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第1章 会社の命運は「キャッシュ」が握っている

プロローグ

数字が人格、お金が愛出張中のナンバー2が中国で緊急入院!1500万円で飛行機をチャーター海外出張中のナンバー2の営業部長が、病気で倒れて緊急入院。

難病で、現地では治療が不可能。

しかも容態が悪く、普通に飛行機で帰国するのは無理——。

社員がこのようなピンチに陥ったら、みなさんはどうしますか?思い切った決断をしたのが、株式会社モリチュウ(埼玉県、製造業)の森雄児社長です。

中国・大連に出張中の営業部長が突然倒れて入院。

進行性の病気で大連の病院では治せず、家族は一瞬、悪い想像が頭をよぎった。

「日本で治してやりたい」「ココで死なせてなるものか」そう思った社長は、飛行機のチャーターを考えた。

調べると、チャーター額は1200万円。

入院して治す費用300万円と合わせて計1500万円の支出です。

モリチュウは社員数28人の小さな会社。

1500万円出すと、その期の利益はふっ飛びます。

しかし、森社長はひるまなかった。

ポンとお金を払って営業部長を帰国させた。

営業部長は、日本で高度な治療を受けたことで快復。

いまでは元気に職場復帰を果たしています。

このエピソードを聞いて、「森社長は社員を大切にしている。

人格者だ!」と感想を抱く人は多いかもしれません。

たしかに森社長は人格者です。

ただ、勘違いしてはダメです。

森社長が社員を救えたのは、慈愛の心を持っていたからだけではない。

高額の治療費を払って飛行機を一台チャーターする「キャッシュ」を持っていたからです。

モリチュウは月商の4~5か月分の現預金を持っていました。

その額は2億5000万円。

多額の借入れをしていましたが、内部留保もあり、実質無借金で手元にすぐ使える現金があった。

だから、いざというときに社員を救うための決断ができたのです。

一時的に利益はふっ飛びますが、無謀なことをしたわけでもありません。

1500万円の出費を社員数の28人で割ると、53万円強です。

社員ひとりあたり年間10万円強の利益を上積みして、それを5年続けたら十分にペイします。

万一のときは会社が面倒を見てくれる、と思えば、社員はモチベーションを高めて一生懸命働いてくれます。

事実、この出来事があってから社員はひとりも辞めておらず、仕入先・お客様・銀行から「おたくの社長は立派だ」と高評価を得ている。

今年度は学生優位で中小企業にとっては〝就職氷河期〟ですが、こんな中小零細企業でも2人の内定者が出ている。

社員がインターンシップでこの話を学生にするから心に響く。

お金を持っていたからできた決断ですが、ここまでの経済効果の計算はできませんでした。

お金を持っている社長だけが〝人格者〟社員にとっては、お金を持っている社長、数字に強い社長だけが人格者です。

どんなに社員を大切にする気持ちがあっても、お金がなければ社員を幸せにすることはできません。

そこをはき違えている社長は、社員やその家族を不幸にします。

会社経営においては、「数字が人格」「お金が愛」です。

具体的に言えば、いざというときに困らないだけのキャッシュを持つ、そしてそのキャッシュをつくるための数字を理解する。

この2つさえできれば、会社をつぶさず、社員を幸せにできます。

ところが、世の中には決算書の数字すら把握していない社長が少なくない。

信じられないかもしれませんが、事実です。

株式会社武蔵野はダスキンのフランチャイズ事業を展開するかたわら、そこで培ったノウハウをもとに中小企業向けにコンサルティングをする経営サポート事業を行っています。

その数700社以上。

その門をたたく社長の7~8割は、自社の決算書を見ていない。

いま自社にいくらキャッシュがあって、いくら投資する余裕があるのか。

その数字をまったく把握していない。

売上や利益を把握しているなら、まだいいほうです。

オフィス向けに観葉植物のレンタルをしている株式会社喜芳園(東京都)の下田あかね社長は、「粗利益って何?どうして利益にたくさんの種類があるの?」というレベルです。

当然、会社は赤字です。

それまでつぶれなかったのは運がよかったからとしか言いようがない。

中小企業は、このレベルの社長がめずらしくありません。

社長がこうですから、幹部や一般社員はなおさら数字に無頓着です。

そのため利益を無視して平気で安売りしたり、非効率な仕事の進め方をしたりする。

これが中小企業の実態です。

「自分はもともと数字が苦手。

いまからやっても遅い」「うちの社員はレベルが低い。

数字を教えるなんて無理だ」「数字は人格」というと、多くの社長はこういってサジを投げます。

しかし、本当にそうでしょうか。

おそらく学校時代に習った数学の影響で数字に苦手意識を持つのかもしれませんが、学校で習う数学と経営の数字はまったく別ものです。

経営判断において難しい計算は不要。

足し算と引き算ができれば十分です。

わけのわからない財務指標を覚える必要もありません。

あれはコンサルタントが自分を賢く見せるためにつくった数字であって、実務では役に立たない。

社長が絶対に見なければいけないのは、キャッシュの額と、それをつくるのに必要な数字だけ。

それ以外はオマケです。

ツボとなる数字を押さえて回数をこなせば、誰でも数字に強くなれます。

最初は「粗利益の意味がわからない」と嘆いていた下田社長も、いまや苦手意識を完全に払拭しています。

観葉植物のレンタル事業は、ナマモノの植物をいかに長持ちさせるかが勝負です。

長持ちすれば仕入が減って原価が下がり、粗利益が増えるからです。

当初は何も考えていなかった下田社長が粗利益の意味を理解した結果、植物を空調の風が直接当たらない場所に置くなどの工夫をして寿命を延ばすことに成功。

粗利益は大幅にカイゼンし、赤字だった経常利益も今期(2017年度)は2000万円の黒字になった。

これで下田社長も立派な〝人格者〟です。

借金は、することが正しい「自分は決算書の勉強をした。

