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男の離婚は普通に闘えば〝負け戦〟

目次

はじめに

逃げ出したい! もし、あなたが温厚で情け深く、おとなしい夫(男性)だとして、妻を許せるのは何回まででしょうか? 1度や 2度なら我慢できるかもしれませんが、仏の顔もさすがに 3度が限度でしょう。

例えば、妻の男遊びのせいでプライドを傷つけられたり、妻の散財のせいで貯金を失ったり、妻のキレやすさのせいで子どもが家出をしたり。

トラブルメーカーの妻に振り回され、尻ぬぐいをし、心身ともにボロボロの状態なら「もう逃げ出したい!」と「離婚」の 2文字が頭をよぎるのは決して恥ずかしいことではなく、むしろ長い目で見れば「英断」になりうるのです。

「妻のせいで離婚せざるをえなくなる理由」は主に男(不倫)、金(浪費)、キレる(暴言)の3つです。

本書では次のようなケースを紹介しています。

まず不倫の事例では、 1回目に Facebookの「パワースポットサークル」で男と知り合い、 2回目はテレビ電話のアプリでチャットエッチをして、 3回目は LINEでやりとりをしてラブホテルに行こうとする妻。

暴言の事例では、 1回目で子どもに向かって「早く食べないと殺すぞ!」とまくし立て、 2回目は「子どもの目の前で夫婦ゲンカはやめてくれ」と頼んでも無視をされ、 3回目は子どもそっちのけでスマートフォンのソーシャルゲームに夢中になる妻。

そして浪費の事例では、友達と豪華なランチやエステに興じたり、 2回目は「パワースポット」だからと年に 3回も伊勢神宮まで参拝しに行ったり、 3回目は 1年分のエステのチケットを買い込んだ妻。

いずれのケースでも 1回目と 2回目、 2回目と 3回目の間に、妻は夫に対して心から謝り、反省の態度を示し、「もうしません」と約束したにもかかわらず、このありさまなのだから、あなたがいくら仏のような広い心の持ち主だとしても、もはや救いようがないでしょう。

残念ながら、 1度あることは 2度あるし、妻に「更生の余地なし」なら 3度、 4度と繰り返されます。

「離婚」の気持ちが固まったら、スタート(離婚協議)からゴール(離婚成立)まで最短距離で走り抜けましょう。

これ以上、妻に人格を否定されたり、給料を使い込まれたり、子どもの情緒が不安定になる前に、できるだけ早く!

第 1章 男の離婚は普通に闘えば〝負け戦〟

データ数字でみる「みんなの離婚」

嫁との別れを決意したら〝なる早〟で離婚成立を目指そう

男が苦しむ「離婚冤罪」の罠

「キャャャャ──!やめて!この人です、この人──!!」 そんなふうに見知らぬ女性が突然大声を出し、こっちを睨みつけ、自分の左手をつかみ上げてきたら……。

毎朝、眠い目をこすりながら満員電車に揺られる社畜サラリーマンにとって「痴漢」を疑われた時点で「人生終了」です。

法の下では誰しも平等、本当なら「疑わしきは罰せず」のはず。しかし電車内に限っては「疑わしき『男』は罰する」と言わんばかりに「無駄な抵抗はよせ!」と周囲の乗客に羽交い締めにされる。

そして、駅員室で警察官に引き渡されるのです。途中でどんなに「やめてくれ!」と抵抗しても、「僕はやっていない!」と反論しても無駄。

無罪を信じてもらえずに強制わいせつ罪(刑法 176条)で起訴され、刑事裁判で敗訴し、有罪判決を受けたら、どうなるでしょうか?「あの人、痴漢で捕まったのよ」と社内で後ろ指さされれば、今の勤務先を自主退職せざるをえません。

当たり前のように毎月口座に振り込まれていた給料を失ったあげく、「痴漢をするような息子に育てた覚えはない!」と実家に見捨てられ、親戚一同から縁を切られてしまう。

まさに一寸先は闇……。その日を境に地獄へ真っ逆さまで、すべてを失うのですが、それは「男」だからです。

痴漢冤罪の一件だけ見ても「女は正直者、男は嘘つき」「女は献身的、男は身勝手」「女は弱く、男は強いから、男は厳しく罰するべき」という認識が見え隠れします。

この男尊女卑ならぬ「男卑女尊」状態なのは電車内だけに限りません。

例えば、夫婦が離婚する場面ではどうでしょうか? 実は「離婚冤罪」と言い換えてもいいくらい、「男は疑われたら人生終了」という意味で痴漢冤罪と状況がそっくりなのです。

私のところへ相談しに来た植田誠さん( 34歳・会社員・年収 600万円)の話に耳を傾けてみましょう。

事例 A夫婦ゲンカを DVにでっち上げ!?

「あんたとはもう一緒にやっていけないわ。さようなら」 妻(専業主婦)はリビングのテーブルに置き手紙を残し、息子( 5歳)と娘( 3歳)を連れて実家に逃げ帰ったそうですが、事の発端は遡ること 2週間前──。

「キャャャャ──!やめて!この人です、この人──!!」 些細なことで妻と言い合いになり、突然妻がそんなふうに110番をしたのです。

10分もしないうちに 2名の警察官が玄関から入ってきましたが、もともと警察ざたになるような大ごとではありません。

なぜなら、妻が「バカ、ボケ、死ね!」と挑発してきたあげく、ワインボトルを振りかざしたので、誠さんが「やめろ!」とボトルを取り上げただけ。

「完全な正当防衛ですよ!」 誠さんは必死に弁明しましたが、全く聞き入れてもらえず、警察署に連れて行かれてしまったのです。

「妻はともかく、子どもだけでも連れ戻そう!」 後日、誠さんは妻の実家を訪ねましたが、義母に「パパに会いたくないって言っているわ!」と一蹴され、今まで妻に預けていた通帳やキャッシュカードを取り戻すこともできない。

これまでの結婚生活中と同様に、こづかい月 3万円だけを渡されたので、それ以降、誠さんは昼食代にも事欠くような悲惨なありさまに。

そんな矢先、妻の代理人を名乗る弁護士から連絡があり、「養育費は月 15万円(誠さんの手取りは 25万円)」「財産はすべて妻」「慰謝料はなし」という条件なら離婚してやってもいい!と言い出しました。

