第2章「声の高さ&スピード」を操れば、面白いように伝わる!
★あなたの理想の話し方は?魚住式メソッド「声」「話し方」「会話のコツ」のうち、第1章では「声」についてお話ししました。本章では「声の高さ&話すスピード」と、「声」と「話し方」の両方に注目していきます。まず、自分にとっての「理想の話し方」とは何か、「目標設定」をしましょう。「低めのよく通る声で落ち着いて話したい」「明るい声でハキハキとクールに」などなど、誰にも「こんな話し方をしたい」という理想があるはずです。それを具体的に煮詰めていくのです。その理想は誰の声に近いか、誰の話し方に近いか、考えてみてください。身近な人でも著名人でもいいので、とりあえずその人をロールモデルにしましょう。「この声や話し方が好き。こうなりたい!」と願う気持ちがモチベーションのアップには欠かせません。そしてこの話し方のトレーニングとして、魚住式メソッドではまず「音の高さ&スピード」をコントロールすることで基本的なスキルを身につけ、次章で紹介する「朗読」でそれをバージョンアップさせます。このステップを終えると、「人を感動させる話し方」が自然にできているはずです。★「話す」ことは相手にエネルギーを与えること★「話す」ことは相手にエネルギーを与えることたとえば1時間、人の話を聞く機会があるとします。話によっては1時間が長くて持て余し気味になってしまうこともあれば、思わず引き込まれて1時間があっという間に感じることもあります。同じ1時間でも聞かせる話術とそうでない話術がある。それこそが「話し方のスキル」の差です。話すことは「口からエネルギーを放出して、人に届けること」だと、私は思っています。エネルギーは、常に最大出力で出せばいいというものではなく、聴衆の状態や時間、話の内容などによって「調整」していく必要があります。その調整が上手にできる人が、「聞かせる話」のできる人ともいえます。たとえば大勢の前で話すとき、とくに最初は高いトーンでテンション高く話すと、みんながワッと興味をもって聞いてくれます。そして「スピード」が速ければ速いほどエネルギーが高く、聞く相手のテンションを高くし、時には緊張させます。でも、それがずっと続くと、みんな食傷気味になるというか、圧倒されすぎて、だんだんイライラしてきてしまいます。それを感じたらテンション、トーンを少し下げます。それもしばらくすると、ちょっとダレてきてしまい、なかには眠そうな人も出てきます。そうしたら今度はまたトーン、テンションを上げるのです。ダレて眠そうにしていた人もハッと集中してくれます。そうやって聞く人をコントロールすることで「聞かせる」スピーチになるのです。★人前で話すときは「高い声」で注目を集める★人前で話すときは「高い声」で注目を集める高い音、高いテンションは活気にあふれ、緊張感が高まるので、人の注意を集める効果があります。その一方で、低い音、低いテンションは安心感、ゆったり感を与えます。高いテンションばかりだと相手はイライラして疲れてしまいますし、低いテンションだけだとダレて話を聞いてもらえなかったりします。要はこの使い分けが大事なのです。スピーチやプレゼンでは人の注目を集める必要があるので、基本的には高いエネルギーでいいのですが、聴衆の様子を見て低いエネルギーに切り替えることも大事です。私も仕事のときは、高さとスピードを使い分けて話します。先日、あるパーティで200人ぐらいの方の前でスピーチをする機会がありました。でもそれはまさに宴たけなわという感じで、みなさんお酒や食べ物を召し上がって歓談している最中だったんです。この中で普通に低い声で話しはじめても、誰も聞いてくれないと思いました。そこで音をグッと上げて、ハイテンションの高い声で自己紹介を始めたんです。作戦は成功で、みなさんの注目を一気に集めることができました。そこで少し低く、落ち着いた声で自分の近況や、スピーチレッスンの話などをしました。最後はまた高い声で締めました。みなさんに盛大に拍手をしていただいて、スピーチが終わったあと、なんと参加者200人全員が名刺をくださいました。「お話がとてもよかったです」「スピーチレッスンは私も受けられますか?」などなど、みなさんが私の話に興味を持っていろいろ話しかけてくださったんです。一般的には、スピーチの場合は高く始めて、中は低くゆっくりめに話し、最後にまた高く、ハイテンションで締めるとうまく行くことが多いですね。★電話のときは「低い声」で相手の緊張を和らげる★電話のときは「低い声」で相手の緊張を和らげる