数字には強いので大丈夫」数字をまったく見ていない社長も怖いですが、このように自信満々な社長も要注意です。

税理士や会計士が書いた財務の本には、「自己資本比率が高い会社がいい会社。

そのためには借金をしてはいけない」といったことが書いてあります。

自己資本比率とは、借入金を含めたすべての資本のうち、返済不要の自己資金が占める割合のこと。

無借金なら自己資本比率は100%で、健全経営という。

なまじっか数字をかじっている社長は、この主張を鵜呑みにして無借金経営を目指します。

現実的に借金せざるを得ないとしても、借入額を少しでも減らすことが正しいと思っている。

しかし、その発想は会社経営にとって命取りです。

無借金にこだわれば、社長の意思で自由に動かせるキャッシュの量が増えません。

キャッシュが少ないと、冒頭に挙げたモリチュウのように、いざというときに社員を救ったり、設備投資やM&Aをしたりするときにお金を使えない。

お金を使わざるを得ない事情ができたら、そこで改めて銀行に融資を頼めばいい?それは甘い考えです。

「社員が海外で倒れた。

飛行機をチャーターしたいから融資してほしい」と頼んでOKしてくれる銀行なんてひとつもない。

断言してもいい。

絶対に無理です。

個別の事情に対応できないだけではありません。

キャッシュがないと、資金繰りが苦しくなって倒産するリスクが高まります。

利益が出ているのに、資金繰りに失敗して会社がつぶれた例はいくらでもある。

倒産すれば、社員やその家族が路頭に迷います。

無借金は社長の「犯罪」長期視点でも無借金はダメです。

キャッシュが潤沢でないと、積極的に投資しづらくなり、未来のメシのタネを生み出せなくなります。

無借金は、理想どころか、むしろ悪。

社長の「犯罪」です。

借金は、することが正しい。

どうして数字のプロである税理士や会計士がトンチンカンなことを言ってしまうのか。

それは、多くの税理士事務所が社員10人以下の零細事務所だからです。

10人以下で回る事業は個人事業主とほぼ同じ感覚でいいので、たしかに借金しなくても何とかなります。

その感覚を中小企業の経営に持ち込むからピントがズレる。

ランドマーク税理士法人(神奈川県、税理士事務所)を率いる清田幸弘代表も同じ感覚でした。

同法人は開業16年で売上9億円と順調に伸びていて、90名の社員を抱える大きな事務所になっていたにもかかわらずです。

清田代表は、会計業界特有の無借金経営を自慢する堅実経営に徹していました。

ただ、そのころは資金繰りに苦労し、いつも預貯金の残高を気にしていた。

経理担当者とお金の工面に四苦八苦の毎日。

それにもかかわらず、銀行からの借入れはまったく考えていませんでした。

お金のことを常に心配するのが経営だと思い込んでいたのです。

転職者が多いことに悩んで清田代表が武蔵野の「実践経営塾」に入会したのは、2015年春。

差し迫った必要もなかったが、私は無借金経営のデメリットを説き、清田代表は4つの銀行と信用金庫から2億円の借入れをした。

無借金経営の看板を下ろしたあとはどうなったか。

潤沢な資金を活用して前年比115%成長を3年続け、社員は150名に増えた。

売上は18億円で、3年で2倍に。

いまや神奈川県でもトップクラスの税理士法人です。

税理士や会計士は数字のプロですが、経営がわかっているかどうかは別の話です。

それなのに、税理士や会計士の書いた決算書の読み方、数字の見方を鵜呑みにしてしまう社長がなんと多いことか。

社長が知らなければいけないのは、あくまでも実務で役に立つ数字です。

そこをはき違えてはいけません。

経営は「率」ではなく「額」数字をかじった社長がやりがちな勘違いをもうひとつ挙げましょう。

それは、数字を「額(量)」ではなく「率」で見てしまうことです。

粗利益率20%で売上1億円のA事業と、粗利益率5%で売上10億円のB事業があります。

会社にとって大切な事業はいったいどちらだと思いますか?数字を「率」で考える社長は、A事業のほうが優良だと考えます。

A事業の原価は8000万円で、B事業の原価は9億5000万円。

B事業のほうが多額のお金がかかっているのに、粗利益率が低くて資金効率が悪い。

だからB事業よりA事業が優秀だ、というわけです。

これが間違いであることは、利益額を計算してみるとわかります。

A事業が生む利益は2000万円。

それに対してB事業の利益は5000万円。

額で考えれば、会社に貢献しているのは圧倒的にB事業のほうです。

このことを理解していない社長は、A事業にエース級の社員を集めてB事業をガタガタにしてしまう。

屋台骨がグラつけば、会社そのものが傾きます。

率より額(量)が大切なのは、お金に限った話ではありません。

ラーメン店の店内を思い浮かべてください。

多くの店はカウンター席中心のレイアウトになっています。

ラーメン店で最も多いのはひとり客。

2人がけや4人がけのテーブル席ではムダなスペースが生まれるので、カウンター席にして効率を高めています。

ところが、ラーメン激戦区である東京・五反田の人気店「すごい煮干ラーメン凪五反田西口店」は、あえて効率の悪いテーブル席ばかりのレイアウトに改装して成功しました。

なぜか?他店ではくつろげないカップルやファミリー層が押しかけて客数が増えたからです。

もちろん、テーブルの座席数にぴったりの客ばかりがくるわけではないので、デッドスペースは生まれます。

しかし、スペース効率が悪くなる以上に客数が増えれば問題ない。

「率」より「量(客数)」に注目したゆえの勝利でした。

経営を支えるのは、「率」ではなく「額」です。

ところが税理士や会計士の多くは、ココでも「率」を強調します。

彼らが企業を評価するときに使う指標を見てください。

「総資本利益率(ROA)」「自己資本利益率(ROE)」「自己資本比率」「売上高営業利益率」「総資本回転率」。

みんな率です!はっきり言って、これらの指標を理解したところで何の役にも立ちません。

たとえば、「総資本利益率(ROA)」は全業種平均が3%程度(製造業4%、非製造業2・6%程度)で、それ以上だと優良企業といわれますが、それは固定資産をたくさん持っている大企業の話。

