はじめに職場の人間関係がリスクになっている時代の上手なコミュニケーション法「仕事で上司や先輩と意見が食い違う」「地位がある人からのプレッシャー、理不尽がつらい」「世代間ギャップを感じる」「陰口やグチを言う人にストレスを感じる」「仕事の進行をストップさせる人がいる」「同じ職場に心を許せる人がいない。
気軽に相談できる人がいない」……など、企業や教育現場の研修を通して、多くのビジネスパーソンと関わる中で、一番多く相談を受けてきたのが「職場の人間関係についての悩み」でした。
その悩みの根底には、必ずと言っていいほど、その人の「自己肯定感」が影響していました。
職場という特殊な環境の中では、攻撃してくる人、苦手と感じる人など、離れたくても離れられない人、わかりあえない人ともコミュニケーションは取らなくてはいけません。
また、ちょっとしたことがパワハラ、セクハラ、モラハラとなり、コミュニケーションを取ることがリスクとなっている現実もあります。
本書は、企業・組織で働くあなたが、今の職場で、人間関係の悩みをいかに減らしていけばいいのか、そのカギとなる「自己肯定感を高めるための方法をお伝えする本」です。
実際に相談が多かった事例に対して、なるべく具体的に解決法を示し、実践的に使えるものとなっています。
◉なぜ、自己肯定感を高めると、職場の人間関係が良好になるのか?自己肯定感が低いと人間関係の悩みは深くなりますが、「自己肯定感」という言葉が広く知られるようになったのはごく最近です。
「人間関係の悩み」はこれまでいつの時代にもありましたが、そこを改善していくために必要な「自己肯定感」について、正しく「学んだこと」のある人は少ないのではないでしょうか。
自己肯定感についての知識を学ぶ人も増えてきましたが、「自己肯定感が重要だとわかっていても、何から始めていいかわからない」「何を学んでいいかわからない」と、なかなか動き出せない人も多くいらっしゃいます。
本書は、そんな人のために、一番身近でイメージしやすい「人間関係の悩み」を改善することに焦点を当てました。
「自己肯定感」は人生の土台となり、人間関係や仕事、自己実現など、人生の質を左右するあらゆる領域に影響を与えます。
どの領域の悩みも、自己肯定感を高めることで改善されます。
自己肯定感とは、「ありのままの自分を、かけがえのない存在として、好意的・肯定的に受け止める感覚」のことです。
自己肯定感が低い人は、自分が満たされていないので、当然、他者に優しくすることができません。
また、自己肯定感が低いと、他者からのちょっとした攻撃や、行き違いで、心が折れてしまうのです。
また、すぐにイライラしたり、クヨクヨした気持ちにもなりやすく、感情が乱れるのです。
後にご説明していますが、人生を進む上で、人生を車に例えると、車のエンジンの役割を担っているのが「自己肯定感」です。
エンジンが大きく、馬力があれば、車はどんな道でも軽快に進んでいけます。
しかし、エンジンが小さく、自己肯定感が低い状態では、スムーズに人生を進むことができません。
自己肯定感は、本書でご紹介するステップを踏めば必ず高めることができます。
◉絶対的自己肯定感には、根拠がなくてもいい!自己肯定感には、「社会的自己肯定感」と「絶対的自己肯定感」の2種類があります。
社会的自己肯定感とは、他者からの評価や相対的評価から生まれる自己肯定感。
絶対的自己肯定感とは、「自分で自分の存在価値を認めてあげること」で生まれる自己肯定感です。
どちらも大切なものですが、まずは絶対的自己肯定感を持ってください。
これがあれば、大抵のことは乗り越えていけます。
仕事の結果や実績はすぐにはつくれません。
自分以外の要素も大きく影響する社会的自己肯定感は、なかなか思い通りにコントロールできないため、これに頼って生きていると、人の心は折れやすく、もろくなります。
絶対的自己肯定感は、誰もが、今すぐに高めることができます。
なぜなら、絶対的自己肯定感は、根拠が必要ないからです。
それは、ありのままの自分にただただ価値を与えることなのです。
本書では、その方法を丁寧にご説明します。
◉25、2013年に一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会を設立して、現在、企業や教育現場で、研修、講演、個人向けの講座を通して、自己肯定感の重要性を広める活動を行なっています。
