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9 記憶系脳番地トレーニング

目次

伸ばす秘訣は知識・感情との連動 記憶系脳番地

脳の中心部には、記憶の蓄積に深く関係する「海馬」という器官があり、この器官は左脳と右脳、それぞれに存在しています。この海馬の周囲に位置するのが記憶系脳番地。左脳側は言語の記憶、右脳側は映像など非言語の記憶をつかさどっています。

実は「記憶」には、「知識の記憶」と「感情の記憶」の 2種類があります。前者は思考系脳番地と、後者は感情系脳番地と密接に関係しており、それぞれ記憶の経路が多少異なります。

悲しい場面に直面したときに、過去に起きた、まったく関係のない悲しい記憶を急に思い出したという人がいますが、これがまさに「感情の記憶」です。

心が激しく揺さぶられたことで、それまでとは異なる経路の記憶が呼び戻されたというわけです。記憶系脳番地が発達している職業としては、通訳や歴史家などが挙げられます。

いずれも豊富な知識が必要な職業であるだけに、「頭のいい人でないと記憶力が良くならないのでは?」と考えている人がいるかもしれません。

しかし、それは誤りです。単に記憶力をつけようとしても記憶系脳番地は鍛えられません。なぜなら、知識や感情と連動させなければ、記憶系脳番地は刺激されないからです。

つまり、記憶系脳番地を鍛えるには、思考系や感情系の脳番地とリンクさせることが不可欠だということがわかるでしょう。

ですから、物覚えが悪くなったからといって、低下した記憶力を無理に伸ばそうとしても、あまり意味がありません。

記憶力をつけたいなら、リンクしている思考系や感情系の脳番地トレーニングにシフトするべきなのです。

思考や感情と連動させながら記憶できる状況に持っていき、そのうえで知識を取り入れたほうが、強く記憶されますし、衰えた記憶力を再び向上させることも可能になるのです。

58お互いに無関係な知り合いの「共通点」を探す

記憶というものは、思考や行動を促す情報として、各脳番地の間を絶え間なく行き来しています。

初対面の人を見て、「この人は、以前お世話になった人に似ているな」と、知っている人と関連づけることで相手のことが強く記憶に残ることがあります。これはまさに、脳内に蓄積されていた過去の記憶が現在の情報とマッチングした結果なのです。

このことを応用して、あなたの知人や友人の中から 2人の人を無作為に選び、その人たちの共通点を探ってみると、記憶系脳番地を鍛えることができます。ピックアップする 2人は、互いに面識がなくても構いません。

むしろ、類似点を少なくするために、ひとりが職場の同僚なら、もうひとりは中学時代の同級生というように、あなたと関わった場所や時期が異なっている人を選んだほうがいいでしょう。

試してみるとわかりますが、まったく接点のない 2人の共通点を探すのは簡単なことではありません。

また、血液型や出身地、年齢、性格、好みなど、さまざまな項目を比較していくと、いかに自分が相手のことを知らないか、思い知らされると思います。

もし、どちらかの人について情報がない場合、もうひとりの情報をもとに推理してみるのも面白いかもしれません。

「Qさんは典型的な A型で慎重な性格だけど、 Pさんは時々すごく大胆な行動を起こすから、性格は正反対だ。だから、 Pさんは B型じゃないかな?」という具合です。

このように考えられるのも、 2人のデータがあなたの脳にきちんと蓄積されているからです。

ですから、「何か共通点がないかな……」と考えを巡らしているときは、 2人に関する記憶をたぐり寄せて、さまざまな項目を比較している状態なのです。このとき、記憶系脳番地が大いに刺激を受けているのは言うまでもありません。

