
●失敗は形を変えた恩恵と思え
失敗は形を変えた恩恵であることが多い。予定どおりに運んだら厄介なことや完全な身の破滅にさえなりかねなかった目標から、引き返させることがあるからだ。
失敗によって新しい機会への扉が開かれ、試行錯誤をしながら、人生での現実に役立つ知識が得られるのである。失敗は、その方法がふさわしくないことを明らかにしてくれたり、高慢な人間の思い上がりを諭したりすることが多い。
一七八一年、コーンウォリス将軍〔訳注…イギリスの将軍。一七七六年、アメリカ独立戦争の際、アメリカ各地を転戦後、降伏。一七三八~一八〇五〕に率いられたイギリス軍の攻撃は失敗に終わった。
この失敗はアメリカの植民地を解放したばかりではなく、おそらく第一次、第二次の世界大戦から大英帝国を救ったのだ。
南北戦争で奴隷を失ったため、南部は経済的に窮乏したが、この失敗が結局は次のような、失敗に相応した有益な種子を生んだのである。
一、奴隷を失った人たちは、自分の力に頼らざるを得なくなり、進取の気性を身につけるようになった。
二、奴隷を失い、南部の女性たちも独立を余儀なくされ、男性と同じように職場に進出したり職を持つようになった。
三、そして、ついにはアメリカの工業が急速に南部に進出を始めた。労働力、原材料、燃料、気象条件がより適合しているためである。積極性を身につけた南部人は北部人への敵対をやめ、北部の工業を南部へ誘致しだした。
アレクサンダー・グラハム・ベル博士は、難聴の妻のために補聴器を開発しようと、何年も研究を重ねた。
当初の目標達成には失敗したが、その研究が電話の発明に結びついたのである。ラジオが最初に大流行したのは一九二〇年ごろのことであるが、ビクター・トーキング・マシン・カンパニーはラジオが蓄音機産業を駆逐するのではないかと危機感を覚えた。
ところがビクターの主任技師は、ラジオの原理を応用すれば、レコード技術が向上することを発見した。その結果、蓄音機は見直され、新たな需要が開拓されたのである。ラジオがなければ、ビクター社は旧態依然の状態であったろう。
トーマス・エジソンの最初の大きな挫折は、教師に、この子は教育するに値しない、という両親あての手紙を持たされて、学校から家へ帰されたことである。
エジソンには大きなショックであったが、このために彼は独学で教養を身につけ、真に偉大な発明家になれたのである。
また、エジソンは片方の耳が不自由で、これを大きなハンディと思う人もいるだろうが、彼は第六感を使って「心の耳」で聞く脳力を発達させ、これを克服した。
彼が発明という事業で、あれほど多く自然界の秘密を探り当てたのは、おそらくはこの力に負うところが大きい。
私は幼いときに母を失った。これも人によっては大きな阻害要因と見なされるところだが、まったく逆の結果になった。亡き母に代わって、二人目の母が大きな影響を与えてくれたのである。
私が何か人のためになる仕事に就こうということにあまり抵抗がなかったのは、彼女の積極的な生き方に深く感化されたためだ。
おかげで私は多くの人々から感謝されたが、他の職業ではこれほど人の役には立てなかっただろう。私も大損害を受けたと思ったことがある。
億万長者の大伯父(私の名前は彼の名から取ったものだ)が亡くなったとき、私には遺産を分けてくれなかったのである。
けれども後になって、私を相続者から除いた大伯父の遺志をありがたく思うようになった。私は自分自身の力で、自分から積極的に貧乏から抜け出す必要に迫られたからだ。さらに、それが貧乏を克服する方法を多くの人たちに教えることを学ばせたからである。
●失敗したら、失敗を分析することだ
どんな状況であれ、失敗したら、その状況を分析してみることだ。そうすれば、どんな失敗にもそれに見合った利益の種子が含まれているという、深い真理に行き当たるはずである。
※失敗の分析を行う。
これは失敗が必ず熟した果実となって利益を与えてくれるという意味ではない。失敗には種子が含まれている、ということにすぎない。
※失敗が必ず果実となって利益になるのではなく、失敗はあくまで種子が含まれているということなので、自然には果実にはならない。
それを見つけ出し、芽を出させ、豊かに実を結ばせるには、人それぞれが目的を明確に持って積極的に独創力を働かさなければならない。
※その種子を見つけ、芽を出させ、実を結びつけるために、目的を明確にし、独創力を働かせる。
両足の自由を失ったら、たいていの人は大きな障害と思うだろう。しかしフランクリン・D・ルーズベルトは、そうした自分に対して補助具を使って立ち向かおうと、断固とした決意をした。
そして不自由な足にもかかわらず、彼は立派な業績をあげた。苦難に対する彼の心の姿勢が、不自由を最小限に抑えたのである。
