第4章自らセレンディピティを求めるには
私はこんなもんじゃない「生きがい」で点と点を結ぶ自分をよく知ることの効果「利己」より「利他」でより幸福に外向的タイプと内向的タイプで違いはあるかプラスのエネルギーと「ソーシャル錬金術」不完全であることを受け入れる幸運な人はたいてい肩の力が抜けているまとめ
第4章自らセレンディピティを求めるにはあなたが船をつくろうと思うなら、太鼓を叩いて人を集め、木材を集め、仕事を割り振り、命令するのではなく、茫洋とした果てしなく広がる海に恋いこがれる気持ちを教えよう──アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリあなたはジグソーパズルを解こうとしている。
ピースがいくつか欠けているようだ。
最初は完成図がはっきりとわからないので、欠けているピースがどんなものかもわからない。
誰かの顔、それとも雲の一部だろうか。
それとも家の端っこか。
だがパズルを少しずつつくっていくと、全体像がだんだんわかってきて、欠けているピースもどんなものか想像がつくようになる。
全体像のなかに、欠けているピースがどんな具合にはまるかも見えてくる。
座して待つのではなく、積極的に願う同じように私生活や仕事においても、スキル、知識、経験などあなたが集めるさまざまなピースは、当初は直感的に何の関連性もないように思える。
だが時間が経つにつれて大きな絵が見えてくる。
そうなると(とりわけさまざまな経験を結びつけるような情熱があれば)、欠けている要素を探すことができる。
今は欠けているスキルがあるが、それさえあれば人生は大きく変わるはずだと気づくかもしれない。
「これだ!」と特定することはできなくても、何が欠けているかおおよそわかる。
「現場経験が不足している」「コミュニケーション能力が足りない」といった具合に。
そうなればはっきりとした目的を持って足りないピースを探すことができる。
こんなとき、過去の振り返りと未来の予想が互いに補完し合う。
私たちは通常、過去を振り返って初めて物事の意味を理解するが、未来を予想することで人生というパズルを完成することができる★1。
人にはそれぞれ独自の生き方、視点、野心があり、それが予想外の機会の発見につながっていく。
全体的な意欲あるいは「目指すべき方向性」があると、セレンディピティが起こりやすく、良い結果につながりやすいことが研究では示されている★2。
どんなものであれ意欲は重要だ。
トリガーを発見したい、点と点を結びつけたいという思いがなければ始まらない。
当然ながら意欲の源泉は人によって違う。
生きがいが一番重要だと考える人もいれば、主義主張を重んじる人もいる。
愛情が何より大切だという人もいる。
漠然とした好奇心、帰属欲求、強い性欲、嫉妬、強欲が原動力になることも否定できない★3。
すでに見てきたとおり、セレンディピティは能動的に求めるものだ。
最終目的地はわからなくても望ましい方向へ進んでいきたいという意欲がなければ、どれほど感度が高くても意味がない。
前章で見てきたように、セレンディピティはいつか起こるかもしれないと座して待つのではなく、自分の身に起きてほしいと積極的に願う必要がある。
ではセレンディピティを経験し、最高の自分になるのに必要な姿勢とはどのようなものだろう*。
私はこんなもんじゃないエブリーナ・ジマナビシューテは2004年夏、長い休暇を過ごしにロンドンにやってきた。
そのときは自分がイギリスに永住することになるとは夢にも思っていなかった。
リトアニアの小さな村で生まれたエブリーナは、当時の恋人とロンドンを満喫しようと楽しみにしていた。
招待してくれた友人の家に泊まり、休暇が終わったらリトアニアの首都ビリニュスに戻り、奨学金つきで大学に進学する予定だった。
危機をきっかけに方向を見出すだが不運なことにエブリーナがイギリスに到着したとき、友人は失業していて、宿泊費を払ってほしいと言い出した。
こうしてイギリスを満喫するはずが、滞在費を稼ぐために必死に仕事を探すはめになった。
結局見つかったのは小さなホテルの清掃の仕事だった。
労働時間は長く、英語が話せない外国人として同僚からバカにされることも多かった。
そんななかとんでもない事件が起きた。
「客室を掃除していたら、突然背後でドアが開いた。
入ってきたのは同僚の男で、薄汚く、太っていて、髪はベタベタ、歯はボロボロで、いつもウイスキーとタバコの臭いがプンプンしていた。
ドアに『起こさないでください』の札をかけると、カギをかけ、ベルトをはずしながらニヤニヤして近づいてきた。
私はショックと恐怖で震えながら、じりじりと後ずさりをした。
幸い、隣の部屋に通じる扉のカギが開いていたので、何とか逃げ出した」。
エブリーナはメイド用の青いワンピースに白いエプロン、清掃用のゴム手袋をつけたままの格好でオックスフォード通りに逃げ出した。
美しい身なりのロンドン人がそれぞれの目的地へと急ぎ足で向かうなか、何も考えられず、あてもなく走った。
突然頭のなかで、壊れたレコードのように何度も同じ声が響いた。
「私はこんなもんじゃない。
こんなもんじゃない」。
こんな生活に甘んじているわけにはいかない、とエブリーナは決意した。
翌日にはやる気満々で新たな職探しに街に出た。
するとフランス語で「プレタマンジェ」と書かれたサンドイッチ店が目に入った。
学校で習ったフランス語が役に立つはずだと思い込んだエブリーナは、店長を探し、流暢なフランス語で話しかけた。
背の高いイタリア人店長は笑みを浮かべ、興味津々といった様子で耳を傾けていた。
しばらく話を聞いた後、店長は自分はフランス語を話せないし、プレタマンジェはフランスの会社じゃない、それに人手は足りているんだと言った。
それでも店長はエブリーナが銀行口座を開き、労働許可を手に入れるのを手伝い、それから人材を探している別の「プレタマンジェ」の店に紹介してくれた。
エブリーナの努力と前向きな姿勢は言葉が不自由なのを補ってあまりあるほどで、あっという間に昇進した。
スタッフの多くが話すポーランド語を話すことができたのが幸いした。
子供時代にテレビ番組で覚え、故郷の街の有名な教会を訪れるポーランド人観光客相手に話していたからだ。
休暇のことなど完全に忘れ、エブリーナはプレタマンジェで猛烈に働いた。
数年後にはシニアマネージャーになり、最終的に新たな地域への進出、新店のオープン、新任マネージャーやリーダーの研修といった事業開発プロジェクトの責任者になった。
それから10年以上が過ぎた。
今は娘とともにロンドン郊外で暮らし、コンサルティング、研修、コーチング事業を手がけるエリートマインド社の創業社長となっている。
幸せで、充実した生活だと感じている。
持ち前の自信とエネルギーを活かし、他の人々に刺激を与え、自らの手足を縛るような思考パターンを抜け出す手助けをしている。
ホテルでの経験はとにかくおぞましいものだった。
だからエブリーナがこのつらい出来事を新たな人生を歩み出す出発点ととらえていることは、とても興味深い。
マイナスの出来事に支配され、潰されてしまうのではなく、自ら主導権を握って進むべき道を定めた。
エブリーナのように危機をきっかけに進むべき方向、意欲、生きる意味を見出す人もいる。
直感的に自分がどこに向かっているかを理解している人、常に高い目標に向けて努力する人もいる。
信仰を持つ人は、聖書を拠りどころとするかもしれない。
哲学、あるいは人生の指針となる思想を持つ人もいる。
企業経営者は何のために事業をするかを「ビジョン」としてまとめることが多い★4。
私はこれまでさまざまな場面で、人は自分がどこへ向かおうとしているかはっきりわからないものだという現実を目の当たりにしてきた。
私たちはふだん特定の目標や取り組みのことを考えているわけではない。
むしろ自分がワクワクすることを追求し、これだと思える機会に巡り合うことのできる「オポチュニティ・スペース」を探している。
そのなかで偶然機会を見つけている。
会社やコミュニティや大学は、自分がどんな実験の旅をしたいのか決定し、それを実現するための「プラットフォーム」だと考えればいい。
スキルセットを磨きつつ、同時に自分にとって一番やりがいの感じられる場を探そう。
そうすればいくつもの選択肢に賭けてみることができる。
*セレンディピティは好ましい結果を引き起こすだけではない。
自分はどんな人間になれるのか、さまざまな可能性を探究し、想像もしなかったような「より良い自分」「より自分にふさわしい自分」に向けて進歩していくためのすばらしい手段でもある。
生物学の「隣り合う可能性」理論私は博士課程の研究を始めたとき、当時の指導教官とシンプルな取り決めをした。
自分の研究を頑張りつつ、教官がイノベーション・センターを立ち上げる手伝いもさせてもらう、と。
こうして研究をする機会を手に入れると同時に、新センターの副所長として外界とつながりを持ち、自分にぴったりだと思える分野を探すことができた。
LSEと創設に携わったイノベーション&コ・クリエーションラボは、私にとってすばらしいオポチュニティ・スペースとなり、実験のプラットフォームとなった。
そこでの出会いから生まれた思いがけない機会を活かして、私はCSR(企業の社会的責任)協会、サンドボックス・ネットワーク、リーダーズ・オン・パーパスといったプロジェクトを立ち上げることができた。
いずれも長い時間をかけて、自然な流れのなかで生まれてきた。
そして私には具体的に何かははっきりとはわからないが、いずれすばらしいことが起こるという確信があった。
なぜそんな確信が持てたのか。
自然科学の研究にそのヒントがある。
とりわけ注目すべきなのが、生物学の「隣り合う可能性」という有名な理論だ。
これはエコシステム内で起こるすべての相互作用によって、次に何が起こるかが決まるという考えだ。
これを人生の指針としているのがジョナサン・カランだ。
世界中さまざまな場所で暮らす機会を提供するプラットフォーム「アンセトルド」の共同創設者だ。
「隣り合う可能性」を理解すれば、今は不可能なことでも、それと現実の間に存在する他の可能性が実現すれば、いずれ可能になることがわかる。
炭素が長い時間をかけてダイヤモンドになるように、1つの相互作用から無数の可能性が生まれ、実現されるのを待っている。
このような新たな機会を受け入れるかどうかは、私たち次第だ。
未知なるものへの恐怖を、可能性を発見する喜びに変えるのだ。
ずいぶんと頼りない気がしてくるかもしれない。
どれくらい不確実性を許容できるかは人それぞれだ。
しかし隣り合う可能性という概念は、すべてを事前に計画しておくことは不可能であることをはっきり示している。
たとえばあなたは明日、ダライ・ラマと偶然出会い、シニアアドバイザーになってほしいと頼まれるかもしれない。
およそあなたの人生計画には含まれていなかったことだが、そこから途方もない可能性が拓ける。
新たな人やアイデアと出会うたびに、私たちのオポチュニティ・スペースはそれまで想像もしていなかった分野へと広がっていく。
社会科学でいう「予想外の効用」も同じような概念で、その対象はすでに知っている相手だ。
アダム・グラントが簡潔に説明している。
「今日出会う相手が、明日どうなっているかは絶対にわからない」。
だから「これをしたらどんな見返りがあるか」だけを判断基準にしていると、相手の潜在的可能性(そしてセレンディピティの可能性)を見逃すことになる★5。
組織を「プラットフォーム」とみなして賭けに出る何かに集中することも大切だが、新たな人との交流、知識、気づきから機会が生まれることを期待して「可能性に賭けること」も大切だ。
私はそのおかげで進むべき方向を感じとることができたし、次に何が起こるか予想するのに役立つ人脈を築くことができた。
実験を通じて成長できる場として、敢えて大企業に就職する人もいるかもしれない。
重要なのは、どんな仕事でも組織でもそれだけで完結したキャリアととらえるのではなく、「プラットフォーム」として見ることだ。
あなたは今、スキルや人脈を手に入れるためにゴールドマン・サックスで働いているのかもしれない。
その一方で何か大切にしている信念や課題はないだろうか。
たとえば女性の起業を支援するといったことだ。
それを会社の長期目標と結びつける方法はないだろうか。
クリエイティビティを発揮して、その信念をうまくフレーミングし、社内で後ろ盾になってくれる人を見つけたら、今自分が組織内でどんな立場にあろうと山を動かせるかもしれない。
大手会計事務所がトリプルボトムライン(企業の財務パフォーマンス評価に環境と社会への影響も加味すること)を採用したきっかけ、そして大手eコマース会社がフェアトレードのためのマーケットプレイスを開設したきっかけも、若手社員が動いたことだった。