身軽な中小企業が2~3%程度なら、決していい水準ではありません。

このように企業規模で指標の見方が変わってしまい、じつに使いづらい。

社長が使う指標としては観念的すぎて、経営の道具として役立たない。

先ほど、経営数字は足し算と引き算ができれば十分だと言いました。

率は割り算ですから、必要ない。

数字に苦手意識がある人は率を捨てていいし、数字を率で見るクセがついてしまった人は、基本の「+」「-」に立ち返るべきです。

数字は行動を変えるために見るもうひとつ、数字の見方について重要なことをお伝えしましょう。

それは「数字は行動を変えるために見る」ことです。

本書は、決算書の読み方を詳細に解説する本ではありません。

決算書には、過去の実績や現在の状態を示す数字が載っています。

過去を分析したり現状を把握したりすることは大切ですが、数字を穴のあくほど見続けたところで会社の数字は変わらない。

時間のムダです。

会社を変えるには、社長が「決断」して「行動」する。

数字は、あくまでも決断と行動を促すためのきっかけにすぎません。

数字は道具で、そこそこ使えれば雑でもいい。

道具に凝りすぎて決断や行動が遅れるよりマシです。

複数の事業を展開している株式会社近森産業(高知県)の白木久弥子社長は、もともと東京で活躍していた公認会計士。

家業を継ぐことになって高知に戻り、不採算事業に次々とメスを入れていきました。

さすがは会計のスペシャリストで、1年で見事に赤字が解消されました。

しかし、問題はそこからです。

会計の専門家であることと、経営の専門家であることは違います。

会計の専門家はマイナスをゼロにすることはできても、ゼロからイチをつくることはできない。

そこは経営者の領域です。

会計の専門家には、もうひとつ弱点がありました。

数字に厳密すぎて、決断や行動が縛られてしまうことです。

武蔵野の「実践経営塾」では、受講する社長に合宿してもらい、5年で売上を2倍にする経営計画を立ててもらいます。

5年で2倍だと、1年で前年比約115%成長が必要です。

起業直後の会社ならともかく、成熟産業ですでに何年もやってきた中小企業にとって、前年比115%成長はかなり高いハードルです。

白木社長も当然、そう考えました。

会計のことがよくわかっているだけに「どう計算しても無理」「常識ではありえない」という思いは人一倍強かった。

しかし、合宿に参加した社長は5年で売上を2倍にする計画を立てないと合格をもらえず、帰れません。

白木社長は内心では無理だと思いつつ、帰るために仕方なく2倍にする計画を立てた。

中身は、はっきり言ってアバウトです。

すると、何が起きたか。

前年比115%成長させなければならないと決めると、すべてがそこに向けて動き出します。

目標を意識することによって、日々の決断のひとつひとつ、行動のひとつひとつが変化する。

実際、近森産業は食品事業と学校制服販売事業が伸びて、売上5億4000万円、経常利益1700万円(2016年3月期)から、売上5億5700万円、経常利益2300万円(2017年3月期)になった。

売上は3%増にとどまったものの、経常利益は35・3%も増やしている。

常識では無理だった目標を軽々とクリアしました。

もし白木社長が元公認会計士らしく厳密な数字にこだわっていたら、無難な計画しか立てられず、いまのような成長はなかったでしょう。

数字はあくまでも道具です。

自分の決断や行動にドライブがかかるなら、細かなところはテキトーでいい。

本書は会計や財務の専門知識を紹介する本ではなく、社長と幹部が数字を使って自分自身や社員を変え、会社からお金が出ていかずに稼げる体質へと変えるための本です。

会社をよくするのに、数字に関する高度な専門知識や分析は必要ありません。

最低限ココだけを見ていればいいという数字だけを理解して行動につなげれば、誰でも会社を強くできます。

末筆になりましたが、執筆のお手伝いをしてくださった村上敬さんと、執筆のチャンスをくださったダイヤモンド社の寺田庸二さんに心から感謝申し上げます。

2017年12月吉日株式会社武蔵野代表取締役社長小山昇

目次数字は人格プロローグ数字が人格、お金が愛出張中のナンバー2が中国で緊急入院!1500万円で飛行機をチャーターお金を持っている社長だけが〝人格者〟借金は、することが正しい無借金は社長の「犯罪」経営は「率」ではなく「額」数字は行動を変えるために見る

第1章会社の命運は「キャッシュ」が握っている現金があれば、会社は倒産しないカラクリ会社は黒字でもつぶれる「損と得とあらば損の道をゆくこと」の意味なぜキャッシュは〝月商の3か月分〟必要なのか攻めの投資はキャッシュがあればこそ他店より20%高くても、お客様がひっきりなしにやってくる理由前年比150%成長の秘密投資先は「お客様増」「社員教育」「インフラ整備」の3つだけ投資額は大きいほどいい借金とは、金利で〝時間を買う〟こと会社は「借金まみれ、モノ持ち悪い」が正しい2億4000万円の投資を3年で回収2年で売上ゼロから2億円の理由奥さんに経理をやらせてはいけない前年比200%ペースで成長中の新ビジネス

第2章銀行から無担保・無保証で借りる3つの方法

メリーチョコレートがつぶれた意外な理由銀行は「この項目」を最も重視している!自社都合ではなく〝銀行都合〟に合わせる指導700社中倒産ゼロ変動金利より固定金利〝定性情報3点セット〟で銀行の評価がアップする方法「定刻どおりに始まっただけで融資を実行」と断言する支店長絶対うまくいく銀行訪問のコツ金利1・88%が0・8%に!個人保証も外れたワケなぜ〝根抵当権〟は危ないのか「当座貸越」も危ない

第3章社長は「B/S」のココだけ見ていればいい

なぜ、社長はB/Sを見ないのかB/Sを知っているだけで、見える景色が180度違う勘定科目を知る第一歩は「転記」から「資産は上へ、負債は下へ」が社長の仕事B/Sは〝異常値〟だけチェックすればいい「長期借入金」を全体の8割以上に飲食店の倒産は「買掛金」の存在にありなぜ「支払手形」はゼロが正しいのか?「支払手形」をなくす方法「受取手形」もゼロが正解在庫管理のパワーで「日本経営品質賞」の「経営革新奨励賞」受賞在庫は「資産」ではなく〝死産〟社長が無知でも何とかなる?

