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六章●上司への相談・反論からうまい切り返し方まで──職場で一目置かれる「スマート」な言葉づかい

六章●上司への相談・反論からうまい切り返し方まで──職場で一目置かれる「スマート」な言葉づかい

上司にアドバイスを求めるとき●いきなり話すから誤解が生じる仕事上で判断に迷うようなケースに遭遇したときは、「たぶん、こうすれば大丈夫だろう」などと自分勝手な答えを出すのはトラブルのもと。すぐ上司に相談するのがベストです。といっても、いきなり、こういう問題があってどうでこうで……と相談を始められても、上司は迷惑至極。上司に相談をもちかけるときは、まず、「お知恵を拝借したいのですが……」「相談に乗っていただきたいのですが……」などのように、節度をもって切り出しましょう。ただし、「課長なりのご意見で結構ですから」などという言い方はNG。これでは「課長なりに意見というものがあるだろう、あるなら言ってみてくれ」と言っているかのようにとられてしまいます。そんなときは、「課長のお考えをぜひお聞かせください」と言わなければいけません。敬語というものは、せっかく気をつけて使っても、使い方を間違ったり、こなれていない使い方をしたりすると、かえって失礼な言い方になって相手の気分を害してしまうことがあります。こんなに損な話はありません。また、相談の際、上司に状況を説明したあとで「いまの説明でおわかりになりましたでしょうか?」と尋ねるのは、やはり誤解が生じます。自分の説明で納得できたかどうか、謙虚に尋ねたつもりでも、相手によっては、「いまの説明でわかったか?」と理解不足を想定してものを言っているように解釈されてしまいます。そんなときは、「おわかりいただけたでしょうか?」と使えば、意図どおりに受け取ってもらえます。また、上司からアドバイスされたときは「わかりました」と言うより、「気がつきませんでした」と、指摘された事柄に同意するフレーズを使ったほうが謙虚な印象になります。いずれにしても、よい上司は、長年の経験に基づいた「知恵」をもっているもの。そのキャリアを尊重した言葉づかいを心がけましょう。

上司からほめられたときは●これが大人の品格漂う返し方二章で、お世辞やほめ言葉に対しては、恐縮した姿勢を示して「もったいないお言葉です」「そのようなお言葉をいただいては、こちらが恐縮いたします」という基本フレーズを使うという話をしました。ただし、これは、会社のかなり上の上司にほめられたような場合の話。日常のビジネスシーン、たとえば──直属の上司に会議のために用意した書類を出して、「よくできているね。キミにまかせておくと安心だよ」とほめられたときに使ったら、どうでしょうか。「そのようなお言葉をいただいては、こちらが恐縮いたします」──どうにもおおげさすぎますね。では、どう言えばよいでしょう?次の三つのうちから考えてみてください。(1)「ほめてもらって恐縮です」(2)「ほめていただいて恐縮です」(3)「おほめいただいて恐縮です」まず、(1)の「ほめてもらって」というのは、とても幼稚で×。大人の言い方としては、「ほめる」「もらう」をそれぞれ敬語にしなければなりません。また、ほめたのは上司の行為ですから、「ほめる」は「おほめ」とし、「もらう」は謙譲語の「いただく」にする。したがって、正解は(3)。「おほめいただいて恐縮です」と、品よく対応したいものです。さらにあらたまった言い方にするなら、「おほめにあずかりまして恐縮です」と言い、反対に、さらりと返したいときは、「恐れ入ります」「おほめにあずかりまして……」とだけ言うのも、けっして悪い印象は与えないものです。「これも課長のおかげです」という返し方もありますが、本心から言わないとお追従のように聞こえますので注意が必要。いずれにしても、ほめられたら、「いや~」と照れてモジモジせず、きちんとした言葉で謙遜の気持ちを表すこと。そのほうが大人の品格が漂うというものです。

上司に反論したいとき●相手の気分を害さずに意見できるフレーズとは相手への反論というのは言いにくいものです。とくに相手が上司の場合、なかには、部下から反論されること自体を嫌う上司も少なくありません。一般的には、反対意見を言うときは肯定的な表現で切り出し、相手の意見をひとまず認めてから自分の考えを話すようにするといいのですが、そんな気くばりをしても、結局は反論していると気分を害する上司もいます。そこでおすすめしたいのが、質問形式にする言い方です。まず上司の意見には、とりあえず「なるほど」と従い、そののちに、「二、三質問してよろしいですか?」と、反論を質問の形に変えて投げかけるのです。それを受けて、上司が「何か問題があるかな。言ってみたまえ」と言ってくれれば、「この点はこう考えればよろしいでしょうか。つまり……」と、さりげなく自分の意見を言うことができます。角を立てずに反論するポイントは〝質問〟にあり。品のいい言葉づかいを心がけ、ほんのちょっと言い回しを変えるだけで、相手はこちらの意見を受け入れやすくなるのです。上司の指示がよくわからないときや、要領を得ないときも、「~ということでよろしいのでしょうか?」のように、やはり質問形式をとるといいでしょう。このほか、「申し訳ありません。このポイントをもう一度教えてください」と、重ねて質問する言い方もあります。指示の内容がはっきりしない場合は、曖昧にしておかないでそのまま復唱して念を押すのが原則ですが、「~でよろしいのですね」といった言い方は生意気に聞こえる場合もあります。ときとして、確認しただけなのに、それを詰問のようなニュアンスで受け取る人もいますから、質問の形をとったほうが謙虚な印象になります。この「~ということでよろしいのでしょうか?」という言い方は、指示の確認を装った反論にも使えます。無用な摩擦を避けるためにも上手に使ってください。

