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目的地まで最短距離で進もう——時間と効率化の話

目次

1すべてにおいて時間は「王さま」

すべての仕事に「時間」という目盛りをあてがう

なぜ、あらゆる仕事に「段取り」が必要なのか?それは「時間」というものが、限られたものだからです。

すべてのプロジェクトには「いつまでに」という期日がかならずあります。なぜ期日があるのか?それは時間が有限だからです。

1ヶ月は30日前後と決まっていて、どうがんばっても40日にはなりません。1日は誰にとっても24時間です。そして、何よりぼくらの命にも限りがあります。命が有限だからこそ、どんなプロジェクトにも期限が必要なのです。

時間の制約なしにできることは、この世界には存在せず、ぼくたちは時間に支配されている存在です。

だからこそ、どんな仕事であっても、あたかも映像や音楽作品をつくるように、「どのくらいの時間内におさめなければいけないか」をつねに考える必要が出てきます。

機械の分野には「治具」というものがあります。

たとえば、「3センチ間隔で穴を開ける」という作業を機械が正確にこなすために、長さを計測する「治具」がついていて、3センチ間隔になるちょうどいいところにドリルを導く。

こうした治具によって機械は、短い時間で効率よく生産性を上げることができます。機械における治具は「長さ」の話ですが、仕事における治具は「時間」の話です。

どんな仕事も「時間」という治具を当てることで、効率よく生産的に進めることができます。

なぜか終わらない仕事、ダラダラと続けてしまいがちな仕事には、「時間」という治具が備わっていないのではないでしょうか。

すべての仕事は、時間という治具によってはかられるからこそ、うまく進むのです。

「いいものをつくる」よりも「時間を守る」ほうが大切

クリエイティブにまつわる仕事は、しばしば誤解されています。

「スケジュールをこなすより、いいものをつくることが大切だ」「クリエイティブなことは、時間どおりには進まない」こんな解釈が、クリエイター本人にもまわりにも蔓延しているのです。

クリエイティブ業界はその傾向が特別強いかもしれませんが、締め切りを守れなかったり、段取りが苦手だったりする人は、心のどこかで「いいものをつくることが自分の仕事だ」と勘違いをしていないかどうか振り返ってみましょう。

素晴らしいものであれば、多少時間がかかっても仕方がないという思い込み。あるいは、「素晴らしいものができるんだから待ってほしい」という思い上がり。

これは優秀な新人に多い勘違いなのですが、そういう思考回路をもっているということ自体、ぼくはびっくりします。

お客さんからお金をいただいて「この日までにつくります」と約束したのに「いいものをつくることが優先だから破ってもいい」などと思っていることが不思議です。

「締め切りいいものをつくる」これは絶対ルールであり、時間よりも強い制約はこの世にないとぼくは思います。

スケジュールを制するものは仕事を制す

締め切りを守るのが苦手な若い社員に、ぼくはこう言います。「ロナウドを目指そうよ」クリスティアーノ・ロナウドは、言わずと知れたスーパースター。

サッカーの技術とルックス、2つの強みがそろっています。それと同じで、仕事の質とスケジュール。

この2つを両立させることはぼくらにもできるはずです。

「質を高める」のか「時間を守るのか」と天秤にかけるのではなく、どちらも大事にしよう。ぼくはそう言います。師匠の会社を辞めて独立した頃のぼくは、まったく無名で、事務所すらない状態でした。

そんなやつに仕事をくださったクライアントさんのことを思うと、いいデザインをするのは当然のことながら、「絶対に約束だけは守ろう」というのが染みつきました。

だからぼくは、ずっと締め切りだけは厳守してきました。締め切りを守り続けたこと。人との約束を大切にすること。

これが、ぼくがささやかながら信用を築けた大きな要因だと思っています。

そのおかげで、湯野浜温泉「亀や」さん、中川政七商店さんなど、10年、15年の長いおつき合いになったクライアントさんもいます。

「スケジュールを制するものは仕事を制す」というのも、ぼくの口ぐせです。自分の気分や体調の波。社内の力関係。時間が守れなくなりそうな、いろいろな要因はあるでしょう。