第4章赤字から黒字へ!「数字は人格」でV字回復

「増えたか、減ったか」ですべてがわかる売上に惑わされずに「利益」に注目「財務会計」ではなく「管理会計」でP/Lの〝逆算〟で会社を守る方法「経常利益」→「減価償却費」→「人件費」→「粗利益」→「経費」の順赤字部門を黒字化する秘策事業撤退のコツは、ゆっくり、少しずつひとつだけ、常に赤字事業を温存する理由赤字は「事業承継」の千載一遇のチャンスなぜ、新規事業は赤字期にやってはいけないのか?新規事業に踏み切るサインはこう見抜く売上増は「客数」アップから?それとも「客単価」アップから?営業マンの訪問回数、滞在時間が長いと売上もアップ葬儀用品、住宅メーカーでは「量」をどうやって管理しているか手間やお金をかけずに「量」を増やす方法〝穴熊社長〟が現場に出たら、楽しくて仕方がない9000万円の営業赤字から500万円の黒字にV字回復お客様は数字で〝区別〟しても〝差別〟せず重点的に攻めるべきお客様をどう見抜くか「増分売上」で客単価を上げるにはなぜ、ラブストーリーをつけると高く売れるのか〝爆成長〟している整骨院の一石二鳥戦略「昇進5回、降格4回」と書かれた名刺に釘づけ値上げのインパクトを減らすテクニック値上げは、売れる商品と売れない商品を見極める絶好のチャンス「売上上位」ではなく「粗利益上位」のお客様を大切に「売価」と「仕入値」は、社長が決めなさい仕入値は「とにかく安ければいい」は大間違い往路はヤマト、復路は違う会社でコストダウン私自身も仕事が〝風景〟になっていた人件費を減らすには、ムダな仕事を減らすのが一番これだけで利益が2500万円アップ!?なぜ、月500万円のJR新宿ミライナタワーを借りたのか?売上24億で経常利益7億!開院予定がなくても物件を押さえる整骨院「2人1組」は立派な社員教育「そうに違いない」が招いた美容サロンの危機一髪4年で40億円売上アップした新潟の住宅メーカー「暗黙知」が仮説検証より強い理由スイミングクラブのV字ならぬ〝バケツ回復〟はどうやって実現した?担当者ごとではなく、顧客ごとにデータをラーメン店の割引クーポン付きハガキは、攻めの経費10個あった質問項目を2つ変更して出た成果〝真実の瞬間〟は、お客様がお金を払ったあとに面倒くさいことを社員にやらせる2つの方法

第5章社員を「数字」で育てる

社員からの報告を「営業利益」ベースにしたらどうなった?5年間で165%成長した会社の盲点〝能力〟不足ではなく〝回数〟不足数字のスの字と聞けば、スーッといなくなる飛山と大森全社共通の言語・道具で個人個人に合わせた指導を社員の数字力がアップする2つの条件数字はそれだけで言葉——1分間で3テーマを報告できる理由なぜ、社員に実行計画をつくらせるのか?現場を知る社員が、数字と格闘しながらつくる計画が正しいデータネイチャー大会の主人公は現場の課長

「環境整備プログラム」を受けている会社ほど業績アップ?ボタンを押していなかったワースト社員ランキングを発表〝ホラ吹き大会〟でもいい役職によって相対評価と絶対評価を使い分ける社員が勝手に頑張り始める仕組み驚くべき新卒社員の定着率は、なぜ生まれるのか?社員のキャラを〝数値化〟して配属する会社が若い人に合わせるのが正しい残業時間3分の1、売上128・5%の謎数字で仕事をすると心に響く「情」は回数に比例する社員がパンクしない仕組みを健康を〝数値化〟して会社を守る

現金があれば、会社は倒産しないカラクリ経理資料に数字がたくさん並んでいるのを見ると、頭が痛くなる社長は多い。

数字アレルギーがあるなら、まずはたったひとつの数字だけ見てください。

それはキャッシュの額。

これさえ押さえておけば、あとはどうにでもなります。

キャッシュとは、現金と、いつでもすぐに現金に換えられる普通預金です。

定期預金や有価証券はキャッシュとみなしません。

定期預金は借入れの担保になることもあり、自由に解約できないのが実態です。

社長はなぜ、この数字を最優先で見るべきか。

それはキャッシュが会社の命綱だからです。

世の中には、会社が倒産するのは赤字だからだと考えている人がいます。

しかし、それは違う。

会社が倒産するのは、取引先への支払いや銀行への返済ができなくなり、資産を売却してもキャッシュがどうにもならない状況になったときです。

支払いや返済ができるなら、事業がどれだけ赤字でも会社は存続できる。

実際、創業したばかりのベンチャー企業はたいてい赤字ですが、その状態を〝倒産〟とは言いません。

運転資金が尽きて支払いができなくなったときに会社はつぶれます。

会社は黒字でもつぶれるまた、わが社は黒字だからつぶれない、というのも間違いです。

2008年に起きたリーマン・ショックでは、多くの上場企業が倒産に追い込まれました。

2008年度に限れば、その約2分の1は〝黒字倒産〟でした。

黒字でも会社が倒産したのは、仕入代金などの支払いと、売った代金の回収のタイミングにズレがあり、支払手形の決済等ができなかったからです。

80万円で仕入れた商品を100万円で売れば20万円の黒字ですが、多くの商売ではお客様から100万円をもらう前に仕入代金80万円を取引先に支払わなくてはいけません。

このとき、キャッシュがなくて支払いができなくなると倒産します。

このカラクリがわかると、じつは事業がグングン成長している企業のほうが自転車操業になりやすく、倒産リスクは高いことがわかるでしょう。

具体的に計算すると、銀行格付(格付は1〜10で、最優良が1)が「7」の会社が、何も策を打たないまま前年比125%の増収増益を3年間続けると、資金がショートして倒産する。

