いじり上手になるためのテクニック10前章では、いじり上手になるための心得として、「ツッコミ力を身に付ける」「相手をリサーチする」「聞き上手になる」「笑顔でツッコミを入れる」という話をしました。これらを肝に銘じてもらったところで、いよいよ具体的なテクニックの話をしたいと思います。本章で、コミュニケーションを円滑にするためのツールとして、お笑い芸人に学ぶ「いじり」のテクニックをジャンル別に紹介していきます。ここで挙げるテクニックは、次の10個です。①そのまんまいじり思ったことをそのまま口にする②大げさいじりウソと分かるくらい極端な言葉を発する③例えいじり相手の言動や状況を何かに例える④質問いじり相手の変化に気付き、質問する⑤褒めいじり相手の言動や状況を褒める⑥お世辞いじり相手を立て、自分を下げてお世辞を言う⑦叱りいじり相手の言動や状況を叱る⑧キャラいじり相手のキャラクターを理解していじる⑨皮肉いじり相手の欠点や弱点を遠回しに言う⑩読心術いじり相手が思っていそうなことをズバズバ言うこれらのテクニックを身に付けることで、だれでも「いじり上手」になることができます。それでは、1つ1つを例とともに説明していきましょう。①そのまんまいじり自分が思ったことや見たままを「そのまんま」いじるという方法です。あなたが抱いた感情を、そのまま口に出してやるだけです。特別なテクニックを用いなくても、まずは思ったことを口にするだけで、「いじり」の第一歩となるんです。【部下が買った腕時計を自慢してきたとき】部下この前の正月休みに、ハワイに行ってきたんですよ。あなたマジで?正月休みに、ハワイかよ~。部下それで、免税店でこの時計買ったんです。あなたハワイに腕時計って、お前、俺より給料もらってるだろ?この例では、部下が正月休みにハワイに行って腕時計を買ったという話に対して、「そんな贅沢ができるなんて、俺より給料をもらっているのか?」という疑問を、そのままダイレクトに聞いています。こう聞かれた部下は、バカ正直に給料の額は答えないでしょうが、自分のことを羨ましく思うあなたに対して、悪い気はしないでしょう。その後、「この腕時計がすごいんですよ……」と腕時計の説明や、「ハワイのパワースポット知ってます?」などと、当分の間、部下の自慢話が続くかもしれませんが、それはあなたと話がしたい!あなたに好感を持った!という証拠なんです。しかし、これがなかなか難しく、「免税店でこの時計買ったんですよ」という部下の自慢に対して、「ふ~ん、そうなんだ」という微妙なリアクションのみで会話が終了してしまう人も多く存在しています。例えば、次のような会話をしてしまっている人もいるのではないでしょうか?【部下が買った腕時計を自慢してきたとき】《悪い例》部下この前の正月休みに、ハワイに行ってきたんですよ。あなたへぇ~。部下それで、免税店でこの時計買ったんです。あなたそうなんだ。部下……(この人と話しててもつまんないなぁ)。あなた……。芸人さんも、リアクションが大きいことで有名です。特に若手は、MCの話にいちいち驚いたり、大げさに相づちを打ったりします。あなたも、若手芸人になったつもりで、心の声をそのまんまリアクションに表してみてください。それだけで、話し手から好感触を得られるはずです。ただ、気を付けないといけないのは、あなたが悪い印象を抱いた際、それをそのまま相手に伝えてしまうと、相手は気分を害してしまうことです。例えば、先ほどの会話の流れで、部下の買った腕時計を見て、「ダサいなぁ~」と思ったとします。そのことを正直に言ってしまうと、部下は気分を害してしまいますよね。よって、そのまんまいじりは、相手にとって良い印象を持ったときにだけ使う方が良いでしょう。②大げさいじり極端な言葉を発するのが「大げさいじり」です。大切なのは、中途半端ではなく、ウソと分かるくらい誇張した極端な言い方をしてあげること。中途半端な表
