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ステップ⑦ システム戦略 モノ、行動、アイデア、情報を統合する

システムとは何かをきちんと定義しないまま、今までの話を進めてきたが、この章を始めるにあたつて定義をしておこう。

システムとは、相互に作用するモノ、行動、アイデア、情報の集合体である。そして相互作用を繰り返す中で、他のシステムヘの働きかけも行う。

要するに、世の中のすべてがシステムである。

宇宙、世界、サンフランシスコの街、私の働くオフィス、私の使っているパソコン、私の飲んでいるコーヒー、私とあなたとの関係――すべてがシステムなのだ。それでは企業の中にあるシステムを見てみよう。

目次

三種類のシステム

企業には、ハードシステム、ソフトシステム、情報システムの三種類がある。

ハードシステムは、いわゆる「モノ」である。私の机やその上に置かれている電話機はハードシステムである。

ソフトシステムは、ひとことで^言えば「考え方」である。これまでに紹介した業務マニュアルやホテルの管理システムもソフトシステムの一つである。

情報システムは、ハードやソフトのシステムについての情報を提供するもので、会計や在庫管理のシステム、営業担当者の活動記録などがその例である。

事業発展プログラムでは、イノベーション→数値化→マニュアル化の作業を行うだけでなく、三種類のシステムを統合しなければならない。

まず三種類のシステムの例を紹介したうえで、統合によってさらに効果を高める方法を説明しよう。

ハードシステム

私の会社の会議室には、打ち合わせで使うためのホワイトボードが壁面に据え付けられている。顧客にアドバイスしているように、私たちの社内でも、内装や備品についての基準を設けている。

色彩の基準から、黒板ではなくホワイトボードを使うこと、白いチョークではなく青いマーカーを使うことが社内のルールとなっていた。そして、内装についても、壁が色は白と決まっていた。

しかし、実際にホワイトボードを使いはじめると、色彩と清潔さの基準を両立することが困難になってしまったのである.会議が終わった後には、社員は部屋を元通りに戻すというルールがあり、当然ながらホワイトボードを消す作業も含まれている。

ここで問題となったのは、社員がホワイトボードを消さないことではない。彼らはきちんと消してくれた。

ただ、早く仕事に戻ろうと慌てて消すために、ホワイトボード消しを周囲の壁にこすりつけて、白い壁を汚していたのである。その結果、せっかくの白い壁に青いマーカーのインクのしみが目立ちはじめた。この問題に気づいた私たちは社内でキャンペーンを始めた。

ホワイトボードに注意を促す張り紙をしたり、汚れをチェックするチームを結成したり、さまざまなことを試みた。

しかし、結局のところ、インクのしみを防ぐことはできず、壁を何度も自く塗り直すか、黒板と白いチョークに戻すしか方法がないという結論に落ち着いてしまうところだった

そこに当社の「汚れ防止システム」が誕生し、ホワイトボードを使いたいというニーズと、白い壁面をきれいに保ちたいというニーズを見事に両立させたのである。

システムといっても、大げさなものではない。とても簡単なもので、すべてのホワイトボードの周囲に透明なアクリル板をつけただけである。

アクリル板でホワイトボードの周囲十センチ程度を覆うことで、名前の通り壁面の汚れを防ぐことになった。

たったこれだけの思いつきで、ペンキを塗ったり、汚れをチェックしたりする無駄な作業は不要となったのである.これはハードシステムによる問題解決の一例である。

システムさえ導入すれば、誰の手を煩わせることもなく、問題を解決してくれる。言い換えれば、従業員を本来の仕事に集中させることが、システムの目的なのである。

ソフトシステム

販売は重要な仕事である。

そして販売するのは人間である。ビジネスにたずさわっている人なら、「売り上げの人割は、三割の社員により達成される」という言葉を聞いたことがあるだろう。

しかし、二割の社員がやっていて、八割の社員がやっていないことを知る人はあまりいない。

結論からいえば、二割の社員はシステムを活用し、八割の社員はシステムを活用していない。

私は、販売システムというソフトシステムを活用することで、すぐに売り上げを数倍に伸ばした事例をたくさん知っている。

販売システムとは何か

販売システムとは、あなたと顧客の間のやりとりをマニュアル化し、次の六段階にまとめたものである。

1販売プロセスの中で、顧客の意思決定に影響を与える重要なポイントを見つけ出す。

2ポイントごとに、顧客の心をつかむための脚本を作成する。(演劇のような脚本をつくつてみるのだ―)

