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第4章今日からすぐに役立つ「日常会話」のテクニック

第4章今日からすぐに役立つ「日常会話」のテクニック

★私が実践している話し方・聞き方のテクニックを全伝授します!第1~3章のトレーニングをひととおりこなしたら、それだけですでに「声」だけでなく「話し方」も上達しているのが実感できると思います。話す技術は本当にやればやるだけ身につくものなので、ぜひ少しずつでも継続していただければと思います。この章では第1~3章における基本を身につけたうえの実践編として、日常会話、プレゼン、スピーチに使える「話し方・聞き方のテクニック」を紹介していきます。すべて私が自分で失敗を繰り返しながら、培ってきたテクニックです。もちろんいまもすべて実践しているものばかり。大きなものから細かいものまでありますが、ちょっと心がけるだけで見違えるように話し方・聞き方のスキルがアップしますよ!★コミュニケーションを深める会話術★コミュニケーションを深める会話術★相手の話を上手に聞き出すには★相手の話を上手に聞き出すには人は、自分の話を聞いてもらえるとうれしいものです。自分の考えや気持ちに同調してくれながらしっかり耳を傾けてくれる相手には、より深い信頼がもてるものです。飲食店を営む私の友人は、接客業という職業のせいなのか、とても聞き上手。彼女は「それって○○ってことだよね」「それはつまり××なんだよね」と、私が話した内容を別の言葉で改めて言い直しながら同調してくれます。時には自分の経験に照らし合わせて、話を盛り上げてくれます。これは「私はあなたのことをちゃんと理解していますよ」ということの表明でもあります。だから彼女とはいつ話しても、じつに気持ちよく、楽しい気分になれます。相談事があったり、話を聞いてほしいときは、つい彼女を頼りたくなってしまいます。★相づちの上手な打ち方★相づちの上手な打ち方相手の話を上手に聞くためには「上手な相づち」が欠かせません。ところがこの相づち、なかなか難しいのです。ただ打てばいい、というものではありません。それどころか逆効果になることも少なくないのです。私のレッスンを受けている生徒さんで、少々ぶっきらぼうな印象を受けてしまう男性がいました。たしかにその人は表情がやや硬めで、初対面では「怖そう」といわれてしまうこともたびたびあり、本人もそのことを気にされていました。実際はとてもやさしくて、相手に対して気遣いもできる人なのですが、この人は「相づち」に少々問題があったのです。とても真面目な性格ゆえに、会話をするときの相づちのリズムが一定なのです。「はい……はい……はい……はい……なるほど」よくいえば律儀ですが、ともすると機械的で不快に思われてしまうのです。そこで、この生徒さんには「相づちを打つとき、声に出さないように」とアドバイスしてみました。相手の話を聞こうという姿勢はもちろん大切です。でも声は出さなくても、相手の目を見たりうなずいたりすることで、それは十分伝わります。その結果、その方の印象がガラリと変わったのです。相づちをあえて声にしないというだけで、とても感じのいい、やさしい雰囲気になったのです。★誰だって「話したい」し「認められたい」★誰だって「話したい」し「認められたい」「話し方」というと、つい声を出すことにフォーカスしてしまいがちですが、じつは音のない時間や空間もとても大切。「無の存在」があることで相手はリラックスでき、会話も弾むことになるのです。誰だって「話したい」し「自分のことをわかってもらいたい、認められたい」もの。こちらの声を差し挟まず(つまり、相手の声をさえぎることなく)、邪魔をしないのがポイントです。ゆっくりとうなずくだけ。それで、話し手の気持ちはほぐれ、あなたと一緒にいることがとても心地よく感じられるのです。先ほど紹介した聞き上手の友人は、やはり私が話している最中に相づちを打つことはまずありません。黙って、微笑んで、うなずくだけです。そこに言葉がなくても私を気遣ってくれる思いやりとやさしさを感じ取ることができます。「ただ聞くだけ」「話し手の言葉に集中してうなずくだけ」というのは忍耐力を要することかもしれませんが、それによって話し手側は思わぬ本音を吐露できたりもするのです。みなさんもぜひ、心がけてみてください。▼タレントやお笑い芸人もプライベートは無口!?相づちとは少しズレますが、テレビで元気にしゃべっているタレントさんや、すごく面白いお笑い芸人さんがプライベートではとても無口で物静か……ということは、じつはよ

くあることです。私自身も普段はあまりしゃべるタイプではありません。友人といるときは聞き役に回るほうです。タレントさんや芸人さんもそうですが、おそらく無意識のうちに「仕事のためにエネルギーを溜めておく」というところがあるのだと思います。局アナ時代のことですが、仕事が終わってアナウンス室に帰ってきて、そこで同僚とおしゃべりなどをしていると、よく部長に怒られたものです。「仕事で出し切っていれば、もうぐったりしてアナウンス室でおしゃべりする余裕などないはずだ」というのです。それは確かにいえることだと思います。それで思い出したのが、アナウンサー試験を受けたときのこと。アナウンサー試験というのは一発で決まるものではなく、選ばれた20人が本番の1か月前ぐらいから局に毎日通ってアナウンスのセミナーを受けます。その20人とは毎日のように顔を合わせるから、みんな仲良くなって休憩時間などにおしゃべりをします。そこですごく仕切ってリーダー的存在となって話す人が本番での試験でも上手かというと、必ずしもそうではないんです。逆に、あまり話をしない人のほうが、本番の試験を見事にこなしたりすることもあります。例外として明石家さんまさんのようにプライベートであろうとなんであろうと常にしゃべりまくる人はいらっしゃいますが。さんまさんは、まさにいい意味での「規格外」で「天才」なのだと思います。★初対面の緊張を一気に解く「座る場所」★初対面の緊張を一気に解く「座る場所」ビジネスで初対面の人との会話、はじめてのデートでの会話……、緊張しますよね。「緊張のあまり、会話が弾まなかった」という失敗談もよく聞きます。もちろん会話力をつければそれも自然に解消されていくはずですが、ここでは「座り方」に注目してみましょう。というのは、「座る場所」次第で、その場の空気が変わるからです。相手の対面に座ると、そこには良くも悪くもオフィシャルな雰囲気が生まれます。ビジネスの場であれば、この「対面座り」で一定の緊張感を保つのが効果的な場合もあります。お店のカウンターなどでよくある横並びの座り方は、自然と相手との親密感が生まれます。個人的な相談事などに向くシチュエーションであり、一方で相手と視線を合わせられない照れ屋さんにも向いているともいえます。その中間である90度(直角)の位置は、雰囲気もまたカジュアルとオフィシャルの中間。『徹子の部屋』を筆頭に、インタビュー番組でも多いセッティングですね。日常生活やインタビューなどにもよくフィットする、話しやすい配置だと思います。緊張は避けたいというとき、面識は浅いけれどフランクに話したい相手との歓談では、この90度の角度で座ってみるといいでしょう。★会話が途切れそうなときは?★会話が途切れそうなときは?話が途中で途切れてしまい、気まずい沈黙……。これは話し方に自信がない人が最も恐れていて、避けたいと思っていることの筆頭ではないでしょうか。初対面の人、あるいは面識の浅い人との会話を弾ませるのは、プロにとってもなかなか難しいこと。とはいえ、私たちの仕事では初対面の人にインタビューするのは日常茶飯事ですから、難しいともいっていられません。私も試行錯誤しましたが、ある「コツ」を覚えてからはグンとラクになりました。それは、相手に「はい」や「いいえ」で答えさせないということです。局アナ時代のまだ若かりしころ、24時間で100キロという長距離を走るマラソンランナーAさんにインタビューする機会がありました。生中継です。「その場の空気をどうしたらお茶の間に伝えられるか?」「グッと来るコメントをもらえるか?」前日から緊張しつつ、質問事項をリストアップして、万全の準備でのぞみました。当日、Aさんは途中で足を痛め、その痛みに耐えながら涙のゴール。その感動を伝えるべく、インタビューを始めたのですが……。それはとんでもない結末を迎えてしまったのです。魚住「ふくらはぎが痛いんですね?」ランナーA「はい……」魚住「とっても痛そうですね?」ランナーA「……はい」魚住「走り出して30分後くらいに痛そうにしていましたね?」ランナーA「はい……(そのとおりです)」(……終了)新人だった私は、もう対処のしようもなくオロオロするばかり。ディレクターからは「魚住、お前がしゃべるな。とにかくAさんにしゃべらせろ」というカンペ(カンニングペーパー)が出される始末。散々でした。私の最大の失敗は、自分で先に答えをいってしまったこと。当然、インタビューの相手は「はい」か「いいえ」で答えるしかない。すると話はそこから展開のしようがないわけです。いまなら、たとえば次のようにインタビューします。魚住「足を引きずって走っていらっしゃいましたが……?」ランナーA「どうやら、ふくらはぎを痛めてしまったみたいで、かなり痛かったです」魚住「いつごろから痛みを感じたのですか?」ランナーA「走り出して30分経ったころかな……」魚住「たしかにそのあたりで、ちょっとスピードが落ちた感じでしたね……」ランナーA「そうなんです。やっぱりわかりましたか。それからどんどん痛みが強くなってきて……」魚住「大変でしたね。処置はされましたか?」ランナーA「それがまだなんです。とにかく、すぐに冷やそうと思っています」このように展開すれば、相手がいろいろ話してくれたと思うのです。経験が浅く、融通の利かなかった私は、すでに自分が知っていることや用意した資料にあるデータと同じ内容を取材相手から欲しがってしまい、失敗したのです。

