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CHAPTER1行動を分析する

INTRODUCTION変化は簡単に起こせる(しかも楽しい)小さいことは強力だ。少なくとも、大きな変化を起こす手段としては。私は20年にわたり、食生活の改善、ダイエット、運動量の増加、ストレスの軽減、睡眠の質の向上など、「何らかの変化」を起こしたいという誰にでもある願望と向き合ってきた。また、私たちはよりよい親やパートナーになりたいと願っている。生産性や独創性を高めたいという思いもある。しかし、メディアで伝えられ、また私のスタンフォード大学での研究によっても裏づけられているように、今日の社会では、肥満、不眠症、ストレスは深刻な悩みであり、行動に関する理想と現実には痛ましいほどのギャップがある。その原因はさまざまだ。ところがたいていの人は、問題の原因は自分にあると思っている。「悪いのは自分だ!もっと運動すべきなのにサボっている。自分はなんてダメなんだ!」そんな文化的メッセージにがんじがらめになっている。そこで私は言いたい。あなたは悪くない、と。そして、前向きな変化を起こすのは、あなたが思っているほど難しくない、と。「やり方」がすべてを決めるあなたはこれまでずっと、あやふやな俗説や誤解、善意であっても非科学的な助言に惑わされ、失敗してきたかもしれない。自分を変えようとしたのに結果につながらなかった経験があると、変わるのは難しいとか、自分にはやる気が足りないと思い込むようになる。だが、それはどちらもまちがいだ。問題はあなたではなく、アプローチにある。こう考えてみよう。イスを組み立てようとしても、説明書にまちがいがあって、しかも部品が欠けていたら、苛立ちが募るばかりで完成するはずがない。だが、そのときはきっと、自分を責めたりはせず、メーカーを責めるのではないだろうか。ところが、行動の変化に失敗したときは、アプローチ法の設計者を責めることはない。あなたは自分自身を責める。結果が期待どおりにならないとき、自分の心の中の「批評家」が、何が原因で、どんな手順を踏んだのかと振り返る。私たちは、生産性の向上、ダイエットや定期的な運動を実現できないと、自分自身に何らかの欠陥があると考える。「自分がもっとちゃんとしていれば失敗しなかったのに」「計画にきっちり従うか、自分との約束を守るかしていれば、うまくいったはず」「もっと自分を鼓舞して、次はうまくやらなくては」そう思うのではないだろうか?だが、それはちがう。そうではない。私たちに欠陥があるわけではない。まちがっているのは変化に向けた「アプローチ」だ。問題は「設計」の欠陥であって、「人格」の欠陥ではないのだ。「数値目標」も「自分へのごほうび」もいらない習慣を身につけて前向きな変化を起こすのは難しくない。ただし、「最適なアプローチを使えば」の話だ。必要なのは、「人間の心理に逆らわない手順」「変化を容易にする工夫」「推測や誤った原理に頼らない道具立て」である。効果的な習慣をデザインして行動を変えるには、3つのことを実行すべきだ。1.自分自身を裁くのをやめる。2.目標を決め、「小さい行動」に分解する。3.過ちを発見として受け入れ、前進するために役立てる。こんなことを言われてもぴんとこないかもしれない。なぜなら、多くの人にとって「自己批判」が習慣になっているからだ。そんな人は、自然と自分を責めるように思考が流れていってしまうのだ——雪上のそりが踏み固められた斜面を滑り落ちていくように。だが、本書のメソッドである「タイニー・ハビット」のプロセスに従えば、別の道を選べるようになるだろう。自信喪失のわだちはすぐに雪で覆われ、やがて新たな道が通常の経路になるはずだ。それにはあまり時間はかからない。タイニー・ハビットを身につければ、居心地の悪さを感じることなく、心地よく、しなやかに変化できる。「忍耐力」などいらないし、「数値目標」を設定することも、「自分へのごほうび」も不要だ。「期限」を設定する必要もない。そうした誤ったアプローチは、習慣というものの本質に寄り添っていないため、変化に向けた確実な手段にはならない。それどころか、うまくいかずに気を滅入らせてしまうものだ。「インスタグラム共同創業者」も学んだ原則本書では、変化につきまとう不安に別れを告げる。さらには、「いまの自分」と「なりたい自分」とのギャップを簡単に、楽しく埋める方法を指南する(どんなに大きなギャップでも問題ない)。本書で伝える手順には「根拠」がある。私は長年にわたって研究と改良を重ねながら、4万人以上を対象に実験を行ってきた。毎週のように被験者たちに直接指導し、タイニー・ハビットがうまく機

能することは実証済みだ。本書では、かつて私のもとで学んだインスタグラムの共同創業者が、画期的なアプリをつくろうと研究した「人間の行動原則」についても紹介する。あなたも同じ原則を用いれば、自分の人生に、そして他者の人生にも、画期的な変化を起こせるだろう。しかも何よりもいいのは、楽しめることだ。自己批判を捨てれば、あなたの行動は自己発見の楽しい旅となる。実際のストーリーを学びながら探求を楽しむことが成功への道となるはずだ。これが「行動デザイン」の世界だ——人間の行動を変えるシンプルな方法行動デザインの世界へようこそ!これは私が考案した包括的なシステムであり、人間の行動について明晰に捉え、人生を変えるシンプルな方法をデザインすることを目的としている。行動デザインに関する私の初期の研究は、イノベーターたちが多様な製品を創造する力になった。何百万もの人々が健康増進や貯金、車の運転の効率化といった目的のために、毎日利用する製品だ。ビジネスの分野でこの手法が見事に解決策を導き出すのを確認したあと、私は個人に焦点を移した。自分自身の行動を変えるにはどうすればいいのだろう、と。人々が自分について変えたいと思っていることに着目したのだ。そこで鏡をのぞき込むと、改善できることがたくさんあった。私は熱心な科学者なら誰もが一度や二度は経験のあることに取り組むことにした。つまり、自分を実験台にしたのである。まずは自分の生活に取り入れたいと思う行動について試行錯誤した。ばかげているように見えて、かなり効果的な行動もあった。たとえば、「トイレから出るたびに腕立て伏せを2回する」といったことだ。合理的だと思えたのに、まるでうまくいかないこともあった。たとえば、「毎日、昼食にオレンジを食べようとした」のだが、これは挫折した。うまくいかないときは、かならずその行動の構造を振り返り、何が起きたのか分析した。すると、「パターン」が浮かび上がってきた。私は直感に従って試しては失敗したらもとに戻ってと、試行錯誤の工程を何度もえんえんと繰り返した。「変化の維持」も自然にできる私は行動科学者だが、自分自身の生活となると、習慣を身につけるために正しい方法を学習しなければならなかった。それは私にとって当たり前のことでも、自然なことでもなかった。意識して行わなければならないプロセスだったのだ。それでも練習によって、弱みを強みに変え、6か月後には人生が大きく変化していた。体重が9キロ減り、前より健康で強くなったように感じた。かつてないほど生産的に、そして効率よく仕事ができるようになった。朝食には卵とほうれん草を食べ、午後のおやつにはマスタードをつけたカリフラワーを食べるようになり、自分にとってよくない食べ物は退けた。朝は気分を高める習慣で一日を始め、睡眠の質を高めるために生活と環境をデザインし、うまくいかないときはデザインを修正した。私は紆余曲折を経てそこまで到達し、変化する力が高まり、自分の勢いが増すのを実感した。そして、いくつもの新たな習慣(ほとんどは小さい習慣)を身につけていくうちに、それらが融合して大きな変化につながった。変化を維持するのは苦痛ではなかった。私の生み出した方法による変化の達成は、自然なことであり、不思議と楽しく感じられた。私は実験の結果に勇気づけられ、2011年からほかの人たちにもこのメソッドを伝えるようになった。そして、このアプローチが誰にとっても有効であり、実践する人々の人生が変わることを確認した。私が驚き、うれしく思うのは、行動デザインの世界で始めた気まぐれな自己分析が、「タイニー・ハビット」という裏づけのある手法へと成長したことだ。自分を変えるのにもっとも手っ取り早く、簡単な方法である。「永続的な変化」を起こす方法は3つしかない先に進む前にひとつはっきりさせておきたい。「行動を確実に変えるには、情報だけでは不十分」ということだ。これはよくある誤解で、多くの専門家たちでさえ誤解している。「正確な情報を提供すれば、人は考えを改め、結果的に行動も変わるだろう」という発想を、私は「情報と行動の誤謬」と呼んでいる。多くの製品やプログラム、善意の専門家たちが、人々を変える手段として「教育」を試みる。専門家が集まる会議ではこんなことが言われる。「人は事実さえ知れば、変わるものだ!」だがあなたも自分の経験を振り返ってみれば、情報だけでは人生を変えられないと納得できるだろう。そしてもちろん、それはあなたのせいではない。私は2009年から行っている「習慣の形成」に関する研究の中で、永続的な変化を起こすためにできることは3つしかないと気づいた。「天啓を得る」か、「環境を変える」か、あるいは「小さなところから習慣を変える」かの3つだ。自力で(または他人の力でも)本物の天啓を得るのは不可能に近い。魔法の力でもないかぎり(私にはない)、この選択肢は取り得ない。だが心配はいらない。ほかの2つの選択肢は、適切なプログラムに従えば、永続的な変化へと導いてくれる。そしてタイニー・ハビットは、環境と小さなステップの威力を最大限に引き出す手段になる。まずは「前向きな習慣」の形成が出発点となるが、その中でも小さい習慣は、はるかに大きな習慣を育てるカギとなる。小さい習慣がどう機能し、なぜ機能するのかを理解すれば、大きな変化を起こせるようになる。そして望ましくない習慣をやめることもできるようになる。最終的には、マラソンを完走するといった大きな目標まで達成できるようになるだろう。あなたが遭遇する「行動変化」の筋書きは無限だが、私はあなたがどんな局面でも乗り切れるように案内するつもりだ。

