第7章ハイ・パフォーマンス集団の作り方──シェイピング
ケース─短期間で強い営業組織を作る1高度な行動を早く形成する2シェイピングの手順3シェイピングは「甘やかし」ではない4シェイピングの秘訣
短期間で強い営業組織を作る開発2Gでの課題分析からしばらくして、サカモトは営業部長の楠田から相談を受けた。
「サカモトさん、加納部長から課題分析の話を聞いたんだけど。
それって、営業みたいな仕事にも応用できるものですか?」楠田は半信半疑の顔で聞く。
サカモトは、楠田の不安を吹き飛ばすように笑顔を浮かべ、「ええ。
どんな仕事でも、それがあるプロセスで行われる限り、課題分析は可能です」と答えた。
「そうか……。
じゃあ、相談に乗ってもらおうかな」「どうしたのですか?」「うん。
うちは、特に誰かが問題を抱えているというわけではないんだが、組織全体として、もっとパフォーマンスを上げないといけないと思うんです」「営業は、ビジネスの要ですからね」「知っての通り、携帯の世界では、われわれがユーザーに電話を直接売るわけじゃない。
売るのはキャリアを通じてであるわけです。
だからわれわれの営業先は、あくまでキャリアになるわけです」「なるほど」「でも、これが楽じゃない。
大日本エレクトロンは、携帯電話では無名に近かったですからね。
実績もあまりないし。
だから、キャリアが相手にしてくれんのですよ」「うーん」サカモトは思わず両腕を組んだ。
「有力メーカーとは、扱いが全然違う。
だから営業も大変なわりにはなかなか成果が上がらなくて、辞める人も多かったんです」「それは大変でしたね」「欠員は中途採用で埋めたので、それはまあ、よいのですが。
そんな苦労もあったので、大日本では自社ブランドへのこだわりを一部捨て、OEMもかなり手がけていたんです」「OEM、つまり大手メーカーに製品を供給して、そこのブランド名で売ることですね」サカモトが確認する。
「そうです。
実は大日本が作っているのに、表向きは○社製品としてキャリアには売られるわけです」「そのときの営業というのは……」「OEM先の方がやってくれていました。
だから会社としては、営業コストは抑えることができたわけです」「でも、こちらにも依然として営業はあった」「ええ。
すべてをOEMにするという割り切りは、大日本のほうにもなかったので。
でも、OEMという戦略を取り入れたために、今度は自社ブランドでの営業が、なおさら難しくなってしまって」楠田は顔をしかめた。
「なかなか、うまくいかないものですね。
でも、ノルウェー・モバイルになって、状況は変わったのではありませんか?」「ええ。
これからは、もうOEMは、ありません」「なら、純粋に頑張れるようになったと」「それは確かにそうなのですが……。
でも正直いって、ノルウェー・モバイルも、日本のキャリアにとっては、新参者のイメージがあるのではないでしょうか」サカモトは、虚を突かれた顔になった。
「そうか。
海外での状況とは、まったく異なるのでしたね、日本は。
ということは……」「ということは、よほど営業力を強化しないと、OEMに救われることがないぶん、われわれの会社はかなり苦しくなる、ということですよ」楠田は声を押し出すようにして言った。
「それも、組織全体としての力を強めないといけない」とサカモト。
「ええ。
だから相談に来たんです」サカモトと楠田は協議のうえ、まず営業一課の組織能力アップから取り組むことにした。
ここでモデルを作り、二課にも展開するというシナリオである。
営業一課の長は木元剛。
事務機器の営業マンから転職してきた中途採用組である。
サカモトは木元に、これからやろうとすることを説明しようとした。
だが話は、すんなりとは進まなかった。
「サカモトさん。
あなたは営業の経験が、どれくらいあるんですか?」木元がつっこむ。
「私は営業をもう一五年やっていますが、営業の腕は、経験を積むことでしか上がりませんよ」「一五年ですか。
それはすごいですね」サカモトが言う。
「それを、すべてでなくてよいですから、大事なところだけ二年以内で身につける方法はないものでしょうか」「無茶を言わないでください」木元はのけぞった。
「私は一五年の間に、それこそ何百回と顧客訪問を繰り返して、それでやっとここまで来たんですよ。
二年で何が身につくっていうんですか」「確かに、経験に優る学習法はないと、私も思います。
