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第3章この「6ポイント」を響かせると、自在に声が操れる!

性格や生き方で、声の響く場所は人それぞれ──フースラー理論この章では、心地よくほぐれた体をもとに、好感度の高い話し方の秘密を学んでいきましょう。魅力的な「いい声」を出すために必ず知っておきたいこと、それは、「声を発したとき、体のどこが響いているか?」ということ。発声法の大家であるフレデリック・フースラーは、体と声の関わりに着目し、体のなかに声の響く場所が6つあることを見出しました。声を発しているとき、自分の体のすべてが振動しますが、フースラーは、そのなかでも重要な6つの場所を示しました。まずはこの6つの場所と、そこを響かせた声の特徴を挙げてみましょう。●フースラーが提唱した6つのポジション①上唇のつけ根……聞きとりやすい声②胸……明るく温かい声③鼻……確信のある、テキパキした歯切れのいい声④頭頂……天に響く声。いわゆる裏声(ファルセット)⑤額……フワフワした、おっとりした声⑥首の後ろ……信頼感のある声たとえば、心のこもった温かな声が出せる人は、「胸」のあたりがよく響きます。鼻が響く人、額が響く人、鼻と頭頂を響かせるのが得意な人、首の後ろを響かせるのが上手な人……いろいろなタイプの人がいます。どの部分がよく響くか(響かないのか)は、生まれ持った性格やそれまでの生き方などによって一人ひとり異なり、それが個性をつくりだしています。全身の過緊張を手放し、解放感が広がってくると、この6つの響きがバランスよく調和し、人を魅了する、心地よい声に変わっていきます。ですから、「体のどこが響いているか?」に注意を向ければ、自分の声をどう改善すればいいか、どの部分をのばしていくと魅力的な話し方ができるようになるか、わかってきます。私たちの体には声の響く「6つの場所」がある!フースラーは、「人は誰もが卓越した歌手であり、歌うための肉体的な資質を持っている」といった言葉を残しています。歌が下手な人など本当は存在しない、本来、どんな人も自在に発声でき、感動的な歌が歌えると言っています。第1章で「赤ちゃんの声こそが、もっとも緊張から解放された自然な声である」と述べたように、私たちはもともとよく響く豊かな声を持って生まれてきました。

成長していく過程で余計なクセや、緊張が染みついてしまい、声にもその影響が出てしまっているだけであり、いい声ははじめから備わっていたのです。これまでお伝えしてきた方法で体の過緊張を手放し、少しずつ声の響きが感じられるようになってきたら、次のステップとして、6つの場所を一つひとつ響かせてみましょう。日常会話であれば、上唇のつけ根・胸・鼻……この3つの場所のハーモニーによって、コミュニケーションに欠かせない「明るさ」「温かさ」「元気」「自信」といったエッセンスが、話し方に反映されるようになります。ただし①の「上唇のつけ根」は意識して練習する必要はありません。過剰に使わないかぎりほとんどの人がうまく使えているからです。好印象を与える話し方のためには、②の「胸」と③の「鼻」を響かせることに重点を置きましょう。この3カ所の響きがそろうと、豊かで芯のある「いい声」が出るようになり、話すほどに元気になっていくでしょう。「温かい声」と「自信のある声」は、響く場所が違うまず、「胸」を響かせることの大切さについてお教えしましょう。「胸」を響かせる話し方は、心と心が通じ合う、文字通りハートフルなコミュニケーションに欠かすことができません。感動することがあると胸がジーンとしますし、ワクワクすることがあると胸が高鳴ります。それは心臓の鼓動とも重なりあい、私たちにときめきや感情の高揚をもたらします。胸の響きが感情と重なりあうことは体験的にわかると思いますが、日常の忙しさに追われてしまうと、こうした感情を確かめる余裕がなくなり、胸の一帯も緊張で硬直化していきます。