3「全体設計」が最短のルートを示す
01設計図で「現在位置」をつかむ02全体設計は1枚の紙にまとめる03「」04フレームワークが作業のモレを防ぐ05段取りとは「流れ」である06「」07仕事を「定量」と「定性」に分ける08作業の見積もり時間は「2倍」にする
バリューの高いアウトプットを出すために、仮説に沿って全体の段取りを組み立てていくことを「全体設計」といいます。
ゴールに向けて何をしなければいけないかという道のりを最初の段階であきらかにしておくことで、段取りよく仕事を進めることができます。
全体設計を描けない人は、行き当たりばったりで仕事をはじめてしまいます。
そして、自分が全体のプロセスの中でどこにいるかを把握しないまま作業を続けます。
最終ゴールと自分の現在位置との距離が測りきれていないので、「期限が迫っているのに終わっていない」という状況に陥ることが少なくありません。
インド発祥の寓話にこんなものがあります。
数人の目の不自由な人たちが旅をしていたとき、道に何か大きなものがあり、それを取り除かなければ旅を続けられない状況になりました。
そこで、目の前の大きなものの一部を触ったところ、その感想はそれぞれ異なりました。
足を触った人は「立派な木だ」。
耳を触った人は「扇だ」。
腹を触った人は「壁だ」。
尾を触った人は「綱だ」。
牙を触った人は「パイプだ」。
鼻を触った人は「ヘビだ」。
ところが、その正体は象でした。
もし、それぞれの感想に従って、それを取り除こうとしたら、間違った解決方法にたどり着くでしょう。
ヘビと思った人は、ヘビ使いを連れてくるという方法を考えつくかもしれません。
しかし、象だったら、ヘビ使いを連れてくるという方法はムダになり、象使いを連れてくるというのが、最適な解決方法でしょう。
これを聞いた王は、「全員正しい。
それでも話が食い違っているのは、あなたたちが象の異なる部分を触っているからです。
象は、あなたたちの言う特徴を、すべて備えています」と答えたといいます。
つまり、自分の目の前にあることは、大きな全体の一部であることが多いのです。
この逸話が示すように、最初に「象」という全体像を把握しないと、目の前のことを正しく把握できない可能性があるということです。
同様に、何かを成し遂げようとしたら、最初に全体像を把握して、設計図をつくらないと、目の前のやるべきことだと思っている作業が本当は必要ではない可能性もあるということです。
建物をつくる建築家は、最初に設計図をつくります。
設計図がなければ、どんなものができあがるかイメージできません。
また、どの作業からはじめればいいかわかりません。
計画通りに建物をつくることができるのは、設計図があるからなのです。
それと同じで、ミニマム思考のできる人は、最終成果物から逆算して自分がやるべきことを明確にします。
仕事をはじめる段階で、最終成果物を明確にし、そこに至るプロセス(工程)を明確に描いているため、期限ギリギリになってあわてることはありません。
もし期限に間に合わない状況になっても、事前にそれをキャッチできるため、期限を再調整するなどの対策を早い段階でとることも可能です。
目の前の仕事を懸命にこなすのは間違ったことではありません。
しかし、段取り全体の流れを意識しないでなんとなく仕事をしていると、作業のスピードは遅くなっていきます。
自分が取り組もうとしている仕事が全体の大きなプロセスの一部であることを知れば、目の前の仕事の意味合いや重要度、どのくらいの時間をかけるべきなのかがわかります。
その結果として仕事のスピードは向上していくのです。
段取り上手になるためには、全体を俯瞰する設計図を描くことが重要です。
これは、どんな目的をもって仕事をするかという「仮説」、どんなアウトプットを出すかという「最終成果物」、そして、それらを実現するために必要なすべての作業を網羅したものです。
そうした大きな青写真を描くことによって、自分の現在位置を常に把握し、仕事の段取りをうまく組むことができるのです。
ガントチャートで作業を視覚化する全体設計を描く手法はさまざまありますが、代表的なツールが「ガントチャート」です。
ガントチャートとは、一般にスケジュールや作業の進捗を管理する表のことで、作業の開始日から完了日までの期間をバー(棒)で示し、視覚的に表したものです。
作業の予定だけでなく、実際の進捗状況などを記入することで作業の進み具合をガントチャートで管理することも可能になります。
