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序章 なぜ5つの質問が必要なのか

訳者まえがき

目次

仕事と人生を高める5つの質問

いつの間にかわれわれの社会は、組織社会になった。社会が組織化されたというのではない。社会が多様な組織からなる社会になったという意味である。

これまでの人類の歴史から言うならば、つい昨日のこととも言うべき今から二四〇年前の産業革命によって、物的な生産手段が大規模化した。

その後の知識革命によって、知的な生産手段が高度化し、したがって専門化した。

その結果、今日の先進国社会では、一人ひとりの人間が必要とするもののほとんどが、個人と家族と村落共同体から、企業をはじめとする組織の手にゆだねられた。

財だけではない。医療や教育など、われわれが必要とするサービスのほとんどが多様な組織の手にゆだねられることになった。

同時に、ほとんどの人間が組織で働くようになった。その結果、「お仕事は何ですか」ではなく、「お勤めはどちらですか」と聞くようになった。生計の資、社会との絆、自己実現も、主として組織を場とするようになった。

したがって、それらの組織がどれだけの成果をあげるかによって、あらゆる意味において、われわれの豊かさは左右されるようになった。

そのための方途がマネジメントである。ドラッカーは真実をさらりと言ってくれる。

「組織はすべて、人と社会をより良いものにするために存在する。すなわちミッションがある。目的があり、存在理由がある」

マネジメントの中核にあるものがミッションである。もちろん、それぞれの組織にはそれぞれのミッションがある。

しかしわれわれは、ドラッカーの「5つの質問」に答えていくことによって、そのそれぞれのミッションを探り当て、われわれ自身、組織、社会をより良いものに成長させていくことができる。

かくして本書こそ、ドラッカーの全経営思想の真髄である。

上田惇生

第2版に寄せて

次世代リーダーのためにジョアン・シュナイダー・クール(JoanSnyderKuhl)フランシス・ヘッセルバイン・リーダーシップ研究所評議員。

ミレニアル世代研究所創立者。マーケティング、人材開発分野での著述家、大学講師。とくにミレニアル世代対象のコーチングに経験豊富。

http://whymillennialsmatter.comドラッカーは何によって憶えられたいかと聞いた。

われわれフランシス・ヘッセルバイン・リーダーシップ研究所は、「次世代リーダーの育成によって憶えられたい」と答えたい。

一九八〇年から二〇〇〇年の間に生まれたミレニアル世代は、すでに一つの団塊の世代であるだけでなく、ITに強いグローバル志向の世代である。

面識はなくとも互いに影響を与え合っている。その彼らが世の中を変えるためのガイド役とツールを求めている。彼らのニーズに応えることが、本書の目的である。

今日の問題と挑戦にドラッカーのマネジメントは役に立つのか。世の中を変えるのか。信じられないかもしれないが、そうだ。

事実、本書ではたくさんの例が紹介されている。

ドラッカーは「5つの質問」に答えることが、リーダーたる者の第一の責務だという。

分野を問わず、やがてリーダーたらんとする者は必ずや取り組まなければならない。今日、人材を求める戦いは激化する一方である。

この第2版を刊行した目的も、「5つの質問」を使って新たなドラッカー・ファンのコミュニティを形成することにあった。

幸い、ミレニアル世代は非営利志向でもある。

大学一年の七〇%、二年、三年の七九%がボランティア活動を経験している。加えて、金融危機のおかげで、大企業も安泰ではなくなった。

MBAたちもベンチャー志向になった。ミレニアル世代の起業率は高い。

しかし、ブルームバーグの調査によれば、ベンチャーの八割は一年半で挫折している。

戦略不足と資金不足が主たる原因であるならば、「5つの質問」が効力を発揮するはずである。

第二代アメリカ大統領のジョン・アダムスは、「夢と意欲をかき立て、成長と行動をうながす者がリーダーである」と言った。

本書の編者フランシス・ヘッセルバインこそ、このジョン・アダムスの直系のリーダーである。

質問1われわれのミッションは何か?