胸の響きが失われると、温かみのある声が出せなくなりますから、心の通ったコミュニケーションがしづらくなります。その結果、対人関係はギスギスしはじめます。ジーンとしたりワクワクしたりする機会が減る分、寂しさが増し、孤独を感じやすくなるでしょう。逆に、胸の響きをとりもどしていくと、寂しさは解消されていきます。温かな気持ち(ハート)も自然と蘇ってくるのです。次に「鼻」の響きですが、鼻の響きはなぜ、自信につながるのでしょうか?「鼻高々」「鼻息が荒い」「鼻につく」という言葉があるように、古来より人は、鼻は自信やプライドの象徴であると感じてきました。鼻が響くということは、鼻の内側(鼻腔)が振動し、その響きが声に反映されるということ。声がよく通る人というのは、この鼻腔の一帯が豊かに響いているのです。鼻がよく通るようになると、次第に声も通るようになり、人前で明るくハキハキと話ができるようになっていきます。自信を持ちたい人は、何よりも鼻を響かせることが大切なのです。「胸の声」と「鼻の声」、あなたはどちらのタイプ?たとえば、俳優の竹中直人さんは小柄なのに声量があり、歌も上手。胸だけでなく、鼻もしっかり響かせているため、温かさと自信がいい具合に調和しているのが感じられます。また、俳優の竹野内豊さんも物静かな印象ですが、胸や鼻が響いているため、声に信頼感のある優しい人柄が現れています。天海祐希さん、相武紗季さんも胸と鼻を上手に響かせ、明るく、温かな話し方をするでしょう。胸からの振動は相手に向かってじんわりと伝わっていきます。鼻の振動はそれよりももっと強く、ストレートに伝わります。そのため、「胸」を響かせると言葉が優しく温和に変わり、「鼻」を響かせると意志の強い、明るい声に変わっていきます。人を魅了する「いい声」を出したいならば、次図を参考に、まず自分自身が、「胸」と「鼻」のどちらに近いタイプかをチェックしてください。そして、自分に欠けているほうを優先的に響かせていくと、コミュニケーション力がアップしていきます。

「口先だけ」でしゃべると、会話が単調になり、疲れやすくなるこれまで「胸」と「鼻」を響かせることの大切さについてお伝えしてきましたが、声に悩んでいる人の多くは、この2つの場所を閉じたまま、口先だけの平坦な声を使ってしゃべっています。不満を感じたときに「エ、ヤダ」とあげる、あの声です。この抑揚のない、少し体をこわばらせた、平坦な感じの声が、①の「上唇のつけ根」だけを使ってしゃべる声の典型です。文字通り、「口先だけの声」と言ってもいいかもしれません。井戸端会議のお母さんの声も、居酒屋のサラリーマンの声も、不満を言い合うことが増えてくると体が硬くなり、口先ばかりが動きはじめ、呼吸が浅くなり、心の温かさも、自信も失われていきます。日ごろから口先しか使えていない人は、声量だけがあって響きのない、どこか騒々しい話し方になります。無理をして声を出そうとしているため、声が枯れやすいところもあるでしょう。これが、俗に言う「のど声」です。長時間しゃべると疲れてしまう、音域が狭いため、カラオケに行っても難しい曲が歌えないといった悩みを抱えている人も、こうした「のど声」が原因と言えます。体の響きを意識せずに声を出しているため、口先だけの話し方になってしまい、おしゃべりをすることでストレスを発散しているつもりでも、スッキリはしません。長くしゃべると、どっと疲れることもあるでしょう。そんな会話を続けていると不満を抱えやすくなり、日々、グチばかり言うようになってしまいます。日常の不満をためないためには、自分の感情をもっと豊かに表現し、体のなかに声の響きをもっと増やす必要があります。そうすれば、話すほどに体が響きはじめ、まわりの人と共鳴していきます。いろいろな場で楽しく、豊かな気分になれるときというのは、こうした声のよく響く人が必ず同席しているものです。