妻への未練はありませんが、「こづかい制」のまま離婚協議を長引かせていては生活が成り立ちません。

市役所の無料相談会にも足を運んでみたのですが、 70歳過ぎの風貌のおばあさん(裁判所の元調停委員)に「あなたの DVなのに、慰謝料を取られないだけマシ」と宥められる始末。最終的には渋々、妻の条件を受け入れて離婚に同意したのです。

それから 1年。残念ながら、離婚時に「子どもの面会」についての取り決めを忘れていたので、誠さんは最愛の息子と娘の手を握ることも、声を聞くことも、そして顔を見ることもかないません。

どうしても子どもたちの様子が気になって、戸籍謄本を市役所の戸籍課で閲覧すると、とんでもない元妻の策略が明らかになったのです。

すでに元妻は再婚し、再婚相手との間に赤ん坊が生まれたようですが、生年月日から逆算すると妊娠したのは離婚から 2か月目。

結婚期間中に現夫と付き合っていた……つまり、妻は「夫の D V」を隠れ蓑に不倫の事実を伏せることで、慰謝料を払わずにまんまと離婚できたというわけ。

誠さんが失ったのは大事な家族(妻と子ども)や大切なお金(養育費として給料の 6割)だけではありません。

こっそりと妻を寝取られたのに、間男から慰謝料を取り立てることもかなわず、泣き寝入りするしかないのだから「男のプライド」はボロ雑巾のようにズタボロ。

解 説どうすれば妥当な条件を引き出せたのか

このような妻の策略はまさに〝離婚冤罪〟。DVをでっち上げたうえで子どもを人質に別れを切り出せば、不倫相手の男の存在を隠したまま離婚できると思ったのでしょう。

「女は正直者、男は嘘つき」「女は献身的、男は身勝手」という世間の見方は離婚の現場でもたびたび振りかざされ、夫の側が理不尽な被害にあっているケースが少なくありません。

ですが、あきらめないでください。離婚は決して四面楚歌ではありません。

誠さんのケースでは妻の母親、相手の弁護士、無料相談の元調停委員ですが、これら周囲の人間を味方につけて離婚協議を有利に進めることは十分に可能です。

そもそも妻の言い値が本当に正しいのでしょうか? 妥当な条件を引き出すには、前もって理論武装することが大事です。

誠さんのケースでは、次のような点を指摘できたでしょう。

  • ◎別居中の生活費( =婚姻費用)には相場があるため別居中まで「こづかい制」を続ける必要がない
  • ◎子どもとの面会を理由なく拒否された場合は、裁判所から罰金を科してもらう方法( =間接強制)がある
  • ◎子どもの養育費は年収の 6割ではなく 3割程度が妥当な金額
  • ◎夫婦の財産は妻 10割ではなく、法律上は夫 5割、妻 5割が正しい
  • ◎妻の離婚したい理由が曖昧なら当然、不倫を疑うべきで、離婚する前に確たる証拠を手に入れれば、妻だけでなく間男にも慰謝料を請求することが可能

どうでしょうか。

離婚の場合、前もって対策を立てれば、 DVのでっち上げや子連れ別居、不倫の隠蔽を防ぐことはそれほど難しくありません。

2017年、痴漢を疑われた男性が線路に飛び降り、電車にひかれて死亡するという痛ましい事故が発生したのですが、離婚も生きるか死ぬかの瀬戸際という意味では同じです。

なぜなら、私が過去に受け持った案件でも男性相談者が妻からの詰問に耐えかね、ありえない条件で離婚してしまったために生活困難に陥り、自ら命を絶ったケースがあるのですから(後日、父親からの報告で判明)。

「女の涙で無罪放免。何をしたって最後は許される」「私(妻)さえよければ夫はどうなってもいい」「嘘も方便。見抜けないほうが悪いし、バレるまでやりたい放題」という妻、ネット用語でいう〝クソ嫁〟が世の中に一定数、存在するのが現実。

そこで離婚の修羅場から生きて帰ってきてほしいという思いで執筆したのが本書です。一緒に人生最大の危機を乗り切りましょう。

夫からの相談件数 1万件以上!なぜ男の離婚が圧倒的に不利なのか

〝草食系夫〟が相談難民化

私は、婚活詐欺から不倫、離婚までドロドロとした相談ばかりを 12年間で約 1万件扱ってきましたが、特に男性は「相談難民化」しやすいと言えるでしょう。まず、変なプライドが邪魔をして「相談するのが恥ずかしい」と尻込をする男性が多い。

最近では、妻に対して言いたいことを言えない草食系夫に代わって、夫の交際相手や母親、姉や妹などの女性が「男の離婚相談」をしに来るケースも増えています。

また、男女問題は男のほうが圧倒的に不利であるため、専門家も「(男の)相談に乗りたくない」と敬遠する傾向にあります。

私のところに来る主な相談者は「 30代男性」。最も早い解決が見込める「協議離婚」の案件だけに特化してきました。

具体的な解決までの手順は、

  • ①現状把握のためのカウンセリング
  • ②離婚協議に臨むための作戦会議
  • ③納得いく条件を実現するための想定問答集作成

さらに、決定した離婚条件(親権、養育費、慰謝料、財産分与など)を書面に残す場合の離婚協議書の作成などを行っています。

これだけ用意周到でなければならない理由、つまり〝離婚において男がいかに不利であるか〟を「慰謝料」「婚姻費用」「養育費」「親権」「子どもとの面会」「財産分与」の争点別に整理してご説明します。

まずは、実例と合わせて現実と向き合うことから始めましょう。

「慰謝料」の不利事例 B不倫相手への慰謝料請求に失敗

「信じていた妻に裏切られました。僕は精神的に破壊され、今は理不尽と葛藤しながら暮らす日々です。悔しいです。結婚生活の最後のほうはほとんど生き地獄も同然で、最終的には妻の不倫が発覚したのが決め手となり、離婚せざるをえない状況に追い込まれました。

