序章なぜ今、本書を出版するのかビル・ラジアーと私が執筆したオリジナル版の『BeyondEntrepreneurship』(1992年発行、日本語未訳)は、スタンフォード大学経営大学院での講義をもとにした本だ。永続性のある偉大な企業を目指すスタートアップや中小企業のリーダーのために、ロードマップを示すことが目的だった。ビルは豊富な現場経験とアカデミックな視点を併せ持った稀有な人物で、『ビヨンド・アントレプレナーシップ』にはその英知が凝縮されていた。私はその後、偉大な企業を動かす要因についてビジョナリー・カンパニーシリーズを世に送り出してきたが、最初に書いたこの『ビヨンド・アントレプレナーシップ』が一番好きだと言ってくれる経営者は多い。ネットフリックス共同創業者のリード・ヘイスティングスが、2014年にアメリカ有数のチャータースクール「KIPP」の会合で私を紹介する際、起業家として駆け出しの頃に『ビヨンド・アントレプレナーシップ』を6回読んだと言ったのには驚いた。スタンフォード大学がもっとも革新的な企業に贈る「ENCORE賞」をネットフリックスが受賞した際には、ヘイスティングスは若手起業家へのアドバイスとしてこう言った。「『ビヨンド・アントレプレナーシップ』の最初の86ページを丸暗記せよ」(本書の3章と4章に相当)〔1〕。ビル・ラジアーは『ビヨンド・アントレプレナーシップ』を通じて、会ったこともない起業家たちのメンターとなり、長きにわたって存続する真に偉大な企業をつくるよう背中を押した。ではなぜ『ビヨンド・アントレプレナーシップ』を再び出版することにしたのか。そしてなぜ「今」なのか。私が『ビヨンド・アントレプレナーシップ』を『ビジョナリー・カンパニーZERO』としてアップデートしようと決めた理由は3つある。第1に、私はいまでも起業家やスタートアップ、中小企業のリーダーに強い関心があるからだ。彼らにこそ著書を読んでもらいたいとずっと思ってきた。こう言うと、押しも押されもせぬ大企業を研究した著書のほうになじみがある読者は意外に思うかもしれない。しかし『ビジョナリー・カンパニー時代を超える生存の原則』(BuilttoLast)、『ビジョナリー・カンパニー②飛躍の法則』(GoodtoGreat)、『ビジョナリー・カンパニー④自分の意志で偉大になる』(GreatbyChoice)の主役がいずれも大企業なので忘れられがちではあるが、そのすべてがかつては小さなスタートアップ企業だった。私はこうした企業の歩みを、創業期からまるごと研究してきたのだ。「アーリーステージ」企業のなかから偉大で永続的な存在に進化するところが出てくるのはなぜなのか、他社との違いはどこにあるのか。私の興味の中心は常にそこにあった。第2の理由は、今日の起業家と中小企業のリーダーの参考になりそうな新たな資料が相当蓄積されたからだ。人材に関する意思決定、リーダーシップ、ビジョン、戦略、幸運などに関する新たな研究成果の収まり場所として、『ビヨンド・アントレプレナーシップ』のアップデート版は最適だった。本書は歴史ある邸宅に大幅な増築を施したものと考えてほしい。新たな研究成果はまったく新しい章として加えたケースもあれば、既存の章に「コラム」として挿入したものもあり、いずれも「本書の新しい視点」という見出しを付けた。本書のほぼ半分は新たに書き下ろしたものだ。ただオリジナル版の各章は、ビルとともに1992年に書いたままのかたちで残した(数カ所の修正や微調整をのぞく)。オリジナル版の文章はページの色を変えてある。第3の、そしてもっとも重要な理由は、このアップデート版によって共著者であり、私の人生でもっとも大切なメンターであったビル・ラジアーに敬意を表し、そのレガシーをしっかり残したいと考えたからだ。ビルが導いてくれなければ今の私はなかったし、私の人生はまったく違ったものになっていただろう。ビルが2004年に亡くなったとき、私は彼について、そして彼が多くの人に与えたとてつもないインパクトについて書きたいと思った。本書の第1章では、何千人もの若者の人生を根本から変えた、この聡明で心の広い人物から私が学んだことをみなさんにお伝えする。本書を通じて、みなさんが歴史に名を残すような企業を生み出すお手伝いができればうれしい。それ以上に、ビルの教えがみなさんやみなさんが率いる組織で働く人々に受け継がれていくことを心から願っている。ジム・コリンズ2020年3月2日コロラド州ボールダーにて
目次序章なぜ今、本書を出版するのか第1章ビルと私の物語すばらしいメンターの「人生の教え」与えたい気持ちにフタをするな後戻りできないジャンプのタイミングを見きわめる信頼という賭けに出る人間関係を育み、人生を有意義にする価値観から始まり、常に価値観に立ち戻るワッフルにはバターをのせる第2章最高の人材がいなければ最高のビジョンに意味はない一番重要な指標を追跡する「育成」から「交代」に転換するタイミング社員に成長してほしければ、まず自分が成長する「幸運な出会い」を活かす自分のキャリアではなく部隊に集中し、部下を大切にせよ採用の逆回転で成長マシンをつくる金銭的インセンティブが必要なのは採用が間違っているから頼り合う文化をつくる第3章リーダーシップ・スタイル乗数効果さまざまなスタイル効果的なリーダーシップ機能+スタイルそもそも「リーダーシップ」とは何かリーダーシップ・スタイルの7つの要素あなたの大義は何か優れた意思決定、正しい時間軸エンパワーメントと無関心を混同しない第4章ビジョン偉大な企業にビジョンは不可欠4つの偉大な事例ビジョンのメリットビジョンのフレームワークビジョンの構成要素1コアバリューと理念ビジョンの構成要素2パーパス利益よりもパーパスビジョンの構成要素3ミッションどこもかしこも「BHAG」「やり遂げたぞ」シンドロームに注意新社屋のリスクすべての要素をまとめる生き生きと魅力的に描写するすべてをまとめる明確さと共有ビジョンはカリスマ的ビジョナリーだけのものではない第5章幸運は諦めない者に訪れる第6章偉大な企業をつくるための「地図」第1段階規律ある人材第2段階規律ある思考第3段階規律ある行動第4段階永続する組織をつくる地図をたどった先にあるもの第7章戦略
戦略とは戦略の要諦戦略的判断を下す多くの中小企業が直面する4つの重要な戦略的問題価格をコントロールできないなら、コストをコントロールする第8章イノベーションイノベーティブな企業になるために必要な要素1どこで生まれたアイデアでも受け入れる力イノベーティブな企業になるために必要な要素2自分が顧客になるイノベーティブな企業になるために必要な要素3実験と失敗イノベーティブな企業になるために必要な要素4社員がクリエイティブになるイノベーティブな企業になるために必要な要素5自律性と分権化イノベーティブな企業になるために必要な要素6報酬製品だけでなくプロセスもクリエイティビティを刺激するためのマネジメントルール8カ条クリエイティブ・プロセスを信じる本当の課題はクリエイティビティではない
第9章卓越した戦術の遂行
締め切りを設定し、枠組みの下で自由を認めるビジョンと戦略から戦術へSMaCマインドセット社員が一貫してハイレベルで戦術を遂行する環境を生み出す心に寄りそう戦術的BHAG6段階のプロセステクノロジーと情報システム厳格な基準「OPUR」の精神成功の究極の「秘訣」『ビヨンド・アントレプレナーシップ』の謝辞本書の謝辞『ビヨンド・アントレプレナーシップ』序文の再掲にあたって原注
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