ウソのサインは「話し方」と「仕草」に表れる ウソの定義と種類 ウソはどんどんうまくなる ウソをついているサイン 「話し方」のウソのサイン 「仕草」のウソのサイン ウソを見抜く効果的な質問方法 想定外の質問をする 可能性質問という強力な質問法 その他の質問法 証拠のあと出しジャンケン ウソを見抜く上で気をつけること ウソのサインは発覚した当初がもっとも出やすい ウソを見破るには聞くタイミングが重要 ウソを見抜くには考える時間を与えないことがコツ ウソつきに情を感じてはならない 質問は簡単に、明確に、短文ですること 興奮して感情を出しての追及は避ける ウソが固まらないようにする ウソのサインについて追及しない 真実の返答ひとつで安心しない 3点疑念のウソ推定法 刑事の雑談 「張り込みではアンパンを食べ、牛乳を飲むのか?」
私は 23歳で巡査部長に昇任し、すぐに刑事になりました。昇任して異動した先の副署長がたまたま本部の知能犯担当の元幹部だったので、「やる気があるなら」と本部に推薦してくれたのです。 刑事になりたかったので嬉しかったのですが、警察署の刑事課はベテランばかり。はじめての刑事でしたし、年齢が若かったのでかなりビビったのを覚えています。 この警察署では刑事の人数が少なかったため、知能犯罪だけでなく、多種多様な事件の犯人や容疑者を取調べる機会が多くありました。 前科 20犯の粗暴犯、暴力団の幹部、常習の下着泥棒、痴漢をした銀行員、万引き少年など、罪名、年齢、性別、職業もさまざまです。 当然ですが、犯罪者の中には自分の罪を認めなかったり、認めても罪を軽くしたいためにウソを言う者がたくさんいました。 しかし当時の私は、相手のウソを見抜くことができませんでした。悩んだ私は、休日になると図書館へ行ってウソに関する本を読み漁りました。また、先輩の取調べに立ち合わせてもらい、背後で様子を観察しました。 さらに、行動原理を探るために、電車に乗ったときや買い物に行ったときなどは、人間観察をし続けました。今考えれば、かなり怪しい人だったかもしれません。 そして数年経ったある日、ウソをつく人には共通点があることを見つけたのです。私はそれを「ウソのサイン」と呼んでいます。「ウソのサイン」は突然表れるのではなく、「刺激」によって表れます。つまり会話中の「質問」が「刺激」となり、相手の「話し方」や「仕草」に表れることがわかったのです。 最初に気づいたのは「逆ギレ」という「話し方のウソのサイン」でした。特に暴力団や粗暴犯にその傾向は強く、彼らは自分の立場が悪くなると必ずといっていいほど逆ギレして怒り出すのです。「ふざけるな、若造の癖に! 偉そうなこと言ってんじゃねーぞ!」など罵声を浴びることがよくありました。「逆ギレ」は自分のウソが見破られそうになったり、答えに窮すると相手を威圧して追及の手を緩めさせる目的で行われます。 次に「仕草のウソのサイン」があることがわかりました。このサインは姿勢、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションに表れました。 万引きの常習者の取調べをしていたときのことです。 会話をしながら手の動きに注目していると、私の「質問」のあとに左手で「顔を触る」のです。それも家族の話やどうでもいいプライベートの話では手は動きません。犯罪に関わる質問をするとなぜか手が持ち上がり、顔を触ります。これを発見したときは、思わず笑いそうになったことを覚えています。「人間にはウソのサインがある」 それからは日々の取調べや事情聴取で研究を重ねました。
「ウソ」を辞書で調べると、「事実でないこと、また事実ではないことを言うこと」と解説されています。ウソは誰もがつきますし、ウソをついた経験のない人はいないでしょう。 ウソの種類は、・調和のウソ・着飾りのウソ・騙しのウソ・防御のウソ の4つと考えられます。「調和のウソ」はコミュニケーションとして必要とされるウソです。 相手に本当のことを言ったらショックを受けたり、傷ついたりするところで事実をオブラートに包んで話すことがあります。 たとえば、奥さんに「私、太ったでしょ?」と聞かれて、本当は「だいぶ太ったなー」と思っていたとします。そんなときに奥さんを傷つけないために「いやそんなことないよ、いつも綺麗だよ」と言いますね。つまりお世辞は調和のウソになります。「着飾りのウソ」は自分を着飾って大きく見せたり、良く見せたりするためのウソです。 たとえば、採用面接で使うウソです。 応募者は自分を良く見せるために着飾ってきます。着飾りのウソはウソの程度が弱いので見抜くのは難しいかもしれません。「騙しのウソ」は詐欺のウソです。相手を陥れたり、騙して何かを得ようとする際につく悪いウソです。 