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序章 「数値化の鬼」とは何か

「モノサシ」を持って働いているか?

「客観的に自分を見ろ」というアドバイスがあります。

このアドバイスが過去に、何千、何万、いや何億回と言われてきたことでしょう。

しかし、そんな簡単に、「自分に足りていない部分」は見えないものです。

ただ、世の中には、それを可能にするものがあります。

それが、「数字」です。

数字は、客観的な視点を与えてくれる「モノサシ」です。

「仕事ができる人」「急成長する人」には、ある共通点があります。

それは、物事を「数字で考えられる」ということです。

足りない部分を数字で認識して、正しく埋めようとする。

つまり、「数値化」の思考がものをいう。

いかなるときも、「感情」を脇に置き、「数字」で考えられること。

それがまさに、「客観的に自分を見る」ということです。

プレーヤーでもリーダーでも、優秀な人なら必ず備えている、「抽象的な考え方」ができる力。

それを本書では、〝数値化の鬼〟という思考法として与えましょう。

簿記や会計などの専門知識は必要ありません。

熱い思いを持って話すときも、思い入れのあるアイデアがあるときも、どんなときでも、頭の片すみには「数字」がある。

そんな戦略家であれ。

はじめに——いったん数字で考える思考法はじめまして。

「株式会社識学」という会社の代表を務める安藤広大と申します。

私はこれまで、「識学」という意識構造学を通して、多くの組織の問題を解決してきました。

「識学」とは、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるか、その方法を明らかにする学問です。

2022年3月時点で、約 2700社の会社が識学を導入しています。

識学を導入した会社からは、急成長するプレーヤーが多く出てきます。

彼らには、1つの共通点が表れます。

それは、「数字と向き合う回数が増える」ということです。

この本は、そんな識学のメソッドを元に、「結果を出したいプレーヤー」に向けて、仕事の型になる「数値化」のノウハウを伝えます。

もちろん、部下を持つプレイングマネジャーの人や、現場で直接コミュニケーションをとるリーダー層にも役に立つメソッドです。

なぜなら、自分を数字でマネジメントできない人が、部下やチームをマネジメントできるとは、到底、思えないからです。

立場はいろいろかもしれませんが、「仕事ができる人」に共通して言えるのが、「数字の大切さを知っている」ということです。

数字ぎらいの人にも、数字はずっとついて回ります。

そして、数字に向き合わずに成長できる人は、誰一人としていません。

できるだけ若く、柔軟な考え方ができるうちに、「数値化」のスキルは身につけておかないといけないのです。

「いや、数字がすべてではない」そう反論されるかもしれません。

たしかに、数字では表せない領域もあります。

デザインとアートの比較が有名ですが、デザインのように「理論で導き出せるもの(数値化できる)」とアートのように「感覚的に惹きつけられるもの(数値化できない)」があります。

今の時代は、後者のアート寄りの考え方が支持されています。

ただ、順番がおかしいと私は思うのです。

「数字以外のこと」は最後の最後にたとえば、一見、理論にとらわれていないように見えるアーティストであっても、ちゃんと「基本」を押さえています。

ヘタウマで個性的な絵の漫画家であっても、「ふつうに絵を描いてください」とお願いすると、かなりうまく描けるものです。

「守・破・離」という考え方がありますが、まずは「基本」を押さえて、そこから自分なりの考え方や表現を探します。

型があるから、型破りが許されます。

この順番が「逆」になってしまっているのが、今の価値観です。

「数字がすべてではない」という言葉を、「数字は無視していい」と、都合よく解釈してしまっているのです。

30年以上のベテランが「数字がすべてではない」と語るのと、入社 1年目の新人が「数字がすべてではない」と語るのとでは、意味が異なってきます。

前者のベテランは、若い頃は数字を追いかけてバリバリと働き、結果を出し、仕事を極めていった先に、さらに自分のやりたいことが見つかったので、「数字がすべてではない」と悟ったのでしょう。

一方で、入社 1年目の新人は、まだ何も結果を出しておらず、業界研究だけに長けている状態です。

そのため、「自分だったらこういう経営をする」「新しい組織づくりをする」ということをお客さん感覚で言っているだけです。

「売上より自分にしかできないことをやりたい」「ニーズがあるものより自分にしかできないものを作りたい」そういう思いを持って、学生は社会に出てきます。

しかし、どこかで必ず「壁」にぶつかります。

数字が無視できないことに気づかされます。

ならば、「先に数字と向き合ってしまえば、もっと早く成長できるんじゃないか」と考えることはできないでしょうか。

いかなるときも、いったん「数字」で考える本書は、「いったん数字で考える」というクセをつけることをゴールとしています。

どんな状況であっても、まずは「いったん数字で考える」「正しく数える」「数値化した評価をする」「時間やコストの感覚を持つ」など、基本を押さえることを目的としています。

