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第3章思い通りに人を動かす!段取りの技術

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◆亀とウサギ、あなたはどっち?

世の中には二種類の人間がいます。

□一気呵成にやる

□少しずつやる

一気呵成にやる人は「集中力がある」と思われがちですが、実は、集中してやらないと終わらない状況に追い込まれてしまったからしょうがなくやっていることが多いのです。いわば、イソップ物語のウサギです(わたしもこのタイプです!)。

その点、毎日、少しずつ少しずつやる人は一見、亀かもしれませんが、「塵も積もれば山となる」で着実に進んでいます。

「この日から遊びに行くから、前倒しで多めにやっておこう」「帰ってきてからいつもの倍速で頑張ろうかな」とペースを決められます。

ペースがわかると、仕事の目処がつけられます。これは大切ですね。無理しないで済みます。無茶しないで済みます。無駄を出さないで済みます。

「この仕事、よろしく」と頼まれても、「その仕事はちょっと……三日後の午後いちばんまでかかりますけど、いい?」と回答できます。

仕事の目利きができているからできることなのです。目利きのできない人の返事はいつもワンパターンです。「やってみないとわからない」これでは仕事になりません。いつまでにできるのか?どれくらいかかるのか?これがわからないと、段取りにはなりません。

◆段取り上手の時間見積もり法

あなたはどうやって時間を見積もっています?段取り上手の時間測定術はどうなのでしょう?

□過去の経験から割り出す

私のやり方がそうです。仕事は執筆もあれば講演やセミナーもありますし、本業はコンサルタントなので、まさに仕事は千差万別。

クライアントの数だけ仕事がちがいます。それでも、この種の仕事はこのカテゴリーに入るから、「(時間も費用も)このくらいかかるなあ」とわかります。

□引き算で考える

「とにかく来月末までに終わらせよう」と有無を言わさず頑張る人もいますよね。「お客様は神様」ですから、その意向に最大限に沿います。私の場合でいうと、緊急出版のプロデュース等がそうですね。

さすがに講演やセミナーはかなり前からアポが入りますが(アポに縛られたくないので直前のほうがほんとうはありがたいのです)、「今月中に出版する」という仕事を義理で断れずに何回か引き受けたことがあります。

大切なことは、なにをカットできるか、どんな工程を省略できるかを考えなければなりません。

「これとこれを省けば(後回し、先送りできれば)、この日までにゴールできる」と引き算で考えることです。

なにも足せません。引くことだけを考えます。アウトソーシングという分身の術もあり、です。そうすれば、さらに時間は短縮できると思います。

□足し算で考える

複数の会社が絡んだプロジェクトではあなたの都合だけを優先するわけにはいかないでしょう。あちら側そちら側の都合も受け容れると大きく膨らんでしまうかもしれません。

しかし、これはこれでしかたありません。一人で、一社で、できる仕事はたかが知れています。ダイナミックな仕事は多かれ少なかれジョイントベンチャー方式です。

「この仕事にはこれとこれとこれの作業がある。全部足すと○○日は欲しい」という計算も出てきます。

こういう複数のプロジェクトで大切なことは、バッファー時間を用意しておくことです。すなわち、「余裕時間」とか「遊びの時間」です。万が一(というよりもたいてい頻発します)、トラブルやアクシデントが発生したとき、いっぱいいっぱいのスケジュール、タイムテーブルでは、段取りを調整しようにもほとんど不可能でしょう。

「なんとかしよう。二日分、段取っておいたから」「助かる!恩に着る!」地獄で仏。トラブルにはバッファーが救世主です。

◆段取りをいさぎよく捨てる勇気

段取りで重要なことは、当初、計画した段取りに固執しないことです。とはいっても、固執するのが人間ですよね。

あんなに練りに練ったんだから、なんとか活かしたい、と考えるのは人情でもわかります。だからむずかしいのです。

せっかくつくったんだもの、なんとか、この段取りで進めたい、と後生大事にこだわってしまうのです。

しかし、固執してはいけません。大切なことは段取りではありません。仕事を成功させることです。

古い段取りはどんどんアップデートして、「いまいちばんのベスト(ダブった物言いですが)」に書き換えてしまうのです。

段取りはあくまでも設計図です。

実際に仕事をはじめたら、これはダメだな、このままではムリだなあ、変更しなくちゃ……となることはよくあります。

大工さんの世界でも、建築家がコンピュータで作成した設計図でも、実際には、ないところに柱があったり、あるべきところに柱がなかったり、というとんでもない計算ちがいがよく起こります。

