1夜の睡眠の質は「その日の朝」に決まっている
あなたがその日の晩、質のいい睡眠を得られるかどうかは、実は朝の段階ですでに決まっています。就寝時刻が近づいてからいろいろ工夫することも悪くはありませんが、それだけでは「時すでに遅し」とも言えるのです。
その理由は大きく二つあります。一つは、体内時計のリセットが朝に行われること。
遅くとも10時までの時間帯に、太陽の日差しを網膜に感じることで、脳にあるメインの親時計が整います。だから、目が覚めたらすぐに起き上がり、家中のカーテンを開けて太陽の日差しを浴びてください。
できれば窓も開けて窓ガラスを通さずに、太陽の日差しを直接網膜に取り込みましょう(危険なので、直視は避けてください)。
朝6時くらいに起きる人だと、冬の日が短い時期には「まだ暗くて太陽の光は感じられない」ということもあるでしょう。そういう場合でもカーテンは開けておき、太陽が昇ってきたら日差しを浴びてください。
たとえ雨や曇りであっても、空の表情は日によって異なるので、見ているだけでも楽しいはず。「起きたらカーテンを開ける」という行動は、朝の習慣にしてしまうといいでしょう。
もう一つ、朝はセロトニンを増やす時間の始まりでもあります。太陽の日差しを網膜に入れることで、セロトニンの分泌が促進されます。
第1章でも述べたように、セロトニンは夕方になると、睡眠ホルモンであるメラトニンに姿を変えます。
また、セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、第1章で紹介したドーパミンやノルアドレナリンなど攻撃性が高いホルモンの過剰分泌を抑え、イライラや不安を取り除いて楽しく穏やかな気分をつくり出してくれます。
セロトニンは夕方までの時間帯に分泌されますが、朝一番に太陽の日差しをしっかり浴びてセロトニンをたくさん放出しておけば、夜に質の高い睡眠が手に入るだけでなく、その日一日をベストコンディションで過ごせるのです。
自分の脳内にどのくらいのセロトニンが分泌されているかは、ビジネスパーソンにとって非常に大きな問題。無関心ではいけません。
なお、少しでも効率的にセロトニンを分泌するには、できるだけ午前中に太陽の日差しを浴びるのがポイントとなります。時間の目安は1回につき5~30分。猛暑の真夏なら5分がいいところでしょうが、日差しが弱い季節なら30分を目指しましょう。
「でも、ただでさえ忙しいのに、午前中に30分も日光浴の時間なんてつくれない」という人は、後述する方法(こちら参照)を試してみてください。
朝食や通勤の時間を利用すればいいだけなので、あなたの負担が増えることはありません。
2「日光不足」が睡眠をダメにしている
これまで何度も述べてきたように、快適な睡眠を得るためには、体内時計を整えると同時に、セロトニンをたくさん分泌させることが必要です。そして、そのためには、午前中に太陽の日差しをたっぷり浴びるといいのでしたね。しかしながら、現代人はあまりにも日光を浴びていません。むしろ、日焼けを嫌がって「浴びないように、浴びないように」と努力しています。
今から40年ほど前に南極でオゾンホールが発見され、紫外線の害がクローズアップされたことが引き金となっているのかもしれません。
たしかに、強すぎる日差しを長時間浴びることは皮膚がんを誘発し、シミを増やすなど皮膚の老化につながります。その一方で、日光は健康維持のために必須のビタミンD(こちら参照)をつくり出すなど、人間の健康になくてはならないものでもあるのです。
かつて、人類はもっぱら太陽の日差しを「明かり」として生活してきました。
朝日が昇ればそれを合図に起床し、日中は狩猟や採取に出掛け(農耕が始まってからは田畑にくり出し)、夕方になって日が傾いてきたら住居に戻りました。
