「人間力」(〓cヨ”コE,o一①コΦ∽∽)の定義
「人間力」に関する確立した定義は存在しないが、私が考える「人間力」とは、社会を構成する一員として自分らしくいきいきと力強く生きる上で、有すべき「人」としての総合的な「力」(パワー)である。
この力を磨くためには、自らを振り返り、自分には何が足りないのかに気づくことが大切だ。そのうえで、「人間力」を高めるための「内面的成長」に勤しむことが肝要になる。
「人格」の深さ、「品格」の高さ、「器」の大きさの三つの要素を養うために切磋琢磨する。それを生涯続けることになる。
第二に、そのためにも重要なのが利他行動だ。
他者との信頼関係に基づく行動の結果である信頼と人望は、内面的な心の成長に加え、「人間力」を磨く上で重要な要素となる。
さらに、付け加えるとするならば、自らが「健康」で「幸福」な状態を意識して創ることにより、「人間力」を発揮しやすくなる。
「人間力」とは何かをマネジメントの方々とお話すると、マネジメントを行う上での「人間力」について、左記のような意見をよく聞く。
・相手の「心を揺り動かす」ことのできる情熱、パワーである。なお、人間力の中核となる要素は「人格」である。
・相手から尊敬、信頼される「オーラ」のようなものであり、人として信頼されてこそ初めて得られるものである。「信頼感」を手に入れた者が持つ「力」である。
・対人関係能力などの総合的な力を意味し、知識や能力に加え、人としての「人間的魅力」である。
いずれにしても「人間力」は、業務を遂行するあらゆる局面で求められるものだ。
たとえば、従来の事業のやり方を改革する時には、新しい方針に基づく戦略策定・部門間の利害の調整を行う必要があるが、その場合に最も必要なパワーが「人間力」だ。
また、部下への困難な業務の指示を行う場合など、それは多様な局面において求められるものだ。
そのような意味からも、「人間力」は、人の心を動かしたり、組織に活力を与え、動かすパワーの源泉と言える。
私たちは人間と読みなれているが、古くは「人間」と呼んでいた。「人」という言葉に「間」という言葉を結びつけたのは、人間とは「世の中」「世間」(社会)を意味していたからだ。
人に対しては、「人間の人」という呼び方であったそうだ(和辻哲郎著『人間の学びとしての倫理学』より)。
「人間は、単に人の間であるのみならず、自、他、世人であるところの『人と人の間(あいだ)、人と物の間でにんげんがはじめて人間であり得る』」「人と人のふれあい、人と物の関わり合いの関係でつくりあげられる。この間というものが、さまざまな問題を引き起こすのである」(松原泰道『一期一会』より)。
人間を「世間」と「人」との二重の意味に用いることは、人間の本質を最もよく言い表していると思える。すなわち、人間とは、「社会」であるとともに「人」なのである。
言い方を変えれば、「人間力」とは、人との巡り合わせを大切にして、他者とどのように関わり合いを持つか、そして、社会・組織の中で必要とされ、自分らしい生き様を実現するための「生きる力」となるものだ。また人間力とは、自らの不完全さを自覚する。
「人」として、自らに足りないことは何かを自覚し、よりよき姿を追い求める生き方を確立する力でもある。「人」として成長するためには、自らを客観的に見る「素直な心」と謙虚さが必要であるということは当然だろう。
「人間力」のある人の特徴
- 「人生意気に感ず功名誰かまた論ぜん。。。」(唐詩選魏徴)ことを成し遂げようと生き方に信念を持っている。
- 責務に対する高潔な気概である「ノブレス。オブリージュ」を有する。
- 精神的支柱であるバックボーン、軸足に基づき、判断、行動する。
- 自らの価値観と異なることも受け入れ、清濁併せ呑む。
- 社会、人の役に立つことをする。
- 「私心」にとらわれず、人として卑しい行動を慎む。
- 「素直な心」で謙虚に学び続ける。
- 物事を大局的に考える。
- 人として「誠実」であり、信頼できる。
- 相手に対し、思いやりの心で気配りができる。
人格、品格、器という「人間力」の構成要件
「人間力」を高めるためには、人間としての「内面的成長」の三つの要素の現状について振り返り、自らに足りない点は何かに気づき、切磋琢磨し、人間的魅力を高め続ける必要がある。
