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第1章 管理会計で数字を見ると、経営の本質が浮かび上がる

目次

まえがき

本書は、管理会計をこれから勉強しようという方、勉強ははじめたがどのように勉強していいか迷っている方のために書いた入門書です。

会計は、一般的に財務会計と管理会計に分類されます。

財務会計は、 IFRS(国際財務報告基準)に代表される決算書作成基準の裏付けとなる理論的な考え方です。

法律の裏付けがあるため、制度会計と呼ばれます。

財務会計に関しては、会計基準として整備され、関連書籍も多く、ビジネススクールなどでも独立した講座として多く存在しています。

みなさんがよく耳にする、貸借対照表、損益計算書の読み方などは、財務会計になります。

しかし、管理会計は「これが管理会計だ」という体系が確立されていません。

なぜなら、管理会計は、企業経営を推進するときにいろいろと工夫して活用する業績管理ツールとして発展してきたからです。

たとえば、製造部門では、製品の原価計算と原価削減、ソフトウェア開発では、開発原価の把握と削減に活用されます。

営業部門では、営業所の業績の把握と評価に使います。

本社では、必要人員の見積り、次期の目標利益を達成する必要売上高の算定などの判断に使えます。

また 3年から5年の中期計画や次期の予算策定にも、基礎データを提供します。

このように、管理会計は、過去分析によるデータだけでなく、将来予測に使えるデータを提供することに存在価値があるのです。

管理会計を理解するときは、知識を体系化して考えるよりは、会社数字をいかに経営に活かすかという視点で考えたほうが、その意義が見えてきます。

そのため管理会計に関連する本は、管理会計というタイトルを使わずに「経営に活かせる会計」とか、「儲ける会計」というように読者にわかりやすいタイトルを付ける傾向があります。

私も「計数感覚がハッキリわかる本」、「計数感覚ドリル」というようなタイトルの管理会計の本を書いています。

しかし、本書は、管理会計の勉強をはじめる方のための本として、「管理会計は、このような順番で勉強してください」というような体系や方向性を示したいと考えました。

数多くある類書は、話題性を重視しており、体系的な内容を示していないことが多いのです。

本書を、管理会計の基礎固めの入門書として役立てていただきたいと考えています。

本書では、管理会計を理解するために、3つのテーマを重視しています。

3つのテーマとは、以下の通りです。

①損益分析と業績管理(損益分岐点分析と変動損益計算書の活用)

②原価管理(原価計算の基本)

③意思決定(短期利益計画と中期経営計画への活用)

これらのテーマは、経営において欠くことができないテーマです。

新しいテーマではありませんが、管理会計を基本から勉強する方にとっては、必ず理解してほしいテーマです。

財務会計でも重視される分野なので、財務会計を少しでも勉強したことのある方なら、関連付けて学ぶことで理解が早まるでしょう。

読者のみなさんから、この本に出会ってよかったと思っていただけるように全力で書きました。

ちょうど、東日本大震災があった真っ只中での執筆でした。

新しい日本の復興に向けた活動にも管理会計の考え方が役立ちます。

たとえば、震災の損失を知るのに、機会損失という考え方(第 5章)が役に立ちます。

これらは、損害賠償の請求をするときの損害額に算入する必要があります。

復興のための本当の原価を知るために、間接費の配賦を工夫する ABC(活動基準原価計算)も重要です(第 4章)。

また、今後、安全を担保するために本部で発生する間接費は大きくなることが考えられます。

さらに、原発事故が、「安全のためのコスト、特に固定費を節約して、利益を追求してきた結果だ」とする意見もあります。

固定費を使う意味を本書ではかなり説明しているので、注目してください(第 2章、第 3章)。

最後に 5か年の中期計画の立て方(第 6章)を説明します。

企業の計画見直しには、必須の考え方です。

なお、本書の中で、どの部署の人に特にどんなことを学んでほしいかを別掲の図にまとめましたので参照してください。

この本で、管理会計の基本をシッカリ勉強して、現実に起こっていることを冷静に判断できる計数感覚と、企業発展のための業績管理に役立つ計数感覚(計数活用法)を、自分で発見し、実感できるセンスを磨いてください。

2011年 6月  事務所にて千賀秀信

CONTENTSまえがき「見える化」

第 3章  変動損益計算書の活用法 3-1  変動損益計算書を作ってみよう      コーヒー専門店(カフェクローバー)のケース 3-2  変動損益計算書は、付加価値計算書だ      付加価値のとらえ方を理解しよう 3-3  変動損益計算書で見えてくる経営の姿      付加価値分析を理解しよう 3-4  業種別の付加価値(限界利益)の違いを理解しよう      製造業、流通業(小売、卸)の特徴は? 3-5  営業所管理で活用できる変動損益計算書      固定費、変動費の分類を工夫して業績管理に活用する第 4章  原価管理のポイントを理解しよう 4-1  原価計算と原価の関係を理解しよう      製品原価の集計だけではない原価計算の広さを知ろう 4-2  経営の流れと原価計算の位置付け