違法行為を行うときに使うウソは騙しのウソになります。自分の身を守るためにも見抜かないといけません。「防御のウソ」は自分を守ったり、人を守ったりするためのウソです。 会社に遅刻したとき、本当は寝坊なのに電車の遅延を理由にしたりする場合を言います。また部下のミスをカバーするために、上司があえてウソを言う場合もあるでしょう。 このように人間は生まれたときから大きなウソや小さいウソ、悪いウソやいいウソをついているのです。 では、人間にとってウソは必要でしょうか?「ウソも方便」とも言いますし、ときにウソは円滑な人間関係を築く上での潤滑油にもなります。もしウソがなくなってしまったら、人間関係はギクシャクしてしまうかもしれません。「調和のウソ」だけは、円滑な人間関係において唯一必要なウソになるのです。
ウソつきはウソに慣れてくるものでしょうか? ウソを何度もついているとウソがうまくなるのでしょうか? 当然ですが、ウソを何度もついていると、ウソをつくスキルは向上します。心理的な慣れが出て、罪悪感も薄れてきます。もちろんウソの程度にもよりますが、うまくなるのは間違いありません。 私は刑事時代にいわゆる詐欺師を取調べる機会が沢山ありました。人を騙して金品を騙し取るのが詐欺師です。 近年、振り込め詐欺をはじめ、詐欺を働く人間は増えてきているわけですが、彼らは自分らの「商売」のためにその方法を使います。 自分たちが食べていく手段として詐欺をしているので、悪いことをしているという意識がありません。そしてウソをつくことに慣れてきます。そうなるとウソをつくスキルは磨かれて当然ながらウソをつくのがうまくなります。 また、宗教団体で信者が洗脳されて悪事を働くケースがあります。 たとえば二束三文の壺を「悪霊を取り除くために買ったほうがいい」と告げて買わせる霊感商法がそうです。 これらの信者は、そもそも洗脳によって悪いことをしているという意識がありません。そしてウソをついているという意識もありません。 よって上手にウソをつくことになります。ウソはつけばつくほど、そして場数を踏めば踏むほどうまくなるのです。そしてウソをつくのがうまい人間は罪悪感がないので、取調べも困難を極めます。「その行為は相手を騙してるんだから詐欺なんだよ」と説明しても「騙すつもりはなかった」という詐欺師は多くいました。 供述調書でも「〇〇さんを騙すつもりで〇〇と言いました」などと録取すると、「その騙すという言葉は書かないでもらえませんか……」などと言う者もいて、その度に「あのね、これは騙したということなの。だから詐欺なんですよ」と言い聞かせていました。往生際が悪いのも詐欺師の特徴かもしれません。
ウソはどうやって見抜くのか? ウソをついている場合、投げかけた質問を契機として「ウソのサイン」が表れます。前述のように、ウソのサインには「話し方」と「仕草」のサインがあります。 片方でも両方でもいいのですが、このサインが感じられたら、ウソをついている可能性が高いです。 ここでは、「選挙違反事件で投票する見返りに現金をもらった」という現金買収事件をもとにして質問の答え方を例示します。 「話し方」のウソのサイン質問に答えることができない 質問に対して答えられずに、質問の答え以外のことを話す。 たとえば、現金買収事件で「どこでお金をもらいましたか?」との質問に対し、「その日は、自宅で一日寝ていたが来客はなかったな」などと、質問の答え以外のことを話す場合。そもそも質問に答えていない。質問を繰り返す 質問に答えずに、そのまま相手の質問を繰り返す。 たとえば、「どこでお金をもらいましたか?」と聞かれて、「どこでお金をもらったかって?」と質問をオウム返しする。簡単な質問が理解できない 考えなくても答えられる質問に対して、「質問の意味がわからない」などと理解を示さない。たとえば、「どこでお金をもらいましたか?」と聞かれて、「どういう意味ですか?」と質問の意味を問い直す。 お金をもらったかどうかは、いちいち聞き返さなくても理解できる質問である。逆ギレする 犯罪者ややましいことがある人は、必ずといっていいほど逆ギレする。ウソつきは自分に信用がないのがわかっているので、相手を怒って説得しようとする。 たとえば、「どこでお金をもらいましたか?」と聞くと、「なんでそんなことを言わなきゃいけないんだ。いい加減にしろ!」などと急に怒り出す。質問の手順や方法に文句を言う「こんなところで職務質問をしていいのか」「違法な家宅捜索だろ」などと質問に対する手順や方法に不満や文句を言う。矛先を変えようとする意図で行われる。 たとえば、「どこでお金をもらいましたか?」と聞かれて、「この取調べは違法じゃないか。夜中の取調べは人権侵害だろ。手続きとして間違ってる」などと言う。