インプットは、「読む、聞く」。アウトプットは、「話す、書く」。インプットとアウトプット、そしてフィードバックを繰り返すと自己成長をするということをお伝えしました。 実は、ここにもうひとつ重要な要素が加わります。それが、「行動する」。英語でいうと、「 DO」です。この本では、「話す、書く」以外のすべてのアウトプットを「行動する( DO)」という言葉で表現しています。 つまり、「気付き」を得て「 TO DO(すべきこと)」がわかったら、その「 TO DO」を始め、そして続けていく。「行動する」ことなしに、自己成長は絶対にできません。 たとえば、「運動」についての本を読みます(インプット)。そこに、「週 2時間の有酸素運動で認知症の発症率が 3分の 1に減る」と書かれていたとします。つまり、得られた気付きは「週 2時間の有酸素運動で認知症を予防できる」。「 TO DO」は「週に 2時間の有酸素運動をする」で、まずその「気付き」と「 TO DO」をノートに書き留めますが、そこで終わってしまう人が多いのです。 「週に 2時間の有酸素運動をする」と 100回ノートに書いたところで、実際に運動をしないのであれば、認知症の予防効果は微塵も得られないのです。当たり前の話です。 しかし、本を読んで、さまざまな気付きを得ながら、実際には何もしない。昨日までの行動と変わらない人がほとんどです。 昨日までの行動と、今日の行動に変化がある。これが自己成長です。 「週 2時間の有酸素運動で認知症を予防できる」ということを知っていても行動しないのなら、行動の変化はゼロであり、自己成長もゼロです。多少は賢くなっているかもしれませんが、行動が変わらなければ、現実世界は何ひとつ変わりません。「自己成長」ではなく、「自己満足」しているだけです。 読書や勉強をしても「行動する」ところまでいけない。ほとんどの人がそうで、自己満足のためだけに勉強している。それは単に、お金と時間の無駄使いにすぎません。 せっかく「気付き」や「 TO DO」を得たなら、それを行動に移し、現実を変えて、自己成長していくべきです。その「行動する」ための具体的なノウハウについて、本章でお伝えしていきます。
ビジネスにおける究極の成功法則をひとつ挙げるとしたら、それは「続ける」ことです。とにかく、続けないと結果は出ません。ビジネス、勉強、スポーツ、趣味、恋愛。 3カ月も続けられないとすれば、目立った結果、成果を得ることは不可能です。 とはいえ、「続ける」のが苦手な人は多いのではないでしょうか。 私は続けることが得意です。メルマガ毎日発行、 13年。 Facebook毎日更新、 8年。 YouTube毎日更新、 5年。加圧トレーニング(毎週)、 8年。月 1回のまったく新しい内容でのセミナー開催、 9年連続。年 2冊以上の出版 10年連続、といった具合に、毎日、毎週、毎月、毎年いろいろなことを継続しています。 「続ける」ことが非常に得意な私が日々行っている、「続ける」ための「 5つの極意」を教えます。 (1)「今日やる」ことだけを考える 私は、メルマガを(ほぼ)毎日、 13年間発行しています。しかし、始めたときは、 13年も続くとは思いませんでした。「楽しいから、今日もメルマガを発行しよう」という積み重ねにすぎません。 私にも、体調が悪くて、「スポーツジムに行きたくない」という日もあります。しかし、「とりあえず、行くだけ行こう」「まずは、 5分だけやろう」と自分を励まします。実際にジムに行き、 5分経つと調子が上がってきて、 30分、いや 1時間がすぎているということがよくあります。 先のことを考えれば考えるほど、「続ける」ことに対してブレーキがかかります。「今日」「今」やることだけを考えるのです。 (2)楽しみながら実行する テレビやゲームは、なんの努力もしないのに、毎日続けることができます。それは、楽しいからです。「楽しい」とドーパミンが出ます。「楽しい」と思えば、努力しなくても、がんばらなくても、自然に長く続けられるのです。 逆に「楽しくない」「つらい」「苦しい」と、ストレスホルモンが分泌します。ストレスホルモンは、意欲を低下させて、その行動をやめさせようとします。ですから、「つらい」ことを長く続けることは不可能です。仮に、無理して続けると病気になります。 ですから、「続けたいことを楽しむ」だけで、継続することができます。つまり、「楽しさを発見する」必要があります。 (3)目標を細分化する 「 10キロダイエットする!」という目標を立てた瞬間、脳は過去の経験と照らし合わせて「無理」と判断します。ですから、ドーパミンは出ません。 しかし、「 1カ月で 1キロのダイエット!」だとどうでしょう。がんばればできそうです。そんな「ちょい難」課題に挑むときに、ドーパミンが最大で分泌されます。 「目標を大きく持て!」といわれますが、それだけではダメです。「大きな目標」を細分化して「小目標」にするだけで、継続可能性、実現可能性が大幅にアップします。 たとえば私の場合ですと、「 1カ月で本 1冊を書き上げる」という大目標は、「 1日 10ページ、本を執筆する」という「小目標」に置き換えられます。 1日 10ページずつ執筆すると 1カ月で本が書き上がるので結局同じことですが、「小目標」にすることで進捗、達成度が管理しやすくなり、モチベーションもアップするのです。 (4)結果を記録する 何か目標を達成したい場合は、毎日、記録をつけることをおすすめします。 私の場合、「 YouTubeのフォロワー数」を毎朝、必ず記録してエクセルで管理しています。 朝、パソコンを立ち上げて、「 YouTubeのフォロワー数」を確認する。