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第1章 礼節がある人だけが受け取れる6つのギフト

はじめに

目次

礼節とは、相手を想う心が形になったもの

あなたは、仕事において何を大切にしていますか?「仕事なのだから結果がすべて!」「〝稼いだ額〟以外ないでしょ」というご意見もあるかもしれません。もちろん、仕事はボランティア活動ではないので、このような考えもあるでしょう。

しかし、このような目先の利益や結果に追われて「人として大切な心」を見失ってしまうと、かえって望むような結果は得られません。

あとでご説明するように、心を大切にして仕事に向かう人ほど周りから応援され、助けられ、認められるからです。

この本のテーマは、「礼儀礼節」をもって仕事をすることがいかに優れた効果をもたらし、人望を集め、自分と周りの人たちを幸福にしてくれるかということです。

「礼儀礼節」というと、ちょっと堅苦しい四字熟語に見えるかもしれませんが、かみ砕いて言うなら、「心を形にした行動」と言い換えられます。

心というのは「思いやり、心遣い、気配り」「敬意」「感謝」に代表される〝想い〟を指します。

情報技術の発達でとても便利な時代となり、たいていのことはその場で調べて「正解」を手に入れられますし、欲しいものはいつでもどこでも注文することができます。

ですが、このような現代であるからこそ、人にしか提供できない価値である「心を丁寧に扱う」ということをしっかり考える必要があるのです。ものやお金も人を幸せにしますが、本当の幸せは人とのかかわりのなかで生まれることが多いからです。

目には見えなくても、想いや心は必ず伝わる

私は、航空会社の客室乗務員(CA)として国内線、国際線でたくさんのお客さまと出会ってきました。また、サービス訓練教官として多くの訓練生を指導した経験もあります。そこではさまざまなお客さまにとっての〝いいサービス〟を追求するために、しぐさや表情、接客術を磨きました。

しかし、これらの経験を通じて何より大切だと確信したのは、「どのような気持ちで人と向き合っているか」ということでした。

相手に敬意を払うこと、相手の幸せに貢献したいと思う心。すべてはそこから始まるとさえ思っています。

CAを辞めて独立をした際には、恥ずかしいことにビジネスを展開していく術やノウハウなどは何もありません。ひたすらやってきたのは、乗務員時代に学んだ礼儀礼節を重んじることだけでした。

それが身を助けたと痛感する場面はこれまでいくつもあります。

また、最近では私も誰かの応援をする側になることも出てきました。

その際に考慮するのもやはり、「礼儀礼節を大切にしている人かどうか」です。

そのような人はみな共通して次のような感情を抱かせます。

「この人なら誰に紹介しても間違いない(という絶対的安心感)」「この人なら応援したい」「この人とまた一緒に仕事がしたい」誰に対しても分け隔てなく優しさがあり、相手への配慮や敬意があるのですから、応援したいと思うのはけっして不思議なことではありませんよね。

