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第 4章 結婚相手の選び方は株式投資と同じ

目次

結婚はゼロサムゲーム

これまでは、主に所得が高い男性の結婚に対するリスクを明らかにしながら、結婚という金融商品の性質を解説してきた。

金融市場におけるマネーゲームというのは多分にゼロサムゲーム的であり、誰かの利益は誰かの損失から来ている。

オプションや先物などのデリバティブ商品に関していえば、一つひとつの取引は完全にゼロサムゲームであり、満期に、最初に定められた条件にしたがって、契約をした二者のどちらかがもう片方に金銭を支払うのだ。つまり、自分の損失(利益)が相手の利益(損失)になる。

恋愛というゲームは、金融市場のマネーゲームと違い、ふたりでプレイしてふたりとも勝てるゲームではあるが、結婚の金融商品としての側面に限れば、それは多分にデリバティブ商品に相似している。

つまり、これまでに見てきた金持ち男性側のリスク、損失は、逆に言えば、そうした男性と結婚する女性側のリターン、利益に他ならないわけだ。

もちろん、近代国家の法律は男女平等が絶対的な原則なので、いくつかのケーススタディで見てきたように、金持ちの女性と結婚する男性も、同じだけの利益を得られることになる。

この章では、主に女性から見た結婚相手の選び方を解説するが、それは男性にとっても参考になることだろう。

ストックよりもフロー

結婚と離婚でどのように金が動くのかを理解すれば、女性はどういう男性を結婚相手として選ぶべきか、少なくとも狙うべきか、ということが見えてくる。

まず、多くの女性が誤解しているのだが、文字通りの金持ちと結婚しても、それ自体では法的にしっかりと守られる利益は手に入らない。

これは重要なポイントなので、くわしく解説していこう。

離婚によって動く大きな金は、婚姻費用と財産分与であり、これは結婚してから稼ぎ出された金額に基づくものなので、当たり前だが、結婚する前にすでにあった財産は関係ないのだ。

もちろん、遺産相続まで考えれば意味はあるのだが、現代の遺産相続は 80歳を過ぎた親から、 60歳を過ぎた子供に相続されるようなもので、気の遠くなる話である。

実際に、金融工学によれば、何十年も先の 1億円の価値は、金利やリスクで割り引かないといけないので、その価値を大きく減らすことが知られている。

つまり、結婚ではストックよりもフローを見なければいけないのだ。

株式投資と同じで、これからどれだけのフリーキャッシュフロー(株主が自由にできる現金。結婚でいえば、配偶者の取り分が法的に守られている金)を生み出すのか、が投資する価値があるかどうかを決定する最も重要な指標なのである。

誤解のないように言っておくと、稼ぎの悪い男同士を比べた場合、当然だが、貯金がない無職の男よりは、貯金がある無職の男のほうがいいだろう。

また、親まで貧乏な場合より、親は金持ちの場合のほうが、何かと経済的なメリットは多いだろう。

ただ、親の金は結婚によって影響を受けないので、婚姻費用や財産分与といった結婚による権利が発生しないのだ。法律を見る限り、ボンボンとの結婚は意外と美味しくないのである。

スポーツ選手もボンボンも美味しくない

本人が昔稼いだ金に関しては、結婚では動かないということを理解すると、たとえば、若いころに大きな金額を稼いで、そろそろ引退しようと考えているスポーツ選手と結婚しても、儲からないことがわかる。

結婚する前に持っていた金は、財産分与の対象にはならないからだ。

極端な例を挙げよう。

若いころに億単位で稼いで蓄財し引退して無職になった元スポーツ選手と、年収 400万円の OLが結婚するとどうなるかというと、なんと法律的には、婚姻費用を払ったり、離婚する際に財産分与を行うのは OLのほうになるのだ。

なぜなら婚姻費用は所得で決まり、元スポーツ選手の所得はゼロで OLの所得は 400万円なので、別居などをした場合に、妻は夫に月に数万円の婚姻費用を払う必要があるからだ。

さらに、結婚後に形成された共有財産を離婚時には分割する必要があり、結婚後に OLがせっせと貯金していた場合に、その半分を元スポーツ選手に支払う必要がある。

元スポーツ選手は所得がゼロだったので、共有財産への貢献がないからだ。

逆に言えば、スポーツ選手は、大金を稼ぎきって自分がピークのときに結婚を前提に女性と交際するのはとても賢明だ。当たり前だが、実績と財産を築き、まだ選手としても活躍しているような時期が一番モテるだろう。

一般的には、自分が一番羽振りがいいときに寄ってくる女は金が目当てなどと言われている。

しかし、結婚するまでに稼いだ金は、妻のものにならない、というごく当たり前のことを思い出せば、人生ピークのときこそ結婚するいいタイミングなのだ。

その後は、預金を取り崩したりしながら、趣味の延長でレストランを経営したり、好きなことについてエッセイを書いたりして、楽しみ程度に稼いで生活していけばいいのだ。こうすれば、自分の金を一切相手に取られなくてすむ。