「自己肯定感」はセルフエスティームが語源です。
最近では、中学生の道徳の教科書にも、自己肯定感について執筆させていただきました。
私はこれまで、25年間探求してきた自己肯定感の知見に基づき、2万人を超える人々にその向上のためのノウハウをお伝えしてきましたが、本書では、その経験の中から再現性のある人間関係に有効なものを抜粋しています。
◉もともと自己肯定感が低い人はいない人生100年時代といわれ、健康寿命が80年といわれる社会で、一番多く過ごす職場での人間関係は、あなたの人生の質を左右していきます。
個々の価値観が多様化している現代において、「自己肯定感」が持てていないと、自分を見失い、人間関係の悩みはふくらむばかりです。
いかにすれば、自分をしっかり支えながら、他者との良好な関係を築いていけるのでしょうか。
本書では、この問いに対して、真正面から向き合い、「自己肯定感」についての理解を深めます。
自己肯定感を高めることは、本来のあなたの力を取り戻すこと。
生まれながらにして、自己肯定感が低い人はいません。
もし今、自己肯定感が低いと感じている人であっても、これまで育った環境や、様々な理由で、自信を失い、自己肯定感を持てずにきてしまっただけです。
自己肯定感は、高めるスキルを身につければ、誰もがいつからでも挽回できます。
本書には、自己肯定感を高めるために、ぜひ参考にしていただきたい、原理原則となる考え方がちりばめられています。
絶対的自己肯定感を高めるためのシンプルな5つのステップ、そして、事例とともに他人のタイプ別、仕事のシーン別で、自己肯定感を下げず、コミュニケーションを良好にする方法をご紹介しています。
これらを参考にしながら、あなた自身の自己肯定感を高めていただけることを願っています。
職場の人間関係は自己肯定感が9割もくじはじめに本書の構成第1章なぜ、自己肯定感を高めると職場の人間関係が好転するのか?~自分自身との関係性が、他人とのコミュニケーションに影響を与える~自己肯定感が人間関係の質を決めてしまう?「コミュニケーションがリスクになる」時代の自分の守り方ビジネスパーソンが抱えるストレスの1位、2位は人間関係なぜ、自己肯定感を高めることで、職場の人間関係は良好になるのか?「自己肯定感」とは、車のエンジン!米・中・韓と日本の自己肯定感の比較自分自身との良好な関係が、他者との良い関係の土台になる隣の席を向くのもイヤ!エースのスランプの原因は、年上部下だった「自分が自分をどう思うか=他者からの評価」だと思い込んでいないか?25年間、のべ2万人への指導からわかったこと◇第1章ポイント
自己肯定感が人間関係の質を決めてしまう?「すべての悩みは対人関係の悩みである」と、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と言われているアルフレッド・アドラーは断言しています。
さらに、アドラーは、「仕事における失敗の90%は、知識や経験が足りないからではなく、そこに人間関係が築けないことが原因である」とも述べています。
「相手に、どう思われるか?」「どう、評価されているか?」が気になり、他者から思うような評価を得られないと、「自分はダメなのではないか」と不安になってしまうことは誰にでもあります。
また、相手から期待通りの反応が返ってこないと、「自分に悪い印象を持っているのではないか」と悩むものです。
職場でそりが合わない人がいると、ストレスを感じるようにもなります。
人との関わりの中で生まれる悩みは、誰もが抱えやすいものです。
企業研修をすると、職場の人間関係に悩んでいる人が多いことに驚かされますが、そこがうまくいくようになると、仕事への意欲は高まり、メンタルヘルスも向上します。
実は、対人関係の悩みをつくり出す最大の原因は自分との関係が良好でないからです。
自分との関係が良好かどうかは、自分が自分をどう思うかという「自己肯定感」が高いか低いかによります。
自分を肯定的に、好意的に認められる、自己肯定感が高い状態だと、それがそのまま対人関係にいい影響を及ぼし、他者との関係も良好に築けるようになります。
そこで、本書では「自己肯定感を自ら高めることで、職場での人間関係を良好にするための方法」をご紹介していきます。