昨日と比べてフォロワーが増えていると、「今日も、 YouTubeの発信をがんばろう!」とモチベーションが上がります。 目標達成までの進捗を記録する。それだけでドーパミンが出やすくなり、圧倒的に「継続」しやすくなります。 (5)結果が出たらご褒美をあげる 目標を達成したときご褒美がもらえると、さらにドーパミンが分泌されます。毎日の小目標ではいいとしても、中目標、大目標を達成したときには、ご褒美をあげるべきです。 私の場合は、「本の 1章を書き上げたとき」「 1日に 20ページ書いたとき」などは、「自分へのご褒美」として、少し高級なウイスキーを家で飲んだりします。本を 1冊書き上げたときには、海外旅行に行きます。 ドーパミンというモチベーションの「ガソリン」をいかにして補充するかが、「続ける」ためには重要です。 歯を食いしばって、死ぬ気でがんばってもドーパミンはまったく出ませんので、続けるためには逆効果です。楽しみながら、今日 1日の小目標に取り組む。その積み上げが、結局「継続」につながっていくのです。
本書では、 80個のアウトプット法をお伝えしていますが、これらの中で最も自己成長につながる「最強のアウトプット法」をひとつだけ挙げると、それは「教える」ことです。 アメリカ国立訓練研究所の研究によって導き出された、学習定着率をあらわす「ラーニング・ピラミッド( Learning Pyramid)」があります。 人が何かを学ぶ場合、どれだけ記憶に残りやすいのか、どれだけ定着するのかを方法別に調べたところ、効果が低いほうから順に「講義を受ける、人の話を聞く」「読む」「視聴覚教材を使う」「実験機材を使う」「グループ討論」「体験型学習」、そして最も効果が高いのが「他人に教える」という結果になっています。人に「教える」のがいちばん学びの効果が高いのです。 ロンドン大学の興味深い研究があります。あるものを暗記してもらう実験で、最初のグループには、「これが終わったあとにテストをしますので、暗記してください」と言います。もうひとつのグループには、「これが終わったあとに他の人に教えてもらいますので、ちゃんと記憶しておいてください」と言います。 同じ時間をかけて暗記してもらった結果、両方のグループに同じテストをしました。結局、「教える」ことはしませんでしたが、「教えてもらいます」と伝えたグループのほうが高い得点をとったのです。 人に教えることを前提に勉強するだけで、記憶力がアップして学びの効果が上がるということです。 人に教えた経験がある人はわかると思いますが、しっかり理解していないと、人に教えることはできません。つまり、教えることで、自分の理解度や不十分な点が明確に見えてきます。そして、実際に「教える」日までしっかり勉強して、その不十分な部分を補います。 つまり、「教える」はアウトプットであり、フィードバックであり、さらなるインプットでもある。自己成長の 3ステップをすべて含んだ、三位一体、完全、最強のアウトプット術であり、自己成長術であるといえるのです。 人に「教える」ことで、自己成長が加速することがわかりました。では、具体的にどのような場面で、どのように「教える」ことをスタートしていけばいいのでしょう。 (1)個人的に教える、友達同士で教え合う よくカフェで高校生が勉強を教え合っているのを見かけますが、これは極めて効果的な勉強法です。教科書を読むよりも、問題集を解くよりもはるかに効果的です。 自分の得意な分野を教えて、不得意な分野を教えてもらう。友人や同僚同士で、すぐにでも始められるはずです。 社内で自分の得意分野を人に教えることに、「自分の優位性が失われる」という理由で消極的な人もいますが、実際は逆です。人に教えることで、さらにその分野について自分が詳しくなり成長しますから、人に教えるほど自分の優位性が高まります。 (2)講師を引き受ける 社内で中堅以上のポジションになると「 ○ ○について話してくれないか?」と、社内の勉強会などの講師を頼まれることがあります。多くの人は、「私はまだ不勉強なので」と断ろうとしますが、「不勉強」だからこそ、積極的に講師を引き受けるべきです。 講師をする、つまり人に教えることによって、自分の知識が整理され、不十分な点が補強される、大きく成長できる。また、講師は自分の知識や経験をアピールできる絶好のチャンスです。講師のチャンスがきたら断らずに、積極的に引き受けるべきです。 (3)勉強会や研究会に参加する、立ち上げる とはいえ、講師の依頼を受けるチャンスは、毎月のように巡ってくるものではありません。さらに「教える」機会を増やすために、社内や社外の勉強会、研究会に参加するのもいいでしょう。そうした勉強会では、参加者が講師を持ち回りで行うことが多いため、講師をする機会、人に「教える」機会は格段に増えます。 もし自分の周りに適当な勉強会、研究会がない場合は、あなた自身が主催者となって立ち上げるという手もあります。 (4)プロ講師になる(お金をもらって人に教える) 法人、商工会議所、各種団体から講師依頼がくるレベルになれば最高です。 セミナーでいちばん勉強になり、成長するのは誰でしょうか。それは、受講生、参加者ではありません。いちばん成長するのは、間違いなく講師なのです。 私は自分が主催する「ウェブ心理塾」という勉強会で、 2009年より毎月、まったく違った内容のセミナーを 100回以上続けています。 正直、ネタ集めからセミナーの準備まで大変です。しかし、なぜそれをするのかというと、圧倒的に自己成長できるから。結果として、年 2 ~ 3冊まったく違った題材の本を出版し続けています。