59 1日 20分の「暗記タイム」をつくる

以前、ある大学の教授から、こんな話を聞きました。

その教授は、自宅から大学までタクシーに乗る際、自分の研究分野に関する本を読んで、その内容を覚えることを習慣にしていると言うのです。

大学が近くなっても最後まで読み終わっていないときは、時間を稼ぐためにわざわざ迂回してもらうこともあると話していましたから、驚きです。

一見、変わった勉強法のようにも思えますが、彼にとってはこの方法が最も集中しやすく、確実に本の内容を記憶できるとのことでした。

実はこの勉強法、脳の観点からすると非常に合理的なのです。脳はデッドラインを明確にすると、それまでに何とか作業を終わらせようとする傾向があります。

ですから、この教授のケースであれば、勉強の空間を車内に限定することで、「タクシーが着くまでに覚えなければならない」という意識が強く働き、集中することができるのです。

とはいえ、誰もがこんな方法を実践できるわけではありません。

そこで、この例を少し応用して、毎日決まった時間を確保して、その間に集中して何かを覚えるようにしてみてはどうでしょうか。

忙しい中で、まとまった時間を確保することは難しいかもしれません。ですから、たとえば 1日に 20分だけ時間をつくり、その間に覚えることに専念してみるのです。勉強時間を 1時間捻出することは大変ですが、 20分なら散歩の時間や通勤時間に確保することができるでしょう。

それでも難しいという場合は、寝る前の 10分間でも構いません。「暗記タイム」の時間は、あなたの生活パターンに応じて設定してみてください。要するに、記憶系脳番地を活性化させるためには、脳がデッドラインの存在を意識できればいいのです。

60新語・造語を考えてみる

ニートやクールビズ、アラフォー、婚活など、現代は新しい言葉(新語)が次々につくられる時代です。

このような新語は、誰かが思いついたり、一部の人たちの間で使われていたりした言葉がメディアを通じて広まったものですが、まわりで使われているから何となく使っているという人も多いのではないでしょうか。

ひとつの言葉が短期間に日本中に広まるのは、驚くべきことだと思わずにはいられません。

もちろん、マスメディアの影響力もあるのでしょうが、ある言葉が一気に広まる最大の理由は、その言葉があいまいな概念や現象を、極めて的確に表現しているからでしょう。

実は、この「新語」を考える作業は、記憶系の脳番地を大いに刺激します。「新しい言葉を生み出すことは、『記憶』とは関係ないのでは?」と思う人がいるかもしれません。

ところが、実際、人は何かを暗記するときよりも、新しい言葉を考え出すときのほうが記憶系脳番地を使っているのです。そもそも新語には、古い概念に対抗する新しい概念が必ず含まれています。

この新しい概念は、古い概念(言葉)を理解していなければ生み出すことはできません。脳が古い情報を検索し、それまでには存在しなかったとわかるからこそ、それが「新しいもの」だと認識できるのです。

このことを身を持って理解するためにも、自分の好きな分野でまったく新しい言葉をつくり出してみるといいでしょう。もともとある言葉を変化させたり、これまでとくに名付けられていなかったものに名前をつけたりするのです。

すると、既存の言葉や概念を知らなければ、新語がつくれないことに気づくはずです。本当の意味での新しさとは、言葉としての新しさではなく、概念やコンセプトの新しさなのだと私は思います。

だからこそ、記憶系脳番地の能力を伸ばそうとするなら、それまでに見聞きしてきたことと照らし合わせながら、自分の中でまったく新しいものをつくり出していくことが大切なのです。

61『論語』を覚える

この章の冒頭で「記憶力をつけることだけが記憶系脳番地のトレーニングではない」と書きましたが、それでもやはり、記憶系脳番地を鍛えるためには、記憶力をある程度高めることが必要です。

ただし、何でもいいから手当たり次第に暗記すればいいというわけではありません。

大事なのは、「計画的に」覚えることです。暗記の対象は、長ければ長いほど覚えがいがあるというもの。たとえば孔子の『論語』や仏教の『般若心経』を、暗誦できるまでひたすら覚えるのもいいでしょう。

しかし、どちらもそう簡単に覚えられるものではありません。実際、勢い込んで全部暗記しようと試みても、途中で確実に挫折するはずです。では、どうすればいいのか?すべて覚えようと思わないことです。

