プライバシーののぞき見は筆者の本意ではない
最初に述べておくと、筆者は芸能人のゴシップ話などに興味があるタイプではない。また、他人の恋愛や夫婦関係にこうあるべきだなどと口出しするようなこともない。
個人主義、自由主義の考えを持っており、恋愛や家庭の問題などは他人がどうこう言うべきではないし、他人に迷惑をかけずに法律を守っているのならば、本人たちのやりたいようにやればいいと思っている。
しかし、国家権力が介入する結婚制度がどのように機能し、その強制力によって、夫婦間でどのような金銭の支払い義務が生じるのかには、法律と経済の問題として強い関心を持っている。
多くの報道がなされる芸能人、著名人夫婦の離婚騒動は、実際に結婚と離婚の法律がどう動くのかを理解するためのケーススタディの良い材料を提供しており、本書で分析する対象にさせていただいた。
当の本人たちは、こうした報道自体が不快なものであり、また、そうした報道に基づき本書でプライベートな問題を論じられるのも、もちろん、いい気分ではないだろう。
そうしたことは重々承知しているが、現実の結婚と離婚に関する問題を、国民に知らせるという意義に免じて、どうかお許しいただきたい。
ダルビッシュ有投手と紗栄子さん
最初のケーススタディには、すこし昔の話であるが、米大リーグ、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手とタレントの紗栄子さんとの離婚劇を取り上げよう。
離婚騒動が勃発してから、紗栄子さんが月々の生活費を 1000万円要求しているなどの報道で話題になった。
筆者は、本当に 1000万円請求していたのか、ただマスコミが憶測で報道したのか、真実はもちろん知るところではない。
とにかく、 1カ月の生活費が 1000万円というのは、常識的に考えて破格のものと世間では受け取られていた。しかし、筆者はこの生活費は、とても適正な金額だと思った。
なぜならば、結婚というのは金融商品の取引であり、ダルビッシュほどの人材ならば、この金融商品の月々のクーポンの支払い、すなわち婚姻費用はそれぐらいの金額になるのは明らかだったからだ。
2012年1月 17日発売の週刊女性、同日付の日刊ゲンダイなどの記事によると、当初、月に 1000万円の生活費を請求していた紗栄子さんは、最終的には「慰謝料 5億円、月々の養育費 500万円」で協議離婚を成立させたそうである。ここでいう慰謝料は、もちろん法律用語の慰謝料ではなく、離婚を成立するための解決金の総額のことである。
筆者はこれらの情報が正しいかどうかはまったく関知するところではないが、金融商品としての結婚を計算すると、この金額はかなり妥当な線だと言える。
いや、むしろ紗栄子さんがかなり良心的だったとさえ思える。まず第一に紗栄子さんには幼い子供がふたりいる。
そしてダルビッシュ投手が浮気をしていた可能性があり、当時、週刊誌等で報じられた不倫疑惑が裁判所で不貞行為の証拠として認められる可能性があった。
実際に浮気が立証されるかどうかは別にしても、紗栄子さんが幼い子供を養育している、という事実がある以上、ダルビッシュ投手側から離婚裁判を起こしても、それが裁判所で認められる可能性はほぼゼロであった。
そうすると紗栄子さんとダルビッシュ投手はお互いに別居していても、法律上の婚姻関係は紗栄子さんが離婚に自発的に「合意」しない限り残ることになる。
この場合の「婚姻費用」はいくらほどになるのだろうか? 『判例タイムズ 1111号─簡易迅速な養育費等の算定を目指して─養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案─』を参考にして計算してみよう。
まずダルビッシュ投手の当時の年収を推定しなければいけない。
レンジャーズと 6年 5600万ドル +出来高 400万ドルの総額 6000万ドルで契約した、と報じられていたので、当時のドル円レートを 1ドル 80円として計算しても、ざっと 6年で 48億円となり年俸は 8億円程度だ。ここに CMなどの出演料が入るので、年収 10億円は下らないだろう。それではダルビッシュ投手と紗栄子さんのケースでコンピ(婚姻費用)はいくらになるのだろうか。これらの情報から計算すると月々 1400万円以上になる。
かなり控え目に見積もってもダルビッシュ投手は月 1400万円以上の支払い義務があったのであり、紗栄子さんの当初の月 1000万円の生活費の要求は、なんら不当に高額なものではないことがわかろう。
つまり、紗栄子さんが離婚に合意しないだけで、ほぼ自動的に毎月 1400万円が振り込まれ続けることになり、これには税金もかからないのだ。
これは年間 1億 7000万円程度であり、さらに離婚した時には、ふたりで蓄えた( =ダルビッシュ投手が稼いだ)共有財産の半分の権利が発生する。
当時の新聞報道などによれば、この共有財産が 5億円程度だったという。
紗栄子さんとしては 10年離婚しないだけで、コンピだけで 17億円と財産分与の 5億円で、 23億円も入ってくることになる。
そして、最初に述べたように和解以外にダルビッシュ投手が離婚を成立させることはほぼ不可能なのだ。だから、紗栄子さんに離婚に合意してもらうためには、少なくとも 20億円程度のパッケージを用意する必要がある。10億円程度のはした金で離婚しようといわれても、離婚しませんといって婚姻費用を搾り取り続けるだけの話なのだ。