「コミュニケーションがリスクになる」時代の自分の守り方あなたは、会社の上司や部下、同僚とのコミュニケーションを、職場以外で取ることがありますか。
昔のように上司が部下を誘って飲みに行ったり、仕事の後に同僚同士で飲みに行くことが少なくなっています。
それはいい悪いの問題ではなく、職場の外で、仕事で困っていることを気軽に相談したり、お互いを知る機会が減っているということです。
プライバシー重視の観点から、一歩踏み込んだコミュニケーションを取ろうとすると詮索だととられかねない時代です。
パワハラやセクハラ、モラハラが社会問題として、取り上げられることも増えました。
現在、職場やそれ以外の場所で、コミュニケーションを取らないことが自分を守る術となり、他者と関わること自体がリスクとなる状況があります。
電話や直接会って話すことが減り、SNSやメールでコミュニケーションを取ることが増えています。
便利で簡単にコミュニケーションが取れるという反面、様々な悩みが生まれやすくなりました。
パソコンやスマホ上のコミュニケーションでは、対面では言えないことも容易に言えてしまうため、言い過ぎたり、強く主張し過ぎてしまい、相手にきつい印象を与えるということが起こります。
また、文字だけの情報では感情が伝わりにくく、言葉足らずで誤解を生み、ちょっとした言葉の行き違いから、人間関係を悪くしてしまうことも起きています。
一度、関係が壊れてしまうと、なかなか元通りにはなりません。
ここで相手に心を開き、関係を修復していく働きかけができればいいのですが、それがなかなかできないと、職場でたったひとりの人と関係がうまくいかなくなっただけで、気分は優れなくなります。
人間関係の悩みは、深くなると仕事への意欲にも影響します。
それが続くと会社に行く足取りは重くなり、仕事だけではなく生活にも悪影響を及ぼしかねません。
人間関係の悩みは、相手をどうにかできれば改善できると思いがちですが、決してそうはなりません。
なぜなら、「自己肯定感」が低いままでは、どうしても自分や他者を否定的に見る傾向が強くなるからです。
そのため、他者からも否定的に見られていると感じやすくなり、根本的な悩みの解決に至らないのです。
人間関係はすべて、自分との関係が土台となるため、自分との関係が良好でない自己肯定感が低い状態だと、様々な問題を抱えやすくなります。
コミュニケーションがリスクとなりかねない現代社会において、他者と良好な関係を築くために非常に重要なのが、自己肯定感を高めることなのです。
ビジネスパーソンが抱えるストレスの1位、2位は人間関係職場で人間関係がうまくいかないと、どうなるでしょうか。
中にはひとりで完結する仕事もありますが、多くの仕事は職場の仲間と連携をしながら取り組みます。
人間関係がうまくいかなくなると、チームワークは崩れ、仕事の連携や業務に支障が出ます。
すると、当然成果にも影響してきます。
アメリカのギャラップ社が2017年に発表した調査結果によると、世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査で、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%でした。
これはアメリカの32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスです。
さらに、企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%という結果が出ました。
(日本経済新聞2017年5月26日紙面より)この調査からすべてを推し量ることはできないとしても、日本では職場に不満を抱えて、仕事にやりがいを感じない人が増えていることを知ることができます。
次に、「その要因となるものがなんなのか」を知るための参考になる調査があります。
20~59歳の有識者1000人を対象に「2018年ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査」が、チューリッヒ生命によって行なわれました。
その中で、「勤務先でどの程度ストレスを感じているか」を聞いたところ、「非常にストレスを感じている」「ややストレスを感じている」という回答を合わせると、男性では71・6%、女性では75・2%と、7割以上の人が日々ストレスを感じていることがわかりました。