現では、相手が真に受けてしまうことがあるので、わざとらしく大げさに表現することを心掛けましょう。【残業中の同僚に対して】あなたお疲れ。まだ仕事か?同僚明日までに企画書仕上げないといけなくてさ。あなたお前は偉い!日本で一番の働き者だな。同僚そんなことないよ。あなたそんなお前に、この世界で一番うまい缶コーヒーをあげよう。同僚ただの缶コーヒーだろ!でもありがとなっ!この例では、残業してまで仕事を頑張っている同僚に対して、「日本で一番の働き者」と大げさないじり方をしていますが、それだけではありません。合わせ技として、コーヒーを差し出し、「世界で一番うまい缶コーヒー」と「○○で一番」でカブセています。このカブセ技は、まず最初に「日本で一番」と表現して、次にさらにその上の「世界で一番」を持ってきたところがポイントです。「世界で一番うまい缶コーヒー」という表現は、ツッコミではなくボケですが、その前の「日本で一番の働き者だな」という「大げさいじり」があったからこそ、効いているボケと言えるでしょう。この例では平坦なトーンで「社内で一番の働き者だな」と言ってしまえば、普通に受け入れられてしまうかもしれません。あくまでも、大げさに言うことがポイントです。ちなみに、「○○で一番」という言葉は、「港区で一番うまい」とか「北関東で一番美人」とか「アジアで一番の酒豪」などなど、こだわればこだわるほど面白ワードとしていろいろ使えるので、ぜひ普段の会話でも使ってみてください。他にも、相手を褒めるときに使える「大げさ」ワードとして、「男の中の男」という言葉もあります。男の中の男?──意味はよく分からないですが、言われるとうれしいですよね。男の着ぐるみの中に入っているオッサンを想像してはいけません。あと、些細なことでも、自分のために何かをしてくれた人に対して、「師匠」や「先生」と言ってみましょう。言われた方は周りの目が気になって仕方ないでしょうけど。言われた相手も嫌な気にならず、それでいて思わず笑ってしまうような大げさワードを、常日頃からメモしておくのも良いかもしれません。
③例えいじり「例えいじり」は、いじり術の中でも一番使いやすく、笑いも取りやすいので、非常におすすめの手法です。直接的な表現をすると相手を傷付けたり、変な空気になったりする場面でも、例えを使ってオブラートに包んでいじってあげると、言われた相手も、周りも笑いとして受け止めることができます。【ランチをのんびり食べる部下に】あなた(食べ終わって)はぁ~食った、食った。部下(まだ食べ終わりそうにない)あなたおい、もうそろそろ昼休憩終わるぞ。部下もうちょっとだけ待ってください。あなたお前、ひょっとして1日が48時間あると思ってるだろ?部下そ、そんなことないですよ!(急いで食べる)この例でも、ランチをのんびり食べている部下に対して、「遅せぇよ!」と怒鳴ったり、「早くしろよ」と文句を言ったりすれば、部下は今後あなたとランチに行くのを避けるようになるでしょう。そこで、時間にルーズだと言う意味を暗に込めて、「1日が48時間あると思ってるだろ?」といじってあげるんです。こうすると、部下は笑いながらも、間接的に早くしろという意思に気付きます。このように、とても便利な「例えいじり」ですが、これを行う際に気を付けないといけないことが1つあります。それは、相手や周りが分かる例えを持ってくるということです。せっかく間接的に例えていじったのに、その例え自体を相手が理解していなければ、全く意味がありません。例えば、あなたの周りに大食いの部下がいたとします。ランチでその部下が頼んだ品物がかなりの量だったとします。とんかつ定食とピラフと、単品で焼き魚に野菜サラダといった感じを想像してください。それを見たあなたが、「お前の胃袋は牛か!」と例えいじりをしたとします。牛の胃袋は「複胃」といい、4つの胃があることを知っていれば、言われた部下も周りも笑うことでしょう。しかし、それを知らなければ、「え?」という顔をされてしまいます。そこで、例えを選ぶ際は相手との関係や周りの状況を考えた方が良いでしょう。この例で言えば、もし伝わらないと思ったら、「お前の胃、4つあるの?」といじって笑いを取ってから、「まるで牛並みの胃だな」と付け足してあげましょう。