ドラッカーによる解説質問1に寄せて「継続と変化を可能にする力」ジム・コリンズ質問1を考えるための問いミレニアル・コラム「あなたご自身のミッションは?」マーシャル・ゴールドスミス+ケリー・ゴールドスミス「ホルスティー・マニフェストができるまで」マイケル・ラドパーヴァ

はじめに

シンプルな質問ほど答えるのは難しい

フランシス・ヘッセルバイン(FrancesHesselbein)フランシス・ヘッセルバイン・リーダーシップ研究所(元ピーター・F・ドラッカーNPO財団)創立者、会長、理事長兼CEO(最高経営責任者)、元全米ガールスカウト連盟CEO。

民間人最高の勲章「メダル・オブ・フリーダム」受章者。一流オピニオン誌『リーダー・トゥー・リーダー』編集責任者。著書に『リーダーシップ論』ほかがある。

www.hesselbeininstitute.orgかつて『ニューヨーク・タイムズ』のフレッド・アンドリュースは、当研究所を評して「小さいながらもマネジメント思想の宝庫である」と書いてくれた。

創立から四半世紀が経つが、今なお当研究所は、マネジメントとリーダーシップについて豊富な情報を提供し続けている。

旧版『経営者に贈る5つの質問』の刊行以来、私たちは大勢の各界のリーダーたちと歩みをともにしてきた。

彼らの多くが「シンプルな質問ほど答えるのが難しい」と言っていた。ドラッカーの質問は深遠である。正面から答えなければならない。

ときには痛みを伴う自己評価が必要となる。もしドラッカーが健在であるならば、今日もあの五つの質問を投げかけてくれるに違いない。

組織とその活動全体を評価するためである。

それは、「われわれのミッションは何か」というきわめて根源的な問い、組織の存在理由(レゾンデートル)についての問いから始まる。

ハウツーについての問いからではない。

  1. ①われわれのミッションは何か?
  2. ②われわれの顧客は誰か?
  3. ③顧客にとっての価値は何か?
  4. ④われわれにとっての成果は何か?
  5. ⑤われわれの計画は何か?

今日これら五つの、シンプルでありながら、複雑かつ意味深い問いは、経営ツールとしての重要性をますます高めている。

非営利組織のために開発されたツールでありながら、企業をはじめ、あらゆる組織にそのまま使われている。

この経営ツールは、個々のプロジェクトや個々人の仕事ぶりを評価するためのものではない。組織とその活動全体を評価するためのものである。心を燃え立たせるもの、それによって世に憶えられたいものがミッションである。

したがって、「われわれのミッションは何か?」というこの問いが、組織全体の活動の評価を可能とし、目標達成のための計画を可能とする。

「5つの質問」の受益者は、組織の顧客である。

組織は、顧客のために自らを見つめ、自らの強みと自らの直面する問題を確認し、イノベーションを推進し、顧客からの反応をフィードバックし、不要なものを廃棄し、評価可能な成果を追求していかなければならない。

これまでは、良い行いで満足できたかもしれない。

しかしこれからは、評価可能な成果をもって、世の中を変えていっていただきたい。

この「5つの質問」からなる自己評価プロセスは、経営ツールとして優れて柔軟であって、いかなる種類の役員会、社長室でも使うことができる。企業、政府機関、非営利組織のいずれでも使える。

フォーチュン五〇〇社クラスのグローバル企業、設立間もないベンチャー企業、巨大な政府機関、地方自治体、一〇億ドル規模の巨大財団、年間予算一〇万ドル規模の小さなホームレス用宿泊施設でも使える。

必要なものは、未来へのコミット、顧客へのコミット、ミッションへのコミット、自己評価へのコミットだけである。自らを知ることが成長のエネルギーと勇気をもたらす。

長い間、すでに「5つの質問」は、未来志向の組織にとって欠くことのできない経営ツールになっている。

ドラッカーは、一九九〇年代という、ちょうどそれが最も求められている時代にこのツールを開発した。

今日再びわれわれは、「5つの質問」を不可欠とする時代にある。再び、マネジメントの父に未来への道を案内してもらわなければならない。

さらに本書においては、現代の哲人、時代の先端を行くミレニアル世代のリーダーと呼ぶに相応しい方々にご寄稿いただいた。

ここに厚く謝意を表したい。

・ジョアン・シュナイダー・クールは、ミレニアル世代の先達として、いかにドラッカーが意味ある存在かを明らかにした。(第2版に寄せて)