それにもかかわらず、財産分与 5億円 +月 500万円の養育費 20年間という、たったの総額 17億円にしかならない金額で紗栄子さんは和解したという。だから、仮にマスコミで流された情報が正しいとしたら、紗栄子さんは随分控えめな女性だ、というのが筆者の率直な感想なのである。
ところで、ダルビッシュ投手は、その後、女子レスリング選手の山本聖子さんと子供を作ったそうだ。とてもめでたい話である。
益若つばささん
日本国憲法第 14条 1項を読むと次のように書かれている。
すべての国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
さらに、婚姻に関する男女の自由意志の尊重、両性の本質的平等に関しては、日本国憲法第 24条にはっきりと書かれている。
1項 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2項 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
法の下で男女は必ず平等でなければいけないのだ。
性差別の禁止は、近代国家では最も基本的な法体系の原則である。
つまり、金持ちの男(正確には高所得の男)と結婚した女が婚姻費用や財産分与などで数々の金銭的な利益があるならば、それはまったく平等に、金持ちの女と結婚した男にも同じものがなければおかしいのである。
そして、日本は法治国家なので、当然そうなっている。ここで人気モデルである益若つばささんのケースを見てみよう。
益若つばささんは、読者モデルとして人気が爆発し、彼女が着用した服やアクセサリーは瞬く間に売れるなど、突出した経済効果を有することから『 100億円ギャル』の異名をもって知られてきた。
当然のこととして、彼女は一財産築くことになり、現在でもその人気は衰えていない。2007年に、男性モデルと結婚し、翌年に第一子となる長男を出産している。
夫は、結婚後は仕事を減らし、表に出る仕事はしておらず、一般人として生活していたようだ。つまり、益若つばささんと彼の間には圧倒的な所得格差があったことになる。
様々な経緯があり、 2013年1月 14日に、益若つばささん(当時 27歳)は夫(当時 30歳)と離婚したことを発表した。彼女が子供を引き取り、シングルマザーとしてモデル業などをがんばっていくとのことである。
当然だが、法律は男女平等であるので、夫には益若つばささんが稼いだ莫大な金銭に対して半分の権利が発生するのである。なぜならば、夫の内助の功があったから、益若つばささんは稼げたのである、と法律的には解釈されるからだ。
真偽の程は定かではないが、女性週刊誌などの報道によれば、別れるに際して夫から億を超える金額を要求されたようである(女性自身 2013年1月 15日付「益若つばさ 離婚夫『別れるなら金くれ』と〝億超え〟金額請求」)。最終的には、数千万円で決着がついたようだ(産経ニュース 2013年1月 14日付「益若つばさ離婚成立、元夫・梅田に財産分与」)。
また、法律的には子供を引き取る益若つばささんは夫に対して養育費を請求する権利があるが、それも請求しないとのことである。
夫が払える養育費はおそらく月に数万円もなく、少なくとも数千万円以上の年収がある益若つばささんが、そんなものを請求しないのは当たり前である。
世間では「ヒモ亭主」などと呼ばれて批判されていた夫であるが、こうした権利の主張はまったく恥ずかしいことではないと思う。
実際に、いまのご時世、離婚の際には、稼ぐ妻に夫が財産分与などの金銭を請求するのは当たり前になっている。男女平等が近代国家の法の精神であるので、当然のことであろう。
神田うの夫妻
「仮に」の話であるが、タレントであり実業家の神田うのさんと大手パチンコ・チェーン日拓グループの経営者である西村拓郎氏が離婚をしたらどうなるのかを考えてみよう。
セレブリティとして注目を集めるうのさんは、ちょっとした夫婦喧嘩などがあると、すぐに夫婦の仲についてメディアで報道され、離婚の噂などが話題にされてしまう(たとえば、週刊文春 2012年 12月 27日号「夫の元愛人衝撃告白 神田うの『家庭崩壊』危機!」)。
現在、夫婦は安泰であるので、あくまで架空の話である。
西村氏が経営する日拓グループは、売上高 1745億円( 2015年 12月期)、社員 1088名を抱え、都内を中心にパチンコ店を経営し、不動産事業も展開する企業体である。
日拓グループは父親が一代で興したものであり、西村氏は日本有数の富裕層の家に生まれた御曹司であった。
また、神田うのさん本人も事業家として成功しており、下着やウェディング・ドレスなどのブランドをプロデュースして大ヒットさせている。
当然のように結婚生活は絢爛豪華なものであった。
たとえば、 2011年 10月に生まれた長女の子育て用にと、六本木の高級マンションの最上階のいくつかの部屋を総額 26億円ほどで購入したという報道がなされたこともある(週刊ポスト 2011年 12月 16日号「神田うの 六本木マンション最上階 4部屋を総額 26億円で購入」)。
さて、この夫婦が離婚した場合は、これほどの大金持ちの夫から、したたかなうのは、巨額の慰謝料を取るだろう、という報道がなされていた。
しかし、筆者の見立てでは、おそらく離婚した場合には、金を払うことになるのは神田うのさんのほうではないかと思われるのだ。
