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4章 風土を変えるDDDD

目次

01社内コミュニケーションは「C」と「A」の繰り返し

後回しにしがちな「長期的に見ると重要度が高い」仕事前章では、PDCAを回し続けるためには、「C」「A」が特に重要で、会議など「C」「A」を毎週行う仕組みをつくることで実行の進捗を着実に上げたり、商品開発における改良・改善やMUJIGRAM「」「」。

本章では、会長時代に行った仕組み強化と風土改革、新しい風土づくりについてご紹介します。

社長の仕事は、ここまでにもお伝えしたとおり、常に緊急度も重要度も高い内容の連続です。

たとえば、売上を上げるために販売力を上げる、商品力を上げる、国内だけでなく海外を黒字にする、MUJIグラムなどの仕組みをつくる……。

それらの一つひとつを判断して実行する、その繰り返しでした。

そうなると、つい後回しになってしまうのが、緊急度は低いものの、長期的に見ると非常に重要度の高い仕事です。

たとえば、風土づくりはその筆頭に挙げられます。

会長は、こうした地味だけれど組織の土台を固める上で欠かせない仕事をこつこつ続けるのが本来の役目であり、社長がやるべき「営業」の部分に手を出し始めると会社はおかしくなっていく──。

それが、あまたの会社を見てきての率直な感想です。

会長になって最初に痛感したのは、社内のコミュニケーションの不足でした。

経営は、コミュニケーションの質と量とスピードで決まります。

もちろん、単純に仲がいいとか、風通しがいいということではありません。

さらに、量が多ければいいというわけでもなく、適切な量を維持することが重要です。

スピードは説明するまでもなく、できるだけ早く情報を伝達し合うことです。

加えて、ここで重要なのが、それらのコミュニケーションと、上から下まで、下から上までをどうやってつなげていくか、という問題です。

ボトルネックは「五合目社員」組織は大きくなればなるほど階層が増えます。

良品計画も例外ではなく、上から、会長、社長、取締役・執行役員、部門長・部長………そして課長や店長、一般のメンバーまで、ピラミッド型で組織がつくられています。

その際コミュニケーションのボトルネックになるのが、「五合目社員」と言われる中間管理職の存在です。

富士山を想像してください。

トップは頂上にいるから、遠くから雲が近づいてくる、まもなく雨が降りそうだとわかる。

逆にふもとにいる現場の社員たちは、カエルが泣き出したから雨が降るとわかる。

ところが、ちょうど五合目あたりにいる中間管理職には、そのどちらの情報も見えてこない、聞こえてこない。

なぜか。

それは、その中間層を挟んで上下に雲がかかっているからです。

つまり上からの情報も、下からの情報もここで途切れてしまうのです。

この中間層のことを、ある会社では「粘土層」と呼ぶそうです。

トップがいくら水(方針)を浸透させようとしても、すべて部長や課長あたりで遮断されてしまう。

したがって、トップダウンにしろボトムアップにしろ、上下の情報を確実に流通させたいなら、そこに自動的にコミュニケーションが生まれるしかけを入れて、伝えたことが確実に実行(D)されているか、CとAを繰り返していくほかに方法はありません。

もちろん、一方でトップ同士のコミュニケーションが大切なのは、いうまでもありません。

1章でもお伝えしたとおり、会長になってからは、会議の合間を縫って定期的なランチミーティングの時間を設けていたわけですが、それでも足りず、夜も定期的に飲み会の時間を加えました。

