この章では、プロジェクトへの対処法をご紹介します。
プロジェクトをやり遂げるために、自分自身の行動をどうコントロールするかについてを考えていきましょう。まず初めに「プロジェクトとは何か」を定義しておきます。
「プロジェクトとは、その完了のために、複数のタスクの完了が必要な仕事」です。
逆に言うと、プロジェクトは複数のタスクに分解することが可能であり、分解したタスクもプロジェクトと考えれば、それをさらに分解することができます。
プロジェクトの2つのタイプ─継続作業と複数要素
プロジェクトは、その性質により次の2つのタイプに分類できます。対応もそれぞれの特性に合わせなくてはなりません。
タイプ1継続作業のプロジェクトタイプ2複数要素のプロジェクトそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。
■タイプ1継続作業のプロジェクト
「語学の習得」「楽器の練習」などが典型的な例です。
長期間に渡ってくり返される行動で構成されるもので、目標達成の基準を設定することは難しく、続けること自体が目標になることさえあります。
行動そのものがプロジェクトの主体なのです。
本を書き上げる、試験にパスするなどといったプロジェクトも、1つの行動をくり返す点ではこのタイプに分類されます。
11章でもお話ししましたが「継続作業のプロジェクト」はファースト・タスク向きではありません。
それは、このタイプのプロジェクトがかなり長期的なものになるからです。
場合によっては、終わりが見えずいつまでも続きますから、他の仕事をファースト・タスクにできなくなってしまいます。
対応法としては、ファースト・タスクと同様に、毎日一定の時間を決めて取り組むのが適切でしょう。
短時間で済むものならデイリー・タスクに加えてください。
どちらの方法を採用するにせよ、数を増やさず、本当に必要なものだけを選択することです。
「継続作業のプロジェクト」にするにはシンプルすぎてすぐに終わる場合はどうすればよいでしょうか?例えば「本棚の整理」です。
短期間で完了するといっても、1日では無理なプロジェクトです。
答えは、完了までタスク・ダイアリーにくり返し記入し続けること。
これで問題ありません。
■タイプ2複数要素のプロジェクト
「マーケティング・キャンペーンの立案」「論文のレジュメの作成」などがこれに当たります。
続けることではなく目標達成こそが大切で、そのためには、複数のタスクを完了する必要があります。
同じ作業のくり返しではありませんから、きちんとタスクに分解して取り組むのが一番です。
分解したタスクをタスク・ダイアリーに記入して実行します。
簡単なタスクは明日のページに記入、手のかかるタスクは、さらに小さなタスクに分解して何週かに配分します。
大がかりなプロジェクトの場合、それぞれのタスクを次の順序で整理するとフォローしやすくなります。
ステップ1(タスクについて)考えるステップ2(タスクについて)○○と話し合うステップ3(タスクについて)意思決定をするステップ4(タスクの)実行計画を立てるステップ5(タスクの)現状や結果を見直す
緊急度の低いプロジェクトから取り組む
プロジェクトが複数ある場合、どのプロジェクトを優先するかによって、仕事の仕方は違ってきます。
もちろん、余裕もないのに新たなプロジェクトを引き受けてはいけませんが、引き受けたなら、ベストな順序で実行しなければなりません。
一般的に、仕事の優先順位を決める基準は「重要度と緊急度」であるとされています。
しかし、プロジェクトを複数抱えている場合、重要度が考慮されるケースはまずありません。
実際は、緊急度が優先して決定されることが多いのです。
その結果、緊急ではないプロジェクトは、たとえ重要度が高いとしても先送りされてしまいがちです。
つまり、緊急度による優先順位づけには致命的な欠陥があるのです。
どんな仕事も緊急になるまで着手されなくなり、その結果は、常に締切に追われる生活。
ストレスが絶えず、仕事の質はいつも最低で、周囲の信頼を失うことにもなりかねません。
それならば、むしろ優先順位をつける順序を反対にしてみてはどうでしょうか?つまり、緊急度の低い仕事から着手するのです。
意外な提案でしょうが、ここで実効性を検証してみます。
実は、緊急な仕事には、2種類のまったく違う仕事があります。
タイプ1本当に緊急な仕事(火事で避難する、記者が翌朝の新聞の記事を書く、など)
タイプ2締切が迫って緊急になった仕事(レポートを締切直前まで書かなかった場合など)現実の緊急の仕事は、2のケースの方が多いのです。
「これは緊急だ」という場合、実は適切な時期に仕事を始めなかったのが原因という場合がほとんどです。
もちろん、「これは緊急だ」という仕事を後回しにはできませんが「緊急度の低い仕事から着手する」と考える理由はここにあります。
本当に緊急な仕事には、すぐに取りかかってください。
しかし、この場合「そもそもは問題ではなかったのに、あなたが原因で緊急になった仕事」は本当に緊急な仕事ではないのだということを自覚しておくことが非常に大切です。
「仕事に向き合うこと」「仕事を片づけること」
次に〝仕事に対する心の持ち方〟について考えてみたいと思います。プロジェクトをする上で、とても大事なポイントだからです。
「仕事に向き合う」と「仕事を片づける」。
この2つには、どんな違いがあるでしょうか?どんな立場で働いているとしても、実際、この2つは区別しなければなりません。
仕事を〝片づける〟というのは、細かい日常業務に取り組むことです。
クライアントへの応対、製品の製作、会計処理、従業員への対応などがそれに当たるでしょう。
別の言葉で言えば、仕事に必要な〝業務を処理すること〟です。
一方で、仕事に〝向き合う〟というのは、仕事について考えることです。
