七章●かけ方・受け方から取り次ぎ、間違い電話の応答まで──好感を印象づける「電話の達人」の言葉づかい
品のいい電話のかけ方●ふだんより丁寧な言葉づかいで好印象電話というのは、受ける側にとっては何の断りもなく突然かかってくるもの。立て込んでいてタイミングが悪いときもありますから、相手が出たら、まずは、「いまお話ししても、おさしつかえありませんか?」と、相手の都合を確かめるのが電話をかけるときのマナーです。とはいえ、そうは聞かれても、親しい相手でないと、少々のバッドタイミングでは「いいえ」とは言いにくいもの。受話器の向こうから子どもの泣き声やドアのチャイムなどの音が聞こえ、都合が悪そうだと思ったら、「おかけ直ししましょうか?」と言う気配りが必要でしょう。一方、電話を受ける側のマナーとしては、すぐに電話に出られず何回もベルを鳴らさせてしまったら、「お待たせして申し訳ありません」と言いたいもの。こんなちょっとした心くばりが相手をなごませ、好印象を与えるのです。面と向かって直接会っている場合には、ごく自然に表情や物腰で丁寧さを表すことができますが、電話は声だけのやりとり。お互いの顔が見えないだけに、話し方にはくれぐれも注意しなければなりません。電話では、相手に丁重に接する気持ちを伝えるには、言葉づかいに気を配るしかないのです。そういう意味で、「わかりました」は「承知しました」、「いいでしょうか?」は「よろしゅうございますか?」というように、ふだんより一段階上の丁寧な言葉づかいを心がけることです。また、最後のあいさつをきちんとすることも大切。「では失礼いたします」このようなあいさつをして用件が終わったことを伝え、ひと呼吸置いてから切るようにすれば、話の途中で切られてしまうこともないでしょう。受話器を置く際も気をつけたいもの。それまで素晴らしい対応をしても、話が終わるなり「ガチャン!」と受話器を乱暴に置いては、丁寧な言葉づかいも帳消しです。とくに目上の人やお客さまに対する電話では、先方からかかってきた電話であっても、先に切るのは失礼。相手が受話器を置くのを確かめてから切りましょう。
電話の取り次ぎ・伝言の仕方●名乗らない相手や当人が不在のときは「木村課長はいるかね?」──ずいぶんと偉そうな口調で、上司あてに電話がかかってきました。まるで「わたしのことは名乗らんでもわかるだろう」と言いたげな口ぶりです。さて、あなたは次のどちらの対応をしますか?(1)名前を聞くのは失礼なので、聞かずに取り次ぐ(2)まず先方の名前を聞いて、それから取り次ぐ上司にとっても明らかに目上の人と推察される相手が名乗らず、しかも名前を聞くのもはばかられるような態度をとられると、一瞬躊躇しますが、やはり、失礼なのは自分の名前を言わない相手。相手がだれであろうと、電話を取り次ぐ際には、きちんと相手の名前を聞くのがルールです。よって正解は(2)。「失礼ですが、お名前をいただいてよろしいですか?」「失礼ですが、お名前を頂戴できますか?」このように品のいい言葉づかいで尋ねれば、ちっとも失礼ではありません。その際には、できれば先に自分の名前を名乗るといいでしょう。こうして先方の名前を確認してから、上司に、「○○様とおっしゃる方からお電話です」と取り次ぎます。ただし、家族からの電話の場合は「奥様からです」と言わず、「課長、お電話です」とするほうがいいでしょう。会社での私用電話は慎むべきもの。とくに部課長クラスの年配の人は、家族からの電話を部下に知られるのを嫌がりますから、言わないほうが賢明です。ちなみに、電話での名指しの人が不在のときは、「あいにく木村は席をはずしております。わたくし、同じ部の○○と申しますが、わたくしでよろしければご用件を承りますが」と対応します。とはいえ、名指しした相手に直接用件を伝えたい場合もありますから、必ず「わたくしでよろしければ」のひと言が必要です。また、伝言を受けるのなら、相手が何者なのかわからないままでは失礼。まず自分の名前を名乗ったうえで、「ご用件を承りますが」とするべきです。