こうすることで、毎週確実に社長とコミュニケーションをとる(D)ことができるようになります。

社長時代は、自分で判断して経営を進めていけばよかったのですが、会長ともなるとそうはいきません。

そうなると、実行の長である社長とのコミュニケーションが必須になるのです。

同時に取締役たちと「平取の会」や「役付きの会」を開いています。

これは、私とのコミュニケーションが不足しないようにする狙いもあったのですが、同時に取締役同士の横のコミュニケーションの活性化も意図したものです。

取締役同士、社内で顔を合わせる機会はあっても、話をする時間はありません。

3カ月に一度くらいの開催でしたが、それでも飲みながらワイワイやると、コミュニケーションは確実によくなります。

とはいえ、思いつきで集められるほど、彼らも暇ではありません。

単なる親睦が目的の趣味の会ではありませんから、確実に集まれなければ意味がありません。

手帳を見ながら、3カ月、4カ月先の予定(P)を入れて調整していきます。

意図してコミュニケーションのための会を持つのであれば、まずはPDCAの「P」の部分が大切になるのです。

本部と店の情報伝達でもPDCAを回す店と本部のコミュニケーションを高めるためにつくったのが、店の端末で見られる「朝礼メニュー」の仕組みです。

朝一番にパソコンの画面を開くと、この朝礼メニューが映し出されます。

「売上概算日報」「宅送最短指定日」「食品撤去日」「業務連絡」「今日の天気」「今日やること」などが一面に明示されており、店長たちはそれぞれ、これを見ながら朝礼を行います。