一方で、エネルギーを抑えることが必要な状況もあります。たとえば一対一の電話では、声が高すぎると、エネルギー量が多すぎて相手が疲れてしまいます。とくに、電話の場合は意識して声を下げてエネルギー量を減らすことが大切です。ところが声が低いと、今度は暗い印象になりがちなので、それを防ぐために、電話中は口角をきちんと上げて、口元を緊張させておくことが大切です。もちろん相手には見えませんが、口角を上げて話すことできちんとした感じが出て印象がよくなり、相手も落ち着いて聞いてくれます。▼タモリさんに学ぶ「相手が和む話し方」テレビのバラエティ番組ではタレントさんや芸人さんはかなり高いエネルギーで話すことが多いのですが、その中にあって一貫して「低いエネルギー」で存在感を示している人がいます。それはタモリさんです。伝説の番組『笑っていいとも!』の司会を32年間続けたタモリさん。タモリさんといえばボソボソしゃべる印象があるのではないでしょうか。魚住式メソッドでいうと、タモリさんの話し方は出力エネルギーが少ないんです。しかしそれこそが受け取る側には安心でき、和む要素でもあるのです。それが『笑っていいとも!』が長期間続いた理由のひとつではないかと思います。ランチタイムで一息つきたい視聴者の気持ちに沿う話し方だったのです。また、『笑っていいとも!』ではテレフォンショッキングという、ゲストを迎えたトークコーナーが人気でした。タレントさんはみなさんそれぞれ、大変に個性的です。それをタモリさんはあの低いエネルギーの話し方で絶妙に引き立てていたのだと思います。★話し方のイメージは「声の高さ×スピード」で決まる★話し方のイメージは「声の高さ×スピード」で決まるでは、話すときのエネルギーは具体的にはどうコントロールすればいいのでしょうか。それこそが「声の高さ×話すスピード」なのです。この組み合わせを変えるだけで、エネルギーの出力が変わり、相手に与える印象はガラリと変わります。「声の高さ」と「話すスピード」を変えることによって、イメージがどう変わるか見ていきましょう。❶高い声×ゆっくり高い声でゆっくりと話す方は、大らかでほんわかしたイメージ。母性的でやさしく包んでくれるような安心感があります。❷高い声×速く同じように高い声でもスピーディな話し方だと、元気で明るくエネルギッシュなイメージになります。男女とも若いイメージになります。❸低い声×ゆっくり低い声でゆっくり話すのは落ち着いた癒やし系のイメージ。父性を感じさせ、悩み事の相談にも乗ってもらえそう。❹低い声×速く明晰で信頼感のあるクールなイメージ。ビジネスシーンに向きます。仕事ができる人には実際にこのタイプが多いです。あなたはこの4つのうち、どのタイプでしょうか。そしてあなたの理想の話し方はどれですか?
現状と理想が把握できたら、「現状の自分の話し方→あなたの理想の話し方」へとシフトしていきましょう。★上達への第一歩は「マネをする」こと。話し方も同じ!★上達への第一歩は「マネをする」こと。話し方も同じ!たとえば現状は「低い×速い」だけれど、じつは「高い×速い」が理想だという場合は、主に声を高くすることを意識すればいいわけです。その際、本章1節で設定したロールモデルの「マネ」をしてしまいましょう。私は高校時代、他校の先輩の声や話し方に憧れていました。その人はスピーチコンテスト入賞の常連でした。同じ学校の放送部の1年上の先輩がいて、その人も全国コンテストに入賞するぐらいの実力者でしたが、私が惹かれたのは他校の先輩のほうでした。その人の話し方が自分の理想のイメージにしっくりきたからだと思います。同じ学校の先輩の声は高くてゆっくりなのに対し、私が惹かれた他校の先輩は低めで速い話し方だったのです。その人をお手本に、徹底的にマネをしたことで、自分のアナウンス技術を磨くことができました。あらゆる分野でいえることかもしれませんが、上達への第一歩は「マネをする」こと。そう、モノマネから始まります。声の高さや話すスピードはもちろんのこと、間合いやクセもまずは徹底的にマネしてみます。これを録音して聞いてみる。自分が聞いた印象と違う部分を探しては、修正を続けるのです。完璧に近づいてくると、それは自分自身が満足できるだけではなく、多くの人が聞きやすい話し方になっているはず。私自身もそうやって、聞きやすい声や話し方を少しずつ見つけていきました。スマートフォンでも手軽に録音ができる時代、ラジオでもテレビでも、アニメの声でも、もちろん知り合いのおしゃべりでも、気に入った声や話し方に出合ったら録音して、どこに惹かれるかを注意深く考えながら聞いてみてください。そのあとで、徹底的にモノマネしてみましょう。私も散々やりましたが、それはとても夢中になれる作業でした。やっているうちに、どうしても難しくてマネできない声があったり、逆に最初は「マネしづらそう」と思っていても、意外としっくりと来る声もあったりすると思います。いろいろと試してみると楽しいですよ。マネするということは、自分を客観的にとらえなければできないこと。他人が聞いてどう受け止めてくれるかということを考えずには先へ進むことができません。モノマネで培われる客観性もまた、声や話し方の上達にとても役に立つのです。実際にどうマネするかは図表にしたので、次ページをご覧ください。