エイブラハム・リンカーンは商店経営に失敗し、測量士、軍人、さらに弁護士としてもうまくいかず、才能を別の方向に転じた。
そして、合衆国史上最も偉大な大統領となったのである。私は雑誌記者などの仕事を始めたての若いころに、二〇回以上もの大きな失敗を重ねた。
この失敗が私に進路を変えさせ、最終的に私が最も人の役に立てるような分野へと導いたのである。
※失敗が進路を正してくれて、最終的に最も人の役に立てるような分野へ導いてくれるため、常に失敗を分析して考えて軌道修正を行うことが必要。
クラレンス・ソーンダースは店員として失敗したことから、あるアイデアを思いつき、四年前に四〇〇万ドルの収益をあげた。
そのアイデアとはセルフサービスの食料品店である。ピグリー・ウィグリー方式と呼ばれ、いまではアメリカ中に展開しているセルフサービス店の先駆けとなった。
肉体の健康が損なわれると、人間の注意力は肉体から頭脳へと移ることが多く、その結果、肉体の真の支配者、つまり心の存在と出会う。
そして、健康のままでいたら、まず気づかなかった可能性が大きく広がるのである。
ウィスコンシン州フォートアトキンソンのマロイ・C・ジョーンズは、農業でやっと暮らしを支えていたが、あるとき突然、麻痺に襲われて全身の自由が奪われてしまった。
そのとき彼は、こうした苦難な状況ならではの発見をしたのだ。体は使えなくとも、自分の望みや望みを実現しようという意欲があるかぎり、目的は達成できる。
これが彼の発見である。彼の意欲は仔豚の肉でソーセージを作るというアイデアにつながった。「仔豚ソーセージ」というその製品は、彼を億万長者にしてしまった。
肉体が健全なうちは、ジョーンズも自分の持つ豊かな富の源泉に気づかなかったわけだが、このことは深く考えてみなければならない。
偉大な変化の法則はジョーンズを完全に打ちのめし、額に汗して暮らしを立てるという、それまでのやり方を打ちこわした。
これは自分の脳力に気づかせ、脳力は腕力よりもはるかに勝ることを教えるためだったのだ。まことに、自然は奪うだけではないのだ。
※脳力は腕力よりもはるかに勝る。
生まれながらの権利や恩典を人から取り上げるときは、必ず何らかの形で、それに見合った利益の可能性を与えてくれる。
ジョーンズはその良い例である。失敗や不運が恵みとなるか災いとなるかは、その人の反応次第である。
失敗や不運に見舞われても運命の手が別の方向へ行くように合図をしたと受け取り、その合図に従えば、その経験は必ず恵みとなる。
失敗を自分の弱さの表れと受け取り、くよくよと思い悩めば劣等感に襲われることになり、失敗は災いとなる。反応の向きが問題なのだ。そして、どう反応するかは、いつでもその人に完全に任されている。
失敗と無縁な人は誰もいない。誰でも一生のうちには何度かの失敗をする。
※失敗は必ずする。成功の種子である。
しかしまた人間は誰でも、失敗に対して思いのままに反応する特権と術を持っているのだ。
人を取り囲む状況には、個人ではどうともし難いものがあり、場合によってはそれが失敗や不運につながることもある。
けれども失敗に対して、自分に最も有利な形で対応しようとすれば、これを妨げる状況などはあり得ないのだ。
自分の弱さを知るには、失敗は正確な物差しとなる。だから失敗は自分の弱さを正す機会を与えてくれる。その意味で、失敗は常に恩恵であるともいえるのである。
●「失敗」が演出する人間模様
普通、失敗が人に作用するのは、次の二つのうちのどちらかである。
すなわち、①さらに大きな努力をする挑戦の機会となるか、②ヤル気をくじかれ、気弱になって努力をあきらめてしまうかである。
大多数の人は、最初の失敗のきざしが見えただけで、まだ完全に失敗してもいないうちから希望を捨て、すっかりあきらめてしまう。たった一度失敗しただけで、投げ出してしまうのだ。
しかし指導者になる資質を持った人は、失敗に屈することなく、さらに努力しようと自分を励ますのである。自分の失敗を観察することだ。
※絶対に自分の失敗から逃げ出さない。失敗を観察すること。
そうすれば自分が指導性を発揮できる人間かどうか、わかるはずである。自分の反応が、それを知る確かな手がかりとなる。
ある仕事に三度失敗し、それでもあきらめないなら、あなたはその道での指導者になれる可能性があると思ってよいだろう。
一〇回以上失敗して、なお努力を続けられれば、あなたの心には天才が芽ばえ始めている。その場合には希望と信念という陽光を浴びせて、大成功に育つまで見守っていただきたい。
自然は災いをふりかけて人を打ち倒すことがあるが、それは起き上がって再び闘うのは誰なのかを探るためであろう。
この試験に合格した人が、指導者として人類にとって重要な仕事をするよう選ばれ、運命づけられている。
