◆〝頼み事〟は簡単なものからお願いする ◆相手を説得したいときには「丸テーブル」 ◆人を動かす「話し方」の極意とは? ◆不思議にうまくいく〝ランチタイム〟の成功法則 ◆「性格別説得法」を使い分けよう ◆「 Aか Bか」の二者択一で逃げ道をなくす ◆口八丁な相手には〝しぐさ〟でペースを崩す ◆「あなたなら」と期待されると人は断れない
◆「 NO」と言わせない〝しぐさ〟のコツとは? ◆人間関係の奥義は〝妥協〟と〝譲り合い〟
〝頼み事〟は簡単なものからお願いする たいていの場合、頼まれてもすぐにできるものや簡単に終わるものならば、そう断られることはないはずだ。
よほど時間がないか、あるいはまったく興味がないか、それとも頼んだ相手に嫌われているか、そのいずれかでなければ OKをもらえるだろう。
しかしときには相手が嫌がっても、どうしても説得しなければいけない場面もある。
そのときの頼み方が難しいのだ。
人によっては、真正面から正攻法で突破を目指す人もいるだろうが、その結果、成功する確率よりは、失敗する確率のほうが高くなるのは仕方がないところだ。
相手が頼んだ人の心意気を買ってくれればいいが、なかなかそうはいかない。
そこでお勧めしたいのが、段階的に相手に頼む方法である。
言い換えれば、簡単なものから頼み、徐々に難しいものへと移っていくやり方だ。
この方法は英語では〈フット・イン・ザ・ドア・テクニック〉と呼ばれ、その意味するところは、開いたドアの中へ靴を差し込むと話を聞かざるを得なくなるというもので、悪知恵の働くセールスマンが、相手に話を聞いてもらうために使ったテクニックと似ている。
つまり何とかして相手の心を少しだけでもいいから開き、そこから徐々に大きく開いていくというものだ。
この方法は〈先行依頼〉とも言われていて、相手が受けやすいものを最初に頼んでおき、その後に本来の頼みごとをするのである。
例えば、心理学の調査をするときに、よくこの方法が取られる。
まず初めに簡単なアンケートをしてもらう。
そしてその回答が終わった後に本来の調査の依頼をするのである。
その理由は最初に煩雑な調査の依頼をすると、ほとんどの人は断るが、一度、簡単なアンケートに答えてもらってから頼むと、受けてくれる確率がアップするのだ。
ある統計では前者では二〇%だったのが、後者のやり方では五三%になったという。
あなたも経験があると思う。
いきなり電話で調査依頼を受けたり、突然、調査員が訪ねてきて「お願いします」と言われても、それを受ける人は少ないはずだ。
よほど簡単なものでない限り、受けないのが普通だと思う。
それを突破するために考えられたのが、この方法といえる。
人は一度、 OKしてしまうと、つぎの依頼に NOを言いにくくなるようだ。
なぜなら最初は OKを出したのにつぎは断ると、自分自身のなかで一貫性が取れなくなるからと言われる。
その矛盾をなくすために、二度目は断りにくくなる心理が働くらしい。
最初の依頼を受けたときに、一度ではあるが、その人と人間関係ができるので、その影響で断りにくくなる面もあるようだ。
◉ OKを積み重ねると断りにくくなる 男女間のつき合いで、一度、男性からの誘いに OKを出してしまうと、そのつぎの誘いが断りにくくなる場合がある。
男性のほうもその気になってしまうし、一度でも会ってしまうと、まったくの他人よりは親密度も深くなるからだ。
このような段階的な説得法を、あなたも利用しない手はない。
とくに OKを出してくれそうもない相手の場合は、準備を周到にしてからこの方法を使うといいだろう。
頼む回数も二度ではなく、数回以上は頼むようにする。
それも簡単な依頼を繰り返してから本題を頼む。
さらに多少の根回しもしてほしい。
ただ単に「お願いします」だけではなく、それを引き受けてくれれば、相手にとってもメリットになることを話すのだ。
ステップアップにつながるいい機会だとか、まわりの人が注目しているとか、そういうことを話してみるのもいいだろう。
なお前もって頼むことは、最後に頼むことと、似通っているほうがいい。
まったく違う内容では、そのたびごとに判断し直すことになるので、避けたほうがいい。
