三章●お礼から訪問先での振る舞い・NGワードまで──きちんとした人と感心される「気配り上手」な言葉づかい
品のいいお礼の言い方●状況に応じてしっかり使い分けたい品よくお礼を言うには、まずはタイミングが大切です。何かをしていただいたらすぐに言うこと。これが鉄則です。何か気のきいたことを言おうとあれこれ考えたあげくに、お礼のタイミングを逃しては、あとでどんなに立派なお礼を言っても、あとの祭り。その場で「ありがとうございます」と感謝の気持ちを表すことが、何より大事です。「ありがとう」は、漢字だと「有り難う」と書きます。「有り難い」というのは、まれであること、まれに見ること、そのようにあることは非常に難しい、という意味。「ありがとう」は、そういう状態に対してお礼を述べる言葉なのです。ですから、その気持ちを込めて言いましょう。もっと丁寧にお礼を言いたいときは、「お礼の申し上げようもございません」「まことにありがとう存じます」と言うとよいでしょう。力を貸してくれたおかげで助かった、といった場合は、「一方ならずお力添えをいただきまして、ありがとうございました」「ご尽力をいただき、ありがとうございました」と、相手の援助を強調してお礼を言うといいでしょう。また、相手に大変面倒をかけてしまったというときは、一般的な「ありがとうございます」よりも、「ご面倒をおかけいたしまして、恐縮に存じます」と言い換えたほうがふさわしく、品を感じさせます。この言い方は、「お手数をかけまして、恐れ入ります」「お手をわずらわせてしまいまして、恐縮でございます」「お手間をとらせてしまいまして、恐縮でございます」「ご足労をいただきまして、恐れ入ります」などのバリエーションがあります。「お手数をかける」「お手をわずらわせる」は、文字どおり手をわずらわせて何かをしていただいたとき。「お手間をとらせる」は時間がかかったとき。「ご足労」は、わざわざ来てくださったときに使います。さらに後日、そうした相手に会ったときには、「その節はお世話になりました」と、あらためてあいさつをすることも忘れてはいけません。
頂き物をしたときは●「けっこうなお品」と言うと無作法な場合もいただきものをしたときは、当然お礼を言いますが、このとき、「ありがとうございます」だけでなく、「喜んで頂戴いたします」「遠慮なくいただきます」と、喜びの気持ちを素直に表せば、相手も気持ちがいいものです。ただし、このとき、「ご遠慮なくいただきます」と、「遠慮」に「ご」をつけて使う人がいますが、この場合、「遠慮ない」のは自分なのですから、「ご」をつけてはダメ。「ご」は、くださる人が「ご遠慮なくどうぞ」と言うときにつけるものです。もっとも、無理をして儀礼的な言い回しにこだわると堅苦しすぎる印象になり、素直に喜んでいる気持ちが届きにくいもの。親しい相手なら、「わあ、うれしい。ありがとうございます。開けていいかしら」と、その場でプレゼントを開け、女性なら「ステキ!」、男性なら「いいですねえ!」などと感嘆符つきの言葉で感想を言ってから、あらためて感謝の言葉を言うのもいいでしょう。あまり親しくない相手や目上の方からいただいた場合は、「過分なお志をいただきまして、お礼申し上げます」「お心づかいの品、うれしゅうございます」と言うと品があります。「志」は「厚意、親切、贈り物」などの意味。「お心づかい」という表現も覚えておくと重宝します。「けっこうなお品」「けっこうなもの」という表現もよく使う言い回しですが、たとえば、お金や商品券をいただいた場合は適切ではありません。そのようなときにも「お志(心づかい)をいただきまして」というように使うと、品があります。また、お歳暮やお中元などを送っていただき、お礼を言う相手がその場にいないときには、届いてから三日以内にお礼状を出すのが礼儀。そして、電話で話したりお会いしたりする機会があったら、「先だっては、お気づかいいただきまして」と、言います。「この間はありがとうございました」と言うよりも心ばえのする言い方です。