製造業の原価計算を概観しよう 4-3 原価計算の分類 原価計算の対象は何か 4-4 原価計算を実際に行なってみよう 総合原価計算と個別原価計算の違いを理解しよう 4-5 直接原価計算の考え方 変動損益計算書の原点は、直接原価計算 4-6 活動基準原価計算( ABC)の考え方 間接費(共通費)の配賦をいかに行なうか実践コラム 価格設定の手法あれこれ……第 5章 短期的意思決定に役立つ考え方 5-1 機械式洗車は 600円、手洗い洗車は 1, 600円。

この差は何か? 原価とは何かを改めて考えてみよう 5-2 原価割れでも注文を受けるべきか? 決め手は原価の見方と限界利益 5-3 時給はどうやって決めるのか? 人時生産性と労働分配率がポイント 5-4 増員したい! そのとき営業所長はどう提案すべきか? 増員で増えるコストを回収できる売上予算を計画しよう 5-5 次期の利益計画(予算)はどんな手順で作るのか? 必要売上高を求める公式で考えよう実践コラム 業績管理の 5つのステップ第 6章 戦略的意思決定に役立つ考え方 6-1 キャッシュフロー重視時代の「利益の役割」とは何か

利益とキャッシュフローの役割の違いを理解しよう 6-2 営業キャッシュフローのとらえ方を理解しよう 間接法のとらえ方をマスターしよう 6-3 営業キャッシュフローを予想する 間接法の項目を予想する 6-4 現在価値という考え方を理解しよう 現在の 100万円と 2年後の 110万円のどちらを選ぶ? 6-5 資本コストとは何か 収益性の目標は、資本コストを参考にする 6-6 投資の採算を判断する方法(時間価値を考慮しない方法) 事例で見る投資の収益性と安全性 6-7 投資の採算を判断する方法(時間価値を考慮する方法) 正味現在価値( NPV)と内部利益率( IRR)を理解しよう 6-8 キャッシュフローの予測と採算判断(事例で総まとめ) 5年間限定のプロジェクトを採用するかどうかの判断をする 6-9 予想貸借対照表をイメージで理解しよう 図で見る 5年間の財務三表の変化 6-10 企業価値が向上するという意味 将来のフリーキャッシュフローを増大させること実践コラム 企業価値を高めることの問題点 ~企業を計る新たな視点の提案 ~表紙デザイン/志岐デザイン事務所(ヤマダマコト)

※本書に掲載した図表の一部(カラー版)や関連情報、用語の解説を下記サイトに公開しています。

●マネジメント能力開発研究所のホームページ http:// keisumaneji. la. coocan. jp/・用語解説 http:// keisumaneji. la. coocan. jp/ v 1-kanrikaikei-info. html

本書の構成を「見える化」しました! 本書は、第 1章から第 6章まであります。

管理会計の3つのテーマを 6章に分けて解説しています。

第 2章以降は、3つのテーマの詳細説明で、以下のような構成になっています。

3つのテーマと各章の関係 第 1章は、管理会計全般にわたるテーマを解説しています。

①損益分析と業績管理(損益分岐点分析と変動損益計算書の活用) ・・・第 2章、第 3章 ②原価管理(原価計算の基本) ・・・第 4章 ③意思決定(短期利益計画と中長期の経営計画への活用) ・・・第 5章、第 6章 ■「見える化」目次

第 1章 管理会計で数字を見ると、経営の本質が浮かび上がる

1-1 経営者、管理者に必要な会計 財務会計と管理会計の違いを知ろう

■財務会計は「経理」、管理会計は「経営」のための活用法

会計( Accounting)は、財務会計と管理会計の2つに分類できます。

「財務会計」は、大手企業なら株主や銀行などの利害関係者に公表する決算書を作るための作成基準や考え方を示すものです。

中小企業なら、税務署に提出する決算書を作成する基準や考え方を示します。

財務会計は経理が主に使う会計で、営業や開発に所属する社員などにはなじみの薄いものです。

これに対して、「管理会計」は、意思決定や業績管理を行なうために使われる管理方法であり、会社の数字を活用していかに事業を行なっていくかを判断することが目的です。

名前に「会計」と付くので、拒否反応を示す人も多いのではないかと思いますが、管理会計は、経営者やマネジャーが活用すべき経営のノウハウなのです。

財務会計と管理会計の違いを理解していただくために、簡単な例を紹介しましょう。

■売上予算は達成したのに、売上高が伸びない理由

あなたがコンピュータメーカーの営業部員だとしたら、売上予算を持っているでしょう。

期末まで 1か月に迫った最終月。あなたは、売上予算の達成に向けて、得意先回りを強化しているはずです。そして期末ギリギリで、何とか受注して、目標の予算を達成したとします。

しかし、経理部門から、売上予算は達成したけど、会社が公表する売上高(上場企業などが決算短信で記者発表する売上高や、中小企業なら税務署に申告する売上高のこと)は、それほど伸びていないという報告が入りました。

全営業所で、売上予算は達成しているにもかかわらず、です。一体どういうことでしょうか。

■営業には管理会計が使いやすい

カラクリは次の通りです。

一般的に、会社内部で使う売上高は、受注ベースで考えているのに対して、外部に公表する売上高は、相手方の検収ベース(相手がコンピュータシステムの稼働を確認した段階など)で考えるためです。