また、女性は、籍を入れるという行為そのものに大変な満足感を得ることができるので、まさにウィン・ウィンの関係を築くことができる。

この原稿を書いているときに、爽やかなルックス、そして、もちろんサッカー選手としての実力でも大人気の日本代表の長谷部誠選手が、ファッションモデルとして大人気の佐藤ありささんと結婚するとのニュースが伝わってきた(佐藤ありさ公式ブログ 2016年7月 9日付「ご報告」)。

長谷部選手はサッカー選手としての報酬、そして、多くの CMや書籍などで、莫大な財産を築いてきた。すでに稼いだ金は、結婚によって影響を受けない。

彼は、フィールドの上だけではなく、人生においてもクレバーな男だと思う。もちろん、彼ほどの才能があれば、サッカー選手を引退した後にも稼ぎ続けるだろうから、佐藤ありささんも、素晴らしい相手を選んだと思う。

筆者は、まばゆいばかりのビッグカップルの誕生を心から祝福したいと思う。

すでに述べたように、親が億万長者である無職のボンボンと、年収 300万円の OLが結婚した場合、旦那が愛人を作って出て行った場合に、毎月、婚姻費用を支払わなければいけないのは、 OLである。離婚するときに財産分与を支払わなければいけないのも、 OLのほうなのだ。

もっとも、いざ裁判になったら、裁判官はそうした金を旦那が受け取れないよう、和解するようにプレッシャーをかけ続けるだろうが、婚姻費用や財産分与の法律をそのまま適用すると、そういうことになるのだ。

安定した将来キャッシュフローが重要

何度も指摘している通り、婚姻費用は持っている財産でなくフローの所得により決まる。財産分与は結婚後に蓄えられた財産( =共有財産)を夫婦で分割することである。

結婚と離婚で動く大きな金はこのふたつであり、浮気が発覚した場合に支払わなければいけない慰謝料などは取るに足らない金額なのだ。

もっとも、浮気は離婚が認められる不貞行為になるので、その点に関しては重要な意味を持つのであるが。

しかし、中世ヨーロッパを舞台にする文学作品や映画、日本の時代劇などでは、結婚というのは家と家がくっつくものであり、そこでは家の資産や身分が男女の愛憎劇に大きな影響を与えている。

そのせいか、結婚によって、もともとある相手の財産があたかも自分のものになるかのように錯覚し、玉の輿、あるいは逆玉ができるように思い込んでいる男女は多いのだが、それは間違いなのだ。

近代国家の法律は、全ての人は法の下で平等であり、戦前に見られたような華族や貴族のような身分を完全に否定している。男女の性差別も当然のように禁止である。結婚というのは、あくまで個人と個人のものなのであり、現代の先進国の法律に「家」という概念は存在しない。

よって、先ほどの極端な例だと、年収 300万円の OLが、親が大金持ちだが無職の男性と結婚した場合に、離婚すると、金を払わなければいけないのは妻のほうであり、金を受け取るのは夫のほうなのだ。結婚前にすでにあった財産は関係ないからだ。

男選びは、一にも二にもフローなのであり、株式投資と同じように将来キャッシュフローの予測が極めて重要なのだ。

それでは、具体的にどういう男性を狙うのが、女性にとって賢明なのか考えよう。

世界一の株式投資家であるウォーレン・バフェットも銘柄選択では将来の安定したキャッシュフローを最も重視しており、女が男を選ぶときも株式投資と同じなのだ。

優良銘柄は大企業の正社員、弁護士、医師

キャッシュフローの安定性を考えると、大企業の正社員、公務員、会計士、弁護士、医師などの安定した職業の男は、とてもお買い得だといえる。

将来にわたって安定したキャッシュフローが見込めて、万が一に離婚騒動になったとしても、婚姻費用、養育費などの取りはぐれも起こらないだろう。キャッシュフローと一言でいっても、そのキャッシュフローの質も重要なのだ。

それは株式投資をしている者にとっては自明ではあるのだが、同じ年収 1000万円でも、大企業のサラリーマンと、違法か合法かの間にあるような性風俗店の店長の 1000万円では大きく意味合いが違ってくる。

第 2章で解説したように、いざとなったら、裁判所が婚姻費用などの支払い命令を書いてくれる。しかし、我が国の司法がやってくれるのは紙切れを書くことだけで、実際の取り立てはやってくれないのだ。

相手の男が大企業のサラリーマンだったら、この紙切れは絶対的な力を持つ。給料を差し押さえられるからだ。しかし、旦那が違法風俗店の店長だったとしたら、そんな紙切れで本当に金が取れるかどうかは大いに疑問だ。

医師や弁護士なども、こうした裁判所の紙切れを無視するわけにはいかないので、やはり取りはぐれることはないだろう。

こうした堅い職業の男たちは、伝統的には結婚相手としては非常に人気があるのだが、それには理由があるのだ。

反対に、お勧めできないのはスポーツ選手やお笑い芸人のように、若いときに当たれば稼げるかもしれないが、将来のキャッシュフローが不安定で尻すぼみになってしまう男性たちだろう。