組織をプラットフォームとしてとらえて可能性に賭けることで、まだ見えない北極星へと直感的に近づいていくことができる。
先の見通せない世界で成功している会社は、同じようなアプローチを採っている。
ハラルド・クルーガーはドイツで最も人気のあるCEO(当時は自動車メーカー、BMWのCEO)に何度も選ばれたことのある経営者だ。
クルーガーは私に、サステナビリティ(持続可能性)のようなテーマを推進するには強力なビジョンが必要だが、ビジョンを立てた後にはさまざまなシナリオを試してみる、と語ってくれた。
完璧なアプローチがあるわけではなく、小さなステップを積み重ねながら、未来に向けて可能性がありそうな分野を試していかなければならない。
「大切なのは好奇心、データ、そして他社とのベンチマークだ。
唯一無二の戦略的正解があるわけではない。
きっとうまくいくと信じて、新たな分野に足を踏み入れることだ★6」。
ただどんな賭けをするかは、個人のリスク許容度によって決まる。
組織で起こることのほとんどは偶然で、問題、解決策、参加者、選択の機会といったそれぞれ独立した流れがいつどんな具合にぶつかり合うかによって決まる、という考えを「ゴミ箱モデル」という。
どの解決策がどの問題と結びつくかは偶然決まることが多い★7。
時代は変わりつつある。
スウェーデンの有力銀行SEBのCEO、ヨハン・トルゲビーは、かつて経営者は内部収益率などの財務指標を中心に物事を考えていたと振り返る。
だが世界がエクセルシートではなく、信念によって動くようになった今は、可能性に賭ける「ハイテク投資家」のマインドセットを持つように心がけているという★8。
マヒンドラ・アンド・マヒンドラCEOのアナンド・マヒンドラはそれをこう表現する。
何が起こるか予測できない世界では「100の花を咲かせ、『正しい』1本を見つけなければならない」。
私たちも個人として、可能性に賭けることはできる。
週1~2時間、尊敬する誰かのために働くといった、ささやかなことから始めてもいい。
予想外の機会はたいていそういうところから生まれる。
「20年後に失望するのは、やったことよりもやらなかったことだ」というマーク・トウェインの有名な言葉がある。
それをこう言い換えてみよう。
「20年後に振り返ったとき、やらなくて後悔することは何か」。
まだ答えがわからなければ(それもある意味当然だ)、あなたが最も魅力を感じる対象は何だろう。
それに向けて成長していく、あるいは幅広いスキルを身につけていくのに最適な「プラットフォーム」はどこだろう。
こうした問いに答えていくと、体のなかから意欲が湧いてくるような夢が、はっきりしてくる。
セレンディピティのトリガーになりそうな要因、自分が大切に思っていること、自分がどんな人間であるか(どんな人間になりたいか)が浮かび上がってくる。
そうなれば点と点を結びつけるのも容易になる。
結びつける対象がはっきりするからだ。
「生きがい」で点と点を結ぶ私たちの抱く夢は、心の奥深くにある信念や価値観に根差していることが多い。
集団主義的コミュニティで育った人は、個人の野心よりも家族を重視する。
キャリアに重きを置く個人主義的環境で育った人は、集団の目標よりも個人の夢を追求しようとする★9。
恐れ、絶望、復讐といった根深い感情から生まれること
もある。
そしてきわめて重要なのが、生きがいを求める気持ちだ。
枕元に聖書を置いている人もいるが、私の枕元にあるのはヴィクトール・フランクルの『夜と霧』だ。
精神科医としても名高いフランクルの理論と実践の中心にあったのは、人間には生きがいが必要という考えだ。
人間を動かすのは権力欲や性欲だという説もあるが、フランクルはそれは生きる意味への欲求だと考えた。
『夜と霧』ではナチスのホロコーストを生き延びた自らの経験をもとに、それを説明している。
強制収容所での過酷な生活のなかで自らを心理的に支えたのは、可能なかぎりそこに「意味」を見出そうとする姿勢だったという。
たとえば他の囚人に希望を与えるような言葉をかけることで、自らの生きる意味を見出すといった具合に。
それに加えてフランクルには、強制収容所を出たら本を出版する、というもっと大きな夢もあった。
日常の小さな事柄に意味を見出しつつ、もっと大きな長期的夢を抱くことで、フランクルは過酷な日々を生き延びることができた(最近の研究でも、生きがいを持つことが健康などさまざまな恩恵をもたらすことが裏づけられている★10)。
さまざまな職業、人生経験を持つ人々の話を聞くなかで、私もそれを実感してきた。
人生そのものに意味を与える北極星と、日々の有意義な人とのかかわりの両方があるとき、人生は輝く。
生き生きと生きるためには、マクロとミクロの両方の生きがいが必要なのだ。
だが1つ問題がある。
私たちは人生を、段階を追って進歩していくものと考えがちだ。
しかも多くの人が学校や大学で「マズローの欲求5段階説」を教わる。
これは史上最も使用されることの多いパラダイムの1つで(誤用されすぎだという指摘もある)、私たちの生き方、働き方全般に看過できない影響を与えてきた。
欲求5段階説によると、人間はまず安全な住みか、空気、食料、水といった生理的欲求を満たし、次に安全欲求、次に友人や家族などの社会的欲求、優れた業績などの承認欲求、そしてようやく最後に(まだ時間が残されていれば)自己実現欲求、すなわち自分が本当に大切だと思う問題の解決、充実感、自己実現、深い生きがいに意識を向ける*。
アンドリュー・カーネギーやジョン・D・ロックフェラーなどは、まず下位の物質的欲求を満たした後、階層を登っていき、人生の後半になって慈善事業に身を捧げ、財産の大部分を寄付した。
同じように私の優秀な教え子のなかにも「まず金を稼ぎ、それから善行を積む」という金言に従い、最初の10年はお金を稼ぎ、「正統派」のスキルを身につけるためにあまり気の進まない仕事で頑張り、本当にやりたいことは後回しにする者もいる。
人生に対するきわめて直線的なアプローチで、組織にも同じような発想に基づいているところが多い。
だが最近はお金と生きがいを両立させようとする動きが強まっている。
ハラルド・クルーガーがそれをわかりやすく説明している。
「今日の従業員はやりがいを感じなければ、会社への忠誠心を失う」。
*興味深いことに近年の研究によって、マズローは「ポピュラー心理学」によって長年曲解されてきたことが明らかになってきた。
マズローが欲求を階層化していたわけではなく、そう解釈されてきただけだ、というのだ(Bridgmanetal.,2019)。
お金と生きがいを融合させたいという欲求が広まるこんなふうに考えているのは企業の従業員や顧客だけではない。
利益と大義の両方を追求できる企業に投資しようとする新世代の投資家など、世の中の期待も変化している。
それは投資家の資金を必要とする銀行、年金基金などに経営や投資のあり方の修正を迫る。
昨今の報道と矛盾するようだが、このような欲求を持つのはミレニアル世代だけではなく、あらゆる年代に当てはまる。
不確実性の高まる世界において、後世にどんなレガシー、貢献、影響を残すかは一段と重要な問題になっている。
私が一緒に仕事をする企業経営者の多くは退職の時期が近づくにつれて、自分はどんなレガシーを残したいのか考え始める。
死期が近い人、あるいはつらい別離を経験した人は「人生の根源的意味」を問い直す。
私たちの選択は、自分がどんな人間であるか、あるいはどんな人間として記憶されたいかというイメージに影響を受け、またそのイメージを形づくっていく。
それを自在にできるようになったら、もう止まらない。
今日のテクノロジーを使えば、自分がどんな人生を生きられるのか、どんな選択肢があるかが見えてくる。
お金と生きがいを融合させたいという欲求は一段と広まっており、絵空事ではなく実現可能と見られるようになった。
人としての価値が物質的価値で測られ、お金が成功の重要な指標とみなされるコミュニティもある。
お金は測定しやすく比較しやすいためだろうが、それに違和感を抱くのはサン=テグジュペリの星の王子さまだけではない★11。
興味深いことに、自分の人生を意味のあるものだと感じ、周囲からの圧力を気にしなくなると、自分らしく生きられるようになる。
するとセレンディピティ、さらにはシンクロニシティ(共時性)までが頻繁に起こるようになる。
自分が欲しいふりをしているものではなく、心から望んでいるものを引き寄せるようになるのだ。
大手クラウドファンディング・プラットフォーム「インディゴーゴー」の創業者ダナエ・リンゲルマンは、妹のメルシーを「セレンディピティの女王」と呼ぶ。
メルシーはどんな挑戦にも全身全霊で打ち込む。
ハーブに詳しく、テクノロジーセールスに強く、小規模企業のオーナーであり3人の子を持つ母でもある。
「数百万ドルの取引をまとめようとしてみんながピリピリしていると、リラクゼーションや免疫系に効くエッセンシャルオイルをさっと取り出して、チームを穏やかな気持ちにしてくれる。
自分が経営するオーガニックケールの会社に子供たちを連れてきて、一緒に商品を袋詰めしたりする」とダナエは話す。
周囲の状況に応じて自分を取り繕ったり、不都合な面を隠そうとはしない。
メルシーが壁を意識的に取り払うようになってから、セレンディピティは増える一方だ。
それによってエネルギーレベルも高い状態に保たれる。
自分の一部を隠そうとするのは大変だし、消耗する。
本当の自分を他者に見せれば、人間関係の摩擦を抑えることができる。
それが成功のカギになるとダナエは考えている。
私もプライベートや仕事の場で、同じような人をたくさん見てきた。
心から大切に思うこととお金を稼ぐことを融合させようとする気運は高まっている。
「インシンク・グローバル」のようなコーチング・プラットフォームは、こうした発想をコーチングに取り入れている。
起業家のカラ・トーマスが立ち上げた団体「セレンフリピティ」は、楽しいカードを使って「本当の自分」を解放する方法を広めようとしている。
「本当の自分」を他者と共有する。
仮面をはずし、深い絆、本音、信頼を受け入れる。
偽りの自分を演じていると、病気になることもある。
そして自分が意義のあることに取り組んでいると感じている人は(たとえそれが単調な仕事であっても)より健康で、生産的なことが証明されている★12。
自ら選べるとしたら、自分が不幸で病気になるような生き方で人生の大半を過ごす人がいるだろうか。
多くの研究で他者に「与える」ほうが幸せになれるという結果が示されているのに、私たちは「奪う」ことを強いられてきた★13。
だが今、根本的な変化が起こりつつある。
かつて欲求はピラミッド構造だと考えられていたが、実は「サークル(円)構造」であるという認識に変わりつつある。
人は欲求を順番に達成していくのではなく、同時に満たそうとしているのだ、と*1。
もある。
そしてきわめて重要なのが、生きがいを求める気持ちだ。
枕元に聖書を置いている人もいるが、私の枕元にあるのはヴィクトール・フランクルの『夜と霧』だ。
精神科医としても名高いフランクルの理論と実践の中心にあったのは、人間には生きがいが必要という考えだ。
人間を動かすのは権力欲や性欲だという説もあるが、フランクルはそれは生きる意味への欲求だと考えた。
『夜と霧』ではナチスのホロコーストを生き延びた自らの経験をもとに、それを説明している。
強制収容所での過酷な生活のなかで自らを心理的に支えたのは、可能なかぎりそこに「意味」を見出そうとする姿勢だったという。
たとえば他の囚人に希望を与えるような言葉をかけることで、自らの生きる意味を見出すといった具合に。
それに加えてフランクルには、強制収容所を出たら本を出版する、というもっと大きな夢もあった。
日常の小さな事柄に意味を見出しつつ、もっと大きな長期的夢を抱くことで、フランクルは過酷な日々を生き延びることができた(最近の研究でも、生きがいを持つことが健康などさまざまな恩恵をもたらすことが裏づけられている★10)。
さまざまな職業、人生経験を持つ人々の話を聞くなかで、私もそれを実感してきた。
人生そのものに意味を与える北極星と、日々の有意義な人とのかかわりの両方があるとき、人生は輝く。
生き生きと生きるためには、マクロとミクロの両方の生きがいが必要なのだ。
だが1つ問題がある。
私たちは人生を、段階を追って進歩していくものと考えがちだ。
しかも多くの人が学校や大学で「マズローの欲求5段階説」を教わる。
これは史上最も使用されることの多いパラダイムの1つで(誤用されすぎだという指摘もある)、私たちの生き方、働き方全般に看過できない影響を与えてきた。
