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第1章 人生の「ゴール」を設定する

目次

まえがき

本書を手に取っていただき、ありがとうございます。あなたは、アファメーションという自己変革の方法をご存知でしょうか。

この方法を発見したのは、コーチングの元祖である故ルー・タイスです。

彼は、アファメーションを実践することによってビジネスを大成功させたばかりか、キャリア、財産形成、家庭生活、人間関係などあらゆる面で、豊かで素晴らしい人生を手に入れました。

同時に彼は、自らが見出した方法を世の中に広めることに熱中し、全世界で 3300万人の人生を、彼の人生と同じように素晴らしいものに変えてしまいました。

早い話が、ルー・タイスと同じ方法を実践しただけで、地球上の 3300万人もの人々が仕事やビジネスで成功し、富を築き、周りの人々の尊敬を集め、幸せな家庭を築き、豊かな人生を送っているのです。

アファメーションとは、簡単にいえば、あるルールにもとづいてつくった言葉を自らに語りかけることです。

たったそれだけのことで人生をバラ色に変えることができると聞いても、あなたはにわかには信用しないかもしれません。言葉を唱えるだけで人生が変わるとすれば、まるでファンタジーの世界のお話でしょう、と。

しかし、考えてみてください。

私たちの思考は、すべて言葉で成り立っています。もちろん、イメージを使って考えることもありますが、そのイメージの元をたどっていくと、それらはすべて自分や対象を規定する言葉に行き当たります。

たとえば、初日の出を見て「きれいだなあ」と感じるのは、その昔に「ほら、ごらん。きれいでしょう」と誰かに初日の出を見ながら教えられ、あなたがその言葉を受け入れたから、そう思っている可能性があります。

面白いもので、「人間は自分には自分だけの考えや主張がある」というように考えていますが、本当はそうではありません。感情だけでなく、考え方や判断、評価基準など、ありとあらゆることを他人に教えられ、その言葉を受け入れたことによって、〝その人〟ができあがっているのです。

このように私たちが行う選択と行動は、その人がどんな言葉を受け入れているかによって決まってしまいます。

「自分は能力のない人間だ」という言葉を受け入れている人は、能力のない人間の選択と行動をとるし、逆に「自分は能力のある人間だ」という言葉を受け入れている人は、能力ある人間にふさわしい選択と行動をとります。

このことは、学業などの自らの努力だけで解決できる範囲にとどまりません。

たとえば、「私はお金持ちになれる」という言葉を受け入れている人は、見事にお金持ちになっていきます。

また、「美しい女性(あるいは、ハンサムな男性)と結婚するぞ」と思っている人は、自らの美醜にまったく関係なしに、美しい女性(ハンサムな男性)と結婚します。

「え?」と驚くような人がたいそうなお金持ちになったり、とびきりの美人(ハンサム)と結婚したりする例は、身の周りにいくらでも見ることができます。

それができないのは、その人が単に、「高望みをしてはいけない」とか「自分には無理だ」という言葉を受け入れているからです。「自分にはできない」と思って、自らを制限しているわけですから、できなくて当然です。

素晴らしい人生を手に入れたいなら、「自分にはできる」と心の底から確信することがとても重要です。「自分にはできる」という言葉を受け入れるのです。

アファメーションは、「自分にはできない」を「自分にはできる」に変える、自己改造の方法です。これを身につけると、脳が「自分にはできる」という言葉を受け入れて、あなたを素晴らしい人生へと導いてくれるようになります。

アファメーションを実践することによって、あなたが最初に感じることのできる効果は2つあります。

ひとつは、自らを縛り、制限している言葉から自分を解放することができたという実感です。

そして、もうひとつは、これまで「できない」と考えてきたことに、自分がごく自然に積極的に取り組めるようになったという実感でしょう。

アファメーションのルールにのっとった言葉を自分に語りかけると、これまでの自己イメージはすぐに変わっていきます。

ルー・タイスと私は、人生の成功を手に入れることを「人生のゴールを達成する」といっていますが、これはその第一歩です。

また、アファメーションによって人生のゴールを自分に刷り込んでいけば、「目的的志向」が働くようになります。

目的的志向については本文で詳しく述べますが、「これをやろう」と強く意識して力を注がなくても、自動的にゴールを達成するよう自分を導いてくれる「無意識の働き」のことです。