セールスをするときの常套句でもあるが、相手を引き込むテクニックとして、「聞くだけでもいいから、話をさせてほしい」と頼むやり方もある。
これも先ほどの方法と同じで、相手に聞いてもらうことで人間関係を少しでも作り、相手が断りにくくなるようにする方法といえる。
相手を説得したいときには「丸テーブル」 社会人になるとつきものなのが会議だ。
セクション内での小さなものから役員同士のものまで、そこで決められる案件によってビジネスは動いていくのである。
そこで会議をする部屋に注目してほしい。
そこにはテーブルが置いてあると思う。
大きさは部屋によって違うが、形はだいたいが「丸」か「角」の形だ。
そのテーブルを使い分けることで、相手を説得しやすくなるといったら、あなたは信じるだろうか。
これが実に有用なのだ。
それぞれのテーブルを使ったときの効果について、アメリカでおこなった実験結果がある。
ある学校で丸テーブルを囲んで教授と学生に話し合ってもらった場合と、角テーブルを囲んで話し合ってもらった場合とを比較したものだ。
初めに丸テーブルを囲んで話し合った場合。
このとき学生たちは教授に対して、親しみを感じ、話もよく聞いてくれて、とても公平な印象を持ったという。
一方、角テーブルを囲んで話し合った場合。
こちらは教授に対して、権威主義的な印象を持ち、なおかつ攻撃的であったと話した。
ということは、同じ教授に対して、テーブルが違っただけでまったく正反対の印象になってしまったということだ。
なぜ、そのようなことになるのか。
それは丸テーブルの場合は角がないので、境界線がないことになり、相手との境界も意識しないので連帯感や公平感を持ちやすい。
角テーブルの場合は角があるので、境界を感じやすく、相手と自分との立場の違いを意識しやすくなる特徴がある。
そこで先ほどのような実験結果が出たのである。
角テーブルの場合は上座と下座が決まっていて、入り口からいちばん奥が上座でその反対が下座になり、必然的に座った位置で上下関係が決まってしまう。
その結果、座った位置にあった発言しかできにくくなるのだ。
当然、下座に座った人は、上座に座った人に対して、腹を割って話すことは難しいといえよう。
ビジネスの現場はもちろんのこと、日常生活でも相手を説得する場合、腹を割って話したほうがいい場合は、丸テーブルを使うことをお勧めする。
丸テーブルといってもまん丸でなくても構わない。
楕円でもいいので、角のないテーブルを使うといい。
◉相手を説き伏せたいときは「角テーブル」を使う 逆に角テーブルを使うときはどのような場合か。
それは自分がリーダーシップを取りたいときで、その場合は上座に座るのがいい。
最初から相手に上下関係を意識させるのである。
会議では、さまざまな思惑が行き来する。
お互いが腹の探り合いをすることもあるだろう。
そのような現象を調べた心理学者スティンザーは、会議において顕著な三つの現象を発表している。
①前の会議で反対意見を発表した人は、相手の正面に座ることが多い ②ある意見の後に続いて発表する人は、反対意見の場合が多い ③議長がリーダーシップをきちんと取れないと、参加している人は正面の人と雑談を始め、逆に強過ぎると隣の人と話し始める これらの現象を角テーブルを使うときに利用すると、さらにうまくいく。
例えば、リーダーシップを発揮しようと思う人の前には、反対意見を言いそうな人は座らせないようにする。
つぎにリーダーシップを取りたい人が発言した後には、賛成意見を言ってもらうように頼んでおく。
可能ならば、つぎつぎに言ってもらえるといいだろう。
こうして反対意見を出にくくして、なおかつ賛成意見が大勢を占めているように持っていくのである。
ただくれぐれもお願いしたいのは、この場合のリーダーシップを取る人の意見は正論であること。
いくら作戦を練るといっても、説得しようと思っている本人の意見がとても賛成できるようなものでなければ、無理というものだ。
その点だけは、確認してから実行しなければいけない。