この次に失敗したら、あらゆる失敗や災いには、必ずそれに見合った利益の種子が含まれているのだということを思い起こしていただきたい。
そして、その種子の発見に全力を傾け、その種子が芽を出すように行動を起こすのだ。そうすれば、どのような現実であれ、失敗として受けとめないかぎり、失敗はこの世にはないことがわかるはずだ。このことを忘れないでいただきたい。
マロイ・C・ジョーンズが、自分を襲った不幸を、立ち直ることのできない打撃と考えたとしても決して不思議ではなかった。誰も彼を責めなかったろう。
けれども彼は自分の不幸に前向きな態度で対応したので、精神力により今まで以上の働きをすることができたのだ。
彼の対応の仕方こそ、彼の経験で最も重要な位置を占めるものだ。夢にも思わなかった巨万の富が見返りとして得られたのは、この対応があったればこそなのである。
失敗と呼ばれているものはほとんどが、一時的な当て外れにすぎず、前向きな姿勢で対応しさえすれば、かけがえのない財産にできる性質のものである。
※失敗は一次的な当て外れである。対応すること。
●勝利者は断じてあきらめない
生まれてから死ぬまで、人生は挑戦の連続である。失敗は完全に勝利を収めないうちに失敗を克服し続けるよう、強いられている。
※人生は挑戦の連続。失敗を克服し続けるように強いられている。
こうした挑戦に勝利を収めた人に対しては、人生は豊かな恩恵と強い力で報いるのである。
※失敗に負けない。
人間の誤りや一時的な見当違いは、それをあるがままのものとして受け入れ、努力を続けるなら、宇宙は寛大に許してくれる。
けれども、つらい道のりだからと投げ出してしまう罪は、決して許されないのだ。「勝利者は断じてあきらめない。あきらめる者に勝利はない」これが人生の掟である。
※つらいからと投げ出してしまう罪は決して許されない。
日本にとって第二次世界大戦の敗戦は、最大の勝利であった。それまで日本国民を縛っていた迷妄は敗戦によって打ちこわされた。そして敗戦は自由の味を教え、日本は再び文明国家の仲間入りができたのである。
努力する人たちの中でも、神はとりわけ「愚か者」に好意的なようである。失敗の可能性も考えず、不可能を不可能とも思わずに突進してしまう人にである。
ヘンリー・P・カイザーは船舶の建造にはまったく未経験であったが、第二次世界大戦という非常時で、造船業界だけでは建造が間に合わなくなったのを見て、造船業に乗り出した。信念と情熱のなせる業であった。
そのため、前代未聞の高生産率を前代未聞の低コストで実現し、歴史と伝統を誇る業界で、文字どおりの風雲児となったのである。
「そんなことは、できるわけがない」という人は、コツコツとそれに励む人に、結局は脱帽することになるのである。
コツコツと励む人が成功するのは、宇宙の摂理に従い、自分を適応させていくからである。失敗に対しても自然が賠償してくれる。「できるわけがない」という人は、自然の法則を学ばない人である。
※変化に適用していくこと。
ある老鉱夫は金脈探しを続けていたが、三〇年もの間、失望と落胆の連続であった。
ところが突然、伴侶としていたラバがネズミの穴に足をとられて骨折するという事態に見舞われたのである。ラバは撃ち殺すしかなかった。
ラバを埋葬する穴を掘っているときに、鉱夫は世界一豊かな鉱床に行き当たったのである!運命は、ときには物語じみたやり方を使って、失敗をものともせずに立ち向かう粘り強い人間に報いる。
この現実の世界には限界がないということを、いつも自分に言い聞かせていなければならない。限界があるとすれば自分の心の中に自分でつくったものか、他人がつくるにまかせたものにすぎないのだ。
肝に銘じ、ことあるごとに思い出していただきたい。どういった経験をしようが、失敗ではないのだ。
※そもそも失敗はでない。
自分で失敗と認めるから失敗なのである!もう一つ忘れないでいただきたいのは、それを失敗とか何とか呼べるのは、当の経験者だけの権限だということだ。
他人がとやかくいうのを許してはならない。ここに失敗を招く五四の原因を列挙しておいた。読んで該当する項目があったら数字のところに○をつけるとよい。
今後のあなたの行動の参考になるだろう。そして、もしあなたが今、何らかの失敗をしているとしたら、その原因の一端がわかるかもしれない。
失敗を招く五四の原因()
- 1明確な計画や目的を持たないため、状況に流されやすい。
- 2先天的かつ重篤な体の障害がある(ただし8参照)。×
- 3他人のことを干渉しすぎる。×
- 4生涯目標となる大きな目的を持っていない。
- 5十分な学校教育を受けていない。×
- 6自己修養に欠ける。一般に、暴飲暴食、性的耽溺、自己発達の機会に対する無関心などの形で現れる。×