数字の管理はもちろん、営業会議で決まったことや、店への指示など必要事項が掲載されているので、情報の伝達漏れを完全に防ぐことができます。

また、この画面は、店長だけでなく、パートやアルバイトも見ることができるので、現場の隅々まで情報を行き渡らせることもできるのです。

そして、本部からの指示を実行したら業務連絡欄のタイトル部分をクリックします。

すると、画面上のその指示項目に「済」と表示されるとともに、本部にもそれが伝えられます。

PDCAでいえば、本部で決まった「P」を確実に現場に伝えることで、現場の実行力「D」が上がります。

店では、指示を実行した項目と、実行していない項目は、画面で一目瞭然(C)なので、やり忘れも減らせます。

本部も、どの店が実行していて、どの店は実行していないかがわかります(C)ので、実行の再依頼もピンポイントで行うことができる(A)というわけです。

朝礼メニューは、本部と店のコミュニケーションを高めるPDCAを回す仕組みでもあるのです。

02業務基準書と業務標準化委員会

標準化できなければ組織の運営レベルは上がらない店の業務マニュアルは、MUJIGRAMをつくりましたが、本社の人事や経理などの業務マニュアルがありませんでした。

これがないと複雑な本部の業務は「見える化」できません。

見えないということは標準化できないということです。

標準化できないということは、組織の運営レベルを上げられないということです。

また、業務が「見える化」されていませんので、何を教え、学ぶべきかもはっきりしません。

つまり、人を育てることもまったくできないのです。

そこで、本部の業務基準書をつくることにしたのです。

旗を振ったのは業務標準化委員会です。

まず最初は、「あなたの仕事を書き出してください」と依頼し、現在の仕事を文章と図で「見える化」してもらいます。

これを本社の全業務で行い、作成したのが「業務基準書」(P)です。

店舗に比べると、本社の業務ですから時間の自由度もあり、MUJIGRAMよりは早くできましたが、それでも2年くらいかかったでしょうか。

業務基準書もつくって終わりではありません。

むしろつくってからが本番です。

いかに効率的な仕事のやり方に変えていくかが大切なのです。

たとえば、経理部に新しい人が入ると、担当する部分の業務基準書を読みます。

しかし、書いたのはその業務のベテランなので、省略した部分があったりして読んでもわからないということが起きます(C)。

ここで、その新人に、わからなかったことを書き出してもらい、その業務のやり方を確認し、業務基準書を書き換えるなり、書き加えるなりします(A)。

したがって、新しい人が入ってきたり、業務の担当が代わったりするたびに、業務基準書は充実していきます。

また、店舗と違うのは、法律や規制によって業務が変わることが多々ある点です。

人事なら労働基準法をはじめ、さまざまな法律の改正が頻繁にありますし、経理なら会計基準や税法の変更が毎年のようにあります。

こうした法律や規制の変更によって業務のやり方が変わりますので、業務基準書もそれに沿って書き直され、項目が書き加えられます(A)。

良品計画は2月決算ですから、3、4、5月の第1四半期の変更分を6月に、第2四半期の分を9月にという具合に、四半期ごとに業務基準書は書き直されていきます。

この修正や加筆を、黙っているとやらない人がいますので、全員が自分の業務の修正や加筆を行ったか確認する(C)必要があります。

それを、毎週火曜日の業務標準化委員会で一つずつつぶしていったのです。

業務基準書のPDCAを回しながら、きちんと回っているかを業務標準化委員会がチェックし、できていなければ改善を指示するという仕組みです。

こうして業務基準書ができると、人を異動させるのが容易になります。

それまでは、ある仕事に精通したベテランがいると、その人を異動させると業務が滞る可能性や業績が下がる可能性があるため異動させられないという問題がありました。

しかし、業務基準書があれば、誰でもその仕事をできるようになります。

もちろん、すぐにベテランと同じようにはできませんが、きちんと引き継ぎを行い、半年、1年とやればだいたいの仕事は誰でもできるようになるものです。

03人材育成もPDCA

人材育成についても、PDCAを回す仕組みをつくりました。

たとえば、30人の部下がいる部長なら、この30人の部下を半年間で、どのように育てるかという計画書を出してもらいます(P)。

具体的には、新入社員なら担当する仕事の業務基準書のこれとこれとこれをできるようにする、といった具合です。

ベテランなら、一般的な業務はすでにできるようになっているので、自分ができる業務をできない人に教えられるようになるといった目標になります。

期初の3月初めにこの人材育成の計画書を作成、提出し、実際に実行(D)してもらいます。

4月には中間報告があります。

この中間報告の場が、「人材育成委員会」で、聞き手は役員全員です。

人材育成委員会の目的は、「C」と「A」です。

実行の進捗をチェックするとともに、うまくいっていなければ、改善案を考えてもらい、場合によっては目標を変更します。

中間報告後は、また日々の仕事を通して実行に移ってもらい、期末の8月末に、計画と実行の進捗状況を最終的に評価する(C)という仕組みです。

つまり、計画から2カ月で中間報告を行い、進捗の確認をします。

大体は計画通りにはいきませんから、早めにズレを調整します。

目標や、やり方を変えることもあります。

要は、目的が達成できるかどうかが判断基準です。

そして、期末までにもう1回PDCAを回し、評価します。

この評価が、次の半年の目標につながるのは言うまでもありません。

毎半期、これらをやることで人材育成のPDCAが回り続けることになります。

この人材育成委員会の仕組みは、「人が育っている」実感がすぐに持てました。

人が育つと、異動もやりやすくなり、異動するとそこで新たな仕事に挑戦し、いつかその仕事もできるようになります。

仕事の幅が広がり、人が成長します。

つまり、人材育成の好循環が生まれるのです。

04トップダウンからボトムアップへ

ボトムアップの仕組みをさぐりに他社へ会社はトップダウンで動くのが基本です。

なぜなら、トップダウンの経営のほうが圧倒的に効率的だからです。

ボトムアップや民主主義で物事を決めていたら、経営のスピードが失われてしまいます。

しかし、トップダウンには弊害もあります。

まず、経営者や役員たちだけの知恵になってしまい、全社員の知恵が出てこない。

また、社員が指示待ちに慣れてしまい、自主性が失われてしまう可能性もあります。

緊急時にはトップダウンの経営を行うしかありませんが、平常時に戻ったら、「ボトムアップの仕組みが必要なのではないか」「全社員の知恵を活かす、社員の自発的な取り組みが今後の成長と生産性の向上には欠かせないのではないか」といった問題意識を持つようになります。

このときも課題解決のヒントは他社にあると考えて他社に目を向けます。

なかでもボトムアップはメーカーが得意としています。

そこでキヤノン電子に白羽の矢を立て、さっそく視察に行きました。

キヤノン電子では、自発的な小集団活動が行われていました。

その目標が「世界一を目指そう」というのにも驚きましたが、実際の内容を見て、再びびっくりさせられました。

正社員に限らずパート社員に至るまで本当に全員が自発的に取り組んでいるのです。

どうしたら世界一になれるのか。

パートさんたちが出した答えが、「早く出社すること」でした。

8時に出社するようにしたのですが、それでは足りない。

だんだん早く出社するようになり、とうとう7時には出社するようになりました。

主婦が7時に出社するには、その前に家事をすべて済ませなければなりません。

ご主人には我慢してもらうにしても、子どもに朝食を食べさせ、弁当をつくらなければなりません。

お姑さんはいい顔をしないはずです。

また、当然ですが、残業手当を出さなければなりません。

工場の隣は労働基準監督署ですから常時残業することもはばかられます。

とうとう会社は7時30分より前には出社しないでくれと言わざるをえなくなりました。

しかし、モラルは格段に上がったのです。

また、有名な立ち会議もこの活動から始まりました。

会社でムダなものは会議用のスペースと机、椅子だということになったのです。

そこで、机と椅子をなくしていったのです。

他社の小集団活動から生まれた良品計画の「WH運動」ほかにも多くの小集団活動の事例を見せてもらったのですが、どれもすばらしく、自発的な小集団活動の威力を思い知ったことで、何とか良品計画にも同様の仕組みを導入したいと思いを深くしました。