人を動かす「話し方」の極意とは? 相手を説得しようとした場合、テクニックを使って納得してもらう方法もあるが、こちらの姿を見てもらい、相手から自主的に動いてもらえれば方法としてはベストかもしれない。
しかし、そんなに都合のいい方法があるのだろうか。
ところがそれがあるのだ。
みなさんの仕事場でも、思わず引っ張られてしまう人物がいないだろうか。
その人のことをよく観察してほしい。
とくに大声で叱咤激励するでもなく、熱い思いを自分の胸に秘めて、ひたすら情熱を注いで働いている人が一人いると、その職場は、いつの間にかその人に引っ張られて必死に働くようになる。
もともとそのような役割を担うべき人は、その職場のリーダーであってほしいが、もしあなたがまわりの人を説得したい、自分のやり方に賛成してほしいと思うならば同じ役割を果たすといいだろう。
最近、よく見られるのがベンチャー企業の若手経営者だ。
彼らは自分の理想とするビジネスを熱く社員に語り、社員もそれに賛同して働いている姿をよく目にする。
もともとベンチャーなのだから、夢を持ち、それに情熱を持ってトライするのは必然なのだが、起業を決めた経営者が、その理念をわかってもらおうと熱く社員に語っているのも事実である。
そうすることで、社員も自然に熱く働くようになるのだ。
これも形を変えた「説得の技術」だと思う。
会議の場とか、特定のときだけ説得をするのではなく、常日頃から自分の思いを語り、それを自分自身が実践して見せる。
それがまわりに好影響を与えて、あなたの願うように状況が動いていくのだ。
何年か前になるが、日産自動車が経営危機に瀕したとき、カルロス・ゴーン氏が社長に就任した。
当時、マスコミは、彼が相当厳しいリストラ政策を実行するだろうと、そればかりを伝えたが、彼は社長に就任直後、工場の試走コースに行って、自分で車を運転して見せたそうだ。
その結果、社員には彼が単にリストラだけで経営再建を図る経営者ではなく、車が好きで情熱を持ってこの会社の経営を再建しにきたと認識されたという。
パフォーマンス一つでまわりに与える影響はこれだけ違うのだから、リーダーとなる人がその情熱を部下に語り、それを日々、実践することの意味がどれだけ大きいかがわかるはずだ。
あなたも誰かを説得したい、あるいはなかなか言うことを聞いてくれない相手がいたならば、まずは自分が情熱を持って語り、そして動いてみてはいかがだろうか。
◉プレッシャーは弱めにするほうが、だんだんに効いてくる 情熱を持って相手に接すると同時に、プレッシャーもときには必要な場合もある。
あまり年中実行するのは感心しないが、それでも厳しさを示すためにおこなうことは、決してムダではない。
そのプレッシャーのかけ方だが、ある実験結果があるのでそれを紹介したい。
それは同じプレッシャーをかける場合でも、その程度を三段階にして結果を見たのである。
すると面白いことに、いちばん強くプレッシャーをかけたときには、その直後は一時的に言われたことを守るが、しばらくするとその効果が薄れていったという。
ところが逆にそれほど強くなく、弱めにプレッシャーを与えたときは、最初は言われたことを守ろうとしないが、しばらくすると徐々にそれを守るようになったというのだ。
つまりどういうことかというと、強くプレッシャーを与えられた場合は、言われた瞬間、心理的な緊張が高まり、危機感も覚えて説得に従うが、時間が経つにつれて効果が弱まる。
逆に弱くプレッシャーを与えられた場合は、最初はそれほど気にしないが、だんだんに言われたことを自分の中で咀嚼していくので、説得の効果が高まるのである。
いかがだろうか。
いつも頭越しにガンガン怒ってばかりいる人は、この結果を参考にしてほしい。
相手も子どもではないし、自分の考えもあるだろう。
納得のできる説得の仕方を試みてほしい。
それも弱めのほうがジワジワと効いてくるのだ。
不思議にうまくいく〝ランチタイム〟の成功法則 難しい話や頼みにくいことを話すときは、話すタイミングや場所を選ぶものだ。
さすがに立ち話でというわけにもいかないし、かといってあまりに大袈裟にかしこまった席も適当とはいえない。
ではどのような場所がいいのか。