ですが、今いる営業の皆さんが、あと一五年しないと十分な力が身につかないというのでは、会社として困るのではないでしょうか」「ま、まあ、それはそうですが」「それに、携帯電話の業界は客先が限られていますから、片っ端から回って、試行錯誤するというのも難しいのではないですか?」「ん、まあ、そうですけど。
じゃあ、どうしたらよいんですか?」「経験に優る学習法はないにしても、経験を補足する学習法はあります。
それを一緒にやってみませんか」木元は不承不承ながらうなずいた。
次の日からサカモトは、営業一課の課員たちとともに、営業の課題分析に取り組んだ。
その結果、彼らの営業プロセスは、次のようなものであることがわかった。
①キャリア側の開発担当者とのアポ取り訪問、またはアポなしの飛び込み訪問②訪問先での挨拶、自己(自社)紹介③自社企画の説明、または先方の企画案のヒアリング④自社企画に関心を示していただいたり、先方の企画案をもらったりしたら、開発につなぐ⑤開発からデザインが出てきたら、第一次の見積もりを作成⑥試作ができたら、第二次の見積もりを作成
⑦キャリア・テストをパスしたら、契約を作成・締結⑧完成し発売されたら、売上げが立つ「よし。
それでは、これをチャートにして壁に貼りましょう」サカモトは、図7-1のようなポスターを作った。
そして営業一課の全員を集め、ミーティングを開いた。
「『売りを立てる』(=売上げを上げる)といっても、それまでには、越えないといけないハードルがこれだけあるわけです」サカモトは言った。
「皆さん、これらのステップはすべて十分にできますか?」皆は互いの顔を見合わせた。
ある課員が言う。
「僕は、①のドア・オープンから③の企画トークまでは比較的スムーズに進めますが、④の開発リンクまでつながらないことが多いように思います」「率先して話してくれて、ありがとうございます」とサカモト。
「確認しますと、④までいかないことが多い、ということですか?」「ええ。
こちらの企画を説明しても、先方の関心が得られないことがよくあって」「ということは、本当の課題は③の企画トークにある、ということではないですか?」「うーん。
そうですね」「④につなげられるようにするためには、③までが十分できるようになっていなくてはならないですからね」「④までちゃんとできていても、⑤や⑥の見積もりが甘くて⑦の契約に至らない人もいるな」ミーティングに同席していた楠田が言う。
「人それぞれに、どこまでできるかは違うと思います」とサカモト。
「私は……①や②も得意とは言えないです」別の課員が言う。
「まあ、これから一つひとつ、それぞれの課題をクリアしていきましょう」サカモトは明るく言った。
それから営業一課では、各自が取り組み中の案件を、一件一枚ずつマグネットつきの丸いカードに書いた。
そして、それらを①~⑧の進捗段階に合わせて、ポスターに貼り付けた。
「何だか、大勢で山登りをしているようですね」木元はサカモトに言った。
「ええ。
これらがたくさん頂上の⑧売上げまでいけるよう、パフォーマンス・マネジメントすることが、私たちのミッションです」サカモトが答えた。
「具体的には、どうすれば?」「シェイピングという方法を使います。
営業プロセスの①~⑧は、必ずこれらをこの順に、欠かさずやらなければ成果にはつながりません」「それは、そうですね」「ですから、営業の皆さん全員が、①から順に②、③、④……とできるようになっていけば、最強の営業集団ができるわけです」「なるほど」「そのために、①ができない人は①を、①はできても②ができない人は②を、①・②ができても③ができない人は③を、それぞれ強化していきます。
強化については、ご存じですね?」「やらせてみて、褒めてあげるというやつですね」「ええ。
ただ、一生懸命やればできるようになる、というほど単純なお仕事でもないでしょうから、そこにナレッジ・シェアをかませます」「ナレッジ・シェア?やったことがないです」「簡単なことです。
皆さん、①から⑧まですべてが超一流という人はいなくても、それぞれに得意とされる箇所はあるはずです。
それを、お互いに教え合うといったことをするのです」「そうか。
わかりました。
なるほど、そういうやり方なら、早く人が育ちそうな気がします。