たとえば、ある仕事が大きく「情報収集」「情報分析」「最終成果物の作成」といった作業に分けられるとしたら、いつからいつまでに実践するというスケジュールをそれぞれガントチャート上に落とし込みます。
こうして視覚化することによって、やるべき作業と期限が明確になると同時に、自分が今どの段階にいるかという現状を把握することができます。
ここで重要なのは、どのツールを使うかではありません。
ガントチャートではなくても、エクセルでつくったスケジュール表でもかまいませんし、やるべきことをメモ書きで列挙したToDoListのようなものでも問題ありません。
実際、仕事ができる優秀な人たちも、それぞれ自分に合った方法で、仕事の全体像を把握しています。
設計図を描くうえで重要なのは、次の4つです。
①やるべき作業がモレなく網羅されていること②作業の期限が決められていること③これらがひと目でわかるように視覚化されていること④最終成果物が明示されていること
これらの条件がそろうことによって初めて、仕事の全体像をつかみ、最終成果物から逆算することができるのです。
毎日のやるべきことを書き出したToDoListをつくっている人は多くいるかもしれません。
しかし、それだと仕事の全体をつかめないので、どうしても作業のモレや遅れが発生してしまいます。
忘れてしまっていたということにもなりかねません。
日々の段取りを組むときのコツは、今日1日だけで見るのではなく、今日という日を全体スケジュールの中の1日としてとらえること。
せっかくToDoListをつくっても、目の前の作業に追われていると、スケジュールの全体像が見えなくなってしまいます。
すると、期限ギリギリになって、「大変だ!間に合わない」とあわてる結果となるのです。
全体設計図は一覧できるように、1枚の紙にまとめるのが基本です。
1枚の紙にすべての作業項目、最終成果物を、一覧できるようにまとめるのです(作業項目の洗い出し方については後述します)。
全体設計を考えながら段取りを組むと、マルチタスクにも対応できます。
多くの仕事がひとつの仕事に集中するシングルタスクではなく、マルチタスクです。
複数の仕事を同時並行的に行うのが普通といえます。
そこで、ひとつの仕事の全体設計図だけでなく、他の仕事も設計図に落とし込んでおけば、複数のプロジェクトを同時並行的に把握できるので、全体を見ながら計画的に作業を進めることができます(次ページ図参照)。
毎朝、この設計図で仕事の全体像を確認しながら、今日やるべき仕事をピックアップし、最も時間のかかる作業を見極めることです。
その作業を中心に緊急度の高いものから取りかかります。
締め切りが迫っているものが最優先です。
1日単位でToDoListをつくるのは大事なことですが、重要なのは、全体設計図をベースにして、仕事全体のスケジュールを意識しながら、ToDoListをつくることです。
行き当たりばったりで、なんとなくToDoListをつくらないことです。
そして、今日やることが明確になったら、その仕事に集中すること。
質×スピードを上げるには、取りかかった目の前の仕事にフォーカスすることです。
あれもやらないとこれもやらないと、という焦りから他の仕事に頭を奪われると集中力を欠き、質もスピードもダウンします。
ミニマム思考のできる人は、ToDoListをつくったら、そのことは忘れて目の前の仕事に集中します。
全体設計図は一覧性を優先する手帳にやるべき仕事や段取りを書き込んでいる人がいますが、私はこの方法はおすすめしません。
先に述べたように、仕事の段取りは全体設計図、つまり、全体をつかむことが重要になります。
複数枚にわたったり、他のページに書いてあったりすると、全体設計を視覚的にとらえにくくなります。
ひと目でスタートからゴールまでにすべきことがわかるのが理想なのです。
その点、手帳はその大きさから、一覧性が低くなりがちなのが難点。
大きいサイズの手帳なら対応できるかもしれませんが、手のひらサイズの手帳ではむずかしいでしょう。
私の場合、手帳にはアポイントメントや会議などの予定を書き込むスケジュール管理と、その週のやることをリストアップすることがメイン。
全体設計図は、手帳とは別につくるのがよいでしょう。
全体設計の段階では、最終的なバリューを意識するのはもちろんのこと、各プロセスで生み出す成果物も意識することが必要です。
たとえば、営業担当者が「売上を上げる」という最終的なバリューを出すためには、いくつかのプロセスが必要です。