このような違いはよくあるのです。もう少し具体的に言うと、こういうことです。

営業部門では、期末の売上予算達成に向けたギリギリの活動をしています。

このような場合、成果をすぐに実感しやすい受注ベースの売上高を使うことで、営業マネジャーは売上予算の達成状況を把握しやすくなります。

つまり、受注ベースで売上高をつかむことは、営業担当者ごとの売上達成状況を把握し、激励し、すばやい行動を促す営業マネジャーに適した売上の認識基準です。

まさにこれが管理会計の考え方です。

そのため、先の例のような期末ギリギリの受注売上は、翌期の売上高になることがあるのです。

一方、経理部門では、売上高が確定して、代金の回収を確実にできる状態を重視します。

つまり返品やクレームの可能性がある受注基準ではなく、検収が終わって、顧客が確実に売上代金を支払う状況になったときに売上高と認識すべきと考えるのです。

これは財務会計の考え方です。

財務会計の考え方は、 IFRS( International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)に代表される会計基準によって制約を受けます。

しかし、企業内部で利用する管理会計では業績管理を重視するため、経営者や管理者が理解しやすいルールを独自に設定してもいいのです。

管理会計は、経営プロセスにおいて、どのように付加価値を生み、利益につなげるかを示し、業績管理を行なうためのノウハウとして役立ちます。

たとえば、どの商品をどれだけ売れば利益が増加して、さらに利益を増加させるためにはどのような付加価値を付けたらよいかという指針を提供します。

したがって、営業部門、製造部門、開発部門などのラインで活用するのが管理会計です。

1-2 財務会計は過去会計、管理会計は未来会計 財務会計と管理会計が扱う内容

■管理会計は、未来を見ている

図 1-1に、財務会計と管理会計で扱うテーマを分類しました。

財務会計の役割は、決算書を会計基準に沿って作成することです。

財務会計によって作成された決算書は、企業の株主や金融機関、税務署などの外部の利害関係者(ステークホルダー: Stakeholder)に公開され、業績を評価したり競合企業と比較をするために活用されます。

財務分析は、業績評価するための経営分析手法として使われています。

したがって、財務会計は、過去の業績を示す決算書をいかに正しく作成するかに重点があるのです。

正しいかどうかの判断基準が、先述の IFRSを中心にした会計基準です。

一方、管理会計は、経営情報を集め、経営者や管理者が活用できるように加工して、提供する役割を持っています。

たとえば、価格をいくらにすべきか、何人採用すべきか、業績賞与は出すことができるのかなど、当面必要な短期的な意思決定のための情報を提供します。

さらに、今後の損益を予測して、設備投資を行なうべきか、企業の買収価格はいくらにすべきかなどの戦略的意思決定(中長期の意思決定)に役立つ情報も提供します。

財務会計は、過去の業績を集計することが使命なのに対して、管理会計は、未来を見ながら経営に役立つ情報を提供することが使命です。

■なぜ、会計の勉強はしんどいのか

IT(情報技術)、英語とともに、会計がビジネスパーソンの 3種の神器だと言われてきました。

会計の勉強をしようという場合、財務会計から取り組む方がほとんどです。

そこで学ぶのが、まず簿記です。簿記は、決算書の作り方の技術です。

ここから勉強に入ると、なかなか経営に役立つ実感を持てないまま勉強が進んでいきます。

そして勉強が進むと、決算書を作るための基礎理論としての会計学が出てきます。

会計学では、発生主義、実現主義、進行基準、時価会計、減損会計、退職給付会計など、決算書に表示する勘定科目の数値を決定するための基礎理論を学びます。

経理や財務の専門家になるなら、これらをシッカリと勉強していく必要があります。

しかし、営業や開発分野の人にとっては、財務会計を勉強していくうちに、自分の仕事とあまりにもかけ離れた内容に嫌気がさして、勉強をあきらめてしまう人も珍しくありません。

しかし、会計が楽しくなるのは、簿記や会計学をある程度理解してからです。

そして、管理会計の領域に踏み入れるとその面白さが、少しずつ見えてきます。

本書では、会計入門者のために財務会計の基本についても随時解説しながら、管理会計の面白さを感じていただけるように、事例を使って書いています。

さあ、勉強をはじめましょう!

1-3 ホテルで飲むコーヒーの原価率は?計数感覚* 1で経営を考える方法を学ぼう

■管理会計の3つのテーマ

管理会計を理解するために必要なテーマは3つあります。

  • 1.損益分析と業績管理(損益分岐点分析と変動損益計算書の活用)
  • 2.原価管理(原価計算の基本)
  • 3.意思決定(短期利益計画と中期経営計画への活用)

詳細は、第2章以降でお話しします。

ここでは、それぞれのテーマの入り口として事例を見ながら、管理会計の面白さを知ってください。

(* 1)計数感覚とは、経営のことと会社数字のことを関連させて考えることができる能力。営業でも、開発・製造でも、経理でも必要

■ホテルのコーヒーは、なぜ 1, 000円なのか

高級ホテルのラウンジで飲むコーヒーは、 1杯 1, 000円程度です。「高いな!」と感じながらも、打合せなどの理由で使うこともあるでしょう。

では、「1杯 1,000円のコーヒーの原価はいくらでしょう?」と質問したら、あなたはどう答えますか。

大体、 50 ~ 200円くらいの範囲で答えるのではないでしょうか。

私がビジネススクールで、受講生のみなさんに聞いたときも、この範囲が圧倒的に多かったです。

次に「原価の内容をどう考えましたか?」と質問すると、ほとんどの人がコーヒー豆と水のコストと答えます。

いわゆる材料費を原価と想定しているのです。

TKC経営指標* 2で見ると、喫茶店の売上総利益率(売上総利益 ÷売上高)は 70%程度なので、売上原価率(売上原価 ÷売上高。原価率と省略して呼ぶこともある)は 30%です。