明確に否定しない 否定すべき質問に明確に否定しない。人間には良心があるので「やっていない」「していない」と明確にウソはつきにくいもの。 たとえば、「どこでお金を貰いましたか?」と聞かれて、「もらっていません」と明確に否定せずに「あの人とは昔からつき合いがあって、家にきたことはあるが記憶にない」などと、なんとなく否定する。余計な説明が多い たとえば、「どこでお金をもらいましたか?」の質問に、「お金はもらっていません。あの日は朝から会社に行って残業もあったので帰りも遅かった。家族も出かけていて日中は誰もいなかった。訪ねてきた人がいてもわからない。そもそも、うちにお金を持ってくる理由がない」などと、答え以外に余計な説明が多い場合。問題を軽く扱う たとえば「どこでお金をもらいましたか?」の質問に、「こんなことで大騒ぎするなんておかしい」「警察に呼ばれて話すことじゃない」などと、問題を軽く扱おうとする。神様や信頼できる人を持ち出す「神様に誓ってもやっていない」「私がどんな人間かは亡くなった先代の社長が一番知っている」など、自分の信用のなさを神様や故人、著名人で補強する。真実の話で説得する
「私の仕事の実力は誰もが認めています」「あと少しで定年退職なのに、今さら退職金がもらえないようなことをするはずがない」など、内容が真実で反論しようもない発言をする。説得力があるので「言われてみれば確かにそうだよな」と相手の発言を信じてしまいがちなので注意。 「仕草」のウソのサイン反応しない、反応が遅い 質問に対して反応しない。 あるいは反応が遅い。 答えに迷っているため反応できない。肩が揺れる 記者会見など、立って話をしているときに出やすい仕草。 肩が左右に揺れるのが特徴。身振り手振りがなくなる 今まで話していたときには身振り手振りが頻繁に出ていたのに、その質問によって身振り・手振りがなくなる。あるいは手をポケットに入れたり、腹の前や後ろで組んだりする。顔に手をやる 質問を受けた瞬間に手があごや鼻に移動して触れる。ウソをつくと「言ってはいけないことを言ってるから、口を塞がないといけない」という理性が生じるが、口を塞ぐと話せなくなるので、顎を触ったり、鼻を触ったりしてごまかす動作になりがちである。整理整頓の仕草「ネクタイを締め直す」「スカートのしわを伸ばす」「机の上の文房具を揃える」「メガネをかけ直す」などの動きをする。ウソをついていると心が乱れるので、身の回りのものを整えようとする仕草になりがちである。支点移動の仕草 物体と体、体と体が触れる点(支点)が動き出す。 たとえば、椅子に座っている人の場合は「靴」と「床」、「肘かけ」と「肘」など、それぞれが触れている点が質問と同時に動き出す。
想定外の質問をする たとえば、殺人罪で犯人を取調べします。当然ですが、犯人は刑事からの質問を事前に想定して備えています。また、言っていいこと、ダメなことも整理しています。 想定される質問は、 ・○月 ○日、あなたはどこで何をしていましたか?(犯行日時) ・○ ○県 ○ ○市に行ったことはありますか?(犯行場所)・被害者と最後に会ったのはいつですか?・被害者と最後に連絡をとったのはいつですか?・被害者とどんなおつき合いをしていましたか?・被害者とトラブルになったことはないですか? などでしょう。これは答えが用意されていますから、うまく答えられてしまいます。 ちなみに交渉術の観点から見ると、このケースの犯人と刑事、どっちが優位に立っていると思いますか? 答えは「犯人」です。 なぜかというと、知りたい情報はすべて犯人が持っているからです。殺害に至った経緯、被害者との関係、殺害方法、殺害後の遺体の遺棄方法など、刑事が知らないことを犯人は全部知っています。どう考えても犯人が優位です。 ただ、ウソの情報を引き出すことは、ムダではありません。ウソの情報は裏づけを取り、ウソと認定していけばいいのです。 刑事の立場からすると、現場で発見された人証、物証が唯一その状況をひっくり返せる材料になります。 この犯人の優位な立場を崩していくには、犯人が想定していない質問を織り交ぜていくのが有効です。想定外の質問をすると、犯人の心理的な変化や態度の変化を見ることができます。 想定外の質問のほうが刺激になりますので、ウソのサインも出やすくなるのです。 可能性質問という強力な質問法 ウソを見抜く強力な質問法として「可能性質問」という質問法があります。これは「犯人であれば、あり得る可能性」について突っついて聞くというものです。 たとえば、ある会社の更衣室にある従業員用のロッカーから現金が盗まれたとします。その時間帯に更衣室を使用した社員は 5人です。 順番に話を聞いたところ、 Bに複数のウソのサインが見られました。そこで Bという男性を再度呼び出して聞いてみることにしました。