上司の都合を聞くとき●「いま、いいですか?」では軽率すぎる上司に用件を伝えるときは、はじめに上司の都合を聞くのが大人の常識。たとえ緊急だと思える内容であっても、上司はもっと急を要する仕事の最中かもしれません。用件を切り出すにあたっては、その旨を断って、それから話に入ります。そんなとき、つい、「いま、いいですか?」と言ってしまいがちですが、これは軽すぎて、使っている人物まで軽い人間のように見えてしまいます。「いい」ではなく、「よろしい」という表現を使いましょう。さらに、「ですか」を「でしょうか」に換えて、「いま、よろしいでしょうか?」と言えば、目上の人に対するふさわしい言葉づかいになります。また、「いま、よろしゅうございますか?」とすれば、さらに丁寧で、品のよさを感じさせます。この「よろしい」は、都合を聞くときだけでなく、上司の判断を仰ぐときにも応用できます。たとえば「用意する資料はこれでいいですか?」と聞くときは、「これでよろしいでしょうか?」とする。基本的に、上司に対するときは、「いい」という言葉は「よろしい」に置き換えるといいでしょう。ところで、「いいですか?」以上に使ってはいけないフレーズがあります。それは、「いまお暇ですか?」「お暇なときで結構ですから」といった言い方。「暇」というのは、オンタイムの相手に向かって言う言葉ではありません。「いま、お忙しいでしょうか?」「お手すきになられた折にでも」「もし、お時間の空くことでもありましたら」など、忙しいことを前提にした言い回しに言い換えましょう。また、何か伝えたいことがあるときに、「お耳に入れておきたいことがあるのですが……」などと言う人がいますが、これはあまり使わないほうがいいでしょう。「お耳に入れる」は、「知らせる」「告げる」の謙譲語。使い方自体はけっして間違いではないのですが、耳寄りの情報を内々に知らせるというニュアンスがあるため、点数稼ぎのような響きがあります。「お耳に入れる」などとあえて使わなくても「ご報告したい話があるのですが……」という言い方で十分。このほうが、むしろ品があります。

廊下で上司を追い越すとき●上司を追い越すのは、やはり無作法?急ぎの用事ができて、会社から外出することに。急いで廊下を行くと、前を上司が歩いていました。ところが、何やら考え事でもしているらしく、とてもゆっくりと歩いています。急いでいるのに、困った!さて、こんな場面では、どんな対応がふさわしいと思いますか?上司を追い越しますか?それとも、上司を追い越すのは失礼だと考えて、我慢しますか?うーん、と考え込んだ方には、ひっかけ問題のようで申し訳ありませんが、じつはどちらでもかまいません。追い越しても失礼ではないのです。ただし、無言でさっと追い抜くのはタブー。「お先に失礼します」と、追い越しざまに、ひと言あいさつをして頭を下げます。追い越す、追い越さないということよりも、追い越す際に品のいいあいさつができるか否かが問題なのです。では、こんなケースはどうでしょう。自分と同じように上司も外出するらしい。しかも、行き先が同じで、どうせなら一緒に出かけたいというときは、何と言えばいいでしょうか。上司に対して「課長、一緒に行きましょう」では幼稚です。「課長、ご一緒しましょう」というのは、前者よりは丁寧ですが、これも、部下が上司に対して言う言葉としては不適当。これでは友人どうしなど、同格の相手に対する言い方です。こういうときには、「課長、お供させてください」と、声をかけるのが正解。「お供する」は「付き添う」の意。「ご一緒する」よりずっと丁寧で、品格があります。「ご一緒」というフレーズを使うなら、「ご一緒させていただいてよろしいですか?」とすれば、相手への敬意を上品に表せます。言葉づかいはこれで品のいい印象になりますが、相手にも都合があります。のこのこついていくと迷惑になることもありますから、状況判断を忘れずに。

上司より先に帰るとき●こんな挨拶なら快く送り出してもらえる同僚はさておき、目上の相手にはどう言うべきか悩むのが、退社時のあいさつ。まず、上司がまだ残っていて、自分のほうが先に帰るとき。この場合は、「お先に失礼いたします」でかまいません。しかし、日本人の場合、仕事は「キリのいいところまでやる」というのが美徳とされているところもあり、上司より先に帰りにくいという面があります。「お先に失礼いたします」でいいのだろうか?と、不安になってしまう人には、「今日は、お先に失礼いたします」という言い方をおすすめします。「今日は」をあえて付け加え、きっぱり宣言すれば、気持ちよく上司から「ご苦労さま」の声が返ってくるはずです。このあいさつは、「いつも」お先に失礼する人は使えませんが、そんなタイプは、もともと上司よりも先に帰るあいさつで、苦慮などしてはいないでしょう。「私はそろそろ失礼しようかと思うのですが、よろしいでしょうか?」より謙虚な姿勢を見せたいなら、こんな具合にお伺いを立てる言い方もあります。ただし、上司によっては、「ほかにご用がなければ失礼しますが、いいでしょうか?」と尋ねられたと解釈して、「あ、じゃあ申し訳ないが、帰る前にこれを頼むよ」と、返される危険がありますから、使う際にはご注意を。次に、上司が先に会社を出る場合。「ご苦労さま」「ご苦労さまでした」は目上の人が目下の労をねぎらうときの言葉なので、上司が部下に使うのはいいのですが、その逆は使えません。では、「お疲れさまでした」でいいかというと、これが諸説あり、やはり目上の相手には使えないという人もいます。ただ、最近はこの言い方が一般的になっていることもあり、それぞれの会社の風習に従うのが無難でしょう。