- 7凡庸から抜け出ようとする意欲がない。×
- 8不健康であること〔まちがった考え方、不適切な食生活、運動不足などによることが多い。(しかし、ヘレン・ケラーのように不治の病を背負って人々のために偉大な貢献をした人もいることを、忘れてはならない)〕。
- 9幼年期における環境の悪影響。個人の生活の基礎は、七歳までの間にほぼ形成されるといわれる。×
- 10始めたら最後までやり遂げるという根気がない。
- 11否定的な考え方をするのが習慣になってしまっている。
- 12感情の抑制がきかない。×
- 13何もせずに利益を得ようとする(ギャンブル好きに多い)。×
- 14決定の迅速さや明確さに欠け、決定したあとでも実行できない。
- 15七つの基本的な不安のうちの一つ、あるいは二つ以上にとらわれている(第18章参照)。
- 16結婚相手の選択ミス。
- 17社内での対人関係、職業上の人間関係に臆病である。
- 18すべての面で慎重さがたりない。
- 19職業上の協力者の選択を誤っている。
- 20自分に合った職業に就いていない。あるいは適切な職業選択に関心を持っていない。
- 21取りかかっていることを時間内にやってしまおうという集中努力に欠ける。
- 22収入と支出の管理に無関心で、浪費癖がある。
- 23時間をいかに有効に使うかという計画性に欠ける。
- 24抑制のきいた熱情に欠ける。
- 25寛容さがない──宗教、政治、経済といった問題に関する無関心や偏見のために、心がせまい。
- 26協調性がなく、他人と協力できない。
- 27妥当でない権力や自力で得たものでない金を持っている。
- 28誠実を尽くすべき相手に対して、誠実さに欠ける。
- 29利己心や虚栄心を抑制できない。×
- 30必要な資料を自分で確認しないまま、意見や計画をまとめてしまう習慣がある。×
- 31好機に気づくだけの展望や創造力に欠ける。
- 32他人や社会のために少しでも骨を折ろうとする気持ちが薄い。▲
- 33他人に傷つけられたり、傷つけられたと思ったとき、報復手段に訴えようとする。×
- 34言葉遣いが下品で、礼節に欠ける。▲
- 35他人の内情について低俗な噂話を楽しむ。×
- 36政府関係機関に対し反社会的な態度をとる。×
- 37無限の英知の存在を信じない。×
- 38よい結果を招く祈り方を知らない。▲
- 39必要に応じて、他人の経験を自分に役立てることができない。×
- 40個人的な借金の返済がルーズである。×
- 41嘘や極端な事実の歪曲が癖となっている。×
- 42頼まれもしないのに批判したがる。×
- 43他人のおかげをこうむるような関係を広げすぎる。×
- 44貪欲に不必要なものまで欲しがる。×
- 45自分の選んだ目的を達成させるだけの自信がない。
- 46アルコール中毒、あるいは麻薬中毒。×
- 47過度の喫煙習慣、特に絶え間ない喫煙習慣がある。
- 48素人なのに契約や法律的問題を、弁護士であるかのように自分で処理したがる。×
- 49他人の手形に裏書きするという不必要な危険を冒す。×
- 50ものごとを先延ばしにする──昨日までに済ましておかなければならなかったことを、明日やろうとする。
- 51いやな状況になると、何とかせずに逃げ出してしまう。
- 52自分の話ばかりしていて、相手の話を聞かない。自分が話しているときは何も学べないが、他人の話を聞けばいつも何か学ぶところがある。
- 53他人の好意を受けても、報いようとしない。
- 54仕事上の関係者に、故意に不正直なことをする。×
この失敗の原因五四項目の一つひとつに自分の姿をていねいに照らしていただきたい。どの原因にも当てはまらないとすれば、あなたは失敗に打ち負かされることはないだろう。
ただし、自分で採点してから、さらに誰かにあなたのことを採点してもらうと、いっそう興味深く、参考になるだろう。
採用者はあなたをよく知っていて、あなたのことをどう見ているのか率直に教えてくれる勇気を持った人がよい。
エッセンス⑯
▼失敗を恐れてはならない。失敗は形を変えた恩恵であることが多いものである。
▼失敗には、それに見合った利益の種子が含まれている。その種子を見つけ出し、芽を出させ、結実させるには、明確な目標と積極的心構えがなくてはならない。
▼失敗が恵みとなるか災いとなるかは、その人次第である。失敗にどう反応するかが問題なのである。
▼人生は挑戦の連続である。どのような現実でも、失敗として受けとめないかぎり、失敗はこの世にはない。
▼勝利者は断じてあきらめない。あきらめる者に勝利はない。

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