いきなり売上が上がるわけではなく、顧客とのアポイントを取る、顧客と会うなどのプロセスを経て、成約に至ります。
「売上を上げる」ためには、それぞれのプロセスで出すべき成果もあるはずです。
つまり、最終的なバリューを生み出すためには、それぞれのプロセスで生み出すべきバリューがあるということです。
私は、これを「サブ・バリュー」と呼んでいます。
サブ・バリューの積み上げで最終的なバリューが生み出されます。
たとえば、顧客とのアポイントを取るフェーズでのサブ・バリューが「10社とアポイントを取る」ことだとすると、この条件がクリアされなければ、売上を上げるというバリューを出すことができません。
この場合、「10社とアポイントを取る」ことを「チェックポイント」として意識しながら仕事を進める必要があります。
もうひとつ例で説明しましょう。
ある課題を解決するために仮説を立てたら、本当にその仮説が正しいのかを確認するために全体設計を考えます。
通常は、「仮説立案」→「情報収集」→「分析」→「意味抽出」→「仮説立証」といったプロセスを踏んで仮説を検証していきます。
このとき、それぞれのプロセスについても何らかのアウトプットが生まれます。
「情報収集」であれば、仮説を検証するために集めた情報そのものがアウトプットといえます。
しかし、このアウトプットが十分でないことがあります。
必要となる情報の一部が漏れていたり、まったく見当違いの情報を集めてしまったり、誰でも知っているような情報しか集まらなかったり……という場合、その情報をもとに分析し、そこから意味を抽出しても、仮説を十分に検討することはできません。
ひどいケースでは、間違った情報をもとに、仮説の是非を判断してしまうかもしれません。
最終的なバリューを生み出すために全体設計の各プロセスのアウトプットには、一定の基準を設定することが必要となります。
一定の基準とは、各プロセスでの作業を実行した結果、生み出すべき成果、つまりサブバリューのこと。
この基準をクリアする必要があります。
この基準は、最終的なバリューを生み出すために必要な「チェックポイント」だといえます。
「情報収集」のプロセスであれば、「仮説を証明するような情報である」「誰も知らないレアな情報である」「情報にヌケやモレがない」「常識や前提条件を覆す情報である」「インターネットや新聞の情報ではなく、現場や目利きから仕入れた生の情報である」といったことがチェックポイントとなるでしょう。
各プロセスの「サブ・バリュー」をチェックするたとえば、「お酒のおつまみの売上をアップするために30代の女性をターゲットとする」という仮説を立てたとき、「女性の飲酒率がアップしている」「家飲みをする人が増えている」といった情報も必要ですが、「30代女性はお酒を飲むとき、チーズを食べる比率が高い」といったピンポイントな情報があったほうが、仮説に対するワクワク度は上がります。
なぜなら、チーズがおつまみとして売れるのではないかという具体的なアイデアを出せることに結びつくからです。
また、「ライバル会社は30代女性をターゲットとしたおつまみを発売していない」といった競合の情報も必要でしょう。
ミニマム思考ができていない人は、チェックポイントを意識することなく、仕事を進めてしまうので、上司から「この情報が抜けている」「そんなことは誰でも知っていることだ」と言われてしまうことになります。
全体設計図を描くときには、各プロセスで出すべきチェックポイントを意識することが大切になります。
つまり、各プロセスでの作業の結果、どんなサブ・バリューが生み出されていればいいのかという「流れ」を考えるのです。
そのサブ・バリューをチェックポイントとして使うのです。
やるべきことを書き出した全体設計図は、段取りよく仕事を進めるためのToDoListともいえます。
ToDoListを作成するときに大事なのは、作業のモレやダブりを防ぐこと。
本来やるべきことが抜けていると、その作業から生み出されるバリューの質が低くなる可能性があります。
この全体設計図やToDoListをつくるときにも、フレームワークは効果を発揮します。
たとえば、「3C」。
「3C」とは、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの頭文字をとったもので、「自社がどのような経営環境に置かれているか、現状を分析することで、経営課題の発見や戦略の発案などに活用する」といった目的で使われます。
