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第4章「分析とは何か」を誤解していませんか?

目次

1佐野社長から出されたあるクイズ

佐野社長からの依頼

ある日の早朝、社内でもっとも小さな会議室に智香と社長の佐野がいました。

昨日、佐野から智香に「少し話をしましょう」とメールがあったのです。

どうせまたニヤニヤしながら私からの近況報告を聞くのだろうと想像しながら、智香はこの日、出社しました。

「柴崎さんが入社してそろそろ2週間。早いね~♪どう?ウチの会社は(ニヤニヤ)」「(やっぱり……)ええ、まあだいたい想像していた通りですね」

「と、言うと?」

「私のようなタイプは、みなさん嫌いみたいです」

「ははは……。ま、正確には一人だろうけど」

「……かもしれませんね。でも、こちらも勉強になります」

「ところで話は変わるんだが……」

佐野は株式会社ブライトストーンのネット通販事業について説明を始めました。

ネット通販は2年前に佐野の強い希望もあり、「社長直轄プロジェクト」として立ち上げ、通販サイトをオープンさせました。

ところがオープン以来、現在まで売上は低空飛行を続けています。

そんな状況ゆえ専門の部署があるわけではなく、営業部とシステム部門が〝なんとなく〟連携し、〝なんとなく〟サイト運営されているというのが現状です。

そんな状況から、社内からは継続する必要はないのではないかという声も出始めていました。

このプロジェクトには木村も当然参加していましたが、彼もそのような声をあげる一人でもあります。

「なるほど、まあ新規事業の初期から中期フェーズではよくあることですね」

「ああ。でも、私はこのネット通販事業はある〝狙い〟があって始めたんだよ」

「それは何ですか?」

「いまは内緒ということにしておこう。数字を見てもらえれば柴崎さんは気付いてくれると思うよ。まあ、キミにとってはちょっとしたクイズみたいなものだろう」

「はあ。でも何でいま、このお話を私に?」「まあ、いまの社内の空気から察するに、おそらく近いうち、ネット通販事業について社内で議論する場があると思ったんでね」

「つまり、そのような場でスタッフのみなさんに私から説明しろと」

「さすが。勘が鋭いね~(ニヤニヤ)」

早朝の秘密会談(?)を終え、智香はデスクに戻って早速、通販サイトを開いてみました。

確かに、それほどコストや手間をかけているようには見えず、お世辞にも「売れていそう」なサイトではないと感じました。

しかし、あの佐野の肝いりで立ち上げた事業。

先ほど佐野が自ら言ったように、必ず何か意図があるはずです。

少し難しいクイズを出されたような感覚に、智香の心は無意識に躍るのでした。

2通販サイトはクローズするべき?

「実売」で判断すれば大丈夫?

「やっぱさ~、売れないと思うんだよね~」ある日の朝、デスクで木村が大きな声で言った言葉です。

特定の誰かに向けてではないので、半分は独り言のようなもの。

これまでのネット通販サイトの売上額を見てみると、営業部門のリーダーとしてはやはり見過ごすことはできないようです。

「売れないって、ネット通販の件ですか?」

「そう、もう数字で出ているじゃん。オープン以来、前月比が120%を超えた月はないし、客単価も実店舗に比べて7割程度。ダメじゃんこれ」

「ふふふ。先輩、発言に数字が入るようになってきましたね♪」

「え?まあこの程度はビジネスパーソンとして当然でしょ」

「でも、確かになかなか数字は伸びませんね」

「俺はよくわからないけれど、システム部が予算をとってウェブの集客とかやっているらしい。マーケティングにお金使っているのにこれじゃ……」

「一度、部長も交えて話し合ってみてはどうでしょう」

「賛成♪通販事業のためにワタシたちもそこそこ時間取られているもんね」

というわけで、翌週に営業部内でミーティングをすることになりました。

部長の福島はもちろん、智香も参加です。

木村が通販事業にネガティブなのには理由があります。

そもそも、ファッションは実際に生で見て、触って、感じて、試して、そして購入いただくべきものであり、そのプロセスを楽しんでいただくこともファッションの醍醐味だし、それも提供する価値のひとつだというのが木村の持論なのです。

