話の中に埋もれている「塊」を意識する
人の話はいくつもの「塊」からできている人の話を聴いて、その内容をノートにまとめる際、まず気をつけたいのは話の「塊」を意識することです。
「塊」とは、「テーマ」や「話題」と言い換えてもいいかもしれません。
人の話は、いくつかの塊によって構成されています。
たとえば、主張→根拠1→根拠2→根拠3あるいは現状分析→問題点1→問題点2→問題点3→対策という具合です。
話があちこち飛ぶ人もいますが、たとえそういう人でも、飛んだ先ではしばらく塊で話をしているはずです。
ただ、ひとつの話に費やす時間が少ないので塊自体が細かくなり、話の全体像が見えにくくなってしまうのでしょう。
まずは、日常の会話の中で話の塊を意識してみてください。
「今、Aの話からBの話に移ったな」「おっと、Dの話からCの話に戻ったな」という具合に塊を把握できるようになれば、しめたものです。
「タイトル+項目」でノートにまとめていく話を塊で把握できるようになったら、その塊をひとつの〝単位〟としてノートに書いていきます。
このとき、「タイトル+項目」という図式を意識しましょう。
「タイトル+項目」については、第4章で詳しく述べますが、ひとまず塊のテーマが「タイトル」、その詳細が「項目」だと考えてください。
話し手が、「はじめに、××について説明しますと……」というように、その塊のテーマを明確にした場合には、それを「タイトル」とします。
特に言及しないで話し始めた場合には、自分でキーワードを見つけて(あるいは考えて)、書きましょう。
さらに、その塊を構成するもの、たとえば具体例や事例、手順などを「項目」としてノートに書いていきます。
それぞれの塊を区別できるように、塊と塊の間には十分な余白を空けます。
塊を発見するためのキーワードなお、塊を見つけるには、いろいろなヒントがあります。
たとえば、使用するテキストや、事前に配布されるプリント類。
こうしたものがあれば、あらかじめ確認してから臨むと、流れがスムーズに理解でき、塊をとらえやすくなります。
また、話し手が口にする「話題転換」や「予告」の言葉に敏感になることも大切でしょう。
「話題転換」の言葉としては、「次に」「では」「後は」「そろそろ」などがあります。
これは、次の塊に移ることを意味しており、新しい話に切り替わる合図です。
また、「予告」の言葉としては、「今日は~の話をします」「これから~について説明します」「次に~の話をしますが、その前に~」「これはちょっと余談ですが~」などが挙げられるでしょう。
これらは、流れを予告してくれる言葉です。
「話題転換」や「予告」の言葉をきちんとキャッチできれば、その後の話の展開が予測でき、ノートをとるのが楽になりますよね。
ちなみに、このようなキーワードに敏感になると、全体の構成を強く意識するようになるため、あなた自身が話すときにもわかりやすい話ができるようになります。
速記テクニックを磨く
テクニック①書く速度を上げるための「15分書きとり」第2章のマインド①で、「その場主義」を実現するためには、文字を書くスピードを上げていかなければならない、と述べました。
実際、ノートの悩みについて尋ねると、「話を聴くのに必死でノートがとれない」と訴える人が少なくありません。
それだけ「文字を速く書けない」人が多い、ということでしょう。
では、速く書けるようになるには、どうすればいいのでしょうか?結論から言えば、これはもう、訓練するしかありません。
生徒を見ていて強く感じるのですが、書くのが遅い人は、単純に文字を書く経験が少なかったのだと推測できます。
つまり、文字を書き慣れていない。
手も結局は「筋肉」で動いているわけですから、使わなければ衰えてきますし、逆に使っていれば鍛えられていきます。
私がよく生徒にすすめるのは、「15分書きとり」です。
1日15分、何でもいいから文章を書き写すというトレーニングです。
タイマーを15分後にセットして、書きとり開始。
ピピピッと鳴ったら、そこで終了です。
決して、難しくはありません。
これを毎日続けていけば、手の筋肉が次第に鍛えられていきますから、決められた時間に書ける文字量はどんどん増えていくでしょう。
テクニック②苦手な文字を発見する速く書くための工夫は他にもあります。
私が、書くのが遅い生徒に必ずやってもらっているのが、「ひらがな・カタカナで五十音を書く」という練習。
もちろん、できるだけ速く書いてもらいます。
なぜ、こんなことをするのか?それは、書きづらい文字(=苦手な文字)を発見するためです。
人には必ず苦手な文字があって、それを書くときには、他の文字よりも時間がかかるものです(もちろん、ほんのわずかな時間ですが)。
この「苦手な文字」が、書くスピードを遅くしている原因のひとつなのです。
「この字は何となく書くのに手間取るなあ」と思ったら、それが苦手な文字。
苦手な文字を書く速度は、意識するだけでもずいぶん違います。
もちろん、「何百回も書いて慣れる」というのもひとつの方法でしょう。
また、生徒には「周りで速く字を書ける人がいれば、ノートを見せてもらって」という話もよくしています。
これは、書くスピードが速い人が、どんなふうに書いているか、その特徴をよく観察するためです。
自分の字と他人の字を比較すると、いろいろなことが見えてきます。
自分の字はやたらと大きいとか、筆圧が強すぎるとか、丁寧に書きすぎているとか……。