自分の仕事を数値化することは、現実をそのまま見るということです。

「ここが足りていないんだな」ということをそのまま受け入れることです。

どんなに一生懸命に頑張っていても、生産性が落ちているのであれば、それを受け入れるということ。

言葉で言うと「素直さ」です。

ただ、「素直になれ」という言葉に反発したくなる気持ちもわかります。

そこで、「心を鬼にして数字と向き合う」という考え方として、その瞬間の自分と向き合うために、「数値化の鬼」という思考法を伝授します。

いわゆる売上や利益にうるさい経営者や上司は、「あの人は『数字の鬼』だ」と揶揄されますよね。

それは、数字の責任を他人に押し付けていることが原因です。

本書で説明するのは、「他人に対する数字の鬼」ではなく、「自分に対する数値化の鬼」になることです。

「安心」のための数値化ではない

社会人によくある勘違いは、数値化が「安心材料」になっていることです。

たとえば、社内で営業成績の数字が資料として共有されたとします。

「なんとなく右肩上がりだからよかった」「同期入社のあいつより成績が上だからマシだ」そうやって安心材料を確認するだけで終わっていないでしょうか。

あるいは、その資料作成に追われるだけで、次の利益につながらないのであれば、それは「意味のない数値化」です。

意味のない数字を追ったり、自分に都合のいい数字だけを集めたりするのなら、やらないほうがいいでしょう。

数字は、「不足を見るためのもの」です。

不足を埋め、次の行動を考えるための材料です。

つまり、未来のための「手段」です。

課題を見つけ、道具として使い倒すために、「心をいったん鬼にする」のが大事です。

目を逸らさないことです。

数字をありのまま直視する。

数字を見て安心してしまう自分に抗う。

その練習を、本書でやっていきましょう。

お互いの「誤解」をなくしてくれるものそもそも「数字」とは何でしょうか。

それは、誰が見ても明らかな「客観的事実」です。

「リンゴをたくさん食べた」「いや、ちょっとしか食べていない」これを聞いて、人がイメージすることには個人差があります。

しかし、「リンゴを 2個食べた」となると、それは絶対的に「 2個」です。

そこに誤解や錯覚は発生しません。

私たちの「識学」という組織理論では、組織の中の誤解や錯覚を取り除くことを目的としています。

上司や部下の「認識の違い」の例は、挙げ始めたらキリがないほどに多くあります。

そして、その誤解が生まれてしまう根底には、「数値化の欠如」があります。

その問題にメスを入れるのが、本書です。

数字は「感情」を切り離してくれるビジネスには、つい感情が絡んでしまいます。

「社長の『肝煎り』だから続けざるを得ない」「現場に『愛着』があるから撤退したくない」「社員全員、『身を粉にして』働いています」こういう表現で議論していても、残念ながらビジネスは前に進みません。

感情に訴えかける言葉でしか話せないと、必ず失敗を繰り返すようになります。

そうではなく、「目標の『 50%』の売上に届かなかったら事業は打ち切りにする」「利益を『 150万円以上』生む施策であれば進めていい」というように、誰の目にも明らかな基準を設け、割り切ることが必要なのです。