つまり、インターネットの画面だけ見てワンクリックで購入、というのは彼の哲学に反するというわけです。

通販事業のプロジェクトを立ち上げる際にも木村は社長の佐野と、この点について意見交換をしましたが、佐野はいっさい取り合わなかったのでした。

「まあ俺の個人的な考えもあるが、何より数字が物語っている。部長、2年やってこれではハッキリ言って続ける意味がないと思います」

「その数字というのは?」

「昨年度の年間売上額を主な店舗と比較してみました。まあご存じだと思いますが、主な実店舗と売上額の桁が違います。たとえば横浜店は2100万円に対して、ネット通販はおよそ800万円」

「まあ、確かに売上額だけ見ればそうなるな」

「ウチのメンバーだけでも通販事業で少なからず人的コストも発生しています。営業部として、クローズさせる提案を社長にしませんか?」

「なるほど。ところで柴崎さんはどう思う?」

「結論から言うと、継続すべきです」

「出た、またかよ……」

「もちろん根拠はあります」

「また数学かい?それも結構だけどな、年間でたった800万円の売上だぞ?しかもこの2年間、ほとんど売上額は伸びていない。どう考えてもポテンシャルはないと思うけど」

「先輩、前から思っていたことなんですが……」「何だよ?」「割り算できないんですね」

数字は「実数」と「割合」で比較

あまりに予想外の言葉に、木村の口からは「はあ?」というお決まりのセリフすら出てきません。

何を言い出すのかとビックリするメンバーの視線をよそに、智香は淡々と話を続けます。

「実数だけの比較には意味がありません」「はあ?ジッスウ……?」「リアルな数量のことだから実数。

この場合は売上額のことですが、2100万円と800万円をそのまま比較することには意味がありません」

「……?」

「たとえばこういうことです。ビラ配りの仕事を1000枚やった正社員と、100枚しか配っていないアルバイト。どちらが優秀でしょうか?」

「ま~たくだらない話が始まった。そりゃ正社員だろうが」

「なぜでしょうか?」

「なぜって……1桁も違うじゃないか」

「柴崎さんが言いたいことって、つまり正社員が1000枚配るのにまる11日かかり、アルバイトはまる1日で全部配ったとしたら、評価は逆になるということですよね」

「あ?」

「こんなの、小学校の算数の話ですよ。割り算だけです」

「(カチン)……!」

「だから2100万円と800万円の2つの実数を比較しただけではほとんど意味がないのです」

3「お客様視点」を語るなら数字を使え

注目すべきなのは「売上」より「利益率」

智香が主な店舗とネット通販事業とを比較するためのデータを配りました。

主要店舗である表参道、新宿、横浜、博多の4店舗とネット通販サイトの昨年度売上額、かかった費用(売上原価など)、営業利益、営業利益率などが書かれています。

相変わらず、智香の資料作成は会議の展開がすでにわかっているかのような内容です。

「以前から気になっていましたが、先輩の発言には『売上』が多いですね。私たちは『利益』を得ることが目的です。

予算などの目標値が『売上』なのでどうしてもそうなってしまいがちですが、原理原則は『利益』が最初にくるべきで、その後に『売上』や『費用』を考えるべきです」

「……ったく、もはや姑のような細かさですな」

「は?何か?」

またしても険悪なムードの2人ですが、智香は構わず話を続けます。

「右端の『営業利益率』に注目してください。つまり実数ではなく割合です」

「あのさ、見ての通りネット通販サイトがもっとも利益率が低いじゃないか。それに、これくらいの数字、俺だって把握しているぜ」

「確かにそうですね。でも先輩の指摘するネット通販と横浜店とはこうして見ると1ポイントの差もありませんよね。ところが表参道店と横浜店は2ポイント近くの差があり、それに関してはこれまで何も指摘してきませんでしたよね?何か矛盾を感じるのですが?」