そこで原因になっていることを聞くと、1位は「上司との人間関係」、2位は「同僚との関係」、続いて「仕事の内容」、「仕事量が多い」、「福利厚生などの待遇面」となりました。
(2018年5月16日マイナビニュースより)この調査結果からも、職場での一番のストレス原因は、「人間関係」であることが示されました。
多くの人が人間関係に悩んでいるのです。
それが職場での不満やストレスになり、働く人の仕事への意欲(エンゲージメント)にも影響を与えていると考えられます。
これが深刻化すると、うつなどのメンタル不調といった症状を引き起こしかねません。
なぜ、自己肯定感を高めることで、職場の人間関係は良好になるのか?「セルフエスティーム(自己肯定感)は組織におけるすべての人間関係の中心である」と、ウィル・シュッツは著書『自己と組織の創造学(THEHUMANELEMENTProductivity,SelfEsteem,andtheBottomLine)』(春秋社)で述べています。
「チームワークの問題は、メンバーの違いから起こるのではなく、個々のセルフエスティーム(自己肯定感)の低さに由来しており、それがチームの中で柔軟性のなさや防衛を引き起こす」というのです。
ここでいう「チームワークの問題」とは、そのままチーム内の人間関係の問題を指していますが、それは、組織を構成する一人ひとりが、自己肯定感を高めることで解消していくことができます。
さらに、シュッツは、「他の人との人間関係は、主に私が自分自身に関してどう思っているかによる」「私自身が自分を重要だと思えれば、他者も私に肯定的なフィードバックを与える」とも述べています。
このことからも、人との関係は「自分が自分をどう思うか」という、自分との関係が土台となることがわかります。
自己肯定感が高く、自分や自分のあり方に対して肯定的、好意的であれば、他者に対しても自分が自分に対して感じるように、肯定的、好意的に見ることができるのです。
すると、相手の言動も肯定的に受け止められるので、人間関係は良好になります。
一方、自己肯定感が低く、自分に対して、否定的、批判的であれば、他者に対しても、自分が自分に対して感じているように、否定的、批判的に見てしまうので、他者からも否定や批判をされていると感じやすくなります。
すると、相手の批判から自分を守るために、保身的になり、それが人間関係を悪化させてしまうのです。
自分を肯定的、好意的に見られていないとしたら、「自己肯定感」は低くなってしまって当然です。
人間関係がうまくいかないと悩んでいる人は、そこに気づけると、自分との関係性を見直して自己肯定感を高めることができます。
つまり、多くの問題が解消していくのです。
「自己肯定感」とは、車のエンジン!自己肯定感とは、「自分の存在そのものを認める感覚」であり、「ありのままの自分をかけがえのない存在として肯定的、好意的に受け止めることができる感覚」のことです。
「自分が自分をどう思うか」という自己認識が自己肯定感を決定づけています。
では、自己肯定感が高いと、どういったメリットがあるのでしょうか。
自己肯定感は、人生のあらゆる領域の土台となるものです。
その領域とは、人間関係や仕事、パートナーシップや結婚、自己実現や健康面など、自分の人生を豊かで満足のいくものに感じられるかどうかを左右する、幸福に大きく影響している部分です。
車にたとえるとわかりやすいでしょう。
あなたの人生を「車」にたとえると、車のエンジンにあたるものが「自己肯定感」です。
運転席に座るのはあなたです。
車の馬力はエンジンの大きさで決まります。
自己肯定感が低いと、エンジンが小さな車で進んでいるようなもので、平坦な道は問題なく走れますが、馬力は弱いので、重い荷物を乗せたり、上り坂になるとスピードが減速してしまいます。
重い荷物や上り坂とは、人生で問題や困難に直面したときです。
逆に、自己肯定感が高いと、エンジンが大きく馬力がある車で進んでいるので、たとえ重い荷物を積んでも、上り坂という困難や問題に直面しても、それを乗り越えてスムーズに進んで行けます。
車の「4つの車輪」に当たる部分を、あなたの人生の豊かさや幸福の質を決める、大事な領域の一つひとつと考えてみましょう。
