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第3章数学的に考える頭の作り方

第3章数学的に考える頭の作り方

「数学的」に考える頭を作る■数学的であれ■「どれくらい?」を数字に変換する■データの「調理道具」を手に入れる「パーセンテージ」を徹底的に使いこなす■「どれくらい上昇していくか」を数値化する~相乗平均~■「どれくらい価値があるか」を数値化する~現在価値・将来価値の算出~「視点」から答えを出す■「どれくらい増やせるか」を数値化する~ABテスト~■「どれくらい影響するか」を数値化する~感度分析~「統計手法」を使いこなす■「どれくらいリスクがあるか」を数値化する~標準偏差~■「どれくらい関連がありそうか」を数値化する~相関係数~「モデル化」で説得力を手に入れる■「どれくらい必要か」を数値化する~単回帰分析~■「どれくらい安全(危険)か」を数値化する~損益分岐点分析~データの料理上手に

「数学的」に考える頭を作る数学的であれ男性と女性という分類があるように、なぜか日本には文系と理系という分類が存在します。

そしてそれが多くのビジネスパーソンに「数字が苦手」と思い込ませてしまう要因になっています。

なぜなら、「文系=数学を学ばなくて済む」という悪しき常識を生んだから。

2018年、「早稲田大学・政治経済学部ではこれから入試に数学が必須になる」というニュースが話題になりました。

このようなことが〝いちいち〟ニュースになってしまう。

そんな国で教育を受けた私たちに数学アレルギーが存在するのは、ある意味では当然かもしれません。

でも、私が「自称・文系」の皆さんに言い続けていることがあります。

それは、「数学の勉強ができる必要はありません。

でも、数学的ではあったほうがいいですよ」ということです。

極端な例を挙げると、たとえ超一流大学の数学科を卒業してもビジネスパーソンとしてうまく生きられない人もいます。

逆に学歴が中卒にもかかわらず、数字をきちんと読み解きながら会社経営をし、世の中に貢献している人物もいます。

ビジネスパーソンに数学の難題を解く能力は必要なく、仕事の仕方が数学的であればいいのです。

この第3章は、あなたの仕事のレベルを、ワンステップ上へ引き上げる章です。

どんな職種であろうと、新人だろうと経営者だろうと、誰もが活用する機会がある数学的手法を厳選してご紹介していきます。

仮にあなたが数学に対して強い苦手意識を持っていても、必ず仕事で活用できます。

どうかここから先は文系・理系という分類を忘れてください。

「どれくらい?」を数字に変換するまずは「数学的」の定義から始めます。

「数学的」とは、数学で使われる手法を使うことです。

例えば、数学的に考えるとは、数学で使われる手法を使って考えること。

数学的に説明するとは、数学で使われる手法を使って説明することとなります。

もう少し具体化しましょう。

私たちビジネスパーソンが職場の生産性を高めるためにどうすればいいかを考えるとします。

従業員ひとりあたり営業利益。

広告費あたり売上高。

1時間あたり生産量。

これらはすべて得られるリターンに対して、かけたリソースで割り算した結果です。

数学の問題を解くわけではなく、割り算を活用してビジネスの問題解決を図ろうとアプローチする。

簡単に言えばこれが「数学的」ということです。

では何のために「数学的」に仕事をするのか。

私の中でもさまざまな答えがあるのですが、本書ではこう結論づけます。

それは、「どれくらい?」に数字で答えるためです。

「どれくらい効率化すればいいの?」「どれくらいリスクがある?」「どれくらい予算が必要?」ビジネスにおいて、「どれくらい?」という会話は意外と多いものです。

もしあなたがそんな問いに対してもファクトベースで考え、具体的な数値で答えることができたら……。

おそらく仕事がとても進めやすくなるはず。

そのために厳選した手法は次の通りです。

・「どれくらい上昇していくか」を数値化する~相乗平均~・「どれくらい価値があるか」を数値化する~現在価値・将来価値の算出~・「どれくらい増やせるか」を数値化する~ABテスト~・「どれくらい影響するか」を数値化する~感度分析~・「どれくらいリスクがあるか」を数値化する~標準偏差~・「どれくらい関連がありそうか」を数値化する~相関係数~・「どれくらい必要か」を数値化する~単回帰分析~・「どれくらい安全(危険)か」を数値化する~損益分岐点分析~もしも、本書のようなビジネス書を何冊か読んだことがあるなら、これまでどこかで聞いたことがあるものも含まれているかもしれません。

でもどうか流し読みせず、じっくり読み込んでみてください。

なぜその手法が数学的なのか、なぜその手法がパワフルなのか、深く理解することで初めて自分の血肉になります。

データの「調理道具」を手に入れるこれらの数学的な思考は料理を作ることと同じです。

例えば好きなグルメをひとつ思い浮かべてください。

焼き魚。

ローストビーフ。

豚の角煮。

なんでも結構です。

次に、そのグルメを自分が作ることを想像してみてください。

作ったことがあるか、上手に作れるかどうかは問題ではありません。

作ることを想像してみます。

必要な素材を揃え、包丁でカットし、下ごしらえをする。

調味料を用意し、手順を考え、必要な道具を使う。

焼き魚ならグリル。

ローストビーフならオーブン。

豚の角煮なら圧力鍋。

いよいよ火にかけ、調理をする。

こうして考えると、食材を調理するという行為は極めて論理的に行うものであると言えます。

つまり、数学的に考えることと、料理を作ることは同じようなことなのです。

データ=素材↓数学的な仕事術=便利な道具(調理方法)↓「どれくらい?」を数値化したもの=完成した料理この第3章は料理のレシピをお伝えする章とも言えます。

さまざまなデータや数字の調理方法を学び、ぜひ料理上手になりましょう。

それでは始めていきます。

「パーセンテージ」を徹底的に使いこなす「どれくらい上昇していくか」を数値化する~相乗平均~次のデータは刑法犯少年の男女別検挙人員の平成20年から平成29年までの推移です。