④質問いじり前の章でいじり上手になるためには、リサーチ力が大切だという話をしましたが、「質問力」も同じくらい大切です。常日頃から、相手を観察しておくことで、相手の変化に気付くようになります。そして、その変化について質問してあげると、相手は「自分に関心を持ってくれている」とうれしくなります。【取引先との打ち合わせの際に】上司(資料の説明)……というわけになります。取引先分かりました。これで進めてください。上司本日は、ありがとうございました。取引先いえいえ、こちらこそ。ご足労願いました。あなた(帰り間際)あれっ?そのネクタイ、オシャレですね!取引先ありがとうございます!あなたどこに行けばそんなオシャレなネクタイが売ってるんですか?取引先妻にもらったんですよ。あなたなるほど~。ちなみに、どこに行けばそんな優しい奥さんと出会えるんですか?この例では、取引先との打ち合わせ後の雑談の様子を描いています。帰り間際に、相手のネクタイがいつもと違うことに気付いたあなたは、「あれっ?そのネクタイ、オシャレですね!」と口に出して言っています。次のテクニック「褒めいじり」でも述べますが、このような褒め言葉は思っているだけでは相手に伝わりません。声に出さないとダメなんです。ここで、さりげないポイントを紹介します。この「あれっ?そのネクタイ、オシャレですね!」というセリフの最初の「あれっ?」のひとこと、実はこれが自分の声の出し方としては結構重要なんです。バラエティ番組において、「ひな壇芸人」と言われている方々をご存じでしょうか?MCやゲストの後方で、ひな壇のようになった席に座っている芸人さんのことを指します。このような番組の場合、メインはMCやゲストの面々であるため、なかなか彼らは画面に映るチャンスがありません。そんなとき、彼らは、自分が目立つための方法を知っています。それは、自分の意見があってもいきなり話し始めず、まずは大げさなリアクションをするというやり方です。これは何が効果的かというと、「え~」とか「あぁ~」と言うことで、カメラマンが声のする方を撮りにかかることです。そうやって、まずは声を出して今から自分が話しますよというアピールをしてから、きちんと画面に映ってトークを始めるわけです。少し説明が長くなってしまいましたが、この例の「あれっ?」も、上司と取引先との会話の中で、自分に目を向けさせるためのアピールです。これをせずに、いきなり話し始めても、取引先もあなたに注目していないので、最初の部分が聞き取れないかもしれません。場合によっては、「え?何ですか?」と聞き返されてしまうことになるでしょう。本題の「質問いじり」としては、ネクタイの良さを褒めた後で、「どこに行けばそんなオシャレなネクタイが売ってるんですか?」と聞いています。「どこに売ってるんですか?」という質問は相手を喜ばせる質問です。これは、そのネクタイを買って、あなたの真似をしたいくらいに素敵だ!というふうに相手には聞こえます。最後は、おまけとして「大げさいじり」でも見せた、カブセの手法です。⑤褒めいじり褒められて嫌な人はいません。もちろん、褒め方や褒め具合にもよるでしょうが、人はだれしも褒められたい生き物です。それでも、実際に褒めるのって難しいですよね。頭では思っていても、なかなか声に出して言いにくいでしょう。そこで役立つのが、この「褒めいじり」です。【髪を切った女子社員に対して】女子社員おはよう~。あなた浅野さん、おはよう!あれ、髪切った?女子社員うん、どうかな?あなた似合ってるよ!さらに良くなったね!女子社員ありがとう♪ここで紹介する褒め方は、別に奇をてらったものではありません。相手の意外なところを褒めてあげると良いという心理術もありますが、どこが意外かなんて、そんなに分からないですよね。ここでは、もっと一般的に分かりやすい褒め方を紹介します。つまり、相手が褒めて欲しがっているところを褒めるというやり方です。この例の場合、髪を切った女子社員が、「どうかな?」とあなたに意見を聞いてきています。もし、自分で気に入っていなければ、相手に意見を求めようとしないはずです。少なくとも、「良い」と言ってほしいというのは読み取れます。しかし実は、ここで大事なのは「良い」という言葉ではありません。その前にある「さらに」という言葉なんです。実は、ここがポイントで、最初に「さらに」をつけることで、「浅野さんは、もともとそのままでも良いんだけど、髪を切ったことで、さらに良くなった」ということを表現しているわけです。さりげない言葉ですが、結構重要な役割を果たしています。ここで、「褒めいじり」に使える、とっておきの三大フレーズをお教えしましょう。それは、「さらに・過ぎ・並み」です。この3つの言葉を使って褒めてあげると、だれでも喜ぶ「褒めいじり」が簡単にできます。「さらに」は前述の通りです。「過ぎ」は度が過ぎるという意味で、「すご過ぎ」や「うま過ぎ」などと使います。また、「並み」は同レベルという意味で「プロ並み」とか「女優並み」といった使い方をします。というわけで、だれかを褒めるときには、この「さらに・過ぎ・並み」を意識して褒めてみてください。