暗くなってからの行動は、せいぜい月明かりや松明頼み。少し文明が発達してきたところで、提灯やランプを用いる程度でした。私たちの体は、そういう環境で一日を送るようにできているのです。
ところが、エジソンが白熱球を発明したことで事態は一変し、お金さえかければ夜間でも昼間と同じ状態を人工的につくれるようになりました。
エジソンが生きていた時代は遠い昔のようですが、長い人類の歴史を考えたらつい最近のことです。「いつも明るい」環境がつくられたことで便利になった反面、数々の困った状況が生まれました。
多くの現代人が照明により、「自分は十分に日差しを浴びている」と錯覚してしまうようになったのです。でも、あなたが十分に浴びているのは「照明」であって、「日光」ではありません。
皮肉なことに、「日光を避けている」現代人の多くが、深刻な日光不足に陥って睡眠をダメにし、健康も害している可能性があるのです。
さらには、パソコンやスマホの登場によって、ブルーライトの画面を「見る」という明かりの採り方もするようになりました。
こうして便利な生活を追求した結果、日中と夜間という明らかな二相状態にあってこそ正常を保てていた私たちの体内時計は、すっかり狂ってしまいました。
とくに、ブルーライトの普及が体内時計に与える悪影響は、深刻なものがあります。とはいえ、これまでの生活をいきなり180度変えるのは現実的ではありません。そこで、「朝の8時も夜の20時も同じような照明で明るい状態は尋常ではない」ということに気付くだけでも違います。
ふだんからそういう環境で働いているからこそ、意識的に自分の中に日中と夜間の二相をつくり出すことが必要。そして、そのスタートが朝の日差しを浴びることなのです。
3「目覚めたら窓辺に直行」が毎朝のルーティン
体内時計を正しくリセットするためには、毎朝、決まった時刻に起きるのが理想です。就寝時刻がバラバラなよりも、起床時刻がバラバラなほうが、はるかに体内時計を狂わせます。休日の寝坊も、最大で平日の起床時刻プラス2時間まで。
どうしても眠い場合は、12~15時の昼寝(最長で1時間半)を楽しみに、とにかく起きてください。ここで、「起きる」とはどういうことかについて定義しておきましょう。
私が本書で「起きる」と言うとき、それは書いて字のごとく「起き上がる」ことです。目が覚めている状態とは違います。
いくら目が覚めていても、そのままベッドでゴロゴロしていれば、脳は「まだ寝ているんだな」と勘違いしてしまいます。だから、目覚めたならすぐにベッドから出てしまいましょう。そして、カーテンを開けて日差しを肌で感じてください。
とくにおすすめできないのが、ベッドの中でスマホを見ること。朝目覚めたら、ベッドに横になったまま、まず枕元のスマホを手に取るという人もいるでしょう。
そして、スケジュールやメールを簡単にチェックし、頭の中でその日の行動予定を確認するという人も。
それでは、貴重な朝時間をダラダラ過ごしてしまいかねません。
もう一つ大問題なのが、脳が「ベッドの役割」を勘違いしてしまうこと。
本来ベッドは「眠る場所」であるべきなのに、「いろいろ考えたりして活動する場所」だと脳にインプットされてしまうために、夜、寝付きにくくなるのです。
厳しいようですが、寝室にスマホは持ち込まないようにしましょう(第5章のコラムで詳しく述べます)。そして、朝目が覚めたら、ベッドから起き上がって窓辺に直行。この流れをしっかり習慣にしてください。
ちなみに朝の二度寝は深い眠りに入ってしまうため、起床時に頭がぼーっとしたり体がダルくなりがちです。
睡眠と覚醒を切り替える体温にも影響し、睡眠のリズムを崩す原因にも。
せっかくの朝を悪いコンディションから始めることになるので、もし眠さが残るようなら朝は頑張って起きて、代わりに昼寝(こちら参照)をするのがベストです。