離婚で大きな金が動くのは、財産分与と婚姻費用であり、慰謝料などは誤差の範囲内の話なのである。そして、このような富裕層の離婚の場合、巨額になる可能性があるのは財産分与である。財産分与の考え方は極めてシンプルで、結婚してからふたりで作った共有財産を、離婚時に精算しようというものだ。
最近の司法では、婚姻関係にあれば専業主婦でも、 50%の寄与度が認められるのがふつうなので、精算というのは半々にすること、と考えてもらってさしつかえない。
つまり、当たり前だが、結婚前に持っていた財産は関係ないのであり、結婚後に財産が増えていなければ、支払い義務も生じないのである。
筆者の勝手な推測だが、結婚してから、夫の西村氏本人の財産が増加したようには思えない。パチンコ業界は斜陽産業であり、結婚してから西村氏が大きく個人資産を増やした可能性は低いだろう。
仮に、婚姻届提出時と現在で、西村氏の個人資産に変化がない、もしくは減っているとすれば、西村氏本人がどれほどの富豪でも、財産分与するべき財産は 1円もない。
彼のお父さんの財産などはますます関係ない。一方で、神田うのさんの事業は明らかに成功しており、かなりの金額を稼ぎだしていると言われている。
当然だが、その利益の半分は夫の支えがあったから稼げたものだとみなされる。だとすれば、財産分与で金を払わなければいけないのは神田うのさんのほうである。
婚姻費用のほうだが、日本の所得税の最高税率は住民税と合わせて、 50%、 2015年より 55%と世界の中で最高水準であり、西村氏のような資産家がわざわざこのような所得の形で会社から給料を受け取っているとは考えづらい。
だとしたら、婚姻費用の支払い義務も事業家として成功している妻の神田うのさんのほうに生じることになろう。
結婚する前にすでに夫が持っていた財産に対しては妻の取り分はゼロであり、理論上は結婚後に資産が増えていなくて、夫より妻の所得が多ければ、どんな金持ちの男でも一銭も払わず、いやむしろ妻から金をもらって妻と別れることができるのだ。
似たような話を追記するが、大手パチンコ機器メーカーの京楽産業の社長と玉の輿婚をした女優の伊東美咲さんだが、 2016年6月期の決算では営業利益が大幅な赤字に転落してしまった(日刊ゲンダイ 2016年 12月 13日付「伊東美咲 夫の会社が一転ピンチで芸能界に本格復帰も?」)。
縁起でもない話だが、万一、伊東美咲さんが離婚する場合、やはり夫から一銭ももらえず、場合によっては彼女が支払う側に回ることもあるだろう。
世間では、女の人は金持ちの男と結婚して離婚したら、ものすごい「慰謝料」を取れると思われているのだが、必ずしもそうとは限らないのだ。
まず、マスコミ等で語られる慰謝料という言葉が法律用語の慰謝料とは意味が違うということはさておき、西村氏のようなストック型の金持ちと離婚しても、妻は必ずしも金がもらえるわけではないのである。
結婚制度でも税金でも、日本は自分で稼いでいる人に厳しいのだが、親から引き継いだりして、ストックで金を持っている人は、所得税も払わなくてもいいし、離婚しても金を取られないのだ。
高嶋政伸さんと美元さん
俳優の高嶋政伸さんと妻でモデルの美元さんの離婚劇は、当初は、ある程度の高額所得者の夫と専業主婦との間に起こりえる典型的なものであった。つまり、「コンピ地獄」である。
しかし、この離婚係争は、政伸さんに非常に有利な方向に進むことになった。まずは、離婚に至るまでの経緯をおさらいしよう。
政伸さんと美元さんは 2008年9月に結婚し、その 1年 11カ月後の 2010年8月に政伸さんが自宅を出て別居している。その後はお決まりのコースである。
美元さんが婚姻費用、通称「コンピ」を請求して、あとはなるべく離婚裁判を長引かせて、将来のコンピの総額を夫に買い取らせることによって自らの利益を最大化するのである。
当時は美元さんが 109万円の生活費を請求していることが週刊誌等で大きく報道され、どこからかリークされたその内訳に高額の美容代などが含まれていたことから、美元さんはマスコミ等から激しくバッシングされていた(週刊女性 2012年8月 7日号「美元 政伸に突きつけた月 109万円仰天使用明細」)。
しかし、こうしたバッシングは美元さんの権利を不当に非難するものだと思われる。
コンピがクーポンとして支払われる結婚という名の金融商品を手に入れた以上、そこから最大限の利益を得ようとするのは極めて合理的なことであり、法の精神に則ったものでもある。
仮に、そういったことで妻が利益を得るのが社会通念上おかしいというならば、それは美元さんを責めるべきではなく、議会制民主主義の原理原則に従い、国会を通して法改正をするべきなのである。
今回の離婚裁判も、お互いに相手が暴力を振るった、愛人を作った、ストーカーをした、精神的におかしいなどと罵りあうという展開になった。
ここで面白いのは、こうして相手をどこまでも罵倒するのだが、その狙いはお互いに正反対だということだ。
つまり、政伸さんは美元さんが有責配偶者であり、それゆえに離婚できると主張していて、美元さんも政伸さんが極悪非道の有責配偶者であると主張しているのだが、こっちは逆にそれゆえに政伸さんからの離婚は法的に認めることはできずに、私はもう一度結婚生活をやり直したい、と主張するのである。
もちろん、狙いは婚姻費用の支払い期間の最大化である。