原価の大部分は材料費なので、喫茶店の客単価(客 1人当たりのレジでの支払額)を 500円とすれば、その 30%である 150円が材料費です。

売上総利益率は財務会計上の代表的な粗利益率ですが、一般の人の粗利益の解釈はあいまいです。

このことが、商品やサービスの粗利益率の解釈に影響します。

この点に注目して以下を読んでください。

ホテルのラウンジで飲むコーヒーは、よい材料を使っていて、材料費も 1割程度高いと考えれば 150円の 1. 1倍の 165円、 2割アップなら 180円です。

しかし、 TKC経営指標による喫茶店の利益率のデータには、軽食なども含まれています。

コーヒーだけでなく、いろいろなメニューの材料費の平均値が 30%ということですから、コーヒーの材料費と考えれば 100円にも満たないでしょう。

もし材料費が 100円ならホテルで飲む 1, 000円のコーヒーの原価率は 10%で、粗利益率は 90%となります。

少なくとも顧客は、潜在意識では、儲けすぎと考えて 1, 000円のコーヒーを飲んでいますが、なぜ 1, 000円でも売れるのでしょうか? この理由と根拠を考えることが管理会計の役割です。

管理会計はマーケティングを考える上で有用な情報を提供します。

(* 2) TKC経営指標は、 TKCの会員である税理士・公認会計士が精密監査を実施した 22万社を超える中小企業の財務データから作成された分析統計

■財務会計が教える原価の考え方

財務会計で原価と言えば、メーカーにおける製造原価を意味しています。

製造原価は、材料費、労務費、経費の3つに分類されます。

これを原価の 3要素と呼びます(図 1-2)。

メーカーが作る缶コーヒーの製造原価を考えてみましょう。

缶の素材とコーヒーなどの材料費、工場で製造にかかわる労働者の人件費(労務費と言う)、製造に使われる機械装置の減価償却費、水道光熱費、デザイン料などの経費が考えられます。

大手食品メーカーの売上原価率を調べてみると約 75%なので、売上総利益率* 3は約 25%です。

(* 3)売上高-売上原価 =売上総利益。

なお、売上原価は、製造原価のうち販売されたものの原価。残りは在庫の原価となる

注意すべきは、メーカーの売上総利益率 25%は、製造業が卸に販売するときの粗利益率であるということです。

メーカーの販売価格に卸の粗利益と小売の粗利益を乗せて、小売価格になるわけです。

ここでは、卸で 10%、小売で 20%の粗利益率を上乗せするとして、小売価格を算定してみましょう。

缶コーヒー/缶の製造原価を 65円とすれば、メーカーの卸への販売価格は約 87円( 65円 ÷ 0. 75)です。

卸の小売への販売価格は約 96円( 87円 ÷ 0. 9)、よって小売価格は約 120円( 96円 ÷ 0. 8)になります(図 1-3)。

つまり、小売価格には、メーカーが缶コーヒーを作ったときの材料費だけでなく、メーカーの人件費(労務費)や水道光熱費(経費)、卸やスーパーの粗利益まで加算されている構造を見てください。

■顧客が考える原価と、財務会計が教える原価のギャップ

もし財務会計の原価の考え方を知らなかったとして、「 120円の缶コーヒーの原価は、どのくらいでしょうか?」と質問したら、あなたはどう答えるでしょうか。

おそらく原価として水とコーヒーのほか、缶素材の材料費を加味して答えるでしょう。

材料費の割合を小売価格の 20%とみれば 24円、 25%と想定するなら 30円程度と答えるでしょうか。

ホテルのラウンジで飲むコーヒー 1, 000円の材料は、少量仕入でかつ高級品を使っていると考え、缶コーヒーの材料費 30円の 3. 3倍の 100円程度と見積もると、「 50 ~ 200円」と答えた人の勘は、そんなにずれていないことがわかります。

しかし、缶コーヒーにせよ、ホテルのコーヒーにせよ、こうして計算した材料費を基準に販売価格を考えると、とても高いものを飲んでいるという意識が、消費者には生まれるはずです。

顧客視点で見れば、ホテルのコーヒーの粗利益率は約 90%、量産品の缶コーヒーの粗利益率も約 75%〔( 120円- 30円) ÷ 120円〕と、いずれも高い粗利益率です。