★返事がわかっていても、知らないふりをして、相手に話してもらうほかにもいろいろ失敗はあります。たとえば、あるタレントさんのインタビュー。事前に渡された資料には「好物は大福餅」とありました。そのことを話してもらおうと思うあまり、こんな聞き方をしてしまいました。魚住「大福餅がお好きなんですよね」タレントB「はい……」(……終了)そりゃそうですよね。私が答えを先にいってしまったんですから……。これも悲しい結果でした。いまの私だったら、こんなふうにインタビューします。魚住「Bさん、甘いものがお好きと伺っています。さっきも、スタッフさんにとってもおいしそうなお菓子を差し入れていらっしゃいましたね」タレントB「はい、甘いもの、好きですよ。でもどっちかというと生クリーム系は苦手で和菓子派ですね。じつは大福が好物なんです」魚住「そうなんですか!お好きな店はどちらですか?」タレントB「麻布十番の○○屋が大好きでねえ。いつもそこって決めているんです」魚住「へぇ、麻布十番はよく行きますが、その店は知りませんでした。今度ぜひ行ってみたいと思います」タレントB「あ、○○屋に行くんだったら、隣の△△っていう焼肉屋もおいしいから行ってごらん。僕も家族でよく行くの。月一は行っているね。そこの牛タンはものすごくおいしいよ」魚住「牛タン!大好きです。牛タンがおすすめなんですね?」タレントB「あとあの店はマッコリがうまいよ。本場で飲むよりおいしいぐらい。奥さんが好きで、行くといつも特別なのを出してくれるの。あんまり教えたくないけど」Bさんの甘いもの好きから話が広がり、次のような情報が聞き出せるのです。・生クリームが苦手・お気に入りの和菓子屋の隣に、おいしい焼肉屋がある・そこには月に一度のペースで家族で行く・牛タンもおいしいが、じつはマッコリが誰にも教えたくないほどのお気に入り・奥様もお気に入りの店である返事がわかっていても、自分からはあえていわず、知らないふりをして、相手にちゃんとしゃべってもらうのです。これはインタビューの鉄則ですが、一般的な会話でももちろん活用できるはずです。最初に結論をいってしまったら話にブレーキをかけ、新たな話を引き出すチャンスをみすみす逃してしまいます。ちなみに、こうした大失敗ですっかり落ち込んでしまった若かりしころの私は、しばらくの間、なかなかこちらから相手に話題を投げかけることができなくなってしまいました。自然と、相手の話を黙ってうなずきながら聞くことになったのですが、それこそが相手にとって話しやすく、いろいろ話をしてくれることに気づいたのです。「怪我の功名」とはまさにこのことです。★「会話では、相手の目を見たほうがいい」はホント!?★「会話では、相手の目を見たほうがいい」はホント!?「話をするときには、相手の目をしっかり見て」とは昔からよくいわれることです。でも、必ずしもそれは正しくないと思うのです。私自身、どちらかというと目鼻立ちがはっきりしているほうですが、そんな人がじっと凝視すると、相手は少なからず威圧感をもってしまうのです。そればかりか攻撃的に思われてしまうことさえあります。基本的に視線は相手の目や鼻先にやわらかく向けながら、会話のところどころで「うーん」と考えるときに視線を上や下に移動させるといいと思います。ずっと相手の目に視線をロックオンするのは避けましょう。大切なことは「私はあなたの話を聞いていますよ」というシグナルを送ること。目ヂカラがある人は、とくに気をつけてみてください。★話しながら、上半身を揺らしていませんか?★話しながら、上半身を揺らしていませんか?話し手、とくに男性に多く見られるのが、話しながらやたらと体を揺らすクセです。これは直したほうがいいですね。聞き手は、体の動きを目で追いながら話

を聞くことに疲れてしまいます。目も頭もクラクラします。私はこれを「会話の船酔い」と呼んでいます。会話だけでなくスピーチやプレゼンテーションのときも要注意。上半身が安定していないために、「落ち着きがなく、焦っている」ような印象を与えてしまうからです。巻末の特別付録で紹介する政治家の小泉進次郎さんや石破茂さんのスピーチを見ても、しゃべるときの上半身の安定は見事なものです。★電話の会話は「感じよく、ゆっくり」★電話の会話は「感じよく、ゆっくり」相手の表情や反応が見えない、自分の表情も見せられない……。電話については第2章でも述べましたが、音声だけが頼りとなる電話の会話は、じつはかなり難しいものです。会って話すと普通に感じのいい人なのに、電話の会話だと「機嫌が悪いのでは?」「怒っているのでは?」と感じることはないでしょうか。電話はいつもどおりに話していても暗めに聞こえがちなのです。ですから電話の会話は、できるだけ感じよく明るい声でゆっくりと話すように心がけたいものです。「相手が聞き取りやすいように」という意識をもって会話しましょう。第2章でも述べたように、一対一の電話では声が高すぎるとエネルギー量が多すぎて相手が疲れてしまいます。意識的に音を低くしてエネルギー量を減らすことも大事です。しかし、音を下げると丁寧さが少し減ってしまうので、電話では口角を上げてきちんと話すことが大事です。口元は常に緊張させておくのです。そうすると相手は落ち着いて聞いてくれます。一方的に話す必要がある留守番電話のメッセージなども、口角を斜め上に引っ張って明るく元気な声を出しましょう。とくにビジネスシーンにおいて、こちらから電話をかけるときは、あらかじめ話すべき内容をリストアップしておきましょう。メモを手元に置いて落ち着いて話すことができれば、「相手が見えない」というデメリットもメリットとなりますね。コールセンターのオペレーターを教育している女性から、こんな話を聞いたことがあります。オペレーターのデスクには、お子さんやペットの写真が貼ってあることがとても多いのだとか。それらの写真に話しかけるようにして電話対応をすると、自然と笑顔になり、声も明るくなります。苦情や複雑な問い合わせへの対応も、そうした環境づくりがあってこそ、スムーズに行えるのだなと感心しました。★イメージをアップさせる会話術★イメージをアップさせる会話術★「えー」「あのー」などの口グセをやめる方法★「えー」「あのー」などの口グセをやめる方法話の冒頭に「えー」や「あのー」「えっと」などの言葉をつけてしまう人がいます。これはぜひともやめましょう。「えー」「あのー」「えっと」などの感動詞は、本人はさほど気にしていないかもしれませんが、聞く側にとっては耳障りなフレーズになってしまいます。レッスンに通い出したばかりの生徒さんには、「えー」を頻発させる人が少なくありません。一度、数えてみたら1分間に20回という人がいました。じつに3秒に1回の割合です。録音したものを本人に聞いていただいたら、「まさかこんなにいっているとは」と大ショックの様子でした。自分では気づかないのですね。しかし、この人はここからの巻き返しがすばらしかったのです。その場でもう一度トライすると、たちまち1分間に7回と激減しました。3度目には、ごく小さく「えっ……」と入りましたが、ほぼゼロに。3度目の録音を聞いた本人いわく、「話が整理されていて、自分でもものすごく上手に聞こえます」。「えー」をなるべくいわないことで、これだけ激変するのです。会話から「えー」のフレーズを消すだけで、理知的で落ち着いた印象が増し、相手はあなたの話す内容に耳を傾けてくれるようになるはずです。この「えー」をいわないためにはコツがあります。❶文末で、必ず一度口を閉じる次の文章へと移るとき、「えー」といいそうになったら即、口を閉じて我慢してください。慣れるまでに少し時間は必要ですが、不要な音を出さないための練習です。「。」が来たら「口を閉じる」ことを習慣にしてください。そのほうが見た目の印象もいいのです。❷「えー」の代わりの言葉を用意する「えー」といってしまうのは、次の言葉が出てこないため。言葉を探すためのつなぎがやがてクセになり、逆に「えー」といわなければ次の言葉が出てこなくなることも。この悪循環は断ち切らなければなりません。そこで、「えー」の代わりを用意します。いいたいことが明白で、それを表す言葉がパッと浮かび、最初から主語や接続詞がはっきり出てくる人は少ないです。だから、最初は「まあ」「それで」「だけど」「さて」などで構いません。