まさに、これが「数値化の鬼」となる瞬間です。

「言葉は過剰」「数字は不足」の世の中人は、自分にとって都合が悪いときに、曖昧な言い方をします。

やましいことを隠すときに、私たちは、「たくさん」「ちょっとだけ」「かなり」という言葉を使いますし、既得権益を守るときにも感情的な言葉を多用します。

その場をうまくごまかすために「言葉」が進化したのかもしれないと思うほどです。

人類の歴史を辿ると、人間は、抽象的な考えを相手に伝えるために、「数字」と「言葉」を発達させてきたことが理解できるでしょう。

ただ、昨今の SNSをのぞいてみればわかるように、「言葉」のほうが過剰になりすぎています。

それは、誰でも簡単に使えるからです。

「こいつは嫌いだ」「この人は好感が持てる」などと、誰でも簡単に批評することができるのが「言葉」です。

一方で、世の中には「数字」が圧倒的に足りていません。

それは、自分からデータを集めたり、数字の意味をちゃんと分析したり、感情を横に置いて冷静に判断したりする必要があるからです。

つまり、「数値化」はめんどくさい。

だから、世の中は、「言葉」が溢れ返り、「数字」が足りていない状況になっているのです。

もっと「数字」を用いて論理的に考え、判断する人が増えれば、感情的な炎上や足の引っ張り合いは減ります。

本書を読むあなたには、ぜひ「数字を増やす側の人間」になってもらいたいと思います。

数値化のメリットは、何よりも「コミュニケーションコスト」を減らすことです。

リモートワークが常態化し、雑談が少なくなり、コミュニケーションの価値が見直されていますが、それでもムダなものはムダです。

ここで言うムダとは、「データのない不毛な会議」「好き嫌いや空気の読み合い」「認識の違いによる仕事上のエラー」のことを指します。

「今月は営業訪問をすごく頑張りました」そう言っていたのに、実際には 1日 2件しか回っていないようなときがあります。

「すごく頑張る」という言葉だけでは、お互いの認識にズレが生じます。

その場合、何件回ったのか、数字も一緒にマネジャーに報告させるなど、数値化するためのルールを決めておく必要があります。

「数字のことばっかりうるさいな……」と思われることを恐れ、確認を怠る管理職は、管理職失格です。

この「言葉による言い逃れ」がクセになってしまったプレーヤーは、そこで成長が止まります。

友達や家族どうしの雑談なら、いちいち回数を確かめる人は、めんどくさいやつと思われるかもしれません。

しかし、ビジネスの場では違います。

空気で察してもらえるように、「もっと頑張ったほうがいいよ」とだけ声をかけるのでは、何の意味もありません。

日本の社会は、「言わぬが花」の精神で回ってきすぎました。

高度経済成長期ならそれでもよかったのでしょう。

しかし、これからの日本では、そうはいきません。

そのムダを徹底的になくしていくのが、「数値化」の威力なのです。

数字のあとに「自分らしさ」が出てくるこういう話をすると、こんな反論をされます。

「数値化によって『自分らしさ』が失われるのでは?」これは、スポーツを例にとるとわかりやすいと思います。

数字がないと、ほとんどのスポーツ競技は成立しません。

サッカーや野球、バスケットボールは、「点数」が入ります。

一見、数値化ができなそうなアーティスティックスイミングやフィギュアスケートも、審査員が付ける「点数」で競います。

今の一流のアスリートを思い浮かべてください。

彼らは、自分から「こう見られたい」という自分らしさを出しているわけではなく、数字を追った結果、振り返ると個性が滲み出ているのです。

数字があった上で、それを超える「自分らしさ」「やりがい」「達成感」などの自己満足を感じるアーティストもいることでしょう。

「優勝しました。

けれど、私らしい競技ができなかったので満足していません」などと、ストイックに語る選手がいますよね。

ただ、数字がないところでの競い合いは、成立しません。

「みなさん、自分らしい競技を自由にしてください」という状況になったら、どんなことが起こるでしょう。

1人 1人のパフォーマンスや全体の質は確実に落ちます。

見る側の人も、何を基準に応援すればいいかわかりません。

ビジネスもこれと同じ構造です。

売上や利益など数字が関係しないビジネスなんてありません。

その達成こそが第一です。

社会問題の解決を目指す社会起業でも、利益を生まないと継続はできません。

数字を追いかけ、ふと振り返ったときに初めて「あなたの強みは ですね」と、自分らしい個性が出るのです。

その順番を間違えないでください。

数字はとことん「客観的」にしてくれるまた、数字の「プレッシャー」についても、よく質問されます。

「数字のことを考えさせないほうが、のびのびと働けるのでは?」という意見です。

これも大きな勘違いです。

不適切な数字の目標を掲げ、「なんでこんなこともできないんだ!」と怒鳴ったりするからプレッシャーになるのです。

つまり、「感情」を絡めることが問題なのであって、数字そのものがプレッシャーを与えるわけではありません。

数値化は、感情を横に置いてラクにしてくれるツールでもあります。

たとえば、好き嫌いの悩みも同じことが言えます。

職場にどうしても嫌いな人がいるとしましょう。

「あの人は苦手だ」とつねに思っていると、疲れてしまいます。

しかし、「ムカつくことを『 3回』言われた」と数値化してみてください。

やや引いて考えることができると思います。

「去年は『 10回』嫌みを言われたけど、今年はまだ『 2回』だな」と考えることもできます。