たとえば、上司から「スマートフォン業界の市場について調査してほしい」という指示を受けたとき、どんな情報を集めればよいでしょうか。
スマートフォン市場に関する情報は山ほどあるでしょうが、やみくもに情報を集めようとすると、どこから手をつけていいかわかりませんし、本来必要な情報が抜けてしまったり、余計な情報を集めてしまったりしがちです。
しかし、ここで「3C」のフレームワークを使うことによって、必要な情報を整理でき、情報のモレやダブりを防ぐことができます。
顧客(Customer)であれば、スマホ業界の全体の売上成長率や販売台数の10年分のトレンドなどの情報が当てはまります。
競合(Competitor)であれば、ライバルである各スマホメーカーの売上データを調べることになるでしょう。
自社(Company)の部分は、自社の成長率や売上シェアなどが該当します。
これらに沿ってデータをそろえて分析すれば、必要最低限な要素をモレなく検討し、効率的にアウトプットを出すことができるでしょう。
フレームワークは、「あの作業をすることを忘れていた!」などのうっかりを防ぐ効果をもっているのです。
ミニマム思考のできる人は、フレームワークを効果的に使いこなします。
フレームワークという思考の型をもつことで、思考の質とスピードが格段にアップするのです。
フレームワークを使えれば「それなりのアウトプット」ができる全体設計図をつくるときにフレームワークを活用すると、作業のスピードアップにもつながります。
これは、段取り力を上げるときのポイントとなります。
フレームワークを使用することは、思考を整理することです。
つまり、「型」を使って考えるということ。
優秀なコンサルタントは、「このケースでは、AとBとCとDの作業をすればいい」と長年の経験と勘から当たりをつけることができます。
なぜなら、フレームワークを使いこなす訓練を徹底して受けて、日々の作業で使い倒しているからです。
それが暗黙知となっているから、当たりをつけることができるのです。
しかし、フレームワークを知らないビジネスパーソンは、直感的にすべき作業がわかりません。
それこそやみくもに作業をして時間ばかりかかってしまいます。
しかし、フレームワークを使うことを前提に考えれば、やるべき作業が見えてきます。
フレームワークという枠があるので、どの範囲で何をする必要があるかを見極めることができるのです。
たとえば、「3C」のフレームワークを使えば、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つに絞って情報収集したり、分析したりすれば事足ります。
また、情報収集をするときには、新聞記事や白書などの資料、業界データ、業界に詳しい人へのヒアリングなどを行うことになりますが、フレームワークを用いれば、必要とする情報が明確になり、それらに絞って収集できます。
それ以外のことは、やる必要がないことも明確になります。
すると、効率的に作業を進めることができるので、スピードもアップしますし、同時に作業や思考のモレを防ぐことにもなるので、ある程度、仕事の質も担保することができます。
はっきり言いましょう。
フレームワークに従って設計図を描けば、「それなりのアウトプット」を得られるのです。
ミニマム思考の人は、フレームワークを使って、仕事の質とスピードを担保することを知っています。
全体の流れをつかむフレームワークに「ビジネスシステム」というものがあります。
これは、ミニマム思考ができる人がよく使うフレームワークのひとつで、事業を行ううえで必要な要素を機能別に分けて、連続した流れにまとめたものです。
たとえば、一般的なメーカーにおけるビジネスシステムは、「商品開発」→「製造」→「マーケティング」→「物流」→「営業」→「店頭管理」という流れを踏んでビジネスは成立しています。
問題解決のステップでは、全体の流れの中で重要なポイントを把握したいときなどに、こうしてステップごとに切り分けて、「どこでつまずいているか」問題点を発見し、解決していきます。
ビジネス全体をぼんやりと見るよりも、ステップごとに細かく分析したほうがやるべきステップが明確になって、問題点や解決策が見つかりやすいのです。
スポーツでも同じです。
テニスがうまくなりたいとがむしゃらにボールを打つ練習だけを繰り返してもうまくはなりません。
テニスも各要素が組み合わさって全体の流れをつくっているからです。
「サーブ」→「走る」→「フォアハンド」→「バックハンド」→「ボレー」→「ドロップショット」といったように、順番は別にしても、さまざまなプレーの要素の組み合わせでできています。