やがて、「私は」「みなさんは」など、主語から話しはじめられるようになります。★意外と耳障りだけど本人は気づいていない……陥りがちなクセ★意外と耳障りだけど本人は気づいていない……陥りがちなクセ「えー」以外にも、意外と耳障りな口グセというのがあります。先日、とある企業の謝罪会見をテレビで聞いていると、ひとつのクセが気になりました。それだけではなく、その担当者の話し方に不快さを感じてしまったのです。それはこういう話し方でした。「お客様がぁメニューを見てぇご自分でぇ選ばれたぁということでぇ……黙ってやろうとかぁ隠蔽しようとかぁもちろん思っていませんでした」「て」「に」「を」「は」「が」といった助詞、あるいは文節の最後がいちいち上がり調子になって、しかも伸びているのです。このように「て」「に」「を」「は」「が」の助詞や文節の最後の音を上げて伸ばす話し方は、ウソをついているような印象を聞き手に与えてしまうのです。あるいは、「私は他人の言葉を借りてしゃべっています。私の本意ではありません」といった印象も相手に与えかねません。この語尾を上げるイントネーションは、次の2つに使うのが一般的です。❶疑問があって、相手に何かを尋ねるとき❷相手に同調したり、同意を求めたりするときこうした❶疑問を投げかけ、❷同意を求めるという語り口調が謝罪会見にそぐわないことは明らかでしょう。私を含めた多くの人が、この企業に対して無責任な印象を抱いてしまったのも当然だったと思われます。無意識のうちに助詞や文末の音を上げてしまうクセは、録音して確かめてみないと気づくのは難しいものです。録音&確認で、「えー」とともに、要注意であるこのクセに陥っていないか確かめてみてください。もうひとつ、説明の際、語尾に「と」を必ずつける人がいます。「こっちが最新機種ですと」「あそこにあったと」「その人はこういっていたと」こんな感じです。これはなぜか最近よく聞くんですよね。私だけかもしれないのですが、あまり気持ちがいいものではありません。「~と」をつけるのは、語尾を上げるのと同じで、その人自身の言葉でないような、本心からいっていないような、そんな印象を与えてしまいます。そのセンテンスがちゃんと完結していない感じもします。それからこれも私だけかもしれないのですが、「疑問形の多用」も気になります。「このパスタ、おいしくないですか?」「あっちの帽子のほうがかわいくない?」これらは純粋な疑問ではなく、相手に同意を求めているわけですよね。少しならいいけれど、ずっとこの調子で話す人がいます。自分のいっていることに自信がないからそうやって常に同意を求めてしまうのかもしれませんが、これも聞いていてあまり好感がもてません。みなさんはどう思われますか?★こっそり教えます!究極の「モテ会話」術★こっそり教えます!究極の「モテ会話」術「女性と上手に話すにはどうしたらいいですか?」という男性からの質問は、レッスンの生徒さんも含めて非常に多く寄せられます。一概にはいえませんが、男性は自分が思っている以上に早口で、一方通行の話し方をしてしまう傾向にある気がします。これは女性に「つっけんどんだ」「取り付く島がない」という印象を与えかねません。まずは深呼吸をして、話すスピードを少しダウンさせると、穏やかでやさしい印象になります。女性は安心して会話できると思います。では、女性の「モテ会話」とはどんなものでしょうか。私の推察になってしまいますが、男性は、話を聞いてもらうことで女性に心を開いていく傾向が強いように思います。気になる男性、もっと仲良くなりたい男性がいたら、その人の話をよく聞いてあげることから始めてみてください。もちろん余計な相づちは打たず、黙って笑顔でうなずくという先のテクニックを忘れずに。また、私のまわりで「もったいないな」と思うのが、仕事がものすごくできて、女性としてもとても魅力的なのに、男性にはあまり縁がない女性。彼女たちは「スキ」がなさすぎるのです。そういう女性は低めの声でスピーディに話す傾向があるように思えます。これはもちろんビジネスシーンでは大変有効なトーンなのですが、デートには不向きです。聞き手である男性は仕事モードから逃れられず、緊張感の漂う時間を過ごすことになります。しっかりとした話し方は基本的にそのまま大切に(それもステキな個性ですから)、けれど時々は印象を変えてみましょう。たとえば、感嘆や驚きなどを少し高めの音で伝えてみてはどうでしょう。「わぁっ、うれしい」「ステキですね」「すごいですね!」など、ちょっとしたひと言で場が一気に華やいで、男性の気持ちもほぐれます。その昔、80年代には「ブリッ子」が流行りました。松田聖子さんに代表される高く甘えたような話し方。当時はその、高く鼻にかかった声は揶揄されていたように思えます。しかし、いまにして思えば、その話し方が強力なチャームポイントとなり、彼女は国民的アイドルになりえたのではないでしょうか。歳を重ねても衰えない彼女の高い声は、外見とも相まって、驚くほどの若々しさを感じさせます。声帯は筋肉であり、筋肉である以上は老化を避けられません。加齢とともに女性の声は低く、男性の声は高くなっていきます。でも発声練習を続ければ、声を若く保つことは可能です。さしずめ、「声のアンチエイジング」といったところでしょうか。極端に自分の声を変えたり、無理にはしゃいだりする必要はありませんが、話し方には人間関係や状況を変えてしまうパワーが少なからずあるということを、ちょっとだけ頭の隅に置いておいてくださいね!

★商談で役に立つ会話術★商談で役に立つ会話術★初対面の商談相手との会話をスムーズに進める方法★初対面の商談相手との会話をスムーズに進める方法初対面というだけで会話を弾ませるのはなかなか大変なことなのに、ビジネスの相手となると余計難しいものです。その場合、事前にできるだけ相手のことをリサーチしてみるといいと思います。相手が好きなものや趣味などを共通の知人に聞いてみるとか、何かしらの情報を得ることはできるのではないでしょうか。「相手を知りたい」と思う気持ちこそがコミュニケーションの第一歩であり、そこからすでに対話は始まっているともいえます。あいさつのあとに「○○がご趣味だと伺いました。私も〇〇にとても興味があって、今日はお会いできるのを楽しみにしていました」といった会話からスタートするのもいいし、商談が一段落ついたときに「ところで○○がご趣味と伺ったのですが……」などと切り出してもいいですね。ただここで注意すべきは、調べた事前情報がいまも相手に有効と信じ込まないこと。人は時間とともに変化します。たとえば「この人はゴルフが好きだと聞いたから、ゴルフの話をすれば盛り上がるに違いない」と思ってゴルフの話を始めたところ、当の本人はゴルフは最近あまりやっていなくて、自転車に夢中……ということもあるわけです。だから情報を事前に仕入れつつも、そこに縛られず、そのときのライブ感を大事にしましょう。一番新しい情報は「目の前」にあるのですから。★部下を「上手に」叱る★部下を「上手に」叱る「叱る」というのもテクニックが必要なことです。ただ感情に任せて相手を非難するとか、怒りをぶちまけるというやり方は上手な叱り方とはいえません。ここで強調したいのは「感情はシンクロする」という原理です。あなた(話し手)の感情は必ず相手に影響を与えます。あなたが怒っていたら相手も怒り、あなたが穏やかな感情なら相手も穏やかになります。心の中は怒りでいっぱいになっているかもしれませんが、怒りをそのままぶつけると相手まで怒りモードにシフトしてしまいます。すると相手は、「なぜ自分が悪いのか。どんな点を指摘されているのか」を考えなくなってしまいます。ですから、まずはあなたが冷静になることが先決です。つまり、基本的には叱るときは低く、ゆっくりと話すということです。そのうえで、第2章で述べた「声の高さ×スピード」を使い分けることで「上手な叱り方」ができます。まずその部下に「どう感じてもらいたいか」「どうなってほしいか」を考えてみてください。たとえば、危機感をもっていないのん気な部下には、「高い声×早口」の組み合わせで檄を飛ばしたり、煽ってみたりするのも有効かもしれません。一方、自らの失敗でパニック気味だったり、逆切れしがちだったりする部下であれば、冷静な空気が必要です。父性的な印象を与える「低い声×ゆっくり」の組み合わせで対処してみるのがよいでしょう。★「話が弾まない人」との会話は「鉄板質問」で乗り切る★「話が弾まない人」との会話は「鉄板質問」で乗り切るビジネスの場でちょっと時間が空いてしまったとき、あるいは少し休憩というとき、初対面の相手と雑談というか、世間話をしなければいけないことってありますよね。相手がフレンドリーなタイプで、会話がどんどん続くならいいのですが、時にはなかなか会話が弾まない場合もあります。「このコーヒー、おいしいですね」「はい、おいしいですね」「…………(沈黙)」みたいなこともあります。会話が弾まないときは、「質問」に限ります。相手のことを聞き出すのです。「〇○さんのご趣味は何ですか?」「やっぱり出張なんか多いのですか?」要は、あなたが相手に興味をもっていることを示すことが大事です。