「嫌い」という主観が、「回数」という客観的事実に置き換わります。

すると、一歩引いて自分を見ることができ、スーッと生きやすくなるでしょう。

それくらい、数字は発明なのです。

モヤモヤする気持ちから、あなた自身を引き離してくれます。

感情ではなく、理論で冷静に判断するためのツールなのです。

さて、本書では、「仕事ができる人」に共通する「数値化の考え方」を、私たちの識学という考え方と絡めながら伝えていきます。

入社 1年目はまったくダメだった人でも、突然、伸びる瞬間がある。

そこで何が起こっているのか。

それをひもといていきましょう。

まずは、プレーヤーでもマネジャーでも、「数字で評価される人」になってください。

「数字」以外の価値は、それを達成してからゆっくり考えればいいのです。

その順番を間違えないように注意してください。

詳しくは本編で書きますが、すべての問題は「手段」と「目的」の入れ替わりによって起こっていると言っても過言ではありません。

手段であるものが目的化してしまうことで、意識のズレは起こるのです。

それを見抜けるようになり、手段と目的を間違えないようになりましょう。

それでは、始めます。

安藤広大

目次数値化の鬼はじめに——いったん数字で考える思考法「数字以外のこと」は最後の最後にいかなるときも、いったん「数字」で考える「安心」のための数値化ではないお互いの「誤解」をなくしてくれるもの数字は「感情」を切り離してくれる「言葉は過剰」「数字は不足」の世の中数字のあとに「自分らしさ」が出てくる数字はとことん「客観的」にしてくれる目次序章「数値化の鬼」とは何か数字に感じる「ネガティブ」を取り除こう数字はつねに「未来」のためにある評価せざるを得ない「結果」を出そう数字がないから「不満」が生まれる日頃から「数字のある会話」をしているだろうか 1日を「数字」で振り返ってみる言い訳の多い「中堅社員」の共通点数値化ができる人は「失敗」が当たり前になる「自分に甘い人」の考え方のクセ「気合い」でなんとかするな「仕事ができる人」になる5つのステップとは「ニセモノの数値化」にダマされるな序章の実践「数値化」をクセづける

第 1章数を打つところから始まる——「行動量」の話

「仕事ができる人」の共通認識とは何かビジネスは「結果」ファーストでやり方は人それぞれで「自由」数値化とは「 PDCA」を回すことである識学流 PDCAの考え方とは数値化は「なんとなく」を許さない 「D」の回数を「行動量」とする「数をこなす」こそ基本中の基本「数をこなす」ためのすぐやる仕組み目標のための目標、「 KPI」という概念「行動制約」を明らかにする「意味」は遅れて理解できる 「D」に素早く移れるマネジメント環境を整える「やってればいいんでしょ」という安心材料は危険優秀なプレーヤーが犯す「伝え方」のミス優秀なマネジャーは「1つずつの式」にする目標は「いつでも思い出せる数字」でないと意味がない目標とは「地図」である識学流の目標は「5つ以内」それでも「数値化」が難しいとき

「自分のこと」しかしなくなる?「チームあっての個人」を徹底する 1章の実践「 PDCA」をやってみる

第 2章あなたの動きを止めるもの——「確率」の話

「伸び悩む人」に共通する考え方「成長を諦めた人」の既得権益現状維持では「沈む」時代「確率のワナ」に注意しよう「失敗」が怖くなってしまう数値化のクセ「確率では勝ってる」という自己評価出世しておかないと「評論家」になってしまう目標の「%」には気をつける組織と個人が「ブレーキ」を踏むとき「働かないおじさん」を生まないための仕組みづくり「インセンティブ制度」にも弊害がある「連続性」を評価しよう評価にゼロはない。

「プラスか、マイナスか」だゼロ評価がないと人はどう考えるのか「平均のウソ」にもダマされてはいけない「平均だから大丈夫」という誘惑「数字の中身」にうるさい人になろう「自然の法則」を乗り越える 2章の実践「数字のウソ」を見抜く

第 3章やるべきこと、やらなくてもいいこと——「変数」の話

「変えられるもの」と「変えられないもの」を見分ける2つの「頭の悪さ」とはどこに「 x」が隠れているのか「変数」こそが仕事の成果につながるプロセスの「型」を身につける仕事の「中身」を細かく砕く「なぜ?」を繰り返して変数を明らかにするいち早く「変数」に気づけるプレーヤーになる「行動レベル」にまで分ける「答え」を与えられても意味がない「変数じゃないもの」に固執しない「やった気になること」を排除せよ意味を「後付け」していないだろうか「変数だったかどうか」を確認するうまくいったら攻める、失敗したら考える他人の成功論はすべて「変数」ではなく「仮説」すべては「個人的な体験談」上司からの「プロセス介入」も「仮説」である仮説という前提で「シェア」しよう「変数」が「変数」でなくなるとき「もっといい変数はないか」という視点 3章の実践「変数」を見つける

第 4章過去の成功を捨て続ける——「真の変数」の話

「変数」は放っておくとどんどん増えていく「やらないこと」を先に決める変数を減らす「2つのアプローチ」 「KPIを変える」という手段

変数の中から「1つ」に絞り込むマネジメントの「難易度」を上げるなとりあえず「真の変数」を1つ決めるできるマネジャーは「変数」を減らす「それは変数ではない」というフィードバック「変えられないこと」を言い訳にさせない「社内の変数」を減らしているか社内の「偏り」に気づく人の「バラツキ」を取り除く「カリスマ」への依存は危険な状態「環境のせい」にする経営者は経営者失格だコントロールできるもの、できないものとにかく迷ったら「変数」で考える分けて、分けて、さらに分ける「重要なこと」から着手する 4章の実践「変数」を減らす