たとえば、そこにはどんなものが当てはまるのでしょうか。
4つの車輪は「人間関係」「仕事」「自己実現」「健康」だとしましょう。
それぞれの領域で満足のいくものを得られるかどうかは、「自己肯定感」というエンジンの大きさにかかっているのです。
人生のエンジンとなる「自己肯定感」が高まると、エンジンの馬力は強くなり4つの車輪を動かす力が大きくなります。
日々生きている中で、楽しそうに人生を歩んでいる人、自分の能力が発揮できて仕事で成果を上げている人、人間関係が良好で自分の望みや夢を次々と実現している人は、置かれた環境や能力以前に、「自己肯定感」という土台がしっかりしているのです。
◉「これが自分だ」と思える人は強い!では、自己肯定感はどうすれば持てるようになるのでしょうか。
最初に自己肯定感が育まれるのは、子ども時代の親や養育者からの働きかけです。
子どもは親や養育者から無条件に受け入れられることで、自分の存在価値を感じられ、自分を尊重して大切な存在として認められるようになります。
このように幼少期に親や養育者の愛情によって、自分のそのままを受け止めてもらえると子どもは、自分の長所や強みなどのいい面だけではなく、短所や弱さ、ダメな所も含めた、「自分」を受け止め、自分らしさや個性を受容し、肯定できるようになるのです。
とは言え、自己肯定感は、大人になってから自分自身で高めることができるので安心してください。
米・中・韓と日本の自己肯定感の比較日本の子どもたちの自己肯定感が諸外国に比べて低い傾向にあるという調査結果が、2014年内閣府の「子供若者白書」で指摘されていました。
ここで、2017年3月に発表された国立青少年教育振興機構による日本、米国、中国、韓国の4カ国比較「高校生の心と体の健康に関する意識調査」の報告書の内容を一部見てみましょう。
「自己肯定感」の項目では、7年前の2010年に比べると、数値は高くなっているものの、依然として日本はどの項目とも数値が一番低く、とりわけ〝私は価値がある人間だと思う〟と〝今の自分に満足している〟では、他国との数値の開きが顕著であると指摘されています。
高校生という思春期、謙遜や照れも入っていると考えてそれを差し引いても、低い結果と言えるのではないでしょうか。
この調査では「子どもの自己肯定感を高めるには、家庭での親の関わりが大きく影響し、学校で教師が子どもにどう関わるかが非常に重要である」と示されました。
小学4年生から高校2年生までの日本における他の意識調査では、学年が上がるにつれて、自己肯定感が低くなる傾向が出ています。
では、大人の自己肯定感はどうでしょうか。
残念ながら大人の自己肯定感を調査したものはこれまでありません。
しかし、子どもの年齢が上がるにつれて、自己肯定感が低くなる傾向が見られる中で、大人になっていきなり高くなるとは考えにくいでしょう。
自己肯定感の土台は、子どものときの親や養育者からの愛情ある働きかけがベースになりますが、すべての人が親や養育者から十分な愛情と健全な働きかけをされて大人になってはいません。
なぜなら、あなたの親も含めて、ほとんどの人は、自己肯定感の知識がないまま、それが人生にどう影響するかも含めて、誰からも教えられずに大人になっているからです。
しかし、多くの大人がそうであるように、子どもの頃から十分に自己肯定感を育めずにきたとしても、それで人生が決まってしまうわけではありません。
なぜなら、たとえ様々な要因で、自己肯定感が低いまま大人になったとしても、自己肯定感を高める方法を知ることができれば、誰もがいつからでも自らの手で高められるからです。
自己肯定感は、いつからでも挽回が可能なのです。
自分自身との良好な関係が、他者との良い関係の土台になる人間関係を良好にするには、自分との関係を良好にすることが重要であるとお伝えしてきました。
では、「自分との関係が良好でない」とはどのような状態なのでしょうか。
それは、自分に好意的になれず、どちらかというと批判的、否定的で、自分を信頼できていない状態です。
その状態が心や行動に表れてしまうと、そのまま他者との関係に投影されてしまうために、他者から批判的、否定的に見られるのではないかと不安になります。
この状態では、安心して相手と関わることができないばかりか、相手もあなたと安心して関わることができません。