それらをまったく無視することが難しいのはわかります。それでも仕事をうまくやっていこうと思うなら、「自分さま」を優先するのは論外。

「クライアントさま」でも「上司さま」でもなく、「時間さま」を最優先にすることです。

「いい仕事」をするのがあたりまえでも、ときにはどんなに努力してもうまくいかないこともあります。

しかし、締め切りをかならず守るというのは、自然災害などの不可抗力はあるものの、段取りという「努力」で99%はカバーできます。

仕事の質よりも、締め切りを優先する。一見、誤解を招きそうなフレーズですが、これくらいの意識でちょうどいいほど、大切なことです。

「いい仕事は非効率でも仕方ない」「いい仕事は長い時間をかけるものだ」というのは思い込みです。

「早くていい仕事をすればいい」のです。効率よく、いい仕事をする。それは可能ですし、そこを目指したいものです。

2「締め切りが完成」である

「完成したら世に出す」のではない。「締め切りが完成」である

グラフィックデザイナー・仲條正義さんに教わった、ぼくがずっと大切にしている言葉があります。「締め切りが完成」という言葉です。

「完成したから世の中に出すのではなく、締め切りがきたら世の中に出すべし」いわゆる芸術家だったら締め切りはないかもしれませんが、社会の中で生きている以上、締め切りがかならずやってくる——。

そんなニュアンスだと思いますが、さすが大先輩だと心に響きました。資生堂パーラー、カゴメ、パルコ。

ひとつの時代を象徴するようなデザインを次々と生み出した仲條さんでさえ、締め切りをもとに仕事をしているのだから、自分もそれにならおうと思ったのです。そもそもめんどうくさがりやのぼくは、だらだらしているのが好きです。

テレビを見ているのも好きだし、子どもと遊んでいるのも好きだし、ぼんやり考えごとをしているのも好き。

「締め切りがなければ、仕事をしなくなるかもしれない」と思うほどです。「仕事をしなくなる」というのが極論だとしても、締め切りがなければ緊迫感がない仕事ぶりになるでしょう。

それでできあがったものが質の高い仕事になる可能性は、相当に低いと思います。

締め切りが完成であるならば、「一生懸命にがんばったけれど、できなかった」という言い訳も通用しなくなります。

たとえば「3月中に、新しい商品の企画案を3つ提出するように」と上司に言われたとして、3月31日になって「できなかった」というのはありえません。

3月31日の時点でできていた企画——たとえそれが「なんかわからないけど、とにかくむちゃくちゃ売れる商品!」としか書かれていない子どもみたいなメモだけだったとしても——それが自分の仕事の「完成形」であり、自分の実力の「すべて」と判断されるということです。

「時間があれば、もっといいものができた」という言い訳は通用しません。とても厳しいことですが、「時間内にやりとげることも実力のうち」というシビアさが必要なのだと、ぼくは考えています。

締め切りをつくる。ない場合は「仮」でもつくる

グッドデザインカンパニーでは定期的に社内ミーティングを行ない、各チームのデザイナーがプロデューサーに、スケジュールの共有をしています。

チームごとにいろいろなプロジェクトを請け負うことも多いので、会社として「締め切りを守れているか」や、全体の段取りを把握するためのものです。

わが社のプロデューサーでありぼくの妻である水野由紀子は達人といっていいほど段取りが得意なのですが、このミーティングでは戸惑うことがあります。

締め切りはいつかと尋ねると、「わからない」と答えるデザイナーがいるからです。

「クライアントさんは、いつがラフデザインを提出する締め切りなのか、言っていなかったんです。

だから準備はしているんですけど……」クライアントから締め切りを言われなかったから、締め切りがわからない、というのです。

しかし、これではいけません。

たとえば舞台のパンフレットの仕事だとしたら、公演当日には印刷物として完成していなければなりません。

公演日がわかっていれば、たとえクライアントが細かく締め切りを言ってこなくても、逆算してわかるはずです。

「○月○日までに入稿しないと、印刷が間に合わない。それには、○月○日までにはクライアントからデザイン案の承認をもらわなければいけない。それなら、○月○日までにラフデザインを完成させよう」といった予測はできるはずです。