上司の誘いを受けるとき●感じのいい「YES」の言い方とは会社に勤めていれば、上司から誘いを受けることがあるでしょう。「○○君、今日空いているなら、ちょっとつきあわないか?」「いいですね。行きましょう」──最近では、こんなカジュアルなやりとりをよく耳にしますが、この返事はいささか友達感覚すぎて、あまり感心できる言い方ではありません。上司から誘われた場合、これを受ける丁寧で感じのよい答えとしては、「喜んでお供いたします」「ぜひ、ご一緒させてください」「では、お言葉に甘えて遠慮なく」などがあります。さらに丁重に言うなら、「喜んでご相伴させていただきます」といったものになります。もっとも、こうした表現は丁寧すぎて慇懃無礼だと感じる上司もいるかもしれませんので、相手に合わせて使うべきでしょう。しかし、本来の美しい言い回しを知っていることは、けっして悪いことではありません。目上の人からの誘いに応じる際の、品のいい言葉づかいとして覚えておくといいでしょう。また、別れ際にお礼を述べることはもちろんですが、翌日朝一番で顔を合わせたときにも、簡単でかまいませんからお礼を言うのがマナーです。「昨日はどうもありがとうございました。とても楽しかったです」「昨夜はごちそうさまでした」こんなひと言で、その日一日の仕事が円滑に進むものです。逆に、昼休みに同僚と外に食事に行く際、近くにいた上司を誘うような場面では、「課長も一緒にいかがですか?」と言いたいところです。よく「課長も一緒にどうですか?」と言う人がいますが、これはいかんせん、最近の風潮を考慮しても失礼です。また、敬意を表すつもりで「課長も一緒にまいりませんか?」と言うのは、「まいる」が謙譲語ですから誤り。どんなに親しい上司でも、こう言っては笑われてしまいます。こうした場合に都合を尋ねるフレーズとして、「いかが」という言葉をマスターしておきたいものです。

上司の誘いを断りたいとき●こんな心憎い言い回しなら角が立たない予定が重なって、上司からの誘いを受けられないこともあります。やむをえずに断るときは、「申し訳ございません。あいにくその日は塞がっておりまして……」「申し訳ございません。先約がありますので……」「ありがとうございます。ただ、その日はさしつかえがありまして……」のように、まず謝ることが大切です。しかし、最初から断ってしまうと角が立つこともあります。いくら予定が入っていたとしても、即座に「申し訳ありません」では、言われたほうはあまり気持ちがよくないもの。それを思うと、本当は断りたいのに「NO」と言えなくて……という人もいることでしょう。そんなケースでは、いったんは上司に同調したうえで、ワンクッション置いて断るという言い回しをすると角が立ちません。「お食事ですか?ご一緒させていただきます。あ、でも……申し訳ございません。今日は用事がありまして」と答えれば、相手に自分が拒否されたという印象を残しません。そして最後に、「次回はぜひ、お誘いください」と言い添えれば、その場の雰囲気を壊さずに、品よく誘いを断ることができます。ただ、これも、断りたいけれど先約は入っていないという場合は、なかなか言いにくい。それに、不本意ながら断りが続いてしまうと、今度はお呼びがかからなくなったりします。つかず離れずの社交の場では、それもよし、ですが、職場での人間関係を考えると、支障が出ることもありえます。そこで、次のようなフレーズも覚えておくといいでしょう。「一時間しか時間がないのですが、よろしいでしょうか?」「一時間だけでも参加してよろしいでしょうか?」こんな言い方なら、結果的に誘いを断ることになっても相手の機嫌をそこねずにすみますし、時間も拘束されません。

七章●かけ方・受け方から取り次ぎ、間違い電話の応答まで──好感を印象づける「電話の達人」の言葉づかい

品のいい電話のかけ方●ふだんより丁寧な言葉づかいで好印象電話というのは、受ける側にとっては何の断りもなく突然かかってくるもの。立て込んでいてタイミングが悪いときもありますから、相手が出たら、まずは、「いまお話ししても、おさしつかえありませんか?」と、相手の都合を確かめるのが電話をかけるときのマナーです。とはいえ、そうは聞かれても、親しい相手でないと、少々のバッドタイミングでは「いいえ」とは言いにくいもの。受話器の向こうから子どもの泣き声やドアのチャイムなどの音が聞こえ、都合が悪そうだと思ったら、「おかけ直ししましょうか?」と言う気配りが必要でしょう。一方、電話を受ける側のマナーとしては、すぐに電話に出られず何回もベルを鳴らさせてしまったら、「お待たせして申し訳ありません」と言いたいもの。こんなちょっとした心くばりが相手をなごませ、好印象を与えるのです。面と向かって直接会っている場合には、ごく自然に表情や物腰で丁寧さを表すことができますが、電話は声だけのやりとり。お互いの顔が見えないだけに、話し方にはくれぐれも注意しなければなりません。電話では、相手に丁重に接する気持ちを伝えるには、言葉づかいに気を配るしかないのです。そういう意味で、「わかりました」は「承知しました」、「いいでしょうか?」は「よろしゅうございますか?」というように、ふだんより一段階上の丁寧な言葉づかいを心がけることです。また、最後のあいさつをきちんとすることも大切。「では失礼いたします」このようなあいさつをして用件が終わったことを伝え、ひと呼吸置いてから切るようにすれば、話の途中で切られてしまうこともないでしょう。受話器を置く際も気をつけたいもの。それまで素晴らしい対応をしても、話が終わるなり「ガチャン!」と受話器を乱暴に置いては、丁寧な言葉づかいも帳消しです。とくに目上の人やお客さまに対する電話では、先方からかかってきた電話であっても、先に切るのは失礼。相手が受話器を置くのを確かめてから切りましょう。