まず、彼らが若いときに稼いだ金は、それが結婚する前に稼いだものであれば、妻のものにはならない。さらに、将来のキャッシュフローがなくなれば、婚姻費用や財産分与などの金を払うのは妻だ。

過去の栄光にすがって、毎日家で寝転がっている男を養い続けるのは、女の人生にとってそれほど有意義なことだとは言えない。

もっとも、一握りの一流のスポーツ選手やお笑い芸人は、それこそ億単位の金を稼ぎ続ける。こうした一流の男の伴侶になることができれば、桁外れの金銭的な利益が妻にももたらされる。

しかし、二流のスポーツ選手やお笑い芸人ならば、手堅いサラリーマンの方がかなり得だといえる。スポーツ選手も芸能人も、そして、作家も、一流になれるのはほんの一握りだ。

起業家はハイリスク・ハイリターン

ハイリスク・ハイリターンの男性はなんといっても起業家だろう。

仮に、創業期からつきあいはじめて、会社が小さいころに結婚し、その後に旦那ががんばり上場するようなことがあれば、妻には 10億円単位の金が転がり込んでくることになる。

株式投資では、創業間もない未上場株に投資するベンチャー・キャピタルはハイリスク・ハイリターンであると言われるが、女性にも旦那の会社の将来性を見抜くベンチャー投資家のような目利きが必要なのだろう。

しかし、ベンチャー・キャピタルは 10社に投資して、 1社でも上手くいけば御の字なのだが、いくらなんでも 10人の男と結婚するわけにはいかない。

だから、経営者の男性の将来性をしっかりと見極める目利きの力は、ベンチャー・キャピタル以上に求められることになる。もっとも、成功した旦那が、貧しいときに苦楽を共にした糟糠の妻を捨て、若い女に走ることもあろう。

しかし、この起業家との結婚の肝は、ボンボンの男や二流のスポーツ選手との結婚と違って、そのように別れるに至ったときにも、信じられないような金銭を妻が受け取れることにあるのだ。なぜならば、その起業家が稼いだ金は、法律的には妻の内助の功のおかげだということになっているからだ。

逆に、起業家の立場から見たら、結婚するのは成功するまで待つことだ。

第 3章で解説したように、 Facebookのザッカーバーグ氏は上場の翌日に婚姻届を提出している。

大人気の写真チャットアプリである「スナップチャット」を大ヒットさせた 20代の若き起業家、エヴァン・スピーゲルは、 2013年にはザッカーバーグからの 3000億円で会社を買いたいとのオファーをつっぱねたのだが、この原稿を書いている時点では、彼の会社の価値は 1兆円を軽く超えていると言われている。

2016年3月に米フォーブスが発表した 40歳未満の世界で最も若い富豪ランキングでは彼は世界 1位に選ばれている。

そして、彼はこの絶頂とも言える時期に、オーストラリアのトップモデルであるミランダ・カーとの婚約を発表したのだ( ELLE ONLINE 2016年7月 21日付「ミランダ・カーとエヴァン・スピーゲルが婚約!」)。

結婚のタイミングから見ても、彼が頭の切れる男だということがわかる。

いいところのお嬢さんは危険

ここですこし、男性にとっての視点も書いておこう。

よく、いいところのお嬢さんと結婚すると、金銭的に得をするようなことを言われているが、それは必ずしも正しくない。確かに、妻や妻の両親と良好な関係を続ければ、子供の教育費などで支援が期待できる場合はある。しかし、人間というものは、金を出せば必ず口を出す生き物だ。

会社では、給料をもらうために、毎日、嫌いな上司でも立てないといけないし、会社の命令ならやりたくもない仕事でもやらないといけない。

その上に、家庭でも、妻と妻の両親にも頭が上がらないとなると、精神的なストレスはいかばかりか。そして、こうしたお嬢さんとの結婚は、関係が悪化したときは、諸刃の剣だということを思い知る。

妻の所得はゼロなのだから、当然だが、こちらが払うコンピ地獄は最大限のものになる。また、金持ちの親は、法律の知識があることが多く、妻との離婚騒動になれば、優秀な弁護士が雇われ、最大限に金を毟られることになるだろう。金にがめつい人間だからこそ、金持ちになったのだ。

相手の親の金は、結婚したからといって関係ないのだ。あくまで大切なのは結婚相手のフロー所得なのである。

極端な話で、相手の親が大富豪で、自分の親が生活保護を受けているような貧しい暮らしぶりだったとしても、そういったことは離婚裁判では一切考慮されない。

相手の親が大富豪ゆえに本人は働いていないのだとしても、単に所得がゼロと計算される。

そして、貧しい両親の下で育ち、毎日汗水たらして働いているサラリーマンの夫が、そんな大富豪の娘に婚姻費用を払い続けることになるのだ。それが法律の精神である。

いいところのお嬢さんと離婚するときは、覚悟をしておこう。

すでに述べたように、離婚裁判も、日本は裸一貫で成り上がったような成金の男に厳しく、元々金を持っていた伝統的な金持ちに甘いのだ。こうしたことも、日本で起業が盛り上がらないひとつの理由かもしれない。