第2章でも軽く紹介しましたが、こうしてファクトベースで確認すると「少年犯罪が増えている」はやはり正しいとは言えないようです。

さて、ご覧いただくように男子も女子も下降線をたどっていますが、あなたは平成30年の数値をどれくらいと予測しますか。

ビジネスパーソンたるもの、単なる思いつきの数値ではなく数学的根拠で予測値を導きたいものです。

このようなときのデータの調理方法として、相乗平均という考え方があります。

まずは相乗平均とは何か、正しく理解します。

次のモデルをご覧ください。

1→(2倍)→2→(4・5倍)→9増え方に注目します。

1は2倍と4.5倍という2回の「増加」を経て、9という数字に増えました。

ではこのモデルの平均増加は何倍でしょうか。

2度の増加で9倍になっているわけですから、その平均は3倍と考えることができます。

2倍と4.5倍の単純平均で(2+4.5)÷2=3.25倍、と考えてはいけません。

1→(3倍)→3→(3倍)→9:平均増加は3倍相乗平均とはこの3倍という平均増加のことを指します。

繰り返しですが、単純平均とは区別してください。

行った数学的行為は次の通りです。

ステップ12×4.5=9ステップ22乗して9になるような数を求める。

3の2乗=9だから「3」が結論。

さらにこれをエクセルの関数を使って処理するときは、PRODUCTとPOWERという関数を活用します。

ステップ1=PRODUCT(2,4.5)→9ステップ2=POWER(9,1/2)→3PRODUCTとは指定した数値、あるいは指定した範囲の全データを単純にすべて掛け算する関数です。

POWERという関数は数値のべき乗を求める関数であり、例えば10の2乗を計算したければ、POWER(10,2)とすることで100という正解を一瞬で導いてくれます。

相乗平均の考え方と計算方法は以上です。

さっそくこの考え方を先ほどの統計データに適用します。

まずは、10年間のデータから男女それぞれ9つの前年比を算出します。

次に、その9つのデータをすべて掛け算します(ステップ1)。

そして、9乗することでステップ1の計算結果になるような数値を求めます(ステップ2)。

計算した数値の解釈は次の通りです。

男子ステップ1=PRODUCT(C10:K10)→0.327640867ステップ2=POWER(0.327640867,1/9)→0.883395822≒0.88男子はこの10年間、平均するとおよそ前年比88%で推移してきた。

女子ステップ1=PRODUCT(C11:K11)→0.177244311ステップ2=POWER(0.177244311,1/9)→0.825102749≒0.83女子はこの10年間、平均するとおよそ前年比83%で推移してきた。

この結果を使えば、平成30年の予測値はこのように計算することができます。

平成29年の数値×平均前月比=平成30年の予測値男子23,253×0.88≒20,463(人)女子3,544×0.83≒2,942(人)当然ですが、実際に何人になるかは誰もわかりません。

しかし、過去の実績と傾向から「どれくらい下降していくか」を数値化することで、根拠のある予測値を作ることができます。

このような「率」を操る手法はぜひ身につけておきましょう。

最後に、どのようなときにこの調理方法が有効かを整理しておきます。

手元にある素材(ファクト):時系列データ作りたい料理:未来の予測値調理に必要な条件:時系列データに上昇・下降などの傾向が顕著にあるとき調理方法:相乗平均

「どれくらい価値があるか」を数値化する~現在価値・将来価値の算出~「スーツを着ている男性は2割増し」と知人の女性が言っていたのを思い出します。

どんな男性でもスーツを着るとカッコよく見える。

だからスーツ姿の男性を見たときは、スーツを着ている分は割り引いて評価をしないといけない。

女性なら誰もが頷く「ファクト」だそうです。

正しい評価をするために割り引いて考えないといけない場面は、ほかにもたくさんあります。

例えばお金。

現在の100万円と1年後の100万円は同じ価値でしょうか。

経済やファイナンスの分野はもちろん、私の専門であるビジネス数学でも定番のトピックスであり、現在価値(将来価値)という名称で紹介されています。

仮に年利5%とすれば、現在の100万円は1年後に105万円になります。

(現在の価値)×1.05=(将来の価値)というシンプルな計算式によるものです。

では逆に1年後の100万円は現在の価値に換算するといくらでしょうか。

(将来の価値)÷1.05=(現在の価値)ですから、100÷1.05≒95.24万円となります。

つまりこの計算は、将来の価値から5%分を割り引き、現在の価値に換算して評価していることになります。

先ほどの男性のスーツの話なら、スーツ着用分は割り引いて考えることと同義です。

ではビジネスの話に移りましょう。

仮に、あなたがいる会社が前年に対し、1.5倍の実績をあげたとしましょう(式A)。

でももし、その会社の主戦場とする市場も成長しており、市場規模が2倍に成長しているとしたら、どう評価するのが妥当でしょうか。

市場が2倍に増えているのですから、ある意味では会社の売り上げが2倍になって当たり前とも言えます(式B)。

式A(昨年の売上高)=(今年の売上高)÷1.5式B(今年の売上高)=(昨年の売上高)×(自社の頑張り)×(市場の成長)=(昨年の売上高)×(自社の頑張り)×2この2つの式により、(今年の売上高)=(今年の売上高)÷1.5×(自社の頑張り)×2(自社の頑張り)=1.5÷2=0.75つまり市場の2倍成長という要因を割り引くと、この会社は実質25%ダウンしたと評価することも可能になります。

単に市場の追い風で数字が伸びたにすぎないという評価です。

読みながら、「おや?この本のどこかに似たような話があったな」と思った方は本書をしっかり読み込んでくださっている証拠です。

第2章でご紹介した簡単なエクササイズがまさにこのエッセンス。

似たような(あるいは同じ)話が登場するということは、それがデータを調理する手法としてとても重要であることを示していると思ってください。

では最後にこの考え方を応用したこんなテーマを考えてみましょう。

Qあなたの会社で新卒社員を1名採用する。

その価値はどれくらい?そしてその採用は果たして会社にとって経済的か?「どれくらい?」という問いなので、数値化して答えたいところ。

ここでは金額に換算して答えてみます。

例えば次の前提をいったん事実とします。

・仮定1:3年間で退職する(もちろんもっと長く勤務してもらいたいが)・仮定2:初年度でこの新卒社員が生み出す利益は年間100万円とする・仮定3:入社後1年ごとに生み出す価値は20%ずつ増加する先ほどのお金の事例を思い出すといいでしょう。