常に他者から「どう思われるか」を気にしてしまうことになり、主体性が低く不安や恐れからのコミュニケーションになってしまうのです。
これは、自己肯定感が低い状態です。
次に、「自分との関係が良好である」とは、どのような状態を言うのでしょうか。
それは、自分に好意的で、肯定的であり、自分を信頼し、安心感を持っている状態です。
その状態が心や行動に表れることで、他者に対しても好意的で、肯定的になれるのです。
これが自己肯定感の高い状態であり、他者との関係を良好にしていく基盤になるのです。
すると、他者からどう思われるかを気にすることなく、主体性を持って安心して自分らしく相手と関わることができます。
そのため、相手も安心してあなたと関われるのです。
このように「自分との関係を良好にすること」が人との関係をつくる基本となります。
それが、あなたの人生をあらゆる面で好転させていくカギとなるのです。
隣の席を向くのもイヤ!ここで、職場の人間関係がうまくいかないと相談に来られた2人のお話をご紹介します。
この2人の悩みにも、自己肯定感が影響していました。
Aさんは、隣の席の男性Bさんのことで悩んでいました。
彼がやたらとプライベートについて聞いてくることが嫌で、話しかけられても、彼のほうに顔を向けられなくなり、そのせいで肩が凝り、片側に首を回せなくなるほどでした。
Aさんのストレスはピークになり、なんとかしたいと相談に来られたのです。
Bさんから、「なぜ結婚しないの?」「派遣社員で働いているのには、何か理由があるの?」と聞かれたことが発端で、Aさんは彼を避けるようになったのです。
彼女を心理的に追いつめることになったのは、隣のBさんの言動というよりも、彼の言葉を自分への嫌がらせだと受け止めてしまった、Aさんの自己肯定感の低さが要因として考えられました。
正社員ではなく、結婚をしていない自分に引け目を感じていたことが、自信を失わせ自己肯定感を下げていたのです。
そんなAさんにとってBさんは、自分の自信がない部分を責め、自分の引け目に感じる部分を思い知らされる相手でした。
それが彼女を心理的に追いつめて、逃げ場を失わせていたのです。
Bさんから話しかけられると、Aさんの体はこわばり、心理的な苦痛はピークになっていました。
彼に対して嫌悪を感じながらも、彼女は相手の一挙一動が気になり、神経をすり減らしていたのです。
しかし、AさんとBさんのやりとりを客観的に見ていくと、隣の席の彼は彼女に嫌がらせや意地悪をしているようには考えにくかったのです。
そこで私は、Bさんに対する見方を変えてみることを提案しました。
見方を変えるとはどういうことでしょうか。
それは、それまでの否定的な受け止め方や決めつけを和らげ、違う視点から相手を見ていくというものでした。
◉1日ひとつでもいいから……Aさんは、隣の席のBさんに対して、「詮索ばかりする」「なんでも首を突っ込んでくる」、だから嫌だ、と感情的に決めつけていました。
彼女は自分が一番触れられたくない部分に、こちらの気持ちにおかまいなしに土足で踏み込んでくるBさんを、自分を攻撃する人だと認識していました。
そんな、彼から自分を必死で守ろうとしていたのです。
そこで、それまで彼女が見ようとしていなかった彼の性質や要素には、どんなところがあるか、彼はどんな人なのか、という客観的な視点で見ていくことをアドバイスしました。
私たちは、感情が生まれたとき、その感情を正当化する見方で物事を捉える傾向があります。
Aさんは、「嫌だ、嫌だ」と思っていたBさんの良い面を探すことに、かなり抵抗があったようですが、「1日ひとつでもいいから」と伝えて実践してもらいました。
すると、時間はかかりましたが少しずつBさんのいい面が出てきました。
Bさんのいい面は、「お客さんの電話に丁寧に応対している」「後輩の面倒をよくみている」「他の社員の人と冗談を言い合う明るい性格」「みんなから慕われている」「誰に対しても、自分からあいさつをしている」「よく笑っている」というように、自分が目を向けていなかった面に気づきました。
いい面が見つけられるようになると、不思議なことに彼女の彼に対する感情が少しずつ変わっていきました。
やがてBさんを避ける気持ちが減り、苦痛も軽減して、自然に会話ができるようになっていったのです。