さっそく、やりましょう」そして営業一課のパフォーマンス・マネジメントが開始された。
まず、皆が日々、営業活動をしながら、案件が次の段階に進んだら、ポスター上のマグネットを次の段階に進める。
それは同時に木元課長への報告にもなるので、木元は進捗のあった課員を大きな声で褒める。
また、なかなか進捗のない案件については、どこで滞っているのか、木元が課員と相談をする。
さらに、中には途中で山から〝滑落〟してしまう案件もある。
それらについては、きちんとした原因分析を木元と課員とですることにした。
それと同時に、週に一度、自主的な勉強会を開き、営業の各段階でのコツを、得意な人から全員に教えてもらうことにした。
「おもしろいもんですねえ」木元はサカモトに言った。
「今まで私は課員のことを、ただ単に『できるやつ』か『できないやつ』としてしか見てきませんでした。
でも実際には、それぞれに得意、不得意があるんですねえ」サカモトは黙って微笑んだ。
「今頃そんなことに気づくなんて馬鹿なやつだと、サカモトさんには思われるかもしれませんが。
でもね、たとえば黒野っているでしょう?」「ええ。
確か技術畑の出身でしたよね?」「そう。
彼は頭もよさそうなので、営業に来たときには私も期待していたんです。
でも、なかなか初対面の相手とよい人間関係が作れないので、そのうち私の中では『できないやつ』に変わっていき、本人も元気を失って、最近では少しふてくされてもいたんです。
でも、実は彼はロジカルな会話に強くて、③の企画説明や企画ヒアリングはうまいことが、勉強会でわかりまして。
営業マンや営業ウーマンは、人間関係を作るのはうまいけれど、技術者とのロジカルな会話は苦手な者も多いので、黒野は今や皆の先生になって、いきいきしていますよ」木元は嬉しそうに言った。
「そうですか。
よかったですね」「今、彼は一生懸命、①のドア・オープンや②の効果的な自社紹介を皆から学ぼうとしていて、自分でも果敢に実践しようとしています」「いいですねえ。
もともとが真面目な方のようですからね」「私も見てて、ちょっと胸が熱くなります。
ああいう健気な姿を見ると、こちらも心から励まし褒めようと思いますね」「大事なことだと思います。
心から褒めるということは。
相手に伝わりますからね」そしてついに、「サカモトさん、やりましたよ!」と木元が叫ぶ日がやってきた。
「やりましたか!?」「やりました!黒野が、契約を取り付けたんですよ!」「おおっ!」サカモトも思わず叫んでしまった。
「それだけじゃない。
今まで③の企画トークや⑤の見積もりで挫折することの多かった連中も、つかえていたものがとれたみたいに、先に進むことができるようになったんです」「すばらしい。
まさに、シェイピングの効果ですね」「まったくです。
営業は『数打ちゃ当たる』だと思っていた自分が恥ずかしい」「いやいや、木元さん。
『数打ちゃ当たる』式の試行錯誤も、実は自分で自分をシェイピングしているようなものだと私は思いますよ。
でも、それでは時間がかかるし、誰もが木元さんのように頑張りぬけるわけじゃない。
そこで、勉強会をしたり、ポスターとマグネットを使ったり、木元さんに褒めてもらったりして、成長を戦略的に加速したのです」「うーん。
行動分析学、おそるべしですね」木元とサカモトは、顔を見合わせて大声で笑った。
解説1.高度な行動を早く形成する営業の目標は、製品を売ることだ。
しかし、「売れる人」になるためには、通常、長い年月がかかる。
それを大幅に短縮し、経験の少ない人でも早く「売れる人」になれるための工夫の一つが、シェイピングだ。
シェイピングとは、形を作るという意味だ。
これまで身についていない行動の形を作り上げるのがシェイピングと呼ばれる方法である。
仕事というのは、最終的な目標に向かって膨大な努力と試行錯誤を繰り返す。
もちろん、努力は重要であり、試行錯誤は貴重な学習経験となる。
しかし、見当はずれな努力は報われない。
報われなければ、努力するという行動そのものが弱化され「モチベーションやモラールが下がった」状態になる。
また試行錯誤も程度問題であり、いつまでも錯誤していては時間がかかって仕方がない。
昔のように時代の流れがゆっくりであればともかく、スピードが要求される現代に、のんびりとした成長は許されないだろう。