第 5章遠くの自分から逆算する——「長い期間」の話

「短期的」と「長期的」の2つの視点「時間を味方につける」という言葉の本質長期的にみると数字は「一定ではない」短期的には損だけど、長期的には得なこと 「5年後はどうか」をセットで考える長期的に考えるプレーヤーとは安心感を持つか、危機感を持つか「短期から長期、長期から短期」へ逆算する逆算すると「つながり」ができる長期的に考えざるを得ない「環境づくり」評価に組み込む「時間軸」数字が「遅れてついてくる」というプレーヤーを信じられるか「次なるトップ」を生み出すために 5章の実践「長い期間」で考える

終章数値化の限界

「数字がすべてではない」のステージに行くために「成長している実感」こそ最大の目的「ハングリー精神」を作り出すには限られた時間内に「本業」で力を出せ「やりがい」「達成感」は最後の楽しみにおわりに

数字に感じる「ネガティブ」を取り除こうあなたは、「数字」という言葉を聞いて、どのようなことを考えますか。

おそらく、マイナスなイメージではないでしょうか。

まずは、数字に対する「アレルギー」を取り除くことから始めましょう。

なぜ、私たちは数字にネガティブな印象を持っているのでしょうか。

ビジネスパーソンが「数字」と言われて真っ先にイメージするのは、売上や成績など、「数字の目標やノルマ」だと思います。

つまり、あなたの仕事の結果に対する評価のことですね。

数字による結果が出ることは、学生時代のテストと同じで、「あなたは 50点で、半分しかできていません」 「80点で合格ですが、あなたは 60点なので、 20点足りていません」と、相手からダメだしをされている気がするかもしれません。