ビジネスや人間関係において、相手を大切にしているからこそ、「選ばれる」「紹介される」「応援される」という結果を手にしているのです。

相手を大切にしているからこそ、その報いが形として返ってくるのです。

ただし、想いや心がいくらあったとしても、それは目には見えないので伝えるための形や行動が必要です。

さらに言うなら、その行動に誤解を招くものがあると想いは正確に伝わらないのです。

形や行動は「心」が表出した結果

客室乗務員時代、とあるVIPが搭乗するフライトを担当したことがあります。

テレビやニュースでは何度もお見かけしていましたが、ご本人とお会いするのは初めてのことでした。

以前にもこの方を担当したことがある先輩からは、「お会いすれば誰もがファンになってしまうような方」と聞かされていました。

実際に機内にお迎えし、先輩の言葉通り私はすっかり心を奪われてしまいました。

乗務員一人ひとりに対しての丁寧なお辞儀、優しく品のあるまなざしと柔らかい物腰──。

お席にうかがった際には、軽く座り直して体をこちらに向けて話を聞いてくださいました。

相手への敬意に満ちた礼儀正しい目線や所作が、これほどまでに深く心に響くものなのかと身をもって知ることができた出来事でした。

相手を大切に想う心。

それは相手を魅了し、ひいては自分自身をも幸せにします。

まずは「心」から。

そしてそれを正しく伝えていくための「形や行動」。

この両輪について書き綴ってまいります。

あなたの仕事や人間関係がさらに豊かになっていくための一助となれば幸いです。

どうぞ最後までおつき合いくださいませ。

第1章礼節がある人だけが受け取れる6つのギフト

ギフト1礼節のある人は敵をつくらない

「敵をつくらない」というと、単に人当たりがいい、波風が立つことを言わないなどの行動だと思うかもしれませんが、それだけでは仕事を遂行することはできません。

それは社内の人間関係、とりわけ上司と部下の関係においても同じことが言えます。

みなさまにとって、上司とはどのような存在でしょうか。

また、自分が上の立場になったとき、どのような存在でいたいでしょうか。

日本航空(JAL)ではいろいろな上司と出会ってきましたが、誰からも口をそろえて「大好き!」と言われ、慕われる女性の上司がいました。

思い返せば、その上司は部下である私たちに対していつも「礼節」をもって接してくれていました。

だからこそ、どんな部下からも慕われ、私たちも本当の気持ちを話すことができたのです。

では、具体的に上司がどのような想いをもって、どのような行動を見せてくれたのかをご紹介します。

当時、幼い子どもがいた私は、深夜と宿泊の勤務が免除される制度を利用して乗務していました。

このような制度とフォローしてくれる仲間に感謝するとともに、なるべく早めに子どもの行事の情報を入手し、なんとかフライトスケジュールが立てられる前に有給申請するようにしていました。

それでも仲間に対して負担をかけることになるので、「せめて割り当てられたフライトスケジュールだけは、子どもを言い訳にせずしっかりやり遂げたい」という気持ちで仕事に臨んでいました。

ところが、同様の制度を利用していたある乗務員が、その上司に、「今週の土曜日なんですけど、幼稚園の行事があるのでフライト変更してもらえますか?」と何の躊躇もなく申し出ているのを耳にしました。

フライトを変更するとは、その日がスタンバイである誰かの予定に影響を及ぼすということ。

結果的に希望通りに休みをもらえたようで、彼女の安易な要求に疑問を感じてしまいました。

「なるべく会社に迷惑をかけないように努力している私って、何?」「でも、だったら私ももっと気楽にフライトの変更を頼んでみようかな……」二つの気持ちが交錯しました。

そこで、その気持ちを上司に聞いてもらったのです。

上司は私にこう言いました。

「七條さんの考え方で正しいのよ。

やはり、もらったスケジュールは極力全うすべきですから。

でもね、私には子どもがいないの。

だから、幼稚園の行事がどんなタイミングで知らされるのかもわからない。

わからないからこそ、できることならやってあげたいと思っているの。

もちろん、できないことならそうはいかないけどね」「わからないからこそ、できることはやってあげたい」。

この言葉に目からウロコが落ちました。

気持ちを揺らさない人は信頼される

「子育ての大変さを知っているから共感できる」というのはよく聞きますが、「想像できるから、ではなく、想像できないからこそ相手に想いをはせる」。

まさにこの上司の人としての在り方が詰まった言葉でした。

また、生意気にも上司の判断に疑問をもち、質問をぶつけた私のことも否定していません。

思い返せばこの上司はこの件に限らず、いつでも誰に対しても穏やかに気持ちを受け止めてくれる人でした。

一緒に乗務したときも、どんな業務でも率先して動いていた姿が思い出されます。

この上司と一緒に仕事をすることを誰もが喜び、伸び伸びとフライトしていました。

そのため敵となるような人は皆無で、誰もがこの上司を応援していました。

上司というのは時に難しい存在ですが、誰一人としてこの上司を悪く言う人はいませんでした。

「敵をつくらない」とは、まさにこのような人との接し方によって実現できるのではないでしょうか。

ギフト2礼節がある人は一目置かれる

美しい言葉で話す人と乱れた言葉を使う人。

清潔感ある身なりをしている人とだらしない感じのする人。

物腰の柔らかい立ち居ふるまいの人とガサツな人──。

人の好みはすべて同じではありませんが、どちらを選ぶかと聞かれたら、多くの人は前者を好むのではないでしょうか。

言葉も身なりも所作も、一見すると表面的なもののように思えますが、その土台となっているのは相手を敬う心や、快適にすごしてもらうための配慮です。

「一緒にすごす」「一緒に仕事をする」「誰かに紹介する」というとき、礼節がある人かどうかということは、選ばれるための非常に大切なポイントになります。

いくら突き抜けた個性や才能をもっていたとしても、使う言葉が相手を傷つけるものであったり、身なりやふるまいがTPOにそぐわないものであったりすると、「品」というものを感じることはできません。

