BeaRealisticOptimist
目標に向かって努力をするとき、ポジティブに考えることは大切です。「私には目標を達成する力がある」「私は成功する能力を持っている」そう信じることはモチベーションを高める大きな助けとなります。
確かにポジティブであることは大切なのですが、目標達成を甘く考えてはいけません。目標が価値あるものであればあるほど、時間、計画、汗、辛抱が必要となるからです。
「望むことは簡単にできる」「ほしいものは簡単に手に入る」と考えると失敗の確率が高まるという研究があります。そう考えたせいで油断してしまい、必要な準備をおこたってしまうからです。
多くの自己啓発書の著者が言うことは、驚くほどシンプルなメッセージにまとめることができます。
「成功を信じよ。そうすれば成功はあなたのものだ」─です。
私には、このメッセージには重大な問題があるように見えます。それに対する私の言葉もこんなシンプルなメッセージで表現できます。
「それって、完全な間違いですよ」
「引き寄せの法則」の落とし穴
実際「望めば手に入る」と〝引き寄せ〟に取り組んでも、目標達成の役には立ちません。それどころか目標達成を阻害する可能性すらあります。
「引き寄せの法則」が役に立つ場合がひとつだけあります。それは目標を達成したくないときです。オーバーに言っているのではありません。
「引き寄せの法則」は「失敗の鉄則」と断言してもいいくらいです。確かに、ポジティブに考えることは大切なことです。
正確に言うと「楽観的であること」さらには「自分の能力に自信を持つこと」は目標達成に向けてのモチベーションを高め、維持するために不可欠です。ポジティブに考える人には、ある傾向があるとされています。
・健康。病気になっても早く回復する。
・うつ状態になることが少ない。
・優先順位をつけるのが上手で、多くのことに取り組むことができる。
・逆境や困難にうまく対処できる。
周囲の人を見ても、この傾向には納得できるのではないでしょうか。
「非現実的な楽観主義」では目標を達成できない
自己効力感の研究で、心理学の発展に大きく寄与した心理学者アルバート・バンデューラは「ある人が成功できるかどうかの最も信頼できる指標─それはその人が心から成功できると信じているかどうかにある」という事実を発見しました。
そして、現在も、多くの楽観主義者が、この考え方に従っています。
何千もの研究がなされましたが、このこと自体が間違っていると証明できたものは未だにありません。
ただ見落とされがちな落とし穴がそこにはあるのです。
「目標は達成できる」と信じるのは変わらず大切なことです。しかし、「目標は簡単に達成できる」と考えてはいけない─ここに注意すべきなのです。
つまり「〝非現実的な楽観主義者〟になることなく〝現実的な楽観主義者〟であれ」ということです。
実際、バンデューラが意図したことも「現実的な楽観主義者たれ」ということでした。
「現実的な楽観主義者」とは「成功を望み、それに相応しい努力をする人」です。つまり、詳細なプランを立てて、正しい戦略を練り、成功をつかむまでへこたれず努力する人なのです。
彼らは「目標を達成するには、相応の困難を切り抜けねばならない」と最初から思っています。覚悟が決まっているからこそ「自分には成功する力がある」と信じることができるのです。
「非現実的な楽観主義者」はどうでしょうか。彼らは、成功や目標達成は自然に与えられると考えています。
「ポジティブ・シンキングに励めば、自然と成功はやってくる」そして「自分には都合の悪いこと、ネガティブなことは起こらない」と思っています。
まるで自分がスーパーマンにでもなったかのようですが、彼らは「スーパーマンにはクリプトナイトという弱点がある」「スーパーマンであることを隠すためにたいへんな努力をしている」といった不都合には目をつむっているのです。
目標達成が簡単でないことを意識する
「非現実的な楽観主義」が目標達成を妨げる理由がはっきりとわかる研究結果があります。心理学者のガブリエル・エッティンゲンが行ったダイエットに関する研究です。
エッティンゲンは、病的に肥満している女性たちにダイエットプログラムへの参加を依頼しました。そして参加者には事前に「このダイエットに成功できると思うか」を質問しました。