飛び抜けたボンボンならコンピ地獄も

これまでに、親が金持ちでも自身は大して稼げない男と結婚するのは、あまり旨みはないということを説明した。

せいぜい旦那の親に出す食事の塩分濃度を高めるなどの地道な努力をして、早く遺産が転がり込んでくることを祈ることぐらいだろう。

親が死ぬ前に離婚してしまえば、全く金は取れない。さらに、旦那が相続した分は、結婚する前からすでにあった金なので、そこに妻の取り分が認められることは難しい。

結局、旦那の親が死んで、旦那までぽっくり死んでくれないと、自分に遺産は回ってこないということになる。気の遠くなる話だ。

しかし、相手がただのボンボンではなく、親が数十億円以上の資産を持つ、本当の金持ちだった場合は、少々話は変わってくる。

この場合は、旦那がいくら無能でも、形式的にフロー所得が発生していることが多いのだ。親が相続税回避のために、資産管理会社などのダミー会社を作るからだ。親が自分の金を不動産などに投資する会社を作る。

これはアパートなどの投資物件を買って家賃収入を得るだけの会社なのだが、自分の息子をこうした会社の役員にして役員報酬を払うのである。こうすると一括で相続税を払うよりは税率が安くなる。

飛び抜けたボンボンの男性と離婚騒動になったら、こうした所得に基づきコンピ地獄にハメることができるだろう。

やむにやまれず結婚するならボーナス支給後

また、男性からの視点でアドバイスをひとつ。

筆者が金融機関に勤めていたとき、同僚のひとりが結婚することになった。大学時代からつきあっていたガールフレンドと、とうとうゴールインすることになったようだ。

彼はトレーダーだったので、基本給よりもボーナスの割合が多かった。その年、彼は多くの利益を稼ぎだし、ボーナスもまずまず期待できるようだった。

筆者は、彼に婚姻費用や財産分与の仕組みを説明してあげた。聡明な彼は、それをすぐに理解した。そして、実際に役所に婚姻届を提出して、籍を入れる日を引き延ばすことにしたのだ。

ボーナスが会社から振り込まれた翌日が、彼らの結婚記念日となった。ボーナスは数千万円はあったようだ。こうすることにより、そのボーナスはすべて彼のものになる。

しかし、ボーナス支給の前に婚姻届を提出していたら、その半分が奥さんのものになってしまう。だから、いつ婚姻届を出すのかはとても重要なのだ。

ボーナスに限らず、転職に伴う退職金、あるいは契約金。大きな含み益が出ている株式や不動産などの売却。こうした大きな金額が手に入る機会があったら、婚姻届を提出するのは、それらが振り込まれた後にするべきだ。

こうすることによって、奥さんに潜在的に支払う財産分与額を大幅に減らせることになる。結婚前に持っていた財産は、ふたりの共有財産にならない。これは、結婚を考える場合には、基本のきである。

念のために、預金通帳などのコピーを取っておいて、結婚する前に確かにこれだけの財産を自分は持っていた、ということを将来お世話になるかもしれない裁判官に笑顔で証明できるようにしておこう。

離婚することを決意したらすぐに別居

こちらも男性視点で重要なことを書いておく。もし男性が離婚する決意をしたならば、すぐにでもはじめないといけないことは別居である。財産分与の金額をこれ以上増やさないためだ。

第 1章で解説したように、婚姻届を出したその日から、夫が稼いで貯めた金の半分が妻のものになる。ふたりの共有財産になるからだ。結婚してから築かれる資産は、すべて夫婦のものなのだ。

なぜ、働いていない専業主婦にも半分の権利があるかというと、夫が会社で働いて稼いだ金額の 50%は妻の内助の功、つまり、家事をしたり、精神的に夫を支えたことによる、とされるからだ。

ということは、長い離婚裁判がはじまっても夫が稼ぎ続ければ、共有財産が増え続け、それゆえに妻が財産分与で受け取る金額も増え続けるのだろうか。

幸いなことに、日本の裁判所では、この 50%もの取り分が発生する「内助の功」は、同居していないと発揮しないことになっている。

つまり、共有財産となるのは、婚姻届を提出した日から別居を開始した日までに作られた財産なのである。だから、別居することにより、この共有財産の増加を止めて、妻に支払う財産分与額がこれ以上増える可能性を無くすことができるのだ。

さらに、別居期間の実績は、第 2章で解説した破綻主義の考えからも重要なのだ。

破綻主義に基づいて離婚が認められるには、実質的に婚姻関係が破綻しており、夫婦関係の修復は不可能であると裁判官が判断しないといけないのだが、「実質的な破綻」というのを見極めるときに「長期間の別居」というのが重要なのだ。