欲求5段階説によると、人間はまず安全な住みか、空気、食料、水といった生理的欲求を満たし、次に安全欲求、次に友人や家族などの社会的欲求、優れた業績などの承認欲求、そしてようやく最後に(まだ時間が残されていれば)自己実現欲求、すなわち自分が本当に大切だと思う問題の解決、充実感、自己実現、深い生きがいに意識を向ける*。
アンドリュー・カーネギーやジョン・D・ロックフェラーなどは、まず下位の物質的欲求を満たした後、階層を登っていき、人生の後半になって慈善事業に身を捧げ、財産の大部分を寄付した。
同じように私の優秀な教え子のなかにも「まず金を稼ぎ、それから善行を積む」という金言に従い、最初の10年はお金を稼ぎ、「正統派」のスキルを身につけるためにあまり気の進まない仕事で頑張り、本当にやりたいことは後回しにする者もいる。
人生に対するきわめて直線的なアプローチで、組織にも同じような発想に基づいているところが多い。
だが最近はお金と生きがいを両立させようとする動きが強まっている。
ハラルド・クルーガーがそれをわかりやすく説明している。
「今日の従業員はやりがいを感じなければ、会社への忠誠心を失う」。
*興味深いことに近年の研究によって、マズローは「ポピュラー心理学」によって長年曲解されてきたことが明らかになってきた。
マズローが欲求を階層化していたわけではなく、そう解釈されてきただけだ、というのだ(Bridgmanetal.,2019)。
お金と生きがいを融合させたいという欲求が広まるこんなふうに考えているのは企業の従業員や顧客だけではない。
利益と大義の両方を追求できる企業に投資しようとする新世代の投資家など、世の中の期待も変化している。
それは投資家の資金を必要とする銀行、年金基金などに経営や投資のあり方の修正を迫る。
昨今の報道と矛盾するようだが、このような欲求を持つのはミレニアル世代だけではなく、あらゆる年代に当てはまる。
不確実性の高まる世界において、後世にどんなレガシー、貢献、影響を残すかは一段と重要な問題になっている。
私が一緒に仕事をする企業経営者の多くは退職の時期が近づくにつれて、自分はどんなレガシーを残したいのか考え始める。
死期が近い人、あるいはつらい別離を経験した人は「人生の根源的意味」を問い直す。
私たちの選択は、自分がどんな人間であるか、あるいはどんな人間として記憶されたいかというイメージに影響を受け、またそのイメージを形づくっていく。
それを自在にできるようになったら、もう止まらない。
今日のテクノロジーを使えば、自分がどんな人生を生きられるのか、どんな選択肢があるかが見えてくる。
お金と生きがいを融合させたいという欲求は一段と広まっており、絵空事ではなく実現可能と見られるようになった。
人としての価値が物質的価値で測られ、お金が成功の重要な指標とみなされるコミュニティもある。
お金は測定しやすく比較しやすいためだろうが、それに違和感を抱くのはサン=テグジュペリの星の王子さまだけではない★11。
興味深いことに、自分の人生を意味のあるものだと感じ、周囲からの圧力を気にしなくなると、自分らしく生きられるようになる。
するとセレンディピティ、さらにはシンクロニシティ(共時性)までが頻繁に起こるようになる。
自分が欲しいふりをしているものではなく、心から望んでいるものを引き寄せるようになるのだ。
大手クラウドファンディング・プラットフォーム「インディゴーゴー」の創業者ダナエ・リンゲルマンは、妹のメルシーを「セレンディピティの女王」と呼ぶ。
メルシーはどんな挑戦にも全身全霊で打ち込む。
ハーブに詳しく、テクノロジーセールスに強く、小規模企業のオーナーであり3人の子を持つ母でもある。
「数百万ドルの取引をまとめようとしてみんながピリピリしていると、リラクゼーションや免疫系に効くエッセンシャルオイルをさっと取り出して、チームを穏やかな気持ちにしてくれる。
自分が経営するオーガニックケールの会社に子供たちを連れてきて、一緒に商品を袋詰めしたりする」とダナエは話す。
周囲の状況に応じて自分を取り繕ったり、不都合な面を隠そうとはしない。
メルシーが壁を意識的に取り払うようになってから、セレンディピティは増える一方だ。
それによってエネルギーレベルも高い状態に保たれる。
自分の一部を隠そうとするのは大変だし、消耗する。
本当の自分を他者に見せれば、人間関係の摩擦を抑えることができる。
それが成功のカギになるとダナエは考えている。
私もプライベートや仕事の場で、同じような人をたくさん見てきた。
心から大切に思うこととお金を稼ぐことを融合させようとする気運は高まっている。
「インシンク・グローバル」のようなコーチング・プラットフォームは、こうした発想をコーチングに取り入れている。
起業家のカラ・トーマスが立ち上げた団体「セレンフリピティ」は、楽しいカードを使って「本当の自分」を解放する方法を広めようとしている。
「本当の自分」を他者と共有する。
仮面をはずし、深い絆、本音、信頼を受け入れる。
偽りの自分を演じていると、病気になることもある。
そして自分が意義のあることに取り組んでいると感じている人は(たとえそれが単調な仕事であっても)より健康で、生産的なことが証明されている★12。
自ら選べるとしたら、自分が不幸で病気になるような生き方で人生の大半を過ごす人がいるだろうか。
多くの研究で他者に「与える」ほうが幸せになれるという結果が示されているのに、私たちは「奪う」ことを強いられてきた★13。
だが今、根本的な変化が起こりつつある。
かつて欲求はピラミッド構造だと考えられていたが、実は「サークル(円)構造」であるという認識に変わりつつある。
人は欲求を順番に達成していくのではなく、同時に満たそうとしているのだ、と*1。
つまり(インドのメディテーションスクール「O&Oアカデミー」創設者、クリシュナジ・クリシュナ、プリタジ・クリシュナ夫妻の言葉を借りると)「仏の心を持ち、愛する人とベンツを転がす」ような、物心両面で豊かな人生を目指すのだ★14。
自分自身と、自らを取り巻く世界への理解を深めることで、大切な人々とより意義のあるつながりを持てるようになる。
恵まれた人だけの特権ではない生きる意味や高尚な目標を追い求めるのは、一部の人にのみ許される特権ではないのか、と思うかもしれない。
貧困や欠乏に苦しみ、食べ物と栄養、教育や住居を確保するだけで精一杯な人にも同じことが言えるのか、と。
こうした考えは長年、西側諸国や世界中で開発援助の取り組みが失敗する原因となってきた。
援助を受ける側の「下位のニーズ」さえ満たせば問題は解決するという発想は、地域コミュニティの活力を削ぐ。
厳しい環境を生き延びるには希望が必要で、それには「上位のニーズ」とされる生きがいへの欲求が重要なことを過小評価しているのだ(ベーシックインカムの議論も同じように、この重要な論点を見落としている。
金銭は必要な要素の1つでしかない)。
NYUやLSEでの私たちの研究では、リソースの制約された状況ほど、主体的に運を生み出し、自分自身にかかわる大切な問題を解決する能力が重要になることがわかっている。
それは尊厳のある幸せな生活をもたらすだけでなく、メンタルヘルスの問題も抑える。
Rラボのエピソードを思い出してほしい。
メンバーが自らの役割を「環境の被害者」「援助の受け手」から、「自らの運命をつくり出す主体」ととらえ直すことができて初めて、彼らの人生は大幅に改善し、セレンディピティがたくさん起こるようになった。
大切なのは施しを受けることではなく、希望と明確な「生きる意味」を生み出すことだ★15(ただ言うまでもなく、資金その他のリソース不足があまりに深刻で、他のすべてが霞んでしまうこともある。
こうしたプレッシャーに意識が集中すると、誤った意思決定につながることが研究では示されている★16)。
状況はまったく違うが、マスターカードCEOのアジェイ・バンガはリーダーズ・オン・パーパスの調査チームに、会社として目的をしっかりと固めたことがすばらしい成果につながったと語った。
バンガが掲げた目的とは、世界で5億人の消費者と4000万社の小規模事業者を金融システムにつなげるというものだった。
5億人を迎え入れるための具体的戦略があったわけではない。
だが目標を明確にし、クリエイティブな人材の背中を押すことによって、どれほどすばらしい可能性が拓けるかがわかったという。
これまでに4億人以上を受け入れることができた。
「私たちが目指しているのは、単にクレジットカードの発行枚数を増やすことではなく、現金を使わない世界の実現だ。
その発想は今や社内のすべての議論や行動に組み込まれている」。
ここから読み取れる教訓は、今日のリーダーは変化する環境に対応し、社員に責任ある行動を促すために、理性だけでなく心に訴えかける必要があるということだ。
今マスターカードで多くのセレンディピティが生まれているのは、社員が会社の目的を理解し、それに意欲を感じているからだ。
これは幅広い分野に当てはまる。
私たちが世界で最も高い成果を挙げるCEO31人を調査したところ*2、CEO個人や彼らの率いる会社は理性と心の両方に響く目標を追い求め、それがセレンディピティにつながっていることがわかった★17。
会社の北極星と、やりがいのある日々の仕事が密接に結びついていた。
社員は仕事が終わった後に好きな趣味などに没頭するより、日々の仕事にすべてのエネルギーを注ぐ傾向があった。
*11人ひとりの欲求のサークルがうまくまわっていくかは、他者の欲求をどれだけ思い遣ることができるかにかかっている。
知識と情報の共有を土台とするネットワーク化社会においては良識的利己心がカギとなる。
このような認識を示し、図5を提供してくれた同僚のブラッド・フィチュウに感謝する。
*2対象者は『ハーバード・ビジネス・レビュー』の「CEOオブ・ザ・イヤー」ランキングに基づいて選出。
合理的楽観主義のすすめ現実にはトレードオフが生じることも多い。
自分にとって大切な目標(世界の食料不足を解決する、など)を追いかけることが、利益追求という会社の目的にそぐわないと感じられることもあるだろう。
だが寝具メーカーの「ナチュラ」のように、理性と心の両方を満たす目標を掲げることがイノベーションやセレンディピティにつながることを示している例もある。
無関係と思われていた要素を融合することが新たなつながりを誘発し、社員はより効果的なソリューションを生み出そうという意欲を持つ。
ナチュラの幹部は私に、創業者に哲学者のような気質があり、一見対立するような目標を設定して意識的に緊張状態を生み出そうとしているのだと教えてくれた。
これは本物のクリエイティビティやイノベーションの呼び水となることが多く、人類の進歩の多くはこうして生まれてきた。
方向性を意識し、実践することは大切だ。
しかし目的という概念が邪魔になることもある。
ここで再びレイラ・ヤルジャニのケースを見てみよう。
子供のための学習とメディア会社、リトルブリッジの共同創業者であるレイラは、人生の目的をきっちり定義するのは無駄だと思っている。
代わりに、自分が今どこにいるのか、どこへ向かいたいと思っているかに意識を集中している。
点と点がどうつながっていくかをイメージするのに役立つからだ。
それには合理的楽観主義が必要だ。
ヴィクトール・フランクルが飛行訓練を受けたとき、教官はこう言ったという。
実際に飛びたい高度より、常に少し高めを目指さないといけない。
たいていは風によって下に引っ張られるから、と。
フランクルはそれにひねりを加えて、現実主義から出発すると鬱状態に陥るが、楽観主義からスタートすれば最終的に真の現実主義者になると考えた。
第2章で見たとおり、楽観的な人は他の人より幸運に恵まれることが研究によって明らかになっている。
自己実現的予言という言葉もあるように、楽観は「実現」するのだ★18。
自分をよく知ることの効果2017年、ハリケーン・マリアがプエルトリコに甚大な被害をもたらした。
このとき世界の大手家電チェーン、ベストバイは同地に3店舗を構えていた。
迅速な判断を迫られた経営陣は、プライベートジェットと食料と水を手配し、希望する従業員と家族に避難する手立てを提供した。
店は閉めたが、従業員への給料の支払いは止めなかった。
従業員に出した唯一の条件は、ハリケーン・マリアが収まったら島の復興に貢献することだ。
ベストバイの取締役会長で元CEOのユベール・ジョリーは「自分たちが正しいと思うことをやっただけだ」と私に語った。
投資家に会社としての考えを伝え、コストが発生することも伝えつつ、「予想外にどう対応するかが、会社としての価値観や文化を決定づける」と説明したという。
ベストバイがとった対応は、従業員に強いシグナルを伝えた。
「私たちはみなさんを守る。
仲間なのだから」と。
この結果、プエルトリコでのベストバイの売上高は約20%増加し、従業員の意欲は飛躍的に高まり、顧客はベストバイの人道的経営を高く評価した。