しかし、財務会計では、材料費だけが原価になるわけではありませんでしたね。

缶コーヒーの例を見ても、顧客から見た「原価」と財務会計での原価は、大きく異なっています(図 1-4)。

この高い粗利益率は顧客の感覚です。

でも、財務会計の理屈で納得してもらうわけにはいきません。そこで、こうした感覚を持つ顧客を納得させるだけの経営努力が必要になります。

経営努力、すなわち経営戦略やマーケティング戦略は、ホテルで飲むコーヒーと缶コーヒーとでは、当然異なります。

ホテルであれば、ゆっくりコーヒーを楽しんでもらうための雰囲気作りに必要な場所やサービスの料金を納得してもらう仕掛けが必要です。

缶コーヒーなら、いつでも、どこでも手軽に美味しいコーヒーを飲んでもらうための大量生産、効率的な流通体制が必要です。

このようにホテルのサービス重視の経営や、メーカーのどこでも買える缶コーヒーといった戦略を踏まえて、経営を考えることが必要です。

これを考えるためのノウハウが管理会計です。

つまり、管理会計は、価格設定と売り方(どんな価格にして、どんな売り方をすれば利益が出るのか)を考えるためのデータを提供する役割を持っているのです。

■顧客視点で付加価値をとらえる管理会計

メーカーや顧客など立場によって、いろいろな数字の判断や見方(これを計数感覚と呼ぶ)があることを紹介しましたが、どれが正しいと言えるでしょうか。

実は、視点が違うだけで、どれも正しいのです。

原価の 3要素で製造原価を計算するのは、財務会計の考え方で、メーカーから見た視点です。

缶コーヒーメーカーの人はこう言うでしょう。

「 25%の売上総利益は、開発費の回収と品質管理のために必要です」と。

卸の人は「 10%の売上総利益は、物流や商品の仕分けのために必要です」と言い、小売の人は「 20%の売上総利益は、商品を品揃えし、販売するための必要経費をカバーするのに必要です」と言うでしょう。

共通するのは企業からの視点ということです。顧客の視点が欠けています。

製造原価 65円と、メーカーと卸の売上総利益 31円(流通コスト)と小売の売上総利益 24円の合計 55円を積み上げて、販売価格 120円を決める財務会計の考え方を、顧客である消費者は受け入れません。

1990年以降の価格破壊は、このようなコスト積み上げの価格設定法にメスを入れ、顧客指向で価格を考えた戦略家たちの挑戦で生まれました。

一方、管理会計では、顧客の視点で原価をとらえ、経営判断に活用できる情報を提供することができます。

すなわち、管理会計では、小売価格 120円の缶コーヒーの材料費は 30円で、粗利益率 75%( 90円)という情報が重要です。

そして 75%という粗利益率を納得させる仕掛け(投資)が必要なのです。

その仕掛けは、味、デザイン、ブランドなどの強化です。

そのためのコストが、研究開発費、減価償却費などの設備費、人件費などの固定費への投資です。

その作戦が成功したときに、顧客は、小売価格の 75%の粗利益すなわち付加価値を認めてファンになり、製品は長く支持されるのではないでしょうか。

ちなみにドラッカーは「経営の目的は、顧客の創造である」と述べています。

■変動損益計算書で、付加価値がわかる

ホテルのラウンジのコーヒーは粗利益率が大きいのを、顧客は承知しています。

その背景に、ホテル側の付加価値を生み出す戦略があることを感じるからです。

その戦略とは、ホテル従業員のサービスであり、ホテルの豪華な施設であり、ブランド価値です。

粗利益率 90%という高い値は、人件費、減価償却費、教育訓練費などの固定費をかける企業努力が付加価値を生み出しているという考え方(計数感覚)が重要です。

管理会計は、付加価値をとらえる方法、付加価値を生み出す源泉を発見、提供します。

たとえば、管理会計の代表的なツールである、変動損益計算書があります。

はじめて聞く人も多いかもしれませんが、付加価値を生み出す経営には必要なツールです。

変動損益計算書(図 1-5)は、費用(売上原価、材料費、販売費・一般管理費)を変動費、固定費に分類し、利益を計算していく損益計算書です。

材料費は、典型的な変動費です。

人件費や減価償却費、研究開発費は固定費です。

缶コーヒーの例では、 90円( 120円-材料費 30円〈材料費の割合を 25%とした場合〉)を限界利益と言います。

この部分がコーヒーの付加価値そのもので、一般の人が直感する粗利益の正体です。

限界利益 =付加価値ということを少し説明しましょう。

顧客から受け取った 120円(売上高)のうち、材料費 30円(変動費)は、コーヒー豆の生産者(メーカー)が作り出した価値で、小売業者が生み出した価値ではありません。