★低い声でも明るい印象をもたれるには★低い声でも明るい印象をもたれるには「声が低くて、暗い人に思われる」という悩みを聞きます。でも、声の高さを変えなくても、明るい印象に変えることは可能です。まずは、いつものとおりに(とはいえ鼻先を振動させる共鳴を意識しながら)「こんにちは」といってみてください。次に、笑みをつくって同じように「こんにちは」といってみましょう。口角を上げながら、同時に口を横方向にも開きます。多少は不自然に感じても大丈夫です。あなたが思っているほど、人から見て変化はないものです。そして笑みをつくった顔をキープしながら、「こんにちは」といってみてください。2つの声はかなり違う印象になっていませんか?余裕があれば、録音して聞き比べてみたり、まわりの人にその違いを確かめてもらったりしてください。口角を上げた状態で音を発するだけで、感じのいい、やさしい話し方になります。口角を上げることで口腔も少し緊張し、舌が少し上向きになります。そうすると、「こ、ん、に、ち、は」の一つひとつの音がはっきりと発音されるのです。聞き手には、明るい印象を与えるのです。★まずは「口角を上げて横に開く」を意識する★まずは「口角を上げて横に開く」を意識するちなみにもうひとつ。今度は、口をやや縦方向に開けて「こんにちは」と発音してみてください。すると、どんなふうに聞こえますか?野太い、堂々とした発音になっているはずです。聞き手には、強くたくましい印象を与えます。口をやや縦方向に開けて音を発するだけで、堂々とした、強くたくましい話し方になるのです。口の開け方によっても、音色(声の印象)は変わるのです。逆にいえば、どんな印象を相手にもってほしいかによって、口の開け方を意識することも可能だといえるでしょう。細かいテクニックはいろいろとありますが、まずは「口角を上げて横に開いて」できる音色を意識してみてください。即効性のあるテクニックでもあり、ことあるごとに意識することで、やがては自然にできるよう心がけるとよいのではないでしょうか。ありがたいことに、この方法は「『腹式呼吸』や『共鳴』『滑舌』なんて意識している余裕はない!」という緊急事態においても即効性アリなのです。★「落ち着いた雰囲気」を出すための「声」とは?★「落ち着いた雰囲気」を出すための「声」とは?高い声はよく通って、人の注目を集める効果がありますが、その反面落ち着かない、説得力に欠けるという部分があります。聞き手によく届く説得力のある話し方は、少し低めの声のほうがいいのです。じつは女子アナの声が年々、低くなっているというのをご存じでしょうか。私は日本テレビに1995年に入社しました。同期のアナウンサーに町亞聖さんがいます。私は声が決して高いほうではなく、どちらかというと低めですが、町さんも低めのトーンで知的な印象の声の持ち主です。女子アナも一昔前は「かわいい」がもてはやされましたが、いまは「落ち着いた知的な雰囲気」も求められているのかもしれません。低めの声を出すのは、じつは意外と簡単です。あなたの唇がのど仏(あるいはその下あたり)にあり、のどから言葉を発するイメージで、声を出してみてください。自然と声が低くなります。また話し方に説得力をもたせたいならば、声が低ければいいというわけではありません。「抑揚」のある話し方を身につけることが不可欠です。「抑揚」についてはのちに詳しく扱いますので、そちらを参照してください。★早口を直す2つの方法★早口を直す2つの方法「ついつい早口になってしまう」という人は、とてもたくさんいます。早口で話す方は、いいたいことがどんどんとあふれ出てきてしまうのだと思います。または家族が全員早口で、スピーディに話さないと自分の意見がかき消されてしまうといった状況で育ったとか……。どちらにしても頭の回転が速い人なのだ