タイニー・ハビットのポイントは、次のとおりだ。〈あなたが望む行動を1つ選び、それを「小さい行動」に分解し、生活の中で自然に組み込める場所に植え、成長させる〉長期的な変化を望むなら、小さいことから始めるのが最善だ。これからその理由を説明しよう。「時間がない」人でもできる時間——。それは十分にあったためしがなく、私たちはいつも「もっと時間があれば」と嘆いている。車の中でしけったハンバーガーを食べ、子どもたちとビーチで過ごしながら電話会議に参加する。それもこれも時間に追われているからだ。そのプレッシャーがもたらすのは、焦燥感だ。いつになっても「時間がない」と焦り続け、「前向きな習慣を身につける余裕なんてない」とあきらめ、変化に対する拒否反応を示している。「1日30分の運動?」「毎晩健康的な夕食をつくる?」「毎日、感謝の気持ちを日記に綴る?」とんでもない。そんな時間がどこにある?そんな人生を楽にするには、時間のかからない「小さいこと」から始めるしかない。タイニー・ハビットでは、30秒もかからずにできる「小さい行動」に的を絞る。小さい行動はすぐに生活に取り入れることができ、やがて自然と大きく成長していく。小さいことから始めれば、時間的な負担を気にせず、大きな変化への第一歩を踏み出すことができるのだ。タイニー・ハビットでは、「3つのとても小さい行動」から始めることを推奨している。あるいはたった1つでもかまわない。ストレスが多く、時間がない人ほど、この方法は適している。健康的な習慣を身につけたいとどんなに願っても、大きなことから始めると継続するのが難しく、新しい習慣はなかなか定着しない。人生において、小さいことは最良の選択肢であるだけでなく、唯一の選択肢といえるかもしれない。「いますぐ」始められる小さいことは、あなたが自分自身と人生に向き合えるようにサポートしてくれる。小さいことは、いますぐ始められる。人生が絶望的な悪循環に陥っているときでも、まずまず順調だがストレスが大きいようなときでも、あなたの現状に合わせられるのだ。誰もがそれぞれ、対処すべき生活環境や望ましくない思考のあり方、前進を阻止する心理的な癖を抱えている。それについて失望し、情けなく思うのも、小さい習慣を実践してその流れを断ち切るのも、あなた次第だ。本書では、具体的な習慣を推奨するつもりはない。私が伝えるのは、あなたが望む何らかの習慣を身につける方法だ。習慣を選ぶのはあなただ。だが、ここでは例外として、ある新しい習慣を練習してみよう。毎朝起きたら最初にする、とても簡単なことだ。3秒くらいしかかからないこの習慣を、私は「マウイ習慣」と呼んでいる。朝起きて床に足をつけたら、まずこう言ってみよう。「今日は素晴らしい日になる」ただそれだけを声に出して言い、楽観的で前向きな気分になるように心がける。タイニー・ハビットの「レシピカード」のフォーマットで表現するなら、上のようになる。

私は何年ものあいだ、大勢の人たちにマウイ習慣を推奨し、素晴らしい成果を確認してきた。もちろん、私の人生にも効果があった。マウイ習慣を実践すれば、よりよい未来に向けてすぐに、そしてほとんど努力なしにスタートを切ることができるだろう。人によっては、「今日は最高の日になるぞ」というように少し表現を変えている。自分にとって効果的に思える言葉があるなら、自由にアレンジしてほしい。また、「朝起きて鏡に向かったとき、決まった言葉を口にする」など、タイミングをアレンジしてもいい。もっとも、これは私の場合はまったくうまくいかないが(そもそも鏡は見ないようにしているからだ。困ったものだ!)。私は毎朝マウイ習慣を実践するとき、声を出す前に少し間を置いている。起きた瞬間はぼんやりしているし、言葉の意味をしっかりと感じたいからだ。もし「そんな習慣を実践したくらいで素晴らしい日になるわけがない」と思っていても、ぜひ声に出してやってみてほしい。私はひどく疲れていたり、打ちのめされていたり、その日に心配事が待ち受けていたりする朝でも、欠かさず口にしている。ベッドの端に座った瞬間、楽天的になろうと努めている。それでも空々しく感じるときは、セリフと言い方を少し調整して、こんなふうに言う。「今日は素晴らしい日になるぞ、少しくらいは」不思議なことに、私にとっては最悪の日でさえ効き目がある。心配事が待ち受けている日でも、この言葉を口にすると、実際にいい一日を過ごせる扉がほんの少しだけ開く気がする。たとえ疑わしそうな声で言ったとしても、効果はある。実際、私自身、ほとんどの日はほんの少し疑わしい気持ちで言っている。マウイ習慣については、毎朝3秒でできる簡単な習慣の練習だと思って実践してみよう。そうすれば、第一歩を踏み出すことがどんなに簡単か実感でき、行動変化における唯一最大のスキル、つまり自己肯定感の習得に役立つはずだ。「失敗」があり得ない私の親友の一人に、ウィラという名の娘がいる。生後18か月のウィラは歩き始めて間もないため、まだ足元がおぼつかない。ある日、ウィラがわが家の庭で私の愛犬ミリーを追いかけて走りまわっていたときのことだ。私はウィラが何度もつまずいて転ぶのを目にした。よちよち歩きの幼児にとって、縁石を登り、排水溝の鉄格子の蓋の上を歩くのは大変だ。ウィラはあちらこちらで泣き声を上げたが、どこもケガはしていなかった。そして何度もまたミリーを追いかけはじめた。もしいまの私が歩き方を学びはじめたばかりだとして、舗装された道で転んだらかなりのケガをするだろう。身長が180センチ以上の私が転んだら、ウィラのようにはいかない。新たな行動の習得にも同じことがあてはまる。たとえば、あなたが一度もヨガをしたことがなくて、これから始めるとしたら、どの段階から始めるか、いくつもの選択肢がある。太陽礼拝のポーズを一度だけすると決めてもいいし、近くのスタジオで1か月無制限で通えるコースに申し込むことも、フライトを予約してインドへ1週間の修行の旅に向かうこともできる。どれを選ぶかで、投資する時間も資金も、期待も大きく異なる。だがヨガマットに足をつけたこともないのに、インドに旅立つ人はめったにいない。なぜか?私たちは生まれながらにして、脳のもっとも原始的な部分で、それはリスクが高すぎると判断できるからだ。それと同じく、何か新しいことを始めようとしても、あまりに壮大な計画だと困難に感じる。私がサーフィンを始めたばかりで、マウイ島のコーブ・パークの穏やかな波でも苦労するようなら、島の反対側の本格的なサーフスポットで大波に挑もうとは思わない。そんなことをしたらケガをして、ちょっとした波でもすっかり自信を失いかねない。コーブ・パークにとどまるのが賢明だ。小さい習慣ならリスクを心配する必要はない。小さければ人に知られることもない。目立たずに変化に向けた行動を始められる。誰もとやかく言わないだろう。だからプレッシャーも少ない。小さい習慣の計画はひじょうに柔軟であるため、感情的なリスクも排除できる。小さい習慣に大きな失敗はない。ちょっとつまずいても、また立ち上がればいいだけだ。まだ習慣を身につけようとしている途中なのだから。自然と大きく「成長」する私はこれまで習慣を大きく育てる方法を模索してきた。約20年間の研究の結論として得られたのは、着実かつ持続的な唯一の方法は「小さく始める」ことだという事実だ。かつての私の教え子エイミーは専業主婦をしながら、教育メディア事業を立ち上げようとしていた。自分で事業を始め、好きなことを仕事にするという考えはスリルに満ちていた。ただし、考えるべきことが山積みだった。社員を雇い、仕事場にする賃貸物件を探し、税金関係の規則を理解する。それなのに彼女は、契約交渉などの重要なことは先送りにして、ロゴのデザインなど自分の好きな作業に打ち込んでいた。やがて事業計画を立てる時間がなくなり、冒険的な計画が自分の手の中で崩れつつあると気づいたとき、彼女は呆然とした。事業を立ち上げたいエイミーは、大きな問題に向き合うべきだと改めて自分に言い聞かせた。ところが、そう考えてから数か月が過ぎても、計画は少しも前進しなかった。エイミーを阻んでいたのは変化をめぐる神話だった。世の中に蔓延している「中途半端は許されない」という考えだ。私たちの文化は、「すぐに得られる達成感」に支配されている。段階的な進歩のための努力は荷が重く、苛立ちさえ感じてしまう。しかし現実には、有意義な長期的変化を育むには、段階的に前進することが不可欠だ。エイミーはタイニー・ハビットと出合い、巨大なクジラを食べる最善の方法は「一度にひと口ずつ」口に運ぶことだと気づいた。エイミーは中途半端は許されないという考えを捨て、小さく進むことにした。毎朝娘を幼稚園まで連れていったあと、道端に車を停め、すべきことを1つ付箋に書くようにした。たった1つだけ。それも簡単にできることだ。「営業のメールを1通送信する」「企画会議の予定を立てる」「プレゼン資料を1つ作成する」……。「作業を1つだけ書くこと」にエネルギーを集中するという単純な行動は、彼女を終日前進させる連鎖反応を引き起こし、最終的に会社は見事に離陸した。車のダッシュボードに貼った付箋をはためかせながら帰路につく彼女には、自己肯定感が寄り添っていた。帰宅して車を停め、鮮やかなピンクの付箋を手に取