「うっ……(ま~た屁理屈だよ)」

「つまり、ネット通販事業は他の主要店舗と利益を稼ぐ力はそう変わらないということです。ならば、ネット通販だけやめるべきだという議論はおかしくないでしょうか?」

この智香の主張に反論するメンバーは一人もいませんでした。

確かに額は少ないけれども、利益率で見ればネット通販だけ〝悪者〟にするのはいささか乱暴かもしれません。

「柴崎センセイ、しつも~ん♪」

「はい、島田さんどうぞ」

「でも、結局は生み出す利益額が少ないわけだから、会社に貢献していないってことにはなりませんか?」

「そ!その通り!さすが奈々ちゃん!俺もそれが言いたかったんだよ~!」

「絶対ウソだ」

という福島、近藤の視線にはまったく気付かずに木村はテンションが急上昇しています。

しかし、奈々の指摘はよいところを突いています。

実際、稼ぐ力があったとしても、ビジネスは得られる利益額が少なければ困ってしまいます。

智香の説明は、木村の考え方の浅さを指摘しただけであって、「ネット通販はやめるべき」という主張を否定するには至っていないのです。

「いつものパターンだと、柴崎さんの資料の先にその答えがあったりするよね」「確かにこの資料にも続きが……」

「はい、資料の続きをご覧ください。『WIXY』の顧客を過去の累計購入金額で分類しました。

高額な買い物をしてくれるお客様、つまり超優良顧客はゴールド、そうではないリピーターをシルバー、残りを新規客とします」

「弁当で言えば松竹梅のことか」

「はい、そして次に各店舗別でその3つの顧客層に分けてみました。すると、明確にわかることがあります。ネット通販の利用者は圧倒的にゴールドが多いのです」「お?」「これはわかりやすい傾向ですね」

智香の出した数字によれば、通販サイト利用者に限定して顧客属性を調べたところ、なんと80%近くがゴールド。

これは明らかに実店舗と違う傾向が出ていますが、木村はどうも腑に落ちません。

「う~ん、これだと俺の直感とは真逆の結果だ」「先輩はどう思っていたのですか?」「ゴールドのお客様はウチのブランドの絶対的なファンだから、店に通って買い物を楽しんでくれる。

一方、ネットでコンビニのように服を買うお客様はオシャレに対して積極的ではないし、買い物もサッサと済ませたいと思っている。つまり、ウチでなくてもいい客層だと」

「なるほど、でも実態は真逆でした」数字から見えてきたネット通販の強みそこで福島が質問をします。

「柴崎さんはなぜゴールドばかりがウチのネット通販を利用していると思う?」「はい、これはリサーチをとっていませんからあくまで私の仮説ですが、新規客はまず店舗で買い物をします。

なぜなら、まったく購入したことのないブランドの製品をいきなり通販で買うことはお客様にとってリスクが高いからです」「ふむ、なるほど。

それで?」

「サイズや素材感などがわかり信頼を得ればリピーターが生まれ、ブランドのテイストや商品の素材、サイズ感覚などをよく知っている優良顧客は店舗ではなく通販でも安心して買い物を済ませるようになる」「その仮説は正しそうな気がするねぇ」「もちろん、リサーチしてみる必要はあると思いますが」「確かにそうかもしれませんね。

ゴールドのお客様だったら、昨年買ったものと同じ型がほしいとか、先週買ったものの色違いもほしい、とかありそう」「逆にもう買うことを決めているそのアイテムだけを買いにまた店舗に行くくらいなら、通販で済ませたいっていう心理はあるかもしれません」どんなビジネスの現場でも「お客様視点」という言葉は飛び交うものです。

しかし、今回の木村も「お客様視点」よりは「自論」を無意識に優先し、勝手な思い込みをしていたようです。

ですが、このようにただの割り算だけの簡単な数値分析で、その誤りに気付くことができました。

「フン、ってことはオマエのお得意な〝結論〟はどうなるんだ?」「結論はこうです。通販サイトがなくなることは超優良顧客への重要なサービスを消滅させることになり、極めてリスクが高い。よって、会社の収益を圧迫しないことを前提に、継続するべきです」

4「実数」と「割合」、2つの数字の見方

いつでも実数と割合の両方を見る

ネット通販事業の意外な「貢献」が明らかになり、どうやら営業部としての結論が出たようです。

しかし、ここで福島がさらにもうひとつ質問をします。

さすがマネジメント経験豊富なだけあり、完璧に智香の扱いのコツを掴んだようです。

「OK!結論はそういうことで。ところで、柴崎さんに質問が」

「はい、何でしょうか」

「今回のようにビジネスで数字を見る時は大きく分けて実数と割合があるでしょ?それをどう扱えば誤った解釈をしなくて済むのか、何かコツみたいなものがあればぜひシェアしてほしいな」