小売業者が自助努力で生み出した価値は 90円です。

この 90円を限界利益と呼びますが、その性格は付加価値そのものです。

価格における材料費(変動費)以外の割合( 90円 ÷ 120円 = 75%)は限界利益率であり付加価値率です。

ホテルのコーヒーの例では、先述のように材料費を 100円とすると、 900円( 1, 000円-材料費 100円)が限界利益です。

限界利益率は 90%( 900円 ÷ 1, 000円)となります。

一般的に、限界利益率が大きいというのは、付加価値率が大きいことなのでよいことです。

重要なのは、限界利益率が大きい理由を説明できなければ、経営として問題があるということです。

これを説明するための分析ツールが変動損益計算書です。

また、利益がゼロになる売上高である損益分岐点も、変動費、固定費、限界利益率の情報を使って計算可能です。

損益分岐点は、価格設定などの意思決定の際にも必要な情報を提供します。

管理会計に必要な損益分岐点分析と変動損益計算書については、第 2章と第 3章で詳しく説明します。

第 2章、第 3章を読んで、限界利益すなわち付加価値の意味や見方をより深く理解してください。

1-4 コストダウンで利益は増えるのか? 間違ったコストダウンとかけるべきコスト

■機械は壊れる、人は間違える

①「利益、売上高、費用」を、企業経営を意識して、並べ替えなさい (30秒、考えてください) あなたはどのように並べ替えましたか。

「売上、費用、利益」と並べた方はいませんか。

反射的にそう考えても不思議ではありません。

事実、ビジネススクールで同じような質問をしても、そのように考える人はかなり多いのです。

「売上、費用、利益」と並べるのは、損益計算書を意識して、「売上-費用 =利益」という計算過程を意識の中で持っているからです。

この並べ方は、財務会計では正解ですが、管理会計では問題があります。

次を読めば、どのように並べ替えればよいかがわかるはずです。

②機械は壊れる、人は間違える

シュレッダーに子供の手が巻き込まれて、指を切断した事故がありました。子供が手を入れるということは、設計段階で想定していませんでした。

設計の見直しが必要ですが、コストアップは避けられません。

もう1つ、ある工場の話です。

ドアが開いたのにエレベーターが来ていなくて、人が転落する事故がありました。機械の何らかの故障ですが、人はドアが開けば無意識に乗ってしまいます。

保守点検が非常に重要ですが、この工場では、保守点検を怠っていたのです。

エレベーターメーカーにも、何らかの対応を迫られるかもしれません。

製品改善や保守点検など、安全のためのコストをかける必要はわかっていても、利益を圧迫するので及び腰になることはよくある話です。

しかし、安全に対するコスト意識が高まる中、「機械は壊れる、人は間違える」という考え方が、メーカーを中心に広まっています。

一度事故が起これば、賠償などのコストもかかるでしょう。

この問題では、事故が起きないように、安全のためのコストをかける必要性を提起しています。

つまり、短期的な利益よりも、事故が起きて発生する損失や失う利益(これを機会損失と言う)のほうが大きいことを認識する必要があるのです。

計数感覚、すなわち経営を意識して管理会計的に考えれば、「費用、売上高、利益」という流れが浮かぶはずです。

あなたは、大丈夫ですか。

■良いコストダウン、悪いコストダウン

急激な売上ダウンに対応するために人員カットを進めると、パート、アルバイト、派遣社員、期間従業員などの非正社員のリストラがはじまります。

自社工場での生産を断念して外部委託を進め、固定費の削減を中心にコストダウンは行なわれます。

その結果、顧客サービスの低下を生み、製品そのものの品質が悪化するケースも見られます。

製品のリコール多発、粗悪品を優良品として販売した航空部品メーカー、コストダウンのため保守管理を外部委託して、暖房器具やエレベーターの保守がおろそかになり、死亡事故が発生した事例などは、悪いコストダウンの例です。

短期的な利益のためにコストダウンを優先する姿勢は、企業の信用やブランドに傷が付きます。

長期的な視点が必要な人材育成に投資せず、教育訓練費を削減することによって、技術やノウハウの伝承ができないという問題も起きています。

コストをテーマにした管理会計の内容は、第 2章、第 3章、第 4章で取り上げます。

第 2章では、コストを固定費、変動費に分け、損益分析を行なう損益分岐点分析の活用法を取り上げます。

機会損失については、第 5章で説明します。

1-5 利益が出ていれば、それでいいのか?利益志向の落とし穴

■利益とは何か

まずは、問題を解きながら考えてみてください。

わからない方は飛ばしてしまっても構いません。

下の図は、ある会社の設備投資に伴う 3年間の業績の推移です。

この事業は 3年間で採算がとれていますか?

3年間の合計で、利益 110が出ています。

110が 3年間の成果であることは、損益計算が間違っていない限り明確です。

利益を採算の指標にするならば 3年間で採算がとれています。

しかし、よく考えてみましょう。

何か問題はないでしょうか。

①減価償却と耐用年数の影響

問題は、減価償却費です。

利益は、減価償却費を控除して計算しますが、そもそも毎年の減価償却費は、どうして毎年 60なのでしょうか? 「それは、 5年間の定額法で計算するから毎年 60(設備投資 300 ÷ 5年)が減価償却費として費用になる」と答える人が多いでしょう。