ベストバイは売上高を増やすために従業員を守ったわけではないが、結果としてそうなった。
正しい行動をとることと収益を上げることが両立できるという好例だ。
同じように2015年~2019年にトルコの通信会社タークセルのCEOを務めたカーン・テルジオールは、企業経営者は自社の能力や社会における役割を明確に理解したうえで、予想外の事態に備えるべきだと私に語った。
新興国では予想外の事態など日常茶飯事だ。
そのたびにカーンは自らの信念に基づいて、点と点を直接つなぐ。
たとえば2016年にはトルコでクーデター未遂事件が勃発し、深刻な武力衝突が起きた。
このときカーン以下の経営陣は1カ月にわたってインターネットを無料にし、国民が通信料金を気にせず大切な人と連絡を取り合えるようにした。
他の予想外の出来事にも同じように対応した。
地震が発生したときには、電話ネットワークを維持するためにドローンを送った。
それが会社の価値観に照らして正しい行為だったからだとカーンは説明した。
また従業員がタークセルで働くことに誇りを持ち、顧客にも感謝されるなど、好ましい結果につながったという。
自分にとって大切な価値観とは何か予想外の事態や危機的状況に対応しようとするときに現れるのが、本当の価値観、信念、直感的行動だ。
自分自身をよく理解するとセレンディピティに対してオープンになれる。
予想外の事態に対処するための基本的な枠組みができ、予想外を脅威ではなく機会ととらえられるようになるからだ(だからといって分析的な意思決定方法や、意思決定の指針となる既存のルールをないがしろにするつもりはない。
分析的思考と直感的行動は二者択一というより相互補完的なものだ。
不安定で予測不能で、変化が激しく複雑な状況では、当事者に豊富な経験があるほど優れた直感が働きやすくなる★19)。
人生で何が待ち受けているのか知ることはできない。
あらゆる事態に備えを固めるのは困難だ。
トレードオフを伴う場合はなおさらである。
私たちにできるのは、自分にとって最も大切な価値観や行動をはっきりさせておくことだ。
私は共同創設者となったある組織で、トレードオフに直面したときのことをはっきりと覚えている。
未来に対する異なる意見、信念、リスク認識の板挟みになり、直感に逆らってなるべく理性的に判断を下そうとした。
だが後から振り返って、自分が恐怖に支配されていたことに気づいた。
失敗する恐怖、失う恐怖、対立の恐怖。
メンターからは状況に合理的に対処しろとアドバイスを受けていたが、実際はチームメンバーの気持ちに配慮せず、あらゆる衝突を避けようとしていただけだった。
その結果、誰もが自分の意見に耳を傾けてもらえないという不満を持つことになり、対立を解消するどころか悪化させてしまった。
私自身、満足のいく判断ではなかったが、あの経験を通じて自分にとって最も大切なものは何かを意識することができ、次からは意思決定の方法を変えようという決意が固まった。
今では重要な意思決定をするときは、自分の直感に耳を傾け、恐怖を避けるためではなく、希望やビジョンに基づいて判断をくだすよう努めている(それは死の間際に「心の声に従っていれば良かった」と後悔したくないためでもある★20)。
自己認識のスキルは幼いうちから鍛えることができる。
子育て中の人には、アダム・グラントの方法が役立つかもしれない。
グラントは「午後9時に就寝」といったルールをつくる代わりに、それがどんな価値観に基づいているかを説明する。
たとえば「しっかり休息をとることは大切だから」といった具合に。
そうすることで子供にルールが恣意的ではないことを理解させる。
次に子供に責任を持たせる。
部屋の明かりは午後8時30分に消しなさい、と言いつつ、それを子供自身に任せるのだ。
グラントの場合は娘に選択肢を与えた。
「自分で責任を持って電気を消すのと、パパが消すのとどっちがいい?自分でやらないなら、電気を消す権利を失うことになるよ★21」。
こうして娘に選ばせるのだ。
自らの信条や価値観を口にするのは簡単だが、本当に実践しているだろうか。
それは本当に私たちの行動の指針となっているだろうか。
産業界では両者を一致させようとする動きが広がっている。
ロレアルでは最高倫理責任者(略すとこれもCEOになる)のエマニュエル・ルリンが世界中の拠点をまわって誠実さ、敬意、勇気、透明性といった価値観を徹底させようとしている。
新入社員はこうした価値観と倫理規定の両方を叩き込まれ、対面あるいはウェブ会議でも繰り返し示される。
オムニコム傘下のケッチャムでは、CEOのバリー・ラファティが価値観を行動に移すロールモデルとなっている。
「ワークライフ・バランス」ならぬ「ワークライフ・インテグレーション(仕事と私生活の統合)」は、ラファティ自身が大切にしている原則だ。
育児休暇制度をつくるだけでは従業員が取得しないことを理解していたラファティは、制度の名称を「家族の絆制度」に変更した。
そしてプライベートを大切にしても構わないことを社内に示すため、「人目につくように退社する」ことを心がけた。
娘のバレーボールの試合があるときには、自分が観にいくことを周囲にはっきり伝えた。
CEOに就任したときの社内への挨拶メールでは、「家族を捨てないこと」が自分の重要な原則であり、すでに計画している休暇はそのまま取得するつもりだと宣言した。
これによって社内の誰もが家にいなければならないときにはそれを伝え、その代わりに出社しているときはこれまで以上に業務に集中するようになった★22。
「質の高い直感」を育むには困難な選択に直面したときに「ノー」と言うべきタイミングを見きわめることも大切だ。
その選択がセレンディピティのもたらしたものならなおさらだ。
予想外の機会は道を誤るリスクもはらんでいる。
たとえばあなたが偶然、とある財務情報を知ったとしよう。
それがインサイダー取引を可能にするものだったらどうか(「信頼を築くには20年かかるが、失うには5分もあれば十分だ」とウォーレン・バフェットも言っている)。
価値観や信条は、時間をかけて醸成される。
ここで参考になるのは「唯一無二の本当の自分などというものは存在しない」という東洋哲学の考えだ。
西洋人はそう思いがちだが、現実には私たちは状況変化に適応して常に変化している。
自分の直感を信じられるようになれば、困難な決断を下しやすくなる。
ただその前提として、十分な情報を集め、「質の高い直感」が働くようにしておく必要がある(無意識下には意識下よりも多くの情報が潜んでいるので、そこに直感と情報が融合されているならば、耳を傾けるのは実は非常に理にかなったことだ。
対話を通じてより多くの情報を集めることができれば、自分がそれについてどう感じるのか、はっきりと見えてくる。
私は最初から立場をはっきり決めず、感覚を頼りに正しい方向に進むよう努めている)。
内省的アプローチは企業でも実践できる。
ドイツで数多くの精神科病院を運営するハイリゲンフェルトは、集団での内省という方法を使っている。
週1回、300人近い従業員が集まり、1時間かけて1つのテーマあるいは価値観について考える。
まず簡単な「枠組み」の設定、プレゼンに続いて、小グループに分かれ
てのディスカッション、そして最後に全体での報告会という流れだ。
これは組織全体の価値観を明確にし、従業員の意欲を高めるのに役立つ。
このプロセスを通じて自分たちの仕事の大切さを思い出してもらうのだ。
企業の信条は、社屋にも表れる。
ミシガン州のカスケード・エンジニアリング社は「新たな問題を生み出さずに問題を解決する会社」を標榜している。
それは環境性能評価システム「LEED」の基準を満たした建物を社屋とし、従業員や環境を大切にする姿勢にも表れている★23。
セレンディピティは私たちが心をオープンにしたときに起こる。
このため自分がどんな人間であるか(自分をどんな人間だと思っているか)、どんな人間になりたいのか、大切にしているものは何かといった自己認識と行動が合致していれば、セレンディピティは起こりやすくなる。
ただ何かを大切に思うことは強力なモチベーションになるものの、セレンディピティは私たちが特段大切に思っていないこと、あるいは意義や目的を感じていない分野でも起こりうる。
ここで重要な役割を果たすのが、やさしさ、寛容さ、良識的利己心だ。
「利己」より「利他」でより幸福にセレンディピティは私たちが自ら点と点を発見し、つなぐことで起こる。
サンドボックスの共同創業者で、トゥギャザー・インスティテュートの創業者でもあるファビアン・フォートミュラー、あるいはクリエイターを投資家や優れた活動と結びつけるプラットフォーム「トゥ・ドットオルグ」の創業者のナクソン・ミムランは、それを本能的に実践している。
誰かから問題や困難を抱えているという話を聞くと、誰かを紹介したり、アイデアを提供したりして助けになろうとする。
見返りは何も求めない。
ヴィクトール・フランクルと同じように、長い目で見ればそれによって自分が幸せになれること、いずれそれが自分に返ってくることを理解しているのだ。
実際、他の人を助けるほど、こちらが何も期待していなくても他の人が助けてくれるようになる★24(さらに嬉しいことに、親切心や感謝の気持ちは睡眠の質、幸福感、注意深さも高めてくれることが研究で明らかになっている)。
ギバー、テイカー、マッチャーアダム・グラントは「ギバー(「自分は人のために何ができるか」を考え、他者に付加価値を与えることが内的動機づけとなる人)」のほうが「テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)」よりも大きな成功を収めることが多い、と書いている。
これはサービスが最も重要な差別化要因となる分野において特に顕著だ★25。
とはいえギバーでありながら成功者となるには、優れた時間管理能力、親切の限度を明確にすること、そして他者と自分に最も大きな付加価値を与えられる分野はどこかを主体的に考えることが不可欠だ。
このような限度や資質がなければ、親切があだとなり、周囲の要求に応え続けて消耗してしまう。
私自身、本来ギバーであるため、限度を定めることの重要性を身をもって学んできた。
そうしなければ、一歩外に出るたびに燃え尽きてしまう。
こうした特徴は交渉の場ではっきりと表れる。
たとえば私は経営に関与する会社で出資話が持ち上がると、自分の取り分を大きくすることよりみんなに満足してもらうことを重視し、結局自分が損をすることもあった。
何度か痛い目に遭って、長期的にはこの方法では(私はもちろん)誰も幸福にならないことを学んだ。
怒りや不公平感がどうしても出てくるからだ。
そうした感情に早い段階で対応していれば、後々問題にはならなかっただろう。
当然ながらメンタルヘルスを健全に保つには、自分自身を大切にして、幸福感を高めることが大切だ。
自分の状態が良ければ、他人に対してより親切になれる。
私はアダム・グラントらの知見に触発されて、常に全員を幸せにすることを考えるのをやめ、今すぐ誰かを幸せにするために自分にできることを考えるようになった。
そのほうがストレスははるかに少ないのだ。
ときには「テイカー」がギバーになりすまし、他者に尽くしているふりをすることもある。
たとえば「小手先のシグナリング」として、実際にはたいしたことはしていないのに、慈善事業で目立つ役回りを引き受けたりする。
だがグラントの言葉を借りれば、こういう人は結局「人生の敗者」となる傾向がある。
ギバー、テイカーと並ぶ3つめの類型が「マッチャー(損得の帳尻を合わせようとする人)」だ。
いわば人間関係の会計士で、常に損得のバランスが合っているように心がける。
これはゲーム理論に通じるところがあり、たとえば周囲がテイカーばかりならば、ギバーになりすぎると損をする。
マッチャーは利己的にも、利他的にもなりたくないので、帳尻を合わせようとする。
短期的にはうまくいくかもしれないが、結局は周囲に見透かされてしまう。
どうすればやさしさを身につけられるか多くの国において、幸福になることに集中するよう言われた人は実際に幸福になることを示す研究成果が出ている。
しかしアメリカをはじめ一部の国では、その逆の現象が見られる。
その理由は、多くの国において幸福感は「他者のために」何かをすることと関連し、事実そうすることによって人は幸福になるのに対し、一部の国では幸福が「自分のためにお金を使うこと」と結びついているからだ。
それで短期的満足や安らぎは得られるかもしれないが、心から幸福にはなれない。
中期的には「自分中心」より「他者中心」のほうが幸福になれる(ただもちろんセルフケアは非常に重要で、他者に尽くすには自分自身の情緒の安定が不可欠だ★26)。
それはセレンディピティの機会を増やすのにも役立つ。