僕は妻の不倫のせいで 3人の息子と引き離され、念願のマイホームは売りに出すしかなく、実家には顔向けできない。今はひとり寂しくアパートの一室で暮らしているのですが、僕もやられっ放しだったわけではありません。鬱憤を晴らすべく、反撃に打って出たんです。

まず弁護士に依頼して不倫相手の男へ慰謝料を請求しました。しかし、いつまで待っても相手の男から僕の口座へ慰謝料が振り込まれてくることはない。

弁護士に『どうなっているんですか?』と尋ねてみても『今やっているよ』『忙しいんだ』『ちょっと待ってくれ』と最低限の進捗状況すら教えてもらえず……。

結局、僕は弁護士に見切りをつけて、不倫相手の男の職場へかけ合うべく、本社の人事部へ連絡をとったのですが、「プライベートな問題ですので」と取り合ってもらえない。まったく動く気配はなく、完全に息詰まってしまいました。僕は何もかもなくした。

でも、妻や男はどうでしょうか? 何も失うことなく、今も平気な顔で暮らしていると思うとやり切れません。

不倫は犯罪じゃないんですか!? こんな理不尽が許されるんですか?泣き寝入りするしかないんですか!?」

解 説妻の「不倫隠し」と慰謝料の時効

突然、妻が行方をくらまし、呆気にとられる間もなく、弁護士から「当職が離婚の案件を受任したので本人(妻)への連絡はお控えください」という手紙が届く。

そして今度は裁判所から離婚調停の呼び出し状が届く……。展開が急すぎて何がなんだかわからないまま、弁護士や調停委員に丸め込まれ、トントン拍子で離婚が成立。

夫に有無を言わせず、話をまとめようとするのは妻に「隠し事」があるからです。

本当は妻に交際している男がおり、男と再婚するために離婚を急いでいるのに、調停の最中は夫の欠点や落ち度、至らない点を並べ立てられる。

夫が馬鹿正直に「そうか、それなら(離婚も)しかたがないな」と信じ込めばお手のもの。嘘も方便。見抜けないほうが悪いと夫をバカにし、バレるまでやりたい放題。

不倫の事実を隠して逃げ切ろうとするでしょう。

後日、再婚の事実を知ったところで、過去に遡って証拠を集めることは困難ですし、(元)妻に白状させたところで慰謝料の時効は「離婚から 3年」。

しかも、夫婦の子どもの父親が本当に夫なのか、と疑ってみても今さら戸籍上の父親を「交換」するわけにもいかず、悶々とした気持ちを抱えながら、養育費をせっせと振り込み続けるしかないという最悪の展開が待っているのです。

「婚姻費用」の不利事例 C別居中の妻から生活費の請求!?

「同居時のルールは別居したら変えるべきでしょ!? しかも妻が勝手に出て行ったのに! 同居していたときは、家賃や水道光熱費、食費などの毎月の基本的な生活費を互いの収入割合(私 6:妻 4)に応じて、私が毎月 13万 ~ 14万円、妻が 4万 ~ 5万円負担し合っていました。

でも妻は別居を始めると生活費を渡さなくなったので、毎月の 18万円は全部、私の負担ですよ! それどころか今度は毎月 4万円をよこせと言い出したのです。

妻はいいですよ! 家に 4万円を入れず、私から 4万円もらえれば 8万円もプラスだから。でも私は妻の負担分 4万円がなくなり、そのうえで妻へ 4万円も渡したら、マイナス 8万円。やっていけないですよ。

〝先に出て行った者勝ち〟という理屈がまかり通るなんておかしいでしょ!」

解 説「出て行ったもん勝ち」の現実

「もう我慢の限界! 離婚しかないわ!」 そんなふうに妻がまともな話し合いもせず、捨てゼリフを吐き散らかし、荷物を置いたまま出ていってしまったので、夫がひとりだけ自宅に取り残されて茫然自失。

さらに追い打ちをかけるように「ちゃんと離婚するまで生活費を送ってよね!」とたたみかけてきたら夫は落ち込んでいる暇などありません。

まだ離婚が決まったわけではない段階で、妻のほうから勝手に結婚生活を放り出して、強引に別居状態へ発展したのに「生活費が欲しいなんて何様だ!」と思うかもしれませんが、法律上、夫婦間には扶養義務があります。

たとえ妻から同居を解消したとしても、離婚して「元夫婦」に切り替わるまでは別居中の生活費( =婚姻費用)を払わなければなりません。

家庭裁判所が公表している『婚姻費用算定表』によると夫の年収が 600万円、妻の年収が 100万円の場合、婚姻費用の相場は月 9万円。

夫が 900万円、妻が 300万円の場合は月 8万円です(どちらも夫婦間に子どもがいない場合)。一部の例外を除き、別居の経緯に関係なく、婚姻費用の支払い義務は生じます。

婚姻関係を破綻させた側でも、婚姻費用の請求が認められるという過去の裁判例(昭和 50年6月 30日、札幌高裁判決)が存在するため、妻に問題があって別居、離婚に至った場合も離婚が成立するまでの婚姻費用を清算しなければならないのです。

それだけではありません。

夫が妻に夫名義のカード類(クレジットカード、カードローン、キャッシュカード)を預けている場合、金銭感覚のおかしい妻は夫のカードを使って散財する可能性があります。

例えば、ここぞとばかりに別居先の家具や家電、家財を「夫のカード」で買い足したり、別居先のアパートの敷金や礼金を「夫のカード」で支払ったりすると、夫の負担は婚姻費用 +カード分という二重払いを強いられるので首が回らなくなり、絶望的な状況に追い込まれるのです。

「養育費」の不利事例 D離婚後にまさかの臨時請求でカツカツ

「僕と妻の間には 14歳の娘がいます。妻が娘の親権を持ち、『娘が 20歳に達するまで、夫が妻に対して毎月 8万円の養育費を支払う』という条件で離婚しました。

ところが離婚から 2年後、妻が突然『今すぐ 30万円払って!』と連絡してきたのです。どうやら娘が私立の高校に合格したので、月末までに入学金や授業料、施設使用料などを納めなければならないとのこと。

