、危険にそなえることを忘れてしまう社長は数多い。

未知の戦場には未知の危険がひそみ、新たな作戦にともなって新たに発生する我社の危険があることを知らなければならない。ごれらの危険を事前に回避する方策をたてて乙そ、新作戦は現実性をもつものであることを忘れてはならないのである。

社長の重要関心の一つは、いついかなる場合にも、ク危険の回避。なのである。用意周到というのは、事前に危険を回避し、新たな作戦に伴って生ずる危険を予測してこれに対処する乙とを計算の中に入れておくことである。

いたずらに危険を恐れ、消極的になることではない。そんなことをしていたら会社をつぶす。ク積極経営。こそ発展の鍵である。その積極は、用意周到の上に立つた積極でなければならないのである。

くどいようだが、「戦いは自分だけでやっているのではない。必ず敵がいるのだ」という、何とも当り前な認識を持つことこそ大切であると強調したいのである。こんなことをわざわざ書かなければならないほど、ク戦い。に関する研究が不足どころか皆無に近いような状態が現実の姿なのである。

供給体勢の整備が先決

流通業者については、供給体勢といっても、商品は仕入れであるからあまり大きな問題となることはないと思われるかも知れないが、実は非常に重要な問題を含んでいるのである。製造が間に合わなければ仕入れはできないからだ。

私は、製造業者・施工業者などにコンサルティングを行なう場合には「現在の売上高に対してどれだけの供給力のユトリを持っているか」を、市場戦略を計画するに先立って必ず確かめるごとにしている。

現在の売上高に対して三十%増くらいの能力しかない場合には、本当のところ市場戦略の展開は望めないからである。

これは、たちまち三十%も売上げが伸びるからだという意味ではない。いくら伸びるかはやってみなければ分らないけれども、確実に上昇しだすことは殆ど例外はない。仮に一年で十%伸びたとしても||このくらいのことは私にすればそれほど難しいととではないのだが||あと余力は二十%弱しかない。

二十%もあれば当面は大丈夫ではないかとお考えの読者も多いと思うが、そうではないのである。

というのは、どんな業種でもピlク時というものがある。その時にたちまちク玉不足。を起してしまうのである。ごれが恐ろしいのだ。折角上昇気流に乗りだしたと思ったら、途端に供給が間に合わないのでは戦略も何もあったものではないのだ。ましてや、季節変動のある業種で繁忙期にでもなったら全く目も当てられなくなってしまうのである。三十%やそこらの供給力のユトりなどでは、過去においてさえ繁忙期には供給が間に合わなかった、というような会社が多いのである。

社長というものは、平均月商に対するユトリは考えるが、「繁忙期やピlク時にいくらユトリがあるか」などとは、なかなか考えないものである。繁忙期対策など事前に考えて対処することなど殆どないのである。閑散時にク作り溜め。することをやっている会社は極めて少ないのだ。社長の関心は、そのような戦略的なことより、作り溜めによる資金増加と金利増加のほうに大きな関心を持ってしまうからで

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繁忙期・ピlク時こそ、占有率を伸ばす絶好のチャンスなのだ。商品さえあれば労せずして占有率が上昇するからである。このような時には、各社とも殆ど例外なしに生産が間に合わない。そのために流通業者は複数の会社に重複発注し、重複需品お要(仮需要ともいう)が発生し、見かけ上のブlムをさらに煽る。

これに躍らされて各社とも必死の増産を行なうのだが、もともと生産が間に合わないから発生した重複需要なのだから、注文に応じられるわけがない。

こうした時には、早く注文に応じた会社が勝ちなのである。実需が満たされれば当然の乙ととして重複需要分はキャンセルということになる。納期遅れという口実があるだけに、どうにもならずに大量の売れ残りをかかえこむことになる。ピーク時は、一にもこにも早いもの勝ちなのだ。

アパレルメーカーのT社に初めてお伺いした時には、冷夏がたたって各社とも大量の売れ残りをかかえこんでいた。そのためにどの会社も『在庫をふやすな』という社長の指令によって冬物の生産を手控えていた。