身内の話を書きましたが、これは案外、よくあることではないでしょうか。

相手が言ってくれないのならば、自分のほうから「○月○日締め切りでいかがでしょう?」と相談するクセをつけましょう。

自分で勝手に決められることでもありませんから、相手は「いや、もうちょっと早くほしい」と言ってくるかもしれません。早めに進行することになるなら、早く知っておいたほうがいいに決まっています。

上司に頼まれた案件で、「いちいち締め切りについて相談できない」というものもあるでしょう。それなら「仮」でいいから、自分ひとりで締め切りをつくっておくのです。

締め切りとは、相手が言おうと言うまいと「ある」ものです。それなのに「締め切りがわからない」という状態でいたら、段取りなどできるわけがないのです。

「なる早」「今日中」という危険ワード

締め切りを決めておらず、のんびり進めていたら「あの資料、そろそろできているよね?」と聞かれてあわててしまう……。これは「あるある話」だと思います。

締め切りを決めていたとしても、それが「あいまいな締め切り」であったなら、決めていないのと同じです。

「なる早でお願いします」「今日中にできれば助かります」「今週中でどうでしょう?」クライアントさんに「これ、いつまでにやればいいですか?」と尋ねると、しばしばこんな答えが返ってきます。

「なる早」には基準がありませんから、いくらでも先延ばしができてしまいます。

もしガウディだったら「なる早ね。じゃあ、サグラダ・ファミリアはあと50年くらいで仕上げますね」と言うかもしれません。人によっては「なる早」は、来月もしくは来年ととらえられる可能性もある。

それほど「なる早」は危険な言葉です。

時間という数えられるもの

・はかれるものに対して、「目盛りがついていない言葉」を使ってはいけません。

「なるべく早くっていうのは、明日までですか?ぼくは来週火曜日の13時まで時間をいただけると助かりますが、それでもいいですか?」このくらい具体的に確認しましょう。

よく言われることですが、「今日中」というのも業界ごと、会社ごと、人それぞれ違います。ぼくはいつも「何日の何時までと決めなさい」とスタッフに言っています。

今日中とは23時59分までなのか、それとも相手が今日、退社する時間までなのか。23時59分でいい場合、明日の朝イチでもいいのか。明日の朝イチとは何時何分なのか。

「なる早」「今日中」「大至急」「今月中」このような感覚的な言葉は排除し、みんなに共通している「時間」という目盛りを使う習慣をつけることです。

締め切りはつねに「日付と時間」で確認しましょう。

自分の中での締め切りはギリギリに設定する

相手との締め切りは、いってみれば「正式な締め切り」です。それをしっかりと確認したら、自分の中で「プレ締め切り」を決めます。

「8月8日の13時までに納品」たとえば、クライアントとこんな約束をしたとしたら、「プレ締め切り」は理想的には1週間前の8月1日。

せめて8月3日です。

これは決して「早め」ではなく「ギリギリ」の設定です。

なぜなら、修正が入る可能性もあるし、ミスが見つかることもありえます。

発送でトラブルが起きる可能性もありますし、体調不良や災害が起きるかもしれない。

それらに対応したとしても「正式な締め切り」には絶対に間に合うように、バッファをもって「プレ締め切り」を決めるのです。

逆にいうと、プレ締め切りがあるから正式な締め切りを守ることができます。

「何か起こったら万全の対応をしたい」といっても、プレ締め切りを前倒ししすぎるのも問題です。

たとえば1ヶ月も前にプレ締め切りを設定すると、逆に正式な締め切りに遅れてしまう危険性があります。

自分の中での締め切りを早く設定しすぎても逆効果なのです。

これは目覚まし時計の理論と同じです。

「7時に起きたいけど、寝坊しそうだから6時にセットしておこう」とやると、いざ6時にアラームが鳴ったとき、「いやいや、あと1時間もあるんだから大丈夫」とつい二度寝してしまって、寝坊してしまう……。