そこが数字へのアレルギーにつながるのでしょう。

ただ、学校や会社での評価は、別に「人間としての点数」や「人としての価値」を表しているわけではありません。

仕事上の「機能」として切り分けて考えないといけないのです。

数字はつねに「未来」のためにあるなぜ、数値化をするのか、それを考えていきましょう。

それは、「未来」に目を向けるためです。

数字は、いま、自分には何が足りていないのか、どういう課題があるのか。

それを「見える化」しているだけです。

テストで 20点が足りていないのは、「次にどうすればそれを埋められるのか?」を考えるための手段です。

もちろん、過去のあなたに対する評価は下されます。

しかし、「じゃあ、次はどうするか?」が常にセットなのを忘れてはいけません。

そこまでを考え切って初めて数字は意味を持ちます。

その手前だけで終わっているから、数字を見ることがどんどん嫌いになります。

それは、ダイエットをしようとしている人が体重計に乗って現実を見ることを怖がっているのと同じです。

数字として表せるものは、さっさと受け入れて客観的に分析するしかありません。

そして、次につなげるのです。

そうやって改善していき、次こそはうまくいったとしたら、どうでしょう。

途端に「数字」が好きになり、「数字」に向き合うのが楽しくなります。

その好循環をいち早く起こすのが、プレーヤー期間には求められることです。

評価せざるを得ない「結果」を出そう組織にいる限り、上司が評価を下し、部下がそれを受け取ります。

すると、次のような疑問が出てくると思います。

「評価する側の人に問題があったらどうするのか?」人を評価する他者への疑念が出てくるはずです。

そこに対する識学の答えは、こうです。

「組織に所属している限り、直属の上司から評価される存在として、あなたは働いている。

だから、評価につながる結果を出そう」どうでしょう。

少し厳しい言い方に感じたかもしれません。

上司と部下の関係を正しく機能させるためには、「公平性」がとても重要です。

誰が見ても公平で明らかな評価を、上司は部下に対して下す必要があるからです。

それを可能にするのが、「数値化」です。

・売上が「いくら」なのか・改善行動が「何回」あったか・期限を「どれだけ」守ったかと、すべてのものごとを、いったん、数値化して評価するようにします。

もちろん、数値化が難しい領域もあるので、それについては後述します。

まずは、すべて数値化できる前提で話を進めていきます。

数字がないから「不満」が生まれる

逆に、数字ではなく「曖昧な概念」で評価をすると、不公平が生まれます。

なぜなら、気に入っている部下に甘い評価を下せてしまうからです。

すると、次のような不満が出てきます。

「私の給料、どうやったら上がるんでしょうか。

こんなに頑張っているのに」「なぜ、あの人のほうが能力が低いのに、給料が高いんですか?」「この積極性の評価点、どうして Dなんですか。

Aのつもりなんですけど」「私だけ未達成なのに、みんなと同じ給料でいいんでしょうか……」これは、経営者やマネジャーの方々に来る質問の一例です。

読者のみなさんも、感じたことがあったり、同僚から言われたりしたことがあるのではないでしょうか。

これらの問題は、すべて「数値化」で解決することができます。

部下の立場では、上司が評価せざるを得ない結果を出すことが最優先事項です。

「あんな上司に評価されても仕方ない」と思うのではなく、結果を出すことが何より見返すチャンスになると思って、感情を横に置いてみてください。

ちなみに、識学を導入した会社では、数値化による評価制度を会社全体で徹底してもらうようにしています。

読者のみなさんは、「導入されていない会社だったらどうすればいいのか?」と思うかもしれません。

世の中の多くの会社では、曖昧な評価基準で感覚的に上司が評価を決めているからです。

その場合は、まずは上司に対して、お互いの認識のズレがないように、「どの数字を達成すれば、自分の評価につながるのですか?」と伝えてみましょう。

あなた個人は、正しく数値化で物事を考える姿勢を貫いてほしいと思います。

日頃から「数字のある会話」をしているだろうかここまで、評価に対するネガティブなイメージを取り除く話をしてきました。

どちらかといえば、「受け身」に感じたかもしれませんが、次は「主体的」な話です。

前項の話を受け入れたプレーヤーは、自分の目標達成のために動くようになります。

つまり、心を鬼にするようになる。

すると、ある1つの共通点が現れます。

それは、「会話の中に数字が出てくる」のです。

逆に、会話に数字がない人というのは、どういう人でしょうか。

「これを売りたいんです!」「このビジネスはうまくいきます!」こういった話し方をする人がいます。

情熱で押し切るようなタイプです。

新入社員や 20代の頃であれば、この言い方でも通用したかもしれません。

こういう若者を過剰に評価してしまう経営者や社長がいることも事実ですからね。

しかし、現実はそれだけではダメです。

情熱で押し切る方法しか知らない人も、どこかでその壁にぶつかります。

30代や 40代で、こういう情熱的な言い方しかできない人は、社会人としてかなり厳しい状態になっていきます。

年次を経るにつれて、数字の根拠を出し、論点を整理して話すようにしないと伝わらない場面が増えていくはずです。

「この商品は 1000万円の売上が見込めます。

その理由には3つあって……」「このシステムを社内に導入したら、毎月 200万円のコストが削減できます。

それだけで 5人分の給料が捻出できます……」このように、誰かに伝える段階では、数値化させることが有効です。

感情にうったえかける表現は、最後の味付けのようなものです。

腐った肉にどんなにスパイスを振りかけても、腐っている肉は腐っています。

もちろん、人間ですから数字だけで動かない面もあるでしょう。

そこで最後に熱を伝える……、というのが正しい順番です。

あくまで数字が先です。

よく、社長が験担ぎをしたり、神社にお参りをしたりします。

それは、「やるべきことはすべてやった」「数字的な検証はすべて考えに考え抜いた」というように、他にやるべきことを終えてから儀式的に行なうから意味があるのです。

これも、順番が逆にならないことが大事です。

1日を「数字」で振り返ってみるとはいえ、いきなり数字のある会話ができるようになるわけではないでしょう。

そこで、まずやってみてほしいのが、「自分の 1日の行動を数字で考えること」です。

多くのビジネスパーソンは、半年や 1年間で目標を設定していると思います。

そのゴールを漠然と目指している状態は、夏休みの宿題を抱えて「そのうちなんとかなるだろう」と思っている状態と一緒です。

中だるみしてしまい、後から焦って頑張るようなタイプの人を生み出してしまいます。

ここで大事なことは、大きな目標を「 1日ごと」に分解することです。

これは、新入社員や若いプレーヤーであれば、上司によって管理されているかもしれません。

日報を書いたり、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」をする人もいるでしょう。

ちゃんと意図を理解した上でそれらに取り組んでいるなら、特に問題はありません。

しかし、多くの場合は、形骸化して仕方なく惰性でやっていることでしょう。

「言われたからテキトーに日報を書いています」「なあなあのほうれんそうをしています」そういう人が多いのではないでしょうか。

意図もわからずに、なんとなくやらされ感や義務感でやっていると、どんどん言い訳が増えます。

ごまかすのが当たり前になるはずです。

そうならないためには、 1日ごとの数値化を「自分のため」にやるのです。

自分がどれだけやったのかを嘘偽りなく表すこと。

まさに、心を鬼にできるかどうかが試されます。

言い訳の多い「中堅社員」の共通点

日報やほうれんそうでテキトーなことを書いてその場を逃れるのか、ちゃんと数字と向き合って報告するのか。

これによる「差」は、年を重ねるごとに大きく開いていきます。

テキトーな報告をしている人は、次第に次のような発言を平気でするようになります。

「結果は出ていませんが、こんなに頑張っています」「数字以外の部分で貢献したので評価してください」こうやって自分の問題点から目を逸らす行為は、「自己欺瞞」と言います。