その多くは会社の会議室とか、もう少しくだけた雰囲気がよければ、帰りがけに近所の居酒屋などに誘って話すのが、一般的ではないだろうか。
ビジネスの世界では、つき合い方もフォーマルなものとそうではないインフォーマルなものとがある。
フォーマルなつき合いで頼みごとをするならば、会社の会議室を選ぶだろうし、逆にそうではないインフォーマルなつき合いで頼もうとすれば、帰りがけに誘って居酒屋などで頼むことになる。
そのどちらがいいかは、当人同士のつき合い方にもよるが、ここに面白いデータがあるのでお知らせしておきたい。
それは心理学の世界で言われる〈ランチョン・テクニック〉を調べたものである。
実験方法は、お昼のランチの前とその最中、そしてその後にさまざまな意見を紹介して、それについてどのケースがいちばん好意的に受け取られたかを聞いてみた。
するとお昼をとりながら紹介したものが、その前後で紹介した意見よりも、好意的に受け取られたことがわかったのである。
その理由は〝連合の原理〟というものが働いたからと説明されている。
わかりやすくいえば、心地よい体験をしたときに同時にしていたこと、あるいは耳にしたことなどが同じように受け取られるということだ。
お昼においしいランチを食べているときに聞いたこと、頼まれたことは、そのとき食べていた食事の心地よさと結びついて、好意的に受け取られるのである。
これを利用したのが、先ほどお話した〈ランチョン・テクニック〉である。
あなたもおいしいお昼を食べさせてくれる店を、いくつか見つけておいて、込み入った話や頼みごとをしたいときには、その相手を誘い、話をするといい。
ただ単に頼むよりは引き受けてくれる確率がアップするはずだ。
同じように、インフォーマルなつき合いの「帰りがけに誘う方法」もあるが、こちらは人によって捉え方が異なるので、必ずしもいい結果が出るとは限らない。
飲みに誘われて喜ぶ人も確かにいるが、逆にプライベートの時間は拘束されたくない人もいるので、誘う相手を見極める必要がありそうだ。
まずは、お昼のランチタイムを利用するほうが、無難である。
「性格別説得法」を使い分けよう いつの時代にも、決まったように、ワンパターンでしか人とつき合えない人がいる。
いくら相手とぶつかっても関係なく、ひたすら我が道を突き進む人もいる。
だがビジネスの厳しい世界では、それが通用しない場合もある。
自分がオーナー社長ならば、それも許されるが、使われる身ではそうもいかない。
どうにかして相手を説得し、仕事の成果を挙げなければいけない。
ところがどんな相手とも実にうまく、器用につき合い、説得にも苦労しないで成績を残す人がいる。
いったい彼らはどのように説得をしているのだろうか。
そのポイントは、相手の性格を見抜いて、合わせているのである。
とくに相手の気に入るようなデータや情報を上手に提示して、信頼を勝ち取るのだ。
そのためには、事前の準備を怠ってはいけない。
いくら相手の性格がわかったとはいっても、手ぶらでは相手も納得しない。
充分に準備をして、相手が満足するような中身を用意してからアタックするのである。
それでは、いくつかの性格に分けてお話していこう。
*プライドが高い相手の場合 あなたの身のまわりにもよくいるだろう。
本当に実力が伴っているかは別にして、自分のやっていることに自信を持っているので、自分の考えをなかなか変えようとしない。
当然、相手に合わせることもしない。
とくに「相手から説得される」のを嫌う。
説得されることは、自分が負けたことと同じで、プライドを傷つけられたことになるからだ。
ではこのような相手にはどうすればいいか。
相手に決定権を渡してしまえばいいのだ。
相手が喜びそうな資料や情報を提供し、まずはこちらの誠意を見せる。
その後で相手が決めやすいように運べばいい。
そうすれば意外にすんなり決まることが多い。
プライドがあまりない相手の場合はその逆で、こちらが主導権を握ってしまえばいい。
多少、強引でもペースよく運ぶようにすればいいだろう。
*性格が几帳面な相手の場合 このタイプも意外に多いかもしれない。
少しでもミスがあると自分の責任になるので、それを極端に嫌うために、細かいことまで気にするのだ。