筆者は当時、コンピを月 100万円程度と考え、これの 5年分の 6000万円と財産分与の 2000万円ぐらいで、約 8000万円ぐらいの金額が動くのではないかとざっくりと読んでいたが、後に裁判で明らかになったが、実際はこれよりかなり少ない金額で落ち着くことになった。
まず、コンピは月 45万円であったようだ。このコンピから逆算できる政伸さんの年収は 2500万円程度になろう。そして、離婚裁判は、政伸さんに非常に有利な方向に動いたのだ。
東京家裁で小林愛子裁判官は 2012年 11月 9日に、原告の高嶋政伸さん側の主張を認め、「 2人の関係は破綻しており修復不可能だ」として、離婚を命じる判決を言い渡したのだ。
政伸さんのほぼ完勝であった。
日本の司法が離婚裁判において、有責主義から破綻主義にアクセルをさらに踏み込んでいるという印象を与えた。
美元さんは高裁で逆転する可能性があり、また、控訴すればその間はまだ離婚が決まったわけではないので、引き続きコンピの支払い義務が生じる。
しかし、高裁は家裁の続審なので、通常は家裁の判決はそれなりの重みがある。
第一審勝訴により、コンピ地獄がどれほど長く続くか、政伸さんの見通しははるかに明るくなったのだ。
結局、美元さんは控訴のカードをちらつかせながら 3000万円の解決金を要求し、結局、この 3000万円からそれまでのコンピの総額の 1280万円を差し引いた 1720万円で和解を成立させたようだ(週刊女性 2012年 12月 18日号「美元 和解金『たった 1720万円』で陥落したワケ」)。
一審敗訴の結果を踏まえれば、美元さんは苦しい立場に立たされたわけで、この程度の金額で和解せざるを得なかったのだろう。
繰り返すが、当時は、政伸さん、美元さんが双方ともにお互いを罵りあう様子が報道されてバッシングを受けていたが(特に美元さん)、それらは離婚係争において、お互いに相手を有責配偶者にするための典型的な法廷戦略だ。よって、なんら人間性などには関係ないことなのである。
ところで、高嶋政伸さんは、 2015年9月に再婚した。
相手は、 14歳年下の女医だそうだ(日刊スポーツ 2015年9月 18日付「高嶋政伸 14歳下女医と再婚 美元と離婚闘争から 3年」)。
同等のフロー所得を期待できる女医が相手なら、次はコンピ地獄に陥る心配もないだろう。とても賢明な選択だ。
矢口真里さんと中村昌也さん
これまでに何度か指摘してきたが、著名人が離婚した際にマスコミで報道される「慰謝料」と法律用語の慰謝料は意味が異なる。マスコミの報道で使われる慰謝料というのは、財産分与なども含めて、離婚の際に支払われる総額のことである。
一方で法律用語の慰謝料とは「不法行為によって被害者に与えた精神的な苦痛に対して、その賠償として支払われる金銭」のことである。
本書で慰謝料と言えば、こちらの法律用語としての慰謝料を指している。
人は誰と恋愛しようと自由なのだが、結婚というのは肉体関係の排他的独占契約が内包されている金融商品なので、これに違反した場合は、違反した配偶者、または、結婚していると知っていて肉体関係を持った相手に対して、不法に肉体関係を持たれてしまった方(浮気された方)は慰謝料を請求できるのである。
そして、この慰謝料の相場は、財産や所得に関係なく 100万円や 200万円といったものである。
裁判官にものすごく嫌われて、最高に高くなっても 500万円ぐらいだ。
高額所得者の離婚では、将来の婚姻費用の前払いとしての解決金、財産分与などで数千万円以上の金額が動くことがふつうなので、こうした慰謝料は全体から見れば非常に小さいのだ。
それでは元モーニング娘。でバラエティ番組などで引っ張りダコだったタレントの矢口真里さん(当時 30歳)と、俳優の中村昌也さん(当時 27歳)の離婚について考えよう。
このケースも女性の矢口真里さんが多額の金銭を支払うことになった。しかし、その内実は報道されているものとは異なる。
矢口真里さんは人気タレントとして数千万円以上の年収があり、一方で中村昌也さんは俳優としてまだ人気を確立しておらず、 10倍以上の所得差があることから、当初から格差婚と呼ばれていた。また、結婚後も矢口真里さんは売れ続け、中村昌也さんは相変わらずであり、所得格差は拡がるばかりだったという。
2013年5月 21日発売の週刊女性が、矢口真里さんが男を自宅に連れ込んでいたときに、ロケを早く切り上げた中村昌也さんが帰宅し、不貞行為をしている現場に鉢合わせしたことを報じてから、ワイドショーなどで連日この浮気場面が報じられることになった。
矢口真里さんは同年2月 22日の飲み会で出会った男性モデルを自宅に連れ帰り、肉体関係を持ち、そこに、翌 23日朝、ドラマの地方ロケを予定より早く終えて帰宅した中村昌也さんが寝室で鉢合わせし修羅場になったとのことである。
乱れたベッドとクローゼットに隠れた裸の男を中村昌也さんは見つけて、咄嗟に携帯電話で証拠写真まで撮ったそうである(週刊文春 2013年6月 6日号「矢口真里は全裸で 男はクローゼットへ逃げ込んだ 不倫現場の爆弾証言」)。
その後、夫婦は別居生活を経て、同年5月 30日に矢口真里さんは離婚が成立したことを発表した。離婚に際する慰謝料として 1000万円程度が支払われたそうである(女性自身 2013年6月 18日号「矢口真里 年下夫へ慰謝料 1千万円 妻の不倫 →離婚 激増中!」)。