ここで使えるのが可能性質問です。「あなたがロッカーから現金を盗んだのを、見た人がいる可能性はありますか?」と聞いてみます。 もし彼が犯人であった場合、誰かに目撃された可能性があります。彼は「誰かに見られたのではないか?」と勝手に想像を始めます。 そして仮に見られていた場合、何と答えてこの場を切り抜けようか考え始めます。つまり、そこにウソのサインが出やすくなります。 犯人でない場合は、目撃された可能性はまったくないので、「そんな可能性はありません。だってやっていないですから」と考える間もなく直ちにそう答えます。 人間はこのようなネガティブな情報を投げられると、心あたりのある人だけがそれに反応して勝手に悪い方向に考える傾向があります。 たとえば、朝出かけるときにいつも見送りもしない奥さん(旦那さん)が玄関先まできて、「今晩、ちょっと大事な話があるから……」と神妙な顔つきで言われたとします。あなたならどう考えますか? 何もやましいことがなければ「何のこっちゃ」で終わります。ところが何かやましいことがある人は、「何の話だろう? 浮気がばれたかな? いや、へそくりかな? まさか離婚したいとか?」などと、勝手に悪い方向に考えますよね。 これは奥さんの投げたウイルスに感染したためです。人間は悪い情報を得ると勝手に最悪のことを考えて、その対処方法を事前に考えておこうとするのです。 ですから、「あなたがロッカーから現金を盗んだのを見た人がいる可能性はありますか?」と聞かれると、「目撃者がいたのかな? もし、いた場合には何て答えようか」と考え始めます。「その時間に更衣室は使ってない」と答えるつもりだったのが、急遽作戦を変更して「あ、使ったことは使ったけど」と答える可能性があります。 つまり、たった一つの質問でそこまで引き出すことができるのです。 可能性質問のどこがいいのか。実はこれって、疑っていないのです。 相手の心に聞いているだけで、疑っていませんよね。「……の可能性はありますか?」と尋ねているだけですから。つまり可能性がある人だけが反応するのです。 また可能性質問をもっと効果的に使う方法があります。質問の前に効果を高めるための「前ふり」を入れるのです。 たとえばこんな感じです。「うちの会社では、こんな泥棒事件は絶対になくしたいと思っています。社員もパートも不安を感じているし、泥棒のいる会社なんて信用問題にかかわります。だから今回は全社員から話を聞き、徹底的に調べました。ぶっちゃけいろいろな情報が集まってきました。ところで、あなたがロッカーから現金を
盗むのを見た人がいる可能性はありますか?」。 犯人は「そこまで言うということは、目撃者がいたのかな?」と思い始めます。 つまり「前ふり」を入れることで、信ぴょう性を高める効果があるのです。 私の経験から言うと、犯人と取調官との信頼関係が強くできていて犯人が素直な人間であれば、「そこまで言うということは目撃者がいたんだな……」と勝手に判断をして事実を認める傾向が強いです。 可能性質問は犯人であれば、あり得る可能性について聞くわけですから、必ず反応が表れます。ちなみにこの質問法は強力なウソの見抜き方なので、本当にウソを見抜きたいときだけ使ってください。 世の中には見抜かないほうが幸せというウソもありますからね。
おかしな質問 あえておかしな質問をして、反応を見る質問法です。 唐突におかしな質問やくだらない質問をすると、「それ何の質問?」「そんなの知らないよ」と横柄な態度をとったり、質問に答えなかったりする人がほとんどです。 しかし、そんな質問にもかかわらず、普段よりも優しく答えたり、真剣に答えるときは「心に何かやましいことがある」と考えられます。 たとえば、禁煙を約束していた旦那さんが、タバコの臭いをさせて帰ってきました。 そんなとき、「昨日は居酒屋で飲んでたのよね。あそこってサラダのドレッシングが選べたけど、何があったか知ってる?」とおかしな質問をしてみます。 普段なら「そんなの知らねえよ」と答える人が、「えーと、何だったかなー。ドレッシングでしょ。和風、イタリアン……あと何があったかな……」と必死に答えたときは、何かやましい気持ちがある可能性が高いです。もしかしたら、居酒屋でタバコを吸っていたのかもしれませんね。 多方向質問 一つの答えを知りたい場合に、いろいろな方向から質問を投げかける質問法です。 たとえば、未成年者と思われる人物に年齢を聞いたところ「 18歳です」と答えたとします。その場合に「生年月日は?」「高校の卒業年度は?」「干支は?」などと、同一事項について多方向から質問します。そうすることで矛盾点が浮かび上がり、本当のことを言っているかが判断できるのです。 