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【PART4】SOCIALBOND 強い会社は、目に見えないものも「評価」する《業績・成果》

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【PART4】SOCIALBOND 強い会社は、目に見えないものも「評価」する《業績・成果》

経営戦略の成果はどのように測定するのか事業戦略は「数字」で表現できてナンボ売上モデルはより良い戦略を考えるためのもの事業活動の成果指標伝統的な手法で十分シミュレーションできるステップ⑭ブランド・リレーションシップ顧客との「絆」をどうつなぐのかブランドは4つの階層で整理するステップ⑮事業性評価売上と利益をどう評価するのか押さえるポイントは最小限で良いCOLUMN5イノベーションが求められているのは戦略だけではない

SOCIALBOND経営戦略の成果はどのように測定するのか≫事業戦略は「数字」で表現できてナンボかなり前のお話になりますが、某メーカー国際部主催のプレゼンテーション大会に参加させていただいたことがあります。国際部のメンバーが、海外事業戦略を自社の経営陣に提言するという趣旨のプレゼンテーション大会でした。新興市場における市場開発戦略、欧米のニッチ・セグメントに深く浸透する戦略、アジア向けの新製品開発戦略等、各チームから大変刺激的な戦略オプションが提言されました。私の役割は、各チームに質問をして、最後にまとめのコメントをするというものでした。海外市場ということで、現状分析がかなり難しいと思われましたが、JETRO等で二次資料を集め、限られた対象者ではあったものの、フォーカス・グループ・インタビューも実施し、仮説の検証もそれなりにできていました。「社長!ぜひやらせてください!」的な熱いトークもあり、プレゼンテーション大会としては、大成功のような雰囲気がありました。しかし、経営陣の多くが、これはいける!という確信を得られずにいたわけです。その理由は、いったい何だと思いますか。≫売上モデルはより良い戦略を考えるためのものそれは、事業戦略の最後の仕上げである売上モデル、利益モデルが入っていなかったということなのです。プランはそれなりに工夫された内容で、事業戦略としてはなかなかおもしろい提案もありました。しかし、肝心の、このプランをやればこれだけ儲かるというメッセージが欠如していたのです。熱いプレゼンを聞いたあとで経営トップがおもむろに聞く質問は、「で、結局いくら儲かるのかな?」です。その戦略を実施することにより、どのような投資が必要になり、どの程度の売上や利益が期待されるのか、どの程度の事業価値が生み出されるのかという視点がなければ、戦略の善し悪し、あるいは、戦略の改善方向を議論することは難しいのです。戦略の機能評価・改善のために売上モデルをとりあえず作成し、それを基にさらに魅力的な戦略オプションを検討することが売上モデルを活用する理由です。もちろん、セグウェイ31のようなまったく新しいコンセプトの製品について売上をモデル化することは難しいのですが、それでも、仮説として設定した標的市場のみで当初想定した事業規模に達するのか、そのボリュームで損益分岐点に達するのかなどの議論は十分可能です。31セグウェイ:2000年代初期にアメリカの発明家ディーン・ケーメンを中心に開発された電動立ち乗り二輪車。当時画期的なコンセプトと言われたが、用途分野と優位性があいまいだったこと、いまひとつ洗練されないスタイル等で普及が遅れた。売上予測は、的中させるために行うのではなく、戦略オプションを検討して、より良い内容にしていくためのプロセスということです。≫事業活動の成果指標本書では、ここまでシステムとしての経営戦略を、企業戦略および事業戦略の構成要素を中心に検討してきましたが、最後の仕上げとして、戦略を数字で表現することにより事業の本質やリスクを理解することの重要性について言及しておきたいと思います。経営の成果としては、上記のような売上とか利益といった定量的な指標が重要なのですが、実は売上とか利益と同じくらい大事な定性的な指標があります。それがブランドです。顧客との強い関係性、いわゆる絆が形成されていなければ、長期継続的に競争優位を構築することは困難です。商品の機能や品質で一時的に差別化できたとしても、長期的な優位性の維持にとって十分ではありません。本書では、戦略の成果を定量的な要素(売上、利益)と定性的な要素(ブランド)に分けてコメントします。≫伝統的な手法で十分シミュレーションできる成果を上げる手段はいろいろ考えられると思いますが、それぞれの手段には当然コストがかかることを忘れてはなりません。各手段を選択することによって、どの程度の売上を上げれば、その手段にかかったコストを正当化できるのかということを簡単にチェックする伝統的な方法があります。BEP(損益分岐点)分析です。まず基本概念を説明します。利益額=収益-費用=(販売数量×単位売価)-(販売数量×単位変動費)-固定費=販売数量×(単位売価-単位変動費)-固定費=販売数量×単位貢献利益-固定費