互いへの善意があるほど、私たちが点と点を結びつけられるように周囲は助けてくれる。
どうすれば自分自身と周囲へのやさしさを身につけることができるだろう。
1つの方法は、感謝の気持ちを大切にすることだ。
困難な状況に置かれたときほど、それが重要になる。
カラ・トーマスはある年の大晦日にフライトが遅延して、イライラしていた。
そんな気持ちを克服しようと、「ありがとう」をたくさん見つけようと努力した。
ウーバーの運転手と興味深い会話ができたこと、夕食に間に合う時間に目的地に着けたことなどだ。
それによってマイナス思考を振り払うことができ、セレンディピティが起こり得る状態に自分を戻すことができた。
ウーバーの運転手の紹介で、とある映像作家と出会うチャンスに恵まれたのもそのおかげだ。
組織でも同じことができるだろうか。
フランスのエンジニアリング会社FAVIは、会議の冒頭で参加者が誰かに感謝するという試みを始めた。
それによって他の参加者も感謝のマインドセットを持ち、周囲と協力しようとする気運が高まった★27(第8章ではもっと競争の激しい組織において、これを実践する方法を見ていく)。
ただしフェイクには注意が必要だ。
利己心を隠すために利他的なふりをする人は多く、下心を隠して善人のふりをする人もいる。
たとえば人生をリセットするためにオーストリアからインドへ逃亡した犯罪者のエピソードがある。
インドでは学校づくりに協力したが、その資金はマフィアから得たもので、目的は好きな女性を感心させることだった。
学校ができるという好ましい結果によって、その手段や意図を正当化することはできない。
より良い世界をつくるために自分を犠牲にした、というと聞こえは良いかもしれない。
だが本当は罪悪感や義務感、あるいは社会に役立つ人間に見られたいという思いで行動しただけかもしれない。
よくあることで、とりわけ社会活動家に多い。
口では「百万人を助けたい」と言いつつ、実は「百万人を助けた人」として見られたいというだけの人もいる。
これは利他的ではなく単なるエゴだ。
自らの意図を率直に語ること、そして良識的利己心(それがあればの話だが)を持ち、周囲に上手に伝えることで、信頼関係を築くことができる。
要するに、あまり利己的にならないほうが本当の意味で自らの利益につながる。
自分を肯定できるし、点と点を結びつけ、セレンディピティを発見するのに周囲も手を貸してくれる。
ただ私たち自身にセレンディピティを受け入れる用意がなければ、何も始まらない。
外向的タイプと内向的タイプで違いはあるかセレンディピティを起こりやすくするのは、主体性、ユーモア、新たな経験へのオープンな姿勢、斬新なアイデアを試すことへの意欲といった習得可能(訓練によって身につけられる)な特性であることが研究によって明らかになっている★28。
とりわけ自ら行動を起こす、未来について考えるといった主体的行動は、
セレンディピティの起こりやすい状況を生み出し、障害を克服するのに役立つ。
こうした行動は、良い仕事や高い報酬を得たり、起業家が成長や成功を手に入れたり、貧困を脱したりすることにつながりやすい★29。
ここでとりわけ重要なのがクリエイティビティだ。
セレンディピティを生み出す要因とクリエイティビティには共通点が多い。
クリエイティビティは予想外の出来事に注意を向ける能力、さまざまなアイデアをいつもと違った方法で結びつける能力から生まれることが多い。
創造的で独創的な人は、失敗を恐れリスクを避けようとする傾向がある。
しかしそれを克服できるのは、挑戦せずに諦めることへの恐怖のほうが大きいからだ★30。
作家や作曲家が新たな作品を生み出すのに悩み、これでは不十分ではないかと苦しみつつ、もっと良くしようと努力せずにはいられないのはこのためだ。
隠れ内向型人間性格にも同じような二面性がある。
私たちの性格は脳科学や進化に深く根差している。
哺乳類は誕生した当初から大脳新皮質を発達させてきた。
大脳新皮質のおかげで人間は行動する前に考えたり、行動を予測したりすることができる。
しかし大脳新皮質がきちんと機能するためには、適度に「覚醒」している必要がある。
ギアを入れる前に、十分回転数を上げておく必要があるのだ★31。
外向的な人は他者とかかわることで「最適な覚醒レベル」に達する★32。
一方、内向的な人はもともと覚醒度の基準値が高い。
内向的な人は社会的活動によって心理的エネルギーを消耗するので、エネルギーを回復させるためには静かで孤独な時間を必要とする。
スーザン・ケインは名著『内向型人間の時代:社会を変える静かな人の力』のなかで、ハーバード大学で教鞭をとるカナダ人教授のエピソードを書いている。
学生からはとても外向的だと思われているが、実際には講義の後学生とやりとりせずに済むようにトイレに隠れる★33。
私はこの教授とあるイベントで会ったことがあり(たまたまあの本に登場するのは自分だと打ち明けてくれたのだ)、情熱的だが内向的なこの人物と自分には多くの共通点があることに気づいた。
私はこれまでたくさんのコミュニティを立ち上げてきたので、周囲にはとても外向的だと思われている。
しかし私を含めてコミュニティづくりに携わる人には「隠れ内向型人間」が多い。
自分がイベントを主催するときなど、とことん外向的になる。
自分がコントロールできる状況においては、たくさんの人とつながり、人と人とをつなぐ。
自らたくさんのセレンディピティを経験し、周囲のためにも生み出す。
その一方で、お役御免になったらできるだけ早く現場を去ろうとする。
このタイプの人間は新たなアイデアの受容力に大きな波がある。
私は休日にはとことん内向的になることがあり、そんな日は完全にシャットダウンしている。
点と点をつなごうとするモチベーションは一切ない。
点と点をつなぐのは楽しいが、エネルギーを大量に消費する。
ときにはエネルギーを充電するために1人になる必要がある。
外向型モードのときにもたまにそんな瞬間は訪れるので、トイレ、中庭など静かで誰もいないところに身を隠す。
そうすることで力を取り戻し、いつもより長い時間その場にとどまれるのだ。
ケンブリッジ大学教授のブライアン・リトルは、私たちがエネルギーを充電する場所を「回復用ニッチ」と呼ぶ。
しかし自らを回復させ、アイデアやつながりを自分のなかで処理し、脳の覚醒度を最適な状態まで復活させるための十分なニッチを確保できない人も多い。
それでは消耗してしまい、セレンディピティが抑制されてしまう。
当然ながら外向的性質はセレンディピティに非常に役立つ。
ただ内向型、外向型のどちらでも訓練によって身につけることができる。
私のまわりのコミュニティづくりに長けた人の多くは情熱的な内向型人間だが、外向的な人があふれた場でも生き延びるすべを身につけている。
外向的性質は多くの人と会う、引き寄せる、連絡を取り続けるという3つの理由で、幸運な出会いを増やすことが研究で示されている★34。
きっかけはスーパーで、あるいはコーヒーショップで行列しているときに出会った人に話しかけるといったシンプルな行為だ。
それが興味深い会話に発展することもある(しかも「あのとき話しかけておけば良かった」とのちのち悔やむリスクも避けられる)。
厚かましいのは禁物だが、このような行動は誰かと(何かと)出会い、好ましい結果を手にする確率を高める。
幸運な外向型人間のシンプルな行動ここでクリスタ・ジョリに登場してもらおう。
私は今でも数年前、エジンバラで開かれた「TEDグローバル」でコーヒーの列に並んでいて、クリスタと出会ったときのことを覚えている。
当時ユニリーバの幹部だったクリスタのほうから話しかけてきて、会話がとても弾んだ。
2年後、ロンドンに移るのでコーヒーでも飲みながら現地の最新情報を教えてほしい、とクリスタからメールが届いた。
そこからとんとん拍子に話が進み、カフェでの会話をきっかけに、私たちは「リーダーズ・オン・パーパス」を立ち上げることになった。
今では世界的組織になっている。
クリスタはどこに行ってもセレンディピティの種をまくタイプだ。
しかも自らの冒険に他の人を巻き込んでいく。
5月のある忙しい午後、タチアナ・カザコバに見知らぬ電話番号から着信があった。
戦略コンサルティング会社で働くタチアナは毎日長時間、過密スケジュールで過ごしており、しかも時間単価も非常に高い。
だからいつもなら日中は家族か顧客からの電話しかとらない。
だがこの日はなぜか電話に出た。
相手は「共通の知人から番号を聞いた。
自分のチームはとてもおもしろいプロジェクトに取り組んでおり、きっとあなたも気に入る」と言う。
話を聞いて、タチアナはそれまで自分がやってきたこと、直感や興味の赴くままに追求してきたことの意味がわかったような気がしたという。
絶対にこのチャンスはつかまなければならないと思い、少しも迷わず「イエス」と答えた。
その電話の相手というのが私だ。
電話を終えたときにはワクワクしていた。
クリスタの直感がまさに当たったのだ。
タチアナは私たちのチームに加わった。
当初はレポートを作成し、パーパス・ドリブンなリーダーシップに関するイベントをプロデュースするだけのつもりだったが、数カ月も経たないうちにクリスタの磁力、それに仕事熱心で献身的な姿に魅了されたタチアナはフルタイムのメンバーとなった。
仕事を辞め、車を売るなど退路を断ち、リーダーズ・オン・パーパスの共同創設者兼最高戦略責任者になったのだ。
「このオファーに自分が『イエス』と言うことがどれほど重大な結果をもたらすか、はっきり理解していたわけではない」とタチアナは振り返る。
タチアナとクリスタは立ち上がったばかりのプロジェクトを確固たる組織へと育てた。
しかもタチアナがそれまで勤務していたホーバス&パートナーズは、今やリーダーズ・オン・パーパスの最も強力な事業パートナーの1つになっている。
リチャード・ワイズマンの最近の研究は、クリスタのような「幸運な」外向型人間はさまざまな理由から人やアイデアを引き寄せることを明らかにしている。
ただその根本にあるのはシンプルな行動だ。
他の人と目を合わせる、笑みを浮かべたり、オープンで相手を受け入れるようなしぐさをすることが多い★35。
幸運な人は不運な人より笑顔を浮かべる頻度が2倍高く、オープンなボディランゲージを使い、相手のほうにしっかりと身体を向ける。
それによって相手は信頼感を抱き、「魅力」を感じるのだ*。
*おもしろいことに、こうした要因は私たちの記憶にも影響を与える。
心理学者のジェームズ・ダグラス・レアードらは60人の学生を被験者として、表情を操作することが気分にどんな影響を与えるかを調べた。
学生には、同じような感情的要素を含む2つの文章を読ませた。
1つはユーモラスなもの、もう1つは怒りを感じるような内容だ。
その間、1つのグループには唇にペンを挟んでもらい(強制的に笑顔をつくらせた)、もう一方のグループには眉をひそめてもらった。
その結果、眉をひそめたグループは不快な内容のほうをよく覚え、笑みを浮かべていたグループは楽しい内容のほうを覚えていた(Lairdetal.,1982)。
内向的行動にも重要な役割がある最後に、そして最も重要なこととして、外向型人間は他者と打ち解けやすく、大勢の人と連絡を取り続ける傾向がある。
ここで前提となるのは、私たちが連絡を取り続ける相手も、それぞれの知り合いと連絡を取り続けるという単純な事実だ。
だからあなたが100人とつながり、その100人がまた別の100人とつながっていれば、あなたは2次の隔たりで1万人とつながっていることになる(この数字はそれぞれの段階の100人に同じ人物が一切含まれていないことを前
提としている。
重複があれば合計は少なくなるが、言わんとしていることはわかるだろう)。
つまり知り合いがそれぞれ1人を紹介してくれれば、あるいは一度ディナーパーティに招いてくれれば、あなたには1万人と出会う可能性があるわけだ。
そしてたった1回の偶然の出会いで、人生が変わってしまうこともある。
ただ内向的行動にもセレンディピティを起こすうえで重要な役割があり、外向的性質と内向的性質を組み合わせることがセレンディピティには一番有効だと考えたほうがいい。
それは集団のなかでも個人でも同じことだ。
外向的行動がもたらす予想外の出会いと同じように、セレンディピティには内省、自己認識、そして時間も必要だ。
思考やアイデアはすべて意識の表層に浮かんでいるわけではない。
むしろ予想もしなかったような価値あるバイソシエーションは、意識していない場所に潜んでいるかもしれない。
アイデアが意識上にじわじわと染み出してきて、その可能性が認識されるまでには時間がかかるかもしれない。
あるいはアイデアは本や映画など、1人静かに時間を過ごすときに見つかるかもしれない。