「やらなければいけない」という意識が働いているうちは、やることなすことのすべてに骨の折れる努力が必要です。

ところが、取り組むことに対して「楽しくてしかたがない」という自分の状態をつくりだせば、やることなすことのすべては「ハッピー」なことに変わり、疲れたり飽きたりということがありません。

たとえば、インターネットでいろいろな情報を調べるのが好きな人は、毎日、朝から晩までパソコンにかじりついていても、疲れないし、楽しくてしかたがありません。

俗に「インターネット中毒」と評されますが、それは中毒なのではなく「ハッピー」なのです。人生のゴールを達成するなら、これと同じ「ハッピー」な状態で物事に取り組めるようにしてやることが肝心です。

あなたの周りにも一人や二人は必ず例が見つかると思いますが、目的的志向が働いている人間は、「ハッピーだなあ」と感じて取り組んでいるうちに、ふと気づくと大きな仕事を成し遂げているものです。

「目標は ◎ ◎になることです」と意識していなくても、ちゃんと目標どおりの成果を上げ、高い評価を受けるように成長していきます。

アファメーションの使い方を身につければ、このような人たち以上に成果を上げ、高い評価を受けられるようになるのはもちろん、彼らよりももっと大きなゴールを達成することができるようになります。

その意味で、アファメーションは、目的的志向を働かせ、自動的に人生のゴールを達成するための方法ということもできるでしょう。

ここで、本書の構成をざっと紹介しておきましょう。

1章では、最初に人生の成功とは何かということを考えていきます。

人は、大なり小なり、人生の目標を持っています。その実現を願わない人は、一人もいないでしょう。にもかかわらず、多くの人は願いをかなえることなく、人生をいたずらに費やしてしまいます。

なぜなのでしょうか? 理由は、ほとんどの人が「他人から吹き込まれた目標」を自分ほんらいの人生の目標だと思い込んでいるからです。

こういう自分になりたいという願いが心の底から尽きずあふれなければ、心から満足のゆく目標の達成ができるはずはありません。

たとえ社会的な成功を手に入れたと評される人でも、じっさいは他人から聞いた目標を実現したにすぎず、本心では自らに幸福を感じていない人がほとんどだといえます。

あなたが人生の成功と本当の幸せを望むなら、心の底からこうなりたいと思う人生の目標を見つけださなくてはなりません。

とても難しいことだと思うかもしれませんが、コツを体得すれば、これは意外に簡単なことです。

本当の人生の目標(ルーと私は「人生のゴール」と呼んでいます)を見つけるためのカギは、やはりあなたが使う言葉に隠されています。

1章では、人生のゴールを設定するさいに重要な言葉の働きを学んでいきます。

2章では、人間にとって言葉がいかに重要かを見ていきます。

言葉は単なるコミュニケーションの手段ではなく、宇宙そのものです。

私たちは、言葉によって目の前にある物事を認識し、何が起こっているか解釈します。

「仕事とはこういうものだ」「社会とはこういうものだ」「人間とはこういうものだ」と、あなたが信じている現実も、すべてあなたが受け入れた言葉によって成り立っています。