ると、すぐに達成できる成功を手にするため、そそくさと家に入るようになった。ほんのひと口かじるだけの「たった1つの行動」は、初めのうちは無意味に感じるかもしれない。しかし、それはあなたがより大きな課題や、より素早い進歩を達成するのに欠かせない勢いをつけてくれる。気がついたとき、あなたはクジラを食べ尽くしているのだ。「やる気」や「意志の力」を使わない行動の変化に関して世間で言われていることの多くは、あなたを誤った方向に導いている。だから十分な警戒が必要だ。よく引用される学術論文でさえ、現実の世界では人々の生活を変えるのに役立たないものが多い。ご存じのように、やる気や意志の力についてはメディアでもさかんに取り上げられる。多くの人がこれらの能力を強化し、持続力を高める方法を探している。しかしながら、やる気も意志の力も、その性質上、移ろいやすく、あてにできないものだ。一例を紹介しよう。シカゴ出身のジュニは、私がこれまでに会った誰よりも変わりたいと望んでいた。彼女の砂糖中毒は健康や仕事に悪影響を及ぼしていた。彼女は早朝のラジオ番組の司会者として目まぐるしいスケジュールに追われ、いつも猛烈に忙しかった。昼食はきちんと取らず、スターバックスのキャラメルマキアートですませるのが常だった。放送中は張り詰めた空気の中で過ごすため、そのペースを維持するには砂糖が欠かせないと思っていた。ジュニは私と出会う数年前に、母親を糖尿病で亡くしていた。それが警鐘になればよかったのだが、彼女はますますアイスクリームを食べて苦痛を紛らわそうとした。夏のあいだに体重が7キロ近く増えた。ほどなくして、彼女の姉妹が二人とも糖尿病と診断され、やはり糖尿病を患っていた祖母が亡くなった。彼女は何年ものあいだ自分の砂糖中毒を「甘いもの好き」ですませていたが、ようやく危機的な状況にあると自覚した。彼女は自分をコントロールする力を失っていたのである。ジュニは砂糖を退けるのは意志の力の問題で、自分は「ノー」と言えるほど強くないのだと考えていた。これは彼女にとって腹立たしく、理解しがたいことでもあった。なぜなら、自分は並外れて意志が強いと思っていたからだ。でなければラジオの人気番組の司会など務まるはずがない。ところが、悪習を解消するのは意志の力だという考えはまったくの誤りだった。ジュニは仕事の関係で私の「行動デザイン・ブートキャンプ」に参加する機会があり、その後すぐに自分の生活を見つめ直し、砂糖への依存は性格上の欠陥ではなく、デザインの問題だと気づいた。やる気に波があるのは本人のせいではなかった。精神的な弱さではなかったのだ。シンプルなことこそが行動を変える。行動デザインのカギとなるこの考え方を理解したジュニは、小さい習慣をつくることにした。大それたことではないが影響力は大きく、砂糖への依存を解消するのに役立つ習慣だ。環境を見直し、大好きな甘いお菓子をほかのものに切り替えた。セロリやニンジンのスティックなど魅力のないものではなく、砂糖の量は少なくてもおいしいお菓子だ。そうやって砂糖を求める気持ちを締め出し、それを抑えるような運動と食事の習慣を養った。そしてこれが何よりも大切なことだが、ジュニは新たな習慣を取り入れようとするとき、おおらかな気持ちと自分を労る姿勢を保つようにした。甘いものを手に取ってしまうこともあったが、それを性格上の欠点とはみなさず、アプローチの仕方を改善するのに役立つメッセージと捉えた。やる気や意志の力といった援軍の頼りなさを考慮するなら、変化は小さなものにとどめ、期待を低く保つことがデザインのポイントとなる。小さいことは実践しやすい。つまり、あてにならないやる気に頼る必要はないということだ。どんな小さな成功も「祝福」するタイニー・ハビットでは、どんな小さな成功も「祝福」する。これは神経科学に基づき、「意識的な行動」を「無意識の習慣」へと短期間で転換できるテクニックだ。うまくいったという感覚が新たな習慣を取り入れる原動力となり、継続への意欲をかきたてる。私は毎週のように、具体的な成功事例をデータの中に発見している。だがそれだけではない。「祝福」は、人生を心地よいものと感じられるテクニックでもある。自分を責めるのをやめて「ほめる」力を身につけることで、人生を好転させるための揺るぎない基礎を育むことができるのだ。タイニー・ハビットの構造❶アンカーの瞬間すでに習慣となっている日課(歯磨きなど)や、何かが起きたとき(電話がかかってきたときなど)。この「錨」によって、「小さい行動」をすることを思い出す。❷小さい行動身につけたいと思う新しい習慣を簡単にした行動。たった1本の歯をフロスする、腕立て伏せを2回だけ行う、といったこと。「アンカー」の直後に、この「小さい行動」を実践する。❸祝福ポジティブな感情を生み出す行動。たとえば「よくできた!」と自分に言う。「小さい行動」を取った直後に自分を「祝福」する。すべての行動が起こる理由は「同じ」であるある朝、私はベッドにとどまり、「ささやかな一歩」というものについて徹底的に掘り下げてみようと考えた。そして最初に突き止めたのが人間の行動の仕組みだった。謎を解くカギを見つけるには、10年も行動観察をしなければならなかったが、2007年にある発見をした。答えは驚くほど単純だった。それまで誰も気づかなかったことが不思議なくらいだったが、いまでは謎というのは、なぞなぞに似ていることがあると考えている。答えを知らないうちは難

しすぎて歯が立たない。ところがひとたび答えを知れば、何でもないことに思えるのだ。私が発見した法則を応用すれば、行動の背景にあるものを読み解くことができる。そして、どんな行動でも同じように扱える。歯ブラシを新しい決まった場所に置く。朝食前にかならず食洗機の中の食器を棚にしまう。夕方に庭の水やりをする。朝、コーヒーを入れるときにスクワットを2回する。水曜日にゴミを出す。タバコを吸う。タバコを吸わない。時計で時刻を確認する。スマートフォンで時刻を確認する。午前3時にインスタグラムをアップする。夫が仕事から帰ってきたらキスをする。ベッドを整える。ベッドを整えない。チョコレートを食べる。チョコレートを食べない。この本を読む。この本を読まない。あなたが何年ものあいだ身につけようとしてきた習慣。あなたが何年ものあいだやめようとしてきた習慣——。これらの行動の中には望ましい習慣もあれば、そうでないものもある。私が突き止めたのは、「あらゆる行動が同じ構成要素によって生じている」ということだ。そして各要素の関係が私たちのあらゆる行動と反応を決めている。それらがまさに人間の行動の「原料」にほかならない。本書では私が考案した行動デザインのモデルを紹介する。それは行動について明晰に考える手助けになるはずだ。また、あなたが習慣をデザインしていくための手順も説明する。本書のモデルとメソッドの一覧をまとめた表を参照していただきたい。私が紹介するモデルとメソッドは、行動科学の研究と関連分野のエビデンスに裏づけられている。出典についてはウェブサイトをご参照いただきたい(https://tinyhabits.com/references/〔英語〕)。行動の構成要素を調整する方法を知れば、人生に必要なあらゆる行動変化を推進できるようになる。あなたはもう、袋小路に迷い込むことはなく、自分の望むどんな人物にもなれる。そんなことを言われてもとても信じられず、やや戸惑うかもしれないが、心配はいらない。私があなたに寄り添い、何千人もが人生を変える手助けをしてきた経験から学んだことをお伝えする。では、どこから始めるべきか?まずは謎を解くカギから説明しよう。名づけて「フォッグ行動モデル」である。

「タイニー・ハビット」を始めるための小さなエクササイズタイニー・ハビットを習得する最良の方法は、すぐに練習を始めることだ。先延ばしはいけない。まずはすでに述べた「マウイ習慣」から始めよう。加えて次のエクササイズにも取り組んでもらいたい。ここではパーフェクトを目指さないように。代わりに、ハビティア(タイニー・ハビットの修業をする人)たちの姿勢を取り入れよう。それは「まずは飛び込んで、進みながら習得する」というものだ。ストレスを感じたり、神経質になったりせずに、柔軟に楽しもう!エクササイズ1「フロスの習慣」を定着させる歯をフロスする方法はわかりきっている——すべての歯にフロスをかける。だが、あなたが多くの人たちと同じなら、フロスを習慣にはできていないだろう。生活の中で無意識にすることにはなっていないはずだ。このエクササイズでは、フロスをどう行うかではなく、習慣を無意識化することに照準を定める。ステップ1:好みのタイプのフロスを探す。自分に適したものを見つけられるまで、何種類か試すべきかもしれない。ステップ2:フロスをバスルームのカウンターに置く。歯ブラシのとなりが理想的。ステップ3:歯磨きをして歯ブラシを置いたら、フロスのケースを手に取り、適当な長さに切る。ステップ4:1本の歯にフロスをかける。ステップ5:鏡の中の自分にほほ笑みかけ、新しい習慣を身につけつつあることを心地よく思う。【注意】何日か経ってあなたが望むなら、2本以上の歯をフロスしてかまわないが、まずは1本で十分だということを忘れないように。増やす必要はない。