外向的な人が内向的な人の助けを借りて、じっくりモノを考え、さまざまな思考や経験をつなげていくことも多い。
たとえば典型的な外向型であるナクソン・ミムランにとっては思慮深い弟のアリアが、自分のなかに潜んでいるさまざまな機会について考えるための「内省の拠点」の役割を果たす。
性格的特性はいずれも変化するものだが、あなたがあまり外向的ではないからといって心配することはない。
自分に最もしっくりくる特性を選べばいいのだ。
頭に入れておきたいのは、セレンディピティの起こりやすさは、私たち自身の感情的状態に左右されることが多いということだ。
ポジティブな感情でいるときは、外部からの刺激への感度やそれを掘り下げようとするエネルギーも高まり、チャンスに気づきやすくなる。
関心の範囲や行動のレパートリーも広がるので、さまざまな出来事への反応も良くなる★36。
現実の意思決定(偶然に対して行動を起こすなど)は自分や周囲の直感に影響されることが多いので、心の状態というのは非常に重要だ。
やり遂げなければならない仕事があるとき、あるいは何か良い刺激を受けたいと思っているときに、「プラスのエネルギー」を持っている人の隣に座っているととてもうまくいくと感じたことがあるかもしれない。
反対にあくびばかりしている人が隣にいると、仕事がとてもやりにくくなる。
エネルギーは伝染するのだ。
プラスのエネルギーと「ソーシャル錬金術」クリスタのような人は「セレンディピティの錬金術師」だ。
あらゆる場所でプラスのエネルギーを生み出し、自分や他の人々のためにプラスのエネルギーやアイデアを交換できるようなフォースフィールドをつくり出す。
ここでは物理学とスピリチュアルが重なって見える。
量子物理学によってエネルギーは波状であることがわかった★37。
電子を特定の場所に存在する粒子ではなく波として見ると、その影響ははるかに広範な領域に及ぶことがわかる。
同じことが世界のとらえ方についても言える。
自らを粒子としてとらえると、個別の人生経験、思い出、身体といった特定の要素に目が向く。
しかし私たちは波にもなり得る★38。
プラスのエネルギーを放出するというのは、単に自分の気分が良くなるだけでなく、自分と他者のためにセレンディピティ・フィールドを広げる方法でもある。
強く願えば、引き寄せられる?突き詰めれば、私たちの存在の根幹を成すのがエネルギーだ。
熱力学の第2法則はエントロピーに関するもので、さまざまなモノには時間が経つにつれて廃れ、崩壊する傾向があることを示している。
未来に向けて進歩していくことに意識を集中しなければ、組織も個人も、システムそのものも衰退するかもしれない★39。
たとえば一見成功しているように見える企業も、時間が経つにつれて業務がパターン化してクリエイティビティが封じられ、現状維持に終始するようになり、最終的に破綻してしまうといったケースだ。
科学とメタフィジカルの交錯点に目を向けると、さらに興味深いことが言える。
まだ確証はないが、いずれ量子物理学によって、特定の結果に意識を集中することでセレンディピティを加速させられるメカニズムを説明できるようになるかもしれない。
個人とシステムとの相互作用によって、電子の行動が変わるのかもしれない。
実験では、観察者が特定のルートに意識を集中させると、粒子の反応が変わることが明らかになっている。
発生するエネルギーのうち有用なのはごく一部で、エネルギーは無秩序な状態に移行しやすい。
つまり何らかの方向感覚を示すことができれば、私たちは物事を望ましい方向に誘導できるかもしれない★40。
魔法のように思えるかもしれない。
だがあなたの人生にも、ある可能性を強く願っていたら、それを引き寄せることができたという事例がないだろうか。
すべてが自分に味方しているように感じられた状況がなかっただろうか。
それは自己強化型エネルギーの働きだ。
人はポジティブなエネルギーに反応する。
化学反応をスタートさせるのに活性化エネルギーが必要であるのと同じように、私たちが何らかの化学反応をスタートさせるときにも、きっかけとなるエネルギー、あるいはクリスタ・ジョリやナクソン・ミムランのような人物が必要なときもある。
これはもっと抽象的で、批判されることも多い「引き寄せの法則」とも関連性がある。
人はエネルギーでできており、同じようなエネルギーを引き寄せることで財産、人間関係、健康、喜びを増やしていくことができるという考えだ★41。
意味のある偶然の一致、いわゆる「シンクロニシティ」は、私たちがエネルギーを宇宙に向けて放出するときに起こる傾向がある*。
親密な者同士が同じような感情を経験しやすいことを示す、興味深い研究がある。
寮で同部屋の女性同士の生理周期が一致するというのが一例だ。
言葉を交わさずに意思疎通ができると感じている双子も多い。
こうしたケースでは、心から大切に思う相手と意識を共有しているのかもしれない。
これこそまさに「量子もつれ」だ★42。
フランスの生命科学コンサルタントでアーティストのソフィ・ペルトゥレは、妹にそんなつながりを感じている。
ひどく落ち込んだ気分になると、妹が悩んでいるのではないかと感じるという。
そんなとき妹に電話をすると、たいてい妹も落ち込んでいる。
信じられないような出来事を量子という謎めいた存在で説明することには慎重になるべきだ。
しかし主要な宗教をはじめ世界のスピリチュアルな思想の多くは、すべてはつながっており、良いものは良いものを生むという考えに根差している。
科学とスピリチュアルの主張はますます重なりつつある。
*セレンディピティは能動的プロセスを重視しており、単一の意味のある偶然を意味するシンクロニシティ(Jung,2010)とは異なる。
「普遍的知性」への目覚めクリシュナジ・クリシュナとプリタジ・クリシュナはインドのO&Oアカデミーの創設者として、数百万人に大きな影響を与えてきた。
2人は成功の土台となるのは、意識の力だと考えている★43。
「doing(すること)」(成功する、重要な人脈をつくるなど)と「being(あること)」(人生をどのように経験するか)を区別し、意味のある偶然の一致は私たちが「美しい状態」にあるときに起こるという。
宇宙が私たちの意図を満たすためのパターンを形成し、何もなかったところから解決策が生まれてくるのだ、と。
推計によると、私たちは1日当たり1万2000~6万個ほどの思考を抱くという。
そのほとんどが同じものの繰り返しで、80%がネガティブな思考とされる★44。
クリシュナジとプリタジ(プリタージとも呼ばれる)は「苦しみの状態」から「美しい状態」に移行するのに役立つ方法を考案してきた。
その中核にあるのは、スピリチュアルなビジョンを持って生きることだ。
それは「意図を定める」ことに他ならない。
そのためには私たちそれぞれの内に潜む真実に意識を集中する必要がある。
自分のなかで起きていることを、善悪の判断をさしはさまずにただ観察するのだ★45。
その結果、苦しみの状態(乗り越えられない怒り、不安、悲しみなど)にいることに気づくこともあれば、喜びに満ちた美しい状態にあると気づくこともある。
苦しみの状態は長く続くと、自らを縛る妄想になる。
感情を変えようとせず、ただ状態を認識することが、「普遍的知性」への目覚めにつながると2人は説く。
私たちを導くのは脳だけではなく、心臓、内臓、脊柱にもそれぞれ知性があるという(古い記憶は脊髄をはじめ、身体のあちこちに保管されているという説もある。
そうした記憶を引き出し、細胞に保管されている記憶を変えることもできる)。
ヨガ、瞑想、ビジュアリゼーションなどを実践することで、意識が覚醒し、さまざまなものを手放せるようになる。
それから問題解決にとりかかる。
問題の渦
中(ネガティブな感情状態にあるときなど)で人生の流れをコントロールしようとするのではなく、立ち止まり、ペースを落とし、感情が回復してから判断を下すのだ。
高尚な理想ばかり見るのではなく、その時々の事情を考慮し、偽善的にも傲慢にもならず、ただその瞬間に意識を集中することを覚えなければならない。
クリシュナジは、アカデミーに来るすべての人が自分と同じような変容を経験できるようサポートする、というビジョンを設定したときの話をしてくれた。
この意図を定めて1カ月も経たないうちに、リソースや人材が流れ込んできて、「魔法のような偶然が起こるようになった」と振り返る。
アカデミーの建築許可が下りないといった大きな障害があったにもかかわらず、必要な土地やビジョンを理解してくれる建築家が見つかり、すべてがうまく落ち着いた。
それから16年ほど経った今、アカデミーには日々数千人が訪れる(クリシュナジの親族に、関連団体の創設者で1400万人の信者を持つスピリチュアル界のカリスマ、シュリ・バガヴァンがいることはもちろんプラスではあるが、アカデミーの歩みがセレンディピティに満ちたものであったものは間違いない)。
スピリチュアルなビジョンは目標とは異なる。
戦略計画などの目標は未来志向だ。
それに対してスピリチュアルなビジョンは目的地を定めるものではない。
目標を目指して歩んでいくとき、どのような状態で生きることを選択するかという問題だ。
ある意味ではあらゆるビジョンはスピリチュアルなビジョンから生まれると言っていい。
確固たるスピリチュアルなビジョンを持ち、それを日々実践することで、過去へのこだわりを捨て、また多くの人の心に住み着いている傷ついた子供を解放することができる。
クリシュナジは私たちの手本として、ユーチューブに小さな男の子の動画を載せている。
「ママ大好き。
でもいつも好きっていうわけじゃなくて、クッキーをくれるときだけ好き」。
誰にでもこんな時期があったのではないか。
社会的に何が善で、何が悪かなど気にしない。
それに基づいて自分の感情を判断することもなく、ただ幸せだ★46。
感情に正しいも間違いもない。
ただそうだというだけだ。
これは感情的にとてもリラックスした状態と言える。
不幸な結果を「引き寄せた」と考えてはいけない支持者からは熱烈に愛され、科学者からはエセ科学者として忌み嫌われるディーパック・チョプラは、著書『富と成功をもたらす7つの法則』でカルマの重要性を指摘している。
行動はエネルギーのフォースを生み出し、それがそっくり私たちに返ってくる、というのだ★47。
こうした主張は科学的根拠や裏づけに乏しく、自らに都合の良いエピソードを並べることが多いため、科学を誤解あるいは乱用しているという批判が多い★48。
しかしエネルギー・フローやアファメーション(自己肯定)の効用を認めるなど、他の学問分野でも観察されているパターンと一致する指摘には興味を惹かれる。
ただここで重要なのは、セレンディピティを阻むような構造的制約と同じように、不幸な結果(重い病にかかるなど)を本人が「引き寄せた」ものととらえないことだ。
人生はあまりに複雑で、誰もがもろい存在なのだから。
私自身たくさんのセレンディピティを生み出し、また引き寄せているものの、状況はあっという間に暗転することもあると身をもって学んできた。
弟も私と同じように自動車事故で死にかけたし、私が幼い頃には母が腸ヘルニアで命を落としかけた。
父が心臓発作を起こしたとき、救急隊員の迅速な処置がなければ亡くなっていた可能性もあった。
命がこれほど儚いものだからこそ、ともに暮らせる毎日に感謝しようという気持ちになる。
これは私の家族が運に恵まれたケースだが、逆のケースもあった。
私の幼いいとこは(とても泳ぎが上手だったのに)海で溺死し、元クラスメートは精神を患って自殺してしまった。
悲しみ、絶望に沈むときは誰にでもある。
しかしセレンディピティは私たちの人生を、もっと幸福、充実、成功に満ちた新たな次元に引き上げることができる。
厳しい状況においても「コップの水は半分まで満ちている」と見る姿勢があれば、立ち直りは早まる。
Rラボには「ポジティブ担当」がいる。
意見が対立したミーティングでは参加者の発言をオウム返しではなく、違う言葉で言い直したりして、グループが難しい困難な状況にあるときでもプラスのエネルギーを生み出す人物だ。
不完全であることを受け入れるセレンディピティを求める旅においては、謙虚さと弱さが重要になることもある★49。
セレンディピティを起こすには、完璧を目指して状況を完全にコントロールしようとする欲求を乗り越える必要がある。
ベストバイの会長で元CEOのユベール・ジョリーは自らの経験を踏まえ、状況を完全にコントロールできていると思っている人は、自分にできないことがある場面でも手助けを求めないと指摘する。
そして誰かが失敗すると、その人間に問題があるとみなす。
こんな生き方は非人間的だ。
反対に、不完全であることを受け入れ、自分と他者の弱さを愛せば、予想外の事態が起きてもそれを受け入れることができる。