⑥お世辞いじり純粋な「褒めいじり」とは違って、「お世辞」となると、言うことに抵抗のある人も多いと思います。それは、お世辞というものを、自分が好感を得るために、思ってもいない褒め言葉を言うという意味でとらえているからではないでしょうか。でも、実際は違います。そんな口から出まかせのお世辞だと、相手にもすぐにバレてしまいますよね。相手の気持ちになって、どう言われたら相手が喜ぶかを考え、そこに多少大げさな褒め言葉を演出するのがお世辞です。【上司のお気に入りの店で】上司ここの店はね、結構好きで利用しているんだよ。あなたそうなんですか。素敵なお店ですね!上司特に、ここの玉子焼きは絶品だよ!あなた(玉子焼きを食べて)すごくおいしいです!最近ずっとコンビニ弁当ばっかりだったんで、温かい味に癒されるんです。上司そうか、そうか。何でも注文していいよあなたいいなぁ、このお店の常連に俺もいつかなりたいなぁ~。この例では、上司は、あなたを自分のお気に入りのお店に連れて行っています。「結構好きで利用しているんだよ」という言葉を受けて、あなたは「素敵なお店ですね!」と返しています。これも、お世辞の一種です。上司のお気に入りだからと、無理してどこか良いところを探さなくても良いんです。的外れなところを褒めてしまうと、かえって逆効果になってしまいます。さらに、上司からおすすめの玉子焼きを進められたあなたは、これに対しては、「すごくおいしいです!」と相手を立てて、さらに「最近ずっとコンビニ弁当ばっかりだったんで、温かい味に癒されるんです」というように、自分を下げた発言をしています。ここは、多少大げさに言っても悪いウソではありません。もしあなたが、前の日に彼女が作ったおいしい玉子焼きを食べていたとしても、その場に彼女はいないのですから、それをバカ正直に言う必要はありませんよね。上司としては、若いあなたを自分の若いころと重ねて、まともな食生活を送ってないのでは?と思い、ここに連れてきているかもしれません。そのため、ここでは空気を読んで、そういうキャラになっておく方が良いでしょう。ただ、行き過ぎてはダメです。「最近ほとんど栄養のあるもの食べてなくて……」とか言ってしまうと、体調を過度に心配されたり、自己管理のできないだらしない奴だと思われたりする可能性があります。このように適度に自分を落とした後は、最後の仕上げとして「このお店の常連に俺もいつかなりたいなぁ~」という上司に対するあこがれをつぶやいてみてください。「お世辞いじり」をする場合のステップは、まず相手を立てる、そして自分を下げる、最後に相手にあこがれる──この3つを基本パターンとして覚えておくようにしましょう。⑦叱りいじり褒めたりヨイショしたりすることより難しいのが、この「叱りいじり」ではないでしょうか。上手な叱り方のできる人は、すごく尊敬されますし、叱られた方も嫌な気持ちになりません。【会議に遅刻してきた部下に】あなた(会議終わりに)今日、どうしたんだ?部下……すみません。寝坊しました。あなたもっと気持ちを引き締めろよ!お前の意見が会社を良くするんだから。部下はい。気を付けます。あなた今度遅刻したら、1週間、昼飯おごりだからな!部下え~。「叱りいじり」のポイントとしては、その人自身を否定するような叱り方ではなく、あくまでもその人の間違った言動だけを否定するということです。「だからお前はダメなんだ!」とか「お前は全然できないな!」などと言って、その本人の人格を否定してしまうと、相手は素直に聞き入れず、さらには逆恨みされる、なんてこともあるかもしれません。この例だと、会議を遅刻した部下に対して、「気持ちを引き締めろ!」