Aさんは、自分が引け目に感じていた部分を、自分のダメな部分だと否定的に見ていたので、周りの人もその部分を「ダメだと思っている」「否定している」と感じていたことに気づきました。
そのために、そこを話題にされると、自己価値が脅かされると感じ、過敏に反応してしまったのです。
Aさんは、隣の席のBさんに苦痛を与えられていたと思っていましたが、実は自分のものの見方や相手に対する言動の受け止め方が、自分の問題をつくり出して人間関係を複雑にしていたことに気づいたのです。
その後、Aさんは「自己肯定感」を高めるトレーニングを継続したことで、自分に対する捉え方が変わり、対人関係の問題が大幅に改善されていきました。
エースのスランプの原因は、年上部下だったHさんは、仕事で成果を上げ部長に昇進しましたが、配属された部署で部下との関係に悩んでいました。
周りは自分よりも年上の部下ばかりです。
Hさんは、自信満々で能力が高く、ひとりでなんでもこなすタイプでした。
これまで、仕事ぶりも評価されてきたのですが、部長になり年上の部下たちとのコミュニケーションに苦慮しはじめると、仕事が思うようにいかなくなっていったのです。
配属されて少し経ったときのこと、彼が自分の机に戻ると、部内のみんなのおしゃべりが止まり、シーンと静まり返ったそうです。
そんな状態が何度か続くと、「自分はみんなに受け入れられていない」、「自分は避けられている」と感じるようになりました。
当初から「年が若い自分が部長になったら、年上の部下はいい気がしないだろう、自分は歓迎されないかもしれない」という感覚を持っていたと言います。
その思いが現実のものとなり、Hさんはどんどん自信をなくしていきました。
そうなると、部下とコミュニケーションを取ろうとしても、ますますぎこちなくなり、彼にとって職場にいることは苦痛以外の何ものでもなくなりました。
あるとき、部内でみんなが飲みに行こうと話している場面に出くわしました。
Hさんは誘われず、「自分も仲間に入れて」と言うこともできずに、辛かったそうです。
部長になる前は飛ぶ鳥を落とす勢いで、大きな売上を上げ続け、仕事が楽しくてしかたがなかったHさんでしたが、新しい職場で疎外感を抱くようになると、自分からコミュニケーションが取れなくなりました。
なんとかしたいという思いがありながらも、傷つきたくないという思いから、朝、会社に着くまでに、心のシャッターを下ろし、完全に防御態勢で職場に入ったと言います。
それが、誰も寄せつけない雰囲気をつくり、部下からのコミュニケーションもシャットアウトしました。
そのような状態の日々が続くと、今までうまくいっていた取引先との関係もうまくいかなくなり、業務にも支障が出るようになりました。
経営陣は部長になるまで、業績のいい彼を高く評価していました。
Hさんは頑張って結果を出していたときは自信満々でしたが、部長になり環境が変わると、部内で協力して売上を伸ばすことができなくなり、自信はもろくも崩れ去っていったのです。
そんな状況が彼を追いつめていきました。
Hさんの自信を支えていたのは、仕事の成果や上司からの評価でした。
その支えがなくなると、一気に自己価値が保てなくなったのです。
お話を聞いていくと、Hさんは、「何かが優れている」「何かで成果を上げている」と思える部分があるからこそ、自分に自信が持てると思っていました。
彼の自信を支えていたものは、外的要因に左右されるものだったので、状況が変わるたびに、自信が持てたり、持てなかったりを繰り返していたのです。
そこで、Hさんには、本書でこれからご紹介していくメソッドである、自分との関係を見直し、状況や条件に左右されることのない「土台となる自己肯定感」を高める方法を試してもらいました。
自己肯定感が持てれば、うまくいかないときや失敗に直面したときであっても、過剰に自己否定せずに、自己価値を保つことができるようになるからです。
この方法を行なうと、Hさんは3カ月が過ぎた頃には土台となる自己肯定感が高まりました。
部下に自分から声をかけられるようになり、自分からコミュニケーションが取れるようになったのです。
彼自身が自分との関係を見直すことで、周りとの関係が見違えるほど良くなりました。
さらに、自分の部署の良い点を探せるようになり、部下の良い所を見つけ、それを伝えられるまでになりました。