=貢献利益-固定費販売数量(unitvolume)とは一定の期間における製品・サービスの取引件数です。単位売価(unitprice)とは、当該企業(製造業)に支払われる金額(小売価格からチャネル・マージンを引いた額)のことを意味します。単位変動費(unitvariablecost)は、直接製品に割り当てることのできる変動費(売上に比例的に発生する費用)の合計です。固定費(fixedcost)とは、製品を製造・販売するのに必要な費用で、かつ、直接製品には割り当てることのできない固定費(売上高の変化には関係なく一定額として発生)の合計です。営業人件費、販売・一般管理費等で、製品に配分可能な場合は除きます。単位貢献利益(unitcontribution)とは単位売価から単位変動費を引いたものを意味します。さらに損益分岐点の計算は、固定費や単位貢献利益が変動する場合によって①基本形②固定費変動ケース③単位貢献利益変動ケース④固定費および単位貢献利益変動ケースの4つのパターンに分類することができます。例題と一緒に見ていきましょう。①基本形損益分岐点販売総数量⇒売上高-総費用=0販売数量×(単位売価-単位変動費)-固定費=0販売数量=固定費÷(単位売価-単位変動費)=固定費÷単位貢献利益それでは、次のようなケースの場合は、どう考えたら良いでしょうか。ここではM=×1,000とお考えください。例題1:ABC製作所が希望小売価格¥1,000の製品Aを製造。小売レベルでの実勢市場価格は¥900。流通マージンは¥400。単位変動費は¥300。固定費は広告費として¥170MM、消費者向けプロモーションとして¥50MM、代理店等の流通向けプロモーションとして¥120MM、営業チーム関連費用として¥200MM、そして販売・一般管理費として¥60MMが想定される。この場合、製品Aの損益分岐点販売総数量をお答えください。解答:300万個損益分岐点販売数量=固定費÷単位貢献利益=600MM÷200=3,000,000単位貢献利益=900-400-300=200固定費=170MM+50MM+120MM+200MM+60MM=600MM固定費や単位貢献利益が変動しない基本形の場合には、全体にかかる固定費の総額を単位貢献利益で割ることによって、損益分岐点となる販売数量を求めることができます。②固定費変動ケース損益分岐点の増減額=固定費増加額÷単位貢献利益例題2:ABC製作所では製品Aの広告費として150MMの追加予算を検討中。この増額によって、従来と同じ損益分岐点を確保するために必要な製品Aの販売数量はどのように変化するか。新たに必要な追加販売数量をお答えください。解答:75万個損益分岐点販売数量増加額=固定費増加額÷単位貢献利益=150MM÷200=750,000③単位貢献利益変動ケース損益分岐点の増減額=(従来の販売数量×単位貢献利益の減少*)÷新たな単位貢献利益*単位貢献利益の減少=従来の単位貢献利益-新しい単位貢献利益=(従来の単位売価-従来の単位変動費)-(新しい単位売価-新しい単位変動費)=(従来の単位売価-新しい単位売価)+(新しい単位変動費-従来の単位変動費)=単位売価の減少+単位変動費の増加例題3:ABC製作所では毎年コンスタントに9,000,000ユニット販売してきた実績がある。現在、¥50の値引きを検討中。仮に値引きを実施する場合、新たな単位貢献利益は?貢献利益の減少に応じて、新たに必要になる追加販売数量をお答えください。解答:300万個損益分岐点販売数量増加額=従来の販売数量×単位貢献利益の減少÷単位貢献利益