電話の取り次ぎ・伝言の仕方●名乗らない相手や当人が不在のときは「木村課長はいるかね?」──ずいぶんと偉そうな口調で、上司あてに電話がかかってきました。まるで「わたしのことは名乗らんでもわかるだろう」と言いたげな口ぶりです。さて、あなたは次のどちらの対応をしますか?(1)名前を聞くのは失礼なので、聞かずに取り次ぐ(2)まず先方の名前を聞いて、それから取り次ぐ上司にとっても明らかに目上の人と推察される相手が名乗らず、しかも名前を聞くのもはばかられるような態度をとられると、一瞬躊躇しますが、やはり、失礼なのは自分の名前を言わない相手。相手がだれであろうと、電話を取り次ぐ際には、きちんと相手の名前を聞くのがルールです。よって正解は(2)。「失礼ですが、お名前をいただいてよろしいですか?」「失礼ですが、お名前を頂戴できますか?」このように品のいい言葉づかいで尋ねれば、ちっとも失礼ではありません。その際には、できれば先に自分の名前を名乗るといいでしょう。こうして先方の名前を確認してから、上司に、「○○様とおっしゃる方からお電話です」と取り次ぎます。ただし、家族からの電話の場合は「奥様からです」と言わず、「課長、お電話です」とするほうがいいでしょう。会社での私用電話は慎むべきもの。とくに部課長クラスの年配の人は、家族からの電話を部下に知られるのを嫌がりますから、言わないほうが賢明です。ちなみに、電話での名指しの人が不在のときは、「あいにく木村は席をはずしております。わたくし、同じ部の○○と申しますが、わたくしでよろしければご用件を承りますが」と対応します。とはいえ、名指しした相手に直接用件を伝えたい場合もありますから、必ず「わたくしでよろしければ」のひと言が必要です。また、伝言を受けるのなら、相手が何者なのかわからないままでは失礼。まず自分の名前を名乗ったうえで、「ご用件を承りますが」とするべきです。

電話で相手を呼んでもらうとき●「○○さんお願いします」では、がさつすぎる「わたくし、○○と申しますが、○○様はいらっしゃいますか?」これが、電話で用事のある相手を呼んでもらうときの基本的な言い方です。自分は名乗らないで、いきなり「○○さんお願いします」とか、「○○さんいますか?」と切り出すのはNG。このくらいは社会人の常識でしょう。では、名乗ったあとに「○○様はおられますでしょうか?」という言い方をするのはどうでしょうか。電話でこの表現が使われているのをけっこう耳にしますが、じつはこれは間違い。「おる」は、「いる」「~している」の謙譲語。「おられます」というのは、それに「~られる」をつけて、無理やり尊敬語の形にしたもの。「あべこべ尊敬語」の恥ずかしい誤用例ですから、間違って使わないように気をつけましょう。次は、「○○様はいらっしゃいますか?」と電話口に呼んでもらった相手が、はじめて電話で話す人だった場合。先方は、知らない相手からの電話に「いったい何の電話だろう」と内心思っているはず。仕事の手を止めさせられ、しかも、どんな用件なのか見当もつかないまま面識のない相手に電話口まで呼ばれたわけですから、「突然お呼び立てして、まことに申し訳ありません」と、断りもなしに電話をかけたことについて、お詫びのあいさつをすることを忘れてはいけません。そして、まず用件を簡単に伝える。忙しい最中にかかってきたうえ、用件の趣旨がわからないまま話をされたのでは、先方はたまったものではありません。本題に入るときも、細かな話から入らないこと。相手としては、全体がどういう話かわからないうちに、いきなり細かい話を聞かされても戸惑ってしまいます。最初におおまかな内容を話す。これは、はじめての相手にかぎらず、どんな電話でもそうあるべきです。相手を呼び出した場合は、自分の都合で電話口に呼びつけたことになるのですから、つねにそれを念頭に置いて、相手の立場に立った丁寧な対応を心がけましょう。

電話した相手が不在のときは●こんな〝間違い〟を犯しやすいのでご注意電話した相手が不在のとき、相手の帰社時間を尋ねようとして、「何時ごろお帰りになられますでしょうか?」と言う人がいますが、これは×。これまで何度も出てきたように「お帰りになられる」は二重敬語で、過剰に敬語を重ねる間違った言い方。「お帰りになる」「帰られる」でいいのです。本章の冒頭で、電話では対面での会話以上に丁寧な言葉づかいを心がけなければならないと述べましたが、丁寧な言葉づかいと、過度にへりくだりすぎたり飾り立てたりする言い方とは、まったく別物。ここでもう一度、間違えやすい二重敬語に注意するよう思い出してください。正しくは、「何時ごろお帰りになりますでしょうか?」「社に戻られるのは何時ごろか、おわかりでしょうか?」「お戻りの時間をお聞かせいただけますか?」などと言います。かけた相手が不在のときは、「お電話をいただきたいのか」「こちらから電話をするのか」をはっきりさせておきます。ただし、相手が目上の場合や、こちらからの頼み事で電話をした場合には、自分からかけ直すのが礼儀です。こちらから再度、電話をする場合は、「では、またお電話をさせていただきます」と言い、今日中にもう一度電話するのか、翌日あらためてかけるのかを伝えておいたほうがいいでしょう。逆に、電話をしてほしいのなら、「お戻りになりましたら、△△社の○○までお電話をいただきたいのですが」と言います。なお、急用の場合は、「××の件で」と伝えるのもいいでしょう。用件がわかれば、その場で、ほかの人に代わって答えてもらえる場合もあります。伝言をお願いするなら、「おことづてをお願いしたいのですが……」「メモを残していただけますか?」などと、丁寧な言葉で頼みます。この際「恐れ入りますが」と最初につけると、より丁重な印象を演出できます。