5年 ~ 10年は、この実績を積み上げないといけない。よって、別居するのは早ければ早いほうがいいのだ。

ところで、別居するといっても、借りているマンションから夫が出て行く場合に、その家賃はどうなるのだろうか? 理屈の上では、婚姻費用の支払いから、そうした家賃は差し引かれることになる。

たとえば、夫が妻に支払う婚姻費用が月に 15万円だと確定し、夫が出ていき、いま妻が家賃 8万円の家に住んでいるとしよう。その家賃は夫が払っている。この場合は、すでに支払っている 8万円が差し引かれて 7万円だけ妻に払えばいいのだろうか。じつは、これが何とも曖昧なのだ。

そもそもそこは夫婦が住むために借りたもので、勝手に出て行ったのは夫である。だったら、その家賃の 8万円とは別に 15万円払え、と言うこともありえる。せめて、婚姻費用から差し引く分は、半分の 4万円にしてくれ、と言われるかもしれない。

これが会社が借りている借り上げ社宅になると、その家賃は給料から引かれるが、見かけ上は夫は家賃を払っていないことになる。

これは社員の所得税を減らすために外資系企業なんかがよくやる節税法なのだが、この場合は、この給料から引かれている家賃分の金額が、婚姻費用に含まれるというようにはならない可能性が高い。

つまり、その家賃とは別に、婚姻費用を丸々支払う必要があるリスクが高いのだ。家賃とは別に婚姻費用を払うのか、家賃の分は安くなるのか、で夫の負担はまるで変わってくる。

こうした状況を避ける方法はただひとつだ。

婚姻費用が裁判所に決定される前に、賃貸マンションを解約して、妻には出て行ってもらおう。こうすれば、すっきりと婚姻費用だけを払えばいいことになる。

貧乏な男と結婚するメリットはゼロではなくマイナス

結婚というのは、婚姻届に判を押した瞬間から、所得の多い方が所得の低い方へ、お互いが使える金額が同じぐらいになるように、金銭を支払い続ける義務が発生する契約である。

だとするならば、女性は自分より所得の低い貧乏な男性と結婚する経済的なメリットはあるのだろうか? 結論から先に書くと、まったくない。

貧乏な男と結婚したら、家庭を持ったり、子供を作ったりできるではないか、と言っている人は根本的に何かを間違えている。

なぜならば男と一緒に住むことも、子供を作ることも、当然であるが結婚しなくてもできるのであり、結婚という金融商品の譲渡契約とそれらは無関係だからである。

自分より所得が低く貧乏な男を好きになってしまったのならば、いっしょに住むもよし、子供を作るのもいいだろう。そうして愛にあふれる家庭を築くことはとても素晴らしいことだと思う。ただ、多くの男はなんだかんだいって、家事や育児の助けにはならない。

それだけでも大変なのに、さらに貧乏な夫を養う法的義務である結婚まで背負い込むことはないだろう。

シングルマザーは大変だというけど、貧乏な男と結婚してしまえば、子供を養うだけでなく、その上に夫まで養う義務を負うのだ。結婚をせずに、事実婚にしておけば、コンピ地獄になることはない。

事実婚なら夫の経済的な価値はゼロだが、結婚してしまえば、いきなり大きな負債を背負い込むようなものなのだ。もし、貧乏な男と家庭を作りたいなら、マイナスよりもゼロのほうがいいというのは自明ではなかろうか。

結婚詐欺師は本当に結婚したほうが儲かる

結婚詐欺という犯罪がある。詐欺師は、金はあるがあまりモテない女性に、結婚をほのめかして交際し、「じつは事業でどうしても資金が必要で……」などと言って、金を借りてから逃げる、というようなことを繰り返すのだ。

借りる金額は、多くの場合、 100万円や 200万円程度である。ここでは結婚するという噓をついて、金を引き出すということに詐欺のポイントがある。

しかし、これまでに学んだ知識を使えば、実際に結婚してしまったほうがもっとたくさん女性から金が盗れる、ということがわかるはずだ。

いったん婚姻届を出してしまえば、収入が多いほうが、少ないほうに婚姻費用を支払う義務が生じるからだ。そして、実際に結婚したほうが女性が喜ぶし、本当に結婚してしまえば詐欺罪にもならないのだから、いいことずくめではないか。

あとは、頃合いを見計らって家を出ていき、しっかりと稼いでいる奥さんから婚姻費用だけをもらい続ければいいのだ。奥さんが、婚姻費用をもう払いたくない、と言えば、まとまった金をもらって離婚してあげればいい。

こうして結婚と離婚を繰り返すだけで、詐欺師の男性はかなりの金持ちになれるだろう。

日本の結婚に関する法律では、これは合法的な行為であるし、実際に、多くの女性が悪びれることなくしていることでもあるのだ。

子供がいるなら専業主婦も可

こちらは男性へのアドバイスである。これまで(男性から見た)結婚のリスクをさんざん警告してきたが、奥さんが、自分と同じぐらい稼いでいるのなら、法律上はほとんど金銭的なリスクはない。奥さんのほうが稼いでいたら、むしろ金を受け取るのは夫のほうだ。ラッキーなケースであろう。