さりげなく人を誘うには●こんな誘い方なら相手も負担にならない人を上手に誘うのは、意外に難しいものです。たとえば、「来週の土曜日ってスケジュール空いている?」と聞いてくる人がいます。いきなりのことなので、思わず正直に「とくに何も入っていないけれど……」と答えると、「じゃあ、その日、近所でフリーマーケットがあるんですって。一緒に行きましょうよ」。こうなると、いまさら「用事があるから」と断るわけにもいかず、行きたくないと思っても、なかなか断りづらいものです。用件も言わずにスケジュールを聞くだけでなく、「絶対気に入るはずだから、行きましょう」「あなたのイメージにぴったりのお店を見つけたから、行きましょう」などという誘い方も、言われたほうは負担になってしまいます。誘うほうは「絶対いい」と思っても、相手に喜ばれるとはかぎりません。それなのに、「絶対いい」とか「あなたのため」という言葉を使われると、好意を無にするようで、相手はおいそれと断ることができません。こうした誘い方は、好意の押し売り。自分の気持ちを優先するあまり、誘いではなく強制になってしまいます。それでなくても、「~しましょう」というのは、英語でいえば「let’sgo」。少し強制力をともなった誘い文句なので、丁寧なようでいて、言われたほうは逃げ場がないように感じてしまいがちです。そこでおすすめしたいのが、「もしよろしければ行きませんか?」という、都合を尋ねる形をとった誘い方です。英語でいうところの「ifyouplease」。「もしよろしければ~」と聞けば、都合がよくないこともあると想定している姿勢も表せて、答える側に選択の幅を与えることになります。これなら、相手も「YES」「NO」を気兼ねなく答えることができ、負担を感じずにすみます。もっとも、相手を気づかうあまり、遠慮がちなニュアンスを出しすぎると、相手も遠慮してしまい、今度は逆に、「YES」と言いにくくなるもの。この誘い文句は、さらっと言うのがポイントです。せっかく誘うのですから、ハッピーな雰囲気を漂わせたいですね。誘うときの状況や相手との関係に応じて言い方をうまく使い分け、誘われたほうが「喜んで」と言いたくなるようなうまい誘い方を工夫してください。
知人を家に招いたとき●この気づかいが相手の心をときほぐす「もしよろしければ、我が家に遊びにいらっしゃいませんか?」こんなふうにご招待した相手が家にいらしたとき、簡単に「いらっしゃいませ」とお迎えするのでは、誘い文句とつりあいがとれません。それに、「いらっしゃいませ」という言い方は、お店のようでもあります。こういう場合は、訪ねてくださった相手を歓迎する気持ちをこめて、「お待ちしておりました」と、ひと言加えてあいさつするといいでしょう。訪問に際して、お客さまは「招きに応じて訪ねたものの、迷惑だったのでは……」などと気をもんでいるもの。そうした相手に対して、本当によくおいでくださいましたね、という歓迎の意を言葉で伝えることは大事なことです。ただし、相手が約束の時間に遅れた場合は、相手の遅れを強調する形にならないように、「お待ちしておりました」は避けたほうがいいでしょう。「遠いところをよくおいでくださいました」「わざわざお越しくださいまして、ありがとうございます」こんな言葉を足すのも、出迎える側のマナーです。いずれにしても、招いたほうは招かれた相手が負担を感じないようにする心くばりが肝心なのです。ですから、たとえば雨が降っているなかの訪問の場合。「お濡れにはなりませんでしたか?大丈夫でいらっしゃいますか?」では失格です。たとえかなり濡れてしまっていても、そう聞かれたら、言われたほうは、「いいえ、ご心配なく。大丈夫です」と答えてしまうもの。こんなときは、「お濡れになりましたでしょう?よろしければ、これをお使いください」と乾いたタオルを渡せば、相手も負担を感じないですみます。ちょっとした言葉づかいの違いですが、言われた相手の印象はずいぶんと違うものです。