「そうですね、そこは説明したほうがいいかもしれません」

「それと、今回の分析は柴崎さん自身、どういう視点でやったんだろう。ほら、せっかくこんないいお手本があるなら、今後はみんなにも同じことができるようになってほしいからさ」

「わかりました。ではあと5分ほど時間をいただきます。先輩、この5分で100%理解してくださいね。とても簡単なことですから(ニコッ)」木村が引きつった笑顔で返します。

こんな会話にもキッチリ数字を入れてくる智香に、感心するというよりは半ば呆れていました。

「まず実数と割合の話からいきましょう。結論から言うと〝どちらも把握しましょう〟です」

「はあ?そんなの、当たり前のことじゃないか」

「ええ、その当たり前のことが先輩はできていませんでしたが」

「オマエさ、その性格なんとかなら……」

「説明を続けます。まず実数を見たら次に考えることは〝評価するための数字をつくる割り算〟です。先ほどのビラ配りの話なら『1日あたり』と基準を揃える。

今回のネット通販の議論であれば、売上額という実数を見たらまずは営業利益率を算出し、評価するための数字をつくるということです」

「フン、じゃあ逆に割合の数字を見たらどうするんだよ」

「その時は、次にするべきことは分母になっている実数を把握することです」

「ん?どういうことだ?」

まだ木村はピンときていないようです。

それを察した智香は黒のマーカーを手に取り、ホワイトボードにサラサラと何かを描き始め、その手を止めずに説明を続けます。

実数から割合、割合から実数を見る「たとえばこういうことです。中国のインターネット通販市場を例にしましょう。中国のインターネット通販利用者はざっくり1億4200万人です。また、同じく中国でのある大手ネット通販サイトの市場シェアは35%です」

「それで?」

「実数と割合の2種類の数字が出てきましたよね。それぞれこの図のように考えて事実を把握していけばよいのです」「……?」

「これをクセ付けすれば、数字からある程度の正確な状況把握は誰でもできます」「う~む、こう説明されるとすごい簡単なことのように感じる」

確かにこのように整理されると、数字から読み取るという行為はとても簡単な作業の繰り返しなのだと気付きます。

闇雲に数字をこねくり回す行為は悪循環を生みます。そして、意外にも分析好きな理系出身者にそのような人が多いのです。専門的なスキルを要する高いレベルの分析でなければ、このくらいシンプルに考えればよいのです。

「ところで柴崎さん、さっき〝クセ付けする〟って言っていたけど、何か自分のクセにする方法ってあるのかな?」「そうですね、新聞記事や広告をこういった視点で見るといいですね。

たとえば化粧品の広告とかによくありますよね。

『90%が満足と答えました』とか、『読者モデル300人が実際に使っています』とか」「スキンケアの広告なんてほとんどそういうコピーだよな」「はい、そんなコピーを見たら先ほどの実数と割合の視点で数字を見ればよいのです。

90%と言っているけれど、実際どんな人に対して何人リサーチした結果なのかを探る。

つまり、分母を数字で捉える」「そっか、逆に読者モデル300人という数字を見たら、読者モデルって日本に全部で何人いるかを把握し、割合を出してみる」「そうです、300人が驚くほど少ないことがわかるはずです」「広告だから当然ポジティブな数字を使いたいですもんね。

そういえばよく広告記事の一番下に小さ~く注釈が書かれているけど、それをよ~く読むと、な~んだって思うことって結構ありますよね」「ええ、数字を見せる側はできるだけポジティブな数字を見せようとしますから。