元妻が入学金などをどのように支払うのか、まったくお金のめどを立てずに公立ではなく、割高な私立の高校を受験させたのは言語道断ですが、今まで頑張って受験勉強を続けてきた娘の努力を無駄にするわけにはいきません。

せっかく合格したのに経済的な理由で入学できないような事態に至っては娘のショックは計り知れません。結局、妻の無計画ぶりを甘受して 30万円を渡すしかありませんでした。

ただ、すでに妻が再婚していた可能性もありますよね? 再婚相手と娘が養子縁組をし、現夫のことを『パパ』と呼んでいたら……。いまさらそんな想像をして悶々としています」

解 説何度も訪れる「増額交渉」

ようやく「守銭奴」妻との縁が切れたので、もう金の絡みで悩まされることもない! そんなふうに離婚成立後、安心し切るのはまだ早い。

「離婚したら僕たちは他人同士だけれど、子どもたちにとっては父親、母親なので」そんな、芸能人の離婚会見の常套句を真に受けている人は特に気をつけてください。

事例のように妻と離婚したとしても完全に縁が切れるわけではなく、再婚や収入の増減、入学や留学、親の介護や相続など「事情変更」によって、離婚時に決めた養育費を「増やせ!」と言われる場面に何度も遭遇するのです。

子どもがいる場合、「元」夫婦は一蓮托生。可愛いわが子を「人質」に取られている以上、妻に言われるがまま、お金を搾取される可能性が大いにあるのです。

「親権」の不利事例 E子ども連れで家出されたらアウト?

「こんなことが許されるんでしょうか? 勝手に息子を連れて実家に帰って、そのまま離婚しようだなんて! 僕は専業主婦の妻と 5歳の息子と 3人で暮らしていたのですが、ある日、仕事を終えて家に帰ると完全にもぬけの殻。そこに妻の姿はなく、必要な荷物はすべて運び出された後で、ダイニングテーブルには鍵が置かれていました。

妻は離婚調停を家庭裁判所へ申し立てたようで、翌日には裁判所から呼び出しの手紙が届きました。次から次へと矢継ぎ早に不幸が襲ってきたので、自分の身に何が起こっているのか、現実を直視できるようになるまでかなり時間がかかりました。

妻のやり方はともかくメチャクチャ。こんな理不尽が裁判所で通用するわけがない。裁判所で僕が言うべきことを言えば、きっと息子だけでも取り戻せるだろうし、親権も取れるはず。

妻をギャフンと言わせることができる! そう信じて疑わなかったのです。だって、息子が生まれてから別居の前日まで僕は父親として、きちんと子育てを手伝ってきたのだから。

息子の行事には必ず参加し、保育で使う布団を用意したり、上履き入れを作ったり、育児には全面的に協力してきたという自負がありました。

だから、『小さい子どもには父親より母親のほうが必要だから』『母親のほうが家にいるから』『母親に経済力がなければ、父親に養育費を払わせればいい』などと妻が身勝手なことを言い出しても思いどおりにはならないだろうと。

しかし、調停の場で僕の意見は全くといっていいほど聞き入れられませんでした。妻はあろうことか DVをでっち上げたのです。

『旦那の暴力から逃れるため、息子を連れて実家に戻ってきました。旦那のことは怖くてしかたがないので結婚生活を続けるのは無理です。これからは私がひとりで息子を育てます』という具合に。

もちろん、身に覚えがなく、妻の言い分が真っ赤な嘘であることは明らかなのですが、加害者認定された僕が言い訳をすればするほど胡散臭くなってきて。

裁判官や調停委員は被害者である妻のほうになびいていきました。

結局、 DVの真偽については触れることなく、『 DVの加害者に子どもを任せられないでしょ!』と一喝されてしまい、半ば強制的に『親権は妻』という条件で離婚させられてしまったのです。

離婚の計画や子どもの連れ去り、そして偽装 D V……こんなことが、いとも簡単に認められるなんて信じられません。

男女平等にすべきでしょ!『女 =社会的弱者』だから保護すべきだなんて、じゃあ、男はどうなるんですか? これじゃ、完全に逆差別ですよ!許せません!』

解 説「妻に親権」が圧倒的

子どものことを心の底から愛し、子育てを積極的に手伝い、将来的には子どもの入学式や卒業式、そして入社式や結婚式への参加を心待ちにしていた男性にとって厳しい現実があります。

統計上は「妻が全児の親権を行う場合」 84・ 2%、「夫が全児の親権を行う場合」 12・ 2%(平成 25年総務省統計局)なので、悪妻と離婚した場合、 8割以上の確率で子どもと引き離されてしまうのです。

実際のところ、夫はフルタイムで働いていることが多く、平日の昼間に子どもの面倒をみることは難しいでしょう。

まだ子どもが小さいのなら、保育園や学童、そして民間の保育施設に預けるという手もありますが、まともな収入がない妻に養育費を払わせることは難しく、割高な保育料を負担するのは厳しいところ。

一方、子どもがある程度大きい場合でも、家にいる妻と接している時間のほうが長いために本人の気持ちを尊重した結果、母親を選ぶ可能性が高い。

そもそも夫婦が同居しながら離婚の話を進めることは難しく、ほとんどの場合、離婚より前に別居するのですが、「妻が子どもを連れて実家に帰る」というシチュエーションが圧倒的に多いのです。

そして、別居中に子どもを引き取っている側が離婚後も子どもを育てたほうが子どもへの負担が少ないため、そのまま妻が親権を持つことになる。

このように子どもの親権をめぐっては夫のほうが圧倒的に不利だと言わざるをえません。

「子どもとの面会」の不利事例 F面会の約束も平気でドタキャン

ようやく嫁と離婚できたのはよかったのですが、今度は息子と会わせてもらえずに困っています。私のほうから離婚を切り出したので、息子の親権は妻に譲るのも致し方ありませんでした。