前提条件から将来の価値を計算すると次のようになります。

入社1年目に生み出す価値100万円入社2年目に生み出す価値100×1.2=120万円入社3年目に生み出す価値100×1.2×1.2=144万円退職までに生み出す価値100+120+144=364万円新卒社員を1名採用することは、今後3年間で364万円の利益をもたらすと仮定できます。

ただ実際はここから少し話を広げて、この新卒1名に3年間働いてもらうことで発生するコストも計算したいところです。

3年間の給与、そのほか諸費用。

そして採用活動に要した費用なども考慮し、総コストを把握。

そのうえでそもそも新卒1名を採用することに経済的な合理性があるのかを判断します。

見合わないという判断であれば、適正と言える年数までは勤務してもらえるような体制や教育を充実させる。

あるいは新卒採用は断念して経験者を中途採用するほうが経済的である、といった判断にも活用できます。

企業の人事担当者が経営者に人事戦略を説明するときはもちろん、内定者や新入社員などに「すぐ辞めるとはどういうことか」を説明するロジックとしても使えるでしょう。

前項と同様、ここでも扱う数学的知識は「率」だけです。

あなたも「率」を使いこなし、数字に強いビジネスパーソンになっていきましょう。

手元にある素材(ファクト):過去(将来)の数字作りたい料理:価値を数値化したもの調理に必要な条件:割引率という数字が手元にあること調理方法:現在価値(将来価値)の算出

「視点」から答えを出す「どれくらい増やせるか」を数値化する~ABテスト~視点という言葉があります。

私は「物の見方」という意味だと思っています。

おそらくあなたの認識もそれに近いものでしょう。

では、数学的な視点とは何か。

もちろん「数学的な物の見方」ということになります。

ここからはその数学的な視点を2つに厳選してご紹介します。

数学の勉強をするのではなく、数学的な視点を手に入れる。

そんなイメージを持って読み進めてください。

まずはひとつめ。

「ABテスト」をご存じでしょうか。

マーケティングなどでよく使われる考え方です。

簡単に言えば、同じ内容で見せ方の違うA案のWEBページとB案のWEBページのどちらのほうが、よりお客様が反応してくれるかを比較するテストマーケティングのこと。

例えばあなたがネットショップでスキンケア製品を買うとします。

販売ページの最下部には「お申し込みはこちら!」と書かれたボタンがあります。

そのボタンは何色ですか?文字は大きいですか?小さいですか?ひょっとしたら、10分後にアクセスしたらそのボタンの表記は「あなたも理想の肌を手に入れよう!」に変わっているかも……。

ネットショップの運営側はいきなり1種類のボタンで勝負せず、複数のボタンを用意しているかもしれません。

そしてあなたのようなお客様の反応を数値化し、そこから最適化していくことを考えているかもしれません。

「いきなり正解なんてわからないし、素直にお客様に答えを教えてもらおう」とばかりに。

この話をここから具体化していきます。

この販売ページは1カ月で15,000回表示されるとし、取り扱う商品の実質的な「賞味期限」も1カ月とします。

この1カ月でいかに購入ボタンをたくさんクリックしてもらうかを考えるわけですが、そこで表現方法にAパターンとBパターンを用意します。

A「お申し込みはこちら!」まずは100回表示結果はクリック数が8回B「あなたも理想の肌を手に入れよう!」まずは100回表示結果はクリック数が15回AとBではどちらが適した広告表現か、お客様に教えてもらいました。

結論はB。

だから今後はBだけ表示させることでクリック数を最大化できます。

残り表示回数が14,800回ですから、クリック率15%をそのまま適用すれば2,220クリックの獲得。

計2,243回が最終的な獲得数です。

ところでもし最初に行ったABテストでの表示回数を200回ずつにした場合はどうなるでしょう。

先ほどの2,243回よりも増えるか減るか。

さらに300回ずつにした場合はどうか。

答えは「減る」です。

計算した結果だけ示します。

ABテスト表示回数200回ずつの場合総獲得クリック数2,236クリック率14.91%ABテスト表示回数300回ずつの場合総獲得クリック数2,229クリック率14.86%つまり、ABテストで費やした表示回数が多ければ多いほど、最終的に獲得するクリック数は減るということになります。