そんな思いで立ち上げたのは、「WH運動」。

Wは2倍、Hは半分のことで、生産性は2倍に、無駄は半分にするといった意味合いです。

本社の部門ごと、人数の多い部門はいくつかに分かれてもらい、30チームくらいが半期の目標を一つつくります(P)。

手帳を見ると、2009年は、2月19日に「WH上期テーマ発表会」とあります(次の写真)。

3月の期初から実施するために、この時期に目標の発表会を設定しました。

5月に中間発表を行い、進捗を発表してもらいます(C)。

そして、期末の8月27日に「WH発表会」とあります。

これが成果発表の会です(C)。

そこで評価の高かったチームは、9月初めの経営方針発表会の場で表彰します。

表彰式では、チームのメンバーが実行しているビデオが流れ、成果の発表が行われ、金一封が配られます。

WH運動も、半期ごとにPDCAを回すのです。

これらの活動を続ける上で大切なのは、何より、トップダウンで進めることと、成果が出たら、しっかりと表彰すること、そして、会社にとって非常に重要な取り組みだとトップがしっかりとコミットしている姿勢を見せることです。

どちらの発表会も、役員全員に出席を求めました。

小集団活動がうまくいかない理由を元トヨタの幹部が話してくれたことがあります。

なんでも、小集団活動に励む社員たちに、「大変いいことだから、君たち、がんばってやってくれよ」という役員がいたそうです。

この役員は主体的に関わる気がなく、他人事だと思っていることが社員に伝わってしまうのです。

自発的な小集団活動を行う組織にしたければ、トップや役員が自発的にそれを後押ししなければならないはずです。

こういう役員の存在が活動の芽を摘んでしまうのです。

そこで、半年以上前に、WH運動の発表会の日程を決めるように変えました。

早く日程を決めることで、他の予定を理由に欠席できないようにするためです。

それでも出張などを理由に欠席する役員がいたので、全役員を評価の採点者にしました。

経営方針発表会で表彰するための採点ですから、こうなると欠席できません。

自発的な組織をつくるのが目的ですから、命令や強制で参加させても意味がありません。

したがって、いかに自発的に参加してもらうか、そこに知恵を絞ったのです。

WH運動の具体的なテーマとしては、販売部・業務改革部が「店舗配布資料半減」、カフェ・ミール部が「用度品の店舗在庫半減」、生活雑貨部が「Webカタログの商品写真100%」掲載、店舗開発部が、「什器・備品発注の簡略化」など。