しかし、逆に言えば、双方にわざわざ結婚する意味もなかったと言える。また、結婚することの大きな目的が、子供を作り育てることだとするならば、専業主婦にも合理的な面がある。分業により全体の生産性が上がることは、経済学の基本である。

夫が会社人間になり、家庭を顧みず、妻が専業主婦として家庭の仕事をすべてやり、子供を 3人ぐらい育てる、という昭和の家族は、じつはとても効率的だったのかもしれない。

仮に専業主婦を養える経済力があり、本人もそれを望むとするならば、もちろんそうすればいい。

昔ながらの夫婦のあり方は、もちろん理想的な形のひとつではある。

本書は、そうしたことを否定するために書かれているわけではない。

伝統的な夫婦の形を重んじる、硬直した法律や、社会規範に対しては、他のやり方もあってもいいのではないか、と一石を投じたいだけである。

こうした伝統的な夫婦の形で幸せになれるのならば大変けっこうな話であるし、そうした夫婦を夢見ることも素晴らしいことであると思う。

ただ、そうでない人たちをむやみに非難したり、法律で縛り付けようとするのは、いかがなものか、と筆者は思っているのだ。

金持ちの男の愛人という選択肢

前東京都知事の舛添要一氏は、本書のテーマからは興味深い人物である。

舛添氏が当選した、 2014年2月 9日に行われた東京都知事選では、自民党が舛添氏を支援する方針を早々に打ち出したのだが、前妻である自民党議員の片山さつき氏が支持に反対したのだ。

本来なら自民党議員として舛添氏を支持しなければいけないはずなのに、あえて大事なタイミングで各種メディアに流れるように「婚外子に対する慰謝料や扶養が不十分だ。解決されていない」と言い切った(産経ニュース 2014年1月 19日付「片山氏、舛添氏支持依頼に難色『婚外子への慰謝料扶養が不十分』」)。

別れてしまったとはいえ、かつては結婚までして愛し合った仲ではないか、と思ってしまうのだが、やはり離婚問題の様々なケースを調べると、多くの女性がいったん夫婦関係が破綻すると、別れる夫のことを破滅して欲しいと恨んだりすることがよくあるということがわかってくる。

片山氏と舛添氏がどのような夫婦生活を営み、どのように別れたのかは、筆者の窺い知るところではないし、そのようなプライバシーは守られてしかるべきだろう。

しかし、こうした前妻からの攻撃にもかかわらず、彼のような日本の伝統的な価値観に囚われず、性に奔放な人物が選挙で選ばれたのは、とても興味深い。

結果的に、中小企業の社長がよくやるようなセコい経費の使い方を、都知事の身分でやっていたことが都民の怒りを買い、辞任してしまったのは残念であるが。

ところで、片山氏の婚外子への扶養が不十分という非難が、正当なものかどうかは調べる価値があるだろう。

2014年1月 15日付の NEWSポストセブンの記事などによると、舛添氏には 2人の愛人との間に認知した子 3人と、現在の夫人との間の子 2人を合わせて、計 5人の子供がいるそうだ。

養育費の支払いに関する問題とは、その婚外子のひとりが当時 25歳であったが、障害を抱えており、舛添氏は現在まで月 22万円の養育費を支払ってきた。

しかし、舛添氏自身の収入がほとんど無くなったことから、この養育費の減額を求めて調停を起こしている、という。

25歳まで月に 22万円ずつを支払っていたとすると、その総額は 6600万円ほどになる。金利を考えればそれ以上だ。

そう考えると、片山さつき氏がいうほど、舛添氏が非難されるべきなのか、とも思える。

舛添氏の場合はいろいろと特殊事情があるだろうが、貧乏な男と結婚すると金銭的にはマイナスになるのに、ある程度以上の金持ちの愛人だと、養育費だけでもこれほどもらえる、ということなのだ。

所得の低い貧乏な男と結婚すると、女は金を支払う側に回る。それを考えると、金持ちの男性の子供を産んだ、舛添氏の愛人のケースはそれほど悪いものなのだったのだろうか。

また、第 3章で紹介したファンキー加藤さんも婚外子を持つこととなったが、養育費として 1億円近い金額を支払うようである。

さらに、相手が成功した経営者ともなれば、正妻でなくとも莫大な経済的恩恵を受ける。事実婚では内縁の妻に相続の権利はないが子供にはある。

女優の萬田久子さんはアパレルブランド「リンク・セオリー・ジャパン」の創業者であった佐々木力さんと不倫し子供を授かった。

いくら得たのか確かな情報はないが、萬田久子さんが現在も億万長者であることは確かだ(デイリースポーツ 2011年8月 10日付「萬田久子悲痛…資産 150億円以上の事実婚の大富豪夫が急死!遺産の行方は?」)。

舛添氏は大学教授や議員など、それほど儲からない仕事をしていたが、人気ミュージシャンともなれば、女性から見たら、婚外子をひとり産めば、 1億円近い金がポンと入ってくるということになる。