これまで見てきた強化の原理とは、すでに存在する行動に対し、好子を随伴させることにより、その行動を増やしていくというものであった。
しかし、仕事に関わる行動に限らず、やらなければならないと頭ではわかっていても、今現在はまったくできていない行動というのもある。
新入社員にとっては、仕事は初めてのことの連続で、話には聞いていたとしても、実際は生まれて初めてやることになる行動だってある。
そのような、今まで一度もしたことのない、あるいはやってみてもできなかった行動はどうやって身につけたらよいのだろうか?少しはできるのであれば、それを上手に強化して増やすことはできる。
しかし、強化は行動の直後にするものだから、行動が始まらないことには、強化のしようがないのである。
これまでできなかった行動を身につけるための方法、それがシェイピングである。
シェイピングで、新しい行動を形作るのだ。
2.シェイピングの手順それでは、シェイピングを使って、新しいスキルを獲得させ、人の成長を加速させる方法を説明しよう。
まず、シェイピングをする際に目指す最終目標となる目標行動を決める。
このケースでは「売上げを立てる」ということになる。
次に、今現在できる行動の中から、目標行動に一番近いものを選び、それを出発点の行動にする。
これは、個々人によって異なるものとなるはずだ。
ノルウェー・モバイルの営業プロセスでは、次のようになっていた。
①キャリア側の開発担当者とのアポ取り訪問、またはアポなしの飛び込み訪問②訪問先での挨拶、自己(自社)紹介③自社企画の説明、または先方の企画案のヒアリング④自社企画に関心を示していただいたり、先方の企画案をもらったりしたら、開発につなぐ⑤開発からデザインが出てきたら、第一次の見積もりを作成⑥試作ができたら、第二次の見積もりを作成⑦キャリア・テストをパスしたら、契約を作成・締結⑧完成し発売されたら、売上げが立つこの中で、たとえば①から②までできる人にとっては、②がシェイピングの出発点となる。
目標と出発点が決まったら、シェイピングを開始する。
まず出発点の行動を十分に強化する。
たとえば出発点が②の挨拶・紹介である営業担当者に対しては、それを十分強化する。
次に③の企画説明・ヒアリングができたら好子を与える。
それを続けていって、どの顧客に対しても③ができるようになってきたら、今度は④の開発へのつなぎを強化する。
つまり、最後の⑧に早くたどりつけるようにするために、今現在の課題行動に、「選択と集中」をかけた強化を行うのだ。
そうやって「③④⑤……」と徐々にハードルを上げていき、最終的に売上げを計上するという行動を強化するのである。
営業の目的は、あくまで「売りを立てる」ことだ。
だが、それだけを強化するのでは、「売りを立てる」ところまでなかなかたどりつけない人には、いつまでも強化の機会がめぐってこない。
強化しなければ、行動は身につかない。
だから、売りを立てるという最終目標は視野に入れつつも、今できることよりも一段レベルアップしたら好子を与える。
そうやって徐々に最終目標へと近づけていくのがシェイピングである。
3.シェイピングは「甘やかし」ではないシェイピングで重要な点は、本人の行動がレベルアップしていくに従い、それまでは好子を与えていた低レベルの行動には好子を与えるのをやめることだ。
たとえば経験ゼロの新人に対しては、まずは①を強化することになるから、ともかく客先に訪問したら、それだけで褒める。
けれど、訪問が当たり前のようにできるようになったら、今度はそれだけでは褒めず、②である自社紹介がきちんとできたときに褒めるようにするのである。
行動を最終目標に向かって徐々にレベルアップさせていくためには、現在の強化対象と、それまで強化していた低レベルの行動とをはっきり切り分ける必要がある。
強化対象のレベルを上げたら、それ以下の行動には、好子を与えてはならない。
これを、分化強化というが、もし、強化の対象をレベルアップさせなかったら、どうなるか。
最終成果にたどりつかない低レベルの行動でも好子が得られるとなれば、人はいつまでも低レベルの行動に甘んじてしまうだろう。
つまりは、「甘やかし」になる。
職場ではよく「部下に甘く接するべきか、厳しく接するべきか」ということで議論となる。
途中まではできたが最終成果にはたどりつけなかった部下がいた場合、成果が上がらなかったのだから褒めてはいけないのか、それとも途中までできたことを褒めるべきなのか。