カリスマ性があれば一部の人からの称賛を得るかもしれませんが、一時的に好意を得られるだけにとどまることが多いようです。

心と形の両輪を兼ね備えた礼節ある人からは、品格を感じ取ることができます。

それは上品を装ったものとは異なり、自然に身にまとった、人を温かく包むオーラのようなものです。

真っ先に思い出してもらえる人になる

人にはいろいろな欲があり、そのなかには「安心したい。

安定したい」という欲求があるといわれています。

礼節のある人は相手を不快にしたり、ないがしろにしたりすることをせず、周りにいる人を大切に思うことができる人です。

つまり、礼節のある人のそばにいるだけで「安心」を感じられ、地に足のついた安心感はやがて「信頼」となり、多くの人の支持を得られます。

このような人には気分や状況に左右されない安定感があるため、周囲の人や上司からの信頼も厚くなります。

何か新しい取り組みや役割が発生したときに、「そうだ!あの人に任せてみたらどうだろう」と名前があがり、チャレンジや成長の機会を得ることも多くなります。

また、個人で仕事をする場合なら、「あの人なら間違いないよ!」と思い出されて推薦されることが増え、自然と仕事の輪が広がっていくのです。

「他の誰かではなく、あの人なら大丈夫」このような安心感や信頼は、一朝一夕で身につくものではありません。

礼節がある人は、出会う人を大切にすることでコツコツとそれを積み上げています。

それがやがて、周囲から一目置かれる存在になることにつながるのです。

ギフト3礼節がある人は「受け取り上手」で得をする

礼節のある人には、「この人なら誰に紹介しても大丈夫」という安心感があるため、仕事のご縁が広がりやすいことは前項で説明しました。

もちろん、仕事上の能力があり成果が見込まれることが前提にはなりますが、無礼なことをしないというのは紹介者にとって大きな安心材料ですよね。

さらに、礼節のある人は感謝の気持ちを忘れません。

相手に感謝の気持ちを伝えることで、相手を幸せな気持ちにします。

何かものをもらったとき、ほめてもらったとき、助けてもらったときは素直に受け取り、「感謝」で返すことがポイント。

必要以上に遠慮したり、自分を卑下したりする必要はないのです。

紹介者へは自分を推してくれたことへの感謝、新しく出会った人にはご縁への感謝や、報酬をいただくことへの感謝をします。

人には「誰かの役に立ちたい」という貢献の欲求があります。

感謝の気持ちを伝えることは「あなたのおかげです。

ありがとうございます」という想いを届けるだけでなく、相手の「誰かの役に立ちたい」という気持ちを満たすことにもなるのです。

「自分のしたことが誰かの役に立った」「自分のしたことで相手が幸せになった」「自分の存在によって誰かを救うことができた」このような場面に遭遇したとき、温かい気持ちに包まれ、心からの幸せを感じられます。

つまり、礼節のある人は受け取るチャンスが多く、そしてまた、感謝という形で幸せをお返しするという循環をつくることに長けています。

〝感謝の視点〟を増やす

私はよく子どもたちに「受け取り上手になりなさい」と言います。

受け取り上手とは、たとえばおみやげをもらったとき、ごちそうになったとき、ほめられたときなどにはきちんとお礼の言葉を述べ、素直に喜びや感謝の気持ちを表現できる人のことです。

年齢や性別にかかわらず、受け取り上手な人は本当に得をしているように感じます。

これは、けっして自分の本心に封印をしてなんでも喜ぶということではなく、視点を多くもって感謝するポイントはたくさん見つけるということです。

感謝の視点を増やし、相手にきちんと「あなたのおかげ」「あなたのしてくれたことが嬉しい」と伝えることで、「そんなに喜んでもらえて、こちらまで嬉しい!」という双方にとってプラスとなる関係性を構築できるのです。

しかし、得だけを狙った下心ある受け取り上手や見返りを求めてのふるまいは、いつか必ずボロが出ます。

上辺だけのテクニックが薄っぺらいと感じることと同じですね。

大切なのは「感謝すること」「感謝する視点を増やし、気づける自分になること」です。

心が伴ってこそ相手に伝わります。

ギフト4礼節がある人はチームの士気を高める

最近は、いろいろなところで「ほめること」を大切にする人が増えてきたように思います。

相手をほめるということは相手のいいところを見つけるということですから、否定されるよりもほめられたほうが嬉しいのはたしかでしょう。

しかし、ほめ方やその目的によっては、かえって相手に失礼になることもあります。

というのは、内容によっては相手を子ども扱いしているようにも見えますし、自己保身のためにご機嫌をとろうとしたり見返りを求めていたりするような場合には、素直にその言葉を受け取れないからです。