〝OFF〟に電話をするとき●急ぎの用でも最初に非礼を詫びるべき上司が休暇で不在。しかし、突発的な問題が起こって、どうしても上司と連絡をとらなければならなくなったとします。最近は携帯電話がありますから、先方の家族の手を煩わせることは少なくなったとはいえ、携帯電話でも呼び出し音が鳴ればうるさいと感じますし、せっかくのくつろぎのひとときを邪魔してしまいます。だいいち、そもそもオフには電話を遠慮するべきなのですから、休暇中の上司に電話をかけるときは、どんなに急を要する連絡であっても、「お休みのところ、まことに恐れ入ります」と、非礼を詫びる言葉は必須です。ときには、携帯電話がつながらず、自宅の電話を鳴らすこともあります。そして、たまたま上司の家族が電話に出たとき、「突発的なトラブルが起きまして、課長にご相談があるのですが……」などと言う人がいます。失礼な電話をせざるをえなかった言い訳のつもりなのでしょうが、これでは上司の家族をいたずらに不安がらせるだけ。上司にもかえって迷惑がかかります。家族には丁重に非礼をお詫びするあいさつをして、早々に取り次ぎをお願いしましょう。また、朝早い時間や夜遅い時間に電話をかけなければならなくなった場合も、「早朝から失礼いたします」「夜分恐れ入ります」という、失礼を詫びるあいさつを忘れてはいけません。しごく当たり前のように思うかもしれませんが、緊急の連絡の際には、慌てていきなり用件から切り出してしまいがち。そうならないよう、ふだんから、このような心づかいを身につけておきたいものです。ちなみに、お詫びをしさえすれば、夜に仕事の電話をしてもいいというわけではありません。夜なら在宅率が高くてつかまえやすいから、という自分の都合だけで夜に仕事の電話をするのは、とんでもない心得違い。プライベートなオフの時間には、気軽に仕事の電話はしないよう心得ておきましょう。

間違い電話の上品な対応法●「違います!」と無作法に電話を切っていませんか?かかってきた電話が間違い電話だった。こんなとき、いくら相手のミスだとはいえ、「違いますよ!」と冷たく言い放って、「ガチャン!」では、相手も不快に思うもの。こんな対応はいただけません。「失礼ですが、何番におかけですか?」と断ってから、相手のかけた番号を確認するようにしたいものです。番号違いなら、「電話番号が違うようですね。わたくしどもは○○番です」番号が同じだったら、「わたくしどもも○○番ですが、もう一度ご確認願えますか?」と、品のいいやわらかい受け答えをしましょう。このように丁寧に確認すれば、そのあと続けて間違い電話がかかってくることもありません。一方、自分が間違い電話をしてしまったときは、どうすればいいでしょうか。相手が違うとわかって、「しまった!」と慌てて切ったりしていませんか?だれがかけたか先方にはわからないとはいえ、こんなに失礼なことはありません。ミスをしたときこそ、人柄が出るもの。「失礼いたしました」と、自分の非を丁重に詫び、謝罪の気持ちをきちんと伝える心くばりが大切です。さらに、はじめての相手に電話をして、間違ってしまった場合は、「そちらさまは○○番ではありませんか?」と、念のため、自分のかけたつもりの電話番号を告げて確認しておくといいでしょう。たんに番号の押し間違いかもしれませんが、もしかしたら、控えてある番号そのものが間違っている可能性もあります。同じ相手に再び間違い電話をして迷惑をかけないためにも、確認を怠らないことです。また、間違い電話とはかぎりませんが、電話の声が聞きとれないときは、「恐れ入ります。お電話が遠いようですので、もう一度お願いいたします」が、品のある決まり文句。「声が小さくて」「聞こえないんですけど」などという言い方は無作法。電話は顔の見えないコミュニケーションであることを、ゆめゆめお忘れなく。

八章●贈り物のお礼からお祝い、不快感の伝え方まで──〝こころ〟がしっかり伝わる「手紙ならでは」の言葉づかい

感謝の手紙を書くとき●頂き物なら具体的に感想を入れる最近は、電話やメールですましてしまう人が増えていますが、感謝の意を丁重に表すには、やはり手紙がベスト。簡単な文面でいいので、お世話になったときや贈り物をいただいたときは、その日のうちに感謝の手紙を出したいものです。このとき注意したいのは、ただ漠然と「ありがとうございます」としないこと。このような書き方では、たんに儀礼的に体裁をつくろっているだけの印象になってしまいます。ありがたく思っている点に具体的に触れて、感謝の気持ちを表現しましょう。たとえば、上司や目上の人から何かしてもらった場合には、恐縮の意味をこめて、「お忙しいなかを……」と、相手の労を感謝する配慮の言葉を添える。贈り物のお礼状なら、「さっそく愛用させていただきます」などという言葉とともに、いただいたものに対しての具体的な感想を入れる。こんなちょっとした心くばりで、先方に心からの謝意が伝わりやすいものです。また、お祝いに対するお礼状では、「おかげさまで」のひと言を忘れないこと。祝い事でその喜びを表現するのはいいのですが、そうした幸せがすべて自分の力だけでできたと思うのは傲慢なこと。相手や周囲の人々の力添えのおかげなのですから、その気持ちを謙虚に言葉で伝えましょう。より丁寧に書こうとして、「おかげさまをもちまして」とする人がいますが、これは間違い。「おかげをもつ」などという言い方はありえないことからもわかるように、「おかげさま」でひとつの決まり文句。そもそも、「あなたのおかげ」と謝意を含んでいるのですから、これだけで相手を立てる気持ちは十分表せます。また、得がたい喜びを伝えるフレーズとして、「痛み入ります」や、励ましの手紙や言葉に対するお礼のフレーズとして、「心に沁みました」という言葉も、品格を感じさせる謝意の言葉ですから覚えておきましょう。

