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第4章「プライベート」での気づかい

目次

プライベートでの行動が、気づかいの習慣になる

気づかいは場所や相手を問わずに行うものです。ビジネスで成功したいのであれば、ビジネスシーンはもちろん、プライベートでも気づかいを心がけることが大切です。

なぜなら、人間は習慣の動物だからです。気づかいを繰り返し行うことで無意識にできるようになります。

脳科学の研究によれば、人の行動の9割以上は、脳が無意識に決定して行っています(『心脳マーケティング』ジェラルド・ザルトマン著、藤川佳則・阿久津聡訳、ダイヤモンド社)。

新型コロナウイルスの感染が拡大するさなか、厚生労働省は「3つの密(密閉、密接、密集)を避けよう」「ソーシャルディスタンス(感染拡大を防ぐための物理的な距離)を取ろう」と呼びかけました。

これを守れない人をときどき見かけます。私の周囲を見ていると、守れない人は決まって、会社のミッションや理念を守る行動もできていないように思います。

日頃から守るべき約束を守って行動していれば、日常生活の中の約束も守れるようになります。どんなことも習慣化できるようになれば、人生で成功できます。

だからこそ、ビジネスの場だけでなく、プライベートでも気づかいをすることが大切なのです。

いちばん身近なところでは家族です。家族に対して、常日頃から気づかいができれば、ビジネスシーンでも自然と気づかいができるようになります。

親しいからこそ「気づかい」をする

人と人は完全にわかり合えるでしょうか。私は不可能だと考えています。人は自分のことさえ、完全にわかることは難しいものです。他人であれば、なおさら理解するのは困難です。

親子でも夫婦でも難しいのですから、たまたま職場が一緒になった上司と部下であれば、理解し合うのは、至難の業です。

ところが、1年、2年と付き合うと、なんとなくわかった気になってしまいます。すると、どうなるか。お互いに説明が足りなくなります。

上司は、「彼は一を聞いて十を理解できる。ここまで言えば、わかるだろう」「いつもやってることだから、任せて大丈夫だろう」「最近は、あうんの呼吸で仕事のやりとりができるようになってきた。時間もないし、説明は省いてしまおう」と思います。

部下は部下で「いつもの通りにやっておけばいいだろう」「だいたいこういうことだろうな」と確認を省略して進めてしまうことになります。

たとえば、営業先に提出する提案書について、上司が、「任せるからやっておいて」とひとことで済ませる。上司は、営業先に提出する前に、見せにくるものだと考えていました。

それに対して部下は「承知いたしました。進めておきます」と返事。

「全部任せてもらえたんだ。うれしい」と勘違いし、つくった提案書を上司のチェックもなしに、営業先に提出。価格の打ち間違えによって、営業先に大きな迷惑をかけ、契約がうまくいかなくなった……。これは現実に起こりうることです。

上司は、「提出前に見せてね」と言うのが気づかいですし、部下は、いくら任されたといっても、「できましたので、念のため、チェックをお願いできますか」と聞いてみるのが気づかいでしょう。

親しくなると「自分の手間」を省いてしまいがちですが、それは最終的に「相手の手間」になってしまいます。

仕事では、それが大きな失敗になり得るので、親しい関係こそ、手間を惜しまずに気づかいを心掛けましょう。わかり合うためには、気くばりを欠かさない夫婦や恋人、友人関係でも同じです。

確認をせずに、「相手はこう思うに違いない」という思い込みで行動することで、関係がこじれることもあります。「いつもの場所で7時に待ち合わせね」と友人と電話で待ち合わせをしたとします。「いつもの場所」がお互い違う場所をイメージする可能性もあります。

7時といっても、朝の7時か夜の7時か曖昧です。もし、待ち合わせ場所が違っていた場合、「言った」「言わない」の言い合いになる可能性もあります。

たとえ、お互いによくわかり合えている者同士であったとしても、丁寧に説明をし合うこと。些細なことですが、待ち合わせであれば、具体的な場所と正確な時間を伝え合う。

それだけで、すれ違いがなくなります。相手と常に確かめ合うことが、二人の関係性を保つための、大切な気づかいです。

友のピンチには「すぐに」「直接」、「何度」でも

先日、親友が脳梗塞で倒れました。ご子息から知らせを聞き、心から心配になりました。ご家族しか面会できない状況でしたが、お願いしてお見舞いさせていただきました。

直接、顔を出したことで、親友は「励みになった」と、とてもよろこんでくれました。自分にとって大切な人が窮地に陥ったときは、すぐに会いに行って、直接励ますことが重要だとあらためて思いました。