・ジム・コリンズは、変化させるべきものと変化させざるべきものとを、いかに識別するかを示した。

(質問1)・マーシャル・ゴールドスミスとケリー・ゴールドスミスは、ミッションが意味をもつためには、楽しさと意義が必要であることを明らかにした。

(質問1)・マイケル・ラドパーヴァは、今日ミレニアル世代に人気のホルスティー・マニフェストの由来を紹介した。

(質問1)・フィリップ・コトラーは、活動対象とする顧客を識別し、満足させることの大切さを示唆した。

(質問2)・ラグー・クリシュナムーシーは、顧客のニーズの変化に適応すべく、いかに革新を継続していくかを解説した。

(質問2)・ルーク・オーウィングズは、パートナーとしての顧客のニーズを重視することが、組織のミッションの追求につながると説いた。

(質問2)・ジム・クーゼスは、リーダーがなすべきことは、顧客のために価値あるものを創造することであると教えた。

(質問3)・マイケル・ラゼロウとカース・ラゼロウは、顧客革命の到来を示唆して、乗り遅れの危険を警告した。

(質問3)・ナディラ・ヒラは、SNSを活用できている企業がいかに少ないかを指摘した。

(質問3)・ジュディス・ローディンは、計画はすべて、評価可能な成果をもたらすものでなければならないとした。

(質問4)・カーネル・バーナード・バンクスは、成果を人と組織の両面から評価することの必要性を論じた。

(質問4)・アダム・ブラウンは、理想にゴールなどないことを明らかにした。

(質問4)・V・カストゥーリ・ランガンは、優れた計画の要件と、モニタリングおよびフィードバックの重要性を指摘した。

(質問5)・ユアナ・ボルダスは、計画の有効性を重視し、コロラド州最大のヒスパニック・コミュニティでの成功例を紹介した。

(質問5)・キャロライン・ゴーンは、リーダーが行うべき最も重要なことは、ビジョンの明確化であるとした。

そのビジョンを行動に移すうえで必要なものが、計画である。

(質問5)・ローレン・メイリアン・ビアスは、個としての成長とキャリア上の成功との関係を明らかにした。

(終章)

読者の各位におかれては、ドラッカーの叡知を味わうとともに、これらの方々の助言に存分に刺激され、触発されたい。

そして、この経営ツールをおおいに活用していただきたい。読者の方々、組織の自己発見への旅の同行者の方々全員に深く敬意を表する。

序章

なぜ5つの質問が必要なのか

ピーター・F・ドラッカー❖——成果を最大化するために

アメリカでは九〇〇〇万人のボランティアが、それぞれのコミュニティにおいて、責任ある市民性を体現している。

事実上、非営利組織こそがアメリカ社会の中核であり特性である。四〇年前、非営利組織の世界では、マネジメントは良からぬ言葉だった。

マネジメントとはビジネスを意味した。非営利組織はビジネスであってはならなかった。

しかし今日の非営利組織は、損益というコンセプトがないからこそマネジメントが必要なことを知っている。

ミッションに集中するにはマネジメントを駆使しなければならない。

ところがこれまで、非営利組織のマネジメントのための経営ツールがなかった。

私の知るかぎり、ほとんどの非営利組織の成績が「並」である。努力が不足しているわけではない。懸命に働いている。問題は焦点がぼけていることにある。

加えて経営ツールのないことにある。昔から、非営利組織は良き意図で十分であるとしてきた。

だが今日では、まさに損益がないからこそ、企業よりもマネジメントを必要としていることを知るにいたっている。

組織は、ミッションにもとづく規律を必要とする。成果を最大とすべく人と資金をマネジメントしなければならない。もちろん、いかなる成果をあげるかを考えなければならない。

❖——行動が伴わなければ意味はない

「5つの質問」とは、今行っていること、行っている理由、行うべきことを知るための経営ツールである。

それは、「われわれのミッションは何か?」「われわれの顧客は誰か?」「顧客にとっての価値は何か?」「われわれにとっての成果は何か?」「われわれの計画は何か?」という五つの問いからなる経営ツールである。

すべてが行動につながる。何ごとも行動が伴わなければ意味はない。

増大する一方のニーズに応え、難局にあって成果をあげるには、ミッションに焦点を合わせ、成果をあげていかなければならない。

「5つの質問」は、ミッションに焦点を合わせることを必然にする。

アメリカでは、一〇の非営利組織のうち八つはきわめて小規模であって、しかも、大義に対しては一切ノーと言えない体質がある。

私は教会関係の組織で活動している友人たちに、行っていることの半分は、実は行っていてはいけないことなのではないかとよく言う。

それらの仕事が重要でないかもしれないということではない。しかし、もはや自分たちが行うべき仕事ではなくなっている。それをもっと上手に行うことのできる人たちが他にいる。