プログラムの終了後の結果は「成功できると思う」と答えた人は「わからない」と答えた人より13キロも減量に成功しました。ここまではある程度予測できたことで、おもしろいのはここからです。
エッティンゲンは参加者たちに、「食べ物の誘惑に打ち勝つのはたいへんだと思うか」あるいは「ドーナッツや食べ放題の誘惑に簡単に打ち勝てると思うか」を質問していました。
結果は驚くべきものでした。
「簡単に食べ物の誘惑に打ち勝てる」と答えた人は「そう簡単にはいかない」と答えていた人に比べて13キロも重いままだったのです。
エッティンゲンは、就職活動中の大学生や、婚活中の独身者、股関節手術をした高齢者など、他のさまざまな分野でも同様のパターンを発見しています。
現実的に物事を見て、同時に楽観的でいられる人は、就職活動では、より多くの会社に履歴書を送ります。
婚活では、より多くの結婚相手の候補者にアプローチし、手術後のリハビリには、より辛抱強く取り組む傾向がありました。
現実的な楽観主義者のこうした態度が、成功確率を格段に高めるのです。
成功することの困難を意識する
「成功するのはたいへんだ」と思っている人は「最善の努力をしなければならない」と考えるので、大きな成功をつかむことができます。
彼らは惜しみなく努力し、問題が起きることを予見し、対処方法を計画し、いざ問題が起きたら粘り強くことに当たります。その結果、成功にたどり着く─これこそが事実です。
「自分の望むことしか起こらない」と考える非現実的な楽観主義者は、成功への道に転がるさまざまな障害や困難を考えに入れることができません。
そして、深く考えずに、危ない賭けに出てしまいます。そんな人たちは、「成功するのは簡単ではない」と心配する人に「ネガティブな人物」とレッテルを貼ります。
不安を抱く人を笑い飛ばして、障害を予測することを嫌がるのです。しかし多くの研究でも証明されている通り、「不安に思って障害を探すこと」は成功への大切なステップです。
ポジティブで楽観的な人でも、ときに不安になったり、ネガティブな気持ちになるのは自然なことです。
都合の悪いことを心の中からすべて追い出して、ただただ自分の望むことだけを考える─これこそ向こう見ずでご都合主義的な考え方です。
優秀なビジネスリーダーと評価される人物でさえ、こうしたご都合主義的な発想で、会社を危機に陥れることは少なくありません。
それでは、どうやったら「現実的な楽観主義者」になれるのでしょうか。
まずは「自分の前に横たわる課題や困難から逃げないで、しっかり見つめること」そして「課題や困難がどの程度のものなのかを検討すること」です。
さらに、成功をビジュアリゼーションするだけでなく、成功するまでのステップと取るべき行動をビジュアリゼーションすることに取り組むといいのです。
第4章のまとめ
1モチベーションを維持する。
最も効果的な方法は、過去にやり遂げたことを洗い出してみることです。
不安を感じたり、自信を失ってしまったら、これまでに達成した目標や、克服した困難をビジュアライズしてみましょう。
ifthenプランニングも効果的です。
(例):①(if)もし、私が自信をなくしたときには、②(then)私が「○○○○」をやり抜いたことを思い出す。
この手法は、テストを前にした学生や、大事な大会に挑むアスリートの自信を高め、緊張を和らげる効果が実証されています。
2地に足のついた「現実的な楽観性」を持つ。
成功をビジュアリゼーションすることに加えて、困難に立ち向かって、解決する自分の姿をビジュアライズしてみましょう。
「プランAがだめなら、その次のプランBは?」といったように、多くの選択肢も考えておくのがいいでしょう。
目標達成への道は、最短距離で進めるとは限りません。
寄り道や抜け道も考えておく人が最終的に目標達成する人です。
問題や障害を考えることは決してネガティブではないということを忘れないでください。
それを考えないからネガティブな結果になってしまうのです。
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