4「朝食」が、一日のパフォーマンスを左右する
体内時計を地球時間に合わせることが生命力を上げる第一歩。そのために、朝起きたらまず太陽の光を網膜に入れ親時計をリセットするのでしたね。
これに加えて外せないのが、朝食を食べること。朝食を摂ることで、子時計をリセットできます。親時計と子時計が揃わないと、体はベストな働きをすることができません。
すなわち朝食を抜くと、「何かだるい」「何か調子が悪い」ということにもなりかねないのです。そういう意味でも朝食は一日の活力の源。必ず摂りましょう。
朝食を摂る時間がないとしたら、そもそものスケジュールが間違っています。こちらに戻って、いま一度スケジュールを組み直してください。
朝食抜きでどたばた出社しているようでは、仕事のパフォーマンスどころではありません。また朝食を抜くと、昼食を摂ったときの血糖値が急上昇します。
その結果、眠気やだるさに襲われ、午後のパフォーマンスが著しく落ちます。つまり、朝食をないがしろにすれば、一日中、冴えないあなたになってしまうのです。
私たちは子どものころから、「三食きちんと食べなさい」「規則正しく食べなさい」と言われて育ちました。
これは栄養面だけの問題ではなく、食事が体内時計を整えることに大きく寄与しているからです。
とくに、海外旅行に行くと実感できます。時差の多い国へのロングフライトになると、機内食を何度も提供されますね。
その機内食を出されるままに食べるのではなく、現地の到着時刻を計算し、それに合わせて調整して摂るようにすると時差ボケ(ジェットラグ)が軽くて済みます。逆に、出されるままに食べていると、体は「いったい今、何時なのか」がわからなくなってしまいます。
朝食を摂ったり摂らなかったり、時間もバラバラだったりしたら、この時差ボケと同様のことがあなたの体にも起きます。
体に「朝ですよ」と、きちんと毎朝同じ時刻に伝え、親時計、子時計全ての時計がオーケストラのようにピタッと合っている人と、それぞれの時計がバラバラに動いたままの人とでは、体調やパフォーマンスに差がついて当然ですよね。
5忙しい朝でも、簡単につくれて栄養が摂れる「時短メニュー」
食事内容については、朝も昼も夜も、以下の三つを柱に考えてください。
①タンパク質をしっかり(詳しくはこちら参照)②栄養バランスに気を付けて③①と②が可能な時短メニュー
セロトニンは、タンパク質に多く含まれる必須アミノ酸である「トリプトファン」と「ビタミンB6」、そして「炭水化物」の三つの栄養素が揃うことでつくられます(図3-1参照)。
この三つの栄養素が揃った上で、太陽の光を浴びたり散歩などのリズム運動をするとセロトニンがつくられ、夜になるとそれがメラトニンに変わり、睡眠の質がアップします。
だから、タンパク質を多く含む肉や魚、ビタミンを摂るための野菜類をバランスよく摂ってほしいのです。とはいえ、忙しいビジネスパーソンとしては、あまり難しいことは言っていられませんよね。
そこで、「時短メニュー」というわけです(図3-2参照)。とくに、朝は時短が大事。
たとえば、野菜がたくさん入ったお味噌汁に、肉や魚、卵などタンパク質を加えたものと白米があれば十分です。白米ではなく、玄米や分つき米(玄米を食べやすくしたもの)だとなお完璧。
玄米や分つき米には、ビタミンやミネラルが豊富に含まれ、これだけで炭水化物とビタミンB6を摂ることができます。今の炊飯器は優秀なので、玄米も白米と同じように簡単に炊けます。
私が愛用している炊飯器(酵素玄米Pro2)で酵素玄米を炊くと、炊き上がってから発酵を続け、3日間くらい炊飯器に入れっぱなしでもおいしく食べられます。
パンやパスタの場合は、小麦胚芽入りのものにすることでビタミンB6が摂れます。さらに、私はあらかじめ「だし入り味噌」をつくってストックしています。
