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第7章筋トレに関する誤解と偏見を解消する

──筋トレにはある種の偏見も根強くあります。例えば柔軟性が落ちる、競技には役に立たない、ケガをしやすくなる、やめると太る…などなどです。

僕がこの本を通して一番伝えたかったテーマがついにやってきました。

この仕事を受けたのは、世間の筋トレに対する悪いイメージや偏見、特に専門とする「筋トレがアスリートに与える影響」についての誤解を解くためだったと言っても過言ではありません。

え?久保君が仕事を受けたのは俺が大好きだからじゃないの?「Testosteroneさんのためならなんでもやります!大好きです!」的な感じじゃないの?いいえ、違います。

、。

はい……。(シュン)では始めます。

現代のトップアスリートの間では筋トレはもはや常識になっており、筋トレをまったくしていないアスリートを探す方が難しいでしょう。

しかし、古いタイプの運動部の指導者などを中心に「筋トレは不自然なトレーニングであり、運動パフォーマンスに悪い影響を与える」と考えている人がまだまだ多いのが現状です。

中でも、柔軟性が落ちる、選手のケガが増えるといった「筋トレ迷信」については明確に否定されているものがたくさんあります。

──確かに学生時代の部活の顧問に「筋トレより競技の練習をしろ、走りこんで足腰を強くしろ」などと言われてそのまま筋トレアレルギーを持ち続けている人も多そうです。

スポーツ大国アメリカではアスリートと筋トレは切っても切り離せない関係にある。

〝筋トレ〟が授業として選択できる学校も多く、一般生徒の多くが筋トレに取り組んでいるため、アスリートが筋トレをするのは至極当然といった風潮すらある。

アメリカの学生スポーツは「シーズン制」を採用しているが、シーズンオフの時はフィジカル強化のために競技の練習よりも多く筋トレしている連中もいるぐらいだ。

特に体重と瞬発力がモノを言うアメフト勢とか。俺も高校の時はアメフトをしていたが、コーチから「来シーズンまでに体重15kg増やせ。ベンチは○○○kg、スクワットは○○○kg、デッドリフトは○○○kg、パワークリーンは○○○kg、これクリアしてこいよ!」と体重と筋トレの重量を指標にオフ中の課題を出されていた。

──スポーツ観戦をしていると海外選手とのフィジカルの差を見せつけられるシーンが多いのはそういうところにも原因があるかもしれませんね…。

では安心して筋トレに取り組むためにも、巷にはびこる「筋トレ迷信」についていろいろ教えてください!では一つずつ説明していきましょう!

【迷信1】筋トレをすると体が硬くなる→ウソ

Mortonら(2011)の研究によると、ある一定期間以上(5週間以上)筋トレを続けた場合、筋トレにはストレッチと同等かそれ以上の柔軟性獲得(膝関節、股関節、肩関節)の効果があることがわかっています。

これは、筋トレによって筋肉そのものの構造が変化したのではなく「ストレッチトレランス(stretchtolerance)」と呼ばれる痛みの閾値が変化したことが要因であると考えられています。

──い、痛みの閾値??難しいですね…。

toleranceは「我慢、耐久力」という意味なので、筋を伸ばしたときの痛みに耐えられるようになる、つまり「慣れる」というようなイメージでしょうか。

例えば開脚ストレッチを習慣的にやった場合、最初は痛くて全然開かなかった足が、慣れるにつれてだんだん開くようになっていきますよね。

ストレッチではなくて筋トレをした場合でも同じようなメカニズムで同等以上の効果が望める、ということです。なので、筋トレをしているからといって、長期的に見て体が硬くなる心配はなく、むしろプラスの効果があるということを覚えておいてください。筋トレをすると柔軟性がなくなる、というのは完全に思い込みに過ぎず、むしろ可動域は広がっていく。

多くの著名なボディビルダーがパフォーマンスで180度開脚を披露していることからも、筋肉と柔軟性の両立が可能であるとわかる。

トレーニーの世界では完全に常識なのだが、一般の方々の誤解をまだ払拭できていないのが現状だ。

【筋トレ迷信2】ケガをしやすくなる→ウソ

──トレーニング後に筋肉痛になると、痛みで可動域が狭くなるので、体が硬くなった、と誤解してしまうという部分もありそうですね。

可動域が狭くなる=ケガしやすくなる、だから筋トレをするとケガしやすくなる、という誤解を生んでいる気がします。

今まではストレッチを行うことが障害を予防するための一番の近道だと考えられていました。

しかし最近になって、ストレッチには障害を予防する効果はあまりなく、筋トレこそが障害を予防するツールだということがわかってきました。

Hartら(2005)及びThackerら(2004)の総説によると、運動前、後のストレッチは劇的にケガの発症率を低下させるわけではないということが明らかになりました。