少ないリソースで実施し、すぐに判断を必要とすることがおわかりいただけると思います。

ただし、どれくらいのリソース(時間、あるいはコストなど)をABテストに費やすべきかという疑問が残ります。

厳密な正解やルールはありません。

ただ、あくまで私の考え方ですが、使えるリソースの1%~2%くらいを使ってABテストを行い、それですぐに判断するのがいいかと思います。

実際、この例でも15,000回表示のうちABテストで使ったのは200回。

これはおよそ1.3%に当たります。

別の例もひとつだけ。

例えば本書のようなビジネス書。

置かれる書店は減っているのに刊行点数は増えています。

仮に「賞味期限」を1年だとしましょう。

それでも現実は書店に並んでわずか1週間(7日間)で良い・悪いを判断されます。

残念ながら動きが悪い本は容赦なく返品となるのですが、この7日という日数は365日のおよそ2%です。

最初の2%でABテストをして判断しているとも言えます。

つまり、現代のビジネスシーンはそれくらいのスピード感で動いているということ。

ABテストに費やすのは1%~2%程度という私の提案にはそういう理屈があります。

なお、1点だけ注意いただきたいのが、「もう少し長くテストして様子を見たほうが……」といった意見や反論が必ずあること。

心情的には理解できますが、数字が示しているように、テストが長引くほど最終的に得られる果実は小さいものになるということをしっかり(数字で)ご説明ください。

ところでこの話には、もうひとつ重要な側面があります。

それは、「将来的にどれくらいまで増えるか」を数字の根拠を添えて説明できることです。

ネット通販の場合、まだ誰もわからない「最終的にどれくらいのクリック獲得数になるか」を説明できます。

書籍の場合、まだ誰もわからない「最終的にどれくらい売れるのか」を説明できます。

ビジネスパーソンにとっては、ABテストの論理そのものよりも、未来のこと(未知のこと)を数字で説明できることのほうが重要でしょう。

この視点をあなた自身の仕事に活用するには、次の順番で考えてみるといいでしょう。

「最終的にどれくらいになるのか」を数字で説明したいテーマは?↓それはどんなABテストを実施するのが有効か↓その仕事に関わる人間が1%~2%で判断することに納得しているかすべてクリアであれば、ぜひABテストにトライしてみてください。

これが私の申し上げる、数学的な視点で仕事をするということです。

最後にまとめておきます。

手元にある素材(ファクト):かけられる総リソースの量(数字)作りたい料理:最終的にどれくらいの数値を獲得できそうか調理に必要な条件:リソースの1%~2%をテストに費やせること調理方法:ABテスト

「どれくらい影響するか」を数値化する~感度分析~シンプルな問いです。

あなたが勤めている会社は、次のどちらのほうが経営に影響がありそうでしょうか。

・人件費をガッツリ減らす・広告宣伝費をガッツリ減らすあなたの答えはどうでしょう。

もしこのようなことが数字で説明できたら、つまり「どれくらい影響するか」を数値化できたら、あなたは経営層とも対等に会話ができるようになります。

なぜなら、経営層はそのようなことばかり考えているからです。

そこで、唐突ではありますがおよそ4ページ程度のショートストーリーをご用意しました。

もしかしたらあなたの会社でもこんな物語が生まれるかもしれません。

おそらく感動はしませんが、ぜひ読み進めてみてください。

STORY~「お金ではなく、知恵を使え」~株式会社フカサワプランニングは設立5年目。

昨年の利益は250万円。

この数年、業績は下降線をたどっており、そろそろ大胆な施策を実行しないと赤字に転落するだろうというのが社内の共通認識。

そしてその社内からは「人件費をカットしないともうダメ」派と、「効率よく広告費を使っていないのでそこを早急に見直すべき」派とで真っ二つに分かれている。

ところがこの2つの主張は、いずれも具体的な数字が使われていない。

そこで社長のフカサワは、社員にこう提案します。

「原価を中心とする変動費を削減することは現実的には不可能。

だから必然的に固定費を削減するしかない。

ではそれぞれカットすべきだと主張するコストを、いまの2割削減したら利益にどれくらいの影響が出るのか、ざっくりでいいから試算してくれ。

その数字を参考に判断する」すぐに管理職を中心に議論が始まった。

社長からの「ざっくりでいいから」というリクエストが、経営に関与していない彼らにはありがたかった。

そして彼らは答えを出します。

役員報酬も含めて人件費を20%カットする場合、退職勧告や社員のモチベーション低下、残業時間の短縮などの要因を考慮して、売り上げには10%ダウンの影響が出ると試算。

加えて社内ではこなせない業務は結局外注することになり、業務委託費が3倍になってしまうだろうと試算。

ここは人事部長の意見を大きく考慮した。

続いて広告宣伝・販売促進費を20%カットする場合、現状うまく販促が機能していないのはある特定の商品であること。

それらは低い利益率であること。

さらに主商品の販促コストは低く抑えられていることが判明。

総売上高にはほぼ影響はなく、現状維持が可能と試算。

ここはマーケティング部長の意見を大きく考慮した。

広告費20%カット→利益110万円増加人件費20%カット→利益20万円増加この結果を踏まえ、社長のフカサワは来年度の計画において、マーケティング部の予算削減を命じ、効率化と精度の向上を厳命。

さらに全社員に対してマーケティング部とのコミュニケーションを密に取るよう指示。

「当社にとって人は資産です。

人への投資を止めることは成長を止めることにほかなりません。

そちらのほうが、この会社にとっては痛みが大きい。

全社員がマーケティング視点を持つこと。

そしてマーケティングはお金を使ってするものではなく、知恵を使ってするものです」とメッセージを発した。

おしまい。

※この物語はフィクションです

いかがでしたでしょうか。

どこにでもありそうな話で、難しいことは一切ありません。

要するに単に額が大きいからといって短絡的に人件費をカットしてしまうのではなく、それをすることによる影響も考えようということ。

そして人件費をカットするほうが、影響は大きいことを数値化して説明したということです。

人件費と利益、そして広告費と利益、それぞれどう関連しているのか。

それは数字で捉えるとどうなっているのか。

関連を数で捉える。

これはまさしく数学的な視点であり、皆さんが学生時代に学んだ「関数」にほかなりません。

なお、このような考え方は「感度分析」と呼ばれる分析手法をベースにしています。

例えば手の人差し指をどこかにぶつけてもそれほど痛くはありませんが、足の小指をどこかにぶつけると涙が出るほど痛い。

これはすなわち、足の小指のほうが身体へのダメージが大きい、感度が高いとも表現できないでしょうか。

広告費と人件費を手の人差し指と足の小指に置き換えれば、なぜ「感度分析」という表現なのか感覚的にもイメージできるでしょう。

なお、1点だけ注意しておくことがあります。

それは、関連ある(と思われる)数字で分析をしないと意味がないということです。

先ほどのフカサワプランニングの分析も、「従業員の毎月のこづかいの平均額」なんて数字は感度分析には不向きだということです。

「従業員のおこづかいが上がれば、会社の業績も上がる」という論理はさすがに飛躍しすぎです。

大事なのは、直接的に関連し合い、影響があるものを使って分析することです。

手元にある素材(ファクト):変化させたい数値Aとそれに関連する数値B作りたい料理:Bの変化がどれくらいAの変化に影響するか調理に必要な条件:Aの変化がBの変化に影響すると思われること調理方法:感度分析

