価値観のズレが、メンタルダウンを生む本書で扱う「居場所」とは「価値観が満たされ、強みが活きる環境」のこと。
そのため、あなたが自分に合った「居場所」を手に入れるのに知るべきことは、自分の「価値観」と「強み」の2つの要素であることは、すでにお伝えしてきた通りです。
本章ではまず、「価値観」を知る自己分析に取り組んでいきましょう。
ちなみに復習ですが、「価値観」とは何かというと、「何に価値を感じるかという考え方」のことでしたね。
なぜ「価値観」を先に見つけるべきなのか?というと、もしも「価値観」の自己分析を後回しにして「価値観が合わない環境」を選んでしまうと、ときに致命傷レベルのダメージを負う可能性があるからです。
実際にあなたはこんな経験をしたこと、あるいはこんな人を見たことはないでしょうか?●仕事がデキて職場での評価も高いのに、ストレスで心の病を患ってしまった人●誰もがうらやむ容姿や才能や人気を持っているように見えても、自信がない人●異性にモテて付き合う相手が途絶えないのに、なぜか孤独を感じている人何もわたしたちの身近な人だけではなく、著名人のニュースや自叙伝などでもこういったケースを見聞きすることがあるかもしれませんね。
実はわたし自身も「強みを活かして仕事で評価されているのに、心は苦しかった経験」をしたことがあります。
なぜ、他人から褒められても満足できないのか当時わたしは広告会社で営業の仕事をしており、苦労して身につけてきたセールススキルのおかげで売上はすこぶる好調。
上司からの信頼も厚く、自分でも仕事を楽しめていたので、我ながら絶好調だと思っていました。
しかし、あるときのチーム異動がきっかけで、絶好調だったわたしの状況は一転。
徐々に心身に不調をきたすことになったのです。
その理由は、新しい営業チームでは、それまでわたしがずっと大事にしてきた「一対一でお客様と深い信頼関係を築くこと」が難しくなったことにあります。
というのも、異動前は自分でスケジュールを調整できたので、一社のお客様のもとに何度も通ったり、丁寧にヒアリングをすることが叶いやすい環境でした。
しかし、異動した先の新しいチームは、「質より量」という方針。
スケジュールはすべてアシスタントが管理し、1日にこれまでの2倍以上のアポイントが入るのが普通になってしまったのです。
上司に相談してはみたものの、当時のわたしの一存ですぐにチームの方針を変えることはできず、わたしのスケジュール帳は毎日びっしりとたくさんのお客様とのアポイントで埋め尽くされていきました。
次第に「アポイントの数をこなすこと」に必死になってしまったわたしは、それまで大事にしてきた「お客様との深い信頼関係づくり」ができなくなったことに強いストレスを感じ、最初は好調だった売上も徐々に落ちていき、最終的にはメンタルダウンしてしまう結果となりました。
このように、いくら自分の「知識」や「スキル」などの強みが活かせる環境であったとしても、自分が大事にしたい価値観とあまりにもかけ離れていると、ストレスが溜まり、心身の健康が失われていくことになってしまいます。
そうなればパフォーマンスの質は落ち、元々活かせていた強みでさえ、活かせなくなってしまうかもしれません。
わたしのお客様でも、●仕事を頑張っていたら、昇進を目指したいわけではないのに、会社の意向で「もっと上を目指せ」と言われ続けてストレスが溜まってしまった方●他人から羨ましがられるほど有名な大企業で勤務していたけれど、社内政治ばかりで「お客さまのために働けない状況」に耐えられなくなって、転職した方など、「好きでやっていること」や「他人からはよしとされること」であっても、自分が大事にしたい「価値観」とズレてしまっていたがゆえに、苦しんだことがある方はとても多いです。
大切なのは「頭の声」より「心の声」もし、今いる居場所が「それなりによい場所のはずなのに、居心地が最高なわけではないな」と感じているなら、「他人の価値観」で居場所を決めている可能性があります。