どんな人でも自分に興味をもってくれて質問してくれたらうれしいし、無口な人でも自分の得意なこと、趣味の話ならいくらでも話すことができます。自分の「鉄板質問」を用意しておくと便利です。「この質問ならいつでも誰にでも聞けて、そこそこ盛り上がる」という質問をいくつか用意しておくのです。持ち物ネタなどは、いつでも使える鉄板質問だと思います。たとえば名刺。最近は凝った名刺を使う方も多いですよね。写真付きだったり、裏面にちょっとしたPRが書かれていたり。そこから話を広げるのもいいと思います。一方、相手への質問で、NGなこともあります。それは家族のこと、住んでいるところ、子どもの有無など。これらは個人的な交流が深まったときに自然の流れで聞くのはいいのですが、ビジネスの場では避けたほうがいいと思います。★会話のとっかかりや沈黙のときは、相手の小物をさりげなくほめるのが効果的★会話のとっかかりや沈黙のときは、相手の小物をさりげなくほめるのが効果的会話のとっかかりや少し沈黙が生まれたときは、相手をほめること、たとえばさりげなく相手がもっている小物をほめるのもいいですね。「その名刺入れ、ちょっと目を引くデザインでステキですね」「○○さんは字が上手ですね。書道か何かをやられていたのですか?」ほめるためには、まず相手を観察することです。どんな服を着ているのか、持ち物はどうか。外見からだけでも相手がどんな自分を表現しようとしているのか、かなりの情報が得られるものです。相手をほめることを言い換えれば、会話では相手にダメ出しをしない、否定をしないことです。たとえば休日に何をしているかという話になったとして、相手が「もう昼過ぎまで寝ていて、面倒くさくて食事もしないぐらいですよ」と答えたとします。そんなときでも「そんな不健康な過ごし方はよくないですよ」などとダメ出しをせず、「ああ、そうですよね。私もお休みは何もできないときがありますよ」といったように相手に同調します。その返事も、できればほめて返すといいでしょう。「ちょっとマイナーな趣味かもしれないんですが、あまり知られていないインディーズのバンドを探して曲を聞くのが好きで、気づくと一日経ってしまうんです」ということなら「インディーズをご自分の耳で評価できるなんて、本当にすごいですね!音楽のセンスがずば抜けていますよね」とほめるのです。そこから「ご自分でも音楽をなさるんですか?」などというように、また話を広げることも可能です。いずれにせよ、質問をすることで相手のフィールドに入って、相手をほめて返す、この基本さえ覚えておけば、初対面の相手、ちょっと気づまりな相手とでもスムーズに会話ができるはずです。★「上手な断り方」をするには★「上手な断り方」をするにはたとえば相手からの提案を断る、注文をキャンセルするなど、ビジネスの場では「断る」こともよくあることでしょう。こうしたネガティブな案件こそ、「話し方」の手腕が試されるシーンともいえます。断られる側に恨まれたり不満を抱かれたりすることなく、気持ちよく諦めていただくにはどうすればいいか。相手との関係がその後も継続するとして、お互いが前向きでいられるような「説得力」が必要です。まずは、断る理由をわかりやすく整理して伝えることが大切です。そしてすまなそうに、居心地が悪そうに話すのではなく、むしろきっぱりと、明るく話すのがコツ。「いまは断るけれど、それも将来に向けて前向きな決断である」ということを、声と話し方でアピールすればいいのです。私も年上の女性にある依頼をしたとき、「私にはそれはできない。ごめんね!」と笑顔でサクッと返事をされた経験がありますが、断られて腹が立つどころか、「潔くて素敵だな」と感心してしまいました。逆に、あまりにもすまなそうに深刻に告げてしまうと、相手にはマイナスの感情だけが伝わってしまうので、気をつけましょう。★上司に残念な結果を報告するとき★上司に残念な結果を報告するときこれもネガティブな案件ですね。上司への報告、残念な結果の場合には伝えにくいもの。ダメージを最小限にとどめるにはどうしたらいいでしょうか。まずは声については、信頼や安心の印象を与える「低めの声」で話すのが最適だと考えます。また、話の運びとしては、最初に端的に結論を伝えるのがいいと思います。悪い結果の場合、どうしても結果を後回しにしたくなり、エクスキューズ(弁明、言い訳)から始めてしまいがちですが、それでは印象は悪化するばかり。相手が気にしているのは、まずは結果なのですから、そこをまずクリアにしてあげてください。もちろん、改善策や対応策を事前に頭の中で整理しておくこと。「悪い結果ではありましたが、しかし……」と順序立てて、手際よく詳細や根拠、今後の見通しなどを説明していきます。テンポよく、畳み掛けるように話すことによって相手のショックを和らげることができると思います。

★取引先を怒らせてしまった!上手に謝る方法は?★取引先を怒らせてしまった!上手に謝る方法は?トラブル発生!利害関係にある先方とどうしても話し合いで解決しなくてはならない。そんなときはどうすればいいのでしょうか。誰もが心がけるのが、できるだけ穏やかに冷静に収束へと向かうことですよね。そんなときには先に述べた「感情はシンクロする」という言葉を思い出してください。相手に穏やかでいてもらいたいなら、こちらがまず穏やかに話しかけることが何よりも重要かつ効果的です。じつは私にもこんな体験があります。局アナ時代の元上司なんですが、おこりんぼで有名(?)な方だったんです。元アナウンサーだから滑舌もいいし、声もよく通る。その声でガンガン怒鳴るものだから、もうグサグサ突き刺さるんです。もちろん、理不尽なことをいっているのではなく、ちゃんと筋は通っているし、その人のため、会社のためを思っていってくださっているのですが、それでもやっぱり怒鳴られている状況というのは、誰でもうれしくないし、早く切り上げたいものですよね。でもそこで、ある人はその上司と同じようなテンションで言い訳をしたり反論をしたりしてしまって、火に油を注いでしまっていたんです。私はその上司が怒りはじめたときは、できるだけ低い声で、ゆっくり返すようにしました。そうすることでだんだん相手も落ち着いてくるのか、私はその人に激昂されるということはほとんどありませんでした。怒っている相手には、相手の話をきちんと聞きつつ、これ以上テンションを上げさせないよう、こちらが落ち着くことが大事だと思います。話し手の印象やムードは、ほぼ間違いなく聞き手に伝播します。穏やかな口調で話せば、相手の気持ちも穏やかになり、同様の口調で返されます。ゆっくりと話すことで、攻撃性を消すことができるのです。互いの感情はシンクロするのです。そして適度に間を置くこと。これによってこちらが戸惑っていること、心苦しく思っていることを伝えることができます。またこういうときはパニックになりがちですが、だからこそあらかじめ頭の中でいいたいこと、フレーズをしっかり固めておきましょう。★感情はシンクロする!★感情はシンクロする!私はタクシーを利用するとき、たまにこんな実験をしています。対話実験とでもいいましょうか。車に乗り込み、運転手さんに行き先を告げるとき、第2章で紹介した「声の高さ×話すスピード」を変えることによって相手に与える印象がどう異なってくるのか試してみるのです。高めの声でゆっくりと行き先を告げるとき、車内はふんわりとした雰囲気になり、たいていの運転手さんは落ち着いた丁寧な対応をしてくれます。高くて速い話し方をすると、明るい調子で「この角、右折すればいいかな?」などとカジュアルに友人のように質問を投げかけてきたりしてくれます。他愛のない世間話に花が咲いたりするのは、こういうときが多いです。一方、低くてゆっくりの声で話しかけたときには、なんと運転手さんから、仕事についてのちょっとシリアスな悩み相談をされることもありました。少々驚きましたが、ゆっくりと「そうなんですね」と相づちを打つと、さらに話が深くなっていきました。これが同じ低い声でも早口になると、また違った反応が起こるものです。運転手さんと私の間には緊張感が生まれて、仕事モードになり、世間話が弾むような雰囲気にはなりません。みなさんも声の高さや話すスピード、印象を変えることで、感情のシンクロを体感してみてはいかがでしょう。反抗的な部下に注意をしなければならない。初対面の取引先との会食が迫っている……など会話に困るシチュエーションはさまざまですが、「感情はシンクロする」という原理は不変です。一方で、笑顔もまたシンクロします。母親が微笑みながら赤ちゃんに話しかける音。あれを脳が覚えているためという話もあります。ほんの少しでも口の端(口角)を斜め上に上げるイメージで、会話にのぞんでみてください。笑いたくないときでも笑顔をつくるなんて不自然に思うかもしれませんが、効果は絶大です。そして、自分で思うよりもはるかに自然に見えているはず。とくに、相手の話を聞いているときには(黙って相づちを打っているときなどは)、頰の肉を引き上げるように笑みを浮かべてみてください。そうすれば、話し手には「よく聞いてくれているな」という安心感が生まれるのです。安心感ゆえに話したい気持ちは増すでしょうし、その場の雰囲気もよいものとなります。これによって、あなた自身も話しやすくなるのです。★プレゼンテーション・スピーチで役に立つスキル★プレゼンテーション・スピーチで役に立つスキル★スピーチ本番で緊張しない方法★スピーチ本番で緊張しない方法人前に出てスピーチやプレゼンをするのは誰だって緊張するものです。ひとつには、第1章で述べた「腹式呼吸」が緊張をほぐすための絶大な味方となってくれます。

