MENU

発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉星野仁彦

はじめに 私が『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書)を出版したのは、二〇一〇年二月のことでしたが、おかげさまで多くの読者を得ることができました。「大人の発達障害」という問題への関心がここまで高かったということに、著者である私自身、驚いています。 発達障害とは、「注意欠陥・多動性障害( AD H D)」や「アスペルガー症候群( A S)」、「自閉症」、「学習障害」などを総称するものです。前著を読まれた読者の方から、これまで「生活がうまくいかないのはなぜだろう?」と何となく感じていた原因がようやくわかったという声を多くいただきました。 中でも、この「大人の発達障害」に特有、かつ最大の問題は、社会人として働く場面で現われます。会社に勤める人はもちろん、個人で事業などをしていたとしても、仕事を進めるうえでは多くの人と関わらなければならず、学生時代とは比べものにならないほど高度なコミュニケーション能力が必要とされます。 そのため、学生時代まではさほど問題とされずに過ごしてきたのが、社会人になって初めて発達障害であることに気づくという人が多くいるのです。 机の上に書類を積み上げて、探し物ばかりしている。朝や打ち合わせの時刻にいつも遅れてくる。仕事の期日の直前になってあわてはじめる。何度説明されても仕事の手順を覚えない。言われたこと以外は一切やらず、融通がきかない。空気が読めず、お客さんが相手でもキレたり、失礼なことを平気で言う……。 そんな「ちょっと困った社員」に、あなた自身がなっていませんか? あるいはあなたの職場に、そんな人はいないでしょうか? もしいれば、それは「大人の発達障害」が原因である可能性があります。 仕事で失敗をすれば、会社の周りの人だけでなく、お客さんや、ひいては社会全体に迷惑がかかる可能性があります。単なる〝失敗〟ですめばいいですが、金銭的な損害や大きな事故に発展してしまえば取り返しがつきません。 また、昨今話題となることの多い、職場の「うつ」の増加や、「ニート」や大人のひきこもりの増加についても、その背景に発達障害があることが疑われます。発達障害が引き金となって、これらの症状が「二次障害」として現われることも多いからです。 つまり、「職場の発達障害」への対応は、当事者にとっても、会社側(上司や同僚)にとっても喫緊の課題と言えます。 しかし、発達障害だからといって「仕事ができない」ということはけっしてありません。本人の得意なこと、苦手なことを把握して、的確に仕事を配分すれば、日常の業務をこなすことは可能で、時には人並み以上の能力を発揮することもあります。 必要なのは、本人や周囲の人が、発達障害とは何かを知り、それを受け容れたうえで、対応していくことなのです。本書では、このような「職場の発達障害」への対応策に的を絞って、具体的に解説しました。前作と同じく、多くの方のお役に立てば幸いです。二〇一一年三月星野 仁彦

目 次第 1章 発達障害とは何か――能力があるのに仕事ができない本当の理由職場で周囲から浮いてしまう人たち「空気が読めない」のは性格のせい?「発達アンバランス症候群」という考え方大人の発達障害で多い AD H Dと PDD大人の発達障害は見過ごされてきたなぜ〝大人になってから〟気づくのか? (1) AD H D(注意欠陥・多動性障害)不注意・多動性・衝動性―― ADHDの三つの特徴 AD H Dの三つのタイプ (2)広汎性発達障害( PDD)広汎性発達障害の代表はアスペルガー症候群( A S)何より大事なのは「気づき」「受け入れ」「認める」こと星野流 A D H Dの仕事術第 2章 発達障害者が仕事をうまくこなすには――職場で自分の特性を活かすコツ長所を活かして、短所をカバーする仕事をうまくこなすために見直すべき「三つの R」仕事をうまく進めるコツ (1)「やるべきこと一覧」でスケジュールを管理する (2)段取りをよくするには自分専用の作業マニュアルを作る (3)仕事は小分けしてできることから順番に片づける (4)時間の管理は身近な仕掛けを用意する (5)書類などは置き場所を決め、使ったら必ずそこへ戻す (6)明日職場へ持っていくものは玄関や出入口に出しておく (7)大事なものは体からはなさないコミュニケーションのコツ (8)相手を怒らせてしまったときは、とにかく謝る (9)相手の考えや気持ちは状況観察で学び、覚える (10)依頼の仕方と断り方を覚える (11)会議では出し抜けに意見しない (12)得意なこと、苦手なことを知ってもらう (13)指示や連絡などを口頭で受ける場合は必ずメモを取る (14)よく使う言葉は手帳などにリスト化しておく (15)自分の価値観を絶対視して他人の批判をしない (16)話すときのマナーを覚える (17)服装のマナーを覚える (18)食事のマナーを覚える職場環境をよくするためのコツ (19)感覚過敏には刺激を緩和するツールを活用する (20)パニックになりそうなときはクールダウンを心がける (21)ストレスコーピング(ストレス対処法)を考える (22)自分に合う職場に異動させてもらう ■事例 ①/ R子さん――ストレスコーピングが効果を発揮したケース ■事例 ②/ J男さん――異動を希望し、改善したケース発達障害をカミングアウトすべきかどうか職場の理解があれば、受けられる可能性のある支援第 3章 職場で発達障害者を活かすには――周囲の人ができる 11の工夫発達障害者とどう向き合えばいいか