Hさん自身の自己肯定感が高まったことで、職場での疎外感や、年下上司という負い目からも解放され、人間関係はみるみる良くなっていったのです。
「自分が自分をどう思うか=他者からの評価」だと思い込んでいないか?人は、自分との関係をベースに、他者との関係をつくり出していきます。
自分をどう思うか、どう見ているかが、そのフィルターを通して、「他者をどう思うか、どう見るか」になり、「自分が他者からどう思われているか」を感じるベースをつくります。
「自分を認められない」、「自分を受け入れられない」、「自分を信じられない」という感覚を持っている人は、どうしても他者からもそう思われていると感じやすくなります。
自分が自分に対して持っている思いを、他者も同じように自分に対して思っていると考えてしまうためです。
自己評価が低いと、自分や周りを否定的に見やすく、周りからも否定的に見られていると感じやすくなるため、なかなか人間関係を良好に保つことができません。
「人からどう思われるかが常に気になる」「自分は嫌われているのではないか」と感じやすい人ほど、自己評価を他者に委ねています。
自己肯定感が低い人ほど、その傾向が見られます。
そのような人は、周りからどんなに評価されても、自分が自分をどう思うか以上の他者からの評価を受け取れません。
他者からの肯定的な評価をそのまま受け取れるようにするには、「自分が自分を肯定的に見ているか」を検証することが大切です。
そのためにも、自分に対する否定的な思い込みや自己イメージを取り去って自己肯定感を高めることが必要なのです。
25年間、のべ2万人への指導からわかったこと私は、人が生きていく上で一番大切な感覚である「自己肯定感(セルフエスティーム)を企業や教育現場をはじめ、家庭に広く普及する活動を行なっています。
自己肯定感の重要性に気づいたのは1994年でした。
はじめは子育てに生かすことを考えていました。
自己肯定感について理解するにつれて、当時2歳の娘の自己肯定感をどう高めるかよりも、親である私の自己肯定感が低いことに愕然とし、まず私が高めることが必要だと考えたのです。
なぜなら、そのときの私を取り巻く危機的な状況があったからです。
夫婦関係は常に離婚の二文字が頭を離れず、職場でも人間関係の悩みを抱えていました。
自己肯定感を知るまでは、何が原因でうまくいかないのか、どうすれば良くなるのかが全くわかりませんでした。
そこで、その原因が自己肯定感の低さにあると気づいてからは、自らの自己肯定感を高めることに注力しました。
時間はかかりましたが、以前は常に夫を責め、周りへの不満が絶えなかった私が、意識のベクトルを自分に向け、自分を理解し、自分との関係を良好にしていったことで、自己肯定感が高まり、自身を取り巻く多くのことが好転していったのです。
取り組み始めた25年前は、会社に勤めながら時間を見つけては、図書館に通い、手探り状態で様々な書物を読み、いろいろな方法を試して、自己肯定感を高めるために効果があるものは何かを探求し続けました。
実は、人に伝えることは全く考えていませんでしたが、その10年後の2005年のある出来事が後押しとなり、それまで蓄積した自己肯定感を高めるノウハウを多くの人に役立ててもらいたいと考えて活動をスタートさせたのです。
2013年には、一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会を設立し、研修や講演、個人向けの講座を通して、講師のみなさんと共に多くの人に自己肯定感を広める活動をするようになりました。
これまでのべ2万人を超える方に指導させていただく中で、多くの方から自己肯定感を高めることで、「人間関係が良くなった」「結婚や恋愛がうまくいくようになった」「仕事で成果が出るようになった」「生きるのが楽になった」「自己実現ができるようになった」と、お声をいただけるようになりました。
その方法は、私だけではなく、多くの人にも再現性があることが証明されました。
本書では、25年間で実践して効果があった「自己肯定感を高めるノウハウ」から、誰もが抱えやすい人間関係の悩みの改善に役立てていただけるものを選んでお伝えさせていただきます。
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