三つの要素とは、人としての生き方である「人格」の深さ、人としての価値である「品格」の高さ、人物のスケールの大きさである「器」の大きさだ。
三つの要素は相互に関連している部分もあるが、それぞれの意義、有する人の特徴、マネジメントとして成長するための視点を次に考えることとする。
マネジメントに求められる「人間力」は、人としての生き方であり、「人格」を高めることが一番重要なポイントとなる。
第二に、人としての価値である「品格」の高さを追求することである。
第三に、人間そのもののスケールの大きさをつくり、「器」として周囲の人が期待する役割を担うことである。
この人間力を形成する三つの要素は、人として生きていく上での基盤でもあり、心を磨くことにつながる。
生涯磨き続けると述べたが、いつまでも未来永劫、終わりなき人生が続くという錯覚ではなく、人間として「志」を持って、自らの人生をいきいきと生きるために何をすべきかを自覚することが重要だ。
自然体で、今を一所懸命に生きることにより、自らの人格を陶冶し、修得することができる。
私たち一人ひとりには、自分らしさである個性を磨き、役割を自覚し、自らの人生を全うしていく使命と責任がある。
すなわち、自らの「使命」の達成に自らの「命」(時間)を使うことができれば、その人の人生は、充実したものになる。
また、人間としての生き方は、豊かな「礼」の精神と周囲の人の知恵を生かすことによって、円滑に実現される。
「礼」の精神とは単なる日常の礼儀作法を意味するだけではなく、人に対する思いやり、あるいは感謝と喜びの心を持つことである。
素直な心により、謙虚、寛容の精神で豊かな心を育むことが大切だ。
そのためにも、お互いの存在をあるがままに認め、「受容」することが人としての生き方の大事な点である。
人間というものは、人を愛する好ましい姿もあれば、人を憎むという好ましくない感情もあるが、基本的に人間は、一人では生きられない、他の人間とのかかわり、助け合いがあってはじめて社会の中で生きることができる存在だ。
人間力を構成する内面的な側面を概念化すると図1の通りである。

「人格」の深さ
どっしりとして重みがあり、落ち着いて動じない、深みのある人物を「深沈厚重」といい、第一等の人物であるとされている(安岡正篤『呻吟語を読む』より)。
深というのは、深山のごとき人間の内容の深さであり、沈は、沈着毅然を意味する。厚重とは、どっしりとしていて物事を治めることを表す。
周囲を思いやり、慕われるとともに、自らの生き方の信念を有する優れた人格の持主である。人格を有するリーダーは、組織におけるク重石クのような役割を果たしてくれる存在であり、組織。人に大きな影響を与えるというわけだ。
「人格」は、何よりも人として誠実。信頼を基盤にした個性である。より高きものを目指し、人として「志」「問い」を持って学び続ける様を表す。
そのため、「人格」を陶冶することは、私たちの人生そのものの目的でもあるのだ。
人生の真の成功は、優れた人格を得ることだ。誠実さと正直な心は、人格の基盤だ。常に誠実な行動を心掛けることが、人格を有する人の特質である。
私たちは、能力のある人よりも人間性において優れ、人格が立派な人物を尊敬する。部下が上司に期待する最大のポイントは、人間的に信頼、尊敬できる人物であるかどうかであるはずだ。
人格を高めることによって、物事の見方、考え方が変わる。
困っている人を見れば、相手の気持ちをわかろうとし、自分が手助けできることは何かを考え行動をする。
あるいは、人格が成長することにより、ウインーウインの関係づくりを基本とするようになるので、相乗効果が可能となる。
相手の立場に立って、その人の気持ちを理解しようと努力するからこそ、「人格」を有する人として認められるとも言える。
「人格」を有する人は、判断基準とする原理原則に沿つてぶれずに率先し、行動する責任を自覚する。
すなわち、自らの精神的支柱である「バックボーン」を拠り所として、何に「軸足」をおいて判断するのかが明確で、価値観と誠実さ、倫理観に基づき一貫した行動をとるものだ。