来客にくつろいでほしいとき●丁寧すぎると恐縮されることも…お客さまの気持ちを慮ることを何よりも大切にするということは、来客に楽に座るようにすすめるときも、同様です。「どうぞご遠慮なくおくつろぎくださいませ」「どうぞお楽に」なども品のある言い方なのですが、そう言っただけでは、お客さまがくつろいでくださるとはかぎりません。これだけでは、相手は「では失礼して遠慮なく」と、さっそく足をくずすのは難しいでしょう。座敷に通したお客さまに疲れない座り方をすすめるとき、正座をしているお客さまにリラックスしてもらいたいときは、「足をおくずしになってください」「足をお伸ばしになってください」「お平らに」と、さらに言葉を足してすすめるといいでしょう。このひと言で、相手も「それでは……」と気兼ねなく足をくずしやすくなります。また、座布団をすすめるなら、「どうぞお当てください」と言い、上着を脱ぐようにすすめるなら、「どうぞ上着をお脱ぎになって、お楽になさってください」と、具体的な言い方ですすめるといいでしょう。「足をおくずしになってください」とすすめる場合、もっと丁寧に言うなら「足」の代わりに「おみ足」という言葉を使って、「おみ足をおくずしになってくださいませ」という言い方をすることもできます。ただ、ひとつ注意したいのは、ここまで丁重な言い方をすると、かえって恐縮してかしこまってしまうお客さまもいるということ。かなり目上のお客さまに対しては、十分に敬意を表したふさわしい言い方ですが、むしろ使わないほうが配慮になるというケースもあります。いくつかの言い回しを紹介しましたが、その場にふさわしい言い方を選んで使うといいでしょう。
来客をもてなすとき●手料理、お酒、お茶の上手なすすめ方はおもてなしにあたっては、食事に招待した相手に、謙遜したつもりで「あり合わせですが」「何もございませんが」と言うのは失礼にあたります。「あり合わせですが」は、不意のお客さまに食事を出すときの言い方。また、「何もございませんが、どうぞ召し上がってください」というのは、比較的くだけた言い方でふさわしくありません。これでは、食事に招待しておきながら、そのもてなしの用意をしていなかったという意味になってしまうからです。手料理を謙遜して言う場合は、「お口に合いますかどうか」と、言うべきです。これなら、もてなす準備はいたしましたが、はたしてお口に合いますかどうか、という意味になります。食べ物をすすめる際には、このほか、「お口汚しですが」「お口ふさぎに」といった、かなりへりくだった言い方もあります。また、お酒をすすめるときには、「お酒は何がよろしいですか」と聞けば、日本酒かウイスキーかといったお酒の好みがわからない相手だけでなく、お酒を飲むかどうかがわからない相手にも品よく伝わりますし、飲まない人は「不調法でして」と断りやすくなります。お酒を飲む場合、かしこまった席で男性が相手にお酒をすすめるなら、「まずはご一献」という言い方が品格を感じさせます。また、盃やグラスが空いているのを見たら、「おひとつ、いかがですか?」と、声をかけるといいでしょう。ところで、お茶のもてなしの場合に、お茶うけのお菓子の用意がなく、お茶だけ出すときがあります。そんなときは、「空茶ですが」という断り文句を使います。また、お客さまが持参した手みやげを出すときは、「お持たせで恐縮ですが」という言い回しを覚えておくといいでしょう。
来客を送り出すとき●あなたの本性は〝最後の最後〟で表れる?!来客を送り出す際、とくにこちらから「来てほしい」と声をかけたときには、訪問を受けたことに対するあいさつをきちんとしなければなりません。「お呼び立ていたしまして申し訳ございませんでした」「遠いところをわざわざお運びくださって、ありがとうございました」と、訪ねてくださった方へ、労をねぎらう言葉で感謝の気持ちを表します。また、来客への一般的な見送りの言葉としては、「おかまいもいたしませんで……」「どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」などが、品のある言い方です。