矢継ぎ早に質問すると、頭を働かせることができないので、答えに窮してボロを出すことになります。 様子質問 些細なことを聞いて、真実かどうかを判断する質問法です。 たとえば、「中年の男が、その場所に立っていた」という目撃情報があったとします。ウソつきは、「立っていた」ということに関しては装えても、細かな様子までは考えていないことがほとんどです。 そこで、「そのとき、彼はどんな様子でしたか?」と、詳しい状況まで聞いてみます。 実際に見ている人は「震えていました」「顔がひきつっていました」などと、細かい様子まで答えることができます。それは見ているからです。 しかし、見ていない人は当然ですが、答えられません。「あー、様子ですか……」と答えに窮してしまうことが多いのです。 逆に、犯人や目撃者でなければ供述できない事細かな状況を自ら語る場合には、その供述は信ぴょう性が高いと言えます。 教えを乞う質問「知らない人には教えてあげたい」という人間心理を利用した質問法。 あえて知らないふりをして質問すると、相手はいろいろと説明してくれます。その説明で相手の知識やスキルを測ることができます。 たとえば、「パソコンはかなり詳しい」という説明をした人に対し、あえて知らないふりをして教えを乞います。相手は自慢げに教えてくれますが、説明を聞いていると「意外と知らない」という事実も見抜けるのです。 当然ですが、ウソを見抜くには質問する側の知識が豊富であることが前提になります。 保証確認質問 自分を保証してくれる人がいるかどうかを質問して、真実を問う質問法。「あなたがやっていないというのを、誰か保証してくれますか?」と質問します。「自分で自分を保証しますよ」と明言した場合は、ウソをついていない可能性が高いでしょう。 ウソをついている人間は、自分で自分を保証できないので「自分で保証する」とは言いにくいものです。 一方、「友だちの ○ ○が保証してくれます。一緒にいたので」と自分以外の人のみを不安げに話すときは、ウソをついているかもしれません。 逆方向質問 ウソつきは真実を曲げて架空のストーリーを作り出します。 自分の頭の中で作ったものなので、体験や記憶がありません。従って、そのストーリーを逆から質問すると辻褄が合わなくなります。 ある会社事務所に、強盗が押し入った事件がありました。深夜、従業員が一人でいるときに押し入り、売上金を強奪されたというのです。 その従業員に状況を聞いてみると、なぜかそわそわして落ち着きません。話にも不自然な点が多く、強盗を装った虚偽の通報である可能性が感じられました。 そこで、襲われた状況を逆から、つまり犯人が逃走した時点から侵入してきた時点へ遡りながら、話を聞いたのです。 すると先ほど話した内容に矛盾が出てきました。順番が入れ替わったり、まったく違う話になってきたのです。 その点を指摘すると従業員は顔色がみるみる変わり、結局ウソの通報であることを認めました。借金があり、金に困っていたので架空の強盗事件をでっち上げて売上を奪ったのです。 このように逆方向から細かく質問をすると矛盾点が浮かびあがり、ウソを見抜くことができます。
共犯者がいる詐欺事件を捜査中、主犯格から携帯電話を押収して解析したところ、共犯者にメールで指示している証拠を見つけ出しました。 主犯格は共犯者との関与を全面否認しており、このメールが共犯者との共謀を証明する重要な証拠になりました。おそらく主犯格は、このメールを消し忘れたものと思われます。 こんなケースで、証拠をどう使ってウソを見抜きますか? 一般的には、「そのメールを主犯格に示して口を割らせる」という方法が想像つくでしょう。 しかし、私はこの事件で部下にこう指示しました。「先に弁解を潰しておけ」と。 主犯格に証拠となるメールを見せれば、おそらく「携帯電話を落とした」「携帯電話を人に貸した」などという弁解をするでしょう。ですから、「そう言われる前に潰しておけ」と指示をしたのです。つまり取調べの中で「携帯電話はいつも肌身離さず持って使用していた。人に貸したことも落としたことも一度もない」ということを言わせて、供述調書を作成させたのです。 もちろんこの時点では、証拠のメールについてはまったく触れずに、関係のない話をしながらこの事実だけを調書化しました。 その上で証拠を提示して取調べたのです。こうなると主犯格は逃げ場がありません。今さら「あれは記憶違いだった」とは言えないので、共犯関係を認めました。 この手法を「証拠のあと出しジャンケン」といいます。 証拠を見つけたら先に出すのではなく、その証拠から予想できる弁解をすべて言わせてから、最後の最後に証拠を出す方法です。 これはあらゆるケースで使えます。 たとえば、会社内で社員の不正が発覚したとします。証拠を見つけたからといってすぐに示したら間違いなく言い訳をされます。ですから、言い訳は全部言わせておいて最後の最後で証拠を出すのです。