T社長にやってもらった他社情報の収集でこのことを知った私は、T社長に『h為、物は思いきった増産を行なって備蓄をもつべきだ』という勧告を行なった。

私の勧告を実行したT社は、その冬に対前年比三十%以上の売上げ増大を実現しただけでなく、流通業者からは「T社は実力がある』という評価を得ることができそれ以後の販売まで有利になったのである。さらに、冬物を十分に備蓄したために、生産はいち早く夏物に切換えて、夏物でも優位に立つことができたのである。

T社長は『うまくいきましたが、本音をいえば備蓄には大きな不安がつきまとい、夜も眠れないくらい心配しました。何しろまだ売れもしないのに、冬物が連日外注先から入荷し、社員が心配顔で私に「大丈夫ですか」とたずねるのです。それを「大丈夫、絶対自信がある」と云ってはみたものの、内心はピクビクだったのです』と。

土木資材のメーカーs社では、毎年秋にピiクがくるのだが、いつも生産が間に合わずに大きな売損いを起していた。そのくせ、春には閑散期で仕事が不足する。毎年全く同じパターンを繰返していながら、なすすべはなかった。閑散期を考えると規模を大きくすることはできず、閑散期に備蓄することは分つてはいるが、そのFhunL ための資金増と金利増を考えるとこれもできない。こうS社長は考えていたのである

私は『備蓄の増分計算をしてごらんなさい」と申しあげて、商品のうちから規格

品を選んで社長が「これだけあればOKだ」と思われる数量の備蓄増分計算を行なってもらった。その結果は、増分費用は社長が考えているより遥かに小額であり、増分収益は反対に意外なほど大きかったのである。あとは資金調達だが、これは増分計算書を添えて借入申込を行なえば、銀行はまずはOKしてくれる乙とを申しあげて備蓄生産に踏みきったのである。それから間もなく、主要得意先のN社からこの商品に対する備蓄要求があり、これについて打合わせをしたいという申入れがあった。そして、N社の要求はS社の備蓄計画よりも遥かに小量で、それもS社に気遣いをしながらの要求だった。

N社も毎年のことであり、何とか間に合わせてもらいたいのなら、明確な市場戦略目標に基づく要求をS社に示して協力を求めるのが正しいのに、戦略も何もない。

ただ『毎年足りなくて困るから何とかしてくれ』では話にならないのである。買値を叩いているのだから、その上在庫負担をかけるわけだから、あまりムリはいえな

つμ い、というようなことだろうが、これでは事業経営ではない。堂々とN社の戦略方

針を示して、これに基づく打合わせでなければならないのである。

な効果を発揮する。しかし、これは自らの会社の供給力の絶対良の増大ではなく、供給力の有効利用である。つまり戦術である。

供給力の絶対量を大きくすることこそ戦略である。これは、単に内製能力を大きくすることではない。内製、外作を合わせた供給力を大きくすることでなければならない。

社長として考えなければならない供給力の整備は、「現在の年商額の三倍」である。「そんなオーバーな」と思われるかも知れないが、そうではないのだ。

市場戦略の展開によって、二十j三十%程度の売上げの伸びはしばしば起る。これにピlク時を加えると、瞬間風速は二倍くらいになることはある。これで既に二倍である。さらに次の年以降を考えると、どうしても三倍を考えておかないと、継続一貫した戦略を推進できなくなる。というのは、一口に三倍といっても、これを司i円L 実現するのに少なくとも三年はかかる。いや、まずは二倍と見るほうがよい。

これは簡単にいくことではないのはご理解いただける筈である。その時には、売上げも三年前より伸びているから、供給力は二倍にはなっていないのだ。もしも、供給力の整備がそれよりも遅れた場合には、供給余力は三年前とあまり変わっていない、というような事態さえ起りかねないのである。

これを考えれば、供給力三倍を目標に整備を始めるのはオーバーどころか、むしろ内輪でさえあるのだ。だからこそ私は事前に声を大にして社長を説くのだ

私の勧めをすぐに実行に移した会社でさえ、殆どの場合に、供給力の増強が思うに任せず二l 一年後には供給力の不足を来すのである。それを何も考えずに作戦を進めたなら、一年もたたずに供給力の不足に悩まされることになるのだ。本当のところ、供給力の整備は売上げ増大よりも難しいとさえいえるのである。だからこそ、社長が自ら構想をたて、自ら推進しなければならないのである。