人に直接励ましてもらうのは、何よりも力になるのです。

仮に面会できなくても、病院まで足を運んでくれた思いの深さをあとから知ったら、うれしくなり、リハビリの励みにもなります。

突然の入院となると、「遠いから」「忙しいから」「時間の調整ができないから」とお見舞いに行かない理由はいくつも思い浮かんでくるものです。

そのような中、「調整してお見舞いに行く」行為ができるのは、自分のことよりも相手のことを優先しているからにほかなりません。利他の精神です。

こうした行いができる人は、多くはありません。ほかの人が行動に移さない中、お見舞いに来てくれたら、本当にうれしく、印象にも残ります。

何度も勇気づけに行く知り合いの歯科麻酔科のドクターが体調を崩しました。インプラントの手術を行うときには麻酔が欠かせません。

私の歯科医院では、この歯科麻酔科のドクターと、インプラントのシステムを提供している京セラさんと共にチームをつくってインプラント治療をすることがありました。チームに欠かせないドクターでした。

このドクターが病院で診てもらうと、「難病」であることが判明しました。「もう、歯科麻酔科医としては一生働けないだろう」と宣告を受け、即刻、札幌の大きな病院に入院となりました。

私が暮らす帯広から札幌までは200キロほど離れています。車や電車で片道3時間の距離。しょっちゅうとはいきませんでしたが、私は時間を見つけてはできるだけ見舞いに行きました。

病気のときは、人に会いたくないという気持ちがありますが、一方で来てくれたらよろこびの気持ちもある。特に親しい人や友人は「すぐに」「直接」「何度」でも行くとよろこばれると思います。

このドクターは名前が「勝(まさる)」と言います。私は京セラさんと一緒に、「病気に勝つ」という意味の「勝」という文字の入った手術用ガウンをつくって、彼にプレゼントしました。

彼を何とか励ましたいと思ったからです。

本人の頑張りや治療にあたっている医師、ご家族のサポートはもちろんのこと、私たちの励ましも一助になったのか、彼は奇跡的な回復を果たしました。

人が直接励ますことがどれだけ相手を力づけ、奇跡をも起こすかを実感した経験です。

落ち込んでいる人には、「激励」ではなく「希望」を贈る

友人が入院したり、困ったりしているときは、私はその友人や家族に対して、お見舞いに加えて、定期的な応援メールを送るようにしています。短いメールでいいので、定期的に送ることが大切です。

友人が緊急入院したと聞いてすぐの頃には、2日に一度くらいのペースでメールを送るようにしていました。

受け取ったほうは、「継続的に自分を見守ってくれている」「自分に関心をもってくれている」と思ってくれるようです。

継続的なサポートが「勇気」となり、病気と「闘う力」になります。では、どのようなメッセージを送るとよいのでしょうか。

「病気の人」「つらい人」に、「頑張れ」「頑張ってね」というメッセージを送るのは自然のように思えます。一方で、「病気の人」「つらい人」には「頑張って」と言わないほうがいいという意見もあります。

実際はどちらがいいのでしょうか。

私は、多くの書籍や相談を受ける全国のいろいろな体験者の言葉から、「(言われなくても)頑張っているから、『頑張れ』と言われるのは、つらい」と教えてもらいました。

「一生懸命にやっているのに、『もっと頑張れ』と言うの?いったい、どこまで頑張ればいいの?そう思うと苦しくなる」そうです。

ですから、「病気の人」「つらいさなかにいる人」に対しては、「頑張れ」よりも、希望がもてるメッセージを送るといいと思います。

たとえば、前出の麻酔科医のドクターに対しては、「先生、ゆっくり休んで、また一緒に手術をしましょう」「先生がオペをサポートしてくれるのを、患者さんも私たちも待っています」職場で一緒に働いている人、身近な人には、「また一緒にやろう」「待っているよ」というメッセージを添えて希望を贈ります。