ただ「すごいね」「えらいね」「がんばったね」と言うだけではなく、まずは相手を「認めること」が大切です。

これは、相手に敬意を払っていなければできません。

指導する立場の人が相手に敬意をもって向き合う、つまり礼節をもって接することができるかどうかは、チームの士気を大きく左右します。

「私たちはダメな乗務員なのだ」と気落ちしていたとき、士気を高めてくれた訓練教官がいます。

乗務員としてたくさんの同期とともに入社し、同じ時期に訓練を受け、同じタイミングで国内線にデビューしましたが、国際線デビューの際には選考がありました。

一緒に歩んできた同期のなかでふるいにかけられる。

当然ですが、落ちたくはありません。

初回の選考から漏れても、ゆくゆくはほとんどの人が国際線に移行するのですが、それでも「選考に落ちる」という体験をしたい人はいません。

残念ながら、私は1カ月の病欠がネックとなり選考に落ちました。

今思えばそこまで落ち込む必要もないことですが、当時はどうしようもなく悲しく、「ダメ人間」のレッテルを貼られたような気持ちにもなりました。

全員の士気を高めた教官のひと言

そこから半年ほど経ち、私たち「初回選考漏れチーム」も国際線移行訓練がスタート。

初日のクラスにはどことなく〝負け犬感〟が漂っており、自虐的に「出がらし」などと自らをたとえる人もいました。

やがて担任の教官が教室に入ってきました。

教官からどんな言葉が出るのか、なぐさめの言葉でも聞かされるのかと思っていたとき、次のような言葉がありました。

「私はみなさんを一人の大人の女性として、一人前のCAとして扱うつもりです」私たちは、その言葉で目が覚め、背筋が伸びました。

複雑な想いで迎えた訓練であることは教官も当然知っています。

教官によっては、なぐさめたり、ここまでのがんばりを称えたりする人もいたでしょう。

しかし、その教官は安易にほめることはせず、「認めている」という前提を明確にしました。

それは、クヨクヨしていた私たちの甘えを断ち切らせてくれました。

「一人ひとりに敬意を払い認めてくれること」「一人前の人間として向き合ってくれること」このような礼節をもって接してくれる人がいるだけで、チームは心強く前を向いて歩いていけるのだと思った出来事でした。

ギフト5礼節がある人は誰かが助けてくれる

後輩にとても礼節のある人がいました。

彼女とは同じグループに属していたので、数多くのフライトで一緒に乗務しました。

控えめで謙虚な彼女とは対照的に、周りをハラハラさせてしまうほど会議などではっきりものを言う私。

上司からは「あなたたちは足して2で割るとちょうどいいわね」と言われたものです。

そんな後輩が、思いがけずある日ピンチに立たされたものの、日ごろの行いが功を奏して事なきを得たという例をご紹介します。

ことの顛末をそばで見ていましたが、いかに礼節が大切であるかを深く知ることができたエピソードです。

ロンドンから成田へのフライトでのこと。

彼女と私はビジネスクラスの担当でした。

食事のサービス中にトラブルが起き、彼女はその対応に追われていました。

ご迷惑をかけてしまったお客さまに説明とおわびをしている彼女を横目で見ながら、私は担当のお客さまへのサービスを続けていました。

食事のサービスが終了し、仲間同士で情報共有の時間を設けた際に、彼女から一部始終を聞きました。

トラブルの原因、お客さまへの説明と対応した内容、現在のお客さまの様子。

報告を受けた誰もが間違いない対応であったと感じましたし、それ以上の対応はできないとも思いました。

しかし、初期の段階でお客さまにご迷惑をかけたことは事実です。

その後のフライトでミスが重ならないように全員が気をつけようということでその場での話は終わりました。

成田に着いてターンテーブルの前で預けた荷物を待っていると、彼女が急にその場を離れてどこかに行きました。

彼女の行く先を見ると、先ほどビジネスクラスをご利用になり、彼女が何度もおわびをしていたお客さまがいらっしゃいました。

そこでも彼女は頭を下げていました。

お客さまも笑顔でした。

飛行機を降りてからも、彼女はお客さまのことを気にかけ、姿を見つけて謝罪に向かったのでした。

普段の態度がピンチを救う

ところが……。

そのフライトから数日経ったある日のこと、彼女が真っ青な顔で私のところにやってきました。

ただならぬ様子に「ど、どうしたの?」と声をかけると、「人間不信になりそうです……。

初めて仕事を辞めたいと思いました」と彼女。

聞けば、ロンドン線で彼女が何度も席にうかがい、何度も頭を下げていたお客さまからクレームがきたとのこと。

しかもその文面は怒りに満ちており、彼女を名指しの呼び捨てで「傲慢」「上から目線」という言葉があったというのです。

事実とはあまりにも異なる内容に私は黙っていられず、「全然違うじゃない!どんな対応をして、お客さまがどのような様子だったのか、私から上司に話してあげる」と伝えました。