いくらバックハンドやボレーがうまくても、サーブがダメなら、なかなか成果は出ないでしょうし、いくらサーブが完璧でも、走り抜く体力がなければ、勝負で勝つことはできません。
テニスが上達する人は、それぞれの要素を分割して、苦手なポイントを克服したり、得意な部分をさらに伸ばしたりと、重点的に練習を繰り返しているのです。
一連の流れをステップごとに分解し、それぞれのステップでやることを明確にすることは、何事においても、質の高い仕事をする秘訣なのです。
もうひとつ押さえておきたいのは、ビジネスシステムはミニマム思考で段取りをするうえで必要不可欠な考え方だということです。
①ゴールイメージと生み出すバリューを明確にする②それらに向けた「流れ」をつくる③「流れ」に沿って、やることをリストアップする「流れ」こそが、ここで言う「ビジネスシステム」です。
このステップを踏むことによって、最小の力で最大の結果を得ることができます。
段取りをした結果、どんな価値を生み出し、どんなことを達成したいのかを明確にすることで、作業を進めると同時に価値を生み出すことができます。
これが、段取りの極意です。
ビジネスのプロセスを細分化するビジネスシステムのフレームワークは、段取りの全体設計図をつくる際にも役立ちます。
たとえば、お客様を獲得・維持しようというときの段取りは、次のようなステップに細分化できます。
「顧客ニーズの把握」→「アプローチ」→「商談」→「クロージング」→「フォローアップ」そして、それぞれのステップごとにやるべきことをピックアップしていきます。
「顧客ニーズの把握」であれば、お客様の動向やニーズに関する調査など、いくつかやるべきことが見えてくるはずです。
このように作業のプロセスを一つひとつあきらかにすることによって、作業のモレを防ぐことができます。
さらには、ステップごとの行動を細かく分析することは、自分が工夫すべき点が見えるというメリットもあります。
たとえば、「顧客ニーズの把握」の段階で、お客様に関する情報収集を意識しておけば、「先輩の営業マンに同じ業界の顧客を抱える人がいるから、アドバイスを求めてみよう」という発想につながるかもしれません。
また、「商談」の段階では、「他社の事例を紹介した動画を使ってサービスを説明しよう」ということに気づくかもしれません。
これらはすべて仕事の質のアップにつながるでしょう。
「営業活動」という大きな括りで仕事をとらえていると、どうしてもやるべきことを抜かしてしまったり、一つひとつのステップが流れ作業的になってしまいます。
ビジネスシステムは、仕事全体の流れをあらわしたものなので、まさに段取りそのものです。
ビジネスの流れを細分化するだけでも、段取り力は大きくアップするはずです。
初めての仕事ではランダムにすべきことを書き出す全体設計図をつくる方法には、やるべきことをランダムに書き出したあとに、関連のある作業ごとにグルーピングするというものもあります。
初めて取り組む仕事などで、何をすればよいか漠然としかイメージできず、ビジネスシステムのフレームワークも活用できそうもないときには、効果的な方法です。
たとえば、「初めてある商品のキャンペーンを任される」ことになって、どんな仕事をすればよいかわからないときには、思いつくままに作業をリストアップしていきます。
そして、ある程度、出揃ったところで、「キャンペーン内容」「情報収集」「会場関連」「スタッフ関連」といった具合に関連する作業ごとにグルーピングしていきます。
このとき、作業を時系列でグルーピングできれば、さらに全体の仕事の流れがはっきりしてくるでしょう。
特に初めて取り組むような仕事は、全体設計にモレやダブりがあるのは当然です。
だからこそ、設計図の第一弾をできるだけ早く作成し、上司などに確認することが大切です。
経験もあって、広い視野から仕事を見ている上司であれば、作業のモレや不必要な作業を指摘してくれるはずです。
だから、何からはじめていいかわからないときほど、ランダムに作業を書き出していくことに意味が出てきます。
「論理的思考」と聞くと、「ロジックツリー」をイメージする人が多いかもしれません。
これもフレームワークのひとつで、モレなくダブりなく課題を体系的に分解・整理して、真のポイントや解決策を発見するために使われます。
「どんな家を購入すべきか」というテーマを考えるとき、「庭が広い家がいい」「郊外よりも都心がいい」などと、ランダムに思考を広げていくかもしれません。