それは不完全さではなく、人間的なものだ。
おかしい部分に注目するのではなく、その状況としっかり向き合うことが重要なのだ。
「危機的状況こそ大きな違いを生み出すことができる」とユベールは語る。
他人に完璧を求める人も考えものだ。
政策アナリストから起業家兼インパクト投資家に転じたダニエレ・コーエン・エンリケスのエピソードを紹介しよう。
ダニエレがまだ社会に出たばかりの頃、ひどい癪持ちのトンデモ上司の下で働いたことがある。
チームの成功は自分の手柄、失敗はすべて部下の責任と主張するタイプだった。
そんな心を蝕むような職場環境に耐えかね、ダニエレが入社した時点ですでに部下の3分の1が退社するか、病気休暇を取得していた。
ダニエレはやる気満々の見習い社員で、すぐに過剰な仕事を割り当てられるようになった。
ある金曜日の午後7時半過ぎ、ようやく退社しようとしていたとき、問題の上司がその日チームが全社に公開した社内資料に誤字があることに気づいた。
ダニエレはこう振り返る。
「上司は目を見開き、ペーパークリップの束を壁に投げつけて大声で怒鳴った。
『そろいもそろって出来損ないばかりだ!』と。
私の気分は一気に落ちた。
それまで認めてもらおうと精一杯やってきたし、このミスが私個人のものではないこともわかっていた。
でも上司の様子を見て、私の働きぶりではダメなんだという気持ちになった」。
やっとの思いでオフィスを出たダニエレは駅のホームに走ったが、電車は20秒前に出たところだった。
「私は惨めな最悪の気分で、プラットホームの埃っぽい隅に座り込んでしまった」。
何とかしなければと思ったが、何をすればいいのだろう。
月曜日に上司と話し合ってみようか。
だがそんなことをしても状況はあまり改善しないだろう。
では仕事を辞めて無職になるか。
それはあり得ない。
そこへ知り合いがプラットホームに降りてきた。
ダニエレの会社のライバルでもある、この界隈きっての有力企業で働いていた。
「みんなが働きたいと思うような会社だから、私は応募さえしなかった。
でも友人に『調子はどう?』と話しかけたら、自分のチームがとてもおもしろいプロジェクトを担当することになって、大急ぎで人材を探しているという。
『誰か良い人、知らない?』と私に尋ねてきた」。
ダニエレは週明けの火曜日には面接を受け、金曜日には仕事をオファーされた。
しかもそれまで経験したどの仕事よりもやりがいのあるものだった。
新しい上司は快活で、部下のやる気を引き出し、知識も豊富なすばらしいリーダーだった。
それ以来、ダニエレに数えきれないほどの仕事上のチャンスを紹介してくれ、今もメンターを務めてくれている。
あのときダニエレはどん底にいたが、今から思うとまさにセレンディピティが起きていたのだ。
ダニエレとユベールは、セレンディピティは一見危機のような状況から生まれる傾向があることを知っている。
2人は不完全な状況を受け入れ、好ましい結果が起こる余地を生み出したのだ。
幸運な人はたいてい肩の力が抜けている人間は常に同じ状態にあるわけではない。
それぞれの置かれた環境、状況、優先事項によって変化する。
誰もが違っており、タイミングが違えば同じ人でも感
受性は高まったり低くなったりする。
たとえばストレスだ。
ネイビーシールズ(米海軍特殊部隊)が胸に刻む、「戦いの最中には自分の理想とするレベルに上がるのではなく、訓練のときのレベルに下がる」という古代ギリシャの詩人アルキロコスの格言には、一面の真理がある。
ストレスにさらされると、認知バイアスのほとんどは悪化する。
身体が闘争・逃走反応を示し、ダニエル・カーネマンのいう「システム2思考(抑制の利いた遅い思考)」という緊急ブレーキが働かなくなり、本能だけに頼ろうとするからだ★50。
ストレスは拙速な判断、その場しのぎ、惰性につながることが多い。
私自身、最悪の判断はたいてい追い詰められて闘争・逃走モードに入ったときにしている。
幸運な人はたいてい、ふつうの人より肩の力が抜けている。
不安は機会をつかむ妨げとなる。
心理学者のリチャード・ワイズマンはある実験で、被験者に新聞を渡し、写真が何枚使われているか数えてほしいと頼んだ。
ほとんどの被験者は2分前後かけて、すばやく写真を数えた。
見直しした人もいた。
だが2ページ目に大きな見出しで「この新聞には42枚の写真が使われている」とデカデカと書かれていたのに気づいた人は1人もいなかった。
写真を数えることに集中しすぎていたために目に入らなかったのだ。
100ポンドを手に入れるチャンスも逃してしまった。
新聞には「写真を数えるのをやめて、試験官にこの広告を見たと伝えれば100ポンドもらえます」と書かれた大きな広告が掲載されていたのだ。
しかし写真ばかり見ていた被験者には、この広告も見えなかった。
一方ワイズマンが「新聞に何か珍しいものがあったら報告してほしい」と伝えたところ、被験者の見る目が変わり、上に挙げたメッセージにすぐに気づいた。
特定の作業に忙しく、集中して(集中しすぎて)いると、本当に価値あるものを見逃してしまう。
組織のストレスレベルがあまりに高く、社員がクビになることを恐れていたり、会議に遅刻しないようにすることばかり考えていると、セレンディピティを見逃すリスクが高くなる(貧困に苦しんでいると、ストレスや不安の感情はさらに強まり、意思決定にマイナスの影響を及ぼす可能性がある)。
ただ心が健康な状態にあるのは大切だが、不快感やプレッシャーが何かを達成する原動力となることもある。
やはり重要なのはバランスだ。
しかも脳と身体の相互作用にかかわる研究では、消化器系や心臓系の変化は、表情と結びついていることが示されている。
要するに生理的状態は、心理的および行動的経験に大きな影響を及ぼすことがある。
だから穏やかな声や親切な表情によって私たちの気分が変化すること、あるいは無視されると恐怖を感じたり心理的に動揺するのは当然と言える★51。
同じような理由から、愛犬が死んだ翌日、あるいは外科手術が終わった直後は、セレンディピティは起こりにくい。
瞑想やヨガを実践することで、心を穏やかにするのはプラスだ。
セレンディピティは注意力が高い状態(そしてマルチタスクより1つのことに集中している状態)に起こりやすいので、こうした手段を通じてプレゼンス(「いまここ」に集中すること)を高めるとセレンディピティの機会が増える★52。
状態は変化する、すなわちエネルギーレベルはタイミングによって異なるということは、私たちはタイミングによってアイデアをより受け入れやすくなったり(あるいは伝えるのが上手になったり)することを意味する。
正しいタイミングで人に会うこと、相手が殻に閉じこもらずオープンな状態にいるときに巡り合うことはとても大切だ。
同じことが人生のフェーズ(段階)についても言える。
学業を終えたばかりの時期、特定のライフステージが終わったとき、あるいは会社を売却して新たなアイデアを探しているときなどは、予想外の展開に対してよりオープンな状態になっている。
企業も同じだ。
セレンディピティに適した時期もあれば、目の前の仕事を遂行することに集中すべき時期もある。
常に私たちに選択権があるわけではない。
生き延びるためにもがいている時期(とりわけ資金的に)などは特にそうだ。
しかしそんな状況でもセレンディピティが起こることもある。
それも一番予想していないタイミングで。
パーティで、あるいはオフィスで、何も期待していない状態が魔法のような瞬間を呼び込むこともある。
まとめ潜在的なトリガーを発見し、点と点を結びつけたいという思いがあるほど、セレンディピティは起こりやすい。
セレンディピティを何に結びつけたいかがはっきりしていれば、なおさらだ。
大切なのは、他の人には欠落しか見えないところに結びつきを見出すことであり、それは何か有意義なものを見出したいという思いがあるほど容易になる。
進むべき道は深い目的意識、スピリチュアルな感覚、人生哲学、試行錯誤など、さまざまなものから導き出すことができる。
知識に基づく直感もセレンディピティをたぐり寄せるのに役に立つ。
だから本章のセレンディピティ・ワークアウトでは、セレンディピティへの感情的素地や意欲を整えることに集中しよう。
【セレンディピティ・ワークアウト素地を整える】1あなたが人生で一番大切にしていることを書き出してみよう。
頭に浮かんでくるテーマは何だろう。
後から振り返ったときに初めてわかるような情熱、あるいは方向性など、すべてに共通する支配的なパターンはあるだろうか。
北極星になりそうなテーマをあれこれ試してみよう。
そうすれば点と点を結びつけるのが容易になる。
21日10分、瞑想やモットーの復唱を実践してみよう。
簡単なものから始めればいい。
座り心地の良い椅子かクッションに座り、手のひらを腿の上に置こう。
ゆっくりと4回深呼吸をして、ゆっくり自分に言い聞かせる。
「求めている答えが見つかりますように。
必要な解決策を見つけられますように。
私の人生が美しくなりますように。
私の愛する者たちの人生が美しくなりますように」と★53。
「Calm」や「Headspace」のようなアプリを使ってもいい。
3ポジティブなエネルギーを持っている人で周囲を固めよう。
あなたを前向きな気持ちにしてくれる人、一緒に過ごす時間を増やしたい人を2~3人挙げてみよう。
それぞれとコーヒーを飲む予定を入れよう。
4人生に感謝の習慣を取り入れよう。
感謝の日記をつけてもいいし、「Gratitude」のようなモバイルアプリを使ってもいい。
毎日の習慣にすることもできる。
たとえば夕食の時間に家族全員がその日感謝したいことを3つ挙げる、といった具合に。
5あなたの人生に好ましい影響を与えてくれた人を毎週3人選び、お礼のメッセージを送ろう。
「ありがとう」のメッセージは、送る側にも受け取る側にも驚くほど強力なインパクトがあることが証明されている。
6本当の自分を見せよう。
ささやかなステップから始めればいい。
人と人とのつながりをつくる団体「トリガー・カンバセーションズ」創設者のジョージー・ナイチンゲールのやり方を紹介しよう。
誰かに「調子はどう?」と聞かれたら、当たり前の返事をする代わりに、もっと真実味があって意外性のある答えを返してみる。
「10段階の6・5ぐらい」「カフェイン欠乏気味」「ワクワクしている」といった具合に。
相手はびっくりすると同時に「おもしろい人だ」と思い、会話が始まるかもしれない。
7「外向筋」を鍛えよう。
コーヒーショップで行列したら、隣に並んでいる人に話しかけてみる。
目に笑みを浮かべて他の人たちとコミュニケーション
をとる。
パーティでは初対面の人に話しかけてみる。
前向きな考えを持つようにしよう。
誰もがそれぞれ苦しみを抱えている。
「ハンロンの剃刀(無能という理由で十分説明できることに、いちいち悪意を見出すな)」の精神に基づいて、常に前向きな意図を持つようにすれば、負のスパイラルや自己実現的予言のワナに陥るのを避けられる。
相手もこちらと話したがっていると考えれば(相手の反応がぎこちなくても、それはびっくりしたためかもしれない)、スムーズに会話が進むはずだ。
8あなたの「憧れ」を20個書き出し、そこからトップ5個を選ぼう。
私たちは野心にばかり目を向け、理想にあまり注意を払わない傾向がある。
しかし成功するうえでは「何をしたいか」だけではなく、「どんな人間になりたいか」に意識を向けることが重要だ★54。
こう自問してみよう。
「このような選択は私のアイデンティティにどんな影響を及ぼすだろう」。
9自分との約束事を2つ決めよう(「毎週月曜日は大切な人と夕食をともにする」など★55)。
証人となるパートナー(約束を実行したか確認する人)を決め、約束の内容を説明し、報告のタイミングを決める。
10社員あるいはコミュニティのリトリート(合宿)あるいは家族の集まりで、自分たちにとって大切な価値観を体現するような具体的行動を5つ挙げてみよう。
全員がそれぞれの日々の生活のなかから、具体的なエピソードを見つけられるだろうか。
11子育て中の人は、子供と一緒にワークアウト10を実践してみよう。
たとえば夕食のとき、大切な価値観を体現するような行動をとった人のエピソードを子供に話してもらうといい(学校で誰かに親切にしてもらった、あるいは自分が誰かに親切にしてあげたエピソードを話してくれるかもしれない)。
★1これに関するすばらしい議論として以下を参照。
VonHippelandvonKrogh,2016.★2Gyori,GyoriandKazakova,2019.★3内的動機づけと外的動機づけに関する詳しい資料は以下を参照。
RyanandDeci,2000.★4Gyori,GyoriandKazakova,2019.これは企業にも当てはまる。
企業は独自の価値創造哲学を生み出す。