これらはみな、表彰されたテーマです。

たとえば、店舗開発部が行った「什器・備品発注の簡略化」は次のような内容です。

店長は、まず「什器・備品申請書」をつくって販売部に提出します。

販売部は予算上OKかどうかを確認し、OKになったら、店で使う什器は店舗開発部に、備品は総務人事部に必要数を発注します。

店舗開発部と総務人事部はそれを受けて、業者に発注しますので、店に什器や備品が届くのは最短でも18日後でした。

それを、店長が直接業者に発注するように変更できないかと考えます。

問題は、野放図に什器や備品が発注され、予算をオーバーしてしまうリスクがあることです。

ところが実際にやってみると、店長も店の経営者ですから無駄な発注は行わず、直接業者に発注するので最短で6日後には什器や備品が店に届きました。

予算もオーバーせず、納期は3分の1に短縮でき、しかも、販売部、店舗開発部、総務人事部の仕事がなくなりました。

こうして大きな効果が出たことが評価され、見事採点1位となり「首位打者賞」を受賞したのです。

社員の意識も全体最適にシフトWH運動で効果が出た業務改善は、トップダウンでは実現できなかった改善です。

つまり、トップダウンだけでは限界があるということです。

本章の冒頭で良品計画の新しい風土をつくりたかったと述べましたが、ボトムアップで業務改善を行う社風をつくろうとしたのです。

しかし、トップダウンよりボトムアップのマネジメントのほうが難しい。

懐を深くして、我慢ができないとボトムアップのマネジメントはできません。

WH運動を始めた当初は、ほとんどの役員、社員が、「できるはずがない」「長くは続かない」と思っていたでしょう。

ただ、正面切っての反対はない。

それなら実行です。

もちろん、最初から順風満帆だったわけではありません。

まだこの活動を始めて間もない頃は、主旨を理解してもらえず、ときには方向違いの案が提案されたこともあります。

たとえば「残業半減、有給休暇取得2倍」というテーマ。

一見すると、まさにWH運動に適したテーマだと誰もが思うわけですが、実は自分が休みたい、残業したくない、ただ「声の大きな人」が決めたテーマでした。

ですから、周囲の人間が見ると、真の目的は、生産性を上げることではなく、「自分が楽をするため」であり、部分最適にも届かない「個人最適」であることがすぐにわかります。

当然協力する気は起きないでしょう。

良くも悪くも自浄作用が働いたのか、テーマは素晴らしくても内容がともなわず、うまくいきませんでした。

成果が出るWH運動は、「全体最適」の発想が根底にある。

だから、当事者だけでなく、周りを巻き込み、協力をとりつけることができるのです。

部分最適から全体最適へ、価値観がきちんとシフトしていることが大事なのです。

05社風づくりは「D」あるのみ

とにかく徹底的に実行あるのみ私が新しい社風づくりのために始めた施策に「あいさつ」「さんづけ」「定時退社」があります。

社風づくりに大切なのは、トップのコミットメントと、とにかくやり続けるという2つです。

そして、妥協せずに徹底的にやること。

たとえば、あいさつであれば、毎朝、私や役員、部長が1階のエレベーターホールに立ち、出社する社員に向かってあいさつをします。

また、あいさつが月次のテーマになると「今月はあいさつの強化月間です。

あいさつをしましょう」と朝から晩まで館内放送が流れます。

朝昼晩と点検シートが配られ、朝なら「会社に入ってきてあいさつをしましたか?」「エレベーターの中であいさつをしましたか?」「フロアに入ってきたときあいさつをしましたか?」といったことが書かれたシートにチェックをします。