離婚時には家庭裁判所で離婚調停を申し立てたので、調停のなかで決めた面会の約束はきちんと書面(家庭裁判所が発行する調停調書)に残してあります。

私は当然のように息子と面会できると楽観していたのですが……フタを開けてみたら、このありさまです。

元妻には前もって面会時の条件について話を通して、当日の待ち合わせ時間や食事の場所、送迎の担当などを決めておいたのです。それなのに元妻は前日になってドタキャンをしてきました。

『他の用事ができたから行けなくなったの』と。

結局のところ、私は離婚から 8か月間、息子と 1度も会うことができず、今日に至ったのですが、最近では元妻の断り文句も巧妙になってきて『 ○ ○(息子の名前)が〝パパに会いたくない〟と言っているから』と言い出したのです。

『もしかして私の悪口を息子に吹き込んでいるじゃないか』と気が気でならないのですが、もはや妻と息子の会話を知ることすらできません。

一方で私は離婚から現在まで、毎月せっせと養育費を支払っているので『本当に息子のために使っているのか?お前のこづかいじゃないんだぞ!』って言ってやったんですよ。

元妻は知らぬ存ぜぬという感じで具体的な使い道について何も答えようとせず、あげくの果てには『文句があるのなら、息子に会わせないからね』と言わんばかりの態度。

まるで子どもを人質にとっているような物言いでした。これじゃ、息子とは生き別れたも同然です。養育費だけ払わされるんじゃ納得いきませんよ。最近は僕のような父親が増えているのでしょうか?本当に頭にきます!」

解 説 1度も会わせてもらえない父親が 50%以上

統計(平成 23年度『全国母子世帯等調査結果報告』厚生労働省)によると、父と子が「現在も面会している」「面会したことがある」は合わせて全体の 45・ 6%なのに対して、「面会したことはない」が 50・ 9%。

離婚から現在まで子どもの顔を 1度も見たことのない父親が半数以上というのが偽らざる現実ですが、それもそのはず。

妻が子供を連れて勝手に出ていった場合、前もって面会の約束(頻度や時間、場所、送迎方法など)を決めることは難しく、「約束あり」は全体の 25・ 3%、「約束なし」は 73・ 6%。

残念ながら、面会させてもさせなくても養育費が変わらないのなら、妻が「面会させないほう」を選ぶのは当然といえば当然。

だからといって、「なんとかわが子の顔を見たい」という一心で養育費をたんまり払っても妻が会わせてくれる保証はなく、「ママがパパをだましたせいで先生やお友達にサヨナラも言えず、転校しなくちゃいけなくなったんだよ」と本当のことを子どもに伝えることもできません。

妻が子どもの気持ちを確かめずに「パパが嫌いだと言っている」と平気な顔で嘘をつくケースもあります。いったん子どもを連れ去られたら最後、夫側は圧倒的に不利な状況に追いやられるのです。

「財産分与」の不利事例 Gコツコツ貯金した夫が馬鹿をみる

「『あんたの貯金の半分をくれたら別れてやってもいいわ!』と妻が言い出したので『何を言っているんだ!』と言い返したんです。僕は妻の守銭奴ぶりに驚きを隠せませんでした。

だって僕たち夫婦は日常の家事をほとんど平等にやってきたので、『夫のために家事の一部をやってあげたのだから、相応の見返りがほしい』というには無理がありますよ。

僕の貯金はおおよそ 800万円ですが、妻のおかげで貯金が増えたわけでもないのに、なぜ『夫の貯金の 2分の 1』を渡さなければならないんでしょうか? 僕は首をかしげざるをえません。

結婚前も、結婚後も同じ口座を使っており、その口座にお金を貯めていたので、 800万円のうちいくらが結婚後の貯金分なのかわからない。そのせいで結婚前の財産まで請求されるハメになったんです。

貯金は妻より僕のほうが多いのは当然じゃないですか! 僕の年収は 900万円ですが、妻は扶養の範囲内ですから。

僕は買い物をするにしてもネットで値段の相場を確認するし、コンビニの利用はなるべく控えて、値段の安いスーパーを探すなど倹約に努めてきたんです。

でも妻は『友達と会うから』と言っては豪華なランチやエステに興じたり、『パワースポットだから』と年に 3回も伊勢神宮まで参拝しに行ったり……。

もちろん、離婚が視野に入っていれば、財産分与で不利にならないよう『お金を使いすぎじゃないか』と妻をたしなめたり、『どのくらい持っているのかな』と妻に探りを入れたり、結婚時点での口座残高を確認しておくなど何らかの対策ができたはずです。

でも、いかんせん妻が出ていくとは思っていなかった。結局、僕の貯金のうち、半分の 400万円を持っていかれてしまいました。

妻は結婚生活でさんざん、お金を使い込んでいい思いをしたのだから、まさに『使ったもの勝ち』です。

しかも、僕は質素倹約に努めてきたのに『正直者が馬鹿を見る』という何の救いもない結末を迎えたのには納得がいきません!」

解 説節約家の夫が損する仕組み

法律上、財産分与の対象になるのは婚姻から離婚までの間、夫婦が築いた財産で夫名義だけでなく妻名義の財産も含まれますし、按分割合は夫 2分の 1、妻 2分の 1が原則です。

妻が自分で稼いだお金を貯めこんだり、夫からもらった生活費を使い切らずに残しておいたりして「へそくり」を作っていた場合、本来はへそくりも財産分与の対象なので夫婦の財産に上乗せしたうえで合計額を折半すべきです。

しかし、今は個人情報保護法があるので夫が金融機関に対して「妻名義の口座が存在するかどうか。存在するのなら現在の残高と過去の履歴を教えてほしい」と問い合わせても金融機関は応じてくれません。

そもそも妻がどこの金融機関を使っているのか、ある程度、察しがつけばいいですが、世の中には膨大な数の銀行、証券会社、保険会社が存在するので、すべての金融機関に対して問い合わせるのは現実的ではありません。

しかも、夫が結婚前も後も同じ口座を使っている場合、口座の残高のうち、結婚前の分と結婚後の分が混在しているので、離婚の財産分与として独身時代の財産まで請求されてしまうのです。