この状態になってしまうと、なかなか直りません。

できていないことに向き合うのではなく、正当化して周囲に問題を押し付けるような考え方をしてしまうのです。

そのほうがラクだからです。

今の日本の会社組織は、このタイプの中堅社員を一定数、生み出してしまう構造があります。

それを何としても食い止めたいなと私は考えているのですが、若ければ若いほど、まだ取り返せるチャンスがあるので、本書を読んでいるあなたは、そうならないことを願っています。

自分の足りない部分を考えることをしなくなり、すべて他人や上司、会社のせいにして考えてしまうようなら、気をつけてください。

そうならないために、数値化が必要なのです。

数値化ができる人は「失敗」が当たり前になる数値化できるようになると、失敗を認めることができます。

「失敗しなくなる」のではありません。

「失敗を認められる」のです。

そもそも、ビジネスにおいて失敗はつきものです。

失敗があることが当たり前です。

私自身、失敗の連続です。

大事なことは、失敗を失敗と認めて、次につなげることです。

同じ失敗を繰り返すことだけは、避けないといけません。

たとえば、目標を立てて英語を勉強するとしましょう。

「1日 10単語を覚える」という目標を立てて、実行し、 1日に 8単語しか覚えられなかったとします。

そうであれば、次にどうすれば 10単語が覚えられるのか、あるいは、そもそも 10単語の目標が高かったのか。

それを分析することができます。

失敗は貴重な情報です。

それを数値化して受け入れれば、絶対に次につなげることができます。

しかし、日々、なんとなく「 10個も覚えられないなぁ」「集中力と気合いが足りないんだろうなぁ」と繰り返していると、いつまで経っても改善されません。

なんとなくダイエットを始めて、「なかなか痩せないな……」と思い続けるのと同じで、ムダな時間でしかありません。

失敗は数値化して次につなげてこそ、結果を生みます。

「自分に甘い人」の考え方のクセもっとも避けないといけないのは、失敗を失敗と認めないことです。

「アポを 1日 5件入れる」という目標があったとして、 3件しか入れられなかったときに、どのように受け止めるでしょうか。

「半分以上できたから、まあいいか」「本気を出せば頑張れたから大丈夫だろう」と、自分に甘い評価をしていないでしょうか。

自己認識の甘さによるデメリットは、「よく頑張った」「なんかダメだった」と、曖昧な評価を認めてしまっていることです。

そういう甘い見積もりをするのは、やめましょう。

失敗は失敗として正しく認識してこそ、次からは改善できる。

そのために「数値化の鬼」となりましょう。

そうでないと、失敗を隠すためにデータを改ざんする官僚みたいな人になってしまいます。

「気合い」でなんとかするなそうはいっても、厳密に言えば、「読書を 1日 1時間する」という目標を立てても、 5分おきにスマホを見てしまったりしている可能性はあります。

ストップウォッチを片手に読書時間を計るような、そこまでストイックに厳しくする必要はないかもしれません。

ただ、ざっくりとでも数値化して、自分の行ないを客観的に把握するクセがあるかないかの差は大きいです。

ここで伝えたかったことは、とにかく自分に甘い評価を下すクセをなくすことです。

1日にできる自分の限界を正しく認識することです。

「気合いを出したらできる」「徹夜したらできる」「土日に持ち越したらできる」そういう錯覚は、自分への厳しい見積もりができると消えてなくなります。

そのためには、いったん、心を鬼にするように数字だけを見るのです。

「仕事ができる人」になる5つのステップとはここまでの話を整理すると、次の2つに集約されます。

「数値化された評価を受け入れる」「自分の不足を数字として受け入れる」この2つさえ理解できれば、「主体的」な数値化のノウハウで自分の仕事に取り組むことができます。

そして、いよいよ本題です。

これから本書で紹介する「数値化の鬼」について簡単に紹介しておきましょう。

ステップ 1「行動量」を増やす(第 1章) →自分の行動の数を正確に数えることステップ 2「確率」のワナに気をつける(第 2章) →割り算による安心感のワナに気をつけることステップ 3「変数」を見つける(第 3章) →仕事の中で何に集中するかを考えることステップ 4「真の変数」に絞る(第 4章) →ムダな変数を削り、さらに重要な変数に絞り込むことステップ 5「長い期間」から逆算する(第 5章) →短期的と長期的、2つの軸で物事を見ること以上の5つです。