豊かに声を響かせることで、気分がよくなり、気持ちに余裕が出てきてユーモア感覚が生まれてきます。コミュニケーションもラクになり、よりハッピーな人間関係が築いていけるのです。ハスキーな「味のある声」はのどに負荷をかけてしまう誤解しないでほしいのは、私は「のど声」が絶対にダメだと言っているわけではないことです。のど声でも、どこか味わいのある話し方をする人はいます。音楽で言えば、黒人のブルースなどはその典型でしょう。声がしわがれてしまっている歌い手が多いのは、アルコールやタバコへの依存が直接の原因かもしれません。しかし、彼らのしわがれた歌声には悲しみや孤独感が現れていて、聞く者は引きこまれます。社会的な差別と戦い、そのなかで希望を見出そうとしてきた彼らの生き方が、声ににじみ出ているためでしょう。悲しくつらい声ですが、それが人の心を打つこともあるのです。日本人でも、こうした個性的な声を使った歌い方で魅力を発揮し、人気を集めている歌手は少なくありません。忌野清志郎さんや桑田佳祐さんなどがその代表です。これは、音楽に限った話ではありません。たとえば、卸売り市場などに行くと「安いよ!安いよ~!!」と威勢のいいかけ声が聞こえてきますが、そこではよく通る声に交じって、しわがれた声が目立つでしょう。声をつねに張り上げる特殊な環境で仕事をするうちに、いつの間にか声がしわがれていったのだと思います。こうした声にも人生の苦労がにじみ出ていて、味わいがありますよね。歌を歌う場合、それが強い個性になって現れ、大きな魅力を生み出すこともあるでしょう。ただ、のどに負荷をかけるリスクは、どうしてもあります。味のある声、個性の強い声に憧れて真似するよりも、ここではフースラーが言う「肉体的資質」を磨いていき、心地よい声が自然と出てくる体をつくっていくことを心がけましょう。自分にも他人にも優しくなれて、ほっと癒やされる声の秘密──ヒントは「胸」優しいということは、他者に対してだけではなく、自分に対しても優しくなることだと私は思っています。自分の体に目を向け、胸の響きを大事にしていくと、気持ちが自然と優しくなり、人にも優しくふるまえるようになるからです。人に優しくできない、温かい声がかけられないと感じている人は、まず胸に声を響かせることを意識していきましょう。胸が響いていないということは、体が緊張し、胸の一帯が硬くこわばってしまっているということです。

これでは優しくなろうとしても無理があります。逆に胸が響いていれば、自然と優しさがやってきます。人のために何かしてあげようという、心と体のゆとりも生まれてくるでしょう。イライラしていて、つい、人につらく当たってしまったら、すぐに胸に手を当てるようにしてください。たったこれだけでも、気持ちが落ち着き、自分がとりもどせます。胸の響きをとりもどすきっかけにもなるでしょう。電車に乗っているとき、街のなかを歩いているとき、窓にふっと映る自分の表情を観察してみてください。眉間にしわをよせ、口がへの字になっている自分に気づいたら、そのつど胸に手を当てて、微笑んでみましょう。こうした小さな積み重ねのなかに、より自分らしく、人に好かれる温かな声を手に入れるための秘訣が隠されています。胸の響きを高めるエクササイズは、第4章で詳しく解説していきます。自信を持って、「言うべきことを言える」ようになる秘訣──ヒントは「鼻」鼻を豊かに響かせることは、日本人が不得手にしている面があります。欧米人は議論で、ときに鼻につくくらい自信たっぷりに話をしているでしょう。彼らが自己主張するコミュニケーション能力に長けているのは、鼻をうまく響かせているからだと言えます。実際、鼻がつまっていると、鼻がうまく響かず、自信のない弱々しい印象を与えてしまいます。日本語には「鼻につく」「鼻高々」「鼻をへし折る」などのように自信やプライドに関する言葉が多くあります。しかし、どれもあまりいいニュアンスとは言えません。