このような特徴を把握した上で、それを強く意識すれば、さらに書く時間を縮めることができます。
テクニック③速く書ける「書体」を考える走り書きをすると、急いで書くために字が乱れます。
その結果、読めなかったり、誤読したりする危険性があります。
私が学生のときも、数字とアルファベットを読み間違えてしまったという経験が何度もありました。
うまくノートをとれても、これでは本当にもったいないです。
そこで、速く書けて、なおかつ後で読み返しても理解できるような「書体」を考えてみましょう。
「今まで慣れ親しんだ書き方があるのに、独自の書体なんて……」と考える人もいるかもしれません。
しかし、それほどおおげさなことではないのです。
要するに、後で読み返したときに自分の字が判読できる〝限界レベル〟を把握しておこうということ。
「自分で書いた字なのに、後で読み返すと何が書いてあるのかわからない」という人は、走り書きしても読める「限界レベル」について、一度きちんと向き合ってみることをおすすめします。
見開き2ページを1セットとして使う
「その場主義」を実現するための技術私は、自分の生徒に「授業でノートをとるときは、見開き2ページを1セットにしなさい」と教えています。
そして、右ページを「アウトプット品質用」に、左ページを「メモ用」として使うようにアドバイスしています。
これは、私が実践してきた方法でもあります。
どうして、この方法をすすめるのか?その理由は、「その場主義」を実践するためです。
第2章で、アウトプット品質のノートをつくるマインドとして、「その場主義」を挙げましたが、これを実現するための方法が、「見開き2ページを1セットにする」という使い方なのです。
走り書きは左、まとめは右具体的に説明していきましょう。
授業(セミナー)が通常のスピードであれば、右のページに先生(講師)話をまとめていきます。
もちろん、「アウトプット品質」ですから、自分の頭をしっかり通して、自分の言葉で書いていきます。
しかし、たとえば授業のスピードが速すぎて書くのが追いつかなかったり、説明がよく理解できなかったりしたとしましょう。
そのときは、左ページの出番です。
とりあえず、授業の内容を左ページに走り書きでメモしていきます。
走り書きをするときは、キーワードを書いていくだけでOKです。
無理にセンテンスにする必要はありません。
センテンスでまとめようとするあまり、話に集中できないのでは本末転倒だからです。
このように、「メモ用ページ」と「清書用ページ」とを使い分ければ、焦らずにノートをとることができます。
また、右にまとめ直したものの、もともとの内容を忘れてしまったり、「何か違うなあ」と思ったときには、すぐに左ページの元ネタにアクセスできるというメリットもあります。
いかがでしょう。
これなら、「その場主義」で仕上げられそうな気がしませんか?
脱線タイムがまとめ直しのチャンス左ページに走り書きした内容は、「その場主義」で右ページにまとめ直していかなければいけません。
しかし、同時に話も聴かなければいけない。
では、「まとめ直し」の時間は、どこで捻出すればいいのでしょうか。
私の場合は、よく先生が雑談を始めたときに、「まとめ直し」をしていました。
ただし、雑談はすべてまとめ直しの時間にしていいというわけではありません。
なぜなら、雑談の中には本筋に関連しているものもあるからです。
とりわけ、話し手が優秀かつ良心的な場合、本筋を理解する上で必要な雑談をしてくれることがあります。
そうした雑談はきちんと聴いて、書き残しておいてください(ただし、雑談なので、文字は小さくてかまいません)。
一方、「これは完全に脱線だな」というケースもあるでしょう。
どう考えても余計な話という内容のときです。
こういうときは、「まとめ直し」のチャンスです。
先生の話は小耳に挟む程度にして、「内職」に専念しましょう。
なお、「この雑談は重要か否か」の判断は、最初のうちは難しいかもしれません。
その場合、判断がつくまでは、とりあえずすべての雑談に耳を傾けておくことが賢明です。
ただし、「これは本筋に関連するだろうか」という意識を常に持ちながら聴くようにしてください。
そうすることで、大事な雑談とそうでないものの判断がつくようになっていきます。
慣れてきたら1ページの中で使い分ける授業によっては、ゆっくりしたスピードで進むものもあります。
その場合は、リアルタイムで右の清書用ページに書き込んでいけるので、左のページは白くなりがちです。
こういうときは、見開きで使うことにこだわる必要はありません。
1ページの中で、メモ用スペースと清書用スペースを分ければいいでしょう。
ただし、メモ用と清書用を使い分ける書き方に慣れていないうちは、やはり見開き2ページを1セットにすることをおすすめします。
最初から1ページに両方書く方法を採用してしまうと、かえってグチャグチャした読みづらいノートになりかねないからです。
以上、「話の聴き方」と「ノートのとり方」のコツをご紹介しました。
大切なのは、授業や講義を受けるときに、「何となく聞く」という態度ではなく、積極的に関わろうという意志を持つことです。
この意志こそが、知識の吸収力向上につながることは言うまでもありません。
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