依頼の手紙を書くとき●丁寧なつもりで不遜な表現をしているかも…「助けてほしい」「協力してください」とお願いする手紙で、〝勘違い敬語〟を使うようでは困りもの。使い方を間違えると、謙虚なつもりがはからずも不遜な表現になってしまうことがありますから、細心の注意をはらいましょう。たとえば、「力を貸してください」という依頼を、敬意をこめて表現するなら、「お力添えくださいますか」「お力をお借りできますか」であって、「お力になってくださいますか」は間違い。これも正しいように思うかもしれませんが、「力になる」というのは、自分が相手に助力する意。「わたしでよろしければお力になりましょうか」などと使い、自分が力を貸すときの謙譲表現です。いくら「お」をつけても、相手からの助けが欲しいときには使えません。いずれにしても、人にものを頼むということは、多かれ少なかれ相手に負担をかけることになるものです。「~していただけるとありがたいのですが」「ご配慮いただけないでしょうか」「ご一考いただければ幸いです」というように、相手の都合に配慮して、ストレートに依頼せずワンクッション置くことで、控えめな姿勢を表現することです。また、どうしても聞き届けてもらいたい場合、「思案に暮れております」と、思い惑う様子を率直に表現したり、「ご無理を承知でお願いするのですが」「身勝手なお願いとは重々存じながら」「身が縮む思いですが」「なにとぞ事情をおくみとりいただきたく」などと拝み倒したり、表現にもいろいろありますが、依頼の手紙を書く場合の心構えとして大切なことは、依頼される人の立場になって書くということです。承諾してもらいたいばかりに、突然の手紙で長々と事情を説明されても、相手は迷惑です。手紙一通ですまないようなたいそうな依頼は、手紙では腰を低くして都合や意向を問い、くわしくは後日あらためてお願いするようにしたいものです。

贈答品に手紙を添えるなら●この配慮ある添え書きがあなたの株を上げる最近では、お店から直接配送してもらうことがほとんどですが、そもそも贈答品というのは、お世話になったお礼やお祝いで贈るもの。そうした本来の意味を考えると、品物を送るだけでなく、一筆したためるのがマナーです。贈られたほうも、手紙が添えられていると真心を感じてうれしいもの。お店でメッセージカードを用意しているところもありますから、それを利用したり、品物に手紙を添えられない場合には、別便で送り状を出すようにするといいでしょう。贈答品に添える手紙にしろ、別便での送り状にしろ、ポイントは、受け取った相手が「こんなものをもらっていいのだろうか」と不安になったりせず、気楽に受け取ることができるような書き方を心がけることです。そういう意味では、贈り物をする理由をはっきり述べたほうが、相手も安心して受け取ることができます。といっても、難しいことではありません。お礼の品なら、きちんと謝意を伝える。お祝いの品なら、お祝いの言葉を添える。それで贈る理由を説明することになるのです。また、以前は、「つまらないものですが」「粗末なものですが」などと表現するのが奥ゆかしいとされていましたが、いまはこういった卑下した表現を使わないほうが、かえって品があるようです。「心ばかりのものですが、どうぞお納めくださいませ」このフレーズなら、謙遜しすぎということもありませんし、自然で好感をもたれるはずです。「心ばかりのものですが」の代わりに、「かたちばかりではございますが」「ほんの気持ちではございますが」も、奥ゆかしい表現です。また、「どうぞご笑納くださいませ」とする表現もあります。これは「つまらぬものですが、笑って受け取ってください」という意味になります。これらはいずれも品のいい常套句ですので、大人の表現として、ぜひ覚えておきたいフレーズです。

不快感、怒りを伝える手紙を書くとき●ストレートに感情をぶつけるのはいかにも軽率こんな手紙はできるなら書かないですませたいものですが、ときには、不快感や怒りを先方に伝えなければならない場合があります。そんなとき、感情的になって居丈高な調子で書くのは禁物。それでは、かえって問題をこじらせてしまいます。このようなときにこそ、品のある言葉づかいを心がけましょう。たとえば、相手の発言や行為に対して不快感を表明するのに「不愉快です」とストレートに書くのは、いささか子どもっぽく響きます。そんな感情的な表現は避けて、疑いや迷いなどが晴れず、気持ちがはっきりとしないさまを表す、「釈然としません」や、どうしたらよいか判断できずに困る様子を表す、「困惑しています」といったクールな言い回しをします。また、「怒っています」という感情の吐露も避けたほうがいいでしょう。感情的になっている、と受け取られるような言葉づかいはやめて、「憤懣やるかたありません」「残念です」など、不愉快さや怒りなどで、気持ちの整理がつかない状態を描写するような表現を心がけるといいでしょう。こうした手紙は、相手に喧嘩を売るためのものではありません。こちらのこうむっている迷惑に対し、状況を説明し、善処を望むのがいちばんの目的のはず。こちらの受けている迷惑について、相手にはっきり伝えることは必要ですが、心情を率直に伝えたあとには、「右の事情をご賢察くださいまして」とするなど、冷静に品格のある文面を心がけましょう。どんなに腹が立つことでも、感情にまかせて相手をなじるような書き方はタブーです。