人格を高め、主体性を持つた生き方をすることで、自らの行動を律し、周囲の人に対する影響力を与えることになる。
「人格」の優れた人の特徴
- 自らの生き方により、組織、人に大きな影響力を与える。
- 人格が立派な人物として、周囲の人から尊敬される。
- 社会、人のために役に立つことを一所懸命に努力する。
- 正直、「誠実」であり、人として信頼、・尊敬される。
- 物事の本質を見極める「洞察力」を有する。
- 物事を公正に判断し、行動する。
- 強い意志と「覚悟」を有し、判断、行動の「軸足」がぶれない。
- 人として成長するために、素直なこころで学び続ける。
- 厳しさと優しさの両面を有する。
- 良き友と付き合い、良い意味でお互いが刺激を受ける。
「品格」の高さ
マネジメントのように組織をリードする存在、役割になればなるほど、周囲の人々はその人となりを見るようになる。その立場にふさわしい、品格を身につける必要があるのはそのためでもある。
また、品格は、日常生活の中でのしぐさ、何かの終わり際にどのように行動するかに表われる。
人的ネットワークをつくり、自らを高めるために学び続ける。何事も「謙虚」な姿勢で異なった発想・意見からも学ぶことにより、品格を高めることができる。
以前、知り合いの米国人のトップマネジメントから「知的好奇心(F邑一8言Lo匡ュo∽〓く)は、人生の無限の可能性を広げ、充実させることができるので、大変重要である」と教えていただいたことがある。その通りだと思う。
また、「礼の精神、すなわち、いっさいのものに対して、感謝と喜びの心を持つとともに、その心を素直にあらわしていく」(松下幸之助『人間を考える』より)ことが大切だ。
私たちは、素晴らしい日本語である「ありがとう」という言葉によって、感謝の気持ちを1日にどれくらい伝えているだろうか?
・忙しさにより、心の余裕がなくなり、相手に対する感謝の気持ちがなくなつてしまってはいないだろうか。品格がある人は、リベラルアーツ(教養)を磨くことに重きを置く。そして、心の豊かさ、気持ちの余裕がその人の内面からにじみ出るものだ。
また、周囲への気遣いや気配りにも長けている。責任ある立場の人には、品格が必要だ。卑しい行動を慎むことが求められるからだ。
人として見苦しい、恥ずかしい言動は慎むべきであり、自らの保身を考えた、みっともない行動はしてはいけない。そうした品格は、努力すれば身に着けることができる。
ただ、他人に見える外見の品性よりも、自分にしか見えない″心の品性″を磨き高めることが重要になる。
さらに品格は、気品がある言葉遣い、清潔感のある身だしなみ、マナー・立ち居振る舞いの動作が美しいことも十分条件と言える。
ちなみに私が最も心掛けていることは、その場にふさわしい身だしなみを整えることだ。相手に不快感を与えないように心掛け、信頼を得ることが大切であることから、「清潔感」が不可欠である。
中高年になるとストレスにより活性酸素が体内に増え、加齢臭になることがあるので、変化を感知し、周りに与える印象も考え、体も身なりもさらに清潔にすることを意識し、心掛ける必要がある。
気づいていても、気を悪くさせてはと思い、相手は助言してくれない。また、自分に合った服装を選択し、無理なく着こなすことも重要だ。
そのためにも自分に似合つたパーソナルカラーを自分流のお洒落に活かすということも意識してほしい。
日頃から、お洒落を意識し、自分に合った服・小物を探していないと、いざ買いたいと思ってもなかなか買えるものではない。だから、そうしたことにも日々の努力が必要だ。
身だしなみの美意識を持ち、お洒落をすると身も心も引き締まり、立ち居振る舞いや言葉遣いにも自然と品性が宿るものである。
マネジメントの立場になれば、少なくとも背広とシャツ、ネクタイ、小物はコーディネートし、その日にお会いする人、場所などTPOに応じて、自分自身が気後れしないものを身に着けるセンスが必要である。
知識、教養、礼儀正しいマナーを身に着けることにより、品格を高め、人として卑しくない生き方を目指してほしいと思う。また、自らの品格、人格を損なわないようにする強い意志が求められる。
「品格」を有する人の特徴
- 風格、気品を備えており、品格がある。