わかりやすく言うと、「こういう場所が(多くの人にとって)よい場所だろう」と頭で考えて選んでいる、ということです。
カッコ内には他にも、(親から見たら)(誰もがうらやむ)(世間一般的には)など、いわゆる「自分自身が主語ではない言葉」が入ります。
自分の本音である「心の声」では、自分にとって100%居心地がよいわけではないと感じているけれど、「でも、世間的には十分恵まれた環境だ」などのように「頭の声」では正解と判断していることはありませんか?このように「他人の価値観」を中心とした判断基準を「他人軸」といいます。
つまり、「他人の価値観」を優先して居場所を選んでいると、仮にそこで「自分の強み」を活かして活躍できていたとしても、「なんとなくモヤモヤした状
態」「居心地は悪くはないが、よくもない状態」が残り続けることになってしまいます。
あなたにとって本当に居心地のよい「居場所」を手に入れるには、「他人の価値観」ではなく「自分の価値観」を知ることが欠かせない、というわけです。
こうした「自分の価値観」を中心とした判断基準を「自分軸」といいますが、自分軸を持っていれば、「自分にとっての幸せ」をもたらす環境を選ぶことができます。
前向きな行動が自然に取れるシンプルなルールそこで、本章でこれから行うのは「これまでの経験・環境」について振り返り、自分にとって大事な「価値観」を見つけるワーク「自分の価値観リストづくり」です。
具体的には、あなたが「人生で大切にしたいこと」や「人生で味わいたくないこと」などを本音で言語化し、優先順位をつけていきます。
重要なのは、その「価値観リスト」に合わない環境や人間関係は「必ず抜け出す」と決めてしまうこと。
もし現実的には少し時間がかかったとしても、最終的にはそこから抜け出して、もっとあなたの価値観に合う「居場所」を見つけにいく。
そう決めてしまえば、自ずとあなたが取る次の行動は、今とは変わってくるはずです。
これまでなら「ホワイト企業だから辞められない」「薄情なやつだと思われるのが怖いから誘いを断れない」「ハイスペックな彼だから別れられない」などと躊躇していたことも、自分の強みや価値観を明確にしていけば、「もっとよい居場所に出合うためにも卒業しよう」と前向きに思えるようになります。
自分の「価値観リスト」と照らし合わせ、合わない環境や人間関係からは抜け出す。
とてもシンプルな行動基準ですが、このルールにしたがって行動をしていけば、必ず最高に幸福度の高い「居場所」に出合うことができるでしょう。
最も大事な基準は「自分はどちらを好きか」また、当たり前のようで意外と忘れがちなポイントなのですが、あなたが大事にしたい「価値観」は、他人と違っても何の問題もありません。
むしろ、「違うのが当たり前」とすらいえます。
たとえば、「激務は疲れるし嫌だ」と思う人がいる一方で、「忙しいほうが生きてる感じがして好き」と思う人もいます。
「仕事だけじゃなくてプライベートも大事にしたい」と思う人がいる一方で、「もっと仕事をして成長したい」と思う人もいます。
「友達はたくさんいたほうが楽しい」と思う人がいる一方で、「気の合う友達と深く濃い付き合いをしていきたい」と思う人もいるのです。
法律など社会のルールを守ることは前提だとしても、多くのことは、どちらが「よい価値観」「悪い価値観」というものはありません。
そこには、「自分はどちらを好きか」という基準しかないのです。
なので、「こんなこと言ったら笑われるかな」とか「こんなふうに思うのはわがままだよね」など、自分の価値観を封印する必要もまったくありません。
それが「自分軸」で生きるということです。
自分の中の「価値観ランキング」を決めよう一言で自分が持っている「価値観」といっても、無数にあるものです。
たとえば「仕事を真面目にやること」とか「人に優しくすること」とか、「食事にこだわって健康に暮らすこと」とか「自分の時間を大事にすること」など、人生経験の分だけ、大事な価値観もたくさんあると思います。
それゆえに、すべての価値観を把握することも難しければ、すべてを満たすことも難しい状況があるでしょう。