当然のように、こういう相手にはできるだけ綿密な資料や情報を提供し、相手の質問にもきちんと対応する必要がある。
しかしそれがうまくいくと、それからはスムーズに物事が運ぶものである。
相手が細かい質問をしてきたときに、ちょっとおだててみるのもいい方法だ。
例えば、「さすがに見るところが違いますねえ」 などと言って、持ち上げてみるのだ。
案外、気分良く、 OKを出してくれるかもしれない。
逆におおざっぱなタイプは、相手の言い分を見極めたうえで、こちらの考えを示すといいだろう。
*まわりの意見を気にする相手の場合 このタイプは一般的なサラリーマンによく見られる。
自己主張を強くするよりはまわりと協調したい、目立つのを嫌う。
自分が意見を言ったために浮いてしまったり、意見が対立するのを避けようとするのだ。
このような相手には、まわりの意見を示しながら、それに同調するように徐々に持っていくのがいい。
決して急いではいけない。
何事に対してもすぐには決められない性格なので、ゆっくり外堀を埋めるように持っていくのがベストだ。
事前にその人が支持している先輩や上司の意見がわかれば、それをさり気なく匂わせるのもいい方法だ。
*好奇心が旺盛な相手の場合 とにかく目新しいものやユニークなものが好きなので、新しい資料や相手が好きそうなものを揃えて、気配りが行き届いていることをアピールするといい。
そこから話の糸口をつかみ、本題へと入っていけばいいだろう。
相手がその気になってきたら、あとは相手のペースに合わせれば、うまくいくはずだ。
「Aか Bか」の二者択一で逃げ道をなくす ゲームなどで、相手と闘うとき、ときどき見られる作戦だが、相手を逃げられなくするにはどうするか。
まずはそれを考えるだろう。
答えは、相手の選択肢を限りなく少なくすればいい。
もしそれができれば、こちらの思うように相手も操れるはずだ。
そのような方法が実際にあるだろうか。
ところがこれがあるのだ。
これも人間の心理を巧みに突いた方法といえる。
もちろん、条件がある。
その条件を整えることができれば、相手の心理状態をこちらの望むように導くことができるのだ。
例えば、このような事例を話せばわかりやすいだろうか。
あるとき、ゲーム好きの Iさんが、秋葉原に以前から買いたいと思っていたゲームソフトを買いに出かけた。
それはそれほど高価なものではなかったが、買おうと思っていて、買いそびれていたものだった。
当時はつぎつぎに新しいゲームが店頭に並び、その売り上げを競っていたが、彼はマイペース派で自分の好きなものを自由に楽しみたい気持ちが強かった。
彼はあるゲームショップに入った。
そこには実にさまざまなゲームソフトが並び、目移りするほどだ。
あまりに数が多く、自分の買いたいものがどこにあるのかわからなかったので、ある店員に尋ねてみた。
その店員は、彼の望むソフトのことを聞く前に、 「Aにしますか、それとも Bにしますか」 と言ったのである。
その後、その商品は最先端のものでとても面白いこと、さらに現在、特売期間中で安くなっていて、買うとサービス商品もつけるというのだ。
Iさんが買いたいと思っていたものは、いつでも買えるが、この二つの商品はすぐに売切れてしまうので、つぎはいつ販売されるかわからないとも言う。
さすがに Iさんもそこまで言われると、断るに断り切れなかった。
ついにお勧めの商品を買ってしまったのである。
なぜ彼は、店員の勧めにしたがったのか。
ここでのポイントは店員の勧め方にある。
店員は「何にしましょうか」と言うのではなく、「 Aにしますか、それとも Bにしますか」と言ったことだ。
選択肢を二つに限定し、なおかつ、どちらかを選んだほうがいい理由を説明したのだ。
人間の心はこのように言われると、つい、どちらかを選んでしまう傾向がある。
よほど強い意志を持っていない限り、そちらに流されてしまうらしい。
あなたも誰かに勧めたいものや頼みたいことがあるならば、この方法を試してみるといいだろう。
YES、 NOではなく、二者択一で選ばせるのだ。