さらに財産分与の対象は離婚時に存在する財産だけなので、夫が節約してお金を貯めて、妻が散財してお金を減らした場合、前述の「財産分与の原則」に照らすと、「節約家の夫は浪費家の妻に財産を渡すべき」というトンデモ理論が正当化されてしまい、夫はただただ損をするしかありません。

ぼったくり離婚の被害者にならないために

「離婚」という修羅場で理不尽な目に遭い、不条理に悩まされ、辛酸を嘗めた男性たち……そんな彼らが苦渋の表情を浮かべながら「納得いかない」と訴えているのだから、決して軽くあしらうことはできませんし、真剣に耳を傾けなければなりません。

「男はつらいよ」と苦笑いするのは簡単ですが、それでは何も変わらないでしょう。今の世の中は実に不平等にできています。

「社会的に立場が弱い人」「情報音痴で何も知らない人」「経済的に余裕がない人」そんな人がハメられ、だまされ、ぼったくられるのです。

離婚の修羅場における『夫(男性)』はその典型例でしょう。

残念ながら、世の中すべての法律や制度、過去の裁判例などを今すぐ「男目線」に作り変えることは不可能です。

実際のところ、「妻に言われるがまま」「抵抗しない」「自分の意見を言わない」という感じで妻につけ込まれ、コキ使われ、丸め込まれる男性が圧倒的に多いのです。

僕はそんな男性のみなさんの助けになれば、という思いで今回、本書を執筆しました。

絶対的に不利だと言われている男性の離婚協議を有利に進めるための手助けとなれば幸いです。せめて妻に不利な条件をのまされないよう、心して修羅場に臨んでください。

離婚は〝協議〟で成立させるのが基本!

泥仕合に持ち込むな離婚には4つのパターンがある

次にどのように離婚を実現するのか、具体的な方法についてお話しします。

現在の制度では協議、調停、審判、裁判という4つの方法があります。

ただし、4つの中から自由に選ぶことができるわけではなく、協議がダメなら調停、調停がダメなら審判、審判がダメなら裁判という流れです。

もし「憎たらしいクソ嫁を裁判で裁いてやる!」と意気込んだとしても、協議、調停、審判をすっ飛ばして、いきなり裁判を起こすことはできません。

ひとつひとつ段階を踏まなければならないという決まりです。ただ強いて言えば、最初の段階で「協議」を省いて、調停を申し立てることは可能です。

協議とは裁判所外で夫婦が当事者間で話し合うことですが、ときどき相談者のなかには本人同士で話をすることなく、調停委員や裁判官を交えた交渉( =調停)がしたいという方がいます。

しかし本書では、そのようなやり方を推奨しません。

調停離婚はなるべく避けろ

調停を申し立てるとまず、裁判所から夫婦双方へ呼び出しの手紙が届きます。突然手紙が届けば、妻はショックを受けて取り乱すでしょうし、最悪の場合、機嫌を損ねて裁判所へ出頭しない可能性もあります。

夫婦が同居していても、すでに別居していても、何の話もせずに手紙が届けば、唐突な印象を与えるのは間違いなく、離婚の可否や条件(養育費、慰謝料、財産分与など)を決める以前に「勝手なことをして、どういうつもり!」と不信感や嫌悪感たっぷりの妻を宥める必要が生じてしまい、長期化するのは必至です。

それから離婚が成立した場合、離婚の事実(協議、調停、審判、裁判のいずれか)が戸籍に記載されることになります。

「協議離婚」の場合、夫婦で話し合って円満に解決したと読み取れるので、離婚そのものの悪影響は避けられませんが、それでもマイナスイメージを最小限にとどめることができるでしょう。

一方「調停離婚」の場合、裁判所を頼らなければならないほどモメにモメたという悪い印象を与えます。

将来的に戸籍を見せる場面は、例えば、再婚、再婚相手との子どもの進学、身内の相続などが考えられますが、調停より協議のほうが望ましいのは言うまでもありません。

そもそも離婚は夫婦にとって「最後のけじめ」なのに、妻の目を見ず、声も聞かず、顔を突き合わせることもなく、結婚生活に終止符を打ちたいというのは無理があります。

調停はあくまで「協議がうまくいかなかった場合」の次善策。まずは協議離婚を目指すのが筋です。

本書では、すべて妻とうまく交渉を進め、協議離婚を実現した実例を紹介します。

あなたの離婚は専門家に相談すべき?

離婚の専門家も十人十色

私のところには離婚や不倫、中絶ややり逃げなどの悩みを抱えた男女が相談しに来るのですが、必ずしも私が 1人目の相談相手ではなく、 2人目、 3人目ということも少なくありません。

例えば、男女問題に関わる専門家は士業(弁護士、税理士、司法書士など)、裁判所関係(調停委員、書記官、調査官など)、メンタル関係(心療内科医やカウンセラー、セラピストなど)、などが考えられます。

複数の専門家の意見を聞いたうえで判断することをセカンドオピニオンと言いますが、実際のところ、 1人目の相談相手と折り合いが悪く、疑心暗鬼に陥り、ケンカ同然の状態で愚痴や不満を聞いてほしいとやって来る相談者もいます。

特に男女トラブルの場合、当の本人は気持ちに余裕がなく、精神的に不安定。金銭的に困窮していることも珍しくありません。

すると、「相談相手が親身に対応してくれない」「思いどおりに動いてくれない」「意見が合わない」と思わず「キレて」しまうのです。

このように 1人目とケンカしたから 2人目、 3人目という具合に途中で依頼するのをやめたからといって手付け金は戻ってきません。

何度も同じ話をすれば、そのたびに過去の悪夢を思い出して吐き気がします。時間的にも金銭的にも、そして心理的にも無駄が多いのは言うまでもありませんね。

理想をいえば 1人目の専門家との間できちんと人間関係を築き、安心して任せて、解決に導いてもらいたいところです。

どうしても自力では何とかならず、専門家の力を借りたい場合、どのような点に気をつければよいのでしょうか? 専門家選びに失敗した相談者の事例をひとつ紹介しましょう。

事例 H弁護士に厄介者扱いされて

「このまま弁護士に依頼し続けていいものか。正直、戸惑っています。なけなしの 20万円を払っているのに……どうしたらいいかわかりません!」 そう嘆いているのは下原克也さん( 36歳)。