日本には、「物言えば唇寒し」といった言葉があるように、あからさまに自己主張することをよしとしない文化があり、議論のたぐいはあまり歓迎されてこなかった面があります。相手を論破するよりも「波風を立てない」「事を荒立てない」ことを大事にしてきた、それは一つの美風とも言えますが、その分、自分の思いを強く主張するような話し方は抑圧されてきたことになります。これは、あまりいきすぎると決してよいこととは言えません。「言うべきことを言う」。これもまた、私たちに必要な能力だからです。「議論はどうも苦手だ」と決めつけてしまわず、ちゃんと主張すべきときには、鼻を響かせることを意識していきましょう。鼻がよく響くようになれば、会話に意志が生まれます。内側から静かに自信が湧いてくることで、話し方に説得力が出てくるでしょう。それは、他者と共感する感覚を自然と高めてくれるはずです。鼻の響きを高めるエクササイズについては、第5章で詳しく解説していきます。歌で人を感動させ、スケール感やカリスマ性を身につける秘訣──ヒントは「頭頂」上唇のつけ根、胸、鼻と声の響く場所をたどってきました。次は④「頭頂」の響きの特徴について解説していきましょう。「頭頂」の響きは、「天に突き抜ける美声」の源でもあり、声楽をやっている人にとっては、とても大事な場所といえます。たとえば、5オクターブあるという音域を自在に操るマライア・キャリーさんのような歌手は、頭頂をフルに響かせることで大衆を魅了するスケール感を発揮し、世界の歌姫と呼ばれる存在になりました。日本人の歌手でも、美空ひばりさん、小田和正さん、吉田美和さん(DREAMSCOMETRUE)、宇多田ヒカルさん、平井堅さん、絢香さん、JUJUさんなど、この頭頂の響きを手に入れることで、高音から低音まで自在に歌える能力を発揮しています。

天に突き抜ける美声というと、ソプラノの高い音がまず思い浮かぶかもしれませんが、男性歌手であっても、頭頂を響かせると表現の幅が広がり、声に特有のスケール感が出てきます。伝説のシンガーとして語り継がれる尾崎豊さんの歌声も、頭頂を響かせるテクニックが随所にあり、とても魅力的です。それは人に教わって身につけたものではなく、やむにやまれぬ思いを発露するなかで自然と生まれた声であり、その点で稀有な才能と言えるでしょう。日常で使う声ではありませんが、声の響きの大事なバリエーションとして音楽を聴く際に意識するといいでしょう。テキパキ指示の出せる統率力や知性をアピールする秘訣──ヒントは「眉間」歌をうまく歌うことに重きを置いたフースラー発声学では、「額」の響きを⑤としてとり上げています。「額」の響きは、頭頂の響きのようなスケール感はありませんが、場所が近いこともあり、ここを響かせるとどこかフワッとやわらかく、優しくおっとりとした声になります。しかし本書においては、歌をうまく歌うのが目的ではなく、日常会話をスムーズにいかせることが目的なので、私は「眉間」の響きに注目しています。「眉間」を響かせた声は、テキパキとした声です。慌ただしい場面で「あれをしなさい」「これをしなさい」と的確な指示のできる人の声のイメージです。眉間がよく響く人には頭の回転が速いタイプが多く、ときに声に圧力が加わるため、③の「鼻」を響かせる声以上に押しの強いところもあります。口から鼻、眉間と上がっていくほど声のトーンが上がって、声の響きが強くなってくるため、徐々に圧力が出てくるのです。顔のラインで言えば眉間の上にさらに頭頂があり、ここまで抜けると声に透明感が出てきます。そして眉間の響きは場所が鼻に近いため、意志の強さが出てきます。そのため、響きすぎるとキンキン声になることもあります。眉間がよく響く声と言えば、「ジャパネットたかた」の創業者である高田明さんのような声が真っ先に思い浮かびます。高田さんの場合、①の上唇のつけ根の声も同時に使っているため、ハキハキとした押しの強い声にいい意味で雑味が混ざり、それが人の気を惹く魅力的なしゃべり方につながっているのでしょう。