「統計手法」を使いこなす「どれくらいリスクがあるか」を数値化する~標準偏差~ビジネスでも使える統計的な手法。

あなたはどれくらいご存じでしょうか。

数年前にちょっとした「統計ブーム」が起こりました。

ビッグデータの時代。

ビジネスパーソンはデータリテラシーが極めて重要。

統計的な分析をすることで間違う可能性を下げることができる、などと喧伝されました。

確かにその通りだと思います。

多くの意識が高いビジネスパーソンが統計学を学ぼうと書籍やセミナーを求めました。

しかし、どれくらいの人が実際にそれをいまも使っているのでしょう。

学んでも使わなければ意味がありません。

そんな私の結論は、一般的な仕事をしているビジネスパーソンが使うべき統計手法はごくわずかだということです。

作らない料理のレシピを知っていても意味がありません。

そこで、「まずはこれだけでいい」と私が断言できるものを2つピックアップしてご紹介します。

まずは「標準偏差」という数字について説明します。

これまでの著書やビジネス系の講座でも頻繁に紹介してきたテーマです。

何度も書いているテーマですが、それでも私は本書から外すことはしませんでした。

それほどビジネスパーソンにとってパワフルな武器になるからです。

「標準偏差」はいったい何がパワフルなのか。

答えはこうです。

リスクを数値化できる一般的にリスクのないビジネスはありません。

「ノーリスクで儲かりますよ」なんて話を信じる人はいないでしょう。

あなたが関わるビジネスにも何かしらのリスクがあります。

そしてそのリスクについて会話するとき、あなたやその相手はきっと「どれくらいリスクが大きいのか」を知りたいはず。

だから過去のファクトから未来のリスクを数値化できる手法がわかれば、ビジネスをいい方向に進めることができます。

ではあらためて、標準偏差とはどのような数字かを定義します。

〈定義〉標準偏差:あるデータ群において、平均値からのバラツキ具合を数値化したものエクセルを活用し、関数STDEVPで計算できる〈事例〉ある受験生XとYが数学の模試を受験した。

模試はA、B、Cの3種類。

得点は次の図の通りで、平均点はいずれも60点である。

このとき、平均点からのバラツキをこのように数値化する。

ステップ1それぞれ平均点からの差を計算ステップ2それぞれその2乗を計算ステップ33つの合計値を計算ステップ41データあたりの数値にする(このケースは3で割る)ステップ5平方根をとる(2乗して「ステップ4」の数になるような数値を求める)例えば受験生Xの標準偏差、つまり平均点からのバラツキの大きさは24.49…となります。

実際にエクセルでも関数STDEVPで3教科のデータを指定することで同じ値を得ます。

ぜひ試してみてください。

このような理論があれば、同じように平均点が60点の人物でも異なる評価ができます。

模試によってバラツキが大きいのか、それとも安定して似たような得点をしているのか。

そして一般的に前者をリスクが高いと評価します。

このケースなら、受験生YよりもXのほうが「危なっかしい」となります。

数学を受験科目に入れるのはリスクが高いという評価です。

具体的に標準偏差を比較してみましょう。

受験生Xおよそ24受験生Yおよそ8あくまで数字での話ですが、数学を受験科目にするリスクは3倍の違いがあるということになります。

もしそれでもこの受験生Xが数学を受験科目にするのであれば、この数値がどう変化すれば受験科目に入れる決断をするのかを決めておく必要があります。

ここに絶対の基準はありませんが、私ならこれ以降も何度か模試を受験し、次の3つの条件を満たした場合にそうするかもしれません。

・今後さらに違う模試を3つ以上受験する(同じように3つの模試の結果で評価する)・その得点の平均点が70点以上である(現状よりも得点力がアップしている)・その標準偏差が10点未満であること(現状よりもリスクが小さくなること)ひとつでも満たないものがあれば受験科目から数学は捨てると意思決定するでしょう。

本書をお読みのあなたはもしかすると、「これはビジネスでもある話だな」と思ったかもしれません。

事実、ビジネスでも起こり得る話です。

例えば製造工場XとYがあるとします。

2つの製造工場において毎月の不良品発生数をデータ化し、その平均値と標準偏差を算出します。

仮に平均値がほぼ同じだとしても、標準偏差が小さいほうが製造過程のパフォーマンスに安定感がある工場と評価できます。

言い換えれば、標準偏差が大きいということは不定期に機械の動作不良が起こったり、作業者の仕事の質にバラツキがあったりしていることが想像できます。

標準偏差が大きい工場のほうが危なっかしい工場、つまり大量に不良品を出してしまうリスクが大きいと評価できます。

また、仮にその工場の安定感が増したのであれば、それをどうやって説明するか。

このような問題を解決してくれるのが標準偏差という数字です。

・不良品発生の原因を特定し改善。

その上で○ヵ月間、工場を稼働させる・その平均値が減ること(現状より不良品が減る)・その標準偏差が減ること(現状よりリスクも小さくなる)前の3つの条件を満たした場合、「安定感が増した」と説明できるでしょう。

ひとつでも満たないものがあればそう評価はできないというルールを決めることで、その工場が目指すカイゼンが見事に数字で定義できました。

あらためて、あなたの仕事においてリスクを数値化できたらいいなと思う場面はありませんか。

エクセルだけで簡単に数値化できる手法です。

標準偏差の活用方法については拙著『入社1年目からの数字の使い方』(日本実業出版社)でほかにもご紹介しています。

よろしければご参照ください。

手元にある素材(ファクト):増える・減るといった変動が存在するデータ作りたい料理:リスクの数値化調理に必要な条件:エクセルが活用できること調理方法:標準偏差(関数STDEVP)「どれくらい関連がありそうか」を数値化する~相関係数~続いて「相関係数」について説明します。