これも「あるある話」ですが、締め切りに関しても同じことが起きます。

ごまかさない。

余裕をもたない。

このくらいシビアな姿勢で設定したほうが、締め切りは破らずにすむのです。

3仕事が入る「時間ボックス」を用意する

長期プロジェクトでも「カップ焼きそば」のつもりで

段取りが苦手な人であっても、日常生活では立派に「段取り」をしています。

たとえば、カップ焼きそばをつくるとき。

パッケージを開け、フリーズドライの具を入れ、お湯を入れて3分待ったら湯切りをし、素早くソースを入れてかき混ぜる。

わずか数分のプロセスですが、「時間どおりにやるべきこと」をきっちりとやりとげます。

「適当にお湯を入れ、ふと気づいたときに湯切りをする」という人は少数派でしょう。

こだわりがある人なら、「お湯を入れて○分○秒で湯切りをし、蓋をして○秒蒸らしてからソースを入れて食べる」という細かい段取りをしているかもしれません。

つまり、ぼくたちは短時間であればきっちりと段取りができるのです。

トイレに行きたくて帰宅したときを思い出してください。

マンションのエントランスからポケットの中で鍵を握りしめ、「エレベーターの閉めるボタンを押して階数を押す。

ドアが開いたらポケットから鍵を出して開けるが、この靴は脱ぐのに時間がかかるから、エレベーターの中でひもを緩めておくと時間が短縮できる」なんて段取りもやってのけます。

緊急事態にも、ぼくたちは段取りができているのです。

消防士や警察官、看護師をはじめとする医療関係者などのプロフェッショナルであれば、わずかな時間で何をすればいいか、きっちりと決まっている段取りを着実にこなしていると思います。

ところが、プロジェクトが長期になればなるほど、時間の感覚がゆるくなり、段取りができなくなりがちです。

時間が迫ってくることへの恐怖心が、まひしてしまうのでしょう。

3年プロジェクトも3分間のカップ焼きそばと同じように段取りをする。

そんな心構えが必要です。

3年後というかたまりだと漠然として見えるかもしれませんが、それを1年ごとに3つに分割し、その1年を12ヶ月に分割し、その1ヶ月を30日に分割したうえで土日を差し引いた22日にすれば、「まだまだ先だ」とのんびりしていられないことに気づくはずです。

「時間ボックス」に仕事を入れていく

時間の大切さを認識し、締め切りを明確にできたところで、いよいよ段取りの組み方の話に入っていきましょう。

ぼくは、どんな仕事でもまず「時間ボックス」をイメージします。

「3日」「1週間」「1年」など、さまざまなサイズの時間ボックスのなかからよさそうなものを選び、そのなかに「これと、これと、これをやれば完成」という仕事のタスクをはめ込んでいくのです。

相鉄のプロジェクトのようにたくさんのタスクがある仕事は、すぐに時間ボックスがいっぱいになってしまって、やるべきことがあふれてしまいます。

相鉄を「100年計画」としたのは、手がけることが大掛かりでたくさんあったので、「大きな箱」を用意したいと考えたためでした。

自分が手がけている仕事やプロジェクトがAとB、2つあるとしたら、それぞれにふさわしい時間ボックスのサイズがあるはずです。

「プロジェクトAは1週間くらいかかるな」と思ったら、そのくらいのサイズの時間ボックスを選び、プレ締め切りから逆算して、1週間前からスタートする。

「プロジェクトBは1ヶ月」と思ったら、同じように1ヶ月程度の時間ボックスを選びますが、AとBが重なっているなら「いや、1ヶ月半の時間ボックスを選んだほうがいい」となるかもしれません。

「このプロジェクトにおいてやるべきことは何で、どのくらいの量があるか?」これには予測する力が必要です。

CHAPTER2までに触れた最終のイメージづくりや準備がきちんとできていればいるほど、予測力は正確なものになります。

「予測したやるべきことにふさわしい時間ボックスは、どのサイズか?」これを決めるのは、スケジュール力。

時間の見積もりとも言えるかもしれません。

決まったスペースにぴったり詰めるというのは、なんにせよ技術がいります。

たとえば、気ままにおかずをつくってから適当な弁当箱に詰めたら、スカスカになったり、すべてのおかずが入らなかったりします。

しかし「幼稚園児の弁当」「自分の弁当」などと目的ごとにどんなおかずをどのくらいつくるかを決め、ちょうどいい弁当箱の大きさを決めてから詰めていけば、かならず目的に合った弁当ができあがり、おかずも余らないのと同じです。