3脚本に必要な資料や道具を準備する。

4脚本を暗記する。

5営業担当者にも脚本が演じられるように教育する。

6顧客に合わせて脚本が変えられるようになるまで教育する。

ある人材紹介会社では、未経験の従業員に販売システムを使わせることによって、たった一年で売り上げを四倍にした。

ある広告代理店では、業界経験も営業経験もない社員に、このシステムを使わせることによって、二年間で売り上げを六倍にした。

同様にあるスポーツクラブでは、導入後ニカ月で月商が四〇%増となった。

事業内容がどんなものでも、この仕組みを導入することで、同様の成果を上げることは可能だと私は考えている。

売り上げを伸ばす販売システムの実際

販売システムとは、販売員と客との間のコミュニケーションを記した台本である。台本は、以下のステップから構成される。

1アポイントメントをとる。

2顧客ニーズを分析する。

3解決方法を提案する。

1アポイントメントをとる電話で営業活動を行う場合、多くは電話をかける意味を理解していないために、最初からつまずくことになる。

彼らの大半は、電話をかける目的は、顧客の品定めを行い、見込みがあるかを見極めることだと考えているようだが、それは間違いである。

電話をかける目的はもっと単純で、会う約束さえ取り付ければ十分なのである。

アポイントメントを取り付けることで、次のステップである顧客ニーズ分析に進むことができる。

そのため、このステップでは、商品の説明をするよりも、商品のもたらす「価値」について説明し、顧客の無意識に働きかけねばならない。

例えば、次のように会話が進められる。

「こんにちは、ジャタソンさん。私はM社のジョニー・ジョーンズと申します。最近注目を集めている、財務管理の新しい手法をご存知ですか?」「新しい手法って何のことだい?」「それをお話ししたくて、お電話をさしあげたのです。少々お時間をいただけますか?」ここでは、「財務管理」が顧客に提供する価値である。

「管理」という言葉がポイントであり、短い電話の中で、ジャクソン氏の知らない新しいものがある(=もっとよい管理の方法がある)ことを話し、ジョニーと会うだけでそれを知ることができる(=効果的な管理ができるかもしれない)と伝えているのである。

この話を開けば、ジャクソン氏は「ジョニーと会ってみようか」という気になる確率が高い。

顧客に感情的な変化を起こさせ、訪間の約束を取り付けることがジョニーの仕事なのである。

ツボを押さえた台本を準備することで、約束を取り付ける確率を高め、顧客ニーズ分析のステップヘと進むことになる。

2顧客ニーズを分析する最初の電話でジョニーはジャクソン氏の感情に働きかけることに成功したが、会ったときにもう一度繰り返す必要がある。

「ジャクソンさん、覚えていますか?・最初の電話で、財務管理の斬新な手法が登場して注目を集めているとお話ししましたよね?」

次に、ジョニーはジャクソン氏の期待に応える方法を話すことになる。

「これから、その手法についてお話ししたいと思っています。

ついでに、弊社が開発した効果的な財務管理のツールをご紹介したいと思うのですが、いかがでしょうか?」ジョニーは、二つのことを話して、見込み客の心の中に信頼感を築かねばならない。

一つ目は、自社がこの分野に専門性をもっているということ。

二つ目は、その力をジャクソン氏のために喜んで提供したいという態度を見せることである。

「ジャクソンさん、まず私たちの会社を設立した経緯からお話しさせてください。

私たちは、効率的な財務管理ができずに困っている会社が多いことに気づきました。

顧客本位で考えてくれる銀行は少ないですし、十分な知識をもった専門家も多くありません」「御社でもきっと、お悩みだったのではないでしょうか?・弊社ではそんなお客さまのために、『財務管理システム』をつくりました。

このシステムを導入することで、費用を抑えながら、金融機関との取引では優遇を受けることが可能です。

話がうますぎるように思えるかもしれませんが、具体的な方法をお話ししましようか?