今後もつきあいの継続をお願いするとき●社交辞令とは感じさせない気のきいた表現とはお世話になった方に、お礼かたがた、「今後も引き続きよろしくお願いいたします」とするのは、これからもおつきあいを続けたいときによく使うフレーズです。もちろん、これで間違いではありませんが、この文句は、その曖昧さゆえにあたりさわりのないあいさつ程度に使われることも多いため、ただの社交辞令のようにとられかねません。本当に今後のおつきあいをお願いしたいなら、品格を保ちながらも、その気持ちが伝わるような具体的な表現を心がけることです。たとえば、どこかへ一緒に遊びにいったなど、楽しい時間を過ごした相手へは、「次の機会が楽しみです」と書けば、次回への期待を率直に伝えることで、心から楽しかったことが表現できます。プライベートなイベントなどで同席した相手には、「これに懲りずに、またよろしくお願いいたします」と言い、相手の好意に素直に甘えたいときには、「また面倒を見てやってください」などと、今後をお願いするのもいいでしょう。ただし、「これに懲りずに」というのは、明らかに面倒をかけた相手に使ってはいけません。「面倒を見る」も、相手の手を煩わせたと率直に述べることによって、たんなる儀礼的な表現以上の誠意がこもって感じられる反面、相手の負担が大きい事柄について使うと不遜な印象になってしまいます。一方、「またご一緒しましょう」「そのうちまたご一緒できるといいですね」というのは、社交の常套句。あまり会う機会はない相手に、今後のつきあいを漠然とお願いしておこうというときに使います。誘ってほしいという気持ちを伝えたいなら、「お誘いください」というダイレクトな言葉でも失礼にはあたりません。もっとも、このフレーズは姿勢こそ受け身ですが、あくまでも誘い文句。同輩以上の人に誘ってほしいときは、「ぜひお声をかけてください」とします。ただし、こう書いた以上、実際に誘ってもらったときに安易に断るのは、失礼になるということをお忘れなく。

手紙で相手の気づかいを遠慮するとき●先方の負担をなくすこれが魔法のフレーズ先方から知らせを受けたり、友人からお祝い事を耳にしたら、時機を失しないよう、お祝いの品を贈ったり、お祝い状を送ったりして、先方の慶事を一緒になって喜びたいもの。しかし、その配慮が先方の負担になっては意味がありません。とくに、栄転したり、家を建てたり、新たに事業を始めたりと、先方が新しい環境で立て込んでいることが予想されるようなときには、よけいな気づかいはさせたくありません。そんな際に使いたいのが、「お気づかいは無用です」というフレーズ。相手によけいな気づかいをさせたり、気を回させたりしないということは、相手への何よりの心くばり。この言葉は、そういったときのための必須の表現として覚えておきましょう。もう少しやわらかく表現したいときは、「どうぞお気づかいなさらないでください」とするといいでしょう。また、「ください」を「くださいませ」に換えれば、より丁寧な言い回しになります。目上の人に対して、あらたまった表現をしたいなら、「どうぞご放念くださいませ」とすれば、品格を感じさせます。もちろん、逆に、こちらから祝い事をお知らせする際にも使えます。ただ、こうした言葉づかいは奥行きの深さを備えた表現なので、相手に対して丁重に遠慮するときにも使います。ですから、こちらの言葉を相手が「遠慮」と受け取ってしまう可能性もなきにしもあらずです。そんなさらなる気づかいを避けるためには、たとえば、「お引っ越し直後でお忙しいことと存じます」などと、先方の事情を察していることを伝えるひと言を付け加えるといいでしょう。だからお気づかいなさらないで、というこちらの気持ちが率直に伝わって、安心してもらえるはずです。

手紙で相手に注意をうながすときは●「ご注意願います」をさらに丁寧に言うと…相手に注意をうながす手紙には、こちらからのなかば強制的な要望から、相手の自由意思に訴える依頼まで、さまざまなニュアンスのものがあります。どれも実質的には、注意をうながすことを相手に要求するという点で同じなのですが、婉曲に表現する度合いによって、印象がずいぶん違うものになります。もちろん、強制的な要望といっても、「注意しろ!」と威圧的な態度をとるわけにはいきません。もし、手紙でそんな書き方をすれば、喧嘩を売っているのと同じことです。まず、一般的な丁寧な表現にしようとすれば、「ご注意願います」「ご留意願います」という具合になります。もう少し品のいい言葉づかいで書く場合は、「お気をつけください」「お気にとめておいてください」という表現に。よりやわらかく、親しみのこもった印象になります。このレベルの婉曲表現で、ある事情に対して気をくばって、具体的にフォローしてほしいときは、「ご配慮くださいませ」と言い、事情を考えてほしいと強調したければ、「ご考慮くださいませ」という言い回しをします。こうした注意をうながす表現の婉曲度をバージョンアップさせていくと、「ご配慮いただけないでしょうか」「ご配慮くださいますようお願いいたします」「ご配慮いただければ幸いです」「ご配慮いただければ幸甚に存じます」となり、じょじょに控えめに依頼しているニュアンスになるのがおわかりいただけると思います。どのニュアンスが適切なのかを考えて、上手に使い分けてください。