では、どのようにスケジュールを立てるのか?時間をどう見積もるのか?仕事にどう優先順位をつけるべきなのか?それについて見ていきましょう。

「つらい仕事か、楽しい仕事か」は考えない

仕事は「メンタル」でなく、すべて「時間」ではかる

時間ボックスに「やるべきこと」を詰めていくときにイメージするのはテトリスです。

テトリスはご存じのとおり、正方形を組み合わせた図形をぴっちりと積み上げて列をクリアしていくゲーム。

テトリスのブロックは正方形をさまざまなかたちに組み合わせた何種類かの図形ですが、「やるべきこと」のコマもいろいろなかたちをしています。

「クライアントへの提案書の練り直し」とか「上司にプロジェクトについて相談する」とか「経費の精算」とか、やるべきことの内容を考えると、テトリスよりも複雑です。

ときに丸や三角があるどころか、球体や不思議なオブジェのようなかたちもあるように思えてきます。

それらをぴっちり時間ボックスに詰めるのは不可能だと思えてくるでしょう。

また、「重要な仕事からやる」とか「締め切りが近いものからやる」とか、いろいろなやり方があると思います。

段取りのコツとしてぼくがおすすめしたいのは、すべての仕事を「時間」ではかるということです。

つまり「軽い仕事・重い仕事」というものはなくて、「短時間で終わる仕事」と、「長くかかる仕事」という目安で、やるべきことをはかるのです。

そうすれば、一見かたちが違って見えても実はどれも正方形を組み合わせたテトリスのコマ同様、すべての仕事を同じものとして扱えます。

大切なのは「重要度」はもちろんのこと、「精神的な重い・軽い」で仕事をはからないことです。

「10分で終わるけどつらい仕事」と「1時間かかるけれど楽しい仕事」という考え方をしていると、仕事の計測が狂ってきます。

30分が1コマとして「短時間で終わる仕事」は1コマ。

「長くかかる仕事」は6コマ必要かもしれません。

すべての仕事のコマ数をはかり、時間ボックスにきっちり詰めていきます。

1日の時間ボックスの中には、「13時から15時まで会議」などと、すでに埋まっている部分もあるでしょう。

それなら空いている午前中と15時以降に、仕事のコマを詰めることになります。

まんべんなく、いろいろな仕事のコマでボックスを埋めることもあるでしょう。

あるいは「1週間後にプレ締め切りがある仕事を時間ではかったら、30コマ必要だった」という場合は、それだけをどんどん詰めていくかもしれません。

いずれにしろ、まずは機械的に、仕事を時間ではかってみることがポイントです。

「麻雀」のように機械的に考える

時間ではかった仕事を時間ボックスに詰めていくときは、優先順位も考える必要がありますが、ぼくはこれもビジュアル化してとらえています。

いろいろな仕事が、麻雀の牌のように、すべてずらりと並んでいるところを想像するのです。

自分の仕事の牌は左からプライオリティが高い順に並んでいるのですが、クライアントやスタッフもそれぞれ仕事の牌をもっていて、「これをお願いします」と別の仕事の牌を出してきます。

そうしたらひとつの牌を片づけてカチャッとスペースを空け、優先順位を考えてふさわしい順番のところに入れます。

「仕事の牌の優先順位」といっても、「重要度」ではありません。

ここも「早くやらなければいけないもの順」です。

仕事を内容ではなく時間ではかっているという点では、「テトリス」も「麻雀」も同じイメージです。

新しい牌をどこに入れればいいかを決めるには、それぞれの仕事の優先順位を正確に把握していなければなりません。

「これが急ぎなんです!最優先してください」と、スタッフやクライアントからいきなり牌が入ってくることはよくありますが、その牌をどこに入れるかはあくまでも自分の判断。