エクササイズ2「毎日のダークチョコ」を定着させる少量のダークチョコレートは健康にいい。少しだけ食べることを毎日の習慣にしよう。ステップ1:健康によさそうなダークチョコレートを買う。ステップ2:朝コーヒーを入れたあとか、ビタミン剤を飲んだあとにひと口食べる。行動の流れは「朝ビタミン剤を飲み終わったら、健康的なチョコレートをひと口食べる」となる。ステップ3:チョコレートを味わい、生活に健康的な習慣を加えられたことをうれしく思う。【注意】毎日のチョコレートは大きく育てる習慣ではない。小さくても存在感がある、盆栽のようなものだと思おう。

エクササイズ3「人は心地よく感じるときに変化できる」と自覚する本書を読んで心に留めてもらいたいことをひとつだけ選ぶとしたら、「人は不快さではなく、心地よさを感じることで前向きに変わることができる」という考え方だ。そこで私はあなたのために、こんなエクササイズを考えた。ステップ1:小さな紙に「不快さではなく、心地よさを感じることで私は前向きに変わることができる」と書く。ステップ2:それを洗面所の鏡など、目につきやすい場所に貼る。ステップ3:繰り返し読む。ステップ4:自分の暮らしの中で(また周囲の人々にとって)、こうした意識がどう作用するのかを観察する。

目次習慣超大全INTRODUCTION変化は簡単に起こせる(しかも楽しい)これが「行動デザイン」の世界だ人間の行動を変えるシンプルな方法「タイニー・ハビット」を始めるための小さなエクササイズ目次CHAPTER1行動を分析する「3つの要素」が行動を生む「その行動」はなぜ起きたか?行動理由の詳細を分析する行動=モチベーション・能力・きっかけあらゆる行動を司る「究極の公式」「3つの要素」のダイヤルを調整するどれかでカバーすればいいフォッグ行動モデルを「人に教える」説明できれば、自分の身につくフォッグ行動モデルで「悪習をやめる」3要素で行動をコントロールフォッグ行動モデルで「人を動かす」他人の行動原理も同じ人の行動を変える「3ステップ」正しい順序でアプローチする「後悔する行動」をしてしまうメカニズム科学者のレンズで自分を見る「フォッグ行動モデル」の小さなエクササイズ

CHAPTER2〈モチベーション〉編「黄金の行動」をマッチングする

モチベーションはあてにならない「モチベーション頼み」が失敗する理由まずは「ほしいもの」を知るゴールの解像度をクリアにする「願望」を明確にする行動デザインのステップ1「行動の選択肢」を挙げる行動デザインのステップ2やってはいけない「まちがいアプローチ」「どの行動を取り入れるか」のダメな決め方「自分に合った行動」を選ぶ行動デザインのステップ3フォーカス・マッピング一瞬で「ベストの行動」がわかる見取り図フォッグの格言1「相手がしたいと思っていることをできるよう助ける」「黄金の行動」を突き止めるこれなら効果があるし、自然に続く

「行動デザイン」のための小さなエクササイズ

CHAPTER3〈能力〉編習慣を「簡単なもの」に変える

インスタは「シンプル」を極めたシンプルに、もっとシンプルに小さく始める行動デザインのステップ4行動を簡単にする「3つのアプローチ」いろいろな方法でやりやすくする何から始めればいい?「スキル」か「道具」か「小さくする」か?習慣を「持続」させる最低限だけやればいい「習慣を簡単にする」ための小さなエクササイズ

CHAPTER4〈きっかけ〉編「どの日課」のあとに行動する?

「効果的なきっかけ」を見つける行動デザインのステップ5きっかけの「3つのパターン」それぞれの種類と性質「レシピ」をつくる○○をしたら、××をするアンカーを「特定」するあなたの一日には「使える日課」が大量にあるアンカーの「実験」をする試行錯誤で「効くもの」を発見するアンカーの「最後尾」を見つけるその行動の最後の最後は?「合間の習慣」の驚くべき力スキマ時間を集めれば山となる「他人の行動を変える」最高の方法顧客の行動変化を生む新常識「真珠の習慣」でイヤな気分を消す苛立ちから美を生む方法「きっかけを見つける」ための小さなエクササイズ

CHAPTER5定着させる祝福で脳をきらめかせる「自分をほめる」ことが行動変化につながるポジティブな感情をくっつける成功を「祝福」する行動デザインのステップ6「感情」が習慣をつくるカギは「反復」でも「頻度」でもない報酬は行動の「直後」に与えるタイミングが効果を決めるフォッグの格言2「相手に達成感を実感させる」祝福の「鉄のルール」「即時」と「強く感じる」のワンツーパンチ「自分らしい祝福」を見つける方法

どの祝福が自分に刺さるか?祝福は「多様なパターン」を考えるたくさんあればあるほどいい達成感を「すぐに実感」できる方法小さなことを祝福しよう「リハーサル」で脳に刻み込む素早く、しっかり定着させるには?祝福すべき「3つの場面」いろいろなタイミングで祝福する習慣の根を「新鮮」に保つきついときはシャインを注入「レシピなし」で祝福する祝福で自分を根本的に変える3分間チャレンジ「セレブレーション猛アタック」シャインを爆発させる「効果抜群」のワザ「シャインを感じる」ための小さなエクササイズCHAPTER6小を大に育てる変化のスキルを活用する習慣を「大きく」育てるなぜ「毎朝50回」の腕立て伏せが定着したのか?「成長する習慣」と「増殖する習慣」習慣の2つの拡大法「たくさんの小さな成功」をつかむ成功の「頻度」が推進力を生む「変化のスキル」を習得する5つのスキルセットトラブルシューティング、反復、拡大行動デザインのステップ7「本書を読むだけ」で終わらせてはならないスキルは磨く必要がある「変化のスキルを磨くための小さなエクササイズ

CHAPTER7悪習をやめる

習慣の結び目をほどく「有害な行動」を排除する人生を根本的に変えるチャレンジ「行動変化マスタープラン」を実行する悪習をやめる段階的アプローチ新しい習慣を「つくる」ことに集中する行動変化マスタープラン:フェーズ1従来の習慣を「やめる」ことに集中する行動変化マスタープラン:フェーズ2習慣を「置き換える」ことに集中する行動変化マスタープラン:フェーズ3「後押し人」に気をつける見過ごしがちな「意外な落とし穴」習慣の変化は「他人のため」になるあなたの変化はまわりの人生も変える「悪習をやめる」ための小さなエクササイズ

CHAPTER8一緒に変わるみんなで人生を変える

「簡単」で「具体的なこと」から始める小さな勝利を積み重ねる「みんなの変化」をデザインする人はかならずまわりの影響を受ける人を変化させる際の心得「フォッグの格言」に沿って影響を与える一緒に変わる「2つの戦略」あなたは首謀者か、忍者か?「グループ」で変化する方法7ステップを応用する「家庭」でやってみる子どもに「いい習慣」をつける「仕事」でやってみる多忙な仕事のストレスを軽減するどんな変化も実現できる一つひとつの変化が世界をつくる「グループの変化」のための小さなエクササイズCONCLUSION小さな変化がすべてを変える謝辞訳者あとがき付録タイニー・ハビットツールキット

行動を変えれば人生が変わる。しかし、行動をうながすのはたった3つの変数だということを、あなたは知らないかもしれない。その謎を解くカギとなるのが、「フォッグ行動モデル」だ。これは人間の行動に関する3つの普遍的要素と、それらの相関性を表したモデルである。この3つの要素は相互に作用しながら、私たちのあらゆる行動に影響する。このことは「歯をフロスする」といった小さな行動にも、「フルマラソンを完走する」といった大きな行動にも、同じようにあてはまる。この行動モデルを理解すれば、ある行動がなぜ起きるのかを分析でき、自分をまちがった理由(とくに性格や自制心など)で責めずにすむようになる。そしてこのモデルは、あなた自身、さらには他者の行動の変化をデザインするためのツールになる。ある行動が起きるのは、MAP(モチベーション、能力、きっかけ)が、一定の条件を満たしたときだ。「モチベーション」とはどれだけそれをしたいかというあなたの思い、「能力」はその行動に対する自分の能力の高さ(やりやすいか、やりにくいか)、「きっかけ」は行動をうながす何らかの刺激を意味する。「その行動」はなぜ起きたか?——行動理由の詳細を分析する具体的に説明しよう。2010年のある日、私はジムで汗を流しながら(ジャネット・ジャクソンの曲に合わせてマシンのペダルを踏みながら)、心拍数が120を超える状態で、人の役に立つ、いつにない行動を取った。赤十字に寄付をしたのだ。それは寄付を呼びかけるテキストメッセージに反応して取った行動だった。このときの私の行動を分解してみよう。【行動】テキストメールに反応して赤十字に寄付をした。・モチベーション:地震の犠牲者を支援したかった。・能力:テキストメールに応答するのは私にとって簡単だった。・きっかけ:赤十字からのテキストメールに刺激された。