「それでは記憶力のトレーニングにならないのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、要は 1度に全部覚えようとするからできないのであって、覚える範囲を限定して毎日少しずつ暗記すれば、意外と楽に頭に入ってくるものです。

なかなか覚えられないという人は、同じところを何度も読みながら、覚える行数を毎日 1行ずつ増やしていくといいでしょう。こうして暗記量を積み重ねていくことで、記憶の容量はおのずと増えていきます。

ちなみに私は、この方法で本居宣長の『うひ山ぶみ』(学問を志すうえでの心構えが書かれた書物)を暗誦できるまでになりました。

これは私の個人的な考えですが、人間は 10回以上読むことで、初めて内容を理解することができるのだと思います。ですから、焦る必要はありません。極端な話、毎年 10%ずつ覚えていき、 10年で 100%覚えようと計画すればいいのです。

ただ、暗記するにあたって、あまりに難解な本を選ぶとすぐに挫折してしまいます。

『論語』や『般若心経』が難しいと感じたら、好きな小説の一場面やお芝居のセリフ、詩など短いものを選んで暗記すればいいでしょう。何事も苦にならない程度に続けることが大事です。

62洋楽の歌詞を聴いて口ずさんでみる

英語の学習も、記憶系脳番地の効果的なトレーニングになります。ただ、海外在住の人ならまだしも、日本に住んでいる私たち一般的な日本人にとって、日常的に使う言葉は、当然、日本語です。普段の生活の中で英語に接する機会は極めて少ないと言わざるを得ません。

もちろん、英語で日常会話ができる人も多くいますが、そうでない人にとっては、英単語レベルで理解することはできても、文章になった途端、相手が何をしゃべっているのかわからなくなるというケースがほとんどではないでしょうか。

では、そういう人は、英語を使った脳番地トレーニングはできないのでしょうか。そんなことはありません。

英語が苦手な人でも、洋楽を聴くことに対しては抵抗がないはず。そこで、「洋楽」の歌詞を覚えることで、記憶系脳番地を刺激してみましょう。音楽の歌詞は文章とは違い、言葉がメロディーに乗っている分、覚えるのも楽です。

また、聴いているだけで心地良い気分になりますから、歌詞も自然と口から出てくるもの。耳で聴いて覚えたものを声に出すと、今度は口(音)から覚える形になり、これを繰り返すことで記憶をさらに強化することができるのです。

歌詞に限らず、何かを覚える際、このように声に出してみるのはとても大事なことです。

たとえば、披露宴のスピーチの原稿を暗記しなければならないときに、文字を黙って読んでいてもなかなか覚えられなかったのに、声に出して読んでみたら不思議と早く覚えることができた……という経験はないでしょうか。

暗記をしたいときには、このように覚えたいことを繰り返し声に出すと、情報が脳内に確実に定着するのです。ですから、洋楽を聴くときも、歌詞やメロディーを覚えたら、次は実際に口ずさんでみてください。この作業を繰り返し行うことで記憶が確かなものになっていくのです。

63前日に起きた出来事を3つ覚えておく

1日の出来事というのは、その日のうちなら事細かに覚えているものですが、時間が経つにつれて、どんどん思い出せなくなってしまうものです。

ましてや、取るに足らない些細な出来事ほど、すぐに忘れてしまうもの。

たとえば、「 1週間前に食べた朝食を思い出せ」と言われても、そう簡単に思い出せるものではありません。

しかし、記憶力が強化されれば、 5日前の朝食を尋ねられても、「あの日の朝食はトーストとベーコンエッグだった」と答えられるようになるのです。もちろん、このレベルに到達するまでには、毎日の訓練が必要です。