「だし入り味噌」とは、味噌とだしを混ぜ合わせたもの。休日にまとめてつくっておけば、お湯を注ぐだけでおいしいお味噌汁のできあがりです。味噌は大事なタンパク質源で、トリプトファンも含まれています。
また、海苔やゴマ、乾燥ワカメなどの乾物類を重用し、冷蔵庫には納豆、梅干し、塩昆布、佃煮などもストックしてあります。
これらがあることで、時短を図りながらも、味・栄養面ともに優れた朝食が楽しめるのです。私は時短を徹底しており、たとえば、海苔もそのままご飯に振りかけられる「バラ干し」を愛用しています。
普通の焼き海苔だと、1枚ずつご飯に乗せる手間、それを箸でくるむ手間がかかりますから。
「バラ干し」が近所に売っていない場合は、刻み海苔、ちぎり海苔、もみ海苔など、小さく切ってあるものなら何でもいいと思います。
大事なのは継続です。とくに独身の人の場合、自分のためだけに朝食を用意するのは面倒に思いがちです。まずは材料を揃えること。そして前の晩から準備しておくなど、少しでもハードルが低くなる工夫をしてください。
それでも、これまでずっと朝食を摂ってこなかった人などにとって、いきなりの改革は難しいかもしれません。そんなときは、バナナ1本から始めてもいいでしょう。
バナナは唯一、単品でトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物の全てが入った食品です。なお、「朝から食欲が湧かない」という人は、前日の夕食の量が多いか、時間が遅いことが考えられます。それによって睡眠の質も下げていると予想されますから、夕食から改善しましょう。
6朝ご飯は「日光浴できる場所」で摂るのがベスト
午前中の日差しを効率よく浴びるには、朝食の時間は貴重です。「食べながら日光浴」を可能にするために、朝食を摂る場所を再考しましょう。
あなたの住居の中で、朝の日差しが最も入る場所を見つけ、その窓にくっつけられるくらいの場所にテーブルを移動し、可能ならば窓を開けて、そこでぬくぬくしながら朝食を摂ってください。
この「ぬくぬく」という感覚がとても大事。「気持ちいい」と感じながら、できれば30分くらいかけてゆっくり朝食を摂ってください。
この時間が、体内時計のリセットを確実なものにしてくれるだけでなく、あなたの心にとてつもない余裕を生み出してくれるでしょう。
温室にいるときのような、ふんわりしたぬくもりが得られる場がベスト。日差しが強すぎてまぶしいようなら、レースのカーテンを引くなど工夫してください。
ちなみに私の場合、以前はキッチンのテーブルで朝食を摂っていたのですが、20ルクスの日差ししか入らなかったため、東向きの窓のそばに小さなテーブルとイスをセットして、そこで朝食を食べるようにしました。
すると、窓を閉めたままでも日差しは400ルクスまでアップし、明るくてじんわり温かく、朝からとてつもなく幸せな気分で過ごせるようになりました(室内の照度はルクスメーター〈照度計〉を使って計ることができます。3000円前後で購入可)。
今度の休日に、時間をかけてあちこちにテーブルを移動しながら、気持ちのいい朝の日差しが得られる場を探してみてはいかがでしょう。
家にベランダがある人は、ベランダで朝食を摂れば、セロトニン分泌も確約されるので一石二鳥です。
7「通勤時間」は、セロトニンを分泌させる
絶好のチャンスここまで、太陽の日差しを浴びることでセロトニンの分泌が促進されることをお伝えしましたが、あなたは朝の通勤時間に日差しを浴びているでしょうか。ここで、典型的な一人のビジネスパーソンに登場してもらい検証してみましょう。
仮にA氏とします。A氏は、都心から1時間ほどの通勤時間を要する埼玉県内のマンションに住んでいます。毎朝6時に起き、トイレを済ますとシャワーを浴びて寝ぼけ眼をシャキッとさせるのが日課です。