別れのあいさつというのは、それまでのもてなしの締めくくりであり、次に会うときへのつながりの言葉でもあります。気持ちのいい見送りの言い回しを心がけたいものです。ところで、あなたにはこんな失敗の経験はありませんか?お客さまを見送ったあと、いつもの習慣でついうっかり、ドアを閉めたとたんにガチャッと鍵をかけ、おまけに即座に玄関の電気を消してしまう人がたまにいるのです。せっかく気持ちよくお客さまを玄関先で送り出しても、それでは、お客さまは興ざめです。ついさっき、「ぜひまたいらっしゃってくださいね」と言ってくれたのに、玄関を出た直後に、背後でガチャッと鍵が閉まる音が冷たく響いたら、お客さまはどう思われるでしょうか。たとえ悪意はなく、うっかり出てしまった習慣だとしてもピシャリと締め出すような動きをされてしまったら、それまでのもてなしも、温かい別れの言葉も、すべてが偽りのようにお客さまには感じられてしまうはず。つい出てしまった無意識の習慣が、すべてを台無しにしてしまうこともあるのです。気をつけたいのは、言葉づかいだけではありません。その言葉に見合う行動がともなわなければ、せっかくの言葉も虚しくなってしまいます。お名残惜しい気持ちを味わう余韻を大切にしたいものです。
他家を訪問したとき●相手の気づかいに応える感謝の言葉は?ここまでは、訪問を受けた側の品のいい言葉づかいを紹介してきましたので、次は訪問する側の言葉づかいをお話ししていきましょう。まず、他家を訪問した際のあいさつは、「ごめんくださいませ」から始まります。「御免」は「免許、容赦」の尊敬語で、そこから転じて、訪問、辞去、謝罪などの丁寧なあいさつ語になったもの。そこで、「ごめんくださいませ」という言い方は、「こんにちは」のほかに、「さようなら」「失礼します」などを丁寧に言うときにも使います。活用の範囲が広いので、きっちり身につけて上手に使いこなしたい言葉です。続けて、「本日はお招きいただきまして、ありがとうございます」「お招きに預かりまして、うれしゅうございます」と、招かれたことへのお礼の言葉を口にしましょう。「お言葉に甘えて伺いました」と言えば、「遠慮なく伺いました」という意味と同様に使えます。「お言葉に甘えて」という言い方は、お茶や食事をすすめられたり、何かいただきものをしたりしたときにも、「お言葉に甘えていただきます」といった具合に使え、覚えておくと重宝します。さらに、もてなす側が来客に対してこまやかな心くばりをしていたように、訪問した側も訪ねた相手に対して、同じく心くばりをしなければなりません。たとえば、「どうぞおかまいなく。四時ごろには失礼いたしますので……」のように、帰る時間の目安を伝え、よけいな心配をさせないように配慮するのも、品のよさを感じさせるものです。
訪問先で手土産を渡すとき●「つまらないものですが…」とは言わないほうがいい?相手の家を訪ねるにあたっては、訪問先に心ばかりの手みやげを用意していくものですが、それを渡すときは、どんな言い方がいいのでしょうか。「つまらないものですが」という昔ながらの言い方はあまりにありきたりですし、最近では、つまらないものだと思うなら持ってこなければいいではないかと額面どおりに受け取る人もいます。できることなら、やはり、贈る相手と時と場合によって使い分けたいものです。たとえば、お菓子や果物を持参したときは、「お珍しくもございませんが、どうぞお子さま方へ」あるいは、先方の好みがわからない場合は、「お気に召していただけたらうれしいのですが……」などと、気づかいながら渡すといいでしょう。もっとも、冒頭に述べたように、「つまらないものですが」「おいしくもございませんが」などとへりくだるのは、卑下しているような印象を受ける人も多くなっています。そこで、正直に「とてもおいしいので、ぜひ召し上がっていただこうと思いまして……」という言い方で贈り物を渡すのもかまわないでしょう。ただ、この言い方は、謙譲の美徳を重んじる年長の方には通用しないかもしれません。そうした相手には、このような言葉は、押しつけがましいとか、独りよがりだと思われてしまうこともなきしもあらず、です。これが、手みやげを渡すときの言葉づかいに迷う理由でもあるのです。相手の年齢や価値観などによって、同じ言葉でも違った印象をもたれてしまうもの。いちばん望ましいのは、それを考慮して相手の感覚にマッチした言い方をすることですが、それがわからないから困るわけで、なかなか正解は見つけにくいようです。そういう意味では、言葉に迷ったら、「お気に召していただけたらうれしいのですが……」と、気づかいを示すのがいちばん無難かもしれません。