口八丁な相手には〝しぐさ〟でペースを崩す あなたのまわりにもいるに違いない、話術のプロと呼ばれる人は日々、トレーニングを積み重ねながら、人を感動させたり、笑わせたりしているが、そこまではいかなくても話のうまい、あるいはテンポのいい話し方をする人がいるのは事実だ。
あなたが説得したい相手が、そのような人だとしたら、最初からあきらめるしかないのだろうか。
そのような場合に威力を発揮するのがつぎにお教えする方法である。
それは「口でダメなら他の方法を使う」というものだ。
もちろん、それだけで相手を打ち負かすことはできないが、相手のペースを乱したり、頭の中を混乱させたりできるので、そこで挽回を図ってほしい。
そのためのいくつかのテクニックだと覚えておこう。
それでは、その方法をお知らせする。
*わざとらしく席を外す 理由は何でもいい。
「急な用を思い出したので、電話をかけさせてほしい」でもいいし、「すみませんが、トイレに行かせてください」でもいい。
とにかく理由をつけて、その場を中座するのだ。
相手はペースを狂わされて、パワーダウンしてしまう。
*相手の話をさえぎる動作をする これはしぐさで示すが、話を中断させるテクニックだ。
例えば、いちばんわかりやすのが咳払いだ。
あまり何回もやるのは止めたほうがいいが、相手の話の調子を崩すときにやると効果的である。
その他には、うなずいていたのを急に止めてみるとか、手を相手の前で組んでみるなどがある。
また相手の話が面白くないときの動作として、目を何気なくそらすとか、席に座り直すなどもあるが、あまり露骨にならないようにやるのが上手な方法といえる。
*突然、話とは関係ない動作をする これも相手の気を散らす行為である。
それもできるだけ、自然な流れでやるようにすることだ。
例えば、いちばんありそうなのが予定を確認する動作だ。
上着の内ポケットから手帳を取り出し、それをめくってみるとか、あるいは鞄からノートを出して資料を見るなど、今、話している内容とは関係ないことをするのである。
また話している場所が喫茶店などであれば、水のお代わりを頼む、コーヒーのお代わりを頼んでみるのもいいだろう。
*相手と違う姿勢を取ったり、態勢を変える動作を見せる 相手と違う姿勢を取ることは、相手への好意の裏返しになる。
つまり相手の話していることに同意していない場合などに見せる動作だ。
これを見せて相手の調子を崩すのである。
例えば、相手が話している途中で身体の向きを変えたり、足を組み替えるなどの動作だ。
相手の話が退屈だったり、あまりに一方的な場合に日常でも見られる動作である。
*相手と真正面から向き合い、反論を試みる これはそのときの状況次第だが、敢えてそのような行為をするといい場合もある。
ただしそれをおこなうときは、相手の目をきちんと見つめ、こちらの誠実な態度を示しながらおこなうこと。
そうすると同じ反論でも、相手は好意的に受け取ってくれるはずだ。
それを機会にして、こちらのペースに持っていくようにするのだ。
今までお話したどれもが相手のペースを乱す効果が期待できる。
そうしてその場の空気を変え、口八丁な相手をあなたのペースに引きずりこんでほしい。
「あなたなら」と期待されると人は断れない 人間の心理というものは不思議なもので、最初はその気がなくても相手から期待をされると、なぜかその気になるものらしい。
例えば、上司や親しい人につぎのように言われたらどう思うだろうか。
「ぜひともこの仕事はあなたにやっていただきたい」 あるいは、「この仕事の責任者が、あなたで本当によかった。
これで私も大船に乗ったつもりでできますよ」 多少、ゴマすりが入っているとはいえ、そう言われて嫌な気分になる人はいないだろう。
ほとんどの人がだんだんにその気になってくるから面白い。
最初は断ろうと思っていたことも、そう言われるとなかなか断れない。
冷静に考えれば困難が予想される仕事でも、相手の期待を裏切ってはいけない、努力すれば何とかなるかもしれないと変わってくるのだ。
声をかける側、説得をしようとする側は、それを期待して言っている。
一〇〇パーセントそうは思っていなくても、何とか説得したい、仕事を受けて頑張ってもらいたい思いが、そういう言葉遣いになるのである。