マスコミでは、ある意味で非常に絵になった浮気現場や、女性である矢口真里さんが浮気をしたという貞操観念の無さについて盛んに報道された。
離婚に際しては、当然、その報いとしての「慰謝料」の支払い、ということになっているのだが、浮気は金銭的な問題から見れば重要ではない。
これほどの所得があれば、矢口真里さんは結婚後にもかなりの財産を築いたはずである。一方で、中村昌也さんは、ほとんど貯金できなかったと想像できる。
矢口夫婦の場合は、 2011年5月 22日に婚姻届を提出し、別居に至る 2013年 2月頃までの 2年弱の期間に蓄えられた財産が共有財産となる。
矢口真里さんがこれだけの金額を稼げたのも、当然であるが中村昌也さんの内助の功のおかげだと法律的には解釈され、その半分は夫である中村昌也さんのものである。これを財産分与として当然請求する権利がある。
この財産分与の金額は、慰謝料とは桁が違うので、今回の離婚に関しては、矢口真里さんが浮気をした、中村昌也さんが浮気をされた、という事実はあまり関係ないのである。
さて、婚姻費用のほうであるが、こちらは面白い観点である。
通常、高額所得者が離婚する場合、婚姻費用を支払う側が、将来の婚姻費用も前払いする形で、多額の金銭を支払うのが普通である。
しかし、矢口真里さんは浮気報道の後に芸能活動を自粛しており、所得はほぼゼロになっている。こうなると婚姻費用もゼロになる。
離婚係争が長引くのは、片方が婚姻費用という形で、長引かせた方が経済的に利する構造にあるのだが、こうして所得をゼロにして、婚姻費用の源泉を断ち切ることによって、離婚係争を終結させる戦略も考えられる。
敵対的買収をしかけられたときに、経営者が自社の重要な資産や収益性の高い事業を第三者に譲渡したり、分社化したりすることによって、企業価値を大きく下げて、買収者の買収意欲を大きく削ぐことを目的とする戦略を「焦土作戦」というが、いわば自らの所得をゼロにするのは、離婚係争の究極の焦土作戦なのである。
肉を切らせて骨を断つ、とも言えるが、おそらくは意図せずして、矢口真里さんはこのような焦土作戦を展開したことになる。
結果として、中村昌也さんに対する支払いは、それほど高額にならなかった。
世間では、矢口真里さんの浮気を批判する声ばかりが聞かれたが、アイドルとつきあい、別れるときにこんな大金をもらえた中村昌也さんはずいぶんと得をしたのではないだろうか。
サイバーエージェント藤田 CEOと奥菜恵さん
前にも述べたが、起業家にとって奥さんとは実に恐ろしい存在である。
サイバーエージェント社長の藤田晋氏が、奥菜恵さんと離婚したときに、奥菜恵さん(の弁護士)が 10億円を請求しているとして話題になった(女性セブン 2007年 12月 6日号「奥菜恵が藤田社長に対して 10億円の財産分与を要求」)。
やはり、世間では、この法外な奥菜恵さん側の請求に対して批判が巻き起こった。しかし、この 10億円の請求自体は正当なものだ。
仮に筆者が奥菜恵さん側の弁護士だったとしたら、当然これぐらいの金額は請求していたであろう。法的根拠は極めて明白だ。
結婚当時の藤田氏の財産はサイバーエージェント株の自分の持ち分が少なくとも 250億円程度あった。婚姻していた 1年半の間にサイバーエージェント株の値上がりなどで、この財産が 270億円程度に増えた。
サイバーエージェント株の値上がりの少なくとも半分は、奥菜恵さんの「内助の功」のおかげなので、藤田氏の財産のうちで結婚後に増えた 20億円の半分の 10億円は奥菜恵さんのものである。
だから奥菜恵さんが 10億円を要求するのは当たり前なのである。
もちろん、株式のような流動的な資産の評価額をどうするか、そして奥菜恵さんの貢献の割合はどれほどかは裁判官の判断に委ねられるから、必ずしも奥菜恵さんの言い値が通るわけではないが、少なくともこの程度の金額を最初に請求していくことは、法廷戦略としては妥当な判断である。
スポーツ選手や俳優の離婚にまつわる巨額の支払い金額はよく話題になるが、離婚が本当に恐ろしいのは、実は起業家なのである。
創業する前に結婚して、会社がとうとう上場し、そして離婚、ということになると、夫の持ち株の半分がいきなり奥さんのものになるのだ。これはハゲタカ・ファンドどころの騒ぎではない。
ハゲタカ・ファンドは株を買い占める時に、その分の現金を置いていくが、奥さんはなんの支払いもなしにいきなり株の半分を持っていくのである。
しかも、離婚騒動になっているということは、夫のことを破滅させてやりたい、ぐらいに思っていたりするのだ。
筆者はベンチャー・キャピタルが投資をするときに、ビジネス・モデルや経営者の資質を厳しく審査するのに、なぜ奥さんとの関係のデューデリジェンス(収益性やリスクなどを総合的かつ詳細に調査すること)を入念に行わないのか、不思議でしょうがない。
奥さんは企業の資本政策において、極めて重大なリスク要因となりうるのだ。
日本を代表する起業家である藤田氏は、その後も順調に事業を拡大し、また、素晴らしい女性と再婚したようだ。
マーク・ザッカーバーグとプリシラ・チャン
さらに、海外のケースを取り上げよう。Facebookの CEOであるマーク・ザッカーバーグである。
2012年5月 18日に Facebookが株式公開し、その直後の 19日に、学生時代から交際していた中国系アメリカ人のプリシラ・チャンさんとの結婚を発表し、式を挙げた( Forbes. com 2012年5月 20日付「フェイスブック CEO夫人は玉の輿か」)。