言葉を変えれば、満足のいかない現実や、あなたが信じて疑わない自分に対する呪縛は、いともたやすく変えたり、ほどいたりすることができます。

人生のゴールを達成するには、これまで自分を縛ってきた言葉とブリーフ(信念)を壊す方法を、よく理解することが大切です。

3章では、自己イメージを変える方法を学びます。

誰もが「自分はこういう人間だ」という自己イメージを持っています。

そして、その自己イメージにしたがって選択と行動を行うことを習慣にしています。

もちろん、自己イメージどおりの自分でいることは、心地よいことです。

自然にふるまえるし、落ち着いて物事を考えることができます。

だから、私たちはそうした自己イメージをつねに保持しようとします。

しかし、昨日までの人生に満足していないならば、自己イメージを変えなければなりません。

これまでの自己イメージを保持したまま明日を生きようとすれば、いつまでたっても昨日までと同じ人生がくり返されるだけです。

これまでの人生は、昨日までの自己イメージがつくったものなのです。

自己イメージが変われば、思考も態度も変わり、あらゆる点でこれまでとは違う結果が出てきます。

自己イメージを変えるのは、要領さえわかれば、とても簡単なことです。

3章では、その要領とコツを紹介していきます。

4章では、目的的志向とその上手な働かせ方を紹介していきます。

すでに述べたように、目的的志向は、意識ではなく無意識の働きです。

無意識を働かせるというと、何かとてつもなく難しいことのように思うでしょうが、けっしてそうではありません。

私たちの脳は、単純化すればコンピュータと同じく情報処理装置です。

情報処理装置でありながら、そのときの脳の情報状態によって心の動きを生み出しています。

その心の動きをコントロールしているのは、過去の記憶であり、その記憶にくっついているイメージと情動です。

脳に人生のゴールを刷り込む(いわばプログラミングする)ときにも、イメージと情動を使います。

それらを使って、いまの自分に「人生のゴールをすでに達成した」という未来の記憶を埋め込んでやるのです。

未来の記憶に強烈なリアリティを与えることができれば、あなたは自動的にその記憶が現実になるように行動していきます。

4章では、その方法と、そのさいに必要な原則を学んでいきます。

5章では、アファメーションの具体的なやり方を紹介していきます。

アファメーションは、言葉を自分に語りかけるだけでも大きな効果がありますが、目的的志向を働かせて遠大な人生のゴールを達成するためには、さらに強烈な方法を採用する必要があります。

それは、言葉だけでなく、イメージと情動を使い、ゴールを達成したときの自らの姿を、脳に強くリアルに感じさせてやる方法です。

ルー・タイスは、それを I(想像力) × V(臨場感) = R(現実)の法則と呼びました。

5章では、この法則を学ぶとともに、アファメーションのつくり方のルールを紹介していきます。

本書が示すアファメーションの全体像がわかれば、あなたは明日からでも、人生のゴールを達成する大きな一歩を踏み出せるはずです。

*****

最後になりましたが、ルー・タイスには『アファメーション』(フォレスト出版)という、そのものずばりの名著があります。

日本語版を世に問うに当たり、私が監訳を引き受けています。

含蓄の深いルーの思想と方法論を学ぶにはうってつけの本ですが、大著ゆえのことか、「アファメーションを手軽に学べるハンディな本を」という強い要望が読者から多く寄せられることにもなりました。

そこで私は、認知科学の知見を交えながら、 TPIE(タイス・プリンシプル・イン・エクセレンス =ルーと私が開発した最新のコーチングプログラム)に則した形で簡潔にアファメーションを解説することを思い立ち、本書の執筆にとりかかりました。

この本が、あなたの人生を変え、成功をつかむための、よき伴侶になることを願ってやみません。

ルー・タイスの『アファメーション』にまだ目を通していない方は、ぜひ併せて読むことをお勧めしておきます。

いっそう深い理解に達することはもちろん、言葉ひとつで人生が変わることを発見した彼の驚きと情熱が人肌のような温かさをもって伝わり、長く強く心に残ることは請け合いです。

残念ながら、彼は 2012年に日本から帰国して間もなく、 76年にわたる人生の幕を閉じました。

本書を、故ルー・タイスに捧げます。

苫米地英人

これまでの成功法則が間違っている点 「成功」と「人生のゴール」の明確な違い ゴールが「理想的な現状」であってはならない理由 ゴールは現状の外側に設定する 言葉のメカニズムを解明したアファメーション 「本当にやりたいこと」をやり遂げてしまう人間の潜在パワー 「言葉」は両刃の剣 「言葉」は宇宙を司る原理 赤信号で止まる本当の理由 「情動」も言葉が規定している ブリーフ(信念)が認識のパターンを形成する 現状から抜け出したければブリーフシステムを変えろ! ブリーフシステムを変える簡単な方法 人生のビジョンを描く練習をしよう 自分の価値観を明らかにする方法 つい陥りがちな「創造的回避」とは? あなたの人生をダメにする「しなければならない」発想 「したい」に変える早道はアティテュードを変えること アティテュードはどのように変えればよいか? なぜ、ポジティブ思考の人は成果を上げるのか? ふだん誰もが行う「意識的思考」 ゴール達成の敵にも味方にもなる「潜在意識」 自己イメージにしたがう「創造的無意識」 あなたは自己イメージを維持するのか、抜け出すのか? 自己イメージはいかようにも変えられる! 自己イメージの固定化はあなたの成長を阻む ブリーフシステムを壊して自己イメージを変える 新たなブリーフシステムがもたらす新しいゴール 「スコトーマ」とはなにか? あなたは見たい世界だけを見て生きている スコトーマが人生のゴールを見えなくさせる 「カギが見つからない!」のフシギ 社長や富豪になるのは特別な人!? 「セルフトーク」をコントロールする ゴール達成に向けてスマートトークを習慣づける なぜ、ルー・タイスは高校教師を辞めたのか? ジョン万次郎のアファメーション イメージ、言葉、情動がキーワード ゴール達成に必要な 3要素 目的的志向の原則 ① 行動を起こす前に心の準備を整える 目的的志向の原則 ② イメージの中の現実を変える 目的的志向の原則 ③ 目標の設定は「そこまで」ではなく、「その次」を考える 目的的志向の原則 ④ 普通ではないことを普通にする