脳梗塞で倒れた先生に対しては、「治ることを信じていますよ」「リハビリして動けるようになったら、一緒に軽い食事でもしましょう」といったメッセージを送りました。

ただの「お食事」と書くとかしこまった食事に思われて、ハードルが高くなります。「食事会なんて、いつ行けるんだろう」って逆にへこんでしまう可能性もあります。あえて、「軽く」とつけると、相手の気持ちも「軽く」なります。

そのほかにも、「焦ることないよ」「コツコツ、継続ですよ」「希望に向かって進んでいこう」「今の体験を将来、力に変えよう」など、相手を勇気づける言葉、希望をもたせる言葉、焦らせない言葉を、普段から集めておくと、相手の状況に合わせてすぐに「希望」を贈ることができます。

相手の気持ちに寄り添う善意の気持ちで勇気づけようと思って、つい使ってしまうものの、実は相手を傷つけてしまう言葉もあります。

たとえば、次のような言葉です。

「こんなに休んで大丈夫?」「早く復帰してくださいね!」「世の中はどんどん前に進んでいくから、早く戻ってきてね」こうした「焦らせる言葉」はプレッシャーになり、心の負担になるため、「あなたの魅力があれば、いつ復帰したって、必ず周りは必要としてくれるよ」「ゆっくり休んだらいいよ」「周りは早く治せというかもしれない。

病気になった人じゃないとわからない。すぐにはなかなか動けないものだから、焦らないでね」という言葉に置き換えましょう。

ポイントは「相手に寄り添う」ことです。「寄り添う」というのは、相手に強い気持ちを押しつけるのではなく、「相手と同調する立ち位置を取る」ことです。

先日、ある友人から、「お母さんが、急に脳梗塞で倒れて、危ない状態なんです。先生、力をお貸しください」というメールが届きました。

「とにかく信じることだよ。あなたとあなたのお母さんの意識は必ず通じているから」と言葉を贈りました。

友人のお母さんは、お医者さんには「もう助からない」と言われながら、今はもう退院して、どんどんよくなっています。

後日、その友人からこんなメールが届きました。

「苦しいときに応援してくださって、ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」短い言葉でも、相手が恩に思うほど、勇気づけることができます。