人間の脳は、計り知れないポテンシャルを持っている。これはまったく正しいと思います。 ある研究によると、脳の記憶容量をコンピューターの理論で擬似的に算出したところ、 17. 5テラバイトという数字が導かれました。「ウィキペディア」の情報総量は約 1テラバイトですから、人間の脳は「ウィキペディア」約 17個分の情報を記憶できると考えれば、実にすごい記憶力です。 一方で、人間の脳が同時に処理できる情報量はものすごく少ないことがわかっています。 3個の情報を同時に処理しようとしただけで、脳の作業領域「ワーキングメモリ」は満杯になってしまいます。 いうなれば 20年前のパソコン。ソフトを 3つ同時に立ち上げるとパソコンの処理速度が猛烈に遅くなって、 4つ目のソフトを立ち上げた瞬間にはフリーズする。そんなイメージです。 人間の脳はパソコンでいうと、ハードディスクの量はものすごくあるのに、メモリの量は非常に乏しい。ですから、この少ないメモリを大切に使わないと、アウトプットの作業効率が、極めて低下してしまいます。 同時に複数の仕事をこなすことを「マルチタスク」といいます。マルチタスクとは、「仕事に関するメールを打ちながら、大切な得意先との電話連絡をする」「企画書を作成しながら、部下からプロジェクトの進捗報告を聞く」などの行為です。最近の脳科学研究では、人間の脳はマルチタスクができない、ということが明らかにされています。 たとえば「ながら勉強」。テレビを見ながら、宿題するという場合。この場合、「テレビを見る」と「宿題する」という行為を同時進行しているわけではなく、すさまじいスピードで 2つのタスク処理を切り替えているにすぎないのです。脳の中では、「切り替え」を何度も行っているので、脳に猛烈な負荷がかかるとともに、脳の処理能力も低下します。 ある研究では、マルチタスクによってひとつの課題に集中してあたれない場合、その課題を完了するのに時間が 50%も余分にかかることがわかりました。 またそれだけではなく、間違いをする率も、最大 50%も高くなりました。別の研究では、 2つの似たような作業を同時に行わせた場合、効率は 80 ~ 95%も低下しました。 マルチタスクをする場合、2つのことを別々にやるよりも時間がかかってしまうのです。さらに間違いやミスをする率も 1. 5倍に跳ね上がるのです。 ということで、「マルチタスク」は絶対にやってはいけない仕事術です。とにかく、目前のひとつのことに集中してアウトプットするのが、最も効果的なアウトプット法といえます。 「新しいことに挑戦するのが怖い。チャレンジして失敗のリスクをとるくらいなら、今のままの安定がいい」と考える人は多いかもしれません。もしあなたが、そう考えているとしたら、今すぐその考えは変えたほうがいいでしょう。 なぜならば、チャレンジのないところに自己成長はないからです。チャレンジするから、初めて自己成長が起きるのです。 新しいことにチャレンジすると、脳内物質・ドーパミンが出ます。ドーパミンは「楽しい」という感情を引き起こす幸福物質ですが、同時に「新しいことを学習する」ことをサポートする学習物質でもあります。 ドーパミンが分泌されると、集中力が高まり、やる気も高まり、記憶力が高まり、学習機能が高まります。結果として、効率的な学習が行われて、自己成長が引き起こされます。 いや、チャレンジしても楽しくない。恐れ、不安、恐怖のほうが強い、という人も多いでしょう。その理由は、「危険領域」にまでチャレンジしているからです。 たとえば、普段まったく運動しない人が「山登りにチャレンジしたい!」と思って、いきなり富士山登山をしたら……。ケガをするかもしれないし、体力が続かず途中で挫折するのがオチです。まずは、高尾山くらいから登り始めて、登山に慣れていく必要があります。つまり、高尾山は「学習領域」で、富士山は「危険領域」になります。 あまりにも無謀なこと、高すぎる目標、難易度の高い課題に挑戦すると「危険領域」に突入してしまいます。そこでは、ノルアドレナリンが過剰に分泌し、不安と恐怖も高まり、やめたい、逃げ出したい衝動にかられるのです。 つまり、「チャレンジが怖い」という人は、「学習領域」を越えて「危険領域」に突入してしまっているから。目標や難易度が高すぎるので、もう少し下げたほうがいいのです。 実現可能で少しがんばれば達成できる「プチ目標」を上手に設定すると、ドーパミンを分泌させながら、また楽しみながらチャレンジをして、自己成長していくことができるのです。
何かを「やってみたら」というと、「失敗したらどうする?」「失敗したくないから」という答えが返ってきます。失敗を恐れるあまり、新しいことにチャレンジするのに臆病になっている人がたくさんいます。 インタビューでよく「樺沢さんの人生で最大の失敗はなんですか?」と聞かれます。私の答えは決まっています。「私の人生で失敗したことは一度もありません」。 「失敗したことがないなんて嘘だ」と思うかもしれませんが、実際に「失敗した」と後悔することはありません。何より、今「生きている」ということが、大きな失敗をしていない証拠です。「ゲームオーバー」ではない。今もゲームは継続中なのです。 「エラー」というコインを 10個集めると、次のステージに進める。人生がそんなゲームだとしたら、自己成長して次のステージに進むのは、実に簡単なことです。たくさんトライして、エラーのコインを稼げばいいだけ。 しかし、現実の世界では、多くの人は新しいことに「トライ」しないので、「エラー」のコインは、まったく増えないのです。ですから、いつまでも今のまま。成長もしないし、何か楽しいことも起きないし、恋人もできないし、収入も増えない。 この世の中に「失敗」なんか存在しません。「うまくいかないこと」「不本意な結果」は、「失敗」ではなく、すべて「エラー」なのです。 