私も前述のように本番前にはかなり緊張しますが、むしろ本番前には緊張することも必要だと考えています。そうでなければ「失敗する」からです。かつてアナウンサーの先輩から、このようにアドバイスされました。「本番前に気持ちをゆるめてはいけない。『今日は大丈夫』と油断して緊張を解くと必ず失敗する」当時まだ新人だった私は「失敗は緊張しているから起こるのではないのかな?」と思っていたので、そのアドバイスにさして気を留めていませんでした。ところが、ある日、大失敗をしてしまったのです。慣れているレギュラー番組、高をくくって、本番前に仲間らと楽しく談笑していた私。十分にリラックスしてから現場にのぞめば、落ち着いて進行できると思っていたのです。ところが、いざ本番で覚えていた文章を忘れてしまったのです。カメラはしっかり回っています。本番であってはいけない沈黙が訪れてしまいました……。焦りが束になって襲ってきます。まさに絶体絶命。共演者のフォローに助けられてその場をしのぐことはできましたが、アナウンサーが頭が真っ白になって口ごもってしまうなど論外です。先輩のアドバイスが、そのときになってようやく理解できたのです。それ以来、本番の直前には、意識的に緊張状態をマックスにするよう心がけるようになりました。誰とも一切話をせず、自分の内側に向かって集中するのです。手に汗をかき、心臓はドキドキ、体はコチコチに固まって……。しかし、「自分が成功しているイメージ」を描くことだけは忘れずに。自分を鼓舞して過ごすのです。ただし、いざ本番で話を始めてからは、腹式呼吸による発声で速やかに緊張を解いていきます。このタイミングで腹式呼吸を行うことで、大勢の聴衆やカメラの前でも落ち着いて振る舞うことができ、すべてをスムーズに運べるようになりました。私の場合、職業的に特殊なケースですが、一般的なスピーチやプレゼンにも応用できることだと思います。厳密にいうと、「緊張」には2種類あるように思えます。ひとつは、成功に向かっての高揚感と、これからのパフォーマンスに対しての征服感を高めてくれる、「プラスの緊張」です。一方、「失敗したらどうしよう」「うまくいかないに決まっている」「自信がない」など自分に対する不信感から生まれるのが「マイナスの緊張」です。どちらも身体的には同じような反応を示しますが、心持ちはまったく違います。話をする直前には、「プラスの緊張」を極限まで高めることが大事です。さらに話しはじめたら、腹式呼吸で速やかに緊張を解き放ちましょう。これも、私が失敗の経験から体得した「うまく話をするためのテクニック」です。★スピーチの途中で頭が真っ白になったら……★スピーチの途中で頭が真っ白になったら……「次は何を話すんだっけ?」と話している最中に内容が飛んでしまって、頭が真っ白に……。こんな恐怖体験をしたことはありませんか。練習を積んでいても、本番は何が起こるかわからないもの。レッスンの生徒さんもこの体験をなさっているようで、そんなときは、こうアドバイスします。「みなさんのまなざしがすごくて、何をいおうとしていたか忘れてしまいました~!」「ちょっと待ってくださいね。あとからまとめて申し上げますから!」「おっと言い方を間違えました!」「やっぱり嚙んじゃいましたね~(笑)」このように頭が真っ白になったことを素直に白状してしまうのです。話者の突然の告白によって会場にドッと笑いが起こったりすれば、自分自身の気持ちもほぐれます。ハプニングを楽しむぐらいの気持ちでのぞんでください。そうやって楽しむことができたなら、聴衆との距離も縮まり、かえって好ましい結果が出るのではないでしょうか。完璧な自分である必要などありません。それでもやっぱり不安という方は、原稿をあらかじめ手元に用意してください。先日も、大企業の社長さんが乾杯のあいさつをされたのですが、10分間、スピーチ原稿に目を通しながら話されていました。しかしそれは見事なスピーチでした。原稿を見せていただくと、たくさんの色のマーカーで印がつけてあり(それこそ朗読の技術が応用されていました)、入念に準備されてのぞまれていたことがうかがえました。★お客さんに助けてもらおう!★お客さんに助けてもらおう!もうひとつ、緊張を解くのにとっておきの方法を伝授しましょう。それは「お客さんに助けてもらうこと」。話を始めたはいいものの、緊張がどうにも解けないというとき、話を聞いてくれている聞き手、お客さんの顔を一人ひとり見ていって、「反応のいい人」を探