相手を思って言葉がけをすることが、落ち込んでいる人、病気の人には、最大の気づかいになるのです。

「ぴかぴかトイレ」は一流の気づかいの証

一流の気づかいをしていると感じるのは、「いつ入ってもトイレがきれいな状態」の店やホテルです。

便座や便器はもちろんのこと、洗面台や鏡がいつもきれいに磨きあげられていて、水しぶきもついていない。

ダストボックスも空か、空に近い状態になっている。

手を拭くペーパータオルや布のタオルが過不足なく置いてある。

そういう店やホテルは、一流のサービスを提供しています。

では、逆はどうか。

一流と言われる店やホテルであれば、トイレがいつもきれいな状態に保たれているかといえば、残念ながら、そうとは限りません。

世間では一流と言われているのに、トイレのダストボックスがあふれんばかりになっている。

洗面台に立つと、鏡が水しぶきで濡れている。

そういうお店は意外と多いのです。

私はそういうトイレを目撃するたびに、「働いている人の『おもてなし』への意識が統一されていない」「社内教育が行き届いていない」と思わずにはいられません。

レストランやホテルなどのサービス業に限らず、会社であっても、お客様が使うことがあるトイレなら、「いつ入ってもきれいな状態」を維持するのが基本です。

清潔にしているトイレは、使う人が気持ちいいからです。

特に新型コロナウイルスの感染拡大が起きて以降、より多くの人が衛生面には気をくばるようになりました。

感染対策と気づかい、この2つの面からより徹底したトイレの衛生管理と美化が求められています。

誰も見ていないところでこそ気づかうオフィスでも自宅でも、自分がトイレを使ったあとは、次に使う人のために、きれいにしておく気づかいが大切です。

誰も見ていないところで、次の人のことを考えて気づかいをする。

これが自然とできるようになれば、「相手の立場に立って考える」ことが習慣化されて、ビジネスの場面でも相手本位の気づかいができるようになります。

そもそも、一流の人はトイレ掃除をとても大切にしています。

お笑いタレントで映画監督のビートたけしさんが、居酒屋であろうと、公衆トイレであろうと、自分の入ったトイレの掃除をし続けているのは有名な話です。

自身で「自分の成功の秘訣はトイレ掃除をしているから」と公言もしています。

ビジネスの世界でも、パナソニックの創業者、松下幸之助さんは「便所はみんなが使う、自分たちのものである。

それを掃除するのに、何の理屈があるものか!」「たとえ仕事ができても、常識的なことや礼儀作法がわからないままでは、社員にとって松下ではたらく意義は薄い」と自社工場のトイレ掃除を率先して行い、社員に注意をしようと決心したそうです(パナソニックサイト内「企業情報」松下幸之助物語)。

イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんは、業績の悪い時期、「社員の心を穏やかにするためには、まず職場環境をきれいにすることが大事。

汚い環境の中で、彼らに『ちゃんとしろ』と言ったってできるわけがない」と自分から環境整備を開始。

その一番目がトイレ掃除だったと言います(「東洋経済オンライン」の記事より)。

自分が入ったあとにトイレをきれいにすることは、次の人への基本的な気づかいであり、社会人としての常識であり、心穏やかに仕事をすることにもつながるのです。

違うと思ったことはただ聞き、スルーしていい

「井上先生は、まちがっていますよ」かつて、一緒に仕事をしていたチームのメンバーの一人、Aさんから届いたメールの一文です。

詳細は忘れてしまいましたが、とにかく、きつい言葉がつづられたメールでした。私はこのメールに反論せず、スルーしました。

そのAさんが書いてきた内容に納得したからではありません。「いい仕事ができること」が最善のゴールです。Aさんは実力があります。

私は、「一緒にやれば、最善のゴールにたどり着ける」のであれば、コミュニケーションを取りづらい人でも、一緒にやればいいと考えます。

だから、仕事過程で、ひどいことを言われたとしてもまったく気になりません。返信はしましたが、相手からのきつい言葉には触れず、「いい結果を出しましょう。お願いします」と書いて送りました。

それで、いいんです。強いボールが来たら、受け止めて、そのボールを下に置く。ラリーはしない。それもコミュニケーションです。会話としては成り立っていませんが、コミュニケーションとしては成り立っています。

Aさんも、一時的な感情に任せて書いてしまったと気にしている部分もあると私は考えます。

そのことについて、触れられていなければ、「井上先生、気にされてなくて、よかった」とほっとする部分もあると思います。スルーすることも気づかいなんです。

私も人間ですから、人と会っていて、いらいらすることもあります。特に立場が違う人と話しているとき。経験の違いから、どうしても話がかみ合わないときがあります。

そのようなときは、次のように考えながら話を聞いて、自分が気づけていないことを考えます。

「この人の立場では、こんな視点で考えるんだ。この人の立場なら、自分はどんな風に考えるかな。経験の違いから学ぶことは多い。話がかみ合わないと、つい反論したくなるけど、おかげで学びが増えて、ありがたい」つまり、ベクトルを相手に向けて責めるのではなく、自分に向けるのです。

相手に反論したところで、わかり合うのは難しい。現実の中で変えられるのは、相手ではなくて自分です。職場でもプライベートでも、考え方のすれ違いはよくあると思います。

そのようなときには、「そういう考え方もあるのだ」と受け入れること。違いを受け入れるほど、自分の器は大きくなっていきます。

夫婦は干渉し合わない、細かいことに目を向けない

どんなに近い関係である夫婦も恋人も、それぞれに個性があり、別の人格をもっています。同じではないから、当然、違いがあります。

一緒に生きていくときに大切なのは、この違いを受け止めることです。「違いがあって当然」という前提を意識すると夫婦も恋人もうまくいきます。

逆に、価値観が似ているところがあったり、同じ発想をしたりするところを見つけたら、「一緒のところがあってラッキー」と捉える。

すると人生は楽になります。ある講演会でこんな質問を受けました。

「私はセミナーなどに参加して成長したいと考えていますが、主人はそのような場に行くことは無駄で遊びのようなこと、と言います。

どうしたらわかってもらえるでしょうか」たしかに、会社の研修の一環など、義務として参加する場合だと、セミナーと成長が結び付かないこともあります。

その方のご主人は、セミナーの効果が気になっているでしょう。

そのため、「セミナーに参加したら、実際、自分の何が成長したのかを伝えること」をアドバイスしました。セミナーに限らず、自分以外の人と物事の捉え方や価値観の違いがあるのは当然です。それを埋めるためには、相手の価値観にないこと(この場合は、「セミナーに参加して得られること」)を丁寧に伝えることが大切です。