ウソのサインは発覚した当初がもっとも出やすい 政治家や芸能人の不正やスキャンダルが、週刊誌などで報じられることがあります。こういう場合、発覚した直後の記者会見や囲み取材などが、もっともウソのサインが出やすいときです。 人間は時間の経過とともに知恵がついてきます。自分にいいように事実を塗り替えていきます。つまりファーストコンタクトが勝負なわけです。相手が理論武装する前に質問して確認するのです。 たとえば、信号無視した車による交通事故。発生直後に車から降りてきた運転手は「すみません、テレビに気を取られて信号を見落としてしまって……」と信号無視した事実を謝っていました。 ところが時間の経過とともに「信号が赤だったかどうかは記憶にない」「たぶん青だった」などと供述を変えます。 これは、現場に目撃者がいない、ドライブレコーダーもたまたま作動していなかったことなどがわかり、証拠もないし、赤信号で進行したという事実は立証できないだろうと知恵がついたからです。こうなるとウソを立証するのはかなり困難になります。 ですから発覚した当初の段階で、しっかりと証拠を押さえておくことが重要になるのです。 ウソを見破るには聞くタイミングが重要 ウソのサインは、何の予告もなく、唐突に聞いたほうが反応が出やすいです。 たとえば、旦那さんが朝帰りしたとします。当然ですが、帰ってきたときは奥さんに何を聞かれてもいいように旦那さんも弁解を考えています。ですから、質問したところでうまく答えます。 そこで、その日の晩御飯のときに唐突に聞いてみます。「昨日はどこで飲んでいたの?」「なんで朝帰りだったの?」と。 そんなに時間が経ってから聞かれるとは思っていないので、油断してウソのサインが出やすくなります。 たとえば、社員の不正が発覚して、話を聞きたいときには「ランチでも行く?」と個室のランチに誘い、相手が油断している状況下で突然切り出してみましょう。「あの件なんだけど心当たりある?」と。 当人が犯人であれば、かなりの動揺が見られるはずですし、そんなときこそウソのサインが表れるのです。 ウソを見抜くには考える時間を与えないことがコツ ウソを見抜きたいときは、相手が「あの事実について聞かれそうだ」と察知しているようなら、なるべく考える時間を与えないことです。 察知してから質問までの間が長いと、相手に防御策を考えさせてしまうからです。相手が防御を開始する前に質問を始め、ウソのサインを見抜いてしまいましょう。 たとえば、容疑者の自宅に赴いて警察署に任意同行を求め、そのあと取調べをすることがあります。選挙違反事件や贈収賄事件は、このパターンが多いわけです。 こういう場合、「 ○ ○についてお話を聞きたいので同行願います」と任意同行を求めるので、「 ○ ○について聞かれる」ということはわかります。そのため、容疑者は自宅から警察署に到着する数十分、数時間の間に頭を整理してある程度の言い訳を考えるはずです。 ですから、あえて言い訳を考えるための詳細なヒントは与えません。車内では事件とまったく関係のない雑談をして、相手に考える時間を与えないのもテクニックの一つです。 ウソつきに情を感じてはならない ウソつきから話を聞いていると、その人の人間性にも触れていくので、情が湧いてしまうことがあります。 特に取調べは 20日以上行うことが多く、取調室というかぎられた空間で長い時間、顔を合わせていると犯人がかわいくなってくるのです。そうすると、追及の手が緩むことになります。 ウソを言われても、「ウソは言ってないよな?」と信じてしまうことにもなりかねません。 ですから、真実がすべて明らかになるまで、相手に情を感じることは避けなければなりません。自分の感情を殺して厳しい目で見ていかないと、結果として騙されてしまうからです。 ある事件の共犯者数名を複数の取調官がそれぞれ担当して、取調べをしていました。取調官同士は定期的に打ち合わせをして、被疑者の全体的な供述に矛盾がないかを検討する機会を設けていました。 そこで各取調官が被疑者の供述を報告し、比較していくと相互に合わない部分が出てきたのです。 取調官は自分の被疑者は本当のことを言っていると信じているし、信じたいので、他の共犯被疑者の供述は違うと言い張ります。ちょっとした小競り合いになりました。 このようなケースでは、証拠から判断して事件の方向づけをしていきます。 最終的には落ち着いたのですが、このように被疑者に情を感じてしまうと、冷静な判断ができなくなります。終結するまでは気持ちを許さないことが大事です。 質問は簡単に、明確に、短文ですること 質問が曖昧だったり、わかりにくかったりすると、相手に理解されず、ウソのサインが出にくくなります。