すのです。ここでいう「いい人」というのは、話を熱心に聞いてくれる人、「うんうん」とうなずいてくれる人、楽しそうにニコニコしてこちらの話に乗ってくれている人のことです。人のよさそうなおばさま、見るからに誠実そうなサラリーマンなど……。どんな会場でもそういう方が必ずいらっしゃいますよね。そういう人に向かって話すようにするのです。そうするとその方はこちらの話にとてもよく反応してくださいますから、話していて心が落ち着いてきます。私はどうにも緊張して、落ち着かないときなどは、いまでもこのテクニックを使っています。★できるだけ多くの人に話を聞いてもらえる必殺テクニック★できるだけ多くの人に話を聞いてもらえる必殺テクニック前の項目にも通じますが、同じ話でも、熱心に聞いてくれる人、前のめりになって聞いてくれる人もいれば、退屈そうにしている人、スマホをのぞいている人、あまつさえ居眠りをしている人もいますよね。聞いてくださらない人を見ると、「自分の話に魅力がないんだ」「自分に興味がないんだ」とガッカリしてしまいます。しかし、聴衆の全員が興味をもって耳を傾けてくれるなんてこと、じつはめったにないものです。ここは発想を転換してしまいましょう。「聞いていない人に向かっては、こちらも語りかけない」これでいいのです。ターゲットを熱心な聞き手だけに絞ってしまうのです。熱心に聞いてくれている数人に向かって話すようにするのです。時には、「全員にとって満足できる話なんてない」という達観も必要だと思います。じつはこうしてターゲットを絞ることで、かえってより多くの人に「聞かせる」スピーチができるようになるのです。具体的には全体を見回して話しながら、「この人に語りかけよう」という人を数人選んだら、順番にその人たちに向かって語りかけるようにします。こうして相手を具現化することで「話しやすさ」が増し、聞き手にとっても「聞きやすい」話になるのです。このとき、できれば会場を大まかに中央・左側・右側と分割して、それぞれから1~2人を選ぶといいと思います。自分の視線が偏らないようにするためです。もちろん前項を参考にしてくださっても結構です。これは大勢の聴衆を前に、誰に向かって話せばいいのか戸惑うときにも使えるテクニックです。★スピーチ原稿は用意すべきか、その場で考えたことを話すべきか★スピーチ原稿は用意すべきか、その場で考えたことを話すべきか書いてきたものを読むべきか、その場で感じたことを話したほうがいいのか。これもみなさんが悩まれることだと思います。どちらかのスタイルが正解ということはありません。自分がやりやすいほうを選ぶのがベストです。スピーチに慣れていない人であれば、まずは「書いてきた原稿を読む」スタイルから始めてみるのもいいと思います。原稿をつくってひとりで何度か練習したあとは、周囲の誰かに実際に聞いてみてもらってください。たとえひとりでも聞き手がいることが重要です。相手の反応を伺いながら、テンポや抑揚を考えてみるのがとても効果的です。一方、スピーチにある程度慣れている人、新鮮な気持ちでないとテンションが上がらない人は、その場で感じたことを話すほうがいいでしょう。私自身は後者のほうです。スピーチを頼まれたときは、準備はするものの、かっちりとした原稿はつくり込みません。具体的には、まず全体の構成を考えます。「オープニング→結論を匂わせる→その具体的なエピソードをいくつか→結論(言い換えも含む)→聴衆へのメッセージなど締めの言葉」こうした構成をもとに、いいたいことをリストアップしていきます。文章ではなく箇条書きのメモで、メモができたら原稿は書かずに軽い練習を始めます。入浴時、バスタブに浸かりながら……などリラックスした状態で、実際に口に出してスピーチを試みてみるのです。これをやってみると「辻つまが合わない」とか「別のエピソードのほうがしっくりくる」など、いくつか気づくことがあるので、それを修正します。準備はここまでです。かっちりした原稿を用意しないのは融通を利かせるため。当日、朝のニュースで仕入れた情報、スピーチする現地への途上で見聞きしたこと、開催場所の土地柄、名産品を調べ、聴衆の様子など、面白いハプニングや、聞き手にとっても共感できるトピックがあれば、それを挟んだりします。「先ほど、会場の入口に○○○がありましたが、ご覧になりましたか?」などと問いかけてみることで、聴衆との距離を縮められることもよくあります。その場のライブ感を大切に、アドリブも入れながら、話していきます。私の場合は完成された原稿を準備すると、かえって言葉が出てこないのです。先日、福岡県の久留米市を訪れてスピーチしたときも、前日までのリサーチで特産のおいしいものについて触れようかなと考えていたのですが、直前になって「あっ、そういえば私は昔、久留米出身のチェッカーズのファンだった」と思い出し、本番の数分前にこの話題を組み込むことに変更。「チェッカーズのファンクラブ会員だった中学時代の私が、フミヤ君の実家にどれだけ行ってみたかったか」を話してみたのです。これが地元の方々の共感を得られたようで、会場の雰囲気が和やかになった瞬間を感じました。▼萩本欽一さんの「空白の台本」

原稿を用意すべきかどうかについて、かつて萩本欽一さんが『ソロモン流』(テレビ東京系列)でおっしゃっていた話はとても印象的でした。彼の舞台台本には、ところどころに空白があるのだそうです。「全部書いちゃうとね、予定調和になるから。観ている人は面白くない」とのこと。空白部分についてはお稽古も一切なしで本番にのぞんだこともあったとか。役者にとっては恐怖でしょうが、そこでがむしゃらに考えた表現が、生の面白さを生むというのが彼の狙いだというのです。きちんと組み立てられて準備されたものの中に、一部その場で生まれたものが入る。そのメリハリが面白みを増すのです。これはスピーチにも当てはまるのではないでしょうか。★大きな舞台や大事なプレゼンの前に行う準備、リハーサル★大きな舞台や大事なプレゼンの前に行う準備、リハーサル大切な取引先との商談、社内プレゼンテーション、結婚式でのスピーチ……学んでいただいた「話す力」を存分に発揮していただくために、「話す内容」以外の準備も必要となってきます。私が必ず行っているのは、スピーチする場所、環境を、事前に自分の目で確認しておくことです。会場には少なくとも1時間から1時間半前には入ります。会場の広さ、状況はもちろん、演台の前にも実際に立って場内を見渡してみます。マイクも実際に持たせてもらってコードレスかスタンドタイプか、使いやすいかどうかなどを確認。用意したメモや原稿、水などを演台のどこに置くかも考えておきます。「そんなに細かいことまでチェックするのか」と驚かれるかもしれませんが、自分にとって居心地のいい状態で話すことができるように、準備できることはすべて準備し、心配や不安材料をできるだけゼロに近づけることが、失敗しないために大事なことだと思います。そのうえで、できればリハーサルをします。私の場合は用意周到にしてしまうと力を発揮できないタイプなので、ごく軽めにリハーサルを行いますが、人によっては、本番同然にしっかり行わないと落ち着かないということもあるでしょう。いずれにせよ、大切なのは、リハーサルでも、誰かひとりでいいので客席で聞いてもらうことです。観客がいるといないとでは臨場感が全然違いますから。こうして十分に準備をすませると、「プラスの緊張感」が生まれ、不安などから来る「マイナスの緊張感」は自然に消えていきます。★その他準備についてのアドバイス★その他準備についてのアドバイススピーチやプレゼンの前に行う準備についてのアドバイスをまとめておきます。❶話をするときの飲み物話をするときに、のどを潤す飲み物はぜひとも必要です。「ここ一番」という大事なときにはコーヒーやお茶ではなく、私は「水」をおすすめしています。私自身の経験から、水でのどを潤した直後が最もきれいな声が出ると実感しているからです。コーヒーやお茶はのどを潤すようでいながら、かえってガラガラにしてしまうので私は選びません。どうしてもコーヒーや紅茶を飲みたい場合は、ミルクを入れて飲むといいと思います。ミルクの油脂分がのどを保護してくれます。ある舞台俳優さんは、本番前やレコーディングの途中に豚骨スープを飲むとおっしゃっていました。これものどを滑らかにするすばらしい飲み物だと思います。❷直前の食事直前の食事は軽めにすませましょう。人は満腹状態だと、キビキビ動けません。また、胃に食べ物がたっぷりあると、横隔膜を下げられません。腹式呼吸は、肺を下方に膨らませるため、その分だけ横隔膜が下がります。が、その余地がないと十分に息を吸い込めません。だから、胃の中はある程度空けておいてほしいのです。私もナレーションの仕事のときは数時間前までに食事をすませておきます。どうしても空腹が気になるときは、おにぎりを半個程度いただきます。長時間の収録では血糖値を下げないようにキャンディなどを用意しておきます。のど飴も愛用しています。❸服装可能な限り、腹式呼吸をしやすい服装選びを心がけます。お腹の動きを妨げない=ウエストを締めつけないことが最大のポイントです。女性の場合、かしこまったシチュエーションではウエストを絞ったドレスなどを選びがちですが、腹式呼吸のためにはある程度の余裕をもたせた服装がいいのです。慣れない状況では、慣れているものに囲まれることで安心感を取り戻せます。そのため、靴は履き慣れているものに限ります。しっかりと地面に足を踏ん張って、しっかり腹式呼吸をしましょう。とくに女性は慣れない高いヒールだと体がグラグラして安定しません。これでは余計に不安になってしまいます。

といいつつ、私自身、じつは先日、大失敗をしてしまいました。その会では写真撮影もあるとのことで、ついシルエットをきれいに見せようと、ウエストを締めつける服を着ていってしまったのです。そうしたら案の定、腹式呼吸ができず、緊張が解けないまま。そうでなくても緊張しやすいタイプですから、もう頭が真っ白。その会で話すことを1か月ぐらいかけて考えていったのに、1割も話せないまま終了。終わったあとは汗ぐっしょりでした。本当に服装は大事だということをつくづく感じた一件でした。❹ドレスアップの準備披露宴など、フォーマルシーンでは、タキシードやドレス、普段とは違うアクセサリーなど、慣れていないものを身につけることになります。がんばって新調したけれど、なんだか落ち着かないかも……と心配な人は、ぜひ本番前に何度か身につけておくことをおすすめします。そしてそれを着た状態でスピーチの練習をしましょう。細かいことのようですが、些細なことが意外と本番の集中力をそいでしまうのです。小さな心配ごとはさっさと解消してしまいましょう。❺睡眠翌日に長いプレゼンテーションや緊張するあいさつなどが控えているときは、十分に睡眠をとるようにしてください。体や頭を休めるために必要というだけではありません。「のどを休める」という意味でも十分な睡眠は必要なのです。声帯は筋肉ですからもちろん疲労します。昼間の会話で疲れた声帯を休め、疲労をとってあげてください。