夫婦は自分でできることは自分でやる家でトイレに入ったら、ホルダーにトイレットペーパーの芯だけ残っていた。家庭でよくあることです。そんなときに、奥さんに、「なんで、捨てておかないんだよ」と言う人が多いかもしれません。

すると、「忘れてたの。仕方ないじゃない!」と小さな言い合いになり、お互いの気持ちが波立ちます。そんなときは、「芯だけ残っていたから、捨てておいたよ」と言うのが正解です。

すると奥さんは、「ありがとう」と返してくれるでしょう。そうなれば、波立つことは何もありません。なぜ、「なんで捨てておかないんだよ」という言葉になるのか。

「ゴミは奥さんが捨てるもの」と頭から決めつけているからではないでしょうか。一緒に生活しているのですから、必ず奥さんが捨てなきゃいけない、これは夫がやらなければいけないと決めつけないほうが楽です。

「ちょっと散らかっている」「髪の毛が落ちている」「トイレットペーパーの芯が残っている」「ドアが開けっぱなし」など、生活上のこまごましたことは、気づいた人がやればいいんです。

文句をいう前に自分でやれば、すぐに済みます。

運命共同体である夫婦においては、「気づいたほうがやる」ことは、お互いへの気づかいであり、夫婦円満の秘訣ではないでしょうか。

負担にならない程度に状況を共有し合う

大切なパートナーだからといって、何もかも全部話すことが、必ずしもいいことではありません。相手を疑って深掘りして、「携帯の着信見せて」「LINE見せて」などということは避けたほうがいいです。

それは、相手の領域に土足で入っていくようなものだからです。パートナーだからこそ、お互いのプライバシーを損なわないようにして、個人を尊重し合う関係を心がけましょう。

「お互いの行動を知っておくべきだ」という考え方の人もいますが、何もかもお互いに報告し合う生活は窮屈だと私は感じます。

それよりも、お互いのやっていることを認め合い、信頼し合ったほうがうまくいきます。お互いの予定を共有するアプリが人気と聞きます。

便利なので使っている方が多いと思いますが、もし、そのアプリを使うと自由がなくなって窮屈だと思うのであれば、架空の予定を入れておけばいいのです。

仕事をしていると、相手が不快に思いそうな予定、誤解を生みそうなことが出てくる場合もあります。

何でもないのに、「これ、誰とどこで会うの?」と聞かれ、いちいち説明するのが面倒だと思うのなら、その予定はわざわざスケジュール共有のアプリに入れる必要はありません。

それがパートナーに対する気づかいです。

お互いが活動している場の文化を大切にするコミュニケーションに関して、パートナーが考えている文化と、自分が働く職場の文化が異なっていることはよくあることです。

たとえば、私の場合、イベントのあとの懇親会に参加したときに、ファンの女性と一緒に写真を撮ることがあります。求められれば、握手もします。ファンの方はよろこんでくれます。

「写真を撮る」「握手する」は、ある意味、私の職場の文化です。

人によっては、結婚している男性が女性と写真を撮り、しかも、Facebookにアップしているとなると、「ちょっと怪しい」と勘繰る人もいるかもしれません。

だからといって、私が、「僕は結婚しているので、ほかの女性との写真は撮れません」とイベントの主催者に言うのは難しいです。

もし言ったとすれば、極端ですが、「あの講師は『写真撮影禁止』『握手禁止』だからやりにくい。参加者も満足度が低くなる。次回からは依頼するのを辞めよう」となる可能性もなくはない。

「講演の場」という文化の中での当たり前をやらないことで、仕事の幅を狭めることになりかねないのです。どんな仕事でも、それぞれの職場の文化があります。お互いを理解し、尊重することがパートナーとの絆をもっと深めるはずです。