では、どのような訓練をすればいいのでしょうか。

具体的には、朝、目が覚めたら、前日の出来事を思い出し、覚えておきたい(覚えておいたほうがいい)出来事を3つ挙げるのです。

その日の夜ではなく、翌朝にこの作業をするのはなぜかといえば、一定の時間を置くことで、詳細が思い出しづらくなるからです。

思い出せないことが多いほど、そこに記憶をたぐり寄せる必要が生まれ、その作業が記憶系脳番地を刺激することになります。

もちろん、単に思い出すだけでは意味がありませんから、いったんノートに記録するなどして、数日後にきちんと記憶できているかどうか検証することが必要でしょう。

なお、思い出すべき事柄は、「ダイエットするために」食事内容を思い出す、あるいは「仕事を速く進めるために」途中だった仕事の進捗状況を思い出してみる、というように目的をはっきりさせておいたほうが効果的です。

この作業を繰り返していけば、毎日3つずつ情報が蓄積されていき、記憶の引き出しが増えていくはずです。トレーニングを継続するうちに、3つの出来事を覚えることが簡単になっていくかもしれません。そのときは、覚える数を増やしていけばいいのです。

64日曜日に翌週の予定をシミュレーションしてみる

ビジネスの世界で成功している名経営者には、常に前向きで、普段の会話においても将来のビジョンを話したがる人が多いと聞きます。

なかには「 40歳までに年商 ○ ○億円を実現させ、 60歳までに経営の第一線を退き、その後は自分が学んできたノウハウを若い世代に伝授しながら余生を過ごしたい」というように、具体的な人生計画を立てている人までいるそうです。

このように、明確な将来像を描いて行動することは、記憶系脳番地の発達にも大きく影響します。

自分が「こうなりたい」という姿を頭に浮かべ、それを書き出したり、繰り返し誰かに伝えたりすることで、そのイメージは確固たる情報となって脳内に記憶されていきます。

すると、さまざまな局面で「理想の将来像に近づくために、ここで自分はどう行動すべきだろうか」と考えて、そのつど蓄積された情報を引き出しながら行動するようになるのです。

つまり、「こうなりたい」と強く念じれば念じるほど、そのイメージが記憶からひっぱり出される頻度も多くなるというわけです。

記憶系脳番地を鍛えるには、このように理想像をイメージすることも有効ですが、ここでは少し趣向を変えたトレーニングにチャレンジしてみましょう。

日曜の夜に次の 1週間のスケジュールがどうなっていたかを思い出し、何をすべきかをシミュレーションしてみるのです。

たとえば、「月曜日は朝 9時に出社した後、 10時から会議が入っているから、 9時半まで書類の整理をして、その後の 30分で会議の資料を読み込んで……」と細かい予定を立て、そのシミュレーションに基づいて実際に行動してみるのです。

これも自分の中に、ある種の「理想像」をつくる作業だと言えます。記憶力とは、過去に覚えたことを必要に応じて引き出す力だけを指すのではありません。

逆に、未来に向けて思い描いたイメージを随時引き出していくのも記憶の力です。将来のビジョンを持つということは、「未来の記憶」を創造する行為ですので、記憶系脳番地にとっても大事なことなのです。

65その日の「ベスト発言/ワースト発言」を選んでみる

日々の発言を振り返ってみると、考えに考え抜いた末のものもあれば、その場の勢いで出てしまったものもあります。とくに後者に関しては、自分の発言なのに、「あれは思いつきで言ったことだから」と無責任になってしまうことも……。

いつもその場の思いつきで発言していると、信用を失ってしまうことにもなりかねません。そうならないためにも、 1日の終わりに自分の発言を整理し、自分が発する言葉に対して意識的に関わっていく必要があるでしょう。

「整理すると言われても、どうすればいいかわからない」という人は、その日の自分の発言を思い出して、「ベスト発言/ワースト発言」を決めることから始めてみてはいかがでしょうか。

ベスト発言は、誰かを喜ばせた言葉や、うまい表現で相手をうならせたような言葉。反対にワースト発言は、誰かを傷つけてしまった言葉や、自分を不利な状況に追い込んでしまったような言葉です。