そこには注意を払うべき構造やさまざまな問題が含まれる。
価値創造哲学は戦略の方向性を定める指針となり、フィルタリングを可能にする。
つまり価値創造の最も重要な手段は、企業の哲学を策定し、更新していくこと、それを問題設定や解決策の探究、利用可能な問題と解決策のペアから最適なものを選択するのに活用することだ。
いずれも企業独自の試みとなる(FelinandZenger,2015)。
新たな製品により高い価格を設定できるのは、既存の市場には明確な価格設定のルールがあるためだ。
まったく新しい問題や用途が登場すれば、まったく新しい問題と解決策のペアの市場が生まれる。
それは他社が予想もしていなかったような価値創造の機会につながり、新たな哲学の構築が可能になる(そこには高い価格を正当化する根拠も含まれる)。
★5Grant,2015.以下も参照。
Engeletal.,2017.★6企業はさまざまなアプローチでこれを実践している。
一例が意思決定をより小さな意思決定に分割する「リアルオプション分析」で、後のフェーズはそれ以前のフェーズの結果により変化する(McGrath,1999)。
「ベイズ更新」も興味深い概念で、これは過去のすべての可能性を考慮し、新たな情報が得られるたびにそれを更新していくという手法だ。
★7Cohenetal.,1972.これは会議などの意思決定の場で、参加者が問題と解決策をミキサーにぶちこむ、という発想だ。
どの解決策がどの問題と結びつくかは、偶然に左右されることが多い。
ただもちろん、ここでは問題と解決策があらかじめ策定されていることが前提となっている。
変化の激しい世界においては、問いと答えはたいていより突発的になる。
★8多くの大企業が、多様な方法で賭けをするようになっている。
より分散的構造を採用する(AIGなど)、あるいは社内インキュベーターを立ち上げる(シーメンス)ことで、自らをプラットフォーム化しているのだ。
さらにBMWのように不確実性の高い世界に対応できるように社員を教育する企業も多い(新たな人材を採用するのではなく既存の人材を再教育する)。
インディテックスCEOのパブロ・イスラは社員が「小さな会社に入社した日の気分で」働けるように仕事のあり方を見直しているという。
★9集団主義とは一体感を重視し、個人よりも集団を優先する思想だ(Hofstede,1984;Schwartz,1990)。
集団主義社会は信頼と人間関係に依拠するのに対し、個人主義社会は契約と取引に依拠する傾向がある。
私が運営する18歳から25歳を対象とするサマースクールのコースでは、「取引重視型」文化(ドイツなど)の学生から、「集団主義型」文化(ケニアなど)の学生と交流するのは「時間の無駄」ではないか、という質問をよく受ける。
そういうときはケニアでの仕事の経験を話す。
2人の親友をつくるまでには長い時間がかかったが、今ではどこに行っても誰とでも会える。
それは全員が全員の知り合いだからで、信頼している相手からの紹介なので仕事もとてもスムーズに進む、と。
それ以上に重要なのは、この経験を通じて(非常に個人主義的な社会で育った)私は、純粋にビジネスの視点ではなく社会的視点から見たほうが仕事ははるかにおもしろくなると知ったことだ。
このおかげで私のケニアへの理解はずっと深まり、長期的に見ればさまざまな形でプラスに働いている。
★10www.npr.org/sections/healthshots/2019/05/25/726695968/whatsyourpurposefindingasenseofmeaninginlifeislinkedtohealth★11これはサイモン・シネックの作品と見事につながっている。
「WHYから始めよ!」で世界中の数百万人を鼓舞してきたシネックは、こう問いかける。
なぜ私たちはそもそもスコア(点数)をつけるのか、と。
シネックは、たいていの人には幼い頃から「勝ちたい」という欲求があると指摘する。
だが何を基準に採点するのか。
名声、カネ、愛、権力、精神的充実、家族など人によって異なる。
スコアは進歩を測るのに役立つ。
全体的に物事がうまくいっているのかを相対的にチェックするのか。
シネックは数百万ドルの損を出して落ち込む、数十億ドルの資産家を例に挙げる。
この程度の資産の変化でライフスタイルに影響はないが、それでも自らを敗者と感じる。
「なぜ」に立ち戻ることは、そもそも大切なものは何かを判断するのに役立つ。
セレンディピティ・スコアがすばらしいのは、今の自分と、なり得る自分を比較するところだ。
★12AoKFehlzeitenReport,2018.★13Dunnetal.,2008.★14KrishnajiandPreethaji,2019.★15ジョン・F・ケネディにまつわる真偽は定かではないが非常に有名なエピソードとして、NASAのオペレーションセンターで働く清掃員に、なぜそんなに幸せそうなのかと尋ねた、というものがある。
「私は人類を月に送るプロジェクトに参加しているんですよ」と女性は答えたという。
私はコミュニケーションのキーパーソンとみなされた受付担当者や、他の社員と同列に扱われた清掃員にも、同じような効果が表れるのを目の当たりにしてきた。
つまるところ尊厳、社会的つながり、高尚な目的に携わっている気持ちには、大きな効用があるのだ。
★16Mandietal.,2013.★17Gyori,GyoriandKazakova,2019.★18Wiseman,2003.★19BuschandBarkema,2019;PinaeCunhaetal.,2010.★20ネルソン・マンデラの引用より。
以下を参照。
www.theguardian.com/lifeandstyle/2012/feb/01/topfiveregretsofthedying.私はこのエピソードから、行動には予想外の影響があること、そして対立が好ましい効果をもたらしうることを学んだ。
私のパートナーであるファビアン・フォートミュラーも最近の会議でこう語った。
「森林は土壌を回復させ、新しい樹木を育てるために、ときどき燃やさなければならない」。
私たちの組織の1つでは、この方法によって自然に新世代のリーダー層が生まれた。
★21このテーマに関するすばらしいインタビューがある。
品質、責任、互恵、効率、自由というコアバリューを「5原則」として、会議での意思決定の指針としたり、さまざまな文化の従業員を団結させている。
★23Laloux,2014.★24これは互恵性の原則と密接に結びついている(Cialdini,1984)。
★25Grant,2014;Grant,2017.★26Dunnetal.,2008.★27Laloux,2014.★28これはリスクテイクへの意欲と同じものではないことに注意してほしい。
アダム・グラントが『ORIGINALS誰もが「人と違うこと」ができる時代』(楠木建監訳、三笠書房、2016年)で的確に指摘しているように、独創的な人の多くは実際には非常にリスクを忌避する。
この分野についてさらに理解を深めたい読者は以下を参照。
Erdelez,1999;Heinstroem,2006;Stocketal.,2016.★29主体的行動とは、自ら状況を変え、改善しようとする自発的で未来志向の行動を指す(Crant,2000;Parkeretal.,2006)。
個人が主体として将来を予想しながら採る行動、すなわち未来の出来事が起こる前に、それを先読みしながら試行し、計画し、計算し、行動することを指す
(Bandura,2006;Bindletal.,2012;Parkeretal.,2006)。
★30Grant,2017.以下も参照。
Simonton,2003.★31ケンブリッジ大学のブライアン・リトルはこの点についてすばらしい研究をしている。
リトルのTEDxトークを参照。
www.youtube.com/watch?v=NZ5o9PcHeL0.★32外向性とはOCEANと呼ばれる「5大特性」の1つである。
O(Openness)は開放性、C(Conscientiousness)は誠実性、E(Extroversion)は外向性、A(Agreeableness)は協調性、N(Neuroticism)は神経症傾向を指す。
★33Cain,2013.ケインのすばらしいTEDトークは以下を参照。
★35Wiseman,2003.★36Baron,2008.組織のクリエイティビティに関する研究では、肯定的感情を持つと異なるテーマの間の思考の流れが活性化し、新たな連想が生まれやすくなることが示されている(Isenetal.,1987)。
★37このようなアプローチはときとしてエセ科学と呼ばれる(LedermanandTeresi,1993:https://plato.stanford.edu/entries/pseudoscience/#NonSciPosSci).★38KrishnajiandPreethaji,2019.★39Pinker,2017;C.Milliganblog:www.spectrumtransformation.com/howdoesscienceexplainserendipitysynchronicityandtheyukoflife/.★40Pershing,2015;Walia,2018.★41引き寄せの法則(マイナスあるいはプラスの思考は、実際にマイナスあるいはプラスの経験を引き起こすという考え)は、多くの信奉者と批判者を生み出してきた。
批判者からは科学を装ったエセ科学、あるいは量子神秘主義などと言われる。
以下を参照。
www.wikizero.com/en/Law_of_attraction_(New_Thought)#cite_notegazette1.★42Beitman,2016.★43KrishnajiandPreethaji,2019.★44以下の文献に引用されたジェニファー・ホーソンの推計。
KrishnajiandPreethaji,2019.★45判断を留保すること、とりわけ他人からどう判断されるかという考えを遮断することは、クリエイティビティのような重要なテーマのカギを握ることが多い(Amabileetal.,1996)。
★46KrishnajiandPreethaji,2019.動画は以下で閲覧できる。
www.youtube.com/watch?v=E8aprCNnecU.このような考え方は情緒主義という思想と関連性がある。
情緒主義とは、道徳的判断は事実の描写ではなく、誰かの感情の表現であるという考えだ(www.britannica.com/topic/LanguageTruthandLogic)。
★47Chopra,1994.★48以下も参照。
Seckleretal.,2019.★50Kahneman(2011)differentiatesbetweenSystem1anoftenunconsciousandfastwayofthinkingandSystem2aslowbutcontrolledwayofthinking.★51Porges,2009;Porges,2011.これはトラウマの治療などに役立つ可能性がある(VanderKolk,2014)。
★52注意力の高さとセレンディピティの関係については以下を参照。
PinaeCunhaetal.,2010.★53以下を参考にした。
KrishnajiandPreethaji,2019.★54www.newyorker.com/magazine/2019/01/21/theartofdecisionmaking.★55近年の研究では、特定の目的より(機敏さの)習慣づけに意識を集中するほうが効果的であることが示されている(それが行動を制約しなければ、という条件つきだが)。
ウォーレン・バフェットは大富豪になるという目標を設定することで大富豪になったわけではない。
毎日の読書を習慣とすることで知恵と知識を身につけることによって大富豪になった(バフェットは会議を避け、できるだけ多くの時間を読書に充てるようにしている)。
目標(婚約者と週10時間一緒に過ごす、など)だけに集中するより、習慣(「1日おきに婚約者と夕食をとる」)に集中するほうがいい。
目標は他者から押しつけられることが多いのに対し(外的)、習慣は重要なヒューリスティックス(実用的な学習方法)になり得る。
こうした問題に対する興味深い知恵は以下を参照。
www.fs.blog/habitsvsgoals/.およびwww.fs.blog/thebuffettformula/.
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