逆に分析する側はそういう視点で数字を見るクセを付けることが大切です」

IZAKAYATALK5「分析=計算」は大きな間違い

その日、木村は早々にオフィスを後にし、恋人の千春といつもの居酒屋でデートをしていました。

木村は派手な外見に似合わず、洒落たレストランやバーなどはとても苦手です。

20代後半の女性なら、居酒屋デートに不満を持つケースも多いかもしれませんが、千春はあまり気にするタイプではありません。

むしろ、「楽でいい」くらいに考えていました。

そんな力を抜いて付き合える心地よさも2人の関係が続いている理由のひとつかもしれません。

「ねぇ、ちょっと聞いてくれる?」「あん?」千春は自分の友人の話を始めました。

なんでも、その友人が勤めている会社が経営不振に陥っているようです。

その原因は、一人のスタープレイヤーの離脱。

そのスタープレイヤーはデータ解析を専門とし、その会社でも大活躍でした。

ところが突然、他の会社にヘッドハンティングされ、ポッカリ穴が空いてしまったということです。

「ふ~ん、まあよくある話だよな」

「本題はここからなの。その会社はちょっとした分析とか資料づくりもこの人に任せていたんだって。大したボリュームでもないのに、売上推移や傾向の分析をしてほしい、とか」

「でもさ、俺みたいにそういうのが苦手な人も多いから、それはそれでいいんじゃない?そのスタープレイヤーもモテモテだ」

「うん、私も実はそう思ったのよね。でもね……」

千春は上司とたまたまランチした時にこの話題になったこと、その上司が千春に向けて言ったセリフを木村にそのまま説明します。

実はそのセリフが、千春には目から鱗の話だったのです。

「で、その上司は千春になんて言ったの?」「うん。『仕事で必要になった分析って、本来はその仕事をする本人が自分の脳ミソ使ってやるもんじゃないの?』って」

「……?」

「私、その話を聞いてハッとしたんだよね。確かにスーパースターがいるって企業にとっては強みよね。でも、一人の能力に依存し過ぎるのってとてもリスキーなことなのかも」

「……」「自分で考えられないヤツは結局ダメって言われたような気がしてね」

「前から思っていたんだけどさ……」「ん?何?」「千春って、けっこう仕事に真面目だよね」「それ褒めているの?それともバカにしているの?」

その問いにはすぐに答えず、木村はテーブルのサラダに箸を伸ばします。

そういえば、つい最近インターネットで、「いま中学生の4人に1人は宿題をネットで調べて丸写しするらしい」という記事を読んだことを木村は思い出していました。

それはきっと中学生だけの話ではないのでしょう。

自ら考えられない人や、問題を解決する視点が身に付いていない人がこれから社会に溢れる……?木村の立場に置き換えたら、今後はさらに〝考えない〟部下が増えるということかもしれません。

そんなことをぼんやり考えていました。

「そういえば例の数学女子はどう?いろいろ大変?」「あ?べっつに~」「やっぱりそういう人って分析も得意なんだろうね。

複雑な計算をパパっとやったりして」「いや、それは違う」「え?何が?」「分析ってさ、俺も複雑な計算とか面倒な作業をチマチマやるようなイメージだったんだよね」「うん、私もそう思うけど」「でも、アイツのやっていることって、何か違うんだよな」「ふ~ん。

でも数学女子なんだから私が知らないような理屈や公式を駆使して物事を把握していくんじゃないの?すごく深掘りしたりして」「……いや、やっぱり違う」「……?」「なんかこう……数字メインじゃないっていうか。

複雑な計算なんて、ほとんどやっていないんだよな~。

アイツの態度は腹が立つけれど、説明を聞くと数学オンチな俺でもなんとかギリギリ理解できることだったりする」千春は木村の次の言葉を待つことにしました。

こんな話題でここまで真剣な表情をすることは、これまでの木村にはあり得ないことでした。

詳しくはわからないけど彼の中で何か変化があるのだろう、と千春は察しました。

「う~ん、うまく言えないけど、こういうことかな。分析=計算ではない。分析=思考である。数字や計算は、その途中で使う『道具』に過ぎない

「ど、どうしたの急に。何か人が変わっちゃったみたい」「あ~何かよくわからん!でも、言葉で表現するとなんとなくそんな感じ」「ふ~ん、な~んかデキる人っぽい発言だわ」「それ褒めているの?それともバカにしているの?」その質問には答えず、千春はテーブルに残っていた焼き鳥を美味しそうに頬張りました。

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