黒字は決して安全を意味しない。

赤字でもキャッシュがあれば生き延び続けられるし、黒字でもキャッシュが底を突けばつぶれます。

会社の生き死には、まさしくキャッシュ次第。

経営は現金に始まって現金に終わる。

社長は何よりも優先して自社のキャッシュを把握すべきです。

「損と得とあらば損の道をゆくこと」の意味キャッシュの役割は、会社の倒産を防ぐことだけではありません。

会社を経営していれば、あえて損をしなければならない場面が必ずやってきます。

キャッシュはそのときのために使います。

ダスキンの経営理念に「損と得とあらば損の道をゆくこと」という一節があります。

当初、私は会社とは利益を出すところだと思っていたので、創業者の故・鈴木清一社長に「進むべきは得の道ではないのですか」と疑問をぶつけました。

すると鈴木社長は「小山君のおっしゃるとおり」と言う。

いったいどっちなのかと混乱しましたが、真意はこうでした。

会社経営には、大切なもののために損をしなければならないときがくる。

そのとき迷わず損の道を進めるように、普段は頑張って利益を出しなさい——。

私がキャッシュを重視する理由のひとつが、まさにこれです。

ある年、経営サポート事業でこちらから3社のお客様にお引き取りいただき、すでにいただいていた代金を全額返金したことがあります。

経営サポート事業の目的は、社長が幹部と一緒に学んで会社をよくすること。

自分ひとりで勉強して満足するだけのセミナーマニアの社長とは方針が合いません。

お互い不幸になるので、丁寧に説明してお引き取りいただきました。

返金額は3社で2100万円。

正直、これだけの大金(利益)を失うのは痛い。

しかし、目先のお金ほしさに方針から外れたことを許してしまったら、事業の根幹が揺らぎかねない。

たとえ損をしてでも、貫くべきことは貫かなくてはいけない。

私が躊躇なく〝損の道〟を進めたのも、キャッシュを潤沢に持っていたからです。

もしキャッシュに余裕がなければ、損をすべき場面で損をすることができず、大切なモノを失っていたかもしれません。

本書の冒頭に紹介したモリチュウの森社長も、キャッシュがあったから病気の営業部長を救うために飛行機をチャーターできました。

キャッシュは、会社という容れ物だけでなく、そこに込められた理念や想い、働く社員の命や生活を守るためにあります。

なぜキャッシュは〝月商の3か月分〟必要なのか会社の命運を握るキャッシュ。

具体的には、どうやってチェックしたらいいのでしょうか。

キャッシュ額は、決算書のひとつである「B/S(貸借対照表)」に載っています。

勘定科目の「現金」と「普通預金」、「当座預金」の合計がキャッシュです。

中小企業は年次でしかB/Sをつくらないところが多いですが、会社の現状を正確に把握するために「月次」でつくってください。

キャッシュについては、月次でも不十分です。

私は毎日、経理からのメールでその日のキャッシュ額を把握しています。

ほかの数字も会議などで定期的に見ていますが、キャッシュだけは出張で社外にいようが海外にいようが毎日必ず確認する(→図表1)。

それくらい重要な数字です。

会計ソフトをカスタマイズすれば、日次でキャッシュを出すのは簡単にできます。

では、どれくらいキャッシュがあればいいのか。

目安の基準になるのは「月商」です。

キャッシュの額は〝緊急支払能力〟を表していますが、最低限、月商と同額以上はほしい。

理想は月商の3か月分。

それだけあれば、顧客企業の倒産といった予想外のアクシデントが起きても、しばらく耐え忍んで次の一手を打てます。

攻めの投資はキャッシュがあればこそキャッシュは、会社を守る最後の砦です。

ただし、守りはキャッシュの役割の一面にすぎません。

私がキャッシュを最も重視しているもうひとつの理由は、未来への投資の原資になるから。

守るだけでなく、攻めるためにもキャッシュは必要です。

いくら利益が上がっていても、未来への投資をやめた会社はそのうち窮地に陥ります。

イメージしやすいのは装置産業でしょう。

長崎のハウステンボスはオープン当初人気でしたが、その後アトラクションが古くさくなり、入場者数が激減して2003年に会社更生法の適用を申請した。

お客様がきていることにあぐらをかいて、新アトラクションへの投資を控えた報いです。

ハウステンボスはベンチャーキャピタルの支援を受けたあと、さらにエイチ・アイ・エスが引き継ぎました。

新社長は積極的に投資をして、新アトラクションを次々につくった。

いまは復活して入場者数は絶好調。

投資がいかに大切か、じつにわかりやすい例です。

他店より20%高くても、お客様がひっきりなしにやってくる理由中小企業であっても事情は同じです。

ネットカフェ・まんが喫茶「メディアカフェポパイ」をフランチャイズ展開するタイムス株式会社(広島県)の高畠章弘社長は、積極的に設備投資をして店舗に最新のパソコンを置いています。