アメリカの結婚と離婚の法律は州によって微妙に違い、さらに、アメリカでは婚前契約が日本よりも発達しているなどの違いがあるが、そもそも日本の結婚や離婚に関する法律は、西洋から輸入されたものであるから、欧米先進国と日本で、これらの法律はそれほど変わるものではない。
日本では昭和初期までは妾などはありふれていた。
キリスト教的な厳格な一夫一妻制が正しい夫婦関係のあり方だとされたのは、日本の近代化に伴い、西洋から輸入された結婚や離婚の法律が大きく関係していると思われる。
それではザッカーバーグは、なぜ株式公開直後に結婚したのだろうか? 筆者は、これは絶妙なタイミングだと思う。
ザッカーバーグの背後のリーガル・チームの優秀さを垣間見る思いがした。
ザッカーバーグは結婚していないのだから、何の潜在的な支払い義務も発生しない一番いい状況ではないか、と思われるかもしれないが、そう話は単純ではない。
仮に男女の仲違いが生じた場合に、プリシラ・チャンの弁護団は、たまたま婚姻届を提出していなかっただけで「実質的な」婚姻状態だった、と間違いなく主張してくるはずだ。俗にいう「内縁の妻」である。
日本は、非嫡出子の相続差別などの前時代的な法律がつい最近まで残っていたような国だから、形式的な結婚制度というものを大切にしているが、欧米では、事実婚においての女側の権利を認める傾向が日本より強い。
18日(金曜日)、 Facebook株は 38・ 23ドルで取引を終え、時価総額は当時の為替レートで 8兆 2000億円ほどで、このうちの 2兆円がザッカーバーグの持分だった。
ザッカーバーグは世界の富豪番付で 26位になった。
もし事実婚が認定されるとすると、プリシラは Facebook創業前から付き合っているので、この 2兆円のうちの半分が丸々プリシラのものだと判定される可能性がある。
もし、離婚をめぐる法廷闘争になれば、 2兆円の半分の 1兆円と、事実婚が認定されない場合の 0円の間で、プリシラの持分がどこになるのかをめぐって、双方が、数百人単位の弁護士、探偵、調査スタッフからなるチームを編成し、壮絶な法廷闘争になることが容易に想像できる。
さらにプリシラは中国系である。
マークとプリシラの法廷闘争は──仮にそれが起こったとするならば──アメリカと中国という世界の二大超大国の外交上の極めて重大な問題にも発展するリスクを内包していた。
このように、プリシラの事実婚状態は、 Facebookの株主のみならず、金融市場全体、さらに世界の二大超大国のパワーバランスをめぐる、極めて重大なリスク要因であった。
そして、ザッカーバーグのリーガル・チームはこれを、プリシラの機嫌を損ねる事無く解決したのである。
株式公開直後に正式に結婚することにより、どの時点で事実婚がはじまったか、つまり財産分与における共有財産の形成がスタートしたポイントは、いったいいつなのか、という潜在的に発生しうる終わりなき論争に、最初から終止符を打つことを狙ったのだ。
株式公開直後のザッカーバーグの資産がスタート地点になり、ここからの財産の増加分だけが、潜在的に夫婦で二等分される共有財産だ、という力強く明確な証拠を作ったのである。
事実婚が完全に認められるケースだと、ザッカーバーグにいきなり 1兆円の支払い義務が生じるので、これはザッカーバーグにとって有利な条件だろう。
ふつうは金持ちが結婚をすると大変な財政的リスクを背負うことになるが、ザッカーバーグはむしろ結婚することによりそのリスクを最小化したのである。
紗栄子さんと ZOZOTOWN前澤社長
ダルビッシュ投手の元妻の紗栄子さんが、またもや世界的な富豪と交際しているそうだ(女性セブン 2015年 11月 5日号「紗栄子 新恋人は事実婚女性 2人と子供 3人 結婚しない男」)。
次のお相手は、ファッション通販サービス ZOZOTOWNなどを運営する前澤友作社長である。
前澤氏は、日本を代表する経営者で、フォーブスが発表する世界長者番付の常連で、 2015年は日本で 23位となり、保有資産は 2000億円ほどとなっている。
ダルビッシュはただのプロ野球選手ではない。プロ野球選手の中でも飛び抜けた才能を持っている、世界トップレベルのプレイヤーであり、それゆえに報酬も世界レベルだった。
そして、前澤さんも、ただの成功した金持ちの経営者ではない。こちらも世界レベルの日本を代表する経営者なのだ。
ふたりとも 100万人にひとりいるかどうかの逸材である。
今回の交際は、彼女がダルビッシュと結婚できたことはただの運ではなかったことを、世間に示したと言えるだろう。
ところで、前澤氏は、 2人の事実婚中の女性との間に計 3人の子供がいるそうだ。世間では「結婚しない男」だとも言われている。
法律上の結婚をしてくれないのなら、ダルビッシュのときのような巨額のコンピを請求することは難しいだろうが、これだけの富豪が相手であるならば、たとえコンピがなくても、その辺の男とはそれこそ桁がいくつも違う経済的な恩恵を受けることは間違いないだろう。何とも羨ましい話である。
川谷絵音さんとベッキーさん
人気バンド「ゲスの極み乙女。」のボーカルである川谷絵音さんと、当時、女性タレントとして人気絶頂だったベッキーさんとの不倫は、連日連夜テレビで報道された。