その後、身支度を調えてからキッチンのテーブルでパンと牛乳程度の簡単な朝食を詰め込み、奥さんの運転する車で最寄り駅まで送ってもらいます。最寄り駅からはJRと地下鉄を乗り継ぎ、地下出口からすぐのところにあるオフィスに到着です。
人事部なのであまり外出する機会はなく、昼も愛妻弁当ゆえ基本的にオフィスで一日を過ごし、行きと逆のルートで自宅に戻ります。さて、A氏は一日の間にどの程度、太陽の日差しを浴びているでしょうか。答えはほとんどゼロです。
これではセロトニンが不足することは明らかですが、一日中照明の当てられた「明るい環境」で過ごしているため、まったく危機感を持てずにいるのです。
A氏を反面教師に、通勤スタイルを見直しましょう。午前中の日差しをたくさん浴びるために、通勤時間にも工夫できることはたくさんあります。真夏の猛暑日は例外として、基本的に通勤時に外を歩くときは日の当たるところを選びましょう(図3-3参照)。
道の両側に歩道があるような場合、信号を渡る手間をかけてでも、日が当たっているサイドを歩くようにします。また、信号待ちのときは、日向を探してそこにいましょう。
電車でも、なるべく光が入る窓際に立ちます。こうした日々のコツコツが大差を呼ぶのです。季節やその日の雲の動きによって日の当たる場所が変わるので、私はいつも一番明るいルートを探しながら歩いています。
また遠回りすることも想定して、10~15分早めに家を出ます。会社への道は一つではありません。最短距離で行く必要もありません。発想を切り替えて、いくつかのルートを開拓しましょう。
人工的な照明に慣れている現代人は太陽の気持ちよさに鈍感で、最初は「こんなのでいいのかどうか」と不安に思うかもしれません。
でも太陽の日差しを浴びるととても気持ちがいいので、やっているうちにだんだん「これか」とわかってくるはずです。
また「幸せ感」で言えば、背面で日差しを受けたとき、首の後ろや付け根がほんわか温かくなる瞬間があります。
外を歩いていてそんな場面に遭遇したら、臆せずそのままガードレールに座るふりをしたり、スマホを操作するふりをしてもいいので、しばらくその場にい続けて、太陽からのエネルギーを瞳で、体で、思いっきり吸収してください。
それだけで何とも幸せな気分になってきます。出勤途中にそんな気分になれたら、セロトニンがたくさん出るだけでなく、その日の仕事がうまくいくこと請け合いです。
さらに日差しを浴びながら自然と「太陽ってすごい」と思えるようになったら合格。コツをつかんだ証拠です。
なお、通勤時間には、太陽の日差しを浴びることに加え、ガムをかんだり、呼吸法を実践するとダブルの効果が期待できます。それぞれ、詳しくは後述しましょう。
8「5分ガムをかむ」だけでも、セロトニン効果が得られる
ここまでお伝えしてきたように、セロトニンは「太陽の光」を浴び、リズム運動、たとえば歩くことで分泌されます(セロトニンが分泌される前提として、食事でトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物を摂っておくことが必要です/こちら参照)。
他にセロトニンが分泌される方法として、「ガムをかむこと」が挙げられます。
日本ではまだあまり知られていませんが、ガムをかむことは「咀嚼」のリズム運動になるため、セロトニンが分泌されるのです。
通勤時間帯には、積極的にガムをかみましょう。ミント系の爽やかな味を選べば、エチケット上の効果も期待できるでしょう。
くり返しかむ、「咀嚼」という作業でセロトニンが分泌されることにより、プレッシャーやネガティブな気持ちを消去したり、集中力を養うことがわかっています。
アメリカの大リーグの選手などがベンチでよくガムをかんでいるのはそのためです。