- 自らを律し、気持ちの赴くままに振る舞うことは慎む。
- 言葉遣いが丁寧で品性があり、言葉にその人の品格が表れる。
- マナー、立ち居振る舞いの動作が美しい。
- 教養があり、何事に対しても「知的好奇心」を有する。
- 相手の立場、歴史、文化、慣習、価値観などを理解し尊重する。
- 相手を包み込む優しさと周囲へのさりげない気遣いができる。
- 周りに与える印象も考え、身だしなみを整え、清潔である。
- 「ありがとう」と感謝の気持ちを言葉にして伝える。。
- 相手を慮り、自らの気持ちが前に出ないようにする。
8「器」の大きさ
「器」の大きい人は、物事を考えるスケールが大きく、る)な人物である。
らいらくこうゆう「編落豪雄」(線が太くて貫禄があ嘉落とは、大きな石がごろごろしていることであり、豪雄とは、優れた人のことを言う。
あっさりしていて腹の中にものを養っている(安岡正篤『呻吟語を読む』より)。
気持ちが大きく「腹」がすわっているかどうかも、マネジメントに求められる重要な要素だ。
つまりは、自己中心ではなく、周囲の人を気遣い、心配りのできることであり、これを「器」という。
大きな役割を担うことができる能力を有する人物の大きさを「器」とか、「度量」「器量」という。
周囲の人々が期待することを担うことのできる器量・力量を磨き、人のために役に立つことができることを「器」という。
大きな志、使命感を有し、大局観に基づき「見識」すなわち、本質を見通す判断力と確かな考えをベースに実行する。
自らを律し、心を鍛えることにより、「人間」として構想を考えるスケールの大きさが生まれ、「器」が日々大きく成長する。
決断の「大胆さ」と「細心さ」、人としての「強さ」と「優しさ」の両面を兼ね備え、何があっても動じないことは、忍耐力を蓄えた「器」の大きい人間の証でもある。
それは知識とか能力ではなく、人物としての「器」の大きさであり、人として、全体の雰囲気、すなわち風格としてにじみ出るものだ。
マネジメントの存在意義は、業務を中心に考える部下には見えていない視点から助言することである。
些細なことに目をつむり、大きな気持ちで人に接することにより、相手に成長する機会を与える。
部下の失敗ミスは、挑戦した結果であると心を大きくし、許容する。
自分の意と反するときにでも、自らの感情をコントロールし、怒らず冷静に対応する。
相手の役職。
地位に関係なく、誰にでも分け隔てなく、公平に接し、話を聴くようにする。
何事もポジティブに考え、プロアクテイブに行動することを心掛ける。
それが器の大きなマネジメントというものだ。
「器」の大きい人の特徴
- 人として思慮深く「深み」のある「できた人」である。
- 堂々としていて何事にも動じない「胆力」を有する。
- 相手を許し、受け止める懐が深い。
- 周囲の役割期待を担うことができる「器」を有している。
- 異なる価値観や考えを受け入れる「包容力」を有している。
- 中長期の視点で物事を考える器が大きい。
- 常に俯腋して物事の本質を見極めて行動する。
- 相手の立場を慮り、困っている人の役に立つ。
- 細かいことを気にせず、高い視点から考え、助言する。
- 我慢強く、忍耐心があり、自らの感情をコントロールする。
閑話休題
「ノブレス。オブリージュ」(仏Doσ一①∽∽①oσ一一器)とは・…高貴な人ゆえに求められる責務、つまり、高い地位と影響力を有する人は、大きな責任と義務が伴う。
そのためには、責務を全うする気概と使命感を意識し、社会。人のために役立つことは何かを考え行動する必要がある。
マネジメントに期待されるノブレス・オブリージュとは左記のようなことである。
- 一.社会・顧客のために最善を尽くすことを一義とし、事業に対する「信念」「使命感」を持って、仕事を遂行する。
- 二.事業の価値を高め、結果を出すために「衆知」を集め、事業のリスクにも挑戦する。
- 三.わが身を責めて、人を責めず、いざという時に「覚悟」を持って行動する。
- 四.人材を登用するためには、「素直な心」で人を見極め、その人の「強み」を発揮させる。
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