エラーの原因を調べ、エラーの原因に対策をして、再挑戦すればいいだけの話。エラーに対するフィードバックを繰り返せば、そのステージはクリアして、次のステージに進めるのです。 失敗を恐れて新しいことにまったく挑戦しない人。エラーを恐れず、トライの回数を増やす人。どちらが自己成長できると思いますか? あなたの考え方を少し切り替えるだけで、「失敗」など存在しない、トライ&エラーで自己成長を繰り返す楽しい世界に生きることが可能になります。 成績の悪い子どもは、なぜ成績が悪いのかご存じでしょうか? 元々の頭の良し悪しは関係ありません。その理由は「勉強が嫌いだから」。勉強が嫌いなので、嫌々勉強しているのです。 「楽しい」と記憶力とモチベーションがアップし、「嫌々やる」と記憶力とモチベーションは大幅に低下します。ですから勉強を嫌々やっている限り、成績がよくなることはあり得ないのです。 同じ時間、同じ勉強をしたとしても、「楽しい」か「嫌々」かで、その学習効率はまったく変わってきます。 大阪大学の研究では、文章を音読しながら、所定の単語を記憶してもらう実験をしたところ、記憶すべき単語が「ポジティブな言葉」の再生率は高く、「ネガティブな言葉」の再生率は低くなりました。気分がポジティブかネガティブかによって、記憶力は変わってくるのです。 「楽しい」と、脳内物質である「ドーパミン」が出ます。ドーパミンは幸福物質であり、集中力、モチベーション、学習能力を高める物質です。一言でいうと「頭がよくなる物質」です。 「嫌々」やると、ストレスホルモン「コルチゾール」が出ます。コルチゾールというのは、記憶力を低下させる物質です。嫌な出来事を忘れさせる物質、と考えるとわかりやすいでしよう。コルチゾールの高値が続くと、海馬の容積が小さくなる(脳細胞が死ぬ)こともわかっています。 ですから、嫌々、仕事や勉強に取り組むと、その効率は著しく低下し、結果も惨憺たるものになるのです。仕事や勉強を「楽しい」と思ってやるのか、「嫌々」「苦しい」「やらされ感を持ってやる」のかによって、脳は 180度違った反応をとるのです。「楽しい」と猛烈にアクセルを踏み、「苦しい」とブレーキを踏みます。 同じアウトプットをするのなら、楽しみながらやることで、その効果は最大化します。
「優柔不断でなかなか決断できない」「あれこれ迷ってしまう」「最後に、判断を変えたくなる」という人は多いと思います。 「決断する」のは大変なことではありますが、「ファーストチェス理論」を知っていると、迅速な決断をしやすくなります。 プロのチェスプレイヤーにチェスの盤面を見せて、 5秒で「次の手」を決めてもらいます。その後 30分かけてじっくり考えてもらい、 30分後に改めて「次の手」を決めてもらいます。その結果、「最初の手」と「 30分考えた手」は、 86%一致したのです。 直感的に思い浮かんだ判断、つまり最初の判断というのは、かなり正しい。長く考えても、「判断」は大きく変わらないということです。 ただし、この場合注意すべきは、プロのチェスプレイヤーを対象にした研究であるという点。つまり、経験や知識が十分にあるということ、自分の専門領域、熟練した領域での判断ということになります。新入社員が 5秒で下した決断は、正しいとは限らないでしょう。 決断は 5秒でしなさいといわれても、多くの人は迷うと思います。私は判断に迷った場合、さらに 2つの判断基準で決断するようにしています。ひとつは「ワクワクするほうを選ぶ」こと。打算で考えないということです。 「ワクワクする」というのは、あなたの潜在意識が望んでいる、ということ。また、「ワクワクする」ときはドーパミンが出ていて脳のパフォーマンスがアップするので、成功する確率が高いのです。 2つ目の条件は、迷ったら「最初に思いついたほうを優先する」ということ。最初に思いついたアイデアが、あなたの「直感」であり「本能」に根ざしています。「心の声」といってもいい。あとから出てくる考えは、「やっぱり、〇〇したほうがいいかも」という考え。たいてい打算的であり、常識的、こぢんまりとした正論です。 たとえば、「夏休みにハワイに行きたい! でも、お金がかかるしなあ」と考える人は多いでしょう。「ハワイに行きたい!」はワクワクした直感で、「お金がかかる」は打算的な考えです。どちらに従ったほうが、楽しい人生になりますか? ワクワクする直感に根ざして行動し、ワクワクする人生を生きるのか。打算にとらわれた、平凡でつまらない人生を生きるのか……。 直感を信じて 5秒でワクワクするものを選ぶほうが、人生が楽しくなることは間違いないでしょう。 日本人は、「我慢する」のが好きです。日本人の美徳でもありますが、我慢のしすぎはストレスをため、精神的にもマイナスの影響を及ぼします。 「苦しい」「つらい」といった思いを打ち明け、言葉で表現することは、「癒やし」の効果につながります。 たとえば、子どもが注射されるときに、「痛い、痛い、痛い」と大きな声を出して騒ぎますが、この「痛い」と表現することに非常に大きな意味があるのです。 ある心理実験では、 Aグループは、注射するときに「痛い、痛い、痛い」と言って注射され、 Bグループは、注射されるときに何もいわずにジッと我慢しました。 終了後に注射の痛みを数値で評価してもらいました。そうすると、「痛い痛い」と言った Aグループは、痛みを我慢した Bグループと比べて、痛みが 5分の 1にも緩和されたのです。ただ「痛い」と表現するだけで、「痛み」のストレスが大幅にやわらいだのです。 また、ワシントンのがん医療センターで、末期がん患者に対して行われた筆記エクササイズについての研究があります。 筆記エクササイズは、 20分という決められた時間で、「がんが自分たちの何を変えるのか、そしてその変わったことに対して自分はどう思うのか」を記述するという簡単なものです。 結果、筆記エクササイズ参加者の 49%が「病気に対する考え方が変わった」と答え、 38%が「今の病気の状態に対する気持ちが変わった」と答えました。特に、若い患者、そして最近がんと診断された患者に、高い効果が認められました。 文章や言葉で「表現する」だけで、自分のつらさ、苦しさ、痛みなどが軽減するのです。 具体的には、人に相談する。あるいは、自分ひとりでする方法としては、ノートに自分の思い、苦しさ、つらさを書き殴る。できれば、日記をつける。 毎日、日記に自分の心のうちを表現することで、心の毒を排出することができるのです。