なお、セロトニン研究の第一人者で脳科学者の有田秀穂先生の実験によると、ガムをかみ始めて5分するとセロトニンが出てくるそうです。
そして、30分もたつと血中セロトニン濃度が20%アップするとのこと。となれば、20~30分はかみ続けたいところです。
かみごたえがなくなってきたら新しく足すなど工夫をしてください。
私は、少しでも長持ちさせるために、粒ガムなら2~3個まとめて口に放り込んでいます。そしてガムが小さくなってきたら、もっと追加します。
通勤時、休憩時間などを利用してガムをかむと心が落ち着き、その後の仕事もはかどることが期待できます。
なお日本でガムをかむことは行儀が悪いと思われがちなので、マナーにはくれぐれも気をつけましょう。
かみ方としては、奥のほうの歯でゆっくりかめば音もしませんし、大人っぽく知的な表情も保てるはずです。
大きく顎を動かし、半分口を開けたような状態でくちゃくちゃかむと、周りに不快感を与えてしまいますのでご注意ください。
セロトニンは夜になると、快眠を呼ぶ「メラトニン」に変わります。良質な睡眠のためにも、日中、セロトニンをつくれるときにどんどんつくっておきましょう。
9「呼吸」を変えれば、自力でセロトニンをつくり出せる
ガムをかむのと同じくらい気楽にできるセロトニン分泌の方法として、「呼吸法」があります。呼吸法については、これまでも各分野で研究がなされ、いろいろ紹介されてきました。
どれも一理あると思いますが、睡眠の質を上げたり、仕事でパフォーマンスアップしたりするために私が最も信頼しているのが「三呼一吸法」です。
三呼一吸法は、藤田霊斎氏という僧侶が体系化した心身の鍛錬法「調和道」を継いだ、医師の村木弘昌先生が考案したものです。ふだん、私たちは横隔膜を動かす呼吸を行っていますが、三呼一吸法は腹筋を動かす腹式呼吸です。
腹筋の「リズム運動」になるのでセロトニンが分泌されるというわけです。
やり方は、その名の通り「3回吐いて1回吸う」(鼻から短く瞬発的に「フッフッ」と2回吐き、3回目の「フー」で息を吐き切って、鼻から大きく1回吸う)をくり返します(図3-4参照)。
吐くときには、お腹(丹田)のあたりを少しへこませるようにします。ただし、あまり力を入れすぎないこと。あくまで「気持ちいい」感覚を大切にしてください。
丹田をへこませるようにして「フッフッフー」と3回吐くと、ほとんどもう息は残っていない状態になります。その反動で大きく息を吸うため、結果的に多くの酸素が取り込めます。
また、呼吸のたびに横隔膜が上下し、お腹の静脈にある血液(体全体の血液の約70%を占めます)を心臓に力強く戻してくれるため、血行がよくなります。
たくさんの酸素が取り込める上に血行がよくなれば、それだけ栄養が体中に行き渡り、炭酸ガスなどの老廃物の回収も進みます。
ところが、お腹に力を入れすぎると、毛細血管が縮んでかえって血行が阻害されるので、ほどほどが大事になってくるのです。
このように、丹田に力が入る腹式呼吸をくり返すことは座禅に似た効果があり、心を落ち着かせ、自律神経の働きも改善してくれます。
現代のビジネスパーソンは交感神経が強くなりすぎています。血圧や心拍数も高めで、いつもイライラした状態に置かれがちです。
しかし、ここで紹介した三呼一吸法を行うことで、交感神経と副交感神経のバランスが整い、精神的にも安定します。
結果的に、眠りの質がよくなるだけでなく、難しいビジネスの案件に対しても「さあ、来い」と大きく構えることができ、慌てて失敗することが減ります。
そして、何より三呼一吸法が素晴らしいのは、セロトニンの分泌を促してくれること。私は、朝の通勤時にこの呼吸法を行っています。
というのも、この呼吸法に歩行などのリズム運動が加わると、余計にセロトニンが出やすくなるからです。
「腹式呼吸のリズム運動」と「歩行のリズム運動」、そして「太陽の光」を浴びることで、トリプルのセロトニン効果が期待できるわけです。