目的的志向の原則 ⑤ 機会を逃さず、自分に逃げ道を与えない 目的的志向の原則 ⑥ 自分の価値にふさわしいものを選ぶ 目的的志向の原則 ⑦ ゴールに向かって成長する 目的的志向の原則 ⑧ リソースについて心配しない マイケル・フェルプスはいかにして 8冠王に輝いたか? 目的的志向があなたをゴールへ導くメカニズム 高いエフィカシーと臨場感を獲得するには? コンフォートゾーンを上げる方法 脳は強い臨場感を「現実」と認識する ゴールのコンフォートゾーンの臨場感を絶えず強化する ゴールのコンフォートゾーンを脳に選択させる すっぱいレモンのリアルなイメージ アファメーションのつくり方 さあ、いまからアファメーションを実行しよう! あとがきに代えて――イメージが未来をつくる

人生の成功を手に入れるにはどうしたらよいのでしょうか? その答えは簡単です。

いまあなたが当たり前のように浸っている、退屈で変化に乏しく、心の休まる暇のないほど騒々しい「現状」から抜け出すことが、一番の早道なのです。

現状から抜け出す? そんなことができるだろうか? 現状から抜け出しただけでバラ色に変わるほど、人生は甘くないのではないか? あなたはきっと、そのような疑いを持ちながら、いま本書を読み始めたのではないでしょうか。

人生を変えるために、数々の自己啓発の方法を学んできた人であれば、なおさらそう感じるに違いありません。

いま世の中に広まっている成功法則は、人生を成功させるためには何よりも最初に「目標を明確にせよ」「自分の使命(ミッション)を持て」と教えています。

もちろん、目標と使命をはっきりと持つことができれば、それはそれなりに目標達成のための大きな力になることは間違いのないことです。

しかし、自らの目標と使命をはっきりさせることは、口で言うほどたやすくはありません。

たとえば、「起業して大金持ちになる」あるいは「年収を 1億円にする」という明確な目標を持ったとしても、抽象度の低いそうした目標はなかなか大きなビジョンには結びついてくれません。

その結果、明確にしたはずの目標が、むしろ「理想的な現状」として、その人をいまの「現状」にますます強く結びつけている例を、私はいくつも知っています。

こうした成功法則は、入口から、どこか大きく間違っています。

つまり、不満足な現状から抜け出し、将来にあるべき新しい現状に向かって進んでいかなければならないときに、目標や使命の明確化がかえってその邪魔をしてしまうのです。

コーチングの元祖、故ルー・タイスとともに私が実践してきた TPIE(タイス・プリンシプル・イン・エクセレンス)は、世界中で 3300万人が実践し、多くの成功者を生み出してきたコーチングプログラムの最新バージョンです。

その TPIEでは、「目標を明確にせよ」とか「自分の使命を持て」とは教えません。

ルー・タイスは存命中、コーチングをほどこす相手に対して、「人生の成功」という言葉をほとんど使いませんでした。

「成功」という言葉には、必ず他者からの評価という視点があります。他人から「あの人は成功者だ」と評価されて、初めて「自分は成功者だ」と胸を張れるというわけです。ルーは、他人からの評価には何ら意味がないことを、とてもよく知っていました。

功なり名を遂げてどんなに世間から高く評価されたとしても、本人が自らに対して心から満足することがなければ、それはけっして幸せな人といえません。成し遂げたことに心から満足できなければ、本人は成功したと感じられないわけです。