この例では、3つの要素がそろい、私は寄付という行動を取った。もし3つの要素のうち1つでも不十分だったら、そうしなかった可能性が高い。この行動に対する私の「モチベーション」は高かった。地震の影響は詳しく報じられ、ひどく胸が痛んでいたからだ。「能力」についてはどうか?仮に赤十字が「テキストメール」ではなく、「電話」をかけてきてクレジットカードの番号を教えてくれと依頼していたとしたら?私はジムで運動中で財布は車に置きっぱなしにしていたので、行動するのはかなり難しかった。「きっかけ」は?寄付を募る相手がそもそもスマートフォンという手段を使っていなかったら?彼らが郵便で寄付を募り、私がいつものダイレクトメールだと思ってゴミ箱に放り込んでいたら?私は中身を読むことさえなかっただろう。きっかけがなければ、行動は生まれない。幸いにも、赤十字は私の願いをかなえてくれた。私にはもともと寄付したいという気持ちがあり、彼らがそれを簡単に実現できる方法を示してくれたのだ。意識的だったかどうかはともかく、赤十字の担当者たちはうながしたい行動のために、「MAP」を見事にデザインした。効果があったのは私だけではない。このテキストメールによる呼びかけは大成功し、開始から24時間で300万ドル以上を集め、その週の終わりには2100万ドルを突破した。じつに見事だ!行動=モチベーション・能力・きっかけ——あらゆる行動を司る「究極の公式」私は行動モデルを研究テーマに選び、この「行動=モチベーション・能力・きっかけ」こそが普遍的なモデルであると教えるようになった。初めのうちは半信半疑といった反応のほうが多かった。こんな単純な行動モデルが、あらゆる文化のあらゆる行動を説明するなんてあり得ない、と。そもそも行動といっても、「好ましい」ものと「好ましくない」ものがある。それらを同列に扱うのは無理があるのではないか、と。たいていの人にとって、ネットショッピングでの気晴らしと、計画的な運動のあいだに共通項があると言われてもぴんとこない。運動を継続するには大きな努力が必要なのだから、その根底にはもっと複雑な仕組みがあるはずだと考える。コートを階段の手すりにかけるのではなく、ちゃんとクローゼットにしまうといった単純な行動変化とはまったく別の原理があるはずだと考えるのである。しかし、それは思い込みだ。行動は、たとえば自転車のようなものと考えられる。いろいろなタイプの自転車があるが、基本的な構造はどれも同じだ。車輪、ブレーキ、ペダル。もちろん、あらゆる行動に共通する要素があるからといって、異なる行動から生まれる感覚や印象、あるいは影響が同じというわけではない。要素がうまく噛み合っていないこともあるし、喜ばしい行動と、困難をともなう行動に対して抱く感情には大きなちがいがある。一輪車とロードバイクくらいの差があると感じることもあるだろう。その点からすれば、両極端な行動に共通点があるとは信じられないのも当然だ。しかし、何らかの行動を変えようとするなら、本書で説明するコンセプトの理解がきわめて重要だ。「よくない」とわかっていてもやってしまう私はだいたい月に一度、「行動デザイン・ブートキャンプ」というワークショップを主催している。これはビジネスパーソン向けのもので、健康や経済的安定、持続可能な環境づくりといったテーマについて有効な解決策を考える手助けをしている。参加者は学んだことを持ち帰り、実際の生活で試してみるように推奨される。そのためこのブートキャンプでは、身近なテーマのエクササイズから始めることが多い。私は参加者に、あまり努力せずに身につけることができた「いい習慣」と、後ろめたく感じ、やめたいと思っている「悪い習慣」を1つずつ話してもらう。ここでは習慣に関するさまざまな素晴らしいエピソードに出合うが、あるイベントに参加したケイティという女性は、この2つの習慣はしばしば似ても似つかないように見えるということを浮き彫りにした。ケイティは数十人の部下と1000万ドルの予算を管理する有能な幹部社員で、彼女の「いい習慣」は生産性の向上につながるものだった。彼女は退社前、毎日かならずデスクをきれいに片づける。一日の終わりにパソコンの電源を落とすと、書類をきちんと整え、ホワイトボードの「やること」「作業中」「完了」の欄に貼った付箋を並べ替える。デスクがすっきりしたら、椅子を収めてオフィスをあとにする。翌朝出勤してデスクを見渡すと、ささやかなエネルギーが感じられる。一日を始める準備が万全で、いい一日になりそうだと前向きな感覚がみなぎるのだ。この習慣は意識して身につけたのかと私が聞くと、答えは「ノー」だった。いつの間にか始めていたという。ケイティはデスクを整理する習慣についてあまり考えたことがなかった。これがいい習慣だと気づくまで、しばらく時間がかかったほどだ。ところが、やめたいと思っている習慣について聞くと、彼女は文字通り椅子から飛び上がった。「ベッドでスマホをいじること!やめたいのに、どうしてもやめられない。ベッドでえんえんとフェイスブックに没頭してしまうせいで、朝の運動をサボってしまうことがあるの」と彼女は打ち明けた。どうやら、スマホを目覚まし代わりにしているのがそもそもの原因だった。ベッドの脇のテーブルに手を伸ばしてアラームを止めると、横になったまま操作を始めるのだ。アラームは何時に設定しているのかと聞いた。答えは、午前4時半。「ワオ」と私はうなった。その年の初め、ケイティは「毎朝、起きたらまず運動をする」と誓いを立てた。実際、運動する日もあったが、しない日がほとんどだった。だがこれは、意図してそうなったわけではない。せっかく早起きしても、デジタルの渦に飲み込まれてしまうのだ。新着を知らせる赤い表示があると無視できなかった。タッチして動画を観ると、そこから知りもしない誰かのコンテンツへ飛び、さらにまた次の動画となり、やがて5時半を知らせるアラームが鳴る。そうしてまた、自分自身に約束した運動をせずに一日が始まる。待ち受けているのは自己嫌悪と罪悪感。彼女は自分が陥っているパターンがよくないとわかっ

ていたが、毎日、あまりに多くのことをしているせいで、「自制心」を使い果たしているのだと自分に言い訳していた。あらゆる行動が「同じ要素」で成り立っている「デスクの整理」と「スマホ依存」というケイティの2つの習慣について考えてみよう。2つの行動に共通項があると言われても、ぴんとこないだろうか。一方は、ケイティの気分をよくし、生産的でありたいという大きな望みを後押しする力になっている。この習慣は体に染みついていて、意識することさえない。対照的に、スマホに釘づけになる習慣は、そのときは楽しいが、あとで自分に失望するのは確実だ。この悪循環には自分でもうんざりしながら、どうしてもやめられない。この2つの行動は、ケイティにとってまったく相反するもののように思えるかもしれない。だが行動の根底にある要素を見ると、そんなことはない。あらゆる行動には、共通する3つの要素が作用しているのだ。私がケイティに伝えたかったのは、彼女は自制心や意志の力を使い果たしているわけではないということだった。彼女にはスマホに没頭してしまうという「もうひとつの習慣」があり、それが運動の習慣を邪魔しているだけだった。振り返ってみよう。ある行動が起きるには、「モチベーション」「能力」「きっかけ」の3要素がそろわなくてはならない。このモデルには深い意味がある。誰にとっても、モチベーションと能力、きっかけは状況によって異なるものだ。またモチベーションや能力の捉え方は、文化や年齢によって異なるかもしれない。それでもひとつ、確かなことがある。世界は果てしなく複雑だが、現象を観察し、あらゆる状況にあてはまるいくつかの原則を用いれば、そんな複雑な世界も分析できるということだ。上のグラフを見てみよう。これはモチベーションと能力の相関関係を示している。

これはケイティの「デスクを片づける習慣」についてのグラフだ。大きく示された点の位置は、行動をうながすきっかけを得たとき、彼女のモチベーションと能力がどのくらいのレベルにあるかを表している。この例では、モチベーションが中程度で、能力については実行しやすい位置にある。次は「行動曲線」を見てみよう。にっこりしたようなカーブの印象にふさわしく、行動曲線は私たちのよき友人だ。墓石に何かひとつだけ刻むとしたら、私はこのかわいらしい曲線を選ぶだろう。人がある行動を取るのは、行動曲線を上回る状態で刺激(きっかけ)を得たときだ。たとえば、モチベーションは高いのに能力がともなわない状況を考えてみよう(体重が55キロしかないのにベンチプレスで230キロを持ち上げたい)。そんなとき、あなたは行動曲線の下にいて、刺激を受け取ってもストレスを感じるだけだ。反対に、実行する能力はあってもモチベーションがゼロなら、刺激を受けても行動に結びつかず、ただわずらわしいだけだろう。ある行動が曲線の上にあるか、下にあるかを決めるのは、縦方向に表されるモチベーションと、横方向に表される能力の組み合わせだ。そこで重要な考察が得られる。習慣として根を下ろす行動は、行動曲線よりもつねに上に位置する、と考えられるのだ。ケイティがスマートフォンに夢中になる行動をグラフに表してみよう。

これは驚いた!この点の位置ときたら!モチベーションはきわめて高く、能力も高い。つまり、簡単に実行できる。しかも、ケイティのきっかけは確実だ。毎朝4時半にかならずアラームが鳴り響くのだから。このようにモデル化してみると、ケイティのような有能な成功者でさえスマホに没頭する習慣をやめられずに苦労することが納得できる。この習慣から抜け出せないのは無理もない。何かが変わらないかぎり、彼女は運動をせず、スマホの虜になったままだろう。すべきことは2つだ。この習慣のデザインを見直し、さらには運動の習慣についてもデザインを修正する。ただし、行動上のあらゆる課題を解決する万能薬はない。まずはモチベーション、能力、きっかけの3要素を調整し、自分が望む行動を引き寄せる「最適な組み合わせ」を探さなくてはならない。ケイティの場合は、スマホを操作しにくくするか、動画を観たいというモチベーションを低下させるかのどちらかが必要となり、運動の習慣について検討するのはそのあとだ。モチベーション、能力、きっかけの各ダイヤルを調整して行動を分析するにあたり、基本的な原則があるので紹介しよう。「3つの要素」のダイヤルを調整する——どれかでカバーすればいい3つの要素のダイヤルを調整するための基本原則を理解すれば、あらゆる行動について的確にデザインできるようになる。グラフの行動曲線はこの原則を視覚的に表現しているが、言葉で説明すると次のようになる。❶モチベーションが高いほど、それを実行する可能性は高いある行動に対してモチベーションが高いとき、人はきっかけさえあれば行動を起こし、難しいこともやってのける。母親が子どもを救うためにクマを撃退したとか、列車が侵入する地下鉄のホームに居合わせた乗客が、線路に転落した見知らぬ人を救出したという話を聞いたことがあるだろう。危険が迫っているとき、アドレナリンが分泌され、モチベーションが一気に高まる。そんなとき人は普通ならできないようなこともできてしまう。