お詫びを伝える手紙の書き方●非礼の度合いに応じた品のいい表現とは明らかに自分側のミスだと思われるときは、とにかくすみやかにお詫びの手紙を出すこと。出すタイミングを逃すと、謝りにくくなってしまいます。自分に落ち度があると認めてお詫びをするからには、文面は謙虚で礼儀正しく、弁解はいっさいしないほうが賢明。下手な自己弁護は、かえって相手の気持ちを逆なでして、さらに気分を損ねさせる結果にしかなりません。礼儀に外れる度合いは、一般にひどいほうから「無礼(非礼)」→「失礼」→「失敬」となります。たとえば、自分の失態を丁重にお詫びするときは、「ご無礼をいたしまして、申し訳ございませんでした」と言います。失敗が重なったときなどは、「非礼の数々、お許しください」とすると、より深いお詫びの気持ちが表せます。自分の失敗を恥じ入る表現としては、「お恥ずかしい次第です」「面目ありません」といった比較的軽めのものから、「汗顔の至りです」「慙愧に堪えません」といった、そうとうに恥じているときに使う堅苦しい表現までありますから、ニュアンスに応じて使い分けるといいでしょう。「行き届きませんで、申し訳ございませんでした」「お気を悪くなさらないでください」は、実際に相手に失礼をしたかどうかや相手が気分を害したかどうかにかかわらず、ちょっとした行き違いなど、相手に不愉快な思いをさせかねないことがあった場合に社交辞令的に使うフレーズ。自分の過ちを恥じ、責めているような場合に使ってしまうと、誤解が生じるので気をつけなければいけません。その際は、「自責の念に堪えません」などという書き方にします。そして、今後はこのようなことがないようにしたい、という反省の言葉も忘れずに添えましょう。

面識のない相手に手紙を書くとき●受け取る人に配慮した上品な決まり文句とは見ず知らずの相手からいきなり手紙が届いたら、だれでも不審に思うもの。面識のない相手に手紙を書くときは、何よりもまず、こちらの身元をきちんと紹介しなければなりません。紹介者がいる場合には、「○○様にご紹介いただきました」と、その方の名前をフルネームで書きます。所属や肩書などもはっきりさせ、どこのだれであるかがすぐにわかるようにすることが大切です。人とはじめて会うときには、「はじめまして」などとあいさつをしますが、面識のない相手に手紙を出すときには、そんな簡単な書き出しではいけません。「はじめてお便りいたします」「突然にお手紙を差し上げます失礼をお許しください」などの、品のある決まり文句で切り出します。受取人にとっては、その手紙は突然の出来事。それを前提に、文面も書式もあらたまった形式で書くのが礼儀です。ちなみに、こうした言い回しは手紙を書くのがはじめて、という意味ではないので、誤解なきよう。言うまでもないと思いますが、何かの機会に会ったことがある相手や、電話で話したことが一度でもある相手には使いません。そういう場合には、「過日△△でお目にかかりました(お世話になりました)○○でございます」とします。先方は覚えていないかもしれませんが、こんな書き方をして、先方との縁を大事に思っているという気持ちを示すといいでしょう。さらに、相手とお会いしたい旨を伝えるときは、「ご拝顔したく存じます」「拝眉したく存じます」のような、敬意のこもった言い方があります。よりやさしい語感にしたければ、「お目もじしたく存じます」がよいでしょう。これは宮中で使われていた女房言葉「御目文字=お目にかかる」が由来。「拝顔したいものです」とすれば、同輩や目下の人向き。敬意とともに、親しみがこもった表現になります。

招待状の書き方と返事の仕方●この奥ゆかしい表現なら相手に喜ばれる披露宴やパーティーの招待状で、「万障お繰り合わせの上」という紋切り型の表現をしばしば見かけますが、この表現、じつはあまりおすすめできません。「万障繰り合わせて」とは、ほかのどんな用件よりも最優先させてきてください、という意味。是が非でも来てほしいという気持ちはわかりますが、これでは先方の都合を考えず、押しつけがましい印象を与えかねません。格式を大事にしたい祝賀の会では、儀礼にのっとって大時代的な表現をするケースが少なくありませんが、度をすぎるとかえって慇懃無礼な印象を与えるもの。昨今、オーバーな表現は滑稽な感じすらするものです。「ご多用中とは存じますが、ぜひご出席くださいますようお願い申し上げます」このほうが上品で、相手の意思を尊重した奥ゆかしい表現です。次は、招待状を受け取った場合。招待状が届いたら、すぐに出欠の返事をするのはもちろんですが、ここでもうひとつ気をつけたいことがあります。というのは、電話で会合の出欠を聞かれたら、「出ません」とだけ言って電話を切る人はいないはず。ところが、往復葉書などで招待の返事を出すとなると、欠席の理由を書き添える人は案外少ないものです。しかし、こういうささやかなところにこそ、人柄や品格が表れるもの。欠席の理由をひと言書き添えると、相手に与える印象がかなり違ってきます。出席の場合にも、披露宴なら、「おめでとうございます。喜んで出席させていただきます」と記します。会合ならば、幹事役への感謝と慰労の言葉として、「ご苦労さまです」「当日はよろしくお願いいたします」などと書き添えると、品のいい人柄がしのばれます。ところで、出席の返事を出してあったのに、身内の不幸などで欠席せざるをえなくなったときは、できるだけ早く連絡を入れ、「拠ん所ない急用ができまして」「急なさしつかえで参列できなくなりました」と、不参加のお詫びをします。おめでたい日に不吉なことを……と気にする人も多いので、あからさまにその理由を言わないのが、心くばりというものです。

おわりに品のいい言葉、丁寧なものの言い方の数々を紹介してきましたが、結局のところ、相手への慮りや謙虚さというものを持ち合わせていなければ、どんなに品格を漂わせる言葉を使っても、それは空虚なものに感じられてしまいます。本当に品のいい人というのは、その場の状況や相手にふさわしい言い回しを的確に選び、使いこなすことができるものですが、それは、常日頃から、豊かな人間関係を築くために心を砕いているからにほかなりません。本書を手にとってくださった方が、美しい言葉づかいとともに、他者を思いやることの大切さにあらためて気づいてくだされば幸いです。

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