とはいえ、この呼吸はふだんの呼吸とは異なるので、長く行っていると疲れてきます。目安はだいたい5~30分。できる人は1時間ほど行ってももちろんOKですが、5~30分でも十分望ましい効果を得ることができます。
前述の有田先生いわく、呼吸を始めて5分くらいで、セロトニンが分泌され始めます。疲れてきたら、このセロトニンが出なくなった合図なので、そこでストップさせましょう。
最初はあまりできなくても、毎日行ううちに慣れてきて、そのうち20~30分できるようになるはずです。
前述したように、三呼一吸法を行うのは朝の通勤時間帯がおすすめですが、「人の行き交う道でこの呼吸法をしながら歩くのは恥ずかしい」という声も聞こえてきそうです。
しかし、気にする必要はありません。
そもそも歩道は車の走行音などもあり、早朝でもない限り、ある程度騒がしいもの。
通行する人も、考え事をしながら歩いている場合が多いでしょう。
それに、すれ違うとしても、ほんの1~2秒のことです。
実際に私は毎日この呼吸法をしながら歩いていますが、通行者から変な顔をされたり注目されたりしたことは一度もありません。
信号待ちの際もこの呼吸法を続けていますが、同様です。
太陽の光を浴びるためにあえて日向に立っているのですが、多くの人は日陰に立っているので、距離が離れていることもあるかもしれません。
人は自分のことは気になりますが、他人のことはそこまで気にはしていないものなのです。
通勤時間を活用した呼吸法一つで体調がよくなり、メンタルも安定して、夜もぐっすり眠れるようになるのですから、これほど効率のよい方法はないと言えるでしょう。
状況が許せば、この三呼一吸法の代わりに、鼻歌を歌うのもおすすめです。すると自然と腹式呼吸になります。
出勤の道すがら、外出先への移動中、家事をしているときなど、歌ったり、ハミングしたりする時間を見つけて行いましょう。これらも三呼一吸法と同じく5分以上継続して行うことで、セロトニンが分泌され始めます。
COLUMN3セロトニンが出ている合図の見分け方
あなたはセロトニンを十分に分泌できているでしょうか。
こちらのチェックシートにある内容は、いずれもセロトニンが足りていないときに起こり得る症状です。二つ以上当てはまることがあれば、私と一緒に「セロトニン生活」を始めましょう。
これまでお伝えしてきた通り、セロトニンの分泌量を増やすには、太陽の日差しを積極的に浴びることに加え、ガムを上手に利用したり、呼吸法を取り入れることが有効です。
すると日中のパフォーマンスがアップし、夜にぐっすり眠れるようになります。5~30分行うと効果が出ることが実験でわかっているため、まずはトライしてみてください。
効果は数値として目に見えるものではないので、最初は半信半疑になるかもしれません。
そこで参考までに、私がセロトニン生活を習慣化させた過程をお伝えします。
まずは太陽の日差しに慣れるところからスタートしました。それまで「美白」のため日差しを避けてきましたが、部屋の一番明るい場所を探し、そこにテーブルとイスを移動。そこで日差しを浴びながら朝食を摂るようにしました。
空の表情を見ながら食事をしていると心が洗われ、素直でゆったりとした気持ちになることがわかりました。日差しの強い日は、この上なく幸せな気持ちで満たされるようになったのも大きな変化です。
こうして朝食を家の一番明るい場所で摂るようになって数週間で太陽の日差しが心地よくなり、「毎日浴びたい」と思えるようになりました。
それと並行して通勤時、移動時などはとにかく日向を探して歩くようにしました(日向+歩行のリズム運動でダブルのセロトニン効果)。