自分の牌をトータルで見て、「大至急と言われたけれど、手持ちのこの仕事のほうがもっと急ぎだ」というときは、それを相手にも伝えるケースもあるでしょう。

逆に、大至急の牌をたくさんもっているスタッフに、「これを急ぎで頼む」と言ってはまずいケースもあります。

つまり、自分の牌だけ把握していればいいわけではなく、スタッフ、クライアント、チームのメンバーがもっている牌も、ある程度知っておく必要があるということ。

麻雀だと相手の牌は見せてもらえませんが、仕事であれば、スタッフやチームのものは見せてもらえます。

少なくとも同じチームであれば、誰がどんな牌をもっていて、どのように並べているかをお互いに知っておいたほうがいいでしょう。

5スケジュールが破綻しないために

「虫のいい」スケジュールをつくらない

「私は、ちゃんとスケジュールを立てています。

でも、先輩や上司にいろいろな頼みごとをされて、それをやっているうちに予定が狂っちゃって。

今日ももう、予定より1時間遅れているんです……」これは若手スタッフにありがちな、スケジュールにまつわる悩みごとです。

解決策はごくごくかんたん。

そのスケジュールが、「虫のいいもの」になっていないかどうかを確認すればいいだけです。

何か頼みごとをされる、急に呼び出される、ミスが発覚して、すぐ対応しなければならない……。

時間ボックスに「やるべきこと」のコマをはめ込んでいく場合は、きちきちにはしないこと。

締め切りにプレ締め切りをつくるのと同様に、適切なバッファをもたせることです。

たとえば、「やるべきこと」の所要時間が正味1時間なら、邪魔が入るバッファを足して1時間30分のコマとしておく。

移動時間も、グーグルで調べると「到着まで33分」と教えてくれても、念のためバッファをもたせて45分としておく。

これはスケジューリングとして当然のことであり、バッファをもたずに自分の都合だけでつくったものは、すべて「虫のいいスケジュール」です。

余分な時間をちゃんととっておきましょう。

どのくらい邪魔が入るか、どのくらいバッファが必要かを見極めるのは、段取りの重要な部分、つまり予測力を発揮する部分です。

邪魔や中断は、外側からくるとは限りません。

やる気が出ない、風邪をひく、天気が悪いだけで頭痛がしてペースが乱れることもあります。

自分の内側からくる「トラブルの元」も把握し、やるべきことにどのくらいの時間がかかるかを予測しましょう。

また、可能であれば自分のまわりの人に対しても同じようにするといいのです。

後輩が、彼氏とケンカしてやる気ゼロになるかもしれない。

クライアントが子どもの入学式で休むかもしれない。

できる限り想像し、予測する。

それでもすべて予測するのは不可能だからこそ、大きめの時間ボックスを用意しましょう。

スケジュールは3時間ごとに見直す

・知識をインプットし、想像し、あらゆることを予測して準備ができた・「締め切り」も「プレ締め切り」もバッファをもって設定した・仕事を、所要時間をもとにした「やるべきこと」というコマにした・大きめの「時間ボックス」に、バッファをもって「やるべきこと」のコマをはめ込んでいったこれで段取りの「スケジュールの部分」はできあがりですが、段取りが完結したわけではありません。