要は、誰よりも眉間がよく響く声が出せたからこそ多くの人を惹きつけ、あれだけの成功が収められたのです。また、タレントの出川哲朗さんも、眉間を響かせた、耳に残る声を駆使することで成功したタイプの一人と言えます。出川さんの場合、鼻や口などほかの場所の響きも強いため、あまり高い声にはなりませんが、「オレが、オレが……」という押しの強さを前面に押し出したキャラクターで人気者になりました。こうした眉間の響きは、強い意志と深い関わりがあるため、ヨーガでは眉間は「第3の目」と呼ばれ、直観や知性を司る場所と見なされてきました。実際、眉間が響く人には知性派が多く、議論が上手な人のなかには、額からビームが出ているように響きが放射されています。ただ、③の「鼻」の声と同様、あまり過剰になると相手に威圧感を与えてしまいます。もし自分にそんなところがあったら、②の「胸」を響かせることを心がけてください。そうすれば、相手のためを思って言っていることが伝わり、反発心を抱かれることが減るでしょう。親分肌のどっしりした「信頼感のある声」の秘密──ヒントは「首」ここまで顔のラインを少しずつたどってきましたが、頭頂を通りすぎて、後頭部を下がっていくと首の後ろにたどり着きます。声の響くポイントは、体の後ろ側にもあるのです。それが⑥の「首の後ろ」を響かせる声です。どんな特徴があるでしょうか?正確には、首の骨の一番下(第7頸椎)が響きます。この場所は声帯のちょうど後ろ側にあります。それは、文字通り「背後で見守る」優しさになって現れます。優しさと言っても、声としては低く、どっしりと重みがあり、強い芯があります。「胸」のように優しく、やわらかい響きではありません。その役割はあくまでも裏方のもので、組織のなかで言うと「縁の下の力持ち」的な、頼りがいのあるタイプと考えていいでしょう。ドラマですと、自分が主役になるより、その主役を支える重鎮的な演技のできるタイプです。めっきり少なくなりましたが、江守徹さんや中尾彬さん、あるいは、仲代達矢さんが近いかもしれません。また、女優の岩下志麻さんは胸を響かせるだけでなく、首の後ろを響かせることにも長けています。任俠映画のドスの効いたセリフで人気を集めたのも、首の後ろの響きをうまく利用したからだと思います。あるいは、いつもは寡黙なのに、ここ一番で一喝できる威厳のある「お父さん」のイメージも重なります。「一家の大黒柱」という言葉があるように、昔の男性は、首の後ろを響かせることで一家をまとめていたのでしょう。私たちは自己主張しようとするあまり、体もつい前のめりになってしまいますが、首の後ろが響かせられるようになると前後のバランスがとれ、声に落ち着きが生まれ、高域も広がります。

こうした「首の後ろ」が響く上司が背後で見守っていて、「がんばれよ」と声をかけてくれたら、それだけで勇気づけられます。胸が響いていないとドスが効きすぎて怖い印象が強くなってしまいますが、根は優しく、思いやりがあります。その意味では、「首の後ろ」の響きは、優しいけれど強い、意志のある声に欠かせないものなのです。「胸」と「鼻」が響くと、コミュニケーション力がアップ!「口」「鼻」「胸」「頭頂」「眉間」「首の後ろ」。この6カ所の響きは、それぞれが調和することで、その人特有の印象、活力、能力、心遣いなどにつながっていきます。ただ、実際のコミュニケーションでは、このうちの3つの声(①上唇のつけ根、②胸、③鼻)の響きを大切にするといいでしょう。3つの声の関わりを、いったん整理してみましょう。①の上唇のつけ根の声は、あまりそればかりに頼っていると、何か嫌なことがあるたびに「エ」という不満ばかり出てきます。体の響きが足りないと、そんな言葉しか出てこなくなるわけですが、ここに②の胸の響きが加わると、心に温かさが湧いてきて、不満にあまりふりまわされなくなります。