ルーと私は、成功という言葉を使わず、「人生のゴールを達成する」といっています。ゴールを達成すれば世間的には当然「成功者」とみなされるでしょう。

しかし、重要なことは、他人の評価ではなく、本人が心から満足できるかどうかです。そこで、他人の評価が入り込む余地をなくす意図を込めて、こうした表現を使っているわけです。

TPIEでいう「人生のゴール」は、自己啓発系の人々が教える「目標を明確にせよ」の「目標」の本来あるべき姿ということができます。

彼らとの違いは何かといえば、ルーと私は「人生のゴールは漠然としたものでかまわない」と教えている点です。

なぜ明確にしなくていいのか、あなたは疑問を持つでしょう。

一般の自己啓発によくあるのは、目標をはっきりさせるから目標達成の方法がわかり、目標を実現することができるのだ、という考え方です。

その思考法でいけば、そもそも明確にすることができないような目標を実現できるはずがない、という結論が出てもおかしくはありません。

しかしながら、ルー・タイスが自ら実践し、また指導してきたコーチングプログラムから見れば、こうした自己啓発系の考え方は致命的な間違いを犯しているといわなくてはなりません。

また、ゴールは現状の延長線上では決して達成できないものでなければなりません。つまりゴールは、現状の外側に設定せねばなりません。

目標は明確でなくていいという理由は追い追い詳しく述べていきますが、要点だけちょっと触れておきましょう。

それは、いま明確にすることのできる目標はいまの現状の中にある目標である、という点です。ルーと私は、これを「理想的な現状」と呼んでいます。

いまの現状で思いつく目標は、たいていの場合、本人にとっての「理想的な現状」にすぎないといえます。

たとえば、「いま勤めている会社で能力を認められ、社長に登りつめたい」という目標があるときの「社長」は、あくまで現状を積み重ねた延長線の先にすでに見えている目標です。

そのためにビジネススクールに行ったり、スキルアップのために特別な勉強をしたり、これまでとは違った新たな努力はそれなりに必要です。

しかし、目標達成のために行うそれらの選択と行動は、本質的にはいま日々行っている努力と何ら変わりません。

現状にとどまったまま捉えることのできる理想的な現状を目標にしているかぎり、どんな試みも現状を肯定し、維持するための手段になってしまうのです。

現状を維持することによって将来に実現できることは、そのすべてが「理想的な現状」です。

たとえ将来に、こうした理想的な現状が実現したとしても、そのときに本当に心の底から満足できる人生だったと感じることのできる人は、まずいないのではないでしょうか。

人間はすべて、本来的に現状に不満を持っています。なぜかといえば、本当に自分がやりたいことをできていないはずだからです。

人間が本当に心からやりたいことというのは、多くの場合、少年や青年時代の体験に根差しています。

そのころに体験したわくわくすること、爽快感あふれること、ハッピーでたまらなかったことなどのなかに、社会人になってからも本当にやりたいことの正体は隠されているものです。

もちろん、抽象度の上がった思考を身につけ、かつて一度も体験したことのなかったことをゴールにできる人もいます。

逆に、組織における出世そのものにわくわくし、生きるエネルギーが湧くのを感じ、それがハッピーでたまらないという人に、私は出会ったためしがありません。

むしろ、出世だけを望んできた人は、その理想的な現状が実現しても、いつも不安であったり保身に汲々としていたり、現状への不満を否応なく持ちつづける運命にあるといえます。

たとえば、家族全員が豊かに安穏と何不自由なく暮らす未来、地域のリーダーとして社会全体をよりよく前進させていく仕事にいそしんでいる未来、あるいは、世界が直面する問題の解決のために指導者たちを糾合する役割を担っている未来。人生のゴールとして望むべき未来というのは、このようなものではないでしょうか。

ルー・タイス自身、コーチングの考え方を広めることで、南アフリカのアパルトヘイト問題やアイルランド紛争を解決する仕事に取り組みました。

じっさい彼は、世界中の人々が等しく人生のゴールを達成し、その喜びを共有する世界の実現を人生のゴールの一つにしていました。このような壮大なゴールは、「社長になる」という目標とは、まったく異なる次元の抽象度を持っています。