発端となったのは、週刊文春 2016年1月 14日号のスクープ記事である。
そこには、ベッキーさんと既婚者であった川谷絵音さんとの LINEでの会話が掲載されていた。
この LINEの写真は、ベッキーさんが離婚を迫り、ふたりの間で離婚届のことを「卒論」と隠語で呼び、それを提出できる日が来ることをふたりで待ちわびているという、生々しいものだった。
それが、どういう経緯で漏れたのかは、いまだに謎だが、とにかく国民的なタレントのベッキーさんが不倫をしているということが、白日の下に晒されてしまったのだ。
後に、川谷さんは自身のブログで「文春さんで報じられた LINEの内容は全て本物です。かつベッキーさんと友達関係だと最初の FAXでお伝えしましたが、あれは噓であり、恋愛関係にありました」と認めている。
そして、川谷さんは、自身のブログで、バンドが売れる前から支えてくれていた妻と離婚したことも報告している(絵音のかわた日記 2016年5月 9日付)。
典型的な、糟糠の妻を捨てたケースとなってしまった。こうした状況に、世間は川谷氏の元妻に同情的だ。
しかし、本当にそうだろうか? 夫が成功してから捨てられる糟糠の妻は、見方によっては、結婚で最大の価値を得ることになるのだ。
それは誰も見向きもしないベンチャー企業に投資し、その企業が見事に上場してから売り抜けるというのと同じである。
「魅力がすごいよ」「両成敗」などのアルバムがヒットし、ベッキーさんとの不倫が発覚するすぐ前には紅白歌合戦への出場も果たしている。押しも押されもせぬメジャーバンドに成り上がったのだ。
仮に婚姻届を提出したのが売れる前だとしたら、この間に川谷さんが蓄財した分のそっくり半分が財産分与で支払われることになる。さらに、婚姻費用も多額になるので、その数年分も上乗せされる。旦那の不倫相手が大物タレントなら、その分の慰謝料を取りはぐれることもないだろう。
財産分与、婚姻費用の前払い、慰謝料、すべてが最高水準であり、まともな弁護士が付いていたとしたら、かなりの金が手に入ったはずなのだ。ベンチャー・キャピタルなら、見事なエグジットを果たしたことになる。
むしろ良い投資とは言えないのは、旦那の絶頂期に略奪愛を成功させる新しい奥さんのほうである。なぜならば、そこがピークならば、財産分与は期待できないし、財産を取り崩して生活するなら、婚姻費用も最小限になってしまう。そのまま落ちぶれて離婚となれば、女性側が一円ももらえないどころか、払う側に回る可能性さえある。
法律は、貧しいときから一緒に苦労を重ねてきた奥さんの利益をしっかりと守っているのだ。捨てられる糟糠の妻は、ある意味で、勝者なのである。
ジョニー・デップとアンバー・ハード
この本を執筆中に、ハリウッドのスーパースターであるジョニー・デップの離婚騒動のニュースが入ってきた。そして、やはりコンピを巡る攻防に発展している。
23歳年下のアンバー・ハードと結婚したジョニーであるが、結婚後わずか 15カ月で破局を迎えた。そして、案の定、妻側は「暴力を振るわれていた」などと主張した。
そして、警察への家庭内暴力での告訴を検討すると発表し、裁判所に接近禁止命令を申請するなど、敏腕弁護士とともに有利な離婚に向けて動き出したのだ(ロイター 2016年5月 27日付「裁判所がジョニー・デップに接近禁止命令 妻アンバー・ハードが『日常的な D V』を主張」)。
しかし、ジョニーの周りの人たちは、彼がそのような暴力を振るう人物ではないと次々と声を上げた。
たとえば、ジョニーの元パートナーであるフランス人歌手のヴァネッサ・パラディは「ジョニー・デップは私の 2人の子供の父で、敏感で、愛情深くて、愛される人です。私は心から最近の申し立ては侮辱的だと信じています。私がジョニーを知ってきた長年の中で、彼が私に肉体的に虐待したことはありませんし、この主張は私が素晴らしい 14年間を一緒に暮らした男性だとは思えません」と声明を発表した。
じつの娘でありファッション・モデルのリリー・ローズも、父が暴力を振るうような人物ではないとコメントした(ハリウッドニュース 2016年5月 30日付「ジョニー・デップの元パートナーのヴァネッサと娘リリー・ローズ、 DVの報道に『愛情深い人』と反論」)。
他の映画関係者も、次々とジョニーを擁護している。
また、離婚騒動の直前に、アンバーが家庭内暴力で警察に通報したが、その際には何の証拠も見つからなかったこと、さらに、アンバー自身が過去に傷害事件で逮捕されていることも明らかになった( ELLEオンライン 2016年6月 9日付「アンバー・ハード、過去に DVで逮捕されていた!」)。
そして、そんなに酷い旦那なら、早く別れればいいのに、と思うのだが、やはりアンバーは月に約 5万ドル(当時のレートで約 550万円)の spousal support (婚姻費用)を請求したのだ。こうしてコンピ地獄にハメてから、壮絶な法廷闘争がはじまるのは日米共通だ。
結婚当時、ジョニーは「絶対に離婚はしないから大丈夫さ」とアメリカの富裕層の常識である婚前契約書を交わしていなかったので、財産分与はかなり高額になりそうだった。
今回のケースでは、夫妻はカリフォルニア州法に則り裁かれることになる。そして、財産分与に関する考え方は日本と同じである。この 15カ月の間にジョニーが増やした財産の半分がアンバーのものになる。