しかし、家の購入時に検討すべきことは、庭やロケーションだけではありません。
部屋の間取りや街の環境、職場へのアクセス、予算、設備など多岐にわたります。
家は人生を左右するような大きな投資です。
思いつきで検討するにはリスクが大きすぎます。
ランダムに思考をしていくと、肝心なチェックポイントを見逃してしまったり、余計なことに時間をかけて考えてしまったりして、あとで後悔することにもなりかねません。
人生における大事な決断だけではなく、仕事の問題も本当に必要な検討やチェック項目が抜けてしまうと、さらに傷口を広げることになりかねません。
大事な決断をするときは、モレなくダブりなく確認することが大切なのです。
ロジックツリーは、次ページ図のようにツリー状にモレなくダブりなく展開していくのがルールで、問題解決をするときには、ロジックツリーを作成できることは大きな武器となります。
しかし、このツリーを見ただけで拒否反応を示してしまう人が多いのも事実。
ペンをもったままフリーズしてしまう人も少なくありません。
本書は仕事の段取りがテーマですから、ロジックツリーの作成方法についてくわしく解説することはしません。
ただし、モレなくダブりなくチェックポイントを書き出すという行為は、仕事の段取りを組み立てるうえでも大切です。
全体設計図を描くときは、モレなくダブりなくやるべきことをピックアップし、ゴールまでの作業の流れをつかまなければなりません。
このとき、ロジックツリーの基本であるモレなくダブりなくという考え方は活きてきます。
ロジックツリーの形にする必要はありませんが、モレなくダブりなく、項目を書き出すことは段取りにおいても重要なのです。
ただし気をつけたいのは、「完全」にモレなくダブりなくしようとしないこと。
目的は作業のモレやダブりを確かめることです。
「モレなくダブりなく」の感覚で段取りを組むことを意識してください。
もっといえば、ここまで紹介した3Cやビジネスシステムといったフレームワークも、検討する項目のモレやダブりを防ぐためのチェックリストです。
これらを活用することによって仕事のスピードと質は上がっていきます。
仕事には、大きく分けて「定量的な仕事」と「定性的な仕事」の2種類があります。
定量的な仕事とは、ルーティンな単純作業。
資料のコピーや入力作業、事務作業などが該当します。
一方、定性的な仕事とは、抽象度が高く、クリエイティブな能力を必要とする仕事のこと。
つまり「考える」ことが仕事です。
たとえば、問題解決や企画、営業などの仕事が該当します。
定量的な仕事は、やるべきことが決まっています。
何度も繰り返している作業なので最終成果物も決まっています。
求められる仕事の「質」も一定です。
このような仕事は、「質」を上げる余地があまりないので、「スピード」にフォーカスすることが重要です。
一方、定性的な仕事は、作業のプロセスや成果物に正解があるわけではありません。
「スピード」はもちろんのこと、考えることの「質」は、段取りの良し悪しによって個人差が生まれます。
定性的な仕事ほどミニマム思考による段取りが有効になります。
全体設計図を描くときには、まずは自分がこれから取り組もうとする仕事が定量的なのか、定性的なのかを判断し、そしてどの仕事に一番時間がかかるのかを見極めてから取りかかることが大切です。
つまり、仕事の種類を明確にしてから、時間配分を決めるのです。
まず、絶対的に時間のかかる定量的な仕事の時間を確保する。
そして、次に時間がかかりそうな仕事の時間を見積もり、その時間を確保します。
それぞれの仕事を分解して、それぞれの時間を見積もるのです。
ただし、1日のうちの時間帯によってコンディションも異なるので、集中できるときに思考の質を問われる仕事をすると、仕事の質とスピードのアップにつながります。
ミニマム思考の人は自分のコンディションを知り、集中できるときを把握しています。
定量的な仕事は時間の見積もりが命綱抽象的でクリエイティブな仕事は、質を気にしなければ、ある意味「えいや」でできるものともいえます。
たとえば、企画書を出しなさいと言われたとき、アイデアさえ思いつけば、1時間もかからずに作成できる可能性があります。
質を意識しなければ、5分でつくることもできるでしょう。
しかし、抽象度の低い具体的な定量仕事は、そうもいきません。
たとえば、100枚の封筒に宛名を手書きするという作業であれば、枚数分の時間が必ずかかります。