と、その言動を注意しています。「お前の遅刻は何回目だ?」とか「何でいっつも寝坊するんだ?」とか、ネチネチと質問攻めにしても、部下の反省には全くつながらないのでやめましょう。叱るときはその言動を短く的確に!が基本です。そして、その後、必ずフォローを入れてあげましょう。例では、「お前の意見が会社を良くする」と、部下の会議での発言の必要性を言っています。これを言われると、部下は「自分も会議で必要とされているんだ!」と感じ、積極的に参加するようになるでしょう。さらに、最後には笑いも入れられるとベストです。ここでは、「今度遅刻したら、1週間、昼飯おごり」という罰を科しています。こういう冗談を最後に入れることで、部下は気持ちを切り替えてこの後の仕事をすることができます。さらに、あなた自身も部下と会うたびに、「遅刻したら……昼飯、分かってるよな?」といじってあげることができます。これを言われることで、部下も知らず知らずのうちに、気を引き締めるでしょう。なお、叱るときに注意すべきなのは、必ず一対一で叱るということです。褒めるときは、全員の前で褒めてあげた方が良いのですが、叱るときには全員の前ではない方が良いでしょう。全員の前で叱ると、周りも嫌な気持ちになりますし、叱られている本人も周りの目を意識してしまい、素直に話を聞けないことがあるからです。叱るときは一対一で、を心掛けてください。⑧キャラいじりこれは結構やっている人も多いのではないでしょうか?いじり方としては一番メジャーなものかもしれません。相手のキャラクターを理解していじるという「キャラいじり」の手法です。「理解して」というのが重要です。
【同僚が愛妻弁当を持ってきたときに】あなたコンビニに昼飯買いに行こうぜ。同僚わりぃ。今日から俺、弁当なんだわ。あなたあっ、そうか!お前結婚したんだったな。同僚そうなんだよ。あなた奥さんの弁当、見せてくれよ。同僚嫌だよ、恥ずかしいよ。あなたいいじゃん!ちょっと、みんな注目!愛妻家が愛妻弁当を持ってきたぞー。同僚うるせぇ。早くコンビニ行けよ!あなた(泣き真似で)あなた、私を捨てたのね……。この例では、毎回一緒にコンビニで弁当を買っていた同僚が結婚してしまい、愛妻弁当を持ってきたところから「キャラいじり」が始まります。「奥さんの弁当を見せろ」というあなたに対して、同僚はそれを恥ずかしいと拒否します。そこで、あなたは周りに対して「ちょっと、みんな注目!愛妻家が愛妻弁当を持ってきたぞー」と相手を愛妻家キャラにしていじります。さらに、冷たくあしらう同僚に、泣き真似で「あなた、私を捨てたのね……」と、自分が愛人キャラになって相手をいじっているわけです。このように、「キャラいじり」には2つのいじり方があります。まず1つは、本人を「○○キャラ」に仕立てていじるという方法です。自分は素のままで、相手をいじります。例で言えば、「愛妻家が愛妻弁当を持ってきたぞー」はこれに当たります。もう1つは、自分が「○○キャラ」になっていじる方法です。この例では、自分が愛人キャラになることで、相手を自然と愛妻キャラにしています。このいじり方はあまり使われないので、試してみると目立つし笑いも取れるのでおすすめです。というように、だれもがやりやすい「キャラいじり」ですが、気を付けないといけないのは、相手の気持ちを考えていじるということです。特に、相手を傷付けるようないじり方は絶対にしてはいけません。そこをきちんと踏まえた上で、正しい「キャラいじり」を行うようにしましょう。⑨皮肉いじり皮肉を言うのは、結構難しいですよね。相手との人間関係もあるでしょうし、皮肉の言葉を必要以上に受け取って逆ギレされたり、言葉通りに取られて浮かれてしまったりした場合は、全く役に立たなくなってしまいます。そこで、「皮肉いじり」をする場合は、相手自身を皮肉るのではなく、相手のレベルや状況を高く持ち上げることで皮肉とすれば良いでしょう。【時間にルーズな部下に対して】あなた今日締め切りの資料はどうした?部下まだやってません。あなたそ~んなに、忙しいの?部下いえ、今日中ってことだったので……。あなたさすが!一発OKの自信があるんだ?部下……すぐします。あなたじゃあ昼過ぎに一度見せてよ。