一般的なネットカフェは、購入したパソコンを7〜8年も使いますが、タイムスが運営する店は5年で入替。

全部で約2500台あるので、毎年500台ずつ最新のものに切り替えています。

まだ使えるのにもったいない?そう考える方は、お客様の心理がわかっていない。

高畠社長はこう教えてくれました。

「お客様は何度もリピートしてくれますが、来店のたびにパソコンのスペックに大きな差があると、不満を感じて去っていきます。

7〜8年かけて入れ替えていたら、一番古い機種と最新機種に差がありすぎる。

5年ならストレスなく使ってもらえます」じつはメディアカフェポパイの料金は、周辺のネットカフェに比べて15〜20%高い。

それでもお客様がひっきりなしにくるのは、設備投資を怠らずに顧客満足度を高めているからにほかなりません。

しかも、5年経ったパソコンは、お客様に格安で販売している。

その売上で再投資する費用の一部がまかなえる。

設備は新しくなるし、ハイスペックなパソコンを2万円前後で買えるお客様もお得。

賢い戦略です。

前年比150%成長の秘密投資の対象はモノに限りません。

スキンケア商品の通信販売を行う株式会社未来(愛知県)の山口俊晴社長がお金をつぎ込んでいるのは、宣伝広告費です。

通販事業は店舗がないので、新規顧客獲得のために広告宣伝にお金をかけるのは当然と思われるかもしれません。

しかし、新規の顧客獲得にお金をかけ続けるのは、できそうで案外できない。

商品の認知度が低いときは、広告宣伝にお金をかければかけるほど認知度が高まって顧客が増えます。

しかし、市場にいったん認知されたあとは宣伝効果が低くなり、さらにお金をかけないと新規顧客を獲得できなくなります。

そこで多くの社長は、既存客とのつながりを強くするためにお金をかける。

これが普通の社長の発想です。

山口社長も既存客に対してお金をしっかりかけています。

ただ、新規獲得の広告宣伝を減らしたわけではなく、むしろ増やしているところが並みの社長ではない。

費用対効果は下がるので、顧客獲得コストはひとり6000円から7000円に上がった。

しかし、その一方で売上は前年比150%成長。

惜しまず投資をすれば、それ以上のリターンが返ってくる。

このように未来へ投資するには、原資となるキャッシュが必要です。

キャッシュは会社を守る盾であると同時に、会社の成長を促す武器にもなる。

まさにキャッシュが会社の命運を握っています。

投資先は「お客様増」「社員教育」「インフラ整備」の3つだけ会社を継続的に成長させるには投資が必要です。

といっても、財テクはダメです。

利益が出たら株でひと儲けをたくらむ社長がいますが、自分の会社さえよくわかっていない社長がほかの会社を理解できるはずがない。

地方を中心に不動産投資を行うゴールドスワンキャピタル株式会社(東京都)の伊藤邦生社長は、元大手証券会社で債券、為替、デリバティブのトレーダーでした。

当時は数百億円、時には数千億円の取引を日々行っていましたが、いまでは「証券投資は1円もしない」と言い切っています。

いくらベテランとはいえ、現在マーケットで取引しているわけではないので、常にプロ同士が戦っている投資の世界では簡単に儲けることが難しい。

会社で稼いだお金は、自分の会社に投資したほうがいい。

それが元敏腕トレーダーの判断です。

他社の株を買っても痛い目に遭うだけですから、いますぐ売り払ったほうがいい。

投資対象は、あくまでも自社です。

具体的なお金の使い道は次の3つ。

1番目は、お客様の数を増やす。

2番目は、社員教育。

3番目は、インフラ整備。

先に紹介したタイムスや未来の例は、1番目の「お客様の数を増やすこと」に投資したケースです。

2番目の「社員教育」も重要です。

武蔵野は今期(2017年度)、社員教育に1億円使っています。

売上63億円規模でこれだけ教育費をかけている会社は少ないかもしれません。

会社の方針を決定するのは社長の私ですが、それを実践するのは管理職、そして現場の社員です。

わが社が増収を続けていられるのも、社員教育に多額の投資をして社員が成長しているからです。

最後の「インフラ整備」とは、業務を効率化し、情報共有するITを中心とした投資です。

環境測定・分析を取り扱う株式会社三井開発(広島県)の本社に行ったときのことです。

オフィスに入ると、机が大量の紙で埋もれています。

明らかに作業効率が悪いので、三井隆司社長に思わず、「この会社はヤギを飼っているのか?」と言ってしまいました。

私のイヤミがこたえたのか、三井社長は約1億円を使ってシステムをつくり、ペーパーレス化を実現。

効率化されれば人件費が浮き、投資分を回収できます。

三井開発はほかの施策の効果もあって、今期(2017年度)は過去最高売上を更新しています。

四国、九州、中国地方でビジネスホテルを展開する株式会社川六(香川県)も、インフラ投資で飛躍的な成長を遂げた会社のひとつです。

従来はお客様のチェックアウト後、部屋の掃除についての連絡を内線電話で行っていました。

本社のホテルは約300室近くあるので、チェックアウトが集中する午前10時すぎは内線電話が鳴りっぱなし。

フロ

ント業務は進まず、スタッフの動きにもムダが生じていました。

宝田圭一社長はこの状況をカイゼンするために、スタッフ全員にiPadを持たせて、掃除が終わったらその場で入力する仕組みをつくりました。

その結果、掃除についての内線電話がゼロになり、フロント、客室現場ともに業務が効率化。

システム導入後、生産性は5倍になりました。

お客様増、社員教育、インフラ整備——この3つに適切に投資し続ければ、会社は継続的に成長していけます。

投資額は大きいほどいいラスベガスに社員旅行に行ったとき、ケチな社員は10万円を握りしめてカジノに行き、倍の20万円にしよう(200%の儲け)と無理な賭けをしました。