反応を見るには、相手が質問の趣旨を理解していることが前提です。従って明確に、そしてわかりやすくするために、質問は短文ですることが重要です。 政治家などの疑惑が報じられたあとに、緊急記者会見を開くことがありますよね。各社の記者が手を挙げて一斉に質問するので、時間も数もかぎられます。そんなときに長々と前置きをして、 1回でいくつもの質問を言う人がいます。 あれは最悪の質問の仕方です。つまり聞かれたほうも相手の質問が長い分、考える時間が与えられます。そのため辻褄の合う回答を考える余裕が生まれます。 ウソつきはウソのストーリーを組み立てていますから、真実を語るときよりも考える時間が必要になります。ですから、考える時間は与えないことが重要です。 また複数の質問がくると、どの質問に反応したのかわからなくなります。 興奮して感情を出しての追及は避ける ウソをついているのがわかったり、話に矛盾を感じたりすると、感情が表に出て怒鳴ってしまう方もいます。しかし、そこはぐっとこらえて淡々と質問することが大事です。 ウソを見抜くためには、相手に真実を話してもらう必要があります。相手が心を閉じてしまうと、それは不可能になります。 相手の態度や言動に感情的になるのは逆効果です。冷静さを失わず、徐々に心を開かせた上で話をさせることが必要です。 ウソが固まらないようにする ウソつきはこの場をどう逃れようかと常に考えているため、ウソを重ねていくことになります。そして、ウソを上塗りすればするほど、ウソをつくことに慣れてきて、「ウソが固まる」という現象を引き起こします。「自分で考えたウソのストーリーを何度も話すことによってウソにウソが上塗りされ、どんどん真実のようになっていくのです。 こうなると、ウソを見破ることはかなり困難になります。 ですから、なるべくウソをつかせないようにすることが重要です。「あなたはしていないのですね?」「はい」「あなたは知らないのですね?」「はい」「あなたは関係ないのですね?」「はい」 このように否定形の質問を繰り返していくと、ウソが固まりやすいので避けましょう。 ウソのサインについて追及しない 会話中にウソのサインが見られたからといって、それをネタに追及すると相手は注意するようになり、ウソのサインを出すことをやめてしまうことがあります。ウソのサインを感じて指摘したり、それをネタに追及するのはやめてください。 真実の返答ひとつで安心しない 相手が真実を話したとしても、それで安心してはいけません。ウソつきは一番罪の軽いものから話すことが多いからです。 贈収賄事件でこんなケースがありました。 公務員がある業者に便宜を図った見返りに、賄賂として現金をもらった疑いがありました。数日間にわたり、受け取った事実を追及していたところ、その公務員がやっと事実を認め、「すみません、 20万円をもらいました」と供述しました。 私としては苦労して認めてくれたのでほっとします。そこで「やっぱりそうだろう。いつどこでもらったんだ? 何の見返りにもらったんだ?」と事細かに聞きたくなります。それが取調官の心情です。 しかし、それはぐっとこらえて「他にもあるよね。それだけじゃないのはわかってる。他にもらったのはいつ、いくらですか?」と追及の手を緩めませんでした。そうすると相手は「え……他にですか……」と考え始めたのです。私はその沈黙の中にウソのサインを見つけました。 結果的にこの公務員は複数回にわたり、合計数百万円の賄賂を認めるに至りました。 犯罪者はもちろんのこと、基本的にウソをついている人間は一番罪の軽いものから話します。すべてをきれいに話すことはありません。 誰しも自分がかわいいですし、少しでも罪を軽くしたいのです。悪い人間ではないと世間に見てもらいたいと思うのは当たり前です。
ウソは相手が「実はウソをついていました」と自供して、初めてわかります。つまり相手が自供しないかぎり、ウソだということはわからないのです。 しかし、どこかの段階で「ウソをついている」と確定しないと、追及が緩んだり、事実関係の調査が先に進まない場合があります。 疑いを解明したい立場からすると、何かの基準に達したら「こいつはウソをついている」と明確にできると楽になります。 そこで私は一定の条件を満たしたら、自供がなくても「ウソを推定する方法」を用いていました。これを「 3点疑念のウソ推定法」と言います。 会話をしていて、相手がウソをついているのではないかと思う場合があります。当然ですが、その疑念を解明するために質問をします。 そのとき、質問の返事が「一般常識に照らして不自然な答え」であり、「誰が聞いても納得できない」と認められる場合には、疑ってください。