このようなランク付けをすることにより、自分がその日どんな発言をしたのか改めて確認することができますし、何より自分の発言に責任を持つことができます。

このとき、発言を振り返りながら、相手の反応はどうだったか、他の人に対してフォローしておく必要がなかったかなど、その発言に関連する事柄を併せて思い出してみてください。

関連情報を一緒に掘り起こすことで、言葉の記憶だけでなく映像記憶もひっぱり出すことができるので、記憶系脳番地がより活性化されるのです。

66ガイドブックを持たずに旅行に行く

旅行に行くときに、あなただったらどのように情報を収集しますか?添乗員付きのパック旅行を利用するから、自分は何も調べないという人もいるでしょうし、逆にインターネットなどで現地の情報を片っ端から調べて、ぬかりなく準備するという人もいるかもしれません。

いずれにせよ、より良い旅をするために、ガイドブックを必ず持っていくという人は多いでしょう。記憶系脳番地のトレーニングとして、私はこのガイドブックをあえて持っていかないことをおすすめします。

こう言うと、「せっかく旅行に行くのだから、現地で情報がまったくないのは困る」と言う人がいます。

確かに、ガイドブックを持っていかなければ、旅先で名所や見どころの情報を参照することはできません。しかし、それが困るというのであれば、事前に覚えてから出発すればいいのです。

そのためには、自分の知識を記憶からひっぱり出して、知っていることと知らないことを整理する作業が必要になります。

たとえば京都に行く場合、「三十三間堂と清水寺に行ってみよう」と計画したとします。

このとき、三十三間堂がどこにあるのか、清水寺へ行くならどのルートが最も近いかという情報は、知らなければあらかじめ調べて記憶しておかなければいけません。

誰でも後悔するような旅行はしたくありませんし、トラブルは避けたいでしょうから、事前にできる限り正確な情報を覚えようとするでしょう。

旅先では、事前に覚えておいたこの記憶と、現地で収集した情報を合わせてスケジュールを組み立てていくことになりますが、この作業が独創的な旅を実現してくれるのです。

このトレーニングでは、行きたい場所の情報を優先的に覚えるでしょうから、おのずと「したい思考」で記憶を使うことになります。

この記憶の使い方がガイドブックの内容を確認するだけの「させられ思考」の旅行とは、比べものにならないほど脳に刺激を与えることは言うまでもありません。

おわりに

いかがでしたか?すでにいくつかのトレーニングを試したという人もいるでしょうし、これからチャレンジしようと考えている人もいるかもしれません。

いずれにせよ、本書の多くのトレーニングが、脳を積極的につくり変え、「前向き」な思考を育てるメニューになっていることを理解してもらえたのではないでしょうか。

しかし、本書のトレーニングを実践すれば、それだけで強い脳ができる……というわけではありません。大切なのは、トレーニングの内容に自分流の工夫を加えること。また、あなた自身が新しいトレーニングを創ることです。

なぜなら、本文でもお伝えしたように、同じ経験をいくら繰り返しても、脳には限定的な刺激しか与えられないからです。

ちなみに私は、よく「夢」を利用して新しいトレーニングをつくります。

夢の中に出てきた珍しい動物や鳥が実在するのか真剣に調べてみたり、夢で経験した出来事を細かく思い出し、「実際に起きたらどうなるだろう?」と考えたりします。

先日は、こんな夢を見ました。

弊社(脳の学校)の社員と 2人でお客様から依頼された仕事を進めていたところ、予算が 3000円しかなくて大あわて……という内容でした。

普通なら「変な夢だったな」で終わるところですが、もしこれが現実だったらどのように対処すればいいのだろう、と真剣にシミュレーションするわけです。

もうひとつ、脳を強くするうえで重要なのは、価値観が大きく変わるような体験をすることでしょう。この本でお伝えしてきたように、日常の習慣を見直すだけでも脳を刺激することは十分可能です。

しかし、価値観がまったく変わるような体験をすると、脳が心地良い〝衝撃〟を受け、その結果「潜在能力」が引き出されるのです。何によって価値観が変わるかは、人それぞれだと思います。