克也さんはどのような経緯で弁護士に依頼せざるをえなくなったのでしょうか? 3年前、 4歳になるひとり息子と妻のためにマイホームを購入しました。

しかし、近くに住む義母が頻繁に家の手伝いに来るため、「ちょっとお母さんに頼りすぎじゃないか?」と妻に苦言を呈したところ、夫婦関係が少しずつおかしくなっていったのです。

それ以降、克也さんが献身的に育児を手伝おうとしても、妻は「あんたは臭いし汚い!こっちに近寄らないで!」と引き離そうとします。

一方で、「私は子どもを愛してくれる人(男性)じゃないと愛情を感じられないわ」と言い、夫婦の性生活を拒む。もう支離滅裂です。

次第に妻は夫の食事だけ作らなくなりました。

一国一城の主として住宅ローンを返済し、大黒柱として生活費を負担しているにもかかわらず、妻子との会話もままならず、家庭内に克也さんの居場所はありません。

先行きに絶望し、やがてストレスから夜もほとんど眠れないような状態に。不眠症の薬をもらうべく診察を受けると、診療内科の医師から「少し距離をおいたほうがいい」とアドバイスされました。

克也さんはまるで妻に乗っ取られるような形で自宅を追い出され、実家へ戻ったのです。

数日後、克也さんは「もう我慢の限界だ。別れてほしい」と妻へ LINE。しかしいくら待っても既読にならない。途方に暮れて法テラス(国によって設立された法的トラブルの無料相談所)に駆け込みました。

紹介された女性弁護士も最初は好印象で、父親から借りたなけなしの 20万円を着手金として支払ったのですが……。

「状況をきちんと伝えるため、今までの経緯を時系列に話そうとしたんです。そうしたら弁護士の先生は『私はカウンセラーではないから』と話の腰を折られてしまうので言いたいことを言えない感じで……。

『こんなひどい目に遭ったんだから慰謝料くらい取らないと気がすみませんよ!』と言ったところ、『何か調べたんですか?』と、冷たい口調で返してきたので怖くなってしまいました」 女性弁護士は妻と話し合いの場を持ち、克也さんの要求を伝えてくれましたが、妻は「 300万円くれるなら別れてやってもいいわ!」と豪語したそう。

そして、妻の言い分を持ち帰った弁護士はなんと「 300万円くらい持ってるでしょ。これで離婚できればいいんじゃないかな?」と言い添えたのです。

「何の交渉もせず、向こうの要求を受け入れるだけじゃ困ります! 妻に頼まれて私を説得しようとするなんて……どっちの味方なんですか?慰謝料くらい取らないと納得できませんよ。妻の言いなりじゃ、何のための弁護士ですか」 克也さんは強い口調で弁護士に詰め寄りました。

すると翌日、弁護士から信じられないような内容のメールが届いたそうです。

「こんなことが続くなら当職は辞任します。次回、奥さんに会うのは来週なので、それまでに他の弁護士を探してください。当職で他の弁護士を探したり、その弁護士へ引き継いだりはしません。あなたに合った弁護士をお探しください」

弁護士が「辞任」をちらつかせて圧力をかけてきたことに克也さんは愕然とし、急いで『弁護士会』に駆け込みました。

そして「別の弁護士をお願いします!」と頼んだのですが、「まだ正式に辞任したわけじゃないんですよね? 今の弁護士との契約をきちんと終了させてから再度、来てください」と追い返されてしまいました。

こうして弁護士と妻との交渉は完全に止まってしまいました。克也さんが弁護士事務所の固定電話にかけても、出るのは事務員だけ。弁護士本人には取り次いでくれません。家を出てから 3か月。弁護士に依頼してから 2か月。

お互いに一切、譲歩する姿勢を見せずに離婚交渉は完全に平行線。

さらに、克也さんは次第に弁護士の存在が怖くなってしまい、「なんで無視するんですか?」「ちゃんと辞任してください」「着手金を返してほしいですよ」と迫る勇気もない。

だからといって弁護士抜きで妻と交渉するのは危険すぎる。

今度は『法テラス』に電話をしてみますが、「弁護士のみなさんは忙しいなか、うち(法テラス)の案件をやってくださっているんです。2か月くらい待てませんか!」と一蹴されてしまう始末……。

状況が好転するきっかけすら見いだせないまま、時間ばかりが過ぎたのです。克也さんが私のところへ相談しに来たのはそんな絶望的なタイミングでした。

克也さんは弁護士に依頼する過程で3つの失敗を犯していたのです。

弁護士の報酬体系を理解せよ

まず1つ目の失敗ですが、依頼者が弁護士の報酬体系を理解しておらず、契約内容のせいで弁護士がやる気を失ってしまうケースです。

弁護士の報酬体系とは手付け金(着手金)と成功報酬(成果報酬)に分かれます。離婚案件の場合、前者は 20万 ~ 50万円に設定されることが多く、正式に依頼する段階で支払います。一方、後者は相手方から回収した金額 × 20 ~ 30%に設定されていることが多く、案件が解決した後に支払います。

実際には相手方が依頼人に支払う前に、相手方が直接、弁護士に全額を支払い報酬分を差し引いた残額を依頼人が受け取るという流れです。

ここで問題になるのは離婚の場合、妻が「お金を取る側」、夫が「お金を払う側」という構図が圧倒的に多いという点です。

もし妻が弁護士に依頼するのなら、「夫から取った金額の 20 ~ 30%」なのでわかりやすいですが、夫の場合はどうでしょうか? 妻から養育費や慰謝料、財産を回収するのは至難のワザなので「成功報酬は期待できない」と思われがちです。

成功報酬は弁護士にとってモチベーションです。頑張っても頑張らなくても報酬が変わらないのなら「頑張らない」のは弁護士に限らず、誰しも同じでしょう。

克也さんの場合でいえば、どうせ手付け金しかもらえないのだから、できるだけ早く手を引きたいと思うのは当然といえば当然。

最も早い幕引きが「妻の希望条件で話をまとめること」だとしても。

このように「夫の離婚」の案件は成功報酬が期待できないので、最近は「弁護士がほとんど動いてくれない」という話を耳にする機会が非常に増えているのですが、とても残念なことです。