この例では、部下が今日締め切りの資料をまだ作ってないことを受けて、あなたは「そ~んなに、忙しいの?」と皮肉っています。あなたも部下がその仕事だけしか任されていないことを知っていて、状況を分かった上での発言です。さらに、「いえ、今日中ってことだったので……」と言い訳してくる部下に対して、「さすが!一発OKの自信があるんだ?」と皮肉ります。これは、「部下というまだ未熟な存在のキミに、上司の確認を取らずに一回で完璧な資料を作れるはずがないだろ?」と状況を分かった上で言っているのです。また、この「皮肉いじり」をする上で、最も大事なことは、皮肉の言いっぱなしで終わらないということです。なぜなら、目的は相手を皮肉ることではないからです。この例の場合も、部下に気付かせることが目的ですから、皮肉った後は、具体的に指示をしてあげましょう。「じゃあ昼過ぎに一度見せてよ」発言がそれに当たります。そのことで、皮肉を言われた部下も、自分の未熟さに気付き、すぐに仕事に取りかかるようになります。ストレートに説教をされるよりも、気付きを与える皮肉の方が、部下も根に持ったり逆ギレしたりすることがないでしょう。例えば、この例を皮肉ではなく、ストレートな説教に変えると次のようになります。【時間にルーズな部下に対して】《悪い例》あなた今日締め切りの資料はどうした?部下まだやってません。あなたなにぃ、まだやってないのか?部下いえ、今日中ってことだったので……。あなたお前に一発OKの資料作れるのか?無理だろ!部下……すぐします。あなた俺も暇じゃないんだぞ!昼過ぎには持ってこいよ。いかがでしょうか?資料を作っていない部下に対して怒りの感情を持ったあなたは、それを抑えることができずに、どんどん怒りに火がついてしまっています。これだと、説教された部下もすんなりと仕事には入れないですよね。陰口の1つや2つも言いたくなります。このように、相手の欠点や弱点を遠回しに言う方法として、「皮肉いじり」は有効利用できますので、ぜひ使ってみてください。ちなみに、この「皮肉いじり」は、相手を褒めるときにも使えます。営業成績が毎月トップの同僚に対して、「たまには最下位取ってみろよ!」と言ってみたり、いつも以上にオシャレをしている女子社員に、「何?今日すごくオシャレだね!もしかして、俺を口説くつもり??」などと言ってみたり。まぁ、でもこれらは言った後、自分自身が少しみじめな気持ちになるかもしれませんが……。
⑩読心術いじり本来の意味での読心術とは、相手の顔の表情やしぐさなどから、心の中を読み取る術のことを言います。しかし、この「読心術いじり」は、もっと簡単に、相手が思っていそうなことをズバズバと言ってあげる方法を指しています。正直、当たっていても外れていても、大して問題はありません。あなたの発言によって、相手の心が揺さぶられたら、「読心術いじり」は成功なんです。【部下に仕事を頼むとき】あなた佐藤くん、ちょっと。部下何ですか?あなた新規事業の企画書を作ってほしいんだけど?部下(少し嫌そうな表情で)企画書ですか?あなたあれ?何か、面倒くせ~って顔してない??部下(とまどいの表情で)え?い、いやしてないですよ!あなた了解!じゃあ頼むよ。この例では、あなたが「企画書を作ってほしい」と頼んだとき、部下が少し嫌そうな表情をしたのを見逃さずに、正直にいじっています。このときも言い方はすごく大事で、部下のその表情を見て上司のあなたがイラっときて「お前、今面倒くさいって顔しただろ!」と目くじらを立ててはいけません。目的は部下を説教することではなく、部下に仕事を依頼することなので、いじるときは笑顔でツッコミを入れてあげましょう。「あれ?何か、面倒くせ~って顔してない??」と。少しでもそう思っていた部下は、心を見透かされてドキッとしますが、大抵の人が「え?い、いやしてないですよ!」と反論してきます。実はこれが効果的なんです。本当は、少し面倒だと思っていたにもかかわらず、結果的に、自分でそうではないと言い切らせたんです。いきなり仕事を振られて、やや後ろ向きだった部下の気持ちが、少しは前向きになります。このように、「読心術いじり」は、相手が思っていそうなことをあえて口に出すという方法ですが、これも「皮肉いじり」同様、必ずしもマイナスな場合だけに使えるものではありません。