(特別付録)1小泉進次郎さんに学ぶスピーチの極意私のレッスンでは、政治家のスピーチをお手本にすることがよくあります。自分のビジョンや政策をわかりやすく語り、聴衆の心に響かせて賛同を得ることは政治家にとって不可欠なこと。ですから政治家には、やはりスピーチ上手な人が多いと思います。そこには私たちにも参考になる上手に話すためのコツが、ぎっしり詰まっています。数多い政治家の中でも、本当にスピーチが上手だと思うのは小泉進次郎さんです。お父さんの純一郎さんもスピーチ上手で知られますが、進次郎さんは若いのにすでにスピーチの達人の域に到達しています。彼は落語ファンだったり、古舘伊知郎さんのトークライブ「トーキングブルース」をプライベートで聴きに行ったりするなど、もともと人前で「話すこと、伝えること」に興味があったのだと思います。彼のスピーチの内容はもちろんいつもすばらしく熱がこもっているのですが、よくよく聞いてみると、とくに具体的なお話をされていないこともあるのです。でもご当地ネタやお客さんいじりをして、その場はものすごく盛り上がっている。聞いている人は「この人なら信頼できる」「何かをやってくれそうだ!」と期待をします。まさに「何を話すか」ではなく「話し方」なんです。❶強調したいところを「高く」「大きく」「ゆっくり」話す第3章「朗読」の項目で述べたこととまさに同じで、進次郎さんは、最もいいたいこと、強調したいことを高くゆっくり話すことで、聞き手の注意を集め、心に響かせるのです。そして強調したい言葉の直前には、驚くほど長い「間」をとります。1000人を超える聴衆を前にしたスピーチで、長い「間」をとるのはかなり勇気のいることですが、彼はそれを堂々とできるのです。たとえば彼の実際のスピーチで「町田には何でもあります。でも、ないものが2つあります」というフレーズがありました。まず「町田には何でもあります」は下げていいます。次の「ないものが」をグッと上げていう。そして「ふたつ」の前にしっかり間をとっていました。そして「ふ」をきっちり発音する。これで「ないものが2つある」ということが聞く人の耳にはっきり飛び込んできます。逆に、それほど重要ではない部分は驚くほどの早口で、声量もセーブして流していました。何をいっているのか聞き取れないところもあるほどで、緩急のつけ方がとても大胆です。しかし重要な話になると、速やかに声が上がり、声量は増します。これによって聴衆の注意を一瞬にして集めることができるのです。❷わかりやすい言葉で簡潔に語る、一文を短くする彼のスピーチを原稿に書き起こしてみるとわかりますが、一文、一文がじつに短くて簡潔です。短い文章を積み重ねて話すことで、聞き手は内容を理解しやすくなります。ここが話し言葉と書き言葉の大きな違いです。逆に、一文が「どこまで続くの?」とあきれるほど長く続くものは理解してもらえません。それどころか「要領を得ない人」というイメージをもたれかねません。「今日、桜木町で街頭演説をやる機会をいただいたんですが、学生時代を思い出すんですが、よくあの中で飲んでました。そしてカラオケを思い出すんですが、私の時々歌う歌に山崎まさよしさんの『ワンモアタイムワンモアチャンス』があるんですが、あの中で桜木町のことを歌ってるんですが……」これだと何がいいたいのかボケてしまい、わかりませんね。「今日、桜木町で街頭演説をやる機会をいただいたこと、学生時代を思い出します。よく、あの中で飲んでいました。そしてカラオケを思い出します。私が時々歌う歌。山崎まさよしさんの『ワンモアタイムワンモアチャンス』。あの中で桜木町のことを歌ってるんです。今日桜木町で街頭演説の機会をいただいたとき、いまの自民党にぴったりだと思ったんです」(小泉進次郎さんの実際のスピーチ)必ず一文が短い。それによって聞く側に非常にわかりやすくなります。❸助詞を上げないこれもすでに述べたことですが、助詞を上げるのは話し方としてNGです。これは政治家でもやってしまう人がいるのです。しかし進次郎さんは助詞を上げません。再度申し上げますが、助詞を上げるのがなぜNGかというと、聞き心地がよくないだけではなく、その言葉が「他人事のように聞こえてしまう」からです。助詞を上げない進次郎さんの話を聞いていると、「自分の言葉で本音を語っている」と自然に思えてきます。❹「えー」をいわないこれも前述したように話の冒頭で「えー」が入るとじつに聞きにくくなりますが、進次郎さんは「えー」をまずいいません。これはお父さんの純一郎さんもそうです。私があるシンポジウムの司会をさせていただいたとき、純一郎さんが1時間の講演をされたことがありました。ちょっと失礼かと思ったのですが、いい機会と思い、何回「えー」をいうかをチェックさせていただいたんです。最初の5分間、会場の空気を読みながら「今日は何を話そうか」と模索している(であろう)ときに、ごく短く「えっ」が3回ありましたが、残りの55分間にはただの一度も出てきませんでした。この忍耐力と集中力は超人級だと思います。

❺身振り手振りを積極的に使う純一郎さんは身振り手振りも非常に効果的に使っていました。聞かせどころでは、両手を振りかざしての熱弁。聞かせどころ以外は、ポケットに手を入れてラフな感じで話してみたり。ポケットに手を入れて話すのは場を選ぶことでしょうが、こうした「体勢」のバリエーションも、話し方にニュアンスを添えてくれる重要な要素となっているのです。進次郎さんはこの父・純一郎さんからスピーチスキルを学び、さらに進化させているように見えます。なぜなら多くのテクニックを自在に操っているにもかかわらず、彼のスピーチは日常会話のような自然さを帯びているからです。言葉の「演奏法」を自分なりに確立されているのです。進次郎さんのスピーチを私の講座で教材としているのは、日常会話でも使えるテクニックが満載されているからです。話を聞いている人たちは、スピーチの間中、彼に釘付けといっていいほど、話に引き込まれてしまいます。そして彼の話にうなずき、「この人はきっと日本をよくしてくれる」と彼のファンになる。「伝える力」は抜群だと思います。「話す技術」があってこそ、その言葉は聞く人の奥深くに届き、心に響くという好例です。興味のある方は、YouTubeなどにアップされている進次郎さんのスピーチを聞いてみてください。話し方において、これ以上のお手本はないといってもいいぐらいです。お父さんの純一郎さんのスピーチもとても勉強になります。念のため申し上げますが、私がおすすめしているのはこの方々の政治的な信条ではなく、あくまでスピーチスキルに特化した話です。

(特別付録)2魚住りえが勝手に添削!著名人の話し方スキル❶石破茂さんは意外な(?)スピーチの達人だった!先だって、とある政治家のパーティの司会をつとめさせていただいたのですが、そこに自民党の石破茂さんがいらっしゃって演説をされました。石破さんというと、低い声で静かにしゃべるイメージがありませんか?少なくともテレビの討論番組や取材に答えるときはそんな感じですよね。ところがいったん壇上に立って演説を始めた石破さんはそんなイメージとは全然違う。その話し方はとても情熱的で、「静」ではなく「動」そのものでした。まず非常に滑舌がよくて、ひとつの音も聞き取れないということがない。全然嚙まないんです。そして抑揚がしっかりついていました。冷静にしゃべっていても、ここぞというときには気持ちがたかぶってきて、感情のあふれた話し方になる。……おそらくですが、計算でなさっていることだと思います。さらに「ここぞ」というときには、3秒ぐらい沈黙を入れる。前述のように一瞬の間を置くことによって、その次の言葉が「立つ」のです。そういうしゃべりの技術が随所に生きていました。そしてなんといってもすばらしいのが姿勢。しゃべっている間、上半身がブレないんです。上半身が横に揺れると声がブレてしまって聞き取りづらいのですが、彼はずっとしっかり姿勢を保っているのです。見ると、手で机をガッとつかんでいらっしゃいました。だから動かない。意図してやっているのか、自然になさっているのかはわかりませんが、これによって声が通り、いっそう聞き取りやすくなっていました。それから足もしっかり踏ん張っていて、ところどころ足で床を踏み、リズムをとっていらっしゃいました。これはテンポよく話すためにとてもいいことだと思いました。政治家には演説の上手な人が多いのですが、その中でも石破さんは本当にお見事だと思いました。私も学ぶところが多かったです。❷ジャパネットたかたの田明さんは、テレビと普段が全然違う!テレビショッピングでおなじみ、ジャパネットたかたの田明さん。方言交じりの独特の口調が受け、幅広い人気を集めていらっしゃいます。この方の話し方は高音で早口。これはたくさんの人の注目を集め、購買意欲を高めるのにとても適したしゃべり方です。私がナレーションをつとめていた『ソロモン流』(テレビ東京系列)にも出演していただいたことがありますが、そのVTRの中で、田さんがものすごく低い声でゆっくり話しているのです。私はあまりの差異に驚き、「この方、俳優さんかなにかをやっていらしたのかな?」と思ってしまったほどです。その後、社長を引退なさる記者会見での話し方が「テレビショッピングと全然違う!」と話題になっていましたが、そのぐらい本番と普段の話し方が違うんです。でもじつは田さんの本番のあのしゃべり方は、決してわざとやっているのではなく、自然と「なってしまう」ものだったんです。あまりにもその商品がすばらしくて、みなさんにおすすめしたいという気持ちがあふれて、あのような声、しゃべり方になってしまうのだそうです。「ここがすごいんです!」「特別なんです!」あれは田さんの本心から出ている声なのですね。これを使ってみんなに喜んでもらいたい、お買い得品をおすすめしたい、その一心なんです。だから聞く人の心に響くのです。その結果がビジネスの成功にもつながっているのだと思います。❸ダウンタウンは話し方も対照的!浜田さん=高くて早口×若い×ハイテンションで元気松本さん=高いがゆっくり×癒やし系×ボケて人に好かれる私がいつも「聞き上手だなぁ」と感心してしまうのが、ダウンタウンの松本人志さんです。