と思います。しかし、過度の早口は相手をそわそわさせるばかりか、攻撃的な印象すら与えてしまい、損をしかねません。まず一つひとつの音を確認しながら話してみてください。「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す」「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す」こうやって確認しながら話すと、早く発音することができないので自然と早口が改善されます。また次章で述べる「朗読」は、早口を矯正する方法としても適しています。ゆっくりと朗読することで、ゆっくりと話す自分に少しずつでも馴れてください。自分ではスローすぎると思えたとしても、意外と聞きやすく、穏やかな印象を与えることでしょう。「これくらいのスピードだと聞きやすいんだな」というさじ加減を、自分の耳で確かめて身につけてください。会話の場合なら、適当なところで間を置くなどして相手の反応を伺う時間をとることも心がけましょう。そのわずか0・何秒かが「包容力がある人なんだな」という印象を醸し出してくれると思います。★スローな話し方をスピードアップする方法★スローな話し方をスピードアップする方法ごくまれにですが、「話し方がゆっくりすぎるので、もっとスピードアップしたい」という人もいます。ゆっくりとした話し方は相手を安心させる傾向にあり、必ずしもマイナスの要素ではないと思います。が、それも程度次第。スローテンポで話す人にも、そして早口で話す人にも、じつは共通していえるのが「相手(のペース)をあまり見ていない」ということかもしれません。スピードアップすると詰まったり、嚙んだりしてしまうならば、滑舌トレーニングなどを行うのもいいでしょう。アスリートが速く走るために全身の筋肉をウォーミングアップさせるのと同様、テンポよく話すためには口のまわりの筋肉をほぐしてあげることが必要だからです。★「嚙んでしまう」ときの対処法★「嚙んでしまう」ときの対処法「話の途中でよく嚙んでしまうんです」という相談もじつによく受けます。なかには「舌が長いせいで嚙むんでしょうか?」と聞く人もいますが、舌の長短と「滑舌」「嚙む」ことの関連性はないと思います。たとえば、短距離走などで「走るのが遅いのは、足が短いから」と言い訳することはできませんよね。それと同じです。舌足らずも舌が短いわけではなく、舌をきちんと動かしきれていないから起こる発音の不全ですから、滑舌トレーニングによって嚙むことの多くは改善することができます。「嚙む」というのは、言い淀んでしまうこと。じつは「よく嚙む」というのは頭の回転が速いからということもあると思います。話すスピードを追い抜くほど、いいたいこと、アイデアがどんどんと出てくるから嚙んでしまうのですね。じつは私も新人のころ、天気予報を担当しているとき、よく嚙んでしまったんです。そんなとき、あるディレクターさんが、こういってくれたのです。「あふれてくる言葉のうち、どれを選ぼうかという一瞬の躊躇や逡巡があるから嚙んでしまうわけで、悪いことではないよ。安心しなさい」この言葉は私を大いに励ましてくれました。そう考えると気がラクになって、それと同時に嚙むことも少なくなっていきました。とはいえ、あまり嚙んでしまうとその場の流れや勢いを途切れさせてしまうことも事実。できれば避けたいものですよね。最近、レッスンの生徒さんからこんな話を聞きました。「話しながら、同時に自分の声や言葉を聞いて、確認することを心がけると嚙まずにいられる」というもの。本章10節で述べた早口への対策と同じなのです。自分も自分の話の聞き手のひとりとして、話しながら「聞く意識」をもつことで、自然と丁寧に話すことができるのです。★大きく明るい声を出すには?★大きく明るい声を出すには?どんなにいい話をしていても、声が小さかったら相手に届きません。すばらしいスピーチも台無しになってしまいます。ただ、小さな声の人にとって、いきなり大きな声を出すというのは難しいことです。この場合もモノをいうのは「腹筋」です。私の生徒さんで、こういう方がいました。学生時代に大きかった声をとがめられたことで、すっかり萎縮してしまい、以来、十数年間小さな声を心がけていたらクセになってしまい、大きな声を出せなくなってしまったというのです。そこで「腹筋にグッと力を入れたまま、普段よりも大きな声を出してください。遠くにいる私に声のボールを届かせるような気持ちで声を出してください」と
アドバイスをしてレッスンを行いました。最初は本当に小さな声しか出せなかったのですが、少しずつ大きくなっていき、最後にはとてもきれいで大きな声が出せるようになりました。腹筋に力を入れるときは、てのひらで実際にお腹をグッと押してみると意識しやすいかもしれません。また大きな声を出すためには「腹筋」のほかに、第1章で述べた「共鳴」や「滑舌」にも気を配る必要があります。いきなりマックスの大きな声を出すのではなく、少しずつ大きくしていくのがコツだと思います。
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