筋トレをすると柔軟性もなくなるし、ケガも増える、というのはまったくの逆で、筋トレをすると柔軟性も向上し、ケガも予防できるのです。ただ、ストレッチにもリラックスや疲労回復などさまざまな効果がありますので、適宜取り入れると良いと思います。

──これは衝撃ですね!「ケガしないようにしっかりストレッチしとけよ~」とよく言われた記憶がありますもん…。

逆に筋力の不足やアンバランスがケガを招くこともわかっています。

サッカー選手を対象にしたLeeら(2017)の研究では、太ももの後ろ側であるハムストリングスの筋力(バーベルを用いた単純な筋力測定ではなく、専門の機器を用いたトルク計算によって算出)が太もも前面の大腿四頭筋の筋力の50・5%を下回るとハムストリングスのケガが起こりやすくなることが報告されています。

この場合、ハムストリングスと大腿四頭筋の筋力のバランスを整える筋トレが故障を防ぐと言えるでしょう。ちなみに大腿四頭筋の筋力が1に対してハムストリングスが0・6─0・7くらいがベストです。これは何もアスリートに限った話ではない。

、、。

普通の人ならケガしちゃうような場面でも、筋力さえあれば乗り切れちゃうかもしれない。

【迷信3】筋トレをするとスピードがなくなる→ウソ

──筋肉をつけてムキムキになると動きが遅くなるというか、敏捷性がなくなる、というようなことが言われることもあります。

筋肉の量と出力は基本的に正の相関がある。つまり原則的には筋肉をつければつけるほど出力は上がる。

もちろん、各スポーツに適した体重や体脂肪率、ボディバランスというものがあるので筋肉をつければつけるほど良いというわけではないが、筋トレがスピードを殺すというのは誤りだ。

適切な筋トレと筋肉量はスピートを上げる。

陸上の100mの選手をマラソン選手と比べてみるといいだろう。100m選手の方はマラソン選手に比べ筋骨隆々であることに気付くはずだ。筋肉がないほうがスピードが出るというなら、彼らはあんな体にはならない。

──確かに全盛期のボブ・サップの動きはすごかったですし、力士のスピードも生で見るとびっくりしますからね…。

筋肉がつくとその分体重が増えるので、マラソンやクロスカントリーなど長距離を走る競技をしている人にとって必要以上の体重増加は、競技力の低下につながる場合があります。

でも、筋トレによる体重増加は有酸素運動と筋トレを組み合わせることによって抑制できることも明らかになっています。

この現象は「インターフェアレンス効果」と呼ばれていて、そのメカニズムの複雑さ故に業界内でも大きな注目を集めています。

筋肥大に関してはカロリーコントロールやトレーニングの質(神経系を鍛えるのか、筋肥大を目指すのか等)も関係するし、必ずしも筋トレ=筋肉がついて体重増加ではないしな。

この辺は独学では難しいので、プロの指導者に師事するのをオススメする。

日本ではそういったプロの指導者の方々が適正な評価と給与を受け取れていないと感じるので、なんとかしたいとも思っている。

久保君、頑張ってモデルケースになってくれ。日本のプロスポーツは、フィジカル強化でもっともっと強くなれるだろう。

【迷信4】筋トレで付けた筋肉は使えない?→目的を無視した筋トレは競技力向上を妨げる可能性がある

「」、「」。

、、。

自分が指導できない、自分が知らない領域だから筋トレなんて必要ないと言っている指導者も多い気がするなぁ。

実は取り組んでいる競技によって筋肉の質が違うという調査はあります。

Meijerら(2015)の研究によると、ボディビルダーの筋線維あたりの力発揮、パワー発揮は他のパワー系競技のアスリートの筋線維あたりのそれよりも有意に小さいことがわかっています。

しかも、ParejaBlancoら(2017)によると無理に追い込むようなトレーニング(最大時の40%まで速度が低下)をすると、筋肉のタイプが瞬発型から持久型へ変化(タイプ2xから2aへの変化:いわゆる速筋から遅筋へ変化するわけではなく、速筋の中でも遅筋寄りの速筋になってしまう)してしまう可能性があることが明らかになっています。