=9,000,000×50÷150=3,000,000④固定費および単位貢献利益変動ケース損益分岐点の増減額=(固定費増加額+従来の販売数量×単位貢献利益の減少*)÷新たな単位貢献利益*単位貢献利益の減少=従来の単位貢献利益-新しい単位貢献利益=(従来の単位売価-従来の単位変動費)-(新しい単位売価-新しい単位変動費)=(従来の単位売価-新しい単位売価)+(新しい単位変動費-従来の単位変動費)=単位売価の減少+単位変動費の増加例題4:ABC製作所では広告費として¥150MMの追加予算を検討中。同時に、¥50の値引きを検討中。ABC製作所の従来の販売実績は、9,000,000ユニット/年。値引きによって単位貢献利益は¥150となる。固定費の増加と貢献利益の減少によって、新たに必要になる追加販売数量をお答えください。解答:400万個損益分岐点販売数量増加額=(固定費増加額+従来の販売数量×単位貢献利益の減少)÷単位貢献利益=150MM+9MM×50÷150=4,000,000ステップ⑭ブランド・リレーションシップSOCIALBOND顧客との「絆」をどうつなぐのか≫ブランドは4つの階層で整理するブランド・リレーションシップを構築するということは、顧客との強い絆を創ることを意味します。ブランド・リレーションシップの質は以下のような項目によって測定することができます。

ブランド・リレーションシップは、根底から頂上まで上昇する連続的なステップを経て構築されると捉えることもできます。頂上が絆ですが、それを含めて4つの階層でブランドを整理しています。ブランド・レゾナンス・ピラミッド32です。32ブランド・レゾナンス・ピラミッド:ブランドの構築を根底から頂上まで上昇する連続的なステップと捉えることを、ブランド・レゾナンス・ピラミッドまたは顧客ベースのブランド・エクイティ・ピラミッド(CBBE)と呼ぶ。ダートマス大学のケビン・L・ケラー教授によって説かれた。

①認知を量的・質的にアップ(アイデンティティ)↓②ブランドの意味の了解(機能・品質/使用状況イメージ)↓③市場から望ましい反応の引き出し(理性的な判断/感情的な反応)↓④顧客との関係性・絆の構築(ロイヤルティ・コミットメント)

ステップ⑮事業性評価SOCIALBOND売上と利益を

どう評価するのか≫押さえるポイントは最小限で良い事業性評価と言うと、どうしてもファイナンスの知識を駆使して、事業の現在価値などを算出したうえで検討を加えないといけないと考えがちです。もちろん、高度なファイナンスの技術を使ってはいけないということではないのですが、事業の現在価値33やIRR34などのファイナンスのテクニックを適用するために必要なキャッシュ・フロー(CF)が、そもそもどの程度の精度で求められるかということを考えて整合性をとらなければならないということです。33事業の現在価値:事業から創出されるCFを算出して、現在の価値に割り引いたものから初期投資額を差し引いたものが事業価値となる。34IRR:InternalRateofReturn、内部収益率。事業計画から得られる現金収支の現在価値から初期投資額を差し引いた金額、つまり正味の価値(儲け)がゼロとなる割引率。そもそも売上はどのようにして求めることができるのでしょうか。一般消費財のような市場を対象にする場合は、市場全体の中から標的市場を抽出して、それにシェアを掛けてそれに単価を掛け合わせて、はい、できあがりという具合ではないでしょうか。そこから想定される固定費と変動費をラフに見積もって売上から引いて利益を出すというレベルではないかと思います。事業戦略に関する事業性評価については、精緻な数字をきちんと押さえて計算をするというよりも、ポイントとなる要素はきっちり押さえて、あとは大胆に仮説を使っていろいろ計算してみる(これをシミュレーションと言います)というスタンスが良いのではないかと思います。将来のキャッシュ・フローの最大化を実現することを目的変数として、それを実現するための説明変数としての戦略オプションを考えるということです。