磨いていけば、「ありがとう」という感謝の言葉が自然と出てくるようになるでしょう。誰かを叱るとき、③の「鼻」だけ響かせるとうるさく聞こえるだけで、相手に反発心が生まれます。ここに②の「胸」も同時に響かせることで思いやりや落ち着きが加わり、叱る言葉にも説得力が出てきます。口先だけでしゃべっていた人が「胸」と「鼻」を響かせるようになれば、それだけでコミュニケーション力がアップし、人間関係が徐々に好転していくことになります。思うようにコミュニケーションができていないと感じたら、この3つの声が調和しているかを意識してみてください。何が欠け、何が過剰になっているかを客観的に見るだけでも、気持ちが落ち着きやすくなります。「6つの特徴」を知れば、相手の気持ちも性格もよくわかる!6つの声の特徴を知っていると、人を深く理解し、優しく接する際の目安となるでしょう。声にはいろいろなタイプがあり、特徴があり、そこにはその人の生きざまが凝縮されています。相手のことがより深く理解できるようになります。魅力があると感じられる人を見て、なぜこの人は多くの人の共感が得られるのか?どんな長所があるのか?声をよりどころにしていくと、その人の魅力や性格、生き方、抱えている問題もわかり、人間関係をよりよい方向に導くこともできるでしょう。

もちろん、それは自己分析にも活用できます。自分自身がどの声をベースにしているか観察すれば、「相手をうまくリードできなかったのは、鼻の響きが足りなかったからだ」とか、「周囲にうるさがられるのは上唇のつけ根や鼻ばかり響かせているからだ」と、自分なりの理由を見つけていけるはずだからです。人間関係が思うようにいかず、悩んでいる理由は、じつは何気ない話し方のなかに隠されているのです。こうした観察眼を持つことで心の余裕も生まれ、そのときの自分の心の状態も知ることができるようになります。私自身、自分の声の状態がいまの自分を表す証のように感じています。声を知ることは人を知り、己を知ることにもつながります。人に優しくなれ、よりよい人生を歩んでいくカギでもあります。次章では、胸を響かせる具体的な方法について詳しく解説していきます。

column美輪明宏さんの歌唱の秘密80歳に迫る年齢でも衰えを見せず、力強く歌を歌い続ける美輪明宏さん。その歌声には、最近の流行歌やヒット曲にはない、どこか異質な響きが感じられるかもしれません。紅白歌合戦で熱唱した『ヨイトマケの唄』の迫力に驚いた人もいると思いますが、そこには表現しがたい畏敬の念にも似た、重厚さがあったはずです。美輪さんの声に見られる強烈な響きは、能や狂言など、日本の古典芸能に特有な「異界に届く声」の影響があるでしょう。頭頂の声が「天につながる声」であるならば、こちらは大地につながる、さらには地の奥底につながっていくイメージでしょうか。フースラーの6つの響きにも含まれてはいない、西洋音楽の体系にはない概念の声の出し方であり、私たち日本人が大事にしてきた響きであることは知っておきたいところです。体の場所で言えば、もっとも響くのはお腹の一帯です。「腹が据わる」という言葉があるように、使いこなせるようになると深い落ち着きやリーダーシップに欠かせない器の大きさが出てくるでしょう(第6章参照)。それは歌を歌うときはもちろん、ここ一番の大事な場面でも必要な力です。いまの時代を生きる私たちは、こうした「腹」の感覚をあまり意識せず、「頭」で考えて判断することを優先してしまいます。しかし、世のなかで起こるのは、頭で処理できることばかりではありません。体を解放させ、声の響きをとりもどしていくことは、自分自身の生き方を磨き、器を大きくすることと、根底でつながっています。全身の響きを大事にすることが、その人の魅力をつくる土台になるのです。

 

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