1枚につき3分かかるとすれば、300分(5時間)の時間を確保しなければなりません。
もし1時間で終えようとするならば、5人の人手を確保する必要が出てきます。
実は、定量的な単純作業ほどあなどることができないのです。
確実に時間を要するので、どれくらいの時間がかかるか見積もるスキルが重要になります。
逆を言えば、定量の仕事は、ある程度、正確に時間を見積もることができるため、段取りは組みやすいといえます。
段取りを組むときは、少し時間の余裕をもって取り組みはじめ、余った時間で質を高めると、質×スピードのレベルの高い仕事をすることができます。
書類作成は「スタンダード+α」で定性的な仕事でも、工夫次第で、質の高さを担保しながら、スピードアップを図ることができます。
クリエイティブな仕事を進めるうえで時間をとられる作業のひとつが書類作成です。
書類といっても提案書や企画書、報告書などさまざまですが、これらを一つひとつゼロから作成していたら、作業のスピードは上がりません。
ミニマム思考のできる人は、クライアントに提出する提案書など、頻繁に作成する書類については、それぞれのひな型(フォーマット)をもって、使いまわしています。
限られた時間の中で質の高い成果を出すには必要不可欠のツールなのです。
一つひとつの案件ごとに資料をすべてゼロからつくるという会社はまれです。
ベースとなるコンテンツは共通のはずです。
たとえば、複数のお客様に同時並行的に提案書を作成する営業マンであれば、あらかじめ基本となる提案書のひな型をつくっておく。
そして、お客様のニーズに合わせてカスタマイズすればよいでしょう。
具体的には、会社名や日付などを変えるのはもちろんのこと、お客様が興味を示しそうな資料を追加します。
たとえば、健康に興味がありそうなお客様であれば、それに関するデータを添付すればオリジナルの提案書になります。
また、相手に合わせて、その場で動画やインターネット上のコンテンツを資料と一緒に見せてもよいでしょう。
資料作成は「スタンダード+α」で勝負をすれば、作業のスピードだけでなく、同時に資料の質もアップします。
段取りがうまくいかない人は、時間の見積もりを甘くしてしまうことに原因があります。
今日1日ですべきことを列挙するとき、多くの人は「やれる仕事」ではなく、「やりたい仕事」を書き出してしまいます。
実際にやりきれる量ではなく、「これくらいやれればいいなあ」という願望を書き出してしまうのです。
同時に自分の「時間体感力」が甘い可能性があります。
つまり、時間の長さを短めに感じやすいということです。
たとえば30秒という時間を正確に感じられればいいのですが、短くなりやすいと、見積もり時間も短く、甘くなりやすいのです。
あなたは、正しく時間の長さを感じられるでしょうか?ミニマム思考の人は、自分の時間体感力を正確に知っていて、ひとつの仕事にかかる時間を正確に見積もることができます。
企画書を書くのに実際には3時間かかるのに、「1時間で終わるだろう」と楽観的に見積もることはしません。
時間の見積もりが甘くなると、1日にやるべき仕事を書き出したものの、結局は全部終わらずに、やり残してしまうことになります。
それらは当然、翌日以降に持ち越すことになりますが、それらが積み重なっていくと、仕事がどんどん後ろ倒しになり、スケジュールが遅れていきます。
やるべき仕事がわかっているのに、片づかない状態は心理的にも大きなプレッシャーになります。
五感も鈍くなって、ますます混沌とした状態にはまってしまいます。
これらを防ぐためには、自分の時間体感力を正しく把握して、タスクにかかる時間を正確に見積もることが大切です。
自分の時間体感力と仕事の能力を客観視できる人は問題ありませんが、そうではない人は、まずは「できそうだと思った時間」の2倍の時間を見積もることをおすすめします。
実際には、さまざまな事情で倍の時間がかかることはよくありますし、それくらいの余裕をもっておけば、スケジュールがずるずると後ろ倒しになっていくことを防ぐことができます。
そして、実際に作業にかかった時間を測って記録してみるのです。
たとえば、「メール:15分」「会議資料作成:1時間」「アイデア出し:30分」といった具合に、作業とそれにかかった時間を記録します。
次回からこの時間を目安に2倍で見積もります。
この時間を基準にして、時間内に終わらせるように工夫していくことです。
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