何年か前には、元ベトナム難民の農家のために野菜市場を立ち上げることは、応援の仕甲斐のある仕事だったかもしれない。

当時の彼らには市場が必要だった。しかし今では、手助けしてやる必要はない。いかなる組織といえども、顧客に聞かなければ、何を成果とすべきかはわからない。

ただし、顧客という言葉の定義は厳格でなくてよい。顧客とは満足させるべき相手である。顧客を満足させられなければ成果はない。企業ならば、時を経ずして倒産するだけのことである。

非営利組織では、顧客とは、学生、患者、会員、参加者、ボランティア、有給スタッフ、寄付者である。

重要なことは、彼らが価値ありとするもの、すなわち彼らのニーズ、欲求、期待に焦点を合わせることである。

ここにおいて最大の危険は、実際に顧客を満足させるもののためではなく、顧客を満足させると思い込んだもののために働くことである。

すなわち、間違った前提のもとに働くことである。したがって、顧客にとっての価値を想像してはならない。

必ず顧客本人に聞かなければならない。「5つの質問」に答えるには、顧客との対話が不可欠である。あらゆる検討と決定において、顧客の見方を必ず織り込まなければならない。

❖——明日成果を得るために、今日何をするか

「5つの質問」がもたらすものは、行動のための計画である。計画とは明日決定するものではない。決定することのできるのは、つねに今日である。明日のための目標は必要である。しかし、問題は明日何をするかではない。明日成果を得るために、今日何をするかである。

計画はその都度のものではない。うまくいくものを強化し、うまくいかないものを廃棄していくという連続したプロセスである。

測定可能な目標を設定し、体系的なフィードバックを通して成果を評価し、状況に応じて調整していくというプロセスである。

❖——建設的な不同意が必要

意思決定には守るべきルールがある。

重要なことで容易にコンセンサスが得られたときには、そのまま決定を行ってはならないというルールである。

諸手を挙げての同意は、何も考えていないことを意味する。組織が行わなければならない決定とは、重要であるだけでなく危険を伴う問題である。意見が割れて当然である。

アリストテレスにさかのぼり、初期キリスト教会の教えとなった言葉がある。

「本質において一致、行動において自由、すべてにおいて信頼」である。信頼をもたらすには、異論はすべて表に出さなければならない。

コミットを得、イノベーションを行うには、議論百出を旨としなければならない。とくに非営利組織では、建設的な不同意を必要とする。意見の違いを大義の対立にしてはならない。問題を避けてはならない。

しかし、しこりを残してはならない。あらゆる組織が内部に反体制派を必要とする。

「われわれにはわれわれの道がある」と言う者ではなく、「明日のための正しい道は何か」を問い続ける者が必要である。

議論することによって問題が明らかになる。全員が意思決定のプロセスに参画する。もはや決定を売り込む必要はない。アイデアは織り込んだ。異論は考慮した。決定は行動へのコミットとなった。

「5つの質問」に答えることが、組織と自らの成長につながる。

世の中を見、顧客に耳を傾け、前向きの反対を歓迎することによって、大きなビジョンをもつことができる。眼前には致命的と言うほどに重要な問題が横たわっている。

  • ミッションは修正すべきか。
  • プログラムのいくつかは捨てるべきか。
  • 人と資金は他のプログラムへ振り向けるべきか。
  • なされるべきことと、自分たちの能力と意欲をどのように組み合わせるか。
  • コミュニティをどのように形成するか。
  • 人の生活と人生にどのように貢献するか。

❖——知識と意図を行動に変える

何ごとにも満足することなく、すべてを見直していかなければならない。だが最も見直しが求められるのは、成功しているときである。

下向きに転じてからでは遅い。明日の社会をつくっていくのは、あなたの組織である。そこでは全員がリーダーである。

ミッションとリーダーシップは、読むもの、聞くものではない。行うものである。「5つの質問」は、知識と意図を行動に変える。しかも、来年ではなく、明日の朝にはもう変えている。

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