仕事における数値化には、会計や統計学などの難しい知識は特に不要です。

「足し算、引き算、掛け算、割り算」という四則計算さえできれば問題ありません。

ただ、その計算においてすら、数あるバイアスや誘惑があなたを襲ってくるはずです。

また、5つのステップはすべてが大事な考え方ですが、組織での「役割」によってそのウエイトが変わります。

後半にいくにつれて、役職がより上のポジションの人にとって重要な概念になります。

なので、各章の後半では、マネジャー目線からの視点についても語ろうと思います。

とはいえ、本書の目標は「仕事ができる人」になることです。

これを機に、まずは5つのステップすべてをマスターするようにしてください。

「ニセモノの数値化」にダマされるなさて、序章の最後に、数値化の「注意点」にも触れておきましょう。

数値化において、重要なのが、「数値化に見えるニセモノにダマされないこと」です。

これは、本書でも非常に大事なメッセージなので、何度も繰り返し述べるようにします。

たとえば、「会話力」「英語力」という言葉があります。

「はじめに」でも述べたように、これは「数字」ではなく「言葉」です。

ここでやっかいなのは、次のような考え方をする人です。

「来年こそは『英語力を 2倍』にアップさせたい」「私は『会話力が 50点』なので、『 70点』を目指したいです」どうでしょう。

このような表現を使ったことがないでしょうか。

ロールプレイングゲームなどの影響かもしれませんが、「攻撃力」や「守備力」といった「 力」という概念を、私たちは日常生活で使うことがあります。

これは果たして数値化なのでしょうか。

実際の世界では、「 力」は感覚的なものとして扱っているでしょう。

「体力をつける」「忍耐力を上げる」「集中力を鍛える」なども同じです。

これらは、数値化に見せかけた「ニセモノの数字」です。

理系出身の人や、数字に強い人は、こういう表現には敏感です。

「その『会話力』って具体的に何を表している数字ですか?」 「『忍耐力』は気合いで上がるものなんでしょうか?」と、即座に考えることができます。

しかし、根っからの文系人間や感覚的に生きてきた人ほど、「ニセモノの数字」を使いたがります。

言葉だけの目標は「定性的」と言います。

一方で、ちゃんと数値化された目標は「定量的」と言います。

「 力」という言葉を疑ってかかるようにしてください。

自分が使わないことはもちろんのこと、他者が言っているときも、そのウソを見抜ける人になってください。

部下や同僚が、「販売力と企画力を強化します」「モチベーションを倍に上げます」としか言わないときは、ちゃんとそれを具体的に数値化させてください。

「英語力を上げる、ではなく、 TOEICで 800点をとる」「販売力を上げる、ではなく、売上を 15%アップさせる」そこまで具体的にできて、初めて定量的な「数値化」と呼べるのです。

以上が、数値化をしていく上でのマインドセットの話です。

これまで都合よく考えてきた逃げの言葉を、1つ1つ潰していきましょう。

一見、厳しさを感じるかもしれませんが、その痛みは一時的な筋肉痛のようなもので、確実にあなたを成長させている証拠でもあります。

最後に、数字で考えることをクセづけるために、実践方法を紹介しておきます。

あらためて、できているかを確認してみてください。

序章の実践「数値化」をクセづける頭の中で、いったん「数字」を考えることができるか。

その練習をしておきましょう。

1つのポイントとして、「形容詞、形容動詞」や「副詞」に注意してください。

・形容詞、形容動詞(「早い・遅い」「好き・嫌い」「良い・悪い」など)・副詞(「よく」「とても」「もっと」「すごく」「かなり」など)これらはいずれも、主観的な言葉であり、客観性がありません。

「あの店がとても好きです」(主観) 「あの店は週 2回通っているほど好きです」(客観)前者は主観だけの言葉です。

後者は、誰が見ても明らかな事実を語っています。

週 2回という事実が「好き」という主観を補うデータになっているという関係です。

「好き」と口では言っておきながら、 1年以上もその店に行っていないのなら、たぶん本当に好きではありません。

つまり、「好き」には客観的なデータがないということです。

ということで、次の曖昧な言い方を数字の入った表現に変えてみましょう。

「もっとダイエットする」 「すごく仲良くなる」 「なるべく早く提出する」さて、どうでしょう。

例を挙げると、次のようになります。

「ダイエットをして体脂肪率 15%を下回る」 「 1日 1回は話しかけて仲良くなる」 「 14時の締切に間に合うように提出する」このように、数字を入れることで、誰にでも誤解なく伝えることができ、物事が前に進むようになります。

また、数字は世界共通の言語でもあります。

そのため、ある業界のことを、その業界を知らない相手にも理解させることができます。

たとえば、 「この本がベストセラーになってすごい」と言われても、どれだけすごいのかがわかりません。

これが、 「 1500円の本が 10万部売れて、売上が 1億円を超えている。

毎日 200冊の新刊が出るけれど、 10万部を超えるものは 1%にも満たない」と言うと、誰にでもそのすごさを伝えることができます。

数字に置き換えることで業界を横断して誰にでも理解させることができるのです。

曖昧な言い方をするクセをやめて、数字で言い換えること、数字で表現することをクセづけましょう。

 

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