「自分の時間を大事にしたい」という価値観を持っていても、子どもなど「他人を優先するとき」もあるでしょうし、「丁寧に料理をして健康的な食事がしたい」という価値観を持っていても、「今日は忙しいからお惣菜で済まそう」なんて日もあるでしょう。
ですから、「価値観のすべてを把握し、満たすこと」は重要ではありません。
大事なことは、「優先順位の高い価値観を知っておくこと」です。
そして、自分が頑張りすぎなくても、自然とその優先順位の高い価値観を満たせる環境を手に入れておけば、かなり幸福度が高まるでしょう。
「その日の体調やスケジュールによって、起きる時間を自分で決める」という価値観をとても大事にしている人が、「朝は早く出社して全員で朝礼をすることが大事だ」という方針の会社で働き続けると、我慢を強いられることになります。
また、「まず親である自分が満たされているからこそ、子どもを幸せにできる」という価値観をとても大事にしている人が、「育児は我慢だから、子どもが最優先で親のことは二の次」という価値観の人と暮らすのはストレスが溜まります。
もちろん自分にとってそこまで重要ではない「価値観」であれば、状況によって我慢や他人に譲ることができるかもしれません。
けれど、自分にとって重要な「価値観」であればあるほど、譲れない「価値観」であればあるほど、それが尊重されない環境にいては、どんどん心が苦しくなってしまいます。
価値観を優先することは、自分の人生を守ること実際にわたし自身も、会社を退職して自分の会社を経営し始めたとき、悩みもがいた経験がありました。
わたしが大事にしたい価値観のひとつは「自分の得意を活かすこと」です。
たとえば「発信するコンテンツや講座のカリキュラムを考え、生み出すこと」や「お客さまのお悩みや背景を深く観察し、情報を集めて整理すること」などは、わたしにとって「得意なこと」でした。
一方で、事務作業や経理などの単純作業、スピード感の求められる問い合わせ対応などは、わたしにとって「苦手なこと」に分類されるものです。
しかし、会社を経営し始めると、社会のルール上、わたしの「得意なことを活かしたい」という価値観に反して「苦手だけれどやらなければいけないこと」が発生してしまいます。
それがわたしにとっては、とても窮屈でたまりませんでした。
せっかく独立して好きなことを仕事にできたのに、「問い合わせ対応だけで1日が終わってしまうな」「事務作業に時間がかかって、今日も講座のカリキュラムをつくれなかった」などの状況が続くと、苦しくなってしまうのです。
そこで、わたしは思い切って「人に任せること」を選択しました。
事務や経理、問い合わせ対応などの「苦手な業務」は、それを「得意とする人」にお願いして、自分はできる限り「得意なこと」に時間を使うようにする。
もちろん最初はお願いできる人がなかなか見つからず、また膨大な業務をマニュアル化するのにも骨が折れましたが、それでも「自分の大事な価値観を優先する」と決めていたことで、ひたすらに行動し続けることができました。
もし、ここで「自分の大事な価値観」が明確でなければ、どうなっていたでしょうか?きっとわたしは「会社を経営するなら避けられないものだし…」「みんながみんな好きな仕事だけやっているわけじゃないし、嫌な業務も自分でやらなきゃいけないよね…」などと、他人が決めたルールや一般常識などにのっとって「何となく」ストレスを選び続ける人生になっていたことでしょう。
もちろん、その生き方が悪いわけではありません。
そのストレス、本当に必要ですか?しかし、考えてみていただきたいのは、わたしたちは、「何となく」でストレスを受け続けていいのでしょうか?ということ。
前提として、ストレス=悪、と一概には言えません。
「家族の笑顔を見ることが何よりも幸せだ」という価値観を優先するために、「これくらいの我慢は自分にとって必要なストレスだ」と思える状況ならば、それは自分にとって幸せになるためのストレスです。