仕事の進め方に問題がある場合 (1)「作業マニュアル」とスケジュール表を作る (2)作業を確実にやってもらうには「構造化」する (3)仕事の能率の悪さは目標管理で改善を促す (4)集中力に欠ける場合は仕事の適性を再検討する (5)複雑な作業は工程を細分化してやってもらう (6)機器や道具の使い方などは具体的な言葉に置き換えるコミュニケーションに問題がある場合 (7)曖昧な表現は避け、具体的に伝える (8)マナーや慣習は可能なかぎり明文化する (9)指導や注意はできるだけ穏やかに行なう職場環境に問題がある場合 (10)パニックになったら一人になれる静かな場所へ移す (11)周囲の刺激に過敏な場合はその刺激を減らすことを考える上司や取引先の人が発達障害と思われる場合はどうすればいいか職場における発達障害の確認は慎重に第 4章 他人とは違うからこそできること――発達障害に向く仕事、向かない仕事「大人の発達障害」のなかの格差発達障害の人はなぜニートやひきこもりになりやすいのか普通学級で過ごしてしまうことの弊害学力より社会性の方がはるかに大事社会性をのばす二つの方法一人暮らしは避ける「やりたいこと」と「できること」のズレが悲劇を生む「他人を助ける職業」に発達障害が増えているのはなぜか適職を探すための三つのステップ長所が活かせる職人的な仕事に就く発達障害の人に向いている職業は何か障害者雇用制度を利用するには第 5章 発達障害の診断と治療法――障害のメカニズムから心理療法、薬物治療まで発達障害はなぜ起こるのか発達障害にともなう二次障害――生きづらさが増すもう一つの原因問題の本質を見えなくする「重ね着症候群」診断を受けることで自己イメージが修正できる発達障害はどうやって診断するのか発達障害の治療はどのように行なわれるのか ■事例 ③/ T男さん――薬物療法が効果を発揮したケース ■事例 ④/ E男さん――自助グループへの参加が奏功したケース第 6章 うつ病・依存症と、発達障害――乱れがちな日常生活を改善するライフスキル新型うつ病の背景にも発達障害がある発達障害者はなぜ依存症・嗜癖行動に陥りやすいのか発達障害にともなう依存症は治りにくいしばしば起こる児童虐待や DV非行や異常性愛に走ることもある二次障害を防ぐには、健康とライフスタイルに気をつける秋田県の子どもはなぜ成績がいいのか日々の暮らしでできるさまざまな工夫何より大事な家族や周囲の支え女性の発達障害者が感じる生きづらさ ■事例 ⑤/ W子さん――薬物療法と家族のサポートが効果を発揮したケース ■事例 ⑥/ A男さん――投薬治療で改善したケース ■事例 ⑦/ F子さん――薬物療法と食事療法で改善したケース

あとがき――大人の発達障害をめぐる現状と課題

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次