仕事の目的・意味を考える、構想を練る、目標を設定する、新しい企画を考える、計画を立案する、といったことが含まれます。
プロジェクトは〝向き合う〟ことを要求する仕事です。
〝片づける〟ことばかりに集中すると、よく起きる問題は、細かな日常業務に没頭するばかりで、仕事に向き合えなくなることです。
もちろん、プロジェクトをやり遂げるには〝向き合う〟ことも〝片づける〟ことも、どちらも欠かせません。
日常業務が処理できないなら、次のステップを考えても意味がないとする人もいるし、プロジェクトの意味を考えずに日常業務を片づけてもしかたがないと考える人もいます。
どちらが正しいとも、間違っているとも言えません。
しかし、プロジェクトに対して全体的な構想が持てないならば、やり遂げることは難しいということは心すべきです。
計画に遅れが生じたり、進み具合が停滞するのは、日常業務に埋没してしまった結果、仕事に〝向き合う〟時間が欠如したことによって起きているのです。
EXERCISE行動の合間に考える習慣をつける
仕事に〝向き合う〟ためには、思考と行動を交互にくり返すプロセスが不可欠です。行動するだけでなく、じっくり考える時間を取る必要があるのです。
ここで考える時間を取るための、簡単なテクニックをご紹介しましょう。まず、ノートと鉛筆を持って座ります。
邪魔が入らないように一定の時間を確保して、心を平静に保ち、リラックスしてください。後は、浮かんできたアイデアや考え方をノートに書きとめるだけです。
しばらく何も浮かんでこなくても、心配はいりません。用意した時間が終わりに近づいたら、今度は自分の書いたものについて考えましょう。
よいアイデアや、何らかの行動が必要なことには下線を引いておきましょう。練習の時間、頻度はあなたの自由です。1週間に一度でも得るものは大きいでしょう。
毎日15分を続ければ、新鮮なアイデアがよどみなく浮かぶようになります。
「どんなに短くても、考えないより、考える方がよい」ということを忘れないでください。考える前に、必ず時間を設定しましょう。どんな長さに設定しても、一度決めたらその時間の最後まで考え抜いてください。優れたアイデアは、締切間際に浮かぶことが多いもの。
これも期限の効果の一例です。私の場合は、最初のアイデアの流れが途切れると、新たな流れが出てきます。この2番目の流れに、より深く、真実を捉えたアイデアが含まれているケースも多いのです。
EXERCISEプロジェクトを完了させる
次のケースで、あなたはどのように取り組むべきでしょうか?
<Q1>ダイエットのために、エアロバイクでトレーニングをすることにした。
<A1>典型的な「継続作業のプロジェクト」です。時間を決めて実行しましょう。週に3回くらいのトレーニングが必要ではないでしょうか。スケジュールを作り、確実に守ってください。あなたが計画に忠実であればトレーニングは習慣化します。言うまでもありませんが、このタイプのプロジェクトの数は増やしてはいけません。注意してください。
<Q2>郵便集配室の改装に関する改善提案を依頼された。今は1月、担当の委員会は7月の会合での提案を検討する予定だ。
<A2>期限まで半年の余裕があります。提案の作成にもそれほどの時間は必要ありません。しかし、ここが落とし穴です。こうしたプロジェクトに限って、緊急になるまで放っておかれます。「緊急度の低い仕事から着手する」というルールを思い出してください。
すぐにプロジェクトに着手しましょう。7月になれば必ず「早めにやってよかった」と思うはずです。
<Q3>改善委員会の月例会議に出席した。各部門長の要望をヒアリングして、その結果を翌月の委員会で報告することになった。
<A3>ヒアリング期間は1ヶ月あります。
差し迫ってはいないので、直前まで何もしないリスクがあります。「緊急度の低い仕事から着手する」を適用してください。
<Q4>委員会に出席する準備のため、前回の議事録をチェックした。すっかり忘れていたが、次回の会合までに、議事録の改訂に関する報告をすることが決まっていた。
<A4>「緊急度の低い仕事から着手する」を適用していれば、こんなことは起きなかったはずです。委員会で謝罪をした上で、以後、このルールを忘れないようにしましょう。
<Q5>請求書の発送遅れに困っている。時間ができたら、原因をつきとめなければならない。
<A5>「時間ができたら」は「しない」と同じ結果を生みます。これはファースト・タスクにすべき仕事の典型。問題点をリストアップしてつぶしていきましょう。
<Q6>契約の説明を受ける予定の日に、クライアントから「契約書をチェックする時間がなかった」と連絡があった。
<A6>理由を聞く必要はありません。日程を再設定してください。同時に、その結果が引き起こす事態を伝えて、同じミスを二度と起こさせないことです。
<Q7>最初の小説の出版が決まった。原稿提出までに8ヶ月ある。
<A7>8ヶ月はずいぶん先に感じるでしょうが、今すぐ執筆を開始すること。ガイドラインは次のとおりです。
・期限のあるプロジェクトには「緊急度の低い仕事から着手する」ルールを適用する。
・期限のないプロジェクトはファースト・タスクの候補にする。
<Q8>支払いのオンライン・システムが古くなっている。早いうちにリニューアルしたい。
<A8>プロジェクトの期限が明確ではありません。ファースト・タスクにして進めるのがよいでしょう。
CHAPTER16まとめ
●プロジェクトには、①継続作業のプロジェクト②複数要素のプロジェクトがある。
●プロジェクトが複数ある場合は、緊急度の低いプロジェクトから取り組む。
●仕事に対して全体的な構想を持った上で「片付ける」仕事と「向き合う」仕事を仕分ける。
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