かりに、そのために社長になることが必要だったとしても、それはゴール達成の一手段にすぎません。

ルー・タイスは、こうした人生のゴールを「現状の外側にあるゴール」といい、「人生のゴールは、現状の外側に設定しなさい」と教えました。

「現状の外側にあるゴール」とは、いったいどういうことでしょうか? つまり、簡単にいえば、いまの自分とはかけ離れ、いまの仕事や環境では考えつかないような突飛なゴールのことです。

社長になるだけでもたいへんなのに、果たしてそんなにかけ離れた人生のゴールを達成することができるだろうか……。

あなたは、そう考えるでしょうか。当たり前に浮かぶはずのこうした疑問も、ルー・タイスなら一笑に付すに違いありません。じつは、この考えは、まったく逆なのです。

いまの現状からかけ離れた人生のゴール、つまり現状の延長線上にはない突飛なゴールだからこそ、逆に私たちはそれを 100%実現することができるのです。

社長になれるかどうかは確率の問題であり、従業員の多い大企業に勤めていればその確率はかなり低く、 100%といえるはずもありません。

ところが、現状からかけ離れた、とんでもないゴールは、それを本心から強く望んでさえいれば、必ず実現することになります。

そのひとつの証拠が、自らを称して「一介の冴えない高校教師」にすぎなかったというルー・タイスが、世界的な実績を持つコーチングの第一人者になり、各国の要人や大企業のトップに頼られる存在になったことです。

彼が大きな役割を持つ人物になりえた理由に、これといった秘密はありません。

彼は、ひたすら遠くにあるゴールを強く思い浮かべ、その実現を心から望んだだけなのです。

この点についても、世間は、ルー・タイスにもともと人一倍の能力が備わっていたから、大きな成功を手に入れることができたと見なすでしょう。ところが、この因果関係も、じつはまったくの逆さまです。

ルー自身がさまざまな著作で述べているように、彼は自らそうなりたいと強く望んだがゆえに、その実現に必要な能力を自然に獲得していきました。強い望みが先にあり、それが必要な能力の獲得という結果をもたらしたというわけです。

「望めば叶う」と、彼はいいました。なぜ、そんなことが可能になるのか。のカラクリを、私は本書であなたに伝えていこうと思います。

ルー・タイスの重要な著作のひとつに、『アファメーション』(フォレスト出版)という本があります。

アファメーションというのは、簡単にいえば、自分で自分に語り聞かせる言葉のことです。これは、ルー・タイスが提示する方法論の中で、人生のゴールを達成するためのコアとなる技術です。

人間が自分の望みを実現する原理を突きつめて考えていくと、アファメーションを自分に言い聞かせていくだけで人生のゴールを達成してしまう、とさえいうことができます。

ルーは、『アファメーション』の中で、そこに働くゴール実現メカニズムを解明しています。

ただ、その説明原理は、私がルーとともに彼のコーチングプログラムを再構築する以前の一世代前の心理パラダイムをベースとしたものになっています。

いまあらためて読み返してみると、もう少し現代脳科学的な視点からの補足や説明を加えたほうが、さらに多くの人々によりよくルーのゴール実現メカニズムを学んでもらえただろうと感じました。

『アファメーション』は、ルー・タイスが彼のプリンシプルを余すところなく伝えようとした、それほどコアな力作です。

この名著にもう一度スポットを当てるためにも、私が認知科学者としての知見に基づいて、その入門編として成り立つような書物を著わす意義がありそうだと考えたわけです。

言葉というのは、じつに不思議な力を持っています。どんな言葉を使うか。その使い方ひとつで、その人の人生は決まってしまいます。

言葉がいかにその人に強い影響を与えるかについて記された本は、たとえばひところはやった「魔法のつぶやき」などのように、世の中にはいくつもあります。

しかし、なぜそれが人生に大きな影響を与えるのか、残念ながら、そのメカニズムを明快に解き明かしたものはありません。

あるとすれば、唯一、ルーの『アファメーション』だけではないでしょうか。

現状を抜け出し、人生のゴールを達成したいあなたは、本書で、そのメカニズムをさらにはっきりと知ることになると思います。

言葉が人生を決定する、その仕組みを理解することで、あなたは、現状を抜け出すことの意味や、そのために人生のゴールをより大きなものに描く必要性も理解することができるようになるでしょう。