弁護士のやる気を引き出すためには成功報酬の計算方法を変更すればいいのです。

具体的には「相手方から回収した金額」ではなく、「相手方から請求されたけれど払わずにすんだ金額」 × 20 ~ 30%に設定すれば、夫が「お金を払う側」であっても成功報酬は期待できます。克也さんの場合、妻が「 300万くれるなら別れてやってもいいわ!」と豪語しています。

もし 1円も払わずに離婚できた場合、 300万円 × 30% = 90万円の成功報酬が発生しますが、 300万円と 90万円では大違いでしょう。

ICレコーダーの効力

2つ目の失敗は、弁護士と打ち合わせを行っていたのが毎回「弁護士事務所の面談室」で、 2人以外には誰もいない完全な密室状態だったこと。

依頼人の話を聞かなかったり、持論を押しつけたり、相手方の味方をしたり……弁護士が不義理の限りを尽くしてもかまわないと軽んじており、万が一、依頼人が「おかしいじゃないですか?」と言い出しても何の証拠も残っていないので「そんなことは言っていない。記憶違いじゃないか」と丸め込むことが可能なのです。

そのことを踏まえたうえで私は克也さんに対して「録音してもいいですか?後で聞き直したいので」と弁護士に頼むようにアドバイスしたのです。録音内容を弁護士会や他の弁護士などに持ち込まれたら困るので、もはや弁護士の独壇場ではありません。第三者に聞かれたらまずいような発言はしづらいですし、いい加減な態度をとることもできません。今はほとんどのスマートフォンにレコーダー機能がついています。

常日ごろからスマートフォンを持ち歩いているでしょうから、別にボイスレコーダーなどの機器を用意する必要はありません。

ほかには弁護士の言葉をメモに取るという方法もありますが、弁護士の面前で緊張しながらのコミュニケーション。筆を動かすのは難易度が高いです。

スマートフォンのレコーダー機能でしたら「 ON」のボタンを押すだけなので決して難しくありません。実際、弁護士も面談内容の録音を断りにくいでしょう。なぜなら、第三者に聞かれては困るような発言を繰り返していたことを認めるようなものだからです。

丸投げは危険!理論武装せよ

そして3つ目の失敗は、弁護士に依頼する前に先んじて離婚に関する制度や仕組み、法律などの知識を調べなかったこと。

克也さんが無知だということは弁護士にバレバレ。

「何も知らない甘ちゃん」というレッテルを貼られると弁護士は「あいつは馬鹿だから、どうせバレないだろう」という感じで克也さんに対して「どうせ慰謝料は取れない」「離婚するなら 300万円を払わなければ」「住宅ローンはずっと払うべき」といい加減なことを宣ったのですが、いかんせん、克也さんには何の知識もないので、弁護士の言い分の真偽を確かめる術はなく、理路整然と立ち回ることはできず、せいぜい感情的に言い返して、その場を追い出されるのが関の山。

弁護士に依頼するにしても、依頼人は何もせずに待つという「丸投げ」の姿勢ではなく、最低限の理論武装が必要です。

例えば、慰謝料ではなく住宅ローンの頭金払い戻しという形で請求する方法、妻子を持ち家に住まわせるかわりに養育費と住宅ローンは相殺する方法、まともに育児をしない妻に親権を放棄させる方法などです。

弁護士に「なかなかの曲者」と思わせることができれば、「ちゃんと対応しないと何を言ってくるかわからないし、いい加減なことはできないな」と気を引き締めてくれるでしょう。

ただ、本書の内容は「最低限の理論武装」にとどまらず、裏ワザも掲載しているので、なかには弁護士が知らないやり方が含まれている可能性があります。

いかんせん、弁護士はエリート中のエリートで挫折知らず。とにかくプライドが高いので、悪気なく話しただけなのに「弁護士のくせに、こんなことも知らないんだ」と、依頼人から馬鹿にされたと誤解するおそれがあります。

「何も知らない甘ちゃん」と侮っていた相手に不意打ちを食らった形であればなおさら「何様のつもりなんだ!」と取り乱しても不思議ではありません。よかれと思って知識を披露したせいで、弁護士との間に亀裂が入り、解決が遠のくようでは本末転倒。

弁護士に嫌な顔をされずに自分の要望を妻へ伝えてもらうため、前もって成功報酬の見直しを伝えておくのが賢明でしょう。

数多ある案件のなかで「離婚」に精通しており、経験も豊富で実績も十分。

そんな弁護士に依頼することができれば最高ですが、このような優秀な弁護士は高めの報酬を設定して足切りをしたり、イチゲンさんを一律で断ったり、代表弁護士ではなくイソベン(勤務弁護士)しか対応してくれなかったり……。

高いハードルを設けているので、私たち一般人は、経験が浅くて実績もあまりないような弁護士に頼まざるを得ないのが実情です。

弁護士の口を借りる

また、妻を説得するにあたり「何を言うのか」も大事ですが、「誰が言うのか」も同じくらい大事です。なぜなら、離婚直前の夫婦の間に信頼関係は存在しないのだから。

嫌悪感や不信感に満ちあふれており、疑心暗鬼そのものです。

克也さんの場合、マイホームを建ててから今まで妻からナメられ、馬鹿にされ、コキ使われてきた経緯があるので当然といえば当然ですが、だからこそ、克也さんがいくら正論を言っても「夫の言うことなんて信じられない」という感じで相手にされません。

一方、弁護士の口から発した場合はどうでしょうか?弁護士は妻にとって目上の人間で、一般的には、すべての法律に精通しているので社会的地位が高く、尊敬の眼差しを浴びる存在。だから、妻が「弁護士が言うのなら正しい」と、あっさりと屈することだってありうるのです。

このように中身は同じなのに「誰が言うのか」で 180度、態度が変わるなんて滑稽ですが、弁護士に代弁させることで結果が変わってくるのなら、弁護士を上手に活用したほうが賢明でしょう。

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