コンピュータはよく間違えるのです。そういうとき、一流の大工さんは慌てません。だてにキャリアを積んでいません。

では、どうするかというと、さっさと柱をつくってしまうのです。さっさと柱が邪魔にならないように現場でつくりかえてしまうのです。

設計図はどうするの?はい、なにもなかったかのように、次の工程からいつものように進めてしまうのです。これが現場の力だと思います。

「締切に間に合いそうにない」と判明したら、その場ですぐに新しい段取りを描くことです。

「もう少しやってみないとわからない。様子を見よう「最後までやってみないとわからない」といたずらに決断を遅らせてはいけません。

「このままではダメだ!」と判明したら、さっさと頭を切り換えます。そして、新しい段取りを考えてさっさと実行します。また不十分な点が出てきたら、またまたつくり直せばいいのです。

臨機応変&融通無碍=いい仕事です。柔軟な姿勢で修正してしまうことが大切です。不磨の大典の如く、「絶対に変えない!」とこだわってはいけません。

期待を超える「いい仕事」を達成してしまえばいいではありませんか。段取りはいい仕事をするためのデザインです。

どんどんいい段取りへと進化させればいいのです。

◆段取り上手のシナリオライティング

鳥の目、トンボの目、カメレオンの目に関して、私はいつも次の三つの視点(最善、標準、最悪)で段取りを組み直してもいいと思います。

□できれば、こうなってもらいたい(=shouldbeforecast)

「うまくいけばこうなる」という希望的段取りのことです。もちろん、このまま進めばいいですが、現実はそうそう甘くはありません。「捕らぬ狸の皮算用」はたいていうまくいかないものです。

□きっとこうなる(=wouldbeforecast)

希望的段取りでも悲観的段取りでもなく、現実的段取りと言っていいでしょう。このままいけばこうなる、という確率の高い段取りです。

□ひょっとするとこうなるかも(=couldbeforecast)

「もしかすると」「ひょっとすると」……という最悪を想定した段取りです。万が一に備えて頭の中に描いておくことはリスクマネジメントの点からも必要だ、と思います。

仕事ができる人はいつもこの三つの視点で段取りを常に修正しています。もし気づかないとすれば、よっぽどみごとに段取りをしているからだ、と思います。

こう見てきますと、段取りとは決まりきった「線路」ではなくて、かなり大ざっぱな「航路」なのかもしれませんね。

なにもなければそのまま進めばいいのですが、いざとなれば、大きく舵を切る。そうやってゴールまで導くものなのでしょう。

インドを目指してアメリカ大陸を発見してしまうことがあるかもしれませんが、それはそれで結果オーライでしょう。

◆この段取り力がダメ従業員を目覚めさせた!

何度も言ってきましたが、いい仕事をするには段取りがよくなければできませんね。段取りで大切なことはゴールから目を外さないことです。

ゴールを見失ったら段取りは終わりです。ところが、これがなかなかうまくいかないようです。ゴールは見えても、ゴールにいたる権限を与えられていなければ、最後のつめで失敗してしまいます。

完璧な段取りが水泡に帰す瞬間です。

たとえば、得意先にクロージングに出かけた営業マンの例で説明しましょう。

営業マン「ぜひ、わが社との契約をお願いします」得意先「どこまで値引きできるの?」営業マン「できるだけご要望に沿うようにしたいと思います」得意先「ということは?」営業マン「本社に戻って、至急、検討します」得意先「……」これでは子どもの使いです。