書類や原稿など、締切がある仕事を期日までに完成させられないという人は多いはずです。あるいは、レベルの高いものをつくろうと気合が入るほど手がつけられない、スタートできないという人も多いでしょう。 私の友人で、「出版が決まった!」という人がたくさんいますが、みなさん初めての原稿を書く場合、毎日ブログを書いている文章が上手な人でも、「最初の 10ページすら書けない」という方が多いのです。なぜでしょう? その理由は、「 100点を目指して」素晴らしい原稿を書こうとするからです。新人作家のみなさんは、「せっかく本を書くのだから、最高の本をつくりたい!」と意欲満々で臨みます。その結果、原稿用紙で 1日数ページも書けないのです。 私は、「 30点を目指して」原稿を書き始めます。「 30点とは、さすがに意識低すぎだろう」とツッコミが入りそうですが、これはまぎれもない事実です。 正確にいうと、「 30点の出来で、とりあえず最後まで書き上げる」ことが重要。とにかく、文章の質は別として、「最後まで完成させる」ことが重要です。最後まで書き上げたら、次は印刷して加筆修正する。つまり「直し」の作業に入ります。 1回目の直しで、 30点から 50点になります。 2回目の直しで、 50点を 70点の出来へと磨き上げます。そして、 3回目の直しで 70点を 90点にして、最後に締切までの時間を使って、 100点を目指します。とりあえず通しで書いて、「直し」「ブラッシュアップ」に時間をかける。その比率は、 5対 5です。 最初から 100点を目指す人は、通しでできあがるまでに膨大な時間がかかり、「直し」の時間が減ってしまいます。その比率は、 8対 2くらい。「直し」に時間がとれないので、結果としてレベルの低いものができあがる、という残念な結果になります。 企画書、報告書、原稿、講演のスライド、どれも同じです。とりあえず、 30点のレベルでいいので、「通し」で最後まで完成させる。「直し」に十分な時間をとることで、レベルの高いものが完成するのです。 「今月の売上目標は 3億円!」と、いくら営業部長が大声で怒鳴っても、部下のモチベーションは上がりません。「今月もノルマがキツくて大変だなあ」と、むしろモチベーションは下がります。それは、「自発的な仕事(ドーパミン分泌)」ではなく、「やらされ仕事(ストレスホルモン分泌)」だからです。 自分が立てた目標はドーパミンが出ますが、他人が決めた納得のいかない目標ではストレスホルモンが出るだけです。 では、社員や部下、チームの仲間を率いるためにはどうしたらいいのでしょうか。部下や仲間のモチベーションをアップさせ、リーダーシップを発揮するいい方法はないのでしょうか。 それは、「目標」を掲げるのではなく、「ビジョン」を掲げることです。「ビジョン」とは、会社や個人が実現したい「理想の姿」「理想のイメージ」です。 「目標」を掲げても人はついてきませんが、「ビジョン」を掲げ、「ビジョン」を共有できると人はついてきます。会社やその人を応援し、支え、高いモチベーションで、高い能力を発揮します。 総発行部数 3億部突破、国民的漫画『 ONE PIECE』を例に挙げましょう。「麦わらの一味」の船長であるルフィのビジョンは、「海賊王に、俺はなるっ!」です。彼のビジョンに共感して「おもしろそう」「ルフィとともにそれを実現したい」と思った仲間たちが、ルフィのもとに集まります。 ルフィの目標は、「ひとつなぎの大秘宝( ONE PIECE)を手に入れる」ですが、目標を前面に出すと、現実的、実利的になってしまい、共感しづらく「勝手にやれば」という感じになってしまいます。 私のビジョンは、「精神医学、心理学をわかりやすくお伝えすることで、うつ病や自殺を減らしたい。病気を予防したい」です。そのビジョンを共有して、実際にたくさんの人が協力、応援してくれています。うつ病や自殺を予防するためには、私の本の内容、インターネットのコンテンツがたくさんの人に伝わる必要があります。 ですから、私の目標は「 100万部のベストセラーを書く」「 YouTubeフォロワー 10万人」といった内容になります。「 100万部のベストセラーを書く」という目標を前面に出すと、やはり「勝手にやれば」という感じで、誰も協力してくれないのです。 ビジョンは他者貢献、社会貢献の性格が強く、目標は現実的、実利的、実際的なもの。人間は崇高な「夢」や「理想」に共感しやすいので、人を率いるためには「目標」ではなく「ビジョン」を掲げることが必須です。