朝食と通勤を通じて太陽の気持ちよさを体感できるようになったので、次は朝の通勤時間に腹式呼吸法(三呼一吸法)を加えることに挑戦(日向+歩行のリズム運動+腹式呼吸法のリズム運動でトリプルのセロトニン効果)。
ところが、ここでスランプが到来します。
太陽の光だけ浴びている分には最高だったのですが、もともと呼吸が浅く肺活量も少ない私は、三呼一吸法の「息をたくさん吐く」ことに慣れておらず、最初の数週間は苦戦しました。
正直、最初は苦しくて1分もできなかったのですが、嫌でも、5分もできなくても、とにかく毎日続けました(運動経験がある人や肺活量の多い人は、もっと簡単に習慣化できるはずです)。1ヵ月ほどたつと、だんだん辛さが軽減し始めました。さらに1週間、2週間と続けていくと、楽しめるようになっていったのです。
そんなある朝、最寄りの駅に着いて偶然「ものすごく生き生きと輝いている」女性の姿が目に飛び込んできました。
好奇心から思わず二度見したら……なんと、鏡に映った自分ではありませんか!あれほど輝いてオーラのある自分の顔を見たのははじめてだったので、われながらびっくり&にんまり。
「これは本物だ」と確信しました。
おそらく、セロトニンが与えてくれる「頭がスッキリする」+「前向きで幸せな気分になる」+「顔の表情が引き締まる」+「姿勢がピシッとする」といった作用が私の見た目を驚くほど変えてくれたのだと思います。
この経験から私は今、「輝いている人」の一つの型として「セロトニンが十分に分泌されている」が成立するのではないかと仮説を立てています。
そして、セロトニンを分泌させるための行動とその結果の答え合わせをするために、駅に着いたら必ず鏡を見るようにしています。鏡はいつも、正直です。
こうして急激にセロトニンづくりにハマり始めた私は、日中、とにかく日差しを探すことに意識を向けるようになりました。
朝の通勤時はもちろん、昼休みなど時間を見つけては三呼一吸法をしながら散歩してトリプルのセロトニン効果を狙ったり、歌やハミングを組み合わせたりして、熱心にセロトニンをつくるようになりました。
その結果、日中は元気になってパフォーマンスが上がり、夜はぐっすり眠れるように。
本書で述べているセロトニンの効果を毎日実感しています。このようにセロトニンを増やす生活を心掛けて3ヵ月くらいたつと、「セロトニン神経」が強くなっていきます。すると、感度が高くなって、同じことをしていてもセロトニンが出やすい体質に変わり始めます。ここまできたらしめたもの。
実践すれば実践するほどセロトニンが分泌されるのが感じられ、頭はクリアに、幸せ気分が高まり、元気になって、楽しいのでもっとセロトニンをつくりたくなり、さらにセロトニン神経が強化されるというプラスのスパイラルに入ります。
また日中のパフォーマンスアップに嬉しい効果が持続するのは1時間程度です。
だからたとえば通勤で「日向+歩行のリズム運動+腹式呼吸法のリズム運動」、昼休みに「日向+ガム+歩行のリズム運動」など、どんな組み合わせでもいいので、こまめにセロトニンをつくるようにしましょう。
最初はピンとこないかもしれません。でも、数日続けたくらいで投げ出さず、楽しくできそうなことから取り組みましょう。
自分の心と体の変化を観察しながら毎日続けていけば、前述のようにさまざまな嬉しい合図が見て取れ、セロトニンの分泌能力が向上している実感が得られます。健康で、「いろいろあるけど、幸せだな」と思えて、自分が本来持っている力を出したいときに出せる。
今まで切望しながらなかなか手に入らなかったこれらの能力は、セロトニンを意識的につくることによって簡単に手に入れることができました。少しでも自分の人生を向上させることに興味がある人は、ぜひ、セロトニンづくりを毎日の優先事項にしてください。
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