かつて外国で揶揄された「テレックスセールス」ですね。

その場その場で回答できず、すべてペンディングにしてしまって、本社にお伺いをいちいち立てなければ交渉できない、というあれです。

こんなことでは取引先の信用はゼロでしょう。

「この人では話にならない」「決裁権のある人に換わってくれ」と言われるだけです。

では、次のケースはどうでしょう。

営業マン「ぜひ、わが社との契約をお願いします」得意先「どこまで値引きできるの?」営業マン「見積り価格から五パーセント値引きしましょう」得意先「もうちょっとなんとかならない?」営業マン「この数字は会社の総意です。

すでにトップとも話し合っての数字です」得意先「わかりました」相手は一円でも安くしたいと考えます。それが仕事です。

だから、前もってどこまで呑めるか、会社としての方向性をすり合わせておく段取りが必須だと思います。

勢いのある会社は、営業マンにはある程度の裁量を持たせています。

「百万円までの値引きは君の判断に任せる。責任はオレが持つ」と上司も言ってくれるでしょう。

また、営業マンが約束したことは、たとえ損であろうと必ず顔を立てます。でなければ、チーム全体のモチベーションが下がってしまうからです。ただの使い走りにしてしまっては悲しいではありませんか。

◆コミュニケーション不足が段取りをダメにする

段取りでミスをするときは聞き間違いや情報不足という要因も少なくありません。

あとでわかれば、なんとつまらないミスをしたものかと地団駄踏んで悔しがりますが、失敗というのはたいていケアレスミスで足を引っ張られるものです。

こんなミスを防ぐには疑問点をそのままにしないできちんと質問してください。

でないと、些細な思い込みが命取りになってしまいます。

上司「○○社について調査を頼む」部下「わかりました」よくあるシーンですが、このまま仕事を進められたら、「こいつ、いったいなにを調べるつもりなの?」と上司は不安になると思います。このときのポイントは曖昧なものを鮮明にすることです。

すなわち、「なにを」「いつまでに」「どのくらい」「なぜ」……を明確にしましょう。

部下「なにを調べるのですか?」上司「いま、開発中の商品についてだ」部下「いつまでにですか?」上司「なるべく早く」これもダメです。

部下「いつまでですか?」上司「週末までに頼む」部下「週末というと○月○日ですね。何時に提出すればいいですか?」上司「(しつこいなぁ)じゃ午後一時ということでよろしく」

部下「どのくらいリサーチすればいいですか?」上司「概要がわかればいいよ」部下「レポート三枚で報告します。最後に、なぜ○○社をリサーチするのですか?よろしければ、理由を教えてくださいませんか?」上司「実はね……」しつこいと思われても、真意とか狙いが読めなければ、正しいレポートはまとめられないと思います。

期待にきちんと応えたければ、きちんと質問するという段取りを忘れてはなりませんね。でなければ、結局、あなたがバカを見てしまいます。

レポートがダメだったのは、真意や狙いをきちんと伝えなかった上司の責任です。ところが、指示する側はそんなことにはまったく気づきません。

「どのくらい調べれば?」と聞けば、「できるだけ詳しく」と応えるのが人情ですが、このとき、「レポート何枚で?」は突っ込んで聞くと、どのくらいの深さを期待しているかがわかります。

口頭で済むボリュームに三十枚ものレポートを提出する必要はありません。ボリュームがわかれば無駄な時間を使わなくて済みます。

◆デッドラインがあるから集中力が湧いてくる!

どんな仕事にも締切があります。締切のない仕事はありえません。なぜなら、締切がなければ請求書が出せません。請求書が出せなければ代金が入りません。代金が入らなければ経費ばかりかかって会社は倒産してしまいます。

だから、仕事には必ず締切=ゴールがあるのです。

「週末まで」といわれたら、「金曜日」なのか「土曜日」なのか、それとも「日曜日」なのか判然としません。金曜日だとわかったとこで、朝九時なのか、午後五時なのか、これまた曖昧です。

某社とはじめて仕事をしたとき、振込日を確認すると六月末日とわかりました。末日は日曜日ですから、こちらは翌営業日である月曜日だと思っていたら、二日前の営業日の金曜日に振り込まれていました。