念のために、事業戦略を売上、利益等で検討しないとどのような不都合が生じるのか確認しておきたいと思います。ざっとアトランダムにまとめると次のようになり、一言で言って、数量化しないことによって失うものは少なくないのです。・優先順位を明確にできない・どの解決策が最も利益に貢献するかが不明・チームメンバーの実行に向けたやる気が限定される・どの程度の価値を創出できるのかが不明では、実際に数量化する際のポイントはどのようなものでしょうか。基本的に、簡便性に主眼を置くべきです。英語で“封筒の裏でちょこっと計算するモデル”(asimplebackoftheenvelopemodel)と表現しますが、簡易シミュレーションをベースとすべきです。例えば、ターゲット市場における顧客数、顧客ごとの購買単価、顧客の購買頻度、顧客獲得コストなどを押さえてモデルを作成し、モデルを構成するキー要素を変動させて簡易シミュレーションを行うことをお勧めします。自社の戦略方向、競合ベンチマーク調査、過去のデータ等を参考に判断・評価しますが、どうしても仮説を知識化できないような場合においては、他の仮説を固定したままで、対象となる仮説を一定レベル変動させてインパクト調査を実施します。

売上モデルの作り方の例です。売上=プロジェクト件数×カバー率×勝率×プロジェクト単価売上=標的市場×出現率(採用率)×シェア×価格売上=ディストリビューター数×売上売上=市場規模×シェア売上=ユーザー数×ユーザーあたりの消費金額売上=個数×単価売上=トヨタ売上+ホンダ売上+日産売上繰り返しになりますが、シミュレーションとは、キャッシュ・フローの要素を事業戦略の構成要素と関連させて、将来想定されるキャッシュ・フローを最大化するための戦略オプションを試行錯誤するためのプロセスと考えていただいたら良いかと思います。

<COLUMN5>イノベーションが求められているのは戦略だけではない日本の名目GDPは1995年に5.3兆ドルのピークを迎え、その後20年にわたって、ほぼフラット状態です。日本企業の売上成長の長期低下傾向、利益の縮小傾向は、いわゆる「利益なき拡大」「構想なき成長追求」「規模の不経済」「無為無策経営」「戦略なき企業経営」などと揶揄されてきました。長期停滞の“失われた20年”の間に企業の体力、国の体力も脆弱化している。今こそ、大きな構想のもとで、選択と集中、そして持続的な競争優位の構築を考えなければならない。もはや、改善のみの対症療法的無作為経営、いわゆる“donothing”的なアプローチは許されないのです。もちろん大きな構想のもとで再構築が求められているのは、戦略そのものだけではありません。戦略を実施していくための、あるいは、それを生み出すためのインフラストラクチャーとしての組織や制度についても同様なのです。日本の経済・社会システムそのものがいまだに「キャッチアップ型」であることの弊害が多くの専門家によって指摘されていますが、少なくとも、個々の組織レベルで、いわゆるコンピタンスの罠(ジェームズ・マーチ、1991)にはまっていないか、十分注意しなければなりません。ポイントは以下の通りです。・既存の安定的な環境で仕事はできるものの、リスクをとったり、新しい分野に参入することは得意でない人を昇進させる手続きがベースになっていないか・長期にわたって新しい技術に投資することより、現在の事業の利益を最大化する組織に報酬を与える体系になっていないか・リスクを最小化して、儲かることが自明の事業やプロジェクトにのみ、資本を注入する予算になっていないか・イノベーションの原点となる機能間や組織間の学習を阻害するような組織構造になっていないか・忍耐や忠節を強調する企業文化によって、現在の業績のみを見て、将来の戦略がおろそかになっていないか上記の他にも、入社してから退社するまで一生同じ事業部で仕事をするような制度になっていないか、特定の事業部から他の事業部へ異動することで昇進が遅れるようなことがないか、いま一度考えていただきたいと思います。人材は、いろいろなことを経験して育っていくものです。ややマクロの話になりますが、新興市場としてのアジアの需要をカバーするため、アジアでの開発、生産を前提としたグローバル展開が加速することにより、海外移転という形式で一部の産業分野が国内から丸ごと撤退していくことも十分考えられます。その際にどのような産業を国内で促進し、顧客と所得を確保していくべきなのか。持続的な利益成長をテーマにした企業や事業ごとの戦略に加え、産業レベルの大きなビジョンのもとでポートフォリオ戦略を構想しておくことが求められています。(注)コンピタンスの罠:企業がイノベーションを実現するためには、「知の探索」と「知の深化」の両立が必要。「知の探索」とは、知識の範囲を広げることであり、「知の深化」は、特定の分野の知識を継続的に深める活動と考えられる。「知の深化」に偏りすぎると、やがては視野が狭まり、企業としてのイノベーションが停滞することを意味する。

 

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