そして、内容の違う疑念が3つ以上になったときには、「ウソである」と推定します。 これは故意に真実を捻じ曲げたときに起こるのです。真実をウソで無理やり捻じ曲げようとするのでどこかに負担がかかり、不自然さが生まれます。その結果、誰が聞いても納得できない話になってしまうというわけです。 一つの事例をお話しします。かれこれ 9年前に遡りますが、典型的な事例なのでご紹介します。それは 2014年9月 25日に起きた競泳の冨田尚弥選手による韓国でのカメラ窃盗事件です。 この事件はアジア競技大会の仁川文鶴競技場で、韓国人記者のカメラ(約 800万ウォン相当、日本円で 70万円程度)を、記者が離席中にレンズを取り外し、本体のみを盗んだとされた事件でした。 冨田選手は、翌 26日、 50メートル平泳ぎに出場し予選敗退後、仁川南部警察署から事情聴取を受け、犯行を認めました。 犯行の動機については、「見た瞬間、欲しくなった」と供述していました。被害品については選手村の冨田選手の部屋の鞄から見つかりました。これにより、日本選手団から追放され、出国停止処分を受けたのです。 ところが彼は、帰国後の 11月 6日、名古屋市内で会見を開き「カメラを盗んだ事実はない」と訴えました。冨田選手は韓国警察の取調べについても、最初から犯人扱いで通訳に「認めないなら、韓国に残されるかもしれない」と言われ、きちんと話す機会を与えられなかったと主張しました。 彼の言い分は、 プールサイドに座っていたところ、緑色のズボンをはいた東アジア系の男から手を摑まれ、持っていたポーチに黒い塊のようなものを入れられた。危害を加えられると困ると思い、驚いてその場を離れた バスでの移動中でもポーチの中は確認することはなく、この出来事を誰にも言わず、宿舎に持って帰った 中にはカメラの本体部分が入っていたがゴミだと思って捨てる場所もなかったので捨てなかった などと説明しました。 彼の説明が真実だと仮定した場合、いくつもの疑念が生じます。 一般常識で考えると、 他人から自分のポーチに何かを入れられたら、何を入れたのだろうか? と中を確認する プールで不審者に手を摑まれれば他の選手にも危害を及ぼす可能性もあり、警備員に通報する 怖い思いをしたのでバスの中で選手仲間に出来事を話す 宿舎に持って帰ったあと、盗んだという言いがかりをつけられないように本部や上司に報告する などの行動が考えられます。 つまり彼は「一般常識として不自然な答え」をして「誰が聞いても納得できない」という条件を満たしています。そして 3点以上の疑念が解消されていません。ですからこのケースではウソと推定して構わないのです。 私の個人的見解ではありますが、彼は本当の事実を無理に変更しているのでこんな結果になったのだろうと思います。 ちなみにこの事件は韓国で正式裁判になり、裁判所は「被告の説明には信ぴょう性がなく、信用できない」として有罪判決を出し、判決は確定しています。 私が犯罪者の取調べをしていたときも相手の言い分が不自然であり、誰が聞いても納得できないケースが多くありました。 そんなときは、「 3点疑念のウソ推定法」で「ウソであると推定」し、追及を強めたり、証拠との照合を重ねてウソの事実を固める作業をしていました。 これは取調べする側が「疑心暗鬼にならないための推定法」と言えるかもしれません。
昔の刑事ドラマでは、張り込み中の刑事がアンパンを食べながら牛乳を飲むシーンがあります。実際の刑事の世界ではどうだと思いますか?「もしかして糖分をとってイライラを解消するため?」「栄養を考えて?」「腹持ちがいいから?」 などの理由で食べているのかなとお思いかもしれません。 実は……張り込みでのアンパン、牛乳は刑事ドラマの世界の話で実際はありません。だいたいコンビニにあれだけおいしいものが売っているのに、アンパンと牛乳を好んで飲食する必要がないですよね。 張り込み中に食事をすることは確かにあります。 それは現場から動けないので仕方なくその場で食べる場合です。 最近は街中にコンビニもたくさんありますし、食べものを調達する意味では刑事も楽になりました。 ちなみに刑事は食通が多いです。 なぜかというと、食べるのが唯一の楽しみだからです。 特に本部の捜査員は県内外広範囲に捜査で出向きますので、「 ○ ○市に行くならあそこのラーメン屋」「 ○ ○海岸に行くならあそこの定食屋」などと行きつけにしている飲食店がたくさんあります。店に行ってみると、見たことのある刑事で満席になっているケースもあるんですね。 そんな店内で「お、久しぶり。今どこに(応援派遣で)行ってるの?」と刑事同士が会話している光景はなかなかおもしろいと思いませんか。 あなたが普段行っている馴染みのお店も、実はお客様が全部刑事だったかもしれませんね。
コメント