これも私の著書ではこれまで何度もご紹介し、数字で考えることをテーマにした講座でも参加者に必ずお持ち帰りいただくテーマです。

しかし、やはりそのパワフルさという点でこのテーマも外すことはできませんでした。

「相関係数」はいったい何がパワフルなのか。

答えはこうです。

「どれくらい関連がありそうか」を数値化できる「深い関係」という表現があります。

例えば子どもの頃、私はよく友人同士で「俺たちってかなり仲良いよな」と会話したことを覚えています。

いま思えば、「かなり仲が良い」「そこそこ仲が良い」「あまり仲良くない」といった概念はとても曖昧でした。

プライベート(まして子どもの会話)ならそんな面倒なことを考える必要はありませんが、これが大人になってビジネスの会話になるとそうはいかないことがあります。

「広告費」と「売上高」はどれくらい深い関係にあるのか。

「気温」と「来店者数」はどれくらい深い関係にあるのか。

「社歴」と「成果」はどれくらい深い関係にあるのか。

など、2つの事柄の数字の増減にどれくらい深い関係があるかを把握することは、ビジネスにおいてとても有効です。

例えば最初の「広告費」と「売上高」。

もし関係の深さがわかれば、「売上高」を増やすためには「広告費」を増やすことが有効だと論理的に主張できるでしょう。

「気温」と「来店者数」も同じ。

仮に気温が下がるほど客数が増えるビジネスなら、気温という数字からも来店客数を予測することが可能です。

「社歴」が長ければ長いほど「成果」が出ているとは限らない。

むしろ逆の傾向が出ているとするなら、社内にいる〝古参者〟をどう再教育するかは経営において重要な課題になったりもするでしょう。

いまからご紹介する手法は、そんな場面でとても役立つものです。

先ほどの「標準偏差」と同様、エクセルだけで簡単にできます。

ぜひ身につけておいてください。

ではあらためて、相関係数とはどのような数字かを定義します。

[定義]・「相関関係がある」とは、2つのデータの増減に似た傾向があること・相関係数:2つのデータの相関関係の強さを数値化したもの・エクセルを活用し、相関係数を求める関数CORREL(配列1、配列2)で計算[特徴]・1≦相関係数≦+1・+1に近い数値であればあるほど、強い正の相関関係がある・1に近い数値であればあるほど、強い負の相関関係がある[事例]ある予備校で行われた模試の3教科(国語、数学、英語)それぞれの平均点のデータを使って、相関係数を算出する。

国語と数学の相関係数はおよそ+0.8。

正の相関関係があると言える。

一方、国語と英語の相関係数はおよそ−0.7。

負の相関関係があると言える。

国語も数学も、実は論理思考力を測るもの。

そう考えると、国語が得意な学生は数学も実は得意という傾向が出てもおかしくはないでしょう。

逆に英語を「暗記科目」だと思って勉強をしてしまっている学生も多いとするなら、国語は得意なのに意外と英語に苦戦する傾向が出てもおかしくはないでしょう。

少しだけ補足します。

この相関係数は極めて複雑な数学的理論により算出されています。

理論の説明はほかの専門書に譲り、本書はあくまでビジネスパーソンの活用法のみ解説することをご了承ください。

算出された相関係数は必ず−1から+1の間の値になります。

Aが増えればBも増えるような関係は、「正の相関関係」と言います。

先ほどの例で言えば、「売上高」と「広告費」の関係です。

一方、負の相関関係とはAが増えるほどBは減るような関係。

先ほどの例で言えば、「気温」と「来店者数」の関係のことです。

私個人の主観も入りますが、一般的に+0.7以上(−0.7以下)の数値なら強い正(負)の相関関係があると評価し、ビジネスにおいても根拠として使うことは有効であろうと考えます。

裏を返せば、±0に近い数値だった場合は、ほとんど相関関係は認められないということになります。

そのAとBをつなげて物事を論じるのは推奨できません。

数学的な解説はここまでにします。

重要なのはここからです。

ぜひあなたに意識してもらいたいことがあります。

それは、常に2者の関連で考えて仮説を作るという視点です。

・来年度の広告予算を決めたい→広告費と売上高に相関関係があるのではないか?・明日の来店客数を予測したい→気温と来店客数に相関関係があるのではないか?・ベテラン社員に研修が必要であることを説明したい→社歴と成果に相関関係があるのではないか?いずれにも共通するのは、2つの関連性を疑うということです。

先ほどの予備校の事例も、「もしかしたら国語と数学のスコアには関連があるのではないか?」という疑いを持ったからこそ相関係数を算出してみるという行為につながっています。

まとめると、次の質問に答えていくことがあなたの仕事です。

Q1あなたが実現させたいことは何かQ2そのためにどんな2者の相関関係を疑うかQ3その2者はデータで用意できるか(ファクトベースの仕事ができるか)Q4算出した相関係数をどう評価できるかなぜ私は2種類のデータの関連で説明することを強く推奨するのか。

それは、「関連している」という説明がビジネスでは強力な説得材料になるからです。

現実のビジネスシーンでは単に「広告予算を増やして欲しい」と主張しただけではなかなか通りません。

しかし、売上高に強く関連しているという数字にもとづいた情報があるだけで、反応が変わるはずです。

ただ一方で、膨大なデータを高度かつ複雑な分析をした結果があったとして、その説明は(分析手法などまったく知らない)相手が理解できるものでしょうか。

ビジネスパーソンが100人いたら、専門的な統計手法を知っているのはおそらくひとりくらいです。

しかし、いま紹介した2つの相関関係での説明なら、おそらくその100人すべてが理解できるでしょう。

あなたは(おそらく)研究者ではありません。

高度な分析ができるようになることが仕事ではなく、いま目の前にあるその仕事を最も簡単かつシンプルな手法で前に進めることが仕事です。

だから、あなたは難易度の高い統計手法を学ぶ必要はありません。

これが、一般的なビジネスパーソンが使う統計手法はこれだけでいい、と私が申し上げる理由です。

信じていただけますか。

手元にある素材(ファクト):増える・減るといった変動が存在する2種類のデータ作りたい料理:相関関係の強さを数値化調理に必要な条件:エクセルが活用できること調理方法:相関係数(関数CORREL)