電話で相手を呼んでもらうとき●「○○さんお願いします」では、がさつすぎる「わたくし、○○と申しますが、○○様はいらっしゃいますか?」これが、電話で用事のある相手を呼んでもらうときの基本的な言い方です。自分は名乗らないで、いきなり「○○さんお願いします」とか、「○○さんいますか?」と切り出すのはNG。このくらいは社会人の常識でしょう。では、名乗ったあとに「○○様はおられますでしょうか?」という言い方をするのはどうでしょうか。電話でこの表現が使われているのをけっこう耳にしますが、じつはこれは間違い。「おる」は、「いる」「~している」の謙譲語。「おられます」というのは、それに「~られる」をつけて、無理やり尊敬語の形にしたもの。「あべこべ尊敬語」の恥ずかしい誤用例ですから、間違って使わないように気をつけましょう。次は、「○○様はいらっしゃいますか?」と電話口に呼んでもらった相手が、はじめて電話で話す人だった場合。先方は、知らない相手からの電話に「いったい何の電話だろう」と内心思っているはず。仕事の手を止めさせられ、しかも、どんな用件なのか見当もつかないまま面識のない相手に電話口まで呼ばれたわけですから、「突然お呼び立てして、まことに申し訳ありません」と、断りもなしに電話をかけたことについて、お詫びのあいさつをすることを忘れてはいけません。そして、まず用件を簡単に伝える。忙しい最中にかかってきたうえ、用件の趣旨がわからないまま話をされたのでは、先方はたまったものではありません。本題に入るときも、細かな話から入らないこと。相手としては、全体がどういう話かわからないうちに、いきなり細かい話を聞かされても戸惑ってしまいます。最初におおまかな内容を話す。これは、はじめての相手にかぎらず、どんな電話でもそうあるべきです。相手を呼び出した場合は、自分の都合で電話口に呼びつけたことになるのですから、つねにそれを念頭に置いて、相手の立場に立った丁寧な対応を心がけましょう。
電話した相手が不在のときは●こんな〝間違い〟を犯しやすいのでご注意電話した相手が不在のとき、相手の帰社時間を尋ねようとして、「何時ごろお帰りになられますでしょうか?」と言う人がいますが、これは×。これまで何度も出てきたように「お帰りになられる」は二重敬語で、過剰に敬語を重ねる間違った言い方。「お帰りになる」「帰られる」でいいのです。本章の冒頭で、電話では対面での会話以上に丁寧な言葉づかいを心がけなければならないと述べましたが、丁寧な言葉づかいと、過度にへりくだりすぎたり飾り立てたりする言い方とは、まったく別物。ここでもう一度、間違えやすい二重敬語に注意するよう思い出してください。正しくは、「何時ごろお帰りになりますでしょうか?」「社に戻られるのは何時ごろか、おわかりでしょうか?」「お戻りの時間をお聞かせいただけますか?」などと言います。かけた相手が不在のときは、「お電話をいただきたいのか」「こちらから電話をするのか」をはっきりさせておきます。ただし、相手が目上の場合や、こちらからの頼み事で電話をした場合には、自分からかけ直すのが礼儀です。こちらから再度、電話をする場合は、「では、またお電話をさせていただきます」と言い、今日中にもう一度電話するのか、翌日あらためてかけるのかを伝えておいたほうがいいでしょう。逆に、電話をしてほしいのなら、「お戻りになりましたら、△△社の○○までお電話をいただきたいのですが」と言います。なお、急用の場合は、「××の件で」と伝えるのもいいでしょう。用件がわかれば、その場で、ほかの人に代わって答えてもらえる場合もあります。伝言をお願いするなら、「おことづてをお願いしたいのですが……」「メモを残していただけますか?」などと、丁寧な言葉で頼みます。この際「恐れ入りますが」と最初につけると、より丁重な印象を演出できます。