パートナーには「帰りの時間」を伝えれば安心する

男女の関係の中で、女性が一番不安に思うのは、「帰る時間」です。特に出張中の夫に夜電話をかけても出ないとなると、女性にしてみれば、「誰と会って、何をしているのかな」と不安になります。

いろんな想像をして、自分を苦しめてしまいかねません。出張中は、「ホテルに帰ったら連絡するね」と伝えておいて、帰宅次第連絡を入れれば、安心してもらえます。帰宅の連絡は、短くても構いません。

「帰ってきたよ」とか、「今、戻ったけど、疲れたからもう寝るね」だけで十分気持ちが伝わりますし、安心してもらえます。

また、もし打ち合わせ中にLINEが来たら、「今、仕事中」と短いながらも、返信を入れることもパートナーへの気づかいです。

それぐらいの返信であれば、時間もかかりません。詳しく書かなくてもいいのです。自分の状況を伝えておくだけでお互いに安心できます。男女の間では、それがお互いへの気づかいではないでしょうか。

親には「兄弟、仲良くしているよ」と伝えるだけでいい

親の一番の望みは何でしょうか。父親は子どもの仕事が順調だとよろこびます。

母親は、子どもが元気で、兄弟姉妹が(いれば)仲良くしていること、家族をもっているなら家族が仲良くしていることをよろこびます。

「元気で仕事が順調」「家族仲が良い」のであれば、生きていく上で安心できるためでしょう。

親に会ったときや連絡を取ったときには、「仕事は順調だよ」「元気にしているよ」「兄弟仲良くしているよ」「家族円満だよ」と伝えるようにします。親への大切な気づかいです。

パナソニックの創業者で経営の神様と言われた松下幸之助さんは、海外の支社に行くと、現地で働く社員たちに対して、次のような質問をしました。

「家族は仲良くやっているか?周囲の人に貢献できているか?」返事が、「仲良くやっています。周りの人によろこんでもらうことができています」と返ってくれば、安心しました。

家族が仲良く、周囲に貢献できていれば、仕事は順調である、と考えたからです。いきなり仕事についての質問をすることはなかったそうです。

もちろん、うわべだけで、「元気にやっている」「家族仲良くやっている」と言うのではなく、実際に健康で、兄弟姉妹や家族が仲良く過ごしていることが、親への最大の気づかいになることは言うまでもありません。

「毎日」×「他愛のない会話」が親をよろこばせる親と離れて暮らしているのなら、できれば、毎日LINEでメッセージを送ってあげるのがおすすめです。

「親と話すことがない」「用事がない」という人がいますが、そんなに構える必要はありません。家族ですから、他愛のない会話でいいのです。

親とのコミュニケーションで大切なのは質よりも量(頻度)です。たとえば、「今日のできごと」は誰でも話せるテーマです。

親にLINEで、もしくは電話で、「今日、なにかあった?」と聞いてあげる。「別にないね」「私はおいしいお饅頭を食べたよ。今度買っていくね」「ありがとう」お互いの「今日のできごと」を聞いたり、話したりする。

それだけで、親はうれしいものです。時間はそれほどかかりません。数十秒から数分のことです。話が長くなりそうなら、「そろそろ寝るね」「そろそろ仕事に戻るね」と終わらせればいいのです。

子どもが自分に関心をもってくれていることが親のよろこびにつながります。

自分の身近な人をよろこばせることができれば、ビジネスでも人をよろこばせることができるようになります。まずは、自分の周りへの気づかいから始めましょう。

気づかい力は、「非生産的な時間」で磨かれる

知り合いの男性から、同棲中の恋人との関係についてこんな相談を受けました。

「昨日、彼女とケンカしました。その日のうちに仲直りをしたのですが、彼女の機嫌が今朝も悪いんです。話し合いをして解決策も出たのに彼女は何を怒っているのでしょうか……」彼の話をよく聞くと、彼女の話を聞き、自分の意見を出し、お互いが納得できる解決策を導き出していて、彼に落ち度はないように思いました。