成功した経営者ならもっと多いだろう。このように、結婚せずとも、金持ちの男の子供を産む、という選択肢は女性にとっては大いに考えるに値するのかもしれない。

愛人でも報われるための損益分岐点

それでは定量的に、平凡な男と結婚するのか、あるいは稼ぎのいい男性と未婚のまま子を産むのかを比べて、未婚の母のほうが経済的に有利になる所得格差の分岐点を計算してみよう。

未婚の場合、法的にしっかりと保障される権利は婚姻費用ではなく養育費だけになる。第 1章で解説したように、養育費の計算の考え方は婚姻費用とはすこし異なる。

まずは、支払い義務者(以下、夫と仮定する)がすべての子供をひとりで養っていると仮定することからはじまる。そして、このひとりで養っていると仮定された父親の年収から子供の取り分を計算する。

最後に、権利者(子供の面倒を見る方。断りがなければ母と仮定する)の基礎収入を考慮して、この子供の取り分、子供が受け取るべき金額を父母で按分するのである。

婚姻費用では、夫は妻と子を養わなければいけない(妻が稼いでいたら、妻が夫と子を養う義務がある)。しかし、結婚していない場合は養育費だけでいい。

養育費には妻の分が入っていないのだから、当然だが、夫の所得が同じ場合、婚姻費用のほうが養育費よりも多くなる。

よって、考えるべきことは、どの程度の年収の違いがあれば、婚姻費用よりも養育費のほうが多くなるのか、ということだ。

まずは、以下を仮定して、この損益分岐点を計算してみた。

(1)女の年収は 350万円

(2)正妻の場合も愛人の場合も子供 1人を作る

(3)愛人の場合は、男性には妻子がおり、その男性は自営業である

(4)養育費を受け取る期間は一般的な大学卒業までの 22年間とする

(5)正妻が受け取る婚姻費用の経済的価値も 22年間で計算する(近年は日本の司法は破綻主義に傾いており、どんな理由であれ 10年も離婚裁判をすれば認められることが多いのでこの 22年はかなり長い期間である)

(6)金利をゼロとする

これらの条件で、正妻が受け取る婚姻費用の総額、愛人が受け取る養育費の総額を計算すると、次のグラフのようになった。

婚姻費用も養育費も大切なのは男の年収の絶対値ではなく、女の年収との差である。

よって、[男の年収 女の年収]がゼロに近くなる領域の計算結果の解釈には注意が必要だ。

このケースでは、男の年収が 1000万円未満のポイントでの損益分岐点の計算は、仮定する女の年収によって大きく変化することになる。実線が正妻が受け取ることができる金額である。

当然だが、夫の年収が自分の年収の 350万円より低いと、結婚によって経済的な損失を被ることになる。

最初の仮定に基づいて計算すると、年収 600万円の男性と結婚すると約 1900万円、年収 1000万円の男性なら約 3700万円、年収 2000万円の男性だと約 8100万円を妻は受け取ることができる。

一方で、所得 600万円の妻子ある男性と不倫して子供を作ると 1000万円、所得 1000万円なら 1900万円、所得 2000万円なら 4100万円の養育費を受け取ることができる。

結婚制度があるので、正妻よりも取り分が大幅に少なくなる。

当たり前のことだが、仮にルックスなどの条件が同じ場合、結婚してくれる誠実な男性を袖にして、同程度の年収の既婚者と不倫に走る経済合理性はない。

しかし、通常の場合、女性は不倫をしたほうが、より高額所得で社会的地位の高い男性とつきあうことができる。

結婚してくれるふつうのサラリーマン男性よりも、不倫相手の子供を作ったほうが得するには、どれだけの年収格差が必要なのかは、多くの女性にとって役に立つ情報であろう。

そこで、結婚して正妻になるよりも、不倫や事実婚でも得になる年収格差の分岐点を計算したものが次の表である。この表は、いわば結婚できなくても経済的にペイするための損益分岐点である。

たとえば、年収が 200万円以下の男性と結婚するぐらいなら、すべての男性と不倫をしたほうがマシなことになる。自分より年収の低い男性と結婚するのは、結婚しないより損だからだ。

また、年収 600万円の男性が結婚のオファーを出してくれているなら、年収が 1000万円未満の男では不倫する価値はない。

しかし、年収 600万円の男性と結婚するよりは、年収 1000万円以上の既婚者と不倫をして子供を産んだほうが得することになる。

年収 1600万円の男性と結婚するチャンスがあるならば、それを断るには年収 3000万円以上の既婚者が必要だ。

未婚で子供を産むためのルールオブサム

先の議論は定量的過ぎるし仮定する条件で結果も変わってくる。ここでは、もっと簡単に使えるルールオブサム( Rule of Thumb:大まかなやり方)を提供しよう。

まずは、パラメータを変えて、他のいくつかのパターンで見てみよう。まずは、ベンチマーク(比較のために用いる指標)として次の結婚生活を想定する。

◆ベンチマーク(平凡な男性との結婚)