そのシートを部門長が全部チェックし、週に一度は業務標準化委員会がチェックをします。

こうしたことを毎日、徹底的にやり続けます。

社風づくりは、やると決めたこと(P)をやり続けることが重要。

点検シートとそのチェックという「C」も一応ありますが、実質「実行(D)」あるのみで、基本的には「DDDD」です。

私がエレベーターホールに立つのは、月曜か火曜です。

最初は毎日のように立っていたのですが、社員の多くが嫌がるので減らしました。

手帳には、「6:40迎え」とあります(次の写真)。

6時40分に迎えの車に乗り、7時半ごろ会社に着き、8時から9時までエレベーターホールに立ってあいさつをします。

私がエレベーターホールに立って「おはようございます」とあいさつをしても、あいさつを返さない社員が2人いました。

声が小さくて聞こえなかっただけかもしれませんが……。

ですが、この2人を呼んで指導したら学校と同じです。

良品計画でも昔、朝9時になったら入口に鍵をかけて入れなくするなどというバカげたことをしていた時期がありましたが、これは学校で校門を閉めるのと同じこと。

懲罰で人を変えようとするのは最悪のマネジメントです。

見せしめにして罰を与えても、その人の行動は何も変わりません。

というより、逆効果にすらなって、いよいよ反抗的になって集団を乱します。

何より社内が暗くなり、ギスギスした居心地の悪い会社になります。

強制や罰で人を変えることはできないのです。

そこで一計を案じました。

あいさつをしなかった2人の直属の上司にエレベーターホールに立ってもらい、あいさつをしてもらったのです。

さすがに、どんな人でも直属の上司の前を素通りはできませんから、あいさつをします。

前述のとおり、私が頻繁に立つのは嫌がられたので、代わりに誰かに立ってもらおうと協力者を募ったのですが、1日3人の定員がなかなか揃いませんでした。

仕方がないので、課長以上の役職者が交代で立つようにしました。

あいさつは、月次テーマに関係なく、毎朝、誰かがエレベーターホールに立ってあいさつをしています。

これをもう10年以上はやり続けています。

おそらく今も毎朝立ってあいさつを送り続けていることでしょう。

できない原因の根を絶つ「定時退社」を決めたときも、同様に実行(D)あるのみでした。

「残業をなくす」というと、喜ぶどころか、皆抵抗します。

でも金曜日はきっぱりノー残業デーにしました。

続けて、水曜日も加えて、週2日をノー残業デーにしました。

これはすぐにできました。

いよいよ正月の営業初日から全日ノー残業デーにしました。

当初は夜7時になったら本社の電気を消しました。

でも、どの社員も熱心でまじめだから、「仕事をやりたいのに、帰れというから帰るんだ」と文句を言うわけです。

こっそり会社に戻ってくる社員もいました。

一番問題だったのが、仕事を自宅に持ち帰るパターンです。

早く帰って仕事以外のことに時間を充てたり、ゆっくり休養を取ったりするために始めた施策なのに、これでは目的が達成できません。

そこで、持ち帰らなくてもすむことを考え、即座に実行(D)に移します。

ノー残業デーは譲らず、仕事を減らす。

そのためには、無駄な仕事をやめるしかありません。

「太い幹と太い枝だけ残して、細い枝と葉っぱは捨てなさい」と何度も言い続けたのです。

ところが、その仕事が「太い枝」なのか「細い枝」なのか、そのあたりは人によって違います。

たとえば、午前中の時間をメールの返信に費やす人には、部門長を通じて、よほど緊急度の高いメールでなければ返事しなくていい、つまり、それは葉っぱや小枝の仕事なんだと、個人ごとに具体的に指導するしかありません。