〝OFF〟に電話をするとき●急ぎの用でも最初に非礼を詫びるべき上司が休暇で不在。しかし、突発的な問題が起こって、どうしても上司と連絡をとらなければならなくなったとします。最近は携帯電話がありますから、先方の家族の手を煩わせることは少なくなったとはいえ、携帯電話でも呼び出し音が鳴ればうるさいと感じますし、せっかくのくつろぎのひとときを邪魔してしまいます。だいいち、そもそもオフには電話を遠慮するべきなのですから、休暇中の上司に電話をかけるときは、どんなに急を要する連絡であっても、「お休みのところ、まことに恐れ入ります」と、非礼を詫びる言葉は必須です。ときには、携帯電話がつながらず、自宅の電話を鳴らすこともあります。そして、たまたま上司の家族が電話に出たとき、「突発的なトラブルが起きまして、課長にご相談があるのですが……」などと言う人がいます。失礼な電話をせざるをえなかった言い訳のつもりなのでしょうが、これでは上司の家族をいたずらに不安がらせるだけ。上司にもかえって迷惑がかかります。家族には丁重に非礼をお詫びするあいさつをして、早々に取り次ぎをお願いしましょう。また、朝早い時間や夜遅い時間に電話をかけなければならなくなった場合も、「早朝から失礼いたします」「夜分恐れ入ります」という、失礼を詫びるあいさつを忘れてはいけません。しごく当たり前のように思うかもしれませんが、緊急の連絡の際には、慌てていきなり用件から切り出してしまいがち。そうならないよう、ふだんから、このような心づかいを身につけておきたいものです。ちなみに、お詫びをしさえすれば、夜に仕事の電話をしてもいいというわけではありません。夜なら在宅率が高くてつかまえやすいから、という自分の都合だけで夜に仕事の電話をするのは、とんでもない心得違い。プライベートなオフの時間には、気軽に仕事の電話はしないよう心得ておきましょう。
間違い電話の上品な対応法●「違います!」と無作法に電話を切っていませんか?かかってきた電話が間違い電話だった。こんなとき、いくら相手のミスだとはいえ、「違いますよ!」と冷たく言い放って、「ガチャン!」では、相手も不快に思うもの。こんな対応はいただけません。「失礼ですが、何番におかけですか?」と断ってから、相手のかけた番号を確認するようにしたいものです。番号違いなら、「電話番号が違うようですね。わたくしどもは○○番です」番号が同じだったら、「わたくしどもも○○番ですが、もう一度ご確認願えますか?」と、品のいいやわらかい受け答えをしましょう。このように丁寧に確認すれば、そのあと続けて間違い電話がかかってくることもありません。一方、自分が間違い電話をしてしまったときは、どうすればいいでしょうか。相手が違うとわかって、「しまった!」と慌てて切ったりしていませんか?だれがかけたか先方にはわからないとはいえ、こんなに失礼なことはありません。ミスをしたときこそ、人柄が出るもの。「失礼いたしました」と、自分の非を丁重に詫び、謝罪の気持ちをきちんと伝える心くばりが大切です。さらに、はじめての相手に電話をして、間違ってしまった場合は、「そちらさまは○○番ではありませんか?」と、念のため、自分のかけたつもりの電話番号を告げて確認しておくといいでしょう。たんに番号の押し間違いかもしれませんが、もしかしたら、控えてある番号そのものが間違っている可能性もあります。同じ相手に再び間違い電話をして迷惑をかけないためにも、確認を怠らないことです。また、間違い電話とはかぎりませんが、電話の声が聞きとれないときは、「恐れ入ります。お電話が遠いようですので、もう一度お願いいたします」が、品のある決まり文句。「声が小さくて」「聞こえないんですけど」などという言い方は無作法。電話は顔の見えないコミュニケーションであることを、ゆめゆめお忘れなく。
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