私は100万円持っていき、110万円にする戦略(110%の儲け)で賭けをした。

どちらも目標利益は10万円です。

社員はオッズの高いルーレットに張るしかないので、案の定負けでした。

私は、ブラックジャックで弱いディーラーを狙って賭ける安全策で難なく勝てた。

大事なのは、率ではなく「額」。

タネ銭が大きければ、無謀なことをしなくてもリターンをしっかり得られます。

経営における投資も同じです。

たくさんキャッシュを持っていると、ケチらず投資できる。

未来への投資は、額が大きいほど有利です。

未来のためにできるだけ多く投資したいが、投資すると肝心のキャッシュが減ってしまうのでは——?そこに気づいた社長は鋭い。

投資は大切ですが、キャッシュが薄くなるほどの多額の投資をすると、会社の倒産リスクが高まります。

具体的には、緊急支払能力が月商の1〜3倍を割り込む投資は危険です。

投資額は大きければ大きいほどいいですが、万が一のときにも耐えうるだけのキャッシュは残しておかなくてはいけません。

そのラインを下回るようであれば投資も我慢です。

理想は、大きく投資しても困らないように、全額銀行借入れするのが正しい。

社長はそこに頭を使うべきです。

借金とは、金利で〝時間を買う〟ことキャッシュをつくる方法は、「①事業で利益を出す」「②減価償却する」「③銀行から借り入れる」、この3つしかありません。

「①事業で利益を出す」は、どの社長も好きです。

会計が多少わかっている社長は、「②減価償却」にも積極的です。

カルモ鋳工株式会社(兵庫県、アルミ加工)の髙橋直哉社長は、生産設備に投資して特別償却した。

早く償却すれば、利益を前倒しで減らして税金を安くすることができる。

税金が安くなった分、手元にキャッシュが残ります。

ところが、多くの社長は「③銀行から借り入れる」ことをしたがらない。

無借金経営こそよい経営であり、お金に困ってないのに金利を払って借りるのはバカだと考えています。

しかし、その考えは大いに間違っています。

借金を嫌う社長は、借金とは金利を払ってお金を借りることだと思っている。

ところが本当は違う。

借金は、金利を払って「時間」を買っている。

これはどういうことか。

トイレットペーパーを製造販売している鶴見製紙株式会社(埼玉県)は、かつて借入金が40億円以上ありました。

金利の支払いだけで年間1億円近く。

里和永一社長は金利を払いたくないので、借金を返済すると言い出した。

私は里和社長の弱みをいろいろ握っているので、「絶対にダメだ」と強引に借入れを続けさせました。

その直後に起きたのが、2011年3月の東日本大震災です。

震災後の電気・ガス料金の値上げにより、利益率の低いトイレットペーパーはつくればつくるほど赤字に。

出荷量が2桁で伸びましたが、同時に赤字も2桁で膨らみました。

しかし、鶴見製紙は倒産しなかった。

赤字でもキャッシュがあったからです。

赤字を垂れ流していれば、いつかキャッシュが尽きて倒産します。

しかし、2014年の消費税率引上げで事態が好転しました。

里和社長は税率が変わったタイミングでトイレットペーパーを1円以上値上げした。

年間5億ロールつくっているので、単純計算すると1円の値上げで経常利益が5億円増える。

これで黒字転換です。

震災から消費税率引上げまでの3年間、里和社長は毎年1億円の金利を払い続けました。

金利負担は決して軽くありませんが、それをケチって長期借入金を全額返済していたら、会社は間違いなくつぶれていました。

里和社長は、計3億円を銀行に払って、経営を立て直すために、3年間の時間を買った。

これが借金の本質です。

その後、里和社長は借入れをさらに増やしています。

いまは長期借入金が84億円で、うち47億円は使わずにキャッシュで持っている。

47億円はいつでも返せますが、あえて金利を払って借り続けています。

借金は金利で時間を買うことだと身をもって理解したからです。

考えてみてください。

利益が出ても、その半分は税金で国に納めます。

ならば、その税金を金利の原資にして借入れし、キャッシュを増やせばいい。

国に税金を納めるのは、とても立派なことです。

しかし、会社がピンチのときに税務署が助けてくれるわけではない。

いざというときに頼りになるのは、国ではなく〝キャッシュ〟です。

同じお金を払うなら、借金の金利として払ったほうが会社のためになります。

会社は「借金まみれ、モノ持ち悪い」が正しい借金の目的は、金利を払って時間を買うこと。

これは守りのための借金です。

一方、キャッシュには投資という攻めの役割もあります。

果たして借金して金利を払ってまで投資するのは正しいのでしょうか。

答えはYESです。

多くの社長は、借金はダメで、モノを長く使うことがよいと考えています。

たしかに個人はできるだけ借金しないほうが安全で、モノを大事にして長く使うことが美徳です。

しかし、会社は逆です。

モノはなるべく早く捨てて、新しいモノを買うために借金をするのが正しい。

1時間に1万円分の生産をする3000万円の機械があり、この機械は5年使えるとします。

しかし機械を導入して3年目に、40分で1万円分の生産をする機械が5000万円で発売されました。

ココで、「前の機械はまだ使える。

捨てるのはもったいない」と新しい機械に買い替えない社長は、数字がわかっていません。

新しい機械は1時間で1万5000円分の生産ができます。

年間の固定費は400万円増えますが、機械を買い替えれば1時間稼働するたびに5000円分の粗利がプラスになります。

1日8時間、年200日稼働で800万円の粗利が増えます。

古い機械は会計上、「除却損」の勘定科目で経費として落とせます。

3000万円の機械でこれまでの減価償却が1800万円だとすると、残りの1200万円が〝除却損〟です。

経常利益3000万円の会社なら、除却損を計上することで税引後利益は1800万円に。

経常利益3000万円のままならざっくり税金は1500万円ですが、除却損を計上すると税金は経常利益1800万円の半分で900万円。

600万円の節税効果が生まれます。

新しい5000万円の機械を買うために金利1%で借入れしたら、利子は50万円です。

50万円など、節税効果600万円に比べたら微々たるもの。

「金利がもったいない」という考えがいかにバカげているか、これでわかるでしょう。

新しい機械の代金もすぐに回収できます。

代金5000万円から節税効果の残り550万円を引くと、4450万円。

新しい機械で粗利は年800万円増えます。

2億4000万円の投資を3年で回収このような細かな計算が苦手でも大丈夫です。

社長が「機械はできるだけ最新のものにする」ということさえ知っていれば、あとは結果オーライでうまくいきます。

実際、鶴見製紙の里和社長がそうでした。