これを単なる指令だけで任せた場合には、売上げの増大を賄うのが精いっぱいで、ほんの僅かでも供給余力が増えることさえ、まずはできないと思ったほうがよい。供給力増大に伴う様々な問題や制約を解決することは、社員の能力というよりは、らないのだ。それほど難しく、そして重大なことなのである。

その立場からできることではないのである。どうしても社長が自らやらなければな社長が行なう供給力整備は、先ず目標を設定しなければならない。その目標は固定的なものではなく、「いつの場合にも現在の能力の三倍を目指す」というものである。今年の目標は、来年になったら売上げの伸びた分に相応して大きくなる、と考えなければならない。次には基本方針として、「伸びの主体は外注工場の能力増大と外注先増加の併用」ということである。「経営戦略・利益戦略」篇でも既にのべたように、内作能力二。に対して外作能力をJf 以上にすることである。

さらに、「一対二」より「一対三」、「一対三」より「一対五」がよりょいと考えるべきである。外注比率の増大は、内一対外十でもよいのだ。いうまでもなく安全性と収益性の向上が同時に実現でき、所要の固定資金は僅かで済むからである。これは社長学シリーズ第五巻「増収増益戦略」篇で説明した通りである。

その外注工場は、大型ほどよい。私は中小企業でありながら、大企業を下請けとして使っている会社を数社知っているが、これくらいの気概を持つべきである。大企業ならば生産余力は大きいし、品質面の心配はない。ただ、価格が多少高いけれくいけば一社持てば五倍や十倍は一気に実現してしまうのである。次善は中堅企ny ど、こんなものは何でもない。非価格メリットは想像以上に大きいのである。うま業であり、中企業は下策、小企業など論外であると考えるのが正しいのである。

我社より大きな下請けを持つことこそ、市場戦略を後顧の憂いなく展開することができることを、よくよく認識していただきたいのである。大方の中小企業で持つている下請けは、小企業といえるくらいなのはクマシ。なほうで、大部分は全くの零細業者にしかすぎない。それらは殆ど。オンリーさん。である。これでは増産余力など全くないのだ。だから、外注とは名のみ、実体はク分工場。にしかすぎない。つまり、内作と全く同じことなのだ。私のいう外作とは、こうしたオンリーさんは内作として考えた上でのことである。本当の意味での外注とは、増産余力を最小限度でも五十%は持っていなければならないのである。

さて、では流通業者として供給力の増加をどう考えたらいいのだろうか。

季節変動があまりない商品で、仕入先がシッカリしている場合には、あまり考える必要はないが、季節変動があり、しかも仕入先に中小業者が多い場合には他人事では済まされない。占有率を労せずして高める絶好のチャンスを逃す危険があるからだ。

この場合には、市場戦略上の最重要懸案の一つとして、必ず社長自らがこれの解決に当る必要がある。

その方法は極めて簡単である。「閑散季に仕入れておく」だけである。この簡単極まりないことが何故多くの会社でできないのだろうか。誠に不思議の語に尽きるのだ。

できない理由たるや、資金と金利の問題だけなのだから私にはどうしても解せないのである。乙れはク増分計算ψ をやってみれば如何に有利であるかは論議の余地など全くないほど大幅に収益が向上するからだ。所要資金は増分計算書を添えた借入申込でまずは借りられる。いったい、どこに難しさがあるというのだ。そして、危険は絶対といっていいくらい無く、反対に大きな増分収益がころがりこんでくるのである。

だから、できない理由というのは、備蓄のデメリットだけを考えて備蓄作戦のメリットを知らないということにしか過ぎないのである。

、、、、、、、、、、、、、

は、会計学にこうした思想がないから、ということである||いや実をいうと、。増

その知らない理由というの

分計算ψ という考え方は理論としてはあるのだが、会計学者は事業経営の実際を知らないために単なる理論としてある、だけで、乙れの発展も応用もできない、とい、つのが本当のところなのである。

増分計算については、拙著「増収増益戦略」篇のところで詳述してあるので、そこをお読みになっていただきたいのである。

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