私にとって、価値観が変わるほどの「衝撃体験」だったのは、本書で何度も登場している「 MRI」との出会いでした。

磁石でできたドームの中に 10 ~ 20分間横たわっているだけで、 1ミリほどの薄さごとに体の断面が画像化されてしまう——。

27歳のとき、 MRIを初めて目にした私は、「この技術が医学そのものを変えることになるだろう」という衝撃を受けました。このとき、私の脳は確実に生まれ変わったのです。

話が少しそれますが、皆さんは「九会曼荼羅(金剛界曼荼羅)」をご存じでしょうか。曼荼羅とは、仏教(とくに密教)において、仏の「悟り」の境地を視覚的に表現したもの。

九会曼荼羅は、縦 3マス ×横 3マス、合計 9マスのブロック(漢字の「囲」のような形)のそれぞれに仏の姿が描かれている曼荼羅のことです。

9つのブロックの中心には「大日如来」という仏様が位置していますが、実はまわりの8つはこの大日如来の化身だと言われています。

私は、本書で紹介した 8系統の脳番地について考えるとき、いつもこの曼荼羅を連想せずにはいられません。本書で示した 8系統の脳番地トレーニングは、九会曼荼羅で表現すれば、中心「以外」に配置されているもの。

では、中心に位置するトレーニングとは何でしょう?それは、自分自身の価値観を鍛えるトレーニングなのではないか……。私はそんなふうに考えています。

8つの脳( 8系統の脳番地)をどう動かすかは、つまるところ、あなたの価値観によって決まります。

トレーニングを進めるときには、この中心に位置する「自分」を意識してみると、今までとは違った視点が持てるかもしれません。

皆さんが、8つの脳番地を縦横無尽に操り、夢に向かって踏み出す小さなきっかけとして本書を使っていただければ幸いです。

最後になりましたが、本書を製作するうえで尽力していただいた上新大介氏、編集の労をとってくださったあさ出版の木田秀和氏にこの場を借りて厚く感謝申し上げます。

著者紹介加藤 俊徳(かとう・としのり) 1961年新潟県生まれ。

医師、医学博士、株式会社「脳の学校」代表。

14歳のときに、「脳を鍛える方法」を探そうと、医学部への進学を決意する。

昭和大学医学部、同大大学院を卒業後、 91年国立精神・神経センターにて脳機能を光計測する NIRS原理を発見。

95年より、アメリカ・ミネソタ大学放射線科 MR研究センターに研究員として在籍。

臨床診療の経験を生かし、胎児から 100歳を超えるお年寄りまで 1万人以上の脳画像を分析してきた。

帰国後は慶應義塾大学、東京大学などで脳の研究に従事しながら、 MRI脳画像診断のスペシャリストとして活躍。

06年、株式会社「脳の学校」を立ち上げ、脳酸素を計測する COEや MRI技術を使って脳の「個性」の鑑定を行っている。

著書に『東大脳になる勉強習慣』( PHP研究所)、『脳はこの 1冊で鍛えなさい』(致知出版社)、『仕事ができる人の脳 できない人の脳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

【編集協力】上新大介【本文イラスト】ほりたみわ

脳の強化書発行日 2014年 3月 22日著 者 加藤 俊徳(かとう・としのり)発行者 佐藤 和夫発行所 株式会社あさ出版 〒 171-0022東京都豊島区南池袋 2-9-9 第一池袋ホワイトビル 6 F電 話 03( 3983) 3225(販売) 03( 3983) 3227(編集) FAX 03( 3983) 3226 U R L http:// www. asa 21. com/ E-mail info@ asa 21. com振 替 00160-1-720619 facebook http:// www. facebook. com/ asapublishing twitter http:// twitter. com/ asapublishing © Toshinori Kato 2014本電子書籍は下記にもとづいて制作いたしました株式会社あさ出版『脳の強化書』 2010年 3月 19日初版発行

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