分化強化が繰り返し行われるシェイピングのことがわかっていれば、その答えを見つけることができる。
つまり「その人が普通にできるぎりぎりの線を上回ったら、褒める」というのが正解だ。
楽にできることを褒めるのは甘すぎる。
逆に、まだできないことを、褒める対象とするのでは厳しすぎる。
だから、部下を常によく見て、現時点での最適な中間目標を設け、それを達成したら褒めるようにすることがポイントである。
全員に対して画一的な基準で接することは間違いなのだ。
4.シェイピングの秘訣ここで、効果的・効率的なシェイピングのコツをまとめておこう。
①即時強化中間的に設定した目標を達成したら、すぐに強化することがきわめて大切だ。
それは、一般的な六〇秒ルールの重要性のためだけではない。
シェイピングは「できない」ことを「段階的にできる」ようにしていくための工夫だ。
したがって、「ここまでは上手にできるが、そこから先は失敗する」という状況が常につきまとう。
だから、上手にできた瞬間に好子を提示しなければ、そこから先を失敗して、強化するためのタイミングを逸してしまうからである。
失敗したあとで、「まあ、ここまではできたのだから」と慰めるのは結構だが、それは所詮、慰めにすぎない。
できたときの喜びを、体に深く覚えこませることが、正しい行動の学習と、さらなる挑戦への意欲を促進する。
だから、できた瞬間にタイミングよく強化することがポイントとなるのである。
②細かな中間目標設定シェイピングでは、大きな目標を達成するために小さな目標をその中間に設定する。
このとき、目標は、少しずつ上げてゆけるよう、きめ細かく設定することが大切だ。
大きな目標を達成することは、誰にとってもしんどい。
初心者なら、なおさらだ。
その遠い道を、喜びをもって一歩一歩進んでいけるようにしてあげるのが行動分析学的マネジメントである。
だから、大きな目標を達成するまでの過程で、小さな達成を幾度も祝わなければいけない。
目標の階段をたくさん設定することは、強化の回数、すなわち喜びの回数をたくさん設定することになる。
逆に、中間目標が粗く設定されていると、一つの中間目標を達成したあとのハードルが急に高くなる。
すると、失敗する確率が高くなる。
失敗すれば、人は落ち込む。
失敗すること自体が、嫌子になってしまうのだ。
どんなに前向きな人でも、失敗ばかり繰り返していては、やがて挑戦意欲を失ってしまう。
いわゆる消極的な人間になってしまう。
だから、そうならないように、目標は少しずつ少しずつ引き上げ、達成できるたびに強化することが大切なのである。
③挫折したときにシェイピングは、成功と失敗の繰り返しだ。
遠くの目標にたどりつくために、近くの目標をまずは達成する。
しかし、その先に待ち受けている難関で失敗する。
第一関門を抜けても第二関門で失敗し、第二関門を抜けても第三関門で失敗する。
行動のマネジメントは人を成功させるためのマネジメントである。
しかし、だからこそ、失敗したときの正しい対処を私たちは知らなければならない。
たとえば第二関門まで突破できるようになった人が、第三関門で苦しんでいたとしよう。
シェイピングの基本セオリーでは、第二関門までできる人には、もはや第二関門の突破では好子を与えず、次の第三関門を抜けたときに好子を与える。
つまり強化の焦点は第三関門にある。
しかし、場合によっては第三関門に何度挑戦しても、どうしても失敗ばかりしてしまうことだってあるだろう。
そういうときに、いつまでも第三関門にこだわっていては、消去と弱化により、「ここから先には決して進めない」ということになりかねない。
そういうときには、目標をいったん後退させるべきだ。
第二関門まで戻してもよいし、第二関門と第三関門との間にさらなる中間目標を立ててもよい。
できないところでいつまでも挫折感を味わい続けさせるのではなく、いったんは引いて、一歩手前で成功体験を積み重ねさせる。
そうして十分な実力がついたら、再び第三関門を目標とする。
そうすれば今度は、成功する確率が高くなる。
そして、「壁を突破した」大きな喜びに浸ることができるのである。
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