しかしその一方で、彼女が求めているのは、「解決策」ではなさそうだと感じました。

彼女自身も言葉にできていない「何か」を彼が察することが問題の根本的な解決策だと思ったので、私は彼に、2つのことをアドバイスしました。

①ルールを決める

「ケンカをしても次の日はリセット」など、ルールを決めるとそれ以上考えなくていいのでラクな気持ちになれます。彼女が切り替えをしやすいように、ルールで環境を整えてあげることも気づかいです。

②海外のドラマや映画を見て女性の心理を勉強する

女性は、言葉で自分の意見を伝える前に「察してほしい」と思う傾向があるようです。しかし私たち男性は、察することが苦手な人のほうが多いのではないでしょうか。

とくに、海外のドラマや映画の登場人物がしているような、「女性の気持ちを先回りして気づかう、よろこばせる」ことに高いハードルを感じがちです。

しかし、女性が「察してほしい」と思う価値観がわかれば、行動に移すことができます。

そのヒントとして、普段、日本人男性がしないような方法で女性と接している海外ドラマや映画から学び取ることをすすめました。

「自分の価値観」だけではできない気づかいもある恋人同士に限らず、相手の価値観が自分とまったく違うものだったら、相手の求めていることを捉えられず、気づかいが伝わらないこともあります。

気づかいの幅を広げるためには、いろんな経験や学びを得て、自分の価値観を広げることが大切です。日々仕事に追われていると、効率や生産性ばかりを重視しがちですが、生産的な時間はビジネスにしかつながりません。

自分の価値観を広げるためには、「非生産的な時間」を過ごしてみてください。非生産的な時間には、自分でしか感じられない体験や学びがあります。

たとえば、何も考えず、気が向くままに街を散歩する休日があるとします。

普段の仕事では接することのない人を街で見かけて、知らなかったカルチャーに触れたり、暖かい日差しと爽やかな風を全身に感じて穏やかな気持ちになったりなど、何もしなくても仕事にはない「学び」や「体験」が得られます。

このような非生産的な時間からの学びや体験は、自身の価値観を広げ、人としての豊かさを耕してくれます。これは、ビジネスではなかなか得られない「人間としての学び」だと私は考えています。

気づかいをするのも、されるのも「人」です。

人間の学びが広く深い分だけ、相手の気持ちを考えたり想像したりすることができるようになり、気づかいの幅もレベルも上がっていくのだと思います。

おわりに

気づかいには、人生を変える力がある人生でチャンスをつかむために、「育ち」や「学歴」は関係ありません。必要なのは、人に自分を好きになってもらうこと、「応援したい」と思ってもらえる人になること。

それだけだと思います。そのために必要なのが、「ちょっとした気づかい」です。

繰り返しになりますが、気づかいとは、「何かを受け取ったら感謝をする」「相手の記念日に贈り物をする」「相手がよろこぶことを行動で示す」ことなどです。

誰にでもできるかんたんなことですが、これが人生を変えていきます。しかし、こうした気づかいをほとんどの人がしていません。

今は、「ビジネスで贈り物をするのはタブー」のような風潮もあります。私は、常々、「人と違うことをする」ことの大切さを伝えています。

人と違うことをして、自分にしかできない価値を生み出すことで人生が変わっていくからです。どんどん気づかいをしてください。できれば、質を高くしていきましょう。

高価じゃなくていいので、心のこもった贈り物をしましょう。給料が安いのなら、安いなりにやりくりして、気づかいをする方法を見つけてください。

うまくやりくりできた人が人生のチャンスをつかんでいきます。

自分の人生を振り返ったときに、今の仕事があり、他の人がなかなかできない業績を上げることができるようになってきたのは、多くの、そして、大きなチャンスをいろんな人からいただいたからだと思います。

そして、チャンスをもらえたのは、気づかいをしてきたからです。「私の人生を変えてきたのは、相手を思いやる気づかいだけ」こういっても過言ではありません。

気づかいに能力や才能は関係ありません。ただ、あなたの中にある「人に対するやさしさや思いやり」をもっと表に出してみてください。そうすれば、誰でも自然と「気づかい上手」になれます。

本書に記した、私の人生の「気づかい」の経験が読者の方に伝わることで、みなさんの人生が変わってくれたらこれ以上のよろこびはありません。

これまでの経験を通して、気づかいには人生を変える力があると実感したからこそ、本書が生まれました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2020年12月井上裕之

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