「段取りを組んだら、あとはそのとおりに実行していくだけ」という人がいますが、ぼくは、それこそ段取りがうまくいかない原因だと感じます。

段取りというのは、つねに変わるもので、ぼくはスタッフにこう言っています。

「段取りは、3時間ごとくらいに見直すといい。

あるいは仕事が一段落したら段取りを見直すというクセをつける。

少なくとも1日3回、朝昼夕に見直すべきだ」段取りとは予測力ですが、完璧な予測力というのはありません。

予測には甘い部分もあるし、不確定要素はかならず入ってきます。

仮に段取りした時点で「やるべきこと」を完璧に把握していたとしても、その後、さらに「やるべきこと」が入ってきたら、全体を見直して、把握しなおさなければなりません。

また、最初から決められないスケジュールというのもあります。

いちばん若いスタッフが仕事の段取りをするとき、「いつ撮影か?」は決められません。

どのカメラマンさんに頼むか、そのカメラマンさんの予定はどうかで決まります。

このように決められないことを一生懸命決めようとすると、ひずみが生まれます。

「カメラマンさんの候補を出す」など自分にできることを段取りしたうえで、実際にカメラマンさんが決定して予定がわかってから組み直す、それが段取りです。

ぼくの会社では、ほぼ毎朝、社内でプロデューサーとデザイナーがスケジュールの打ち合わせをするのですが、その後3時間おきくらいに進捗状況の共有をしています。

こまめに共有することで、デザイナーは懸念事項を抱えずにすむし、プロデューサーがフォローすることもできます。

LINEやSlackなどのツールを活用し、こまめに共有しあうのです。

段取りを完成させずに「見直し」を続けましょう。

アップデートし続けるということです。

そうしてこそ、期日どおりに質の高い仕事ができる。

ぼくはそう思っています。

「段取り表」をつくる

具体的に、どのようにスケジュール表、つまり段取り表をつくっていけばいいでしょうか?順を追って説明します。

①「やるべきこと」のリストをすべて並べるまずは、「やること」を箇条書きにしていきましょう。

「プレゼン」のような大きなことも、「会議室の予約」のような小さなことも、目的の遂行に必要なことはぜんぶ書き出します。

②締め切りとプレ締め切りを確認するたとえば「新車両のデビュー日」から逆算し、何をいつまでに完成させれば新車両デビューに間に合うか、自分でいくつかの「締め切り」を決めます。

「座席のデザインは○月○日までに決定」「車両の色は○月○日までに決定」という具合です。

当然ですが、クライアントから依頼された「○月○日までにラフ案をください」という締め切りもここに含まれます。

③「やるべきこと」のリストについて所要時間を設定するどのくらいの時間でできあがるか目安をつけます。

このときに大切なのは、重要度や難易度、やりやすいか、やりにくいかは意識しないこと。

すべて時間ではかります。

④「やるべきこと」のリストを「時間ボックス」にはめ込む締め切り、プレ締め切り、所要時間にあわせて、半ば機械的に「やるべきこと」をはめ込んでいきます。

これで段取り表は完成です。

すでに気づいている人も多いかもしれませんが、ひとつひとつの「やるべきこと」について段取りする必要はありません。

たとえば、ぼくたちの仕事だと、プロダクトのデザインでも鉄道のブランディングデザインでもパッケージのデザインでも、かならずと言っていいほど、撮影という「やるべきこと」がついてまわります。

つまり、ここは「ルーティン」なのです。

カメラマンのスケジュールを押さえる→被写体の準備をする→ロケ地の決定→使用許諾を取る→当日の天気予報の確認→移動の車の手配→仕出し弁当の手配……このように、撮影でやるべきことはいつも同じなので、その都度考える必要はありません。

段取り表をつくっておけば、その後はいちいち段取りをしなくてすむし、何より抜けや間違いが減ります。

失敗がなくなり、仕事の精度が上がります。

また、「締め切り」と「プレ締め切り」にもパターンがあるはずです。

たとえば、いつも月末に会議があるクライアントと仕事をしているなら、3週目の終わりまでにラフデザインを提出するというのはパターン化できます。

相手によって締め切りにもパターンがあります。

「A社は、担当者が『この案でOK』と言っても、締め切り直前に『部長に決裁を仰いだらやり直しになってしまって……』といつも連絡してくる」という場合は、「締め切りの10日前に完成させ、3日で担当者に部長の決裁をとってもらい、変更を含めて7日で仕上げる」という段取りにすればいいのです。

これもややこしく思えて、パターン化できる部分です。

仕事の精度を上げていくために、段取り表をつくりましょう。

「スケジュールを制する者は仕事を制す」のです。

とはいえ、段取り表は「スケジュール」というよりも「タスク表」に近いもの。

「やるべきこと」に日付をつけたものであり、「スケジュール」にこだわりすぎてはいけません。

段取り表とは絶対のものではなく、実行しながらつくり変えていくものです。

相鉄でも、「駅舎を変えるには、そこに置いてある自販機まで含めてカラーコーディネートしないと意味がない」といったことを思いついたら、それも途中から組み込みました。

こうした柔軟性と、かっちりしたルーティンの組み合わせで、期日どおりに質の高い仕事を実行していきましょう。

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