モチベーションが中程度のときは、簡単な行動なら実行できる。ケイティがデスクを片づけるように。❷実行が難しいほど、それを実行する可能性は低いあなたは、いま読んでいる本の表紙を見せてほしいと誰かに頼まれたらどうするだろうか?おそらくすぐに応じるだろう。ちょっと読書を中断して手首を返せばすむので、たいした手間ではない。簡単にできる。では、その本を最初から最後まで音読してほしいと頼まれたらどうか。この行動を実行に移すにはかなりのモチベーションが必要だ。たとえば、目の不自由な人に頼まれたとか、1000ドルの謝礼を提示されたというように。そんな事情があればモチベーションは高まるかもしれない。

つまり、困難なことを実行するには切実なモチベーションが必要になる。これに関連する法則がある。もしかすると、それはあなたの人生を変えることになるかもしれない(私の人生は変わった)。その法則とは、「ある行動の実行が簡単であればあるほど、習慣化する可能性が高まる」というものだ。これは私たちが「いい」と思う習慣にも、「悪い」と思う習慣にもあてはまる。どちらであろうと、行動は行動なのだ。同じ法則が適用できる。ケイティのベッドでのスマホ依存について考えてみよう。アラームが鳴るため、彼女はいやおうなしにスマホを手に取る。それをスクロールする行為は、いとも簡単に実行できてしまう。❸モチベーションと能力は、チームメイトのように協力する行動を行動曲線の上に持ってくるには、モチベーションと能力の調整が必要だが、両者はチームメイトのように協力できる。どちらかが弱いときは、もう一方を強くすればいい。言い換えれば、一方のレベルが、もう一方に求められるレベルを左右するのだ。モチベーションと能力の補完関係を理解すれば、行動を分析し、デザインする新たなアプローチへの扉が開く。ケイティの場合、デスクを片づけるモチベーションはかなり高く、それは簡単にできることでもある。3分もあれば終わるので、子どもたちのお迎えに遅れるようなことではない。これはもともと簡単に実行できることだったが、毎日繰り返すことで、その行動はさらに簡単になった。一般に、行動は繰り返すほど簡単になる。フォッグ行動モデルは、ある時点でのスナップショットだ。だがこのモデルは、行動が時間とともに変化する様子を示すうえでも有効だ。次の図の行動①→行動②→行動③のように変化を追跡できるのだ。これはフォッグ行動モデルの強力な応用編だが、この段階ではまず、多くの行動は反復によって実行がより容易になると指摘するにとどめておこう。デスクの片づけは、ケイティのモチベーションが落ち込んだ日でさえ、その落ち込み分をカバーできるほど簡単な作業だ。重要なのは、彼女がもし、「毎日、オフィス全体を掃除しよう」と決意していたら、その行動はきっと習慣化していなかったということだ。ちょっと急ぎの用事でもあれば、実行せずに帰宅してしまうはずだ。

❹「きっかけ」がなければ行動は起こらないきっかけがなければ、モチベーションと能力がどれほど高いレベルにあっても行動は起こらない。きっかけなくして行動はない——。単純にして揺らぐことのない法則だ。モチベーションと能力は、程度の差こそあれ、つねに存在している。あらゆる行動に対して、あなたはかならず、あるレベルのモチベーションと能力を持っている。電話が鳴ったとき、それに応答するモチベーションと能力はかならず存在する。ところが、きっかけは稲妻のようなものだ。一度現れても、次には消えてしまう。電話の音に気づかなければ、応答することはない。したがって、きっかけを排除すれば、望まない習慣をやめることができる。これはかならずしも簡単ではないが、悪習を解消するには、きっかけを排除するのが最善の策だ。数年前、テキサス州オースティンでの複合イベント「サウス・バイ・サウスウェスト」のカンファレンスに出席したときのことだ。私はホテルの部屋に入ると、ベッドに荷物を投げ出した。それからデスクを見て、思わず声に出して言った。「おい、これはまずいぞ」バスケットに山盛りのお菓子があったのだ。プリングルズにブルーチップス、棒付きキャンディ、グラノーラバー、ピーナツ。私はふだんから健康的な食事を心がけているが、塩分の多いスナック菓子には目がない。これから数日、長い一日を過ごして部屋に戻ったとき、このお菓子が私を誘惑するのは明らかだった。そこにバスケットがあるかぎり、私はいずれ誘惑に負けるにちがいない。まずはブルーチップスだ。その次はあのピーナツを食べるだろう。そこで私は、この行動を阻止するために何をすべきか自問した。「食べたいというモチベーションを取り去ることはできるか?」無理に決まっている。しょっぱいスナックが大好きなのだから。「食べるのを難しくすることはできるか?」それはできるかもしれない。フロントに頼んでスナックを値上げしてもらうか、部屋から持ち去ってもらうという手も考えられる。だが、そんなことをするのは少し気が引ける。そこで私は自分できっかけを取り除くことにした。魅惑的なうるわしいバスケットをテレビ棚のいちばん下の引き出しに入れ、ぴしゃりと閉めたのだ。バスケットが部屋にあることに変わりはないが、スナック菓子が大声で「さあ食べて!」と誘惑するのは止められる。翌朝にはスナック菓子のことは忘れていた。幸いにも、私はオースティンに滞在した3日間、テレビ棚の引き出しを開けずに過ごすことができた。注目すべきは、私がきっかけを取り除くという「たった一度の行為」で、望ましくない行動を阻止できた点だ。それでも効果がなければ、ほかにも調整できるダイヤルはあった。だが行動デザインの中で、もっとも取り扱いが簡単なのが、きっかけである。フォッグ行動モデルを「人に教える」——説明できれば、自分の身につくフォッグ行動モデル(B=MAP)が多様な行動に応用できるとわかったところで、このモデルの使い方を詳しく説明したい。私はスタンフォードの学生と議論したり、産業界で活躍する人々にレクチャーをしたりする機会が多いが、彼らにはこの行動モデルを2分以内で人に説明するように指導している。まずは私がホワイトボードを使い、グラフを描いて説明する。この2分の見本のあと、定番のフレーズを交えながら、よりうまく伝える秘訣について話す。そして最後に一人ずつ、ホワイトボードか紙を使ってグラフで図解しながら、人に説明するように実演してもらう。行動デザインに習熟するには、フォッグ行動モデルを手早く人に説明できるようになるのが近道なのだ。読者のみなさんには私が直接この説明スキルを教えられないので、この章の最後に簡単なエクササイズを用意した。フォッグ行動モデルはほんの数分もあれば教えられるようになるし、その数分は有益な時間の投資になるだろう。この行動モデルを習得したら、実際にさまざまな方法でそれを活用し、悪習をやめたり、問題を解決したりできるようになる。順を追って説明しよう。フォッグ行動モデルで「悪習をやめる」——3要素で行動をコントロールモチベーションと能力が補完関係にあり、行動にはきっかけが欠かせないと理解したところで、ケイティの話に戻ろう。彼女はどうすればスマホにのめり込む習慣をやめられるだろう。この習慣に関して彼女のモチベーションは高く、行動はきわめて簡単だ。したがって、この習慣は彼女の行動曲線のはるか上に位置している。