訪問先でごちそうになる場合●いただく前に、この奥ゆかしいひと言が大事伺ったお宅で食事をごちそうになる場合には、相手にかなりの手数をかけさせることになります。それをよく心得て、粗相のないよう言葉づかいにも気を配りたいものです。とくに、「食べる」という行為は、生きていくために必須の行為だけに、直接的な表現をしてしまうと、とても動物的な印象になってしまいます。ですから、言葉づかいはストレートな表現を避け、なおかつ尊敬語と謙譲語を間違わないように注意して敬語を上手に使わなければなりません。これまでに何度か出てきましたが、ここで「食べる」の敬語を復習しておきましょう。尊敬語は「召し上がる」「あがる」「お食べになる」。謙譲語は「いただく」「頂戴する」となります。「どうぞ召し上がってください」と、すすめられたら、「遠慮なく頂戴します」「お言葉に甘えて、いただきます」などの品のある言い方をすれば、きれいにまとめられます。ところで、もうひとつ、言い回しに細心の注意をしなければならない言葉があります。それは「トイレ」を借りるときの言葉です。たとえば、お手洗いを借りたいとき、「トイレはどこですか?」では、あまりにあからさまで、大人のたしなみがまったく感じられません。まず、「トイレ」ではなく「洗面所」と言います。しかも、よそさまの家では、「使う」のではなく、「借りる」という気持ちが必要です。「お借りする」というのも正しい謙譲語ですが、この場合は、「拝借する」を使うほうがいいでしょう。かなりかしこまった言い方ですが、このくらい礼儀正しくてちょうどいいのです。「洗面所を拝借したいのですが……」こんな言い方が、すんなり出てくるようなら合格です。このほか、「手を洗いたいのですが……」や、女性なら、「お化粧を直したいのですが……」も品のある言い回し。こうした婉曲な表現なら、奥ゆかしさがにじみます。
訪問先で「遠慮する」ときは●強く拒絶するような言い方は聞き苦しい他家を訪ねると、先方はあれこれと心をくだいてもてなしてくれます。「恐れ入ります」と恐縮しつつも、そうそう「遠慮なく」ご厚意に甘えているわけにもいきません。遠慮するときの品のいい言い方も、きちんと身につけておきましょう。「どうぞお気づかいなさらないでくださいませ」「どうぞおかまいなく」などが、先方の配慮を遠慮するときの基本の言葉です。また、簡単な用件で訪問したときや、食事に招かれたわけではないのに食事時間にかかってしまう場合には、引きとめられても、早めに引き揚げる気づかいを。「すぐに、おいとまいたしますので……」のようなひと言で、配慮の姿勢を示すといいでしょう。ちなみに、「おいとま」は、漢字で書くと「お暇」。「帰る」「別れる」などの意味で使う言葉です。「すぐに帰りますから」と言うよりも、はるかに品のいい言い方になります。さらに、食事をごちそうになった場合。次々とごちそうを並べていただいても食べきれません。「もう少しいかがですか?」とすすめられて遠慮するときは、「とてもおいしくて、もう十分いただきました」と言い、先方が用意をしてしまう前に、早めに遠慮するのもマナーです。こういうときに、「もう結構です」という言い方をしてしまうと、とてもぶっきらぼうな印象になり、「まずくて食べられない」と言っているように聞こえてしまうことがあります。「もう十分いただきました。ごちそうさまでした」なら、そんな心配は無用なはず。このように、「遠慮」というのは、感謝して恐縮している姿勢を示す場合だけでなく、婉曲に断りの姿勢を示したい場合にも使います。断る場合は、先方のご厚意に対してくれぐれも礼を失することがないよう、強く拒絶している印象にならない品のいい言い方を心がけることが大切です。なお、おみやげなどの配慮があったときには、「いつもいただくばかりで……。どうぞご放念くださいませ」と言うと奥ゆかしさがにじみます。「放念」とは、心にかけないという意味。こんな遠慮の仕方も品格があります