ジヨニーはここで、ジヤクソン氏の悩みを理解していて、自社の「財務管理システム」を使えば、システム的に解決できる専門的な知識をもっていることもアピールしている。

次に「財務管理システム」の概要と、それがうまく機能する理由を説明する。

特にジャクソン氏の仕事や会社にどんな影響を与えるのかが、強調すべきポイントである。

「弊社の『財務管理システム』の特徴は、財務管理がうまくできない原因を明らかにするところにあります。

最適な財務管理の手法はお客さまごとに違うはずです。

お客さまのことをよく知るために、弊社の『資金管理に関するアンケート』にお答えいただけませんでしょうか?・お答えいただければ、御社の問題点は何なのかを把握できますので、後ほどご記入いただければと思います」「アンケートが完成しましたら、社内の財務の専門家のグループに渡して、内容を確認し、『財務管理システム』に入力させていただきます。

このシステムには長年にわたるさまざまな企業のデータが蓄積されています。この分析結果に基づいて、御社にとって最適な解決方法をご提案することになります。前にお話ししたように、優遇措置を受けながら、コストを抑えるという方法です」

「分析の結果は『財務調査報告書』という形式にまとめ、次回訪問するときにもっていきます」「私たちのご提案する解決策が、御社に有益なものなら、それを実現するところでお手伝いさせてください。

もし、お役に立てなかったとしても、また別の機会にお役に立てればと考えています」「念のために申し上げると、『財務調査報告書』を作成するところまでは無料ですcお客さまの役に立つことが、私たちの仕事ですから」「一緒にアンケートに答えていただけませんか?そのあとに財務分野での最新情報をご紹介しますので」ここまで話せば、あとはアンケートを完成させ、財務分野の最新動向を話し、それが自社のサービスと密接に関連していることを伝えればよいのである。

顧客のニーズ分析は、報告書をもっていく日時の約束をすることで完了する。

そのときに、価値ある無料の解決法をもっていること、ジャクソン氏がお金を払ってくれるかどうかにかかわらず、解決法を理解するためのサポートを惜しまないことを付け加えるのがポイントである。

ここまで完成すれば、ジョニーは販売プロセスの三つ目のステップである「解決方法を提案する」へと進むことになる。

3解決方法を提案する「解決方法を提案する」というステップは、最も簡単なものである。

なぜなら、顧客ニーズ分析のステップですでに、見込み客からの不満を聞きだし、アンケートを分析することで、不満を解決する能力があることをアピールしているからである。

言い換えれば、ジョニーと知り合ったことで、ジャクソン氏は①顧客として丁重な扱いを受け、②プロのような財務管理ツールを駆使し、③自社の財務状況を改善することができるのである。

しかも、それほどコストはかけずに、という条件つきである。

見込み客にとつて、これほど魅力的な話があるだろうか?三つ目のステップでジョニーは、問題点の指摘、解決策の提示といった報告書の内容を詳しく説明する。

説明を終えたジョニーは、ジャクソン氏に次のように聞く。

「ここで私たちがご提案した選択肢の中で、どれが御社向きだとお感じですか?」そして答えを待つ。

めでたく顧客になってくれるのなら、関心のある問題について質問が投げかけられることになる。

あとは契約を交わすだけである。

今回紹介したのは、財務管理というサービスを販売する会社であったが、本質的にはどんな商品・サービスを販売する会社であっても、販売プロセスの本質的な部分は共通である。

家具、コンピューター、花、ペット、プレハブ住宅などの商品を扱うさまざまな会社が、このプロセスをつくり、実行することで売り上げを伸ばすのを私は見てきた。

ただし、売り上げを伸ばすためには、常に同じ言葉と同じ方法が繰り返されなければならない。

このプロセスを確立することで、あなたの会社は、営業担当者ではなく営業システムという資産をもつようになり、売り上げも安定するようになるのである。

さて、次では情報システムを導入することで、さらにソフトシステムの効果を高めることができる例を見てみよう。

①何回、電話をかけたか?

②何回、見込み客と電話がつながつたか?

③何回、訪間することを提案したか?

④何回、訪間の約束を取りつけたか?

⑤何回、訪問したか?

⑥何回、顧客ニーズ分析の話をしたか?

⑦何回、顧客ニーズ分析のアンケートを完成させたか?

③何回、アンケート結果を分析したか?

⑨何回、解決方法を提案する打ち合わせを打診したか?

⑩何回、解決方法を提案する打ち合わせの約束を取りつけたか?

11何回、解決方法を示したか?

⑫何回、解決方法を販売したか?

⑬一社当たり平均いくらの売り上げを上げたか?