このような相手の期待にすぐに反応する現象を、心理学では〈ピグマリオン効果〉と呼ぶ。
あなたが勤めている会社でも、気がつかないうちに、そういう言葉が使われているはずだ。
上司が部下に向かって、大事な仕事を一生懸命させようとしたときには、「今度の仕事は君しかできる人間はいない。
だからよろしく頼むぞ」 と言っているはずだし、これがもしただ単に、「この仕事をやっておいてくれ」 だけでは、頼まれたほうの力の入れ具合も違ってくる。
たった一つの言葉遣いで、相手の気持ちが大きく変わってしまうのだから、言葉の持つ力とは凄いものである。
◉期待を表す言葉にもいろいろある ここで、いくつかの例をお知らせしながら進めたい。
期待を示す言葉といっても、ただ「期待している」では、相手も口先だけだと思ってしまうので、話す側の気持ちが込もるような伝え方をしなくてはいけない。
アメリカでの研究結果では、つぎのような方法ならば好結果が得られたという。
教師が生徒に問題を出し、その結果によって期待の表し方を変えてみたものだ。
①答えを正しく出せたときは、充分にほめた ②答えが間違っていても、批判するような怒り方はしなかった ③間違った場合はヒントを与えるか、質問を変えるようにした それぞれに期待を表す表現方法を取っているが、微妙に違っているのがおわかりだろうか。
話す相手や状況によっても違ってくるので、あなたもこの事例を参考にしながら工夫するといいだろう。
相手が失敗したときならば、「惜しかったですね。
あと少しで成功したのに。
でも今度は間違いないですよ」 と言い、前もって先手を打つ場合には、「御社はとても仕事が早く、なおかつ内容も素晴らしいとお聞きしています。
このスケジュールでお願いできますか」 とたたみかければいい。
さすがに相手も「できません」とは言えないはずだ。
なぜならそのどちらも相手をほめているので、反論することができない。
実際の場面で使えば、思った以上の効果が実感できるだろう。
「NO」と言わせない〝しぐさ〟のコツとは? これは〈姿勢反響〉といって、相手と同じことをして二人の関係を密接にしていく方法だ。
そうして相手が NOと言いにくい状態を作るのである。
いちばんいい例が仲のいいカップルだ。
二人が喫茶店でデートしているとしよう。
すると二人で同じ動作をしているときがある。
例えば、一人が飲み物を口に運ぶと相手もつられて口に運ぶ。
あるいは一人が髪をかき上げると相手も髪に手を伸ばす。
それと同時に、相手の話にタイミングよくうなずいたり、笑顔をタイミングよく出す。
これは意識して、そうやっているわけではない。
自然にそういう反応が起きるのだが、そういうときこそ、相手の気持ちに同調している証拠なのだ。
このような心理現象を、相手を説得するときに利用するのである。
相手の気持ちを同調させることができれば、 NOと言いにくくなる。
当然、 YESと言う確率も高くなるわけだ。
そのときには、真正面に座ってほしい。
だいたい人と話すときは、正面に座るのが普通だが、斜めに座る場合もないとはいえない。
そのようなときは正面に座り直してから始めよう。
ここで代表的な〈姿勢反響〉をピックアップしてみよう。
・相手が視線を送ってきたら、こちらも視線を返す・相手が足を組み替えたら、こちらも組み替える・相手が身を乗り出してきたら、こちらも身を乗り出す・相手が飲み物のお代わりを注文したら、こちらも注文する まだまだ他にもたくさんあると思う。
相手の動作やしぐさを真似すればいいのだから、それほど難しいことではない。
しかしくれぐれも自然にやってほしい。
ただし、こちらの思い通りにはいかない場合がある。
それは相手がこちらがやっている〈姿勢反響〉を逆手に取って、その裏返し、つまりそれを壊そうとしたときだ。
いちばん多いのが話の途中で中座をしたり、あるいは話を遮ることだ。
前項で相手のペースに乗らない方法として紹介したが、それを相手がやってきたときはどうするか。
その場合はただ耐えるしかない。
絶対、相手につき合ってはいけない。
一度、相手のペースになると、今までの苦労がすべて台無しになってしまう。