報道によると「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「アリス・イン・ワンダーランド」などに出演したジョニーは、この短期間の結婚生活の間にギャラだけで 110億円を稼いでいた。
ここから税金などの分を考慮しなければいけないが、残った金額の半分近くがアンバーのものになるとささやかれていた(女性自身 2016年6月 8日付「ジョニー・デップが雇った最強弁護士 顧客は 10億円超限定」)。
アンバー側も当然のように凄腕弁護士を雇っているので、取れるだけの金額を取りにくるだろう。
しかし、ちょうどこの原稿を書いているときに、意外にもアンバーは約 7億円というかなり安い金額で和解したとのニュースが流れた。
さらに、アンバーは「金が目当てで結婚したわけではない」と言い、そのすべてを小児病院などに寄付すると約束したのだ。
メディアではあまりにも安い金額に、じつは裏取引があるのではないかという憶測が流れたが、ひとまずこれにて一件落着、と思われた。ところが、話はそこで終わらなかったのだ。
ジョニーは、 7億円をアンバーに直接払わずに、アンバーが寄付すると約束していた団体に直接振り込んしまったのだ。
これに、アンバー側が猛抗議し、ふたたび法廷闘争にもつれこむことになってしまった(サイゾーウーマン 2016年8月 26日付「妻が寄付するといっていた離婚示談金をジョニー・デップが直接団体に送ったところ、妻側が猛抗議!」)。
この先、どうなるかはわからないが、筆者は海の向こうで戦っているふたりに声援を送りたい。そして、また、面白い映画を見せてほしい、と思う。
ファンキー加藤さんの W不倫
この章は、かつては愛し合ったはずの男女がお互いに弁護士を使って全力で金を奪い合うという、なんとも気の滅入る話が多かったかもしれない。
最後は、ほのぼのとするすこしだけ明るい話題で締めくくろう。
元ファンキー・モンキー・ベイビーズのボーカルのファンキー加藤さんが、お笑いコンビのアンタッチャブルの柴田英嗣さんの奥さんと W不倫の末に、彼女が離婚し、妊娠したという話である(週刊女性 2016年6月 7日号「ファンキー加藤、アンタ柴田の妻と W不倫! デキたベイビーを認知へ」)。
加藤さんは、妻子がおり、良きパパとして人気があった。そのためか「ありがとう」「大切」などのヒット曲は、結婚式で歌われる定番ソングになっていた。そんな加藤さんが W不倫をしており、しかも相手の女性を妊娠させてしまったのだ。
加藤さんとの不倫がきっかけとなって、この女性は離婚している。これでは加藤さんのイメージダウンも避けられないと思われた。しかし、その後の加藤さんの対応がとても清々しかったのだ。
週刊誌等で報じられたこうした疑惑について、すべて事実だと認め、生まれてくる子供についてもすでに認知した、と堂々と述べたのだ(産経ニュース 2016年6月 7日付「ファンキー加藤、アンタ柴田の元妻とダブル不倫 会見で『全て事実です。子供も認知』と認める」)。
当初は加藤さんの妻も困惑したが、結婚生活は続けるとのことだ。また、不倫相手に関しては、 1億円近くの養育費を支払うようである。
加藤さんほどの成功者だと、婚外子を産む女性は、養育費だけで多額の金銭を受け取ることができる。結果的には、加藤さんは多くの人を幸せにしたのかもしれない。
このような誠実な彼の態度に多くの人々が感心し、加藤さんはすぐに芸能活動を再開することができた。
芸能界から干されてしまったタレントのベッキーさんとは対照的である。
W不倫が発覚してすぐに行われた主演映画のあいさつでは、劇中で元恋人役を演じた女優の平愛梨さんが「元カレがお騒がせしました」と一緒に頭を下げ、爆笑を誘った(サンケイスポーツ 2016年6月 12日付「ファンキー加藤と頭下げた!平愛梨『元カレがお騒がせしました』」)。
加藤さんには、今後も子育てをがんばり、子供たち全員を幸せにしてもらいたい、と筆者も願っている。
往々にしてマスコミのゴシップ報道はデタラメである
本章では、不遜ながらも、著名人たちの離婚騒動に関する報道をケーススタディとして使わせていただいた。
冒頭で述べた通り、筆者自身は他人のプライバシーで金を稼ぐようなこうしたメディアには、いつも眉をひそめているし、一度も感心したことがない。
実際に、極力、そうした下品な週刊誌などは、買わないようにしている。
さらに、最後にもうひとつ大切なことを書いておきたい。
筆者が親しくさせていただいている知人の中には、過去にマスコミを騒がせたような人が何人かいる。そのたびに、いつも驚く。マスコミで報道されている内容と、実際に起こったことは多くの場合ぜんぜん違うのだ。
マスコミは断片的な情報で、大衆の興味を引くようなセンセーショナルなストーリーを作り上げてしまう。それらはときにデタラメだ。
むしろ、真実がそのまま報道されることのほうが稀である。
よって、この章に書かれていることが真実であるとは筆者はまったく思っていない。
ただ、ゴシップ報道がデタラメだとしても、そのいわばマスコミが創りだしたフィクションをもとに、結婚と離婚に関するさまざまな問題点を議論することが、読者の理解を促すためにとても有益であることには変わりない。
ゴシップ報道自体は、おそらく実態とかけ離れているものだということは、本章の最後に強調しておきたい。
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