訪問先を辞去するとき●感謝の気持ちはこの気品ある言葉で表す他社や他家を訪ねた場合は、先方のほうから「そろそろお帰りください」と言うわけにはいきません。ですから、よほど親しい訪問先でないかぎり、長居は禁物。訪問する側が気をきかせて、話を切り上げるようにしなければなりません。そんなときには、「そろそろ失礼しませんと……」「そろそろ、おいとまいたします」という言い方で話を切り上げます。そして、相手が忙しい時間を都合してくださったことに対して、「お忙しいところ、時間を割いていただきまして、ありがとうございました」「お忙しいところ、お邪魔いたしました」などと、感謝やお詫びのあいさつをするといいでしょう。仕事の場合なら、次への手がかりをつくる言葉として、「またお目にかからせていただきます」「いずれまた、日をあらためてご相談させていただきます」と付け加えたり、具体的なアポイントメントの確認をすることになります。また、仕事にしろ、プライベートでの訪問にしろ、相手に会うことができて「うれしかった」「よかった」という気持ちを言葉にすることも忘れずに。「お目にかかることができまして、うれしゅうございました」「お会いできて、楽しゅうございました」と、きちんと品格を感じさせる言葉づかいをするようにしましょう。よそさまのお宅を訪ねたときは、ほかの家族にも、「おやかましゅうございました」と、あいさつをするほか、ごちそうになった場合には、そのお礼の言葉も忘れずに。他社や他家での帰り際のあいさつは、「ごめんくださいませ」が基本です。「さようなら」は目上の方には使えませんから、このように品よく締めくくってください。
友人の赤ちゃんをほめるとき●お祝いにふさわしい上品な言い回しとは友人に赤ちゃん誕生!出産祝いを手にお祝いに駆けつけたものの、どうほめたらいいのか困ってしまうことがあります。とっさにほめ言葉に迷ったら、「元気そうな赤ちゃん」という言い方をおすすめします。赤ちゃんの性別によっても、ほめ方は違います。男の赤ちゃんをほめる場合は、「お父さまに似て、男らしい顔立ちをしていらっしゃる」が、もっとも無難な言い方です。あるいは、「玉のような男の子」という言い方もあります。「玉」というのは、宝石、真珠のことで、そこから転じて、美しいといった意味に使います。男女の別なく用いられる言葉ですが、男の子に用いるのがより適切です。一方、女の赤ちゃんをほめるときは、「お人形さんみたいにかわいい」と、ことさらかわいらしさを強調するといいでしょう。また、「お母さまに似て、ほんとうに美人」と言えば、母子ともにほめることができます。ただし、母親に似ていることが必ずしも美貌を意味しないようなケースでは、「お母さまに似て、ほんとうにお優しそうな顔立ちをしていらっしゃる」のように、優しさをほめるようにするのもいい表現です。次に、友人夫婦がご両親と同居している場合。ご両親にとって、孫は子どもよりかわいいといいます。「初孫さまのお誕生、どんなにかお喜びでしょう」などと、友人だけでなく、ご両親にもおじいさま、おばあさまになった喜びをお祝いする言葉も忘れないようにしたいものです。また、嫁の立場である産婦の友人なら、「お母さまがついていらしたので、○○さんもさぞ心強く思われたことと思います」と、ひと言姑に言い添えるのも、嫁の立場を慮った気くばりになります。