「自分の成長を感じるのが楽しい」という価値観を優先するために、一時的に「ハードワークだけれど苦手なことに挑戦して、自分を成長させるんだ」と思えれば、それは自分にとって必要なストレスです。
ですが、そうではなく、「ストレスを感じるのは本当は嫌だけど、なくすのは無理そうだから仕方ないよね」と、〝何となく〟飲み込むストレスに、本当に意味があるのでしょうか。
自分の価値観と、優先順位がはっきりとわかっていれば、目の前のストレスが「自分にとって必要なものか」それとも「不要なものか」がわかるようになります。
そうなれば、「自分にとって不要なストレス」はどんどん捨て、より幸せに生きていくことができるでしょう。
これらはほんの一例ですが、●自分は家族との豊かな時間を大事にしたいから、同じように「人とのつながり」を大事にするパートナーを選ぶ●仕事ではミスのない正確性を大事にしたいから、スピード感ではなく、正確性が求められる職種を選ぶ●自分は売上よりもやりがいを大事にしたいから、「売上至上主義」のコミュニティからは離れてみるなど、自分にとって「優先したい価値観」に沿って生き方を選ぶと、人生がどんどん生きやすくなっていきます。
もっと、価値観に正直に生きていい自分が大事にしたい価値観は、一生同じではありません。
人生のタイミングや人との出会いなど、経験値が増えることによって変わっていくものです。
たとえば独身時代は「自分中心で生きていきたい」と思っていた人が、結婚して子どもが生まれて「家族を優先して生きていきたい」と感じるようになった、などは珍しくない変化ですよね。
他にも、若い頃は「自由に使えるお金を稼ぎたい」というモチベーションで仕事を頑張っていた人が、年月が経ちその欲求が満たされてくると「もっと社会に貢献したい」と思うようになることもあるでしょう。
「都会のマンションで便利な暮らしがしたい」と考えていたけれど、実際に住んでみたら意外と「自然豊かな環境のほうが落ち着くな」と感じることもあるでしょう。
このように価値観の変化は当然起こるものなので、恐れる必要はありません。
大切なのはつねに「今の自分の価値観」に敏感になることです。
また、「今の自分の価値観」を優先して行動することも、同じくらい重要です。
先ほどの例のように、行動してみて初めてわかることや、価値観が変化することは多分にあるからです。
モヤモヤも苦しみも、動かなければ消えません「ラーメンを食べたい」と思ったら、実際に食べてみることで、「やっぱりラーメンが好きだ」と思えるかもしれませんし、「美味しいけどもっと細麺のほうが好みだな」「意外とつけ麺のほうが好きだな」など、新たな価値観に出合うきっかけになるかもしれません。
「この価値観を満たしてみよう」と行動するからこそ、自分の価値観がよりくっきりと明確になっていく、ということです。
したがって、今の価値観が明確になっているのに、「いつか変わるかもしれないから」と行動を起こさないでいては、ずるずると同じ悩みを抱え続けることにもなってしまいます。
今の「価値観」がわかったら、ほんの少しでもそれに沿って行動してみる。
これはぜひ覚えておいていただきたいポイントです。
ポイントを押さえた上で、次のページから早速、ワークをしていきましょう。
自分が何を大事にしたいのか「自分の価値観を知る」ワークです。
くり返しになりますが、あなたの価値観は他人と違っていて当然ですし突拍子もないものでも、問題ありません。
誰にも遠慮せず、自分に素直に思うまま、書き進めてみてくださいね。
いかがでしたか?今いる環境をよくしたい方も、次なる環境に移りたいと考えている方も、いずれにせよ今回のワークで明確になった「自分の大事な価値観」と照らし合わせ、あなたがいるべき「環境」を選んでいきましょう。
次の章では、とうとう「あなたの強み」を掘り下げていきます。
きっと今まで気づかなかったあなたに出会えるはずです。
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