結局、説得するのをあきらめることにもなる。
そうならないためにもじっと我慢してほしい。
そうしてこちらのペースになるまで根気よく続けることだ。
要は相手との駆け引きと思えばいい。
根負けすれば勝ち目はない。
人間関係の奥義は〝妥協〟と〝譲り合い〟 さてここまで、説得の方法をお話してきたが、最後に人と人との関係について触れておきたい。
人生のなかでは、相手を説得しなければいけない場面、逆に相手から説得を受ける場面に出会うが、人はどうしても自分の意見を通すことばかりを優先してしまうようだ。
実は、こちらの意見を絶対通さなければいけないときもあるが、必ずしも毎回、毎回、そういう状況とは限らない。
そこで考えてほしいのだが、人と人との関係、とくに重要な人間関係というのは、ときにはどちらかが譲り合い、妥協しながら育んでいくものではないだろうか。
そうすることで、お互いの信頼関係が築かれ、ちょっとのことでは壊れない関係ができるのだ。
そのような関係ができれば、今回はこちらの事情があるので、強く出させてもらうが、その代わり、次回は相手の意見を受け入れようとか、そのときどきに応じて、選択ができるようになると思う。
相手にしても、ただ要求を押し通してくるのではなく、こちらの置かれた状況を考えてくれる人間はありがたいに違いない。
ときには融通を利かせてくれる、妥協してくれる人は、いそうでいて意外にいない。
相手を説得する、交渉する場合には、今、お話したことを頭に入れてつき合うようにしたほうがいい。
そのほうが長い目で見れば、確かな人間関係を築くことになるはずだ。
そのための条件は一つ。
どうしても譲れないものを、そのときどきに確認しておくこと。
それ以外は、相手との兼ね合いで、臨機応変に変える度量を持つことだ。
よくある失敗例がある。
すべてを認めさせようと融通を利かせなかったために、結局、すべてを失ってしまうことだ。
目先の百歩にこだわるあまり、一歩も踏み出せないよりは、たとえ十歩でも何回にも分けて前進したほうが得策だ。
人によっては、妥協することを負けだと勘違いしている人がいるが、そのような考え方も捨てよう。
人生では何度も壁にぶつかる。
そのときに前進できない、あるいは後退したからといって、いちいち負けたと嘆いていては、それを乗り越えていくことなどできない。
本人は後退することを妥協だと思うかもしれないが、人生は永遠に進み続けることなどあり得ない。
前進があれば、必ず後退もある。
その繰り返しだと理解することだ。
そう思えば、人間関係にも妥協が必要だとわかるだろう。
◉確固とした人間関係が思わぬ出会いをつれてくる そのような人間関係を作っておくと、思わぬ出会いがある。
ビジネスはもちろんのこと、その他の人間関係でも、ある程度の社会経験を経てくると、最後は人脈がモノをいうと言われる。
つまりどんなに技術を磨いても、人との関係をきちんと作っておかないと、大きな成功は勝ち取れないということだ。
その人間関係を作るのにいちばん有効なのが、先ほどの考え方である。
目先の成功ばかりに目が眩めば妥協することはないだろう。
しかしそれでは、あなたを慕ってくれる人間はできない。
逆に譲れないものは、きちんと守りながら、譲れるものは、そのときどきで妥協していく。
そうして相手との信頼関係を築いていった人は、そのおかげで思わぬ人脈を得ることがあるのだ。
例えば、そういう信頼関係で結ばれている人は、相手から他の人を紹介してもらえる。
それもただ紹介するのではなく、その人を推薦して紹介するわけだから、どんどん仕事が拡がっていく。
ときには本人も驚くような大抜擢があるかもしれない。
それは目先の成功、利益だけを追いかけていては絶対できない。
一度の成功は小さくても、あるいは後退することがあっても相手のことを考え、積み重ねた結果が最後に花開くのである。
人生に遠回りはない。
たとえ妥協することがあっても、必ずそれが実りへと続くと思って人とつき合ってほしい。
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