ここまでは、情報をアウトプットする話をしてきましたが、「情報」だけではなく自分の「感情」を積極的にアウトプットすることで、さまざまなメリットが得られます。たとえば、「笑う」「泣く」といったことです。 「笑う」効果に関して、カリフォルニア大学が興味深い研究を発表しています。被検者の心拍数、体温、肌の電気信号、筋肉の緊張などを測定しながら、笑顔、恐怖、怒りの表情をしてもらいます。 すると、「笑顔」をつくるとわずか 10秒で、「安心」しているのと同様の身体的な変化があらわれました。「恐怖」の表情をつくると恐怖の身体的な変化があらわれました。 笑顔をつくると 10秒で緊張が緩和して、ハッピーな気持ちになれるということ。つまり、笑顔の効果には、即効性があります。 脳科学的にいうと、笑顔をつくるとセロトニン、ドーパミン、エンドルフィンという 3つの脳内物質が出ます。これらの物質が出ると、ストレスホルモンが下がり、副交感神経が優位になります。つまり、笑顔には緊張を緩和してストレスを解消する作用があるのです。 笑顔は最強の脳トレであり、ストレス発散法です。 とはいえ、いきなり笑顔をつくるのは難しいもの。笑顔をつくる表情筋がかたくなっていると自然な笑顔が出ないので、普段から笑顔トレーニングをすることが重要です。私は、毎朝、髭そりしながら、笑顔トレーニングをしています。 また、笑顔はコミュニケーションの潤滑剤にもなります。笑顔を増やすと、いいことだらけです。ぜひあなたも、笑顔トレーニングをして、笑顔を増やしてみませんか? 感情のアウトプット、「笑う」の反対は「泣く」です。 日本人は落ち込んだときも「泣いてなんかいられない」と、泣くのを我慢するのが美徳という文化があります。 あるいは、デートで映画に行っても「泣いているところを見られるのは格好悪い」ということで、泣きそうになっても我慢する人もいるでしょう。 しかし、「泣く」のを我慢するとストレスがたまり、「泣く」ことによってストレスが発散されます。つまり、「泣く」ことは精神的に「いい効果」が得られるのです。 「泣く」のを我慢している状態は、交感神経が優位の緊張状態です。これが、「泣く」、つまり涙が流れた瞬間に、副交感神経に切り替わり、リラックス =「癒やし」モードに入ります。 また、涙には ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が含まれています。 ACTHとは、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌を促すホルモンです。つまり、涙とともに ACTHを外に出すため、「泣く」ことでストレス発散効果が得られるのです。 とはいえ、日常生活で大泣きするような出来事は滅多
滅多に起きるものではありません。そこで、映画、演劇、小説、漫画などのエンターテインメントを活用すると、「涙」による癒やし効果を手軽に得ることができます。 哲学者アリストテレスは、その著書『詩学』の中でギリシャ悲劇を観ることで、心の中に溜まっていた澱のような感情が解放され、気持ちが浄化される(カタルシス)と述べています。演劇や映画などで、感情を表出することで、気持ちが浄化されるのです。 映画評論家でもある私がおすすめする「泣ける映画」をリストにまとめましたので、参考にしてください。 感情のアウトプットである「笑う」「泣く」は、たくさんすることで、いろいろなメリットが得られます。しかし「怒り」に関しては、発散しすぎると人間関係にヒビが入るなど、マイナスの影響しか得られません。 怒りっぽい人はそうでない人に比べて、心筋梗塞や狭心症のリスクが 2倍以上に高まります。特に激しい怒りのあとでは、心筋梗塞や心臓発作を起こすリスクが 4. 7倍に上昇するという研究もあります。 怒りは発散するのではなく、上手にコントロールしなければいけません。 カッとしたとき、怒りの感情が爆発しそうになったときに、アドレナリンが分泌されます。アドレナリンの体内での半減期はわずか 20 ~ 40秒と非常に短い。つまり、 30秒も我慢すれば、怒りのピークは通りすぎます。怒りは熱しやすく、冷めやすいのです。 とはいえ、「その 30秒が我慢できない」という人も多いと思います。そうした人のために効果てき面の対処法をお伝えします。 アドレナリンが分泌されると、交感神経が優位になります。深呼吸をすることで、交感神経を副交感神経に切り替えることができるので、怒りをクールダウンすることができます。 「深呼吸をしても怒りをコントロールできない」という話をよく聞きますが、それは深呼吸の方法が間違っています。私がおすすめする深呼吸は、 1分深呼吸法です。 1分深呼吸法 (1) 5秒で息を吸う (2) 10秒で息を吐く (3)さらに 5秒で肺の空気をすべて吐ききる (4)( 1) ~( 3)の 20秒 1呼吸を 3回繰り返す参考/『いい緊張は能力を 2倍にする』(樺沢紫苑著、文響社) 5秒で息を吸い、 15秒で吐きます。これを自分で「 1、 2、 3……」と秒数をカウントしながら行います。そうすると、数を数えるのに意識がとられるので、怒りの原因について考えるのを忘れてしまいます。あるいは、時計の文字盤を見ながら秒数をカウントするのも効果的です。 20秒の深呼吸を 3回、きちんと行えば、「怒り」はほとんどなくなるか、かなり軽減されます。 深呼吸を正しく行うのは簡単ではありません。拙著『いい緊張は能力を 2倍にする』(文響社)の中で、正しい深呼吸法について 15ページにわたって解説していますので、「怒りっぽい人」は一読することをおすすめします。 「眠る」という項目を見て、「どう考えても“アウトプット”じゃないだろう」と思った方もいると思います。しかし睡眠は、アウトプットにおいて極めて重要。大前提として考えるべきです。 あなたが本書の内容をすべて実行したとしても、睡眠が不足していたら、目立った効果は得られません。アウトプットに限らず、仕事も勉強も同様です。睡眠不足の状態では、集中力、注意力、記憶力、ワーキングメモリ(作業記憶)、学習能力、実行機能、数量的能力、論理的推論能力、数学的能力など、ほとんどすべての脳の機能が低下することが明らかにされています。 ちなみに、睡眠不足というのは 6時間未満をさします。 ペンシルベニア大学の研究で、 6時間睡眠を 14日間続けると、 2日間完全に徹夜したときと同程度の集中力低下をきたしていることが明らかにされました。毎日 6時間しか寝ていない人は、毎日、徹夜明けで仕事をしているのと同じくらいの仕事しかこなせないという、衝撃的なデータです。 また別の研究では、 6時間以上の睡眠をとらないと、