すると彼女は、「ありがとうございます…。

上司からも念のための状況確認としていろいろと聞かれましたが、この文章をそのまま信じはしないから大丈夫と言われました。

上司は、今回のことはショックだと思うけど、これで自信をなくさないようにと言ってくれました」と話していました。

接客はお客さまが感じたことがすべてではありますが、このケースはあまりにも事実と違いました。

彼女は「謙虚」の代名詞のような人。

それはもっとも大切なお客さまに対してだけでなく、上司や後輩に対してだっていつも変わらずそうなのです。

だからこそ、このような事態になっても周りの人が擁護しようと動いてくれて、上司からの信頼も揺らぎませんでした。

万が一、上司から「どんな対応をしたのですか?不適切ではなかったのですか?」と聞かれたとしても、私をはじめ一緒にフライトしていた仲間の誰もが証人となったでしょう。

誰に対しても謙虚で控えめ、感謝の気持ちを忘れない後輩。

だからこそ、多くを説明しなくても彼女を信じて応援したいという環境ができあがっていたのです。

日ごろの行いが大切だとはよく言われますが、まさにそれを見せつけられた出来事でした。

ギフト6礼節がある人は温かい応援を引き寄せる

公共交通機関である飛行機には、多忙を極めるビジネスパーソンや小さなお子さまを連れたご家族など、さまざまなお客さまがご搭乗になります。

機内で少しでもゆっくり休みたいと考えるビジネスパーソンと、せっかくの家族旅行だから機内でも楽しくすごしたいと考えるご家族連れ。

希望が異なる人々がひとつの空間を共有するため、トラブルになってしまうこともありました。

どちらも大切なお客さまですから、バランスを保ちながら両者にとって快適な空間をつくることも乗務員の仕事です。

しかし、お父さまやお母さまがいくらあやしても、CAがいくら工夫しても赤ちゃんが泣きやまない……ということも多々ありました。

誰もが赤ん坊だったときがあり、泣きやまず周囲をあわてさせたことがあるはずです。

みんなが寛大な心で受け入れてくれる社会が理想ではありますが、「子どもが苦手」「眠れないから静かにさせて」と思う人がいるのも無理はありません。

あいさつは先手必勝

そんななか、礼節のある態度によって周囲の応援を引き寄せた赤ちゃん連れのお母さまがいらっしゃいました。

そのお母さまは席についてすぐ、近くに座っている方々へあいさつをしていたのです。

お子さまが騒いでしまったときに「うるさくてすみません」と周りに声をかけるのは、親として周囲に配慮する素晴らしい行動ですが、あいさつは早ければ早いほうがより周囲を味方にできるものだと感じました。

そのお母さまの隣はビジネスパーソンらしき男性でした。

お母さまは着席してすぐにその男性に言いました。

先にそのひと言があるのとないのとでは、仮に赤ちゃんが大声で泣いてしまったとき、両者の間に漂う空気感が明らかに違います。

それは、「あなたさまの大切な時間や快適な空間を邪魔することになったら申し訳ないです。

そうならないように努めます」と相手を大切に想う心が伝わったからです。

それは「ゆっくりすごしたい」と思っているであろう相手の気持ちに想いを寄せた礼節のある行動です。

誰しも頭では「赤ちゃんは泣くものであり、子どもはにぎやかになってしまうもの」とわかっています。

とはいえ、「だから我慢してね。だってまだ小さいんだから仕方ないでしょ?」という接し方をすると、相手の優しい気持ちは失われやすくなり、我慢の容量も小さくなります。

そのように思っていないとしても、そう感じさせてしまうべきではないということです。

相手の心境を考えて声をかける行動は、そうされた相手に「子どもがいて大変ななか、こちらに配慮してくれたんだな」と感じさせ、お互いに相手を大切にする空気が生まれます。

「大丈夫、うちにも小さな子どもがいるから気にしないで」「赤ちゃんは泣くのが仕事だからね!」「何か手伝いましょうか?」周囲のお客さまからこのような声を実際に聞いたこともあります。

誰が正しいとか、誰が悪いということではなく、周囲に対して礼節ある行動をとる人は、自然と周りの人の応援を引き寄せるのです。

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