こういうすれ違いがあるのです。前倒しだったからいいものを、もし、手形決済で一日遅れの振込だったら取り返しがつきません。思い込まずに、きちんとチェックすることが大切です。

レポート提出を指示されているとしたら、上司は会議に臨むために朝いちばんにチェックしたいのかもしれません。

ならば午後五時はもちろん午後一時でも間に合いません。こうなると上司の段取りは狂ってしまいますよね。締切を設ける狙いは相手にプレッシャーを与えるためではありません。

いい意味での緊張感というか真剣勝負を仕掛けるためです。締切を提示されたとたん、ゴールに向けて最高の仕事ができるように段取りを考えるようになります。

「○月○日○時まで!」と具体的に提示されるから一挙に「仕事モード」に入るのです。

締切がなければ、一見、楽に思えるかもしれませんが、はっきり言って、「いい仕事」にはなりません。というのも、いつスタートすればいいか、いつゴールすればいいかも曖昧だからです。

結局、段取りが甘くなって延期したり、いつの間にか忘れてしまったりしてしまうのです。

締切という制約は邪魔になるものではなく、「よし、やるぞ!」という集中力とモチベーションの原動力になるものなのです。

なかには、締切が過ぎてからじゃないと本気になれないな、と豪語する作家もいますが、これも一面、真理を射抜いているかもしれません。

人間、土壇場にならないと本気モードにスイッチオンしないタイプもいるからです。締切は土壇場まではいきませんが、かぎりなくそれに近いものだと思います。「これを過ぎると終わりですよ」という文字通りのデッドラインです。

◆いつも冒頭からはじめる習慣から抜けだそう!

ここ数年、ヤマハが団塊世代をターゲットに「中高年のためのピアノ教室」「エレキギター教室」「サックス教室」を仕掛け、これが大ヒットしています。

家庭教師のトライもこの分野に参入してきましたし、ユーキャンもそうですね。

団塊世代がごっそり定年を迎え、第二の自己実現、むかしやろうとしてもできなかったこと、中途半端で終わったことを懸命にやり直そうとしているものと思われます。

わたしも高校時代、ベースを弾いてバンド活動をしていた経験があります。いつか、昔のメンバーと再結成したいと考えてもいます。

ヤマハのお客さんはプレイヤー経験のある人ばかりではありません。知人がまさに六十の手習いでピアノを教わっていますが、まったくの初心者が少なくありません。

「いまさら、バイエル?」と驚いてしまいますが、それがある特殊なトレーニング法であっという間にショパンの「別れの曲」や「愛情物語」が弾けるようになってしまう、というのです。

知人もそうでした。ポイントは、その曲だけを何度も何度も繰り返し練習することにあります。基礎がありませんから応用はまったく利きません。ほかの曲は弾けません。

しかし、「これは!」という曲だけはモノにできる、というわけです。実はこの話を聞いた時、わたしは二十年前を思い出しました。

当時、出版社に勤務していたのですが、「ロケット博士」として名高い糸川英夫さんをたまたま担当したおかげでベストセラーを連発していたのです。

この糸川さんがまさにこの集中練習法を実践していらっしゃいました。

東大退官後、チェロを始めるのです。一曲をマスターする時、まず全体をブロックごとに細切れにします。

一日一小節ずつ分解して、一日中その部分だけを徹底して練習するのです。すると二十小節の楽譜なら二十日間でモノにできます。段取り上、そうなりますね。

このとき、大切なことは楽譜の順序にこだわらないことです。いちばん簡単な小節から練習します。難しい小節は時間がかかりますから最後の最後でいいのです。

音を出すだけでもかなり時間がかかりそうですが、この奇妙な練習法のおかげで初心者にもかかわらず、難曲を短期間にマスターしてしまったのです。

集中力は永遠には続きません。

しかし「この時間だけは集中する!」と最初から決めておけばそこにすべての力を注ぐことができます。

これを「レミニセンス効果」と呼びます。

タイム・シェアリング(時間分割)やワーク・シェアリング(仕事分割)もこの効果を狙って開発された仕事法です。

仕事を一人に集中させるのではなく分散させれば残業はなくなりますよね。

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