勉強した内容が記憶として定着しづらいことが明らかにされています。 睡眠不足(睡眠 6時間未満)の状態でアウトプット、仕事、勉強をすることは、バスタブに栓をしないでお湯を入れるようなものです。何も積み上がらないし、記憶や経験として残らないし、当然、自己成長にもつながりません。 「睡眠不足」の状態は、ざっくりいえば、あなたの能力を半分も発揮できないようにリミッターをかけるようなものです。 アウトプットをして自己成長するためには、 7時間以上の睡眠は必須です。 また睡眠不足は、勉強効率を下げるだけではなく、命を削ります。睡眠不足の人は、がんのリスクが 6倍、脳卒中のリスクが 4倍、心筋梗塞のリスクが 3倍。十分に寝ている人と比べて、死亡率が 5. 6倍に高まります。「喫煙」と比べても「睡眠不足」のほうがはるかに健康に悪いことは、意外と知られていません。 「アウトプットをして自己成長していきたい人」にとって、睡眠時間 7時間は必須です。 「もっと頭がよく生まれてきたら、自分の人生も違ったのに」と思う人はいませんか? 今からでも、あなたの頭をよくすることは可能です。「生まれたときに人間の能力はほぼ決まっている」と思っている人は多いかもしれませんが、それは完全に間違いです。 私が医師になった 25年前は、「脳の神経細胞は増殖しない。神経細胞の数は生まれてから減るだけで、増えることは決してない」と習いましたが、その神経学の大前提が、近年覆されました。 海馬の歯状回で、顆粒細胞という神経細胞が新生することが発見されたのです。つまり、人間の脳では毎日、新しい神経細胞がつくられ続けているのです。海馬というのは、人間の「記憶」と極めて密接にかかわっている部分です。 この神経の新生に必須の物質が、 BDNF(脳由来神経栄養因子)であり、 BDNFは有酸素運動によって分泌が増えることがわかっています。 つまり、有酸素運動をすることで、脳の神経の新生がバンバン促進されて、記憶力がよくなり、頭がよくなるというわけです。ちなみに、海馬の神経新生を阻害するのは、ストレスホルモン(コルチゾール)です。ストレスが長期にかかると、記憶力が悪くなり、物忘れもひどくなります。 「頭をよくしたい!」と思うなら、運動をすればいいのです。運動量としては、 1回 1時間程度の有酸素運動を週 2回以上行うと、脳を活性化する効果が十分に得られます。 また、わずか 20分の運動でもドーパミンが分泌されるため、運動直後から集中力、記憶力、学習機能、モチベーションのアップが認められます。自己成長のためにはドーパミンが重要であると何度も強調しましたが、自己成長と最も関連があるドーパミンは、ただ運動するだけで分泌されるわけですから、運動しない手はありません。 頭がよくなりたい人、自己成長を加速させたい人にとって、有酸素運動は必須といえます。 どのような職場でも、トラブルや事故が発生するはずです。それらのトラブルや事故を事前に予測し、なるべく防ぎたいものです。 医療の世界では、「医療事故」を未然に防ぐ必要から、危機管理がよく研究されています。事故や災害を防ぐのに役立つ有名な法則として、「ハインリッヒの法則」というものがあります。 損害保険会社の技術・調査部に勤務していたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒは、ある工場で発生した 5000件以上の労働災害を統計学的に調査し、「 1: 29: 300」という比率を導きました。「重傷」以上の災害が 1件あったら、その背後には、 29件の「軽傷」を伴う災害が起こり、 300件もの「ヒヤリ・ハット」した傷害のない災害が起きていた、ということです。 「大きな事故」「小さな事故」「ヒヤリ・ハット事例」は、 1: 29: 300の割合で生じる。つまり、「大きな事故」を減らすためには「小さな事故」を減らす。そのためには「ヒヤリ・ハット事例」を減らせばいいのです。
「ヒヤリ・ハット事例」をたくさん集めて、それに対してひとつずつ対策を講じていく。そうすると、「ヒヤリ・ハット事例」が減少し、「小さな事故」も減少し、「大きな事故」が防げます。 大きな病院には、たいてい「医療事故対策委員会」があり、そこでは院内の「ヒヤリ・ハット事例」をたくさん集めています。あやうく事故になりそうな、ヒヤリ・ハットする事例が起きたときは必ず報告するよう、医師も看護師も義務付けられています。そうした、よくあるヒヤリ・ハットに対して注意を喚起したり、「安全マニュアル」を変更したり対策を行っていきます。 状況把握 →原因分析 →対策。「ヒヤリ・ハット事例」や「小さな事故」が生じた場合、その原因を分析して、徹底して対策を行えば、「大きな事故」は防げるのです。 この「事故」という言葉は、職場においては「ミス」と置き換えてもいいでしょう。 「大きなミス」「小さなミス」「ヒヤリ・ハット事例」が、 1: 29: 300の割合で生じるのです。職場での重大なミスやトラブルを起こさないためには、日頃よくあるヒヤリ・ハットをひとつでも減らすことが重要なのです。 