このくらい細かく、地味にDを積み重ねて、初めて効率は上がっていきます。

大体1割仕事をなくすと、仕事を持ち帰る社員はいなくなります。

とはいえ、自己申告で提案される業務改善策で見込める効率化は2、3%ですから、1割効率を上げるのは至難の業ですが……。

社風を変えるためには、あきらめたり、途中でやめたりしてはダメで、「一度始めたことはやめない」のがコツです。

やめると前に戻ってしまいます。

そういう例も他社で数多く見てきました。

逆に、これほどまでに続けられるものなのかと感心したのがトヨタ自動車です。

トヨタには、「いま、トヨタが学ぶべき会社」のトップにインタビューし、それを労働組合員全員に配るという活動が行われています。

良品計画にも数年前に依頼があり、私がインタビューを受けたことがあります。

そのときに逆に「この活動はいつから行われているのですか」とインタビュアーに問いました。

その答えが、なんと38年前──。

交通費などは組合費から出るとはいえ、それ以外は手弁当で、休みの日を使って行う自発的な活動が38年間も続いている。

そして今も継続しているでしょうから、すでに40年以上も続いていることになります。

これがトヨタの強さです。

継続する力が段違いに強いのです。

ごみの落ちていない会社は社風でつくる良品計画の新しい社風づくりのために行ったこと(D)に「クリアデスクルール」があります。

これは、簡単にいえば、ごみの落ちていない会社にしましょうということです。

このときのテーマは、「下を向いて歩こう」。

人が動けば、ごみは落ちます。

ですから、全員がごみを拾わないと、ごみの落ちていない会社になれません。

「ごみを拾うのは、私の仕事ではない」そう思う人がいれば、ごみはなくならないのです。

データがあるわけではなく、私の単なる経験則ですが、ごみの落ちている企業で業績の良い企業はありません。

業績が良い企業は、チリ一つ落ちていない。

決まったことを、決まった通りに、きちんと全員がやれるという社風をつくるために、あいさつやクリアデスクルールを徹底的に毎日、毎日やり続けるのです。

「子どもみたいだな」そう言われることもよくあります。

しかし、子どもみたいに、当たり前のことを当たり前にやり続ける組織が一番強いのです。

06デッドラインを設けてPDCAを回す

550人が監視するデッドライン報・連・相──報告、連絡、相談──が仕事をする上では大事だといわれます。

私も人事の責任者をやっているときには、手帳に「報連相が大事」と書いていたぐらいです。

しかし今は状況が違います。

一人ひとりの部下に対して適切に報・連・相を行わせるほどマネジメント力があるマネジャーはいません。

しかも、報・連・相では、部下の自主性は育ちません。

大事なのは、自分でリスクをとって仕事をやり切ることです。

そのためには、デッドライン(締切)だけを決めて、あとは自由にやらせる。

そのための仕組みが、「DINAシステム」です。

DINAは、「Deadline(締切)」「Instruction(指示)」「Notice(連絡)」「Agenda(議事録)」の頭文字です。

毎週月曜日の営業会議が終わると、DINAシステムを通じて、約550人のパソコンに締切、指示、連絡、議事録が流されます。

部長がメンバーを集めて営業会議の内容を話す必要もなくなり、情報伝達のヌケモレも起こらない仕組みです。

しかも、この画面を本人が見たら「〇」が付き、その人が見たことが部長にわかるようになっています。

「×」はまだ見ていないことを表しますので、そういう人には見るように指示を出すことができます。

営業会議で決まったデッドラインが表記されており、こちらもその仕事が終わると「〇」が付きます。

550人が監視しているので、デッドラインまでにできないということはまず起こりません。

デッドラインは通常翌週の営業会議までです。

したがって、次週の営業会議でやるべきこととその締切が決められます。

これがいわば実行計画(P)です。

それを実行(D)したら「〇」が付き、これがチェック(C)になります。

できなかったら、できるように改善する(A)必要がありますが、それはまれで、基本的にはPDCで、確実にやるべきことを締切までにやる仕組みとなっています。

人の性格を変えるのは難しいことですが、行動を変えることはできます。

行動を変えれば、組織としての社風を変えることができ、社風が変わればしめたもので、社風に合わせて多くの人は行動するようになります。

ですから、最初は一人ひとりの行動を変えることが大切であり、そのための仕組みが大事になるのです。

経営トップが訓辞を垂れても、「進化と実行」というスローガンを掲げて、社内に貼り出し、毎朝朝礼で唱和しても、進化も実行もできません。

日々、やるべきことを明確にし、実行計画を立てて実行し、実行を評価し改善するというPDCAを回し続けることでしか、社風をつくることはできません。

できるのは、PDCAを回し続けるための仕組みづくりに尽きるのではないでしょうか。

コラム来年の手帳を発売直後の8月末に買う理由

私は、来年の手帳が発売される8月末になると、銀座の伊東屋に連絡を入れ、すぐに購入します。

気が早いようですが、すでにこの時期には、来年の予定がいろいろと入ってくるからです。

たとえば、社外取締役や顧問をしている会社の取締役会や株主総会などは、年間スケジュールとして1年間分の予定が決まっていますが、来年の予定は現在の手帳の後半のノート部分に書いています。

会社によっては、2年分の予定が決まっているところもあります。

また、講演も早いものは1年前に依頼がきます。

良品計画の会長を辞してから毎年、年間100講演以上行ってきました。

ありがたいことに方々からお声をかけていただき、思いがけず会長時代より忙しくなってしまったため、現在はそれも少しずつ減らしています。

それでも知人からの依頼や毎年恒例のものは断れないため、来年の講演の予定が次々と決まっていきます。

これらも、手帳の後半のノート部分に書いておき、来年の手帳を買ったら該当日時の欄に書き込みます。

そして、レストラン。

私が日本一だと思う、京都の三つ星、「未在」の予約は、だいたい1年半先です。

これも忘れないように、予約日時を手帳の後半のノート部分に書いておき、来年の手帳を買ったら書き写します。

来年の手帳の発売は、通常は秋ごろですが、伊東屋だけは8月末までに手に入ります。

ただ、私にとってはそれでも遅いぐらいで、2018年になったら、2019年の手帳を発売してほしいぐらいです。

来年の手帳を買ったら、現在の手帳を見ながら、すでに決まっている予定をすぐに書き込み、昨年の手帳と一緒に、デスクの中に入れています。

来年の手帳、今年の手帳、昨年の手帳の3冊でスケジュールを管理しています。

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