鶴見製紙は、かつてトイレットペーパーを段ボールに詰めて取引先に送っていました。

段ボールは取引先ごとに商品名を印刷する必要があり、印刷を外注したり日々の在庫を管理したりするのに毎年多額のコストがかかっていた。

そこで里和社長は、段ボールではなくコストの安いクラフト紙で巻き、商品名はインクジェットで吹きつける梱包方式に変えた。

新しい機械は1台4000万円で6台導入。

全部で2億4000万円の投資です。

この設備投資で多額のコスト削減効果があったので、金利を含めても3年で回収できました。

いまは機械を動かすほど得をしています。

じつは里和社長は細かな数字のことを理解して導入を決めたわけではありません。

いい人だから、これ以外の機械を売りつけにくる株式会社大善(静岡県、製紙機械・資源循環プラント製作、井出丈史社長)の餌食になっている。

ただ、機械は新しいほうがいいということをよく知っていたし、積極的に借入れをしていたので、設備投資できるキャッシュがあった。

だから結果的に得する決断ができたのです。

2年で売上ゼロから2億円の理由私と一緒にごはんを食べたりお酒を飲んだりする社長は、いつも分厚い財布を持っています。

ジャンケンをして負けたひとりが、全員分のお勘定を払うルール(シェアジャンケン→『1日36万円のかばん持ち』140ページ参照)だからです。

人数や場所によって1日10万円を超える支払いになるので、なかなか過酷です。

社長は、自分の飲食代を払えるポケットマネーを持っています。

割り勘なら誰も困らないのに、わざわざジャンケンをして、ひとりに多額のお金を使わせるのはなぜか。

投資に及び腰になっている社長の金銭感覚を壊すためです。

会社で使うお金と個人で使うお金は桁が違います。

事業への投資を個人の金銭感覚でとらえていたら、足がすくんで投資できなくなる。

だから社長は正しく投資ができるように、普段から頭を会社の金銭感覚に変えていきます。

田舎のスナックで飲めば、せいぜいひとり3000〜5000円程度です。

一方、歌舞伎町でジャンケンに負けると3万円です。

10倍違う理不尽な経験を何度か積み重ねると、個人の金銭感覚が狂ってきて、「2000万円の投資?どうぞどうぞ」と軽くハンコを押せるようになる。

ジャンケンで負かすのはそのための訓練です。

株式会社丹後(愛媛県、タオル製造、株式会社愛媛総合センターも運営)の丹後博文社長は、もともと保険販売業をやっていましたが、取引が打ち切られて倒産寸前になっていたタオル工場を知人から頼まれて譲り受けました。

取引先がなくて売上はゼロですが、社員の給料だけは毎月出ていくマイナスからのスタートです。

しかも、製造業はド素人。

経営サポート会員の先輩社長たちを質問攻めにして、手探りで経営を始めました。

先輩のアドバイスがよかったのか、タオル製造業は軌道に乗りました。

丹後社長は、15人分の食事代15万円がかかったジャンケンで、「感謝のグー」と宣言してからグーを出し、わざと負けてみんなに感謝の気持ちを示した。

お酒が大好きな丹後社長らしいエピソードですが、私が強調したいのは人柄ではありません。

丹後社長は、払う義務のない15万円を躊躇することなく払った。

これくらいの思い切りのよさがあれば投資もひるまない。

タオル製造は売上が2年でゼロから2億円になった。

この調子で投資をすれば、さらなる成長が期待できます。

奥さんに経理をやらせてはいけない個人の金銭感覚が投資の邪魔になるという点では、奥さんを経理にしている会社もよくない。

創業当時、人手不足とお金がなかったので奥さんに経理を手伝ってもらい、そのまま奥さんが経理を牛耳っている会社は少なくない。

その奥さんが主婦感覚で経理をしていたら、1円単位のコストカットが進むと同時に、100万円単位、1000万円単位の投資にもブレーキがかかります。

経営サポート会員のなかには、奥さんに経理を任せている社長が何人もいます。

「家庭に専念するか、別の仕事をしてもらえ」とアドバイスすると、「怖くて言えない」と言う。

気持ちはわかるので、奥さんを会社見学会や「幹部塾」に連れてきてもらい、私から話をします。

埼玉県で廃棄物処理業を営む株式会社小林茂商店の小林弘之社長もそのひとりです。

「小山さん、妻に話してもらえませんか」そのように相談されたので、私は奥さんを「幹部塾」に出させ一緒に食事をした。

運がいいことに奥さんから、「どうしたら会社が大きくなりますか?」と聞かれたので、間髪入れずに「奥さんが経理のままではなれません」と答えた。

奥さんに経理をやらせてはいけない。

個人の感覚で社長の方針に反対するからです。

経理はほかの人に任せて総務に変えてください。

小林茂商店では、奥さんが総務に変わったところ、3年で売上倍増、新工場も立ち上がった。

旦那から言われるとカドが立つことも、第三者から言われると納得しやすい。

奥さんが引いてくれた会社の多くは、投資額が増えて成長していきます。

前年比200%ペースで成長中の新ビジネス最後に、〝借金してまで投資するのはどうしても怖い〟という社長に、エピソードをもうひとつ紹介しましょう。

九州でラーメン店やイタリアン、地鶏専門店など20店舗を展開するゴールドプランニング株式会社(大分県)の吉岩拓弥社長は、かつて「借金は絶対にしない」と心に誓っていました。

25歳のとき、事業に失敗してお金が回らなくなった父親が自殺。

その強烈な体験から、吉岩社長のなかに「借金=悪」というイメージが刷り込まれていました。

「会社を継いで数年はとにかく借金の返済だけを考えていました。

小山社長に『逆だ。

借金しろ』と言われても、心情的に納得できなくて……」(吉岩社長)しかし、出店攻勢をかけるには借金が欠かせません。

当初は銀行1行から細々と借りているだけでしたが、店舗数の拡大とともに借入先は7行に。

そのことが功を奏したのは、新規事業に乗り出したときです。

「従来から自社店舗で使う麺をセントラルキッチン方式でつくっていました。

小山社長から『いい麺だから、周辺のライバル店にも売ったらいい』とアドバイスされて、製麺事業に進出。

最新の製麺機は5000万円もしましたが、借金してキャッシュがあったので躊躇なく設備投資ができた。

その結果、製麺業は前年比200%ペースで成長。

たくさん借りていてよかったです」個人では、借金で苦しんでいる人が大勢います。

だから個人が「借金は怖い」「借金してまでなんか買いたくない」と考えるのは正しい。

しかし、会社は違います。

個人の感覚で投資のことを考えていたら、成長が止まります。

会社は、借金してキャッシュを持ち、それを未来に投資することが正しい。

そのことを胸に刻んでおいてください。

 

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