相手が喜んでいるとき、達成感を感じているときなどにも、「読心術いじり」は使えるんです。【部下に頼んだ仕事が成功したとき】あなた佐藤くん、ちょっと。部下はい。あなた新規事業の企画書、通ったよ!よく頑張ったな。部下(うれしそうな表情で)本当ですか?ありがとうございます!あなたあれ?何か、おいしいビールが飲みたいって顔だな!部下(余裕のある表情で)いいですね~。あなたよし、今日あたり飲みに行くか?この場合は、先ほど頼んだ企画書が好評で、新規事業を進めることになったと報告をされた部下の、明らかにうれしそうな表情を見てのひとことです。ここでは、「おいしいビールが飲みたいって顔」と表現していますが、対象となる相手によって使い分けてください。何を言えば、一番相手に刺さるのか?新婚の部下なら、「早く、奥さんと祝いたいって顔だな!」といじる方が良いかもしれませんし、女性の部下なら「充実してるって感じで、良い顔だな!」と顔からにじみ出ている充実感をストレートにいじる方が良いかもしれません。部下の調子を乗せる効果がある「読心術いじり」、ぜひお試しください。
いじり術を使いこなそう!この章では、10個の「いじり術」について紹介させていただきました。これらの「いじり術」を使いこなし、あなたにいじり上手になっていただきたいので、ここで軽くおさらいをしておきましょう。①「そのまんまいじり」は、思ったことをそのまんま口にするだけというシンプルな手法ですが、それも「いじり」の一種です。相手と接触することが「いじり」につながるというわけです。ただ、この場合、マイナスな印象をそのまんま口に出しては、相手を傷付ける恐れがありますので、気を付けてください。②「大げさいじり」は、ウソと分かるくらい極端な表現でいじりましょう。本気と取られて喧嘩になったり、相手がうぬぼれてしまっては意味がありません。どんな表現をすれば、大げさで面白くなるのかをノートに書いておくと良いでしょう。③「例えいじり」は、例えを使って間接的にいじってあげる方法です。直接的な言い方よりも、笑いに変えやすく便利なのでおすすめです。芸人さんはいろいろな例えを出すのが上手いので、バラエティ番組をチェックして、使えそうな例えはノートに書いておきましょう。④「質問いじり」は、相手をリサーチし、変化に気付くことから生まれます。その変化に気付いて上手く質問をしてあげることで、相手はあなたに好意を抱くでしょう。常日頃から、相手をよく観察しておくことが大切です。⑤「褒めいじり」は、奇をてらう必要はありません。相手が褒めてほしがっているところを褒めてあげれば良いんです。「さらに・過ぎ・並み」を使って褒めてあげましょう。⑥「お世辞いじり」は、まずは相手を立てる、そして自分を下げる、最後に相手にあこがれる──この3つのパターンを基本においていじってください。あと、思ってもいないお世辞を、無理して言うのは止めましょう。⑦「叱りいじり」は、その人自身を否定するのではなく、相手の言動や状況に対して叱ってあげてください。叱るときは一対一で。最後に必ずフォローを入れてあげるのも忘れずに。⑧「キャラいじり」は、2つのいじり方を紹介しました。1つは、相手を何かキャラに見立てていじる方法。もう1つは、自分が何かキャラになっていじる方法です。いずれも、相手の気持ちに立ってキャラ設定をする必要があります。⑨「皮肉いじり」は、皮肉を言うことが目的ではありません。皮肉を言うことで、相手に何かを気付かせなければいけません。そのため、皮肉いじりの後には相手に対して、具体的な指示をしてあげることが必要になってきます。⑩「読心術いじり」は、相手の表情やしぐさから、相手が思っていそうなことを口に出すいじり方です。当たっていなくても、相手の心を揺さぶることができれば良いのです。以上のように本書で紹介した「いじり術」を、ぜひビジネスの場で試してみてください。その際、1つのテクニックだけを多用せずに、さまざまなテクニックを使えるようにした方が便利です。いじり術を使いこなして、頼れる上司になりましょう!
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