彼女が変えられるのは何か?モチベーションだろうか?それは無理そうだ。自分が発信した情報に「いいね」をしてもらったときのうれしさは格別だ。ケイティは友人の近況を知りたいし、フェイスブックはそれをかなえてくれる。モチベーションは低下しそうにない。能力はどうだろう?これは変えられる可能性が大いにある。ケイティには、フェイスブックのアカウントを抹消するという選択肢がある。だが、これは極端すぎるだろう。余裕のあるときにニュースをチェックするくらいなら問題はないのだから。そこで考えてみると、ベッドの中でスマホを操作しにくくする方法はほかにもある。まず、フェイスブックのアプリをスマホからアンインストールする手がある。スマホを部屋の隅のチェストに置くこともできる。あるいは、車に置きっぱなしにするのはどうだろう。ケイティはSNSや動画を閲覧したいというモチベーションがあまりに強かったため、いろいろな方法を試し、最終的に2本立ての解決策に落ちついた。夜はスマホをキッチンに置き、寝室では昔ながらの目覚まし時計を使うことにしたのだ。スマホと物理的な距離を保つことで操作をやりにくくし、深夜や起床時にスマホを見るきっかけを完全に排除したのである。フォッグ行動モデルの3つの要素のうち、ある要素を変えられないなら(ケイティの例ではモチベーション)、他の要素(能力ときっかけ)を変える方法に集中すべきだ。ケイティの運動の習慣はどうなったか?結果的に、何の調整もいらなかった。スマホという邪魔者を取り去ると、すでに整っていた計画と器具のおかげで運動を開始できた。工夫すれば、身につけたい行動でも、避けたい行動でも、自分が望むようにデザインできる。ケイティはそれをかなり簡単に実現したが、まずはベッドでスマホに没頭する習慣の原因を理解する必要があった。行動デザイン・ブートキャンプから数か月後、ケイティは、ようやく自分の生活に運動の習慣をしっかりと組み込めて満足していると語ってくれた。朝食時やちょっとしたスキマ時間などに、まだスマホに熱中することはあるが、以前のようにとりつかれることはない。ほとんど毎日、朝の時間を有意義に過ごせるようになった。彼女は体がかつてないほど強くなったと感じているが、何より重要なのは、行動デザインによって人生におけるどんな行動も改善できると学んだことだ。フォッグ行動モデルで「人を動かす」——他人の行動原理も同じあなたが自分自身の行動、もしくは他人の行動を変化させる強い力を手にしたいなら、フォッグ行動モデルの習得こそがカギとなる。行動の仕組みを正しく理解すれば、自分だけでなく、他人の行動も解読できるようになる。これは強力なスキルだ。前向きな習慣を養い、悪習をやめられるようになり、さらには他人のあまり望ましくない行動にも対処できるようになるのだ。「小さな子ども」の行動を変える数年前に飛行機に乗ったとき、後ろの席にやんちゃな男の子が座っていた。座席に落ち着くと、その子が小さな足で私の背もたれを蹴りはじめた。これはまいった。フライトのあいだじゅう蹴られるのは目に見えている。なんといっても小さな子どもだ。そこで私は、離陸する前に、その行動をやめさせるか、控えめにさせるにはどうすべきか考えた。思い浮かべたのはフォッグ行動モデルだ。まずはきっかけ。私はきっかけを取り除けるか?無理だ。男の子の内なる欲求や退屈さなど、座席を蹴る刺激になっているものを取り去ることはできない。では能力はどうか。蹴るのを難しくすることはできるだろうか?ダメだ。そこで残る選択肢はひとつ。モチベーションである。穏やかで遊び心のある方法で、この小さな男の子が座席を蹴りたいというモチベーションをそぐにはどうすればいいか?私は「返報性の法則」を利用しようと考えた。人は贈り物をもらうと、自然と何かしらお返しをしたくなるものだ。この力学は円滑な人間関係を保つのに役立つが、他人のモチベーションに影響を与える手段にもなる。私は試してみることにした。パソコンの入ったカバンには黄色いスマイルマークのバッジが入っていた。バッジを取り出して小さな乗客と両親に見せて、こう言った。「いいかな、きみにこの小さなスマイルマークのバッジをあげたいんだ。これを見て、飛行機が飛んでいるあいだ、シートを蹴らないでいてくれるとうれしいんだけど」男の子は「わかった!」と答え、両親は屈託のないほほ笑みとともに、ありがとうと言った。このあとの空の旅は、後ろから席を蹴られることなく、じつに快適で、ちょっとした友情も芽生えた。私たちは手荷物受取所で手を振って別れたのだ。「家の問題」を解決するフォッグ行動モデルは家庭で利用すれば、同居人から協力を引き出す手段になることもある。長年同居していれば誰でも心あたりがあるものだが、家事をめぐる約束事は馴れ合いになっていく。私とパートナーのデニーは、家の掃除について基本的な姿勢がちがう。私は「そこそこ片づいていればいい」のだが、デニーは「すべてを殺菌したい」タイプなのだ。何年ものあいだ、シャワールームの掃除が懸案となっていた。デニーはカビを目の敵にしているが、私たちのシャワールームは水はけが悪い。つまり、カビが生えやすい。デニーからはいつも、シャワーを使ったらきれいに水気をふきとるように注意されていた。しかし私はあまりそうしなかった。というより、めったにそうしなかった。ある日、デニーは私をシャワールームに連れていき、行動デザインを実践した。

「僕らはどちらも清潔なシャワールームがいいと思っている」と彼は切り出した。私は同意した。彼は、私にある程度のモチベーションがあることを確かめたのだ。次に彼は、能力について聞いた。水気をふきとることの何が難しく思えるのか?私は「具体的にどうすればいいのかわからない」と答えた。タオルを使うのか、掃除用ワイパーを使うのか?壁もふくのか?デニーはそこで、はっと気づいた。彼はどうしてほしいのかを具体的に言っていなかった。その曖昧さのせいで私は難しく感じていたのだ。彼の次の行動は素晴らしく単純明快だった。どうすべきか教えてくれたのだ。私にシャワールームの中に入るように言うと、こう続けた。「いいかい、シャワーを止めたら(きっかけ)、棚から専用のタオルを取って、こんなふうにサッと全体をふく。そしたらタオルを洗濯かごに放り込んでおしまい」デニーの実演はあまりにも簡単で、最初からそうしなかったことがばかばかしく思えるほどだった。10秒もあれば完了する。お手本を見せてもらうと、この作業の難しさについて認識が変わった。急に簡単だと思えるようになったのだ。デニーが大げさに実演してくれてから、私は毎日その作業をするようになった。なぜか?そもそも、私は清潔なシャワールームが好きだし、彼を喜ばせたかった。つまり、少なくともそれなりにモチベーションはあった。だが、行動そのものが難しく思えていた。どうすべきか具体的に教えてもらうと簡単だとわかり、行動曲線を一気に上回ったのだ。いまはどうかというと、家事についてよくわからないことがあると、こう言うようにしている。「どうすべきか具体的に教えてほしい」。そうして彼を観察することで、私の能力は高まる。フォッグ行動モデルは他人に対しても用いることができ、以上のエピソードはそれを示すささやかな例である。これについては、後の章でさらに詳しく紹介しよう。人の行動を変える「3ステップ」——正しい順序でアプローチする誰にでも、ある行動をしたいのに、もしくは他人にある行動をさせたいのに、うまくいかなかった経験があるだろう。そこで耳寄りな話がある。このよくある状況を打開するには、行動デザインの考え方が役に立つのだ。しかもそれは、あなたが思い浮かべるような難しいものではない。たとえば、週に一度のチームミーティングを時間どおりに始めたいのに、部下たちがいつも何分か遅刻してくるとしよう。多くのマネージャーは、遅れてきた部下に対して叱責したり、罰を与えたり、にらみつけたりする。いずれも時間どおりに集まるという行動を引き出すために、モチベーションに働きかけようとする対応だ。だが、どれもまちがっている。問題を解決するときは、モチベーションから対処してはいけない。代わりに次の順序で進めてみよう。各ステップを順番に試し、うまくいかなければ、次のステップに移る。1.行動をうながす「きっかけ」があるか確認する。2.実行する「能力」があるか確認する。3.実行する「モチベーション」があるか確認する。自分や他人の行動を確実に変化させるには、まずはきっかけから考える。遅刻する部下には、「ミーティングに遅れないようにリマインダーをセットしているか?」と聞いてみるといいだろう。もしセットしていないなら、セットすることできっかけをつくるように指示しよう。それだけで解決するかもしれない。騒ぎ立てる必要はない。にらむ必要もない。必要なのは、「効果的な刺激」をデザインすることだけだ。それがうまくいかないときは、次のステップに移る。相手に行動する能力があるかを確かめよう。遅刻する部下たちに、どんな理由で時間どおりに集まるのが難しいのか質問する(さらに詳しいアプローチについては第3章で説明する)。もしかすると、部下たちはぎりぎりまで別の会議があって、定刻に間に合わないのかもしれない。そうなると答えは明らかだ。問題は能力であって、モチベーションではない。だが、きっかけと能力がそろっているとしたら、いよいよモチベーションの問題になる。その場合、時間を守るモチベーションを高める方法を探すことになる。注目すべきは、「問題解決の方法を検討するにあたって、モチベーションは最後のステップ」だということだ。「忘れること」を責めても意味がないたいていの人は、行動を起こすには、まずモチベーションに集中すべきだと誤解している。しかし、問題解決の正しい流れに従えば、職場でも家庭でも不満をくすぶらせずにすむ。たとえば、あなたがティーンエイジャーの娘に、教会の教育活動で使う厚紙を学校帰りに買ってきてほしいと頼んだとする。娘に車を貸しているので、あなたとしては正当な頼み事だ。その日、帰宅した娘は厚紙を買ってこなかった。あなたは腹を立て、厚紙をどれだけ必要としていたかを説明する(モチベーションに訴えかける戦略だ)。娘は「ごめんなさい。明日買ってくる」と約束する。ところが、翌日も買ってこなかった。そこであなたは、怒りをあらわにして居間の床を踏み鳴らしながら、「もう車は使わせない」と脅し、「なんてあてにならない子なんだ」とため息をつく(これもモチベーションに訴えかけている)。もちろん、これでは問題は解決しない。では、この話を巻き戻し、正しいステップを知っていた場合を想像してみよう。まず1日目、娘が厚紙を買わずに帰宅しても腹を立てず、問題解決モードでこう聞いてみる。「ねえ、厚紙を買うのを思い出す工夫はしていたの?」「してない。覚えていられると思ったから。でも忘れちゃって」