耐用年数 6年の定額法ならどうでしょう。

毎年の減価償却費は、 50( 300 ÷ 6年)です。

3年合計で 30だけ減価償却費が少なくなり、 3年間の利益 110は、 30アップして 140に増加します。

この例で、利益とは一体何だろうという疑問が湧いてきませんか。

ポイントは、耐用年数です。

そもそも耐用年数は誰が決めるのでしょう。

ここで、財務会計と管理会計の違いが出てきます。

財務会計では、一般的に財務省が定めた法定耐用年数を使います。

税法の課税所得を決める場合には、これに従う必要があるため、経理主導の財務会計では、法定耐用年数が使用されます。

管理会計では、工場や機械などの固定資産を何年使うかについて、経営者がどう判断するかで耐用年数は異なってきます。

すなわち 5年なのか、 6年なのかは、経営者の意思によって決めていいのです。

②利益は会社としての見解だ

建物や機械装置などの固定資産は、使用することで製品を作り出し、利益を創出することに貢献します。

減価償却は、固定資産を使用することによって物理的価値が減少した分を見積り計算し、その金額を減価償却費として損益計算に計上する処理のことです。

減価償却費相当分だけ、貸借対照表の固定資産は減額します。

毎年の減価償却費は、耐用年数によって変わり、償却方法(定率法か定額法か)によっても変わります。

こう見ていくと、結局、利益は経理や経営者による処理方法の選択・判断によって変わるのです。

「利益は企業の見解だ( Profit is opinion)」と言われるのはこのためです。

そうなると、財務会計上の利益を採算の判断に使うことは、企業の見解に従うことになります。

もし企業の見解が間違っていたら採算の判断も間違える可能性があります。このように解釈すると利益を採算判断に使うことには、やや問題がありそうです。

■キャッシュフローと利益の違い

キャッシュフローで考えてみたらどうでしょう。

キャッシュフローとは、資金(現金預金)が企業に入った収入と、資金が出て行った支出の差額のことです。

収入-支出 =収支(キャッシュフロー)で計算できます。

キャッシュフローは、現金預金という資金の出入りで判断するため、誰が計算しても同じ結果になります。

先ほどの事例(図 1-6)で、計算してみましょう。

3年間の収入は、売上高の 900ではなく 890です。

3年間の売上高 900のうち売掛金 10は収入になっていないからです。

3年間の支出はどうでしょう。

費用の支出 610と設備投資 300のほか、在庫の 40も支出しています。

合計で 950です。

在庫の影響はわかりにくいので図 1-7で説明すると、 3年度の仕入額は 150でした。

そのうち在庫で 40残っています。

つまり売上原価(売れた分の仕入額)として費用に入っているのは 110(仕入 150-在庫 40)です。

110は費用の支出 610に含まれています。

さらに在庫の 40は、仕入れたけれど売れ残ってしまったので、単純に支出として加算して、支出総額 950が求められます。

以上から、キャッシュフロー(収支)は、収入 890-支出 950で ▲ 60の赤字です。

この数字は、どのように計算しても同じで、経理や経営者の判断も関係ありません。

「利益は見解で、キャッシュフローは事実である」と言われるゆえんです。

■キャッシュフローの種類

キャッシュフローは、3つの種類(図 1-8)があります。

営業活動に関連する収支である営業キャッシュフロー、投資活動に関係する投資キャッシュフロー、財務活動に関係する財務キャッシュフローです。

キャッシュフロー計算書では、3つのキャッシュフローをそれぞれ表示しています。

図 1-6の例で、それぞれのキャッシュフローを計算してみましょう(図 1-9)。

営業キャッシュフローは 240です。

どう考えるかというと、営業収入は 890(売上高 900-売掛金 10)、営業支出は 650(費用 610 +在庫 40)で、営業キャッシュフローは 240です。

投資キャッシュフローは、設備投資のための支出が 300あるだけです。

この例では、財務キャッシュフローはありません。

■この投資は、採算がとれているでしょうか?

企業は、設備投資(投資キャッシュフロー)を行ない、その後に営業活動で資金を増やします(営業キャッシュフロー)。

その結果、設備投資額を営業キャッシュフローが上回ったら、当初の設備投資は回収ができ、さらに資金が増えることを意味します。

例では、 3年間で営業キャッシュフロー 240です。

初期投資が 300なので、その差額は ▲ 60です。

設備投資額(投資キャッシュフロー)を営業キャッシュフローは超えることができていません。

すなわち設備投資を回収できていません。

採算はまだ合っていないことになりますね。

この ▲ 60は、フリーキャッシュフロー(純現金収支)と呼ばれています。

設備投資の採算を判断するには、フリーキャッシュフローが役に立ちます。

この例のように利益は 110なのに、フリーキャッシュフローは ▲ 60の赤字ということもあるのです。

この違いの本質を理解しないで、経営判断を行なうと大変です。

利益で判断すれば採算がとれていますが、フリーキャッシュフローでは採算がとれていません。

あなたはこの違いの本質を理解できますか?

■管理会計の理解を深めるならキャッシュフローを理解しよう

企業の見解で変わる利益ではなく、誰が計算しても同じになるキャッシュフローは、経営の意思決定において活用されます。

特に中期計画などでは、投資の回収を示すフリーキャッシュフローが採算の判断で役に立ちます。

この続きは、第 6章の戦略的意思決定(中長期の意思決定)に役立つ考え方で説明します。

フリーキャッシュフローを使った投資の採算計算、企業価値の算定などについてわかりやすく説明します。

なお第 5章では、次期の予算策定の方法とともに、短期的意思決定( 1年以内の予算策定などで行なう意思決定)で役に立つ考え方を紹介します。

1-6 管理会計の 3つのテーマこの本で取り上げる管理会計の内容

■管理会計を学ぶための3つのテーマ

管理会計は、経営者の意思決定に役立つ情報を提供する業績管理ツールです。

これまでの内容で、身近な存在に感じてもらえたでしょうか。

この章で述べたのは、第 2章以降で取り上げる内容を理解していただくための問題提起です。

第 2章以降の内容とつながっているので、現時点ではわかりにくくても、読み進めていただければ、つながりが自然に理解できます。

あきらめないで、さらに読み進めてください。

管理会計を理解するには、3つのテーマをシッカリ勉強する必要があります。

3つとは、損益分析と業績管理(損益分岐点分析と変動損益計算書の活用)、原価管理(原価計算の基本)、意思決定(短期利益計画と中期経営計画への活用)です。

■損益分析と業績管理(損益分岐点分析と変動損益計算書の活用)