女の年収 = 200万円

男の年収 = 500万円

子供 2人

この場合の婚姻費用は月約 8・ 8万円( 22年分 =約 2300万円)となる。次に、養育費だけでこれを上回るには相手の年収がどれぐらい必要なのかを考える。

ケース 1高給取りの男性と結婚せずに子供を 1人作る場合 この男性が子無しの場合、年収 950万円あれば、 22年間の平均養育費が約 9・ 1万円となり、総額は約 2400万円となる。

要するに、年収 500万円の男性の正妻よりも、年収 950万円の高給サラリーマンの事実婚ポジションのほうが経済的に有利になる可能性が高いのだ。

ケース 2高給取りの男性と結婚せずに子供を 2人作る場合 子供をもう 1人作れば、さらに取り分は増える。ベンチマークとの違いは、結婚しているかどうかだけだ。同じく年収が 950万円とすると、月々の養育費は 12・ 9万円にまでアップする。22年間で約 3400万円だ。

実際には、わずか年収 700万円で、事実婚の方がベンチマークの結婚よりもペイすることになる。

ケース 3成功している自営業者(妻 1人、子 2人)と不倫して 2人の子供を作る場合 この場合も、自営業者の年収が 900万円程度で、養育費が約 9・ 9万円となり、 22年間では総額が約 2600万円となる。

ここまでの計算で、実用上十分な簡単な法則が導き出せたと思われる。

つまり、女から見たら、年収が 2倍違えば、正妻ポジションと愛人、あるいは事実婚ポジションは、養育費だけでほぼ等価となるのだ。

事実婚に関するいくつかの反論

ところで、こうした計算結果を筆者のブログに載せたところ、いくつかの反論があったのでそれらについて答えよう。

ひとつ目の反論は、実際に養育費を受け取っているのは、シングルマザーのじつに 2割しかいないというデータである(厚生労働省全国母子世帯等調査)。

日本は、アメリカなどの諸外国と違い、国家権力が養育費の取り立てを行ってくれない、という問題があるのは事実だ。アメリカでは、養育費を支払わないと、警察に捕まって、刑務所に入れられてしまう。

日本は、この点に関して大いに改善する余地はあるだろう。

しかし、まともな企業のサラリーマンや、医師や弁護士のような士業、まともなビジネスをしている経営者に関して言えば、養育費が支払われなくなる、というのはほぼありえない。なぜならば、給料、預金、自宅、売掛債権など、なんでも差し押さえが可能だからだ。

実際のところ、シングルマザー家庭の多くは、相手の男がどうしようもないダメ男の場合が多い。まともな仕事をしておらず、養育費を取り立てたとしても、せいぜい月に 1 ~ 2万円程度だ。

これだったら、愛想をつかした奥さんが、もう二度と関わりたくないので養育費を請求しない、というのもうなずける。

しかし、この計算で想定する、高所得の男性の場合に限って言えば、失業して本当に収入がなくなるなどでもしない限り、ほぼ 100%養育費は取れると考えてもらってまったく差し支えない。

さらに言えば、婚姻費用と養育費で、どちらが法的に上も下もない。両方とも、相手が払わなかったら、国家権力で相手の財産を差し押さえることができるのである。

同じような反論だが、相手の男が 22年間も稼ぎ続けるかどうかわからない、という指摘があった。まったく、そのとおりだ。しかし、それは結婚相手であっても、まったく同じである。

むしろ、女性としては、相手の男性が、自分とは簡単には結婚してくれそうにない、あるいはすでに既婚者で結婚できないが、それでも経済的に豊かな男性であるからこそ、未婚の母というオプションを考えているのだ。

その点から言えば、今後の稼ぎが心配なのは、むしろふつうの年収の結婚相手の方である。繰り返すが、婚姻費用と養育費では、執行に関する法的な取り扱いはまったく同じである。また、感情的に、愛は金勘定ではない、という反論もあった。

こうした反論は、筆者が本当に達成しようとしていることを真逆に見ていると言っていい。むしろ、金や社会規範に囚われ、真実の愛から遠ざかっているのは、こうした反論をしている人々のほうだ。

金の心配や社会規範を守るために、たまたま愛した男が既婚者であったり、なかなか結婚してくれない素敵な男性をあきらめ、その辺の結婚してくれる平凡な男と妥協するのである。むしろ、結婚という形にこだわるほうが、よほど愛がないと言えないだろうか。

現代の日本の社会規範は、子供を作りたかったら結婚しなければいけないし、離婚も好ましくないというものだ。

この規範と、婚姻費用や財産分与などの法律が組み合わさると、女性たちは、ある程度の所得がある男性と結婚して子供を作るか、さもなければ、誰とも結婚せず、子供も作らずに、ひとりで死んでいけ、ということを暗に明に強いられることになる。女性の人生は、とてもハイリスクなものになる。

それにもかかわらず、多くの日本人女性は、この社会規範に疑問を持たず、そして、守ろうとさえしているのだ。筆者はこのことを常々不思議だと思っている。

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