なので、瞬発的な競技をしている方は、やみくもに追い込めばいいというわけではなくて、目的に合わせてトレーニングの様式を変化させるのがいいでしょう。

ボディビルでは筋力よりも「いかに軽い重量で関節や体に負担をかけず対象筋に刺激を与え肥大させるか」が大切だったりする。

高重量を扱うのも良いが、筋肥大の一番の敵はやっぱりケガやオーバーワークだから軽い重量で肥大させられるならそれに越したことはない。

そういった明確な目的を持ってトレーニングをしているボディビルダーに対して「使える筋肉、使えない筋肉」とか言うのはナンセンスな話だよね。

【迷信5】筋トレをすると風邪をひきやすくなる?→本当

──筋トレを激しくやっているトレーニーは風邪を引きやすいなんていう話もあります。

驚くことに、激しい運動をしている人は風邪などにかかるリスクが一時的(数日間)に通常の2─6倍になってしまうというデータがあります。

これは「オープンウインドウ説」と呼ばれていて、免疫力という観点から見た場合に激しい運動が推奨されていない理由の一つになっています(次のグラフ)。

ですので、大事な試験やイベントが近いときは、激しい筋トレや運動を一時中断して、程よい強度の筋トレや運動に切り替えてみるのもアリだと思います。

──激しい運動をすると免疫力が落ちて、まるで自分の家の窓を開けっぱなしにしているかのような状態になって、ウイルスとかが入ってきやすくなっちゃうということですね!めっちゃわかりやすい。

この原稿書いてるとき、久保くん体調不良で2─3日寝込んでたもんね(笑)。

【迷信6】プロテインは太る?→ウソ

──プロテインを飲むと太る、筋トレをやめると太るという俗説についてはどうでしょうか?これもよく言われていますが、何事も「しすぎ」は体に良くないので、プロテインも摂りすぎれば太るでしょう。

ただ「プロテイン」は「タンパク質」を英語にしたもので、牛乳や大豆、牛肉などいろんな材料を精製して粉末状にしたものです。

そこにいろいろなビタミンや甘味料を加えて出来上がったものがいわゆる「プロテインパウダー」なので、特別な食品ではありません。

プロテインは炭水化物や脂質をほとんど含んでおらず、無駄なカロリーを摂取せずタンパク質を手軽に補給したいという人にとっては強い味方となります。

ちなみに、プロテインの摂取で腎臓がやられてしまう、というのも根拠がないので気を付けましょう。筋トレをやめると筋肉が脂肪に変わって太るなんていう俗説もあるが、ありえない。

「、」とんでもない説、。

【迷信6】筋トレをすると身長が伸びなくなる?→根拠なし

──あまり小さい頃から筋肉をつけると身長が伸びなくなる、という話も聞いたことがあります。確かにトップクラスのボディービルダーやパワーリフターは比較的小柄な人が多い印象もありますね。

今の所の僕の知識では、年齢が若い頃に筋トレをすることが身長の伸びを止めてしまうといった論文は見たことがありません。しかし、身長が低い人はそのコンプレックスからか(僕も含めて)筋トレにハマっていく傾向があるように感じます。

さらにウエイトリフティングなどの競技では、その競技特性で小柄な選手が有利なことがあるので、そういうところから「筋トレ→身長伸びない」という風潮が生まれているのだと思います。

──筋トレについての思い込みや偏見はなかなか根強いものがありますが、かなり疑問点が解消された気がします。

この分野を研究している身からすると、一概に「この筋トレをするとこれに効果があって、これをやるといい」と断言することはできません。

というのも、何が正しいのかまだわからないからこそ、世界中で研究が続けられているからです。

ですので、パフォーマンス向上のために筋トレに取り組む上で、これを心がけたらいいのではないか、という点をトレーナーの視点からお話しさせてください。

①全可動域で極端に浅いフォームでトレーニングを行ってしまう人を多く見かけます。その気持ちもわかりますが、トレーニングでしか与えることのできない刺激もありますので、全可動域を使ってしっかりと筋に刺激を与えてあげましょう。

スクワットならしっかりとしゃがみ込む、ベンチプレスならきちんと胸まで下ろすことを意識してください。スクワットを全可動域で行うと、そうでない場合より脚全体の筋肉がバランス良く筋肥大を起こす、なんていうことも研究でわかっています。

②無理のないフォームで正しいフォームでとは言いません。何が「正しい」のかわからないし、目的によってその「正しい」は異なるからです。

ですが、自分のキャパシティーを踏まえ、無理のないフォームで行うことは誰でもできます。初心者でも上級者でも、無理のない重量、フォームで行うことがパフォーマンス向上への近道です。

特に男性諸君、気をつけて!(見栄を張りすぎないように!)

③速度を意識してみる

先ほど紹介したParejaBlancoら(2017)の研究でも触れましたが、無理に追い込むと筋組織が変化してしまう可能性がありますし、スクワットを疲労した状態で行うと腰部に負担がかかってしまうことも明らかになっています。

無理な重量で追い込むトレーニングは時代遅れになりつつあります。

最近では速度を重視したトレーニング(VelocityBasedTraining)が台頭してきており、追い込む場合と速度に余裕を持って終わる場合では、余裕を持って終わった方が筋力の増加が大きいことも明らかになっています。

なので、速度を意識できていれば、10回できる重さを6─8回で終わらせても十分な効果が得られます。「ノーペイン、ノーゲイン」の時代はもう終わったのかもしれません。

筋トレ始めたばっかりの頃に聞きたかった良いアドバイスだなぁ(しみじみ)。

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