損益分析の基本は、損益分岐点分析です。

損益分岐点分析によって、利益を生んでいる売上高(経営安全額)や、固定費を支払うための売上高(損益分岐点の売上高)が明らかになります。

さらに企業の損益体質(固定費型企業か、変動費型企業かということ)も明らかになります。

全社または部門の業績管理を行なうために、変動損益計算書を作成します。

変動損益計算書によって、コスト構造が明らかになり、損益分岐点分析の基礎データが入手でき、付加価値分析も可能になります。

実は、付加価値がわかると、社員の人件費、業績賞与などを合理的に決定することも可能になります。

損益分岐点分析と変動損益計算書によって、経営に役に立つ情報が手に入ります。

第 2章から説明に入るので、管理会計の基本として学んでください。

■原価管理(原価計算の基本)

原価管理は、固定費、変動費の管理を含みます。固定費、変動費を見極めることで、戦略的なコストダウンも可能になります。

原価管理の基本は、原価計算です。

メーカーが作る製品の原価計算だけでなく、プロジェクト、ソフトウェアの原価計算など、範囲は非常に広くなります。

第 4章では、変動損益計算書の原型である直接原価計算の紹介、間接費の配賦のための原価計算である ABC( Activity Based Costing:活動基準原価計算)の考え方などを中心に紹介します。

■意思決定(短期利益計画と中長期の経営計画への活用)

意思決定とは、経営者や管理者が、複数の案から、どの案を実施するかを選択することです。

そのための手法は、管理会計の重要な分野です。

意思決定は、一般的に2つに分けて考えます。

短期的意思決定と戦略的意思決定です。

短期的意思決定とは、 1年以内の予算策定などで必要になる課題に対する意思決定を意味します。

次期の利益計画(予算)の策定と利益計画の際に必要になる個別的な決定事項を含みます。

たとえば、販売価格の決定、注文を受けるかどうかの決定、社員の給与や時給の決定などです。

戦略的意思決定とは、 1年を超える期間で必要になる課題に対する意思決定を意味します。

中長期の経営計画の策定とそれに関連して発生する問題領域を扱います。

企業価値の算定、設備投資の採算計算、 DCF法( Discounted Cash Flow)、内部利益率( IRR: Internal Rate of Return)、 5年間の中期経営計画などの考え方がポイントです。

キャッシュフローを使った考え方が中心になるので、そのつど、説明を加えながら、わかりやすく説明していきます。

ここまで理解できれば、管理会計をかなり理解したことになります。

次章から、さっそく勉強していきましょう。

●実践コラム 塵も積もれば固定費となる

かつて、会社でマネジャーだったときのことです。

社員教育を行なう仕事が中心で、社員から必要な情報誌の購読申請がよくあがってきました。

その中に月刊誌などの定期購読雑誌もありましたが、時間とともに購読誌が増えていきました。

あるとき、庶務の女性から、バックナンバーの管理のために専用のラックが必要であると聞かされました。

事実そうなので、書籍専用ラックを購入することを了解しました。

ほとんどの雑誌は、読まれないままラックの中に収まっていきましたが、しばらくそのことに気付きませんでした。

「おかしいな」と思ったのは、経理の女性のひと言がキッカケです。

「マネジャー、印鑑ください」と定期購読誌の更新の申請書が差し出されました。

よく見ると、以前のプロジェクトの調査で必要であった年間購読の雑誌の契約を、また更新すると言うのです。

「これ、誰か読んでる?」とみんなに聞いてみると、ある社員が「たぶん誰も読んでいません」と無表情な顔をして返答したのです。

当たり前のような言い方に、少し驚かされたのを覚えています。

読んでもいないものを更新する必要がありません。

その場で更新しないことを指示しました。

記憶をたどれば、「年間購読で申し込めば、 1巻当たりの金額は安くなる」と説得され、よく考えずに購読を了解していたのです。

こうしたことは、雑誌に限りません。

庶務から懇願されたコーヒーサーバーのリース料、置き薬の補充など、意識してみると、「いつの間に買ったの?」というモノで、オフィスはあふれていました。

1つひとつの金額は小さいのですが、積み上げれば、大きな金額になります。

マネジャーである私の責任は、免れることができません。

このときから、戒めの言葉として、「塵も積もれば、固定費になる」という言葉を使い出したのです。

マネジャーはもちろん、社員 1人ひとりが問題意識を持たないと、金額は大きくなるばかりです。

大きな組織になればなるほど、影響は大きくなることを認識する必要があります。

みなさんの会社やオフィスでは、このようなことはありませんか?

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