病気見舞いに行ったときは●これが病人の気持ちに配慮した振る舞い方病気や怪我で入院している人を見舞う場合、なかには病気の姿を人に見られたくないと思う人もいますし、病状によってはお見舞いが迷惑になることもあります。お見舞いにあたっては、あらかじめ相手の家族に確認をとってから伺うようにする心づかいが大切。そのうえで、相手の気持ちを推し量って言葉づかいには十分配慮しなければなりません。まず、病室に入るときは、「お邪魔します」と声をかけます。相部屋の場合には、ほかの患者さんにも声をかけましょう。続けてお見舞いのあいさつとして、やはり具合を尋ねることになりますが、「突然のことで驚きました。おかげんはいかがですか」「具合はいかがですか」などと、体の具合をさらりと尋ねる程度にします。相手は不安に思っていたり、痛みに耐えていたりするのですから、しつこく病状を聞くのはご法度です。比較的軽い怪我での入院の場合は、元気な様子を見てホッとして、「このくらいの怪我ですんでよかったですね」などと言ってしまう人もいますが、人によって怪我の受け止め方は違います。怪我人に向かって、不用意な言い方は慎みましょう。病気に関する話題は、当然避けなければなりません。先方の病気についての知識が多少あったとしても、素人が生半可な知識でとやかく言わないことです。病気の話題にかぎらず、病人を不安にさせることは口にしてはいけません。花や本など、お見舞いの品を渡すときの言い方としては、「これは気散じにと思いまして、お持ちしました」と言うといいでしょう。「気散じ」というのは、「気晴らし」の意味です。とにかく、病気見舞いで大切なのは、だらだらと長居はしないこと。心のこもった励ましの言葉をかけ、「一日も早いご回復を祈っております。どうぞお大事になさってください」と、早めに失礼するのが配慮です。退室の際には、同室の患者さんにも会釈をし、家族へのねぎらいも忘れないようにしましょう。ただし、「大変ですね」などという言葉は、病人にプレッシャーを与えてしまうこともあるので、本人の前では言わない配慮も必要です。
目上の人を見舞うときは●「必要とされている」と思える言い回しを選ぶ見舞う相手が目上の人の場合には、格段の配慮が必要です。品のいい言葉づかいというのは、上品を気どるためのものではなく、気持ちをうまく伝えるために身につけるもの。こういう場面でこそ、相手を気づかう品のいい言葉づかいが役立ちます。相手の身になって、その場にふさわしい言葉を口にしたいものです。前項では、「具合はいかがですか」というお見舞いの文句を紹介しましたが、相手が目上の方なら、「具合」という言葉の代わりに、「ご気分」という言い方にしたほうがよりふさわしいでしょう。相手は病床にふせっている身。神経質になっていることもあり、「具合がよくないから入院しているのに、そんな言い方は無神経だ」と感じてしまう人もいるからです。「ご気分はいかがですか?」という配慮ある言い方を、お見舞いのあいさつの基本として覚えておくといいでしょう。また、励ましの言葉として、「これまで忙しすぎましたから、この際、のんびりとなさってください」「どうか焦らず養生なさってください」などと言う人がいますが、こういう言い方は、長くかかりそうな病人に対する常套句とはいえ、仕事熱心な相手には、励ますどころか落ち込ませることもありますから、要注意です。お見舞い相手が仕事関係の上司なら、「いまは治療に専念して、一日も早く復帰なさってください」「やはり部長がいらっしゃらないと……。一日も早い復帰をお待ちしております」というように、「早い復帰を待っている」ことを伝えるのが、いちばんの励まし。「必要とされている」「待たれている」という気持ちが闘病の支えにもなり、回復への意欲にもつながるものです。安心してもらうつもりだったとしても、「仕事のほうは何の心配もいりません。どうぞゆっくり休んでください」などと言うのは禁句。これでは、「あなたなんか必要ない」「あなたがいなくても困らない」という意味にとられてしまいます。相手が、言われたらうれしいと思う言葉を、慎重に選んで励ますのが配慮というものです。
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