そこであなたは、翌日のためにこう聞くことで、きっかけをデザインする。「明日は思い出せるようにどんな工夫をすればいいと思う?」すると彼女はスマホにメモすると答える。結果はどうだろう?翌日、彼女は満面の笑みであなたに厚紙を渡す。この方法を自分自身の行動に適用すれば、自分を責めずにすむようになる。たとえば、あなたは毎朝瞑想したいのに、できていない。そんなときは意志やモチベーションが足りないと自分を責めずに、きっかけ、能力、モチベーションについて順を追って考えてみよう。きっかけとなるものはあるか?実行を難しくしていることは何か?多くの場合、ある行動を取れないのは、モチベーションのせいではないと気づくだろう。効果的なきっかけを見つけるか、行動を実行しやすくすることで解決できることが多いのだ。「後悔する行動」をしてしまうメカニズム——科学者のレンズで自分を見るみなさんには、世界をフォッグ行動モデルのレンズを通して観察する練習をしていただきたい。これは2つの点で意義がある。第一に、楽しい。第二に、物事をモチベーション、能力、きっかけという要素に分けて分析することで、自分自身だけでなく他人の行動についても、何が推進力なのかを理解できるようになる。この章の最後に紹介するエクササイズでは、フォッグ行動モデルを現実に応用する力が身につくはずだ。問題解決のために段階的なアプローチを組み込んだ行動モデルを学び、実践した大勢の人々が、これによって人間の行動の仕組みを理解できるようになったと述べている。あなたは、自分が変わるための努力を分析し、それらがどのように損なわれているか、もしくは支えられているかを把握できるようになる。また、自分があとで悔やむような行動を取ってしまう理由についても理解を深められるはずだ。行動にはかならず「理由」がある私たちは誰もが不本意なことをしている。夕食をポップコーンですませる。子どもを怒鳴りつける。ネットフリックスでドラマを観続ける。しかし、私たちはこうした行動に目をつぶる必要もなければ、苛立ちを感じる必要もない。私たちは本当に、絶対に、自分を責めるべきではない。このことを誰よりも思い出させてくれたのは、才能あるグラフィック・アーティストで、よき母親でもあるジェニファーだ。彼女はタイニー・ハビットのオンラインセミナーに参加するまで、運動ができない自分を情けなく思っていた。かつて、彼女はいつも運動を楽しんでいた。学生時代は熱心なランナーで、出産の数年前にはハーフマラソンに出場した経験もある。ところがセミナーに参加したころは、体を動かすのは炊事と洗濯くらいだった。運動したくて仕方がないのに、体調がすぐれないため、ゆっくりと着実に始めなくてはならないと考えていた。ジェニファーはときどき、自宅のオフィスで仕事の合間に15分ほどヨガをするようになり、家の前の通りを曲がり角まで走ることもあった。どれも無理なくできることで負担も少ない。それなのに規則的に続けられなかった。調子がいいときは運動したが、あきらめてワインに逃げてしまうことも多かった。近くの郵便ポストまですら走りに行けない日がほとんどで、8キロも走るのはとても無理だった。かつてはそれくらいの距離は難なく走り、大きな喜びを感じていたのに。彼女は自分がどこかおかしいのではないかと不安になった。どうしてちゃんとできないのか?ジェニファーに見られるのは、「閉塞感」、もしくは「抵抗感」というよくある感情だ。彼女は毎日、ウエイトトレーニングかジョギングをすべきだと自分に言い聞かせていた。それなのに、子どもたちのためにネットショッピングをしなくてはとか、仕事のための調べ物をしなくてはと、サボる言い訳ばかりで、毎晩のように自分がダメ人間のような気がしていた。気がふさいでいるせいでできないのか?自己嫌悪が強すぎるのか?そもそも意志が弱いのか?いったい何が起きているのだろう?そもそも「モチベーションがない」のかもしれないジェニファーがタイニー・ハビットを学んでから数週間後。私がメールで様子を聞いたところ、運動の習慣の謎が解けたらしく、その経緯を教えてくれた。彼女はまず、モチベーション、能力、きっかけの関係がどうなっているかを検討した。自分の行動を分析し、モチベーションについて考えてみたところ、モチベーションがほとんどないことに気づいた。そもそも、オフィスで一人きりでヨガをするのは気が進まなかった。そこで、一人でヨガをする案を捨て、もっと自分にふさわしい運動を探そうと考えた。魅力を感じるいくつかの運動には共通点があった。どれもグループで行うものだった。よく考えてみると、彼女は一人きりでする運動を楽しんでいなかった。義務のような感じがして、行動曲線を超えるだけのモチベーションが湧かなかった。ジェニファーは、グループで行う運動に取り組むことにした。まずは週に一度、ジムで自転車をこぐスピンクラスに参加し、次に週に一度のヨガクラスにも通い、やがて母親のためのランニンググループにも加わった。そして、気がつけば運動の習慣を取り戻していた。これはジェニファーにとって大きな収穫だったが、彼女がいちばんうれしかったのは行動の謎を解明したことではない。それにも増して、自己批判の呪縛から解き放たれ、自分の生き方について前向きな転換ができたことがうれしかった。

行動の仕組みを知るまでは、なぜかつてのように運動できないのかと悩み、幾度となく自問していた。「いったい私はどうなってるの?」毎晩のようにそんな言葉を噛みしめ、自分で〝処方〟したワインに救いを求めた。ジェニファーは答えを探してあれこれ考えた。もしかすると老化かもしれない。あるいは抗うつ薬が必要なのかもしれない。それともトレーナーにつくべきなのか。やがてイライラがつのり、食事の支度やおもちゃの片づけに逃避するしかなくなった。ところが行動分析のアプローチを学び、諸悪の根源は自分ではないと気づいた。行動に問題があったのだ。行動を要素に分解すれば、デザイン上の欠陥が何なのかを知ることができる。彼女には能力はあったが、一人で運動したいという十分なモチベーションがなかった。また、オフィスでのヨガをうながす効果的なきっかけもなかった。ジェニファーにとって(そして私たちにとっても)うれしいことに、フォッグ行動モデルには「怠惰」という軸も「弱さ」という軸もない。そこに「自己批判」のつけ入る隙はない。行動モデルを考えるうえでは、性格を評価する必要はないのだ。ジェニファーは「自分と行動はイコールではない」と気づいてから、すべてが変わった。自分の習慣をレシピのように捉えられるようになった。結果が好みに合わなければ、自分を責めたりあきらめたりせず、比率を変えて、材料の組み合わせを試行錯誤すればいいのだ。人生を「変化の実験室」にするこれからみなさんには、シャーレの培養物を観察する科学者のように、客観的な視点から好奇心をもって自分の行動を観察してもらいたい。本書は、変化を呼びかける多くの書籍とは着眼点が異なる。私は意志の力や自分への厳しさについて論じたり、みなさんの居心地を悪くするようなことを指示したりするつもりはない。私が提唱するのは、人生を自分自身の「変化の実験室」として扱うことだ。人生を自分がなりたいと思う人物像について実験する場にするのだ。それは、安心できるだけでなく、何らかの可能性を感じられる場所でなければならない。次の章では、行動デザインのプロセスについて学び、それを使ってさっそく実験を開始する。タイニー・ハビットという手法に注目するのは、それが前向きな習慣を身につける基礎となり、将来さまざまな行動をデザインするのに欠かせない重要な原則を網羅しているからだ。じっくり時間をかけて何らかの成果を挙げるにも、一度限りの大きな行動を起こすにも、あるいは望ましくない習慣をやめるにも、まったく同じプロセスが役に立つ。いずれにせよ、前向きな習慣を身につける第一歩は、まず「何を育てるか」を決めることだ。実験に先立って、ここ数年、自分が何につまずいているのかをよく観察してみよう。本書を読んでいる以上、あなたはきっと、変えたくても変えられずにいる何かを抱えているはずだ。では、変わろうとする意志を妨げている落とし穴は何か?それは、モチベーションの重要性を振りかざす「モチベーション・モンキー」だ。私たちはモチベーション・モンキーの巧みな誘導によって、あまりにも壮大な目標を設定してしまう。それはときに、私たちが驚くべき高みに到達するのを助けてくれるが、たいていの場合は頼りにならない存在である。

「フォッグ行動モデル」の小さなエクササイズエクササイズ1は簡単だ。2つめのエクササイズはもう少し手間がかかるが、省かないように。時間と労力に見合う成果があると保証する。エクササイズ1「習慣をやめる」方法を知るフォッグ行動モデル(B=MAP)は、あらゆるタイプの行動変化に適用できる。このエクササイズでは、習慣をやめる方法を探る。ステップ1:やめたい習慣を3つ書き出す。できるだけ具体的に。たとえば、「炭酸飲料を飲むのをやめる」ではなく「ランチに炭酸飲料を買うのをやめる」と書く。ステップ2:それぞれの習慣について、きっかけを取り除く(または避ける)方法を探す。何も思いつかなければ、それでもかまわない。次のステップへ進む。ステップ3:それぞれの習慣について、実行をより難しくする方法を探す。ステップ4:それぞれの習慣について、モチベーションを低下させる方法を探す。ステップ5:それぞれの習慣について、ステップ2、3、4から最良と思われる方法を選ぶ。おまけの課題:選んだ解決策を実行する。エクササイズ2習得するために「プレゼン」する物事を習得するには他人に教えるのが最善の方法だ。ステップ1:フォッグ行動モデルのプレゼン用の台本を読む。ステップ2:台本を読みながら、フォッグ行動モデルの要素をグラフ化する。台本なしで説明できるまで練習する。ステップ3:プレゼンの相手を見つける。ステップ4:自分で描いたグラフを使って、B=MAPの各要素について説明する。ステップ5:2分間の説明を終えたら、「意外に思ったことは?」と問いかける。この問いかけによって、学習経験をよりよいものにする対話を引き出せるだろう。

 

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