これらの情報は、データとして記録しておかなければならない(パソコンがなければ、手書きノートでも構わない)。

これによつて、プロセス単位での成果を検証できるのである。

達成率の差を比較すれば、営業担当者の得意・不得意が見えてくる。

また、電話をかけるコスト、訪問するコストを把握すれば、販売するために実際にかかっているコストも計算できる。

今まで知らなかった情報が、情報システムからわかるようになるのである―情報システムの提供するものが、営業、商品開発、製造、財務などさまざまな仕事で役立つことはいうまでもない。

情報を集めずに事業を行うことは、日隠しをしたまま、ぐるぐると三回まわった後にダーツを投げるようなものであり、勝ち目のあるゲームとはいえない。

しかし、私から見れば、大半のスモールビジネスは、勝ち目のないゲームと戦っているのである。

システムの統合

モノ、行動、アイデア、情報。

私たちの人生や事業を構成するのはこの四つの要素である。

四つの要素は、複雑に絡み合っていて、切り離して議論することはできない。

今までに紹介してきた、事業の究極の目標、戦略的目標、組織戦略、マネジメント、人材戦略、マーケティング戦略、システム戦略、すべてはお互いに独立したものではなく、むしろ相互依存の関係にある。

事業発展プログラムを成功させるには、すべての要素をスムーズに統合しなければならない。

事業の試作モデルとは、構成要素が効果的に統合されたものなのである。

ここまで理解できたなら、この本を読んだ甲斐があったというものだ。

もし、理解していないようなら、日隠しをはずしてほしい。

夢を実現するためには、闇の中でダーツを投げている時間などないのである。

もう準備が終わったのも同然だ。

サラにもそのことがわかっていた。

残っているのは、これまで考えてきた問題をまとめて、彼女のお店「オール・アバウト・パイ」に応用する

方法を一緒に考えればよいのだ。

「あなたの言うハードシステムという考えは理解できたわ」彼女は言った。

「私の店の看板、床、壁、陳列棚、テーブル、従業員の制服、言い換えれば、私のお店で目に入るすべての要素とそれを組み合わせる方法なのね。

ハードシステムがうまく完成すれば、お店を見たときの印象もずいぶん変わるはずよね」「情報システムというものも理解できたわ」彼女は続けた。

「お店の毎日の仕事から、大切な情報を見つけ出そうとすることなのね。

いくつパイが売れるか?どんな種類のパイか?何時ごろ売れたのか?何人のお客さんがお店に来たか?。

いつ来たか?店内の喫茶コーナーで売れたパイは何個か?・持ち帰り用のパイは何個か?・店内の喫茶コーナーでパイを食べたお客さんのうち、何人が持ち帰り用のパイを買ったのか?これだけのデータが集まれば、ずいぶんいろんなことが考えられるようになるわね」「でも、ソフトシステムの部分が私にはよくわからないの。

もう少しくわしく話してもらってもいいかしら?・というのも、あなたの言う販売システムを従業員が活用している姿を想像できないのよ」私は答えた。

「イノベーションについて話したときに、私がどんなことを話したか覚えているかな?・『いらっしゃいませ。

何かお探しですか?』ではなくて、『いらっしゃいませ。

こちらにご来店いただいたことはありますか?』に変えるべきだって言ったよね?・きみのお店なら、どんな言葉がいいんだろう?」「ソフトシステムとは、きみのお店と関わりをもっている人とのコミュニケーションのことなんだ。

それは書き言葉でも、話し言葉でも構わない」「案外、気づいている人は少ないけど、事業の中で言葉のもつ力はとても大きいものなんだ。

お店の名前、パンフレツト、広告のキャッチコピー、従業員の研修。

言葉はあらゆる場面で必要になるけど、きみの言葉は一貫している必要がある。

お店で日に入るもの(=ハードシステム)も、お店で耳にする言葉(=ソフトシステム)も一貫していることで、顧客の印象に残る店づくりができるんだ」「きみが話してくれたように、『オール・アバウト・パイ』には深い意味が込められていて、お店の理念は、『思いやり』の大切さを伝えることだったよね。

この経営理念が基礎にあって、ハードシステムとソフトシステムがデザインされる。

そして情報システムは事業の状態を知るバロメーターになるんだよ」「経営理念を中心として、事業が組み立てられていくということがわかってもらえたかな?」「『職人』の人格だけでは事業を経営するのには不十分だ、と言った理由がもうわかってくれただろうね。

きみの事業を成功させるためには、やるべきことはたくさんあるんだ」「でも、とても楽しい仕事だと思わないかい?」サラは満面の笑みを浮かべた。

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