ここまで、さまざまなアウトプット術についてお伝えしてきました。この段階で、多くの方が直面する問題があります。それは、「アウトプットする時間がありません」というものです。 仕事が忙しい、帰宅が遅い。家では家事や育児をしなくてはならない……。 自分のために勉強する時間、自己投資につながる「アウトプット時間」をつくることは、多忙なビジネスマンにとっては、非常に大変なことと思います。 将来の自分のために、時間を管理して、自己成長につながる「アウトプット時間」を確保するためには、それなりの工夫が必要です。 (1) 15分でアウトプットする 「 15分勉強する」場合と「 60分勉強する」場合、どちらが効果が高いと思いますか? 多くの人は「 60分」、つまり時間を長くとったほうが、勉強や仕事がはかどると思っていますが、それは完全に間違いです。 重要なのは集中力です。「だらだら 60分」やるよりも、「集中して 15分」やったほうが、勉強も仕事もはかどります。 制限時間を決めると、集中力が高まります。ですから、必ずしも 15分でなくともかまいません。 短時間でいいので、制限時間を決めて取り組むことで、圧倒的に勉強や仕事の効率が高まります。その場合、ストップウォッチやタイマーを使うと、より緊迫感が高まり、集中力も高まります。 「本の感想を 15分でまとめる」と決めて、 15分だけ集中してアウトプットを行う。忙しいあなたも、 1日 15分の時間ならつくれると思います。 まずは、 1日 15分、 1アウトプットからスタートしてください。 (2)スキマ時間を活用する 忙しいビジネスパーソンが、机に向かって「自分のための勉強時間」を確保するのは極めて難しいと思います。帰宅しても仕事で疲れているので、勉強どころではないでしょう。 そんな忙しいビジネスパーソンが「自分のための勉強時間」を毎日確保できる唯一の方法が、スキマ時間の活用です。 スキマ時間とは、電車に乗っている時間、電車を待っている時間、昼休みの残り時間、待ち合わせの時間などです。特に電車、バス、自家用車などで通勤する時間は、最もまとまった時間がとりやすいといえます。 こうしたスキマ時間を、インプット&アウトプットの自己投資の時間として活用すべきです。 (3)スマホをアウトプットのツールとして活用する ほとんどの人は、友人の SNSを見る、ブログ記事やネットニュースを読むといった具合に、スマホをインプットのツールとして利用していると思います。通勤時間をただスマホを見て過ごしている人も多いですよね。 アウトプットの伴わないインプットは、忘れるだけ。「スマホを見るだけ」というのは、最大の時間の無駄です。 スマホがすべて悪いとはいいません。スマホは、インプットではなく、アウトプットのツールとして使うべきなのです。いつでも、どこでも入力できるのが、スマホのよいところです。 本の感想、映画の感想、学んだことの気付き。 3行、 3ポイントであれば、 5分あれば書くことができる。スマホを上手に使えば、いつでも、どこでもアウトプットができます。 結局のところ、「アウトプットする」のに 30分、 1時間といったまとまった時間をとろうとするからできなくなります。まずは 5分でいいです。できれば 15分。 通勤中、移動中などのスキマ時間を使えば、 1日 5 ~ 15分の時間は、必ず確保できるはずなので、短時間でアウトプットすることを習慣にしてください。 さらに詳しい時間の使い方、時間術については拙著『神・時間術』(大和書房)で詳しく解説していますので、参考にしてください。 それでも「アウトプットする時間がない」という人は、インプットの時間を減らすことをおすすめします。 あなたが現在、「月 3冊の読書をしているが、 1冊もアウトプットできていない」状態だとします。仕事も忙しく、これ以上アウトプットする時間をつくるのが難しい。そういう場合は、「月 1冊の読書でいいので、 1冊をしっかりとアウトプットする」ように変えてください。 「えっ、インプット量を減らすの?」と思ったかもしれません。インプット中心の勉強をしてきた人にとって、インプット量を減らすことは恐怖を感じるもの
です。しかし、どんなにたくさんインプットをしても、アウトプットしない限りすぐに忘れてしまいます。つまり、アウトプットしないインプットは意味がないのです。 「月 3冊インプット、 0冊アウトプット」と「月 1冊インプット、 1冊アウトプット」を比べると、「月 1冊インプット、 1冊アウトプット」のほうが圧倒的に成長できるのです。こちらのほうが、時間も短くて済みます。 本を 1冊読むのに、仮に 2時間かかるとしましょう。 1冊読むのをやめれば、 2時間のアウトプット時間を捻出できます。 2時間あれば、最初に読んだ本のアウトプットをするのには、十分すぎる時間です。 また、読書をする場合、インプット量を稼ぐのではなく、アウトプット量を稼ぐことを意識してください。つまり、 1冊読んだら、 1冊しっかりとアウトプットする。 アウトプットが終わるまで、次の本を読み始めるべきではないのです。そして、また次の 1冊を読んだら、その本をアウトプットしていく。 当面の目標は、「月 3冊読んで、 3冊アウトプット」です。月 3冊は少ないように思えるかもしれませんが、ビジネスマンで月 3冊分のアウトプットができている人は、 20%もいないでしょう。 「月 3冊読んで、 3冊アウトプット」を続けると、あなたのアウトプット力は相当のレベルへ進化していきます。 1年も続ければ、ビジネスマンの上位 20%に入ることは間違いないでしょう。
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