「モデル化」で説得力を手に入れる「どれくらい必要か」を数値化する~単回帰分析~データを調理する方法。

ここからご紹介するのは、「数学的モデル」を作るという発想です。

さっそく定義からまいります。

数学的モデル:物事や事象の構造を数学的に具体化したもの自分で定義しておいて恐縮ですが、これではあまりに抽象的でよくわかりません。

具体例をひとつ挙げましょう。

例えば初期費用100円、1日利用するごとに10円が加算されるサービスがあったとします。

日数をX、かかる費用をYとすれば、このサービスは数学的にこう表現できます。

Y=10X+100これはいわば、このサービスの構造を数学的に明らかにしたと言えます。

これが私の定義する「数学的モデルにする」ということです。

このように、数学的モデルにすることで、手元のデータから提案や説得に使える数字を新たに作ることができます。

本章の最後として、2つほど代表的な調理方法をご紹介します。

まずひとつめは、単回帰分析と呼ばれる手法です。

2者の関連を数学的モデルにすることで、具体的な数値を算出できます。

「2者の関連」という言葉から、先ほどの相関係数の話を思い出す方も多いことでしょう。

そう、実はこの単回帰分析とは、先ほどの相関係数による分析の〝続き〟なのです。

前項で挙げた3つの例を思い出します。

・来年度の広告予算を決めたい→広告費と売上高に相関関係があるのではないか?→強い相関関係が認められた→では売上高2億円を達成するために必要な広告予算は具体的にいくらか?・明日の来店客数を予測したい→気温と来店客数に相関関係があるのではないか?→強い相関関係が認められた→では明日の平均気温が5℃なら、来店客数は具体的に何名か?・ベテラン社員に研修が必要であることを説明したい→社歴と成果に相関関係があるのではないか?→強い相関関係が認められた→では社歴が1年増えるごとに、生み出す成果は具体的にどのくらい減るか?このように強い相関関係が認められる場合、もう一歩先まで進めたくなります。

そのもう一歩とは、その関連の仕方を数学的モデルにしてしまうこと。

結果として「具体的にどのくらい?」に答えられる数字を作ることができます。

それができれば、確保したい広告予算、明日の来店客数、社歴がどう成果に影響しているかなど、自分の提案や主張の裏付けを数字で語ることができます。

活用事例をひとつご紹介します。

ある業界で新規事業を立ち上げたH社は、従業員18名でおよそ1・7億円の売り上げ規模の会社です。

これから成長戦略を描くにあたり、社長は5年後に売り上げ5億円を達成するビジョンを掲げています。

当然ながら雇用を増やしていかなければなりませんが、具体的にこの5年で新規の採用を何名くらいで計画するのが妥当かを考えています。

まずはこの業界の各社の公表している従業員数と年間の売上高を調査し、相関関係があるかどうかを確認します。

算出した結果、極めて強い正の相関関係が認められました。

(相関係数+0.92)そこで、さらにこの関連を数学的モデルにすることで、売り上げ5億円に必要な従業員数を論理的に計算します。

このデータの関連を数学的モデルにする手法はとても簡単です。

エクセルを活用し、以下のマニュアル通りに操作してください。

[単回帰分析マニュアル]1.どれでもいいのでグラフの中のポイントを選択し、右クリック2.「近似曲線の追加」を選択3.「近似または回帰の種類」において「線形近似」を選択4.以下のチェックボックスにチェックを入れるグラフに数式を表示する※Macの場合、オプションの中にあります。

5.「閉じる」をクリックすると、ある直線とその直線を表す数式が示される表示された1本の直線が数学的理論により導かれた、この2者の関連を表現する直線となります。

そして表記されている数式はこの直線を従業員数X、売上高Yとして数学的に表現したもの。

つまりこの2者の関連を数学的モデルにしたものです。

この業界のこれまでの実績(ファクト)から分析すると、5億円の売り上げを得るために必要と思われる従業員数は、次の計算式により(理論値ではありますが)概算できます。

50000=1591.8X-18209X=(50000+18209)÷1591.8≒43この一連の行為を単回帰分析と呼びます。

結果として次のことが言えます。

・2者には強い正の相関関係がある・つまり大まかな傾向として、売り上げが高いほど従業員数も多い・その関連の仕方を数学的モデルにすると、Y=1591.8X−18209と表現できる・このモデルから、この業界は従業員をひとり増やすごとに売上1591.8万円増えるビジネスをしていると説明できる。

もしH社が将来的に売り上げ5億の会社にしたければ、そのときの従業員数の理論値は43人。

現在は18人だから25人の新規採用が必要となります。

また、従業員をひとり増やすことは当然ながら会社のコストも増加することを意味します。

ひとり増やすことで生じる総コストに対しておよそ1600万円の売上増が果たして会社として妥当なのかも判断が必要になるでしょう。

適正であれば5年間で25人採用のプランは現実的となり、不適正であればこの成長戦略を見直す必要があります。

いずれにせよ、数字を使って合理的な仕事が可能になります。

まとめます。

仕事の流れはこうです。

相関係数を把握↓強い相関関係を認める↓単回帰分析を実施↓具体的な数値を作って根拠にする数学的モデルでデータを調理する。

実はとても簡単な仕事術です。

あなたもいますぐやってみてはいかがでしょうか。

手元にある素材(ファクト):強い相関関係のある2種類のデータ作りたい料理:Y=aX+bという形の数学的モデル調理に必要な条件:エクセルが活用できること調理方法:単回帰分析「どれくらい安全(危険)か」を数値化する~損益分岐点分析~2つご紹介すると申し上げた数学的モデルの話。