もちろん、人生のゴールを達成するために、あなたが身につけるべき考え方の全体像も、はっきりと把握できるに違いありません。

人生のゴールを達成するためのルー・タイスの方法論は、けっして込み入った複雑な方法ではありません。

ルーとともにプログラムの開発に携わった私が太鼓判を押しますが、その全体像さえ理解すれば、むしろきわめてシンプルな方法といえます。

だからこそ、史上最強のコーチングプログラムとして全世界でその採用が拡大しているのです。

そして、 4度のオリンピック出場で前人未到の 18個もの金メダルを獲得した水泳のマイケル・フェルプスをはじめ、ルーの教えを実践して、秘められた可能性を次々に顕在化させる人々がますます増えているわけです。

現状をどうしても抜け出したいあなた。心の底から満足する人生を手に入れたいあなた。あるいは、これまで想像もしなかったような未来の自分になりたいあなた。その望みは、必ず実現します。

人間というものは、自分に本当にやりたいことがあるとき、たとえそれがどんなに途方もないことであっても、また客観的に見てできない理由が山のようにあることであっても、やり遂げてしまうものです。

たとえば、いつの間にか世界的なアーティストになっているピアニスト、いつの間にか世界トップの学者になっている数学者、あるいはいつの間にか世界的な事業家になっている起業家、国内ではほとんど知られていない世界的に有名な日本人は意外なほどたくさんいます。

彼らがそのような人生を手に入れることができたのは、「あの子は若いときから、ピアノがうまかった」「学生時代から頭がよかった」、あるいは「商才とオリジナリティがあった」などの理由に求められるのではありません。

それは、現状の延長線上にはない人生のゴールを思い浮かべながら、その実現をひたすら望んで選択と行動をくり返してきた結果です。強く望んでいれば、人間はその実現のために必要なことしかしなくなり、ついには思いどおりのことを実現してしまいます。

それは、並外れた能力や条件を備えている人だけにできる、特別なことではありません。経済力や環境条件とは異なり、思いどおりのことを実現する能力は、むしろ人間に等しく備わっています。

徒手空拳からコーチングの元祖となったルー・タイスが、世界の第一人者として成功したことが、何よりも雄弁にそれを物語っています。

とすれば、あなたはいますぐに、考えを変える必要があると思います。そして、自分は人生のゴールを達成し、心の底から深く満足する人生を手に入れることができると考えるべきなのです。

あなたの人生を阻んでいるのは、「私はこの程度の人間だ」とか、「あまり多くを望みすぎてはいけない」といった、あなたの内側に固く染みついた言葉の呪縛です。

「私にはだいそれた望みを叶える力はない」という自分自身の信念が、あなたをいまの現状に縛りつけているわけです。

この信念は、何によってつくり出されているかといえば、言葉によってです。これまでの人生において、あなたは他人からそう聞かされてきたし、自分でも自分にそう言い聞かせてきたはずです。

たかだかそんな言葉にさらされつづけるだけの単純なことで、人間は「自分はこの程度の人間だ」とか「自分にはできない」などと思い込んでいます。

言葉というのはたいへん危険なシロモノです。しかし、いっぽうで、こうした言葉が持つ力を逆方向に利用してやることは、簡単なことです。

単純にいえば、「私はすごい人間だ」とか、「自分にはできる」という言葉を、自分で自分に言い聞かせるわけです。たったそれだけのことでも、人間のマインドは非常にポジティブに変わってしまいます。

アファメーションの技術を学び、それを使いこなせるようになれば、さらに大きな成果が生まれます。

人生のゴールを達成するために必要なことが、よりはっきり見えるようになり、毎日の行動と選択は自動的にゴール達成に必要なことに集中するようになるのです。

このように、言葉というのは両刃の剣です。うまく使うことさえできればこれほど強い味方はありません。しかし、そうでない場合は、これほど人間をダメにしてしまうものもないといえます。

本書を手にとってくれたあなたは、もう何も心配することはありません。

言葉を味方につけるコツを学ぶことにより、自動的に人生のゴールを達成する方法を身につけることができるようになります。

その先は、自分で心から望む人生のゴールを達成するだけです。

10年、あるいは 20年後のあなたは、いまの現状の自分が考えもつかないような、とてつもなくかけ離れた素晴らしい人生のゴールを、きっと実現しているに違いありません。

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