最後のひとつは極めてシンプル。

商売を数学的モデルにするのです。

当たり前ですが、商売には損益があります。

つまり、必ず売り上げと費用が発生します。

そしてご存じの方も多いと思いますが、費用には固定費と変動費があります。

商売を数学的モデルにする。

1行で表現するとこうなります。

売り上げ-変動費-固定費=利益あなたがいま関わっている商売もまさにこの構造で成り立っています。

あまりに当たり前のことで拍子抜けする読者の方も多いでしょう。

ではここで重要な問いです。

Qあなたの商売は、どれくらい安全な(危険な)ビジネスモデルですか?ここでの危険とは、「損失が出やすい」ということです。

あなたの商売は、同業他社と比べてどれくらい「損失が出やすい」でしょう。

どうやってそれを説明しましょう。

いまからそれを数学的モデルで解説します。

A社は変動費率20%、固定費700とします。

一般的に変動費とは売り上げに連動して増減する費用なので、売り上げに対する比率で表現します。

変動費率20%とは、常に売り上げの20%分が変動費としてかかることを意味します。

B社は変動費率40%、固定費500C社は変動費率80%、固定費500とします。

例えばA社とB社の売り上げ目標が1,000、C社の売り上げ目標が5,000ならそのとき得られる利益は次のような計算で求めることができます。

A社の利益=1,000−200−700=100(利益率10%)B社の利益=1,000−400−500=100(利益率10%)C社の利益=5,000−4,000−500=500(利益率10%)すべて利益率は同じです。

でも、だからといって「どれくらい安全か」まで同じなのでしょうか。

このようなとき、ビジネスでは損益分岐点売上高という数字を把握し、その数字を基準にして説明します。

損益分岐点売上高とはちょうど利益がゼロになる売上高のこと。

この例をそのまま使って説明します。

A社の損益分岐点売上高をa、B社とC社のそれをb、cとすると、この3つの商売はこのような数学的モデルで表現できます。

A社:a−0.2a−700=0B社:b−0.4b−500=0C社:c−0.8c−500=0文字式になると途端に難しいことが書かれているように感じるかもしれませんが、「売り上げ−変動費−固定費=利益」を表現しています。

変動費率も前の条件と同じ、固定費も同じです。

それぞれa、b、cを求めます。

A社:a−0.2a−700=0→0.8a=700→a=875B社:b−0.4b−500=0→0.6b=500→b=833.33…C社:c−0.8c−500=0→0.2c=500→c=2,500すなわち、A社は売り上げ875が損益分岐点になります。

この売り上げから少しでも下回れば損失が生じ、少しでも上回れば利益が出ます。

同様にB社はおよそ833、C社は2,500。

まず同じ売り上げ目標1,000のA社とB社で比較をすると、B社のほうが少ない売上高で損益分岐点に達します。

言い換えれば「B社のほうが損失は出にくく安全、A社のほうが損失を出しやすく危険」ということになります。

ところがC社との比較を考えるとそう単純ではありません。

そもそもの売り上げ目標が5倍も違う、つまり商売の規模が違うからです。

そこで、A(あるいはB)社とC社ではどちらが安全なのかといった比較もできるよう、安全・危険という言葉を数字で次のように表現します。

危険度=(損益分岐点売上高)÷(計画した売上高)安全度=1−危険度A社の危険度=875÷1,000=0.875B社の危険度=833÷1,000=0.833C社の危険度=2,500÷5,000=0.5↓A社の安全度=1−0.875=0.125B社の安全度=1−0.833=0.167C社の安全度=1−0.5=0.5この安全度の数値が大きいほど、損失が出にくい商売であることを意味します。

すなわち、A(0.125)社よりもB(0.167)社のほうが安全、さらに売り上げ規模の異なるC(0.5)社とも同じ土俵で比較ができ、C社はA社やB社よりも安全であることが数字で説明できます。

このように同じ利益率でもそれぞれの商売の個性はまったく違うのです。

一般的に、経営に近い立場になればなるほど失敗を恐れます。

彼らにとって失敗とは、「損失を出すこと」です。

ゆえにいまから進めようとしているビジネスはどれくらい安全なのか(危険なのか)がとても気になるものです。

あなたが経営層に何か判断を仰ぐなら、ぜひこのような数字を情報に盛り込み、とても気にしているポイントについてわかりやすい答えを提示してあげてください。

そのために準備として必要なことは、次の3種類の数字を把握することだけです。

・計画した売上高・変動費率(売り上げに対して何%かかるのか)・固定費の額経営とか商売とか言われても自分ごとにならない方もいるかもしれません。

しかし、いつか必ず経営層と数字で対話する場面が来るはずです。

あるいはなんらかの商売を自ら始めることもあるかもしれません。

でもだからといって慌ててビジネススクールに通ってMBA(経営学修士)を取得する必要はありません。

経営者が気にすることがわかっていればいいのです。

最後に補足。

ここでご紹介した「危険度」という数字は一般的には「損益分岐点売上高比率」と呼ばれ、「安全度」は「安全余裕率」と呼ばれています。

ただ、私はやはり「危険度」「安全度」のほうが誰でもピンとくるわかりやすい表現ではないかと思い、このような表現で説明しました。

重要なのは専門用語を知ることではなく、考え方と意味がわかることですから。

手元にある素材(ファクト):数字で立案した事業(収益)計画作りたい料理:どれくらい安全な計画かを数値化したもの調理に必要な条件:計画した売上高・変動費率・固定費額の把握調理方法:損益分岐点分析

データの料理上手に以上が本書でお伝えする、私が8つに厳選した「数学的手法でデータを調理する手法」です。

数学の勉強をするのではなく、数学的な仕事術を身につける。

あなたがやってみようと思えたものはどれですか。

技術の向上によりなんでもデータが取得できる時代。

ファクトベースで仕事をすることが常識の時代。

必ずあなたの武器になる調理法があるはずです。

そういえば知人(男性)の料理人がこんなことを言っていました。

「ここだけの話、料理が上手だと女性にモテます」なんとも羨ましい限りです。

素材を調理し、美味しい料理を作り、相手にそれを食べてもらい、喜んでいただく。

あなたもぜひデータの料理上手に。

職場でモテます。

きっと。

 

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