意外に思われるかもしれませんが、松本さんはトーク番組などで相手とからみながら、相手の話をよく引き出し、それをボケにもっていくのがとてもお上手です。そのスキルはほかの人の追随を許しません。これは松本さんがちゃんと人の話を聞いているからこそできること。逆に聞いていなかったらボケることができないのだと思います。一方、浜田雅功さんはMCのスキルはとてもすばらしいのですが、わざと人の話をあまり聞かないというスタンスをとっておられます。ゲストの話などを聞いていても、すぐにイライラして、「ほいで~~?」などとせっついたりしています。聞き方において二人が対照的なのもいいコンビネーションなのかもしれません。❹SMAPの中居正広さんの陰に隠れた努力司会者といえばSMAPの中居正広さんを思い浮かべる人が多いと思います。この方はアイドルなのに、本当にすばらしい司会のスキルをおもちです。中居さんが司会のある番組でアナウンサーが10人ほど出演して「滑舌選手権」みたいなものを行ったことがありました。私も出させていただいたのですが、そのときに中居さんから伺った話がとても印象的でした。彼は前の晩にアナウンサー一人ひとりのプロフィールを読んで、この人にこういう話を振ってこういう話を引き出そうなどと、頭の中で番組をシミュレーションしてきたそうなのです。これはゲストを迎えるときにも常にやっていることなのだと思います。あれだけ仕事が忙しいであろう中で、司会者としてのプロ意識の高さに本当に感心してしまいました。❺浅田真央ちゃんと増田明美さんの話し方は女性のお手本インタビューを受けることが多いスポーツ選手ですが、なかでも「話し方」という点で、際立っているのが浅田真央ちゃん。彼女の話し方は上品で、かつ説得力がある点がすばらしいと思います。まさに女性の話し方のお手本になるといっていいほどです。まず真央ちゃんは話している最中に体を動かさないんです。だから記者会見などでも堂々としているように見えます。そして話し方ですが、まず常に笑顔、そして高めの声です。そして語尾がきっちり「です」「ます」で終わるんです。若い女性によく見られる話し方である、「○○なんですよね~」みたいな話し方をしません。「○○という気持ちで滑っています」といった具合に、きれいに「ます」で終わるから、とても丁寧で上品な雰囲気です。そして一つひとつ短い文を積み重ねるので、とても聞きやすいのです。もうひとり、元マラソンランナーでスポーツジャーナリストの増田明美さん、この方の話し方もすばらしいです。まず彼女はとても丁寧にしゃべります。そして速度はゆっくりで、抑揚をつけるのがとても上手です。そしてすばらしいのが一文ごとに口を閉じていること。これによってとても上品な感じが出ます。実際に話しているのを拝見すると、手振りをしっかりつけていらっしゃいます。体でしゃべっているのです。これは非常に信頼感がもてる話し方なんです。こうしたことがすべて重なっているから、この方の解説はとても聞きやすく、わかりやすいのです。2000年に放送業界で活躍した人に贈られる日本女性放送者懇談会賞(放送ウーマン賞)を受賞されていらっしゃいますが、このお見事な解説ぶりも理由のひとつだと思います。❻ミッシェル・オバマは私の理想アメリカのオバマ大統領の夫人、ミッシェル・オバマさん。スピーチの達人としても知られますが、この方の話し方はまさに私の理想に近いものがあります。彼女は低く落ち着いた声で、本当に言葉にメロディがついて、まるで歌っているかのように話ができるのです。先日来日して、女性の教育についてスピーチをなさっていましたが、とてもすばらしいものでした。彼女はどのスピーチもすばらしく、参考になるのですが、圧巻はなんといっても2008年のアメリカ・民主党全国大会でのスピーチだと思います。オバマ大統領や自身の生い立ちについて語っているのですが、堂々としていて、情熱にあふれ、話の内容がこちらの心にダイレクトに飛び込んでくるのです。スピーチの基本である、「最初は高く、真ん中はちょっと低め、最後は力強く締める」も完璧にこなしていらっしゃいます。会場は感動と興奮の嵐です。彼女はこのスピーチで夫を大統領の座に押し上げたとさえいわれますが、そういわれるのもうなずけるほど、本当に見事な話しぶりです。このスピーチはYouTubeで見ることができるので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。

(特別付録)3魚住式メソッド50のコツを一挙公開!コツ▼「声=洋服」と考え、場面ごとに使い分けるようにするコツ▼3つのやり方で、「いい声」は簡単に出せるコツ▼腹式呼吸のトレーニングは、まずは寝っ転がった状態から始めると簡単コツ▼鼻先に指を当てて、あなたの「一番聞き取りやすい声」を見つけるコツ▼のどに指を添えて、あなたの「一番いい低い声」を見つけるコツ▼てのひらを頭に添えて、あなたの「一番いい高い声」を見つけるコツ▼滑舌が悪い人は、口のまわりの「筋トレ」をすれば、劇的によくなるコツ▼まず「理想の話し方」は何か、モデルを見つけて「目標設定」をするコツ▼大勢の前では「高い声」で話すと、注目を集めやすいコツ▼電話ではいつもより「低めの声」で話すと、相手が疲れないコツ▼「高い声×ゆっくり」話すと、やさしく大らかな印象になるコツ▼「高い声×速く」話すと、元気で明るい印象になるコツ▼「低い声×ゆっくり」話すと、落ち着いた印象になるコツ▼「低い声×速く」話すと、仕事ができる印象になるコツ▼上達への第一歩は「モノマネ」。2つのポイントで徹底的にマネをするコツ▼笑みをつくって話すと、自然とやさしく明るい印象になるコツ▼「口角を上げてしゃべる」は好印象をもたれる魔法の話し方コツ▼唇がのど仏にあるイメージで話すと、自然と声が低くなり、話の説得力も増すコツ▼早口を直すには朗読が最適。一つひとつの音を確認しながら話すことも効果的コツ▼自分の言葉を「聞く意識」をもって話すと、嚙むことが自然に少なくなるコツ▼話を始める前に、「どう伝えるか」というプランを立てるコツ▼「強調したい部分」と「聞き流してもらってもいい部分」を分けるコツ▼5つのテクニックで、話に「抑揚」「緩急」をつけるコツ▼「録音なくして上達なし」。朗読は必ず録音して聞き返す!コツ▼朗読を通して「言葉の反射神経」を磨き、ボキャブラリーも増やすコツ▼相づちは、あえて声を出さずに黙ってうなずくと、好印象になるコツ▼会話のときは、相手との距離感によって「座る場所」を変えるコツ▼話を盛り上げるには、相手が「はい」「いいえ」で答えない質問をするコツ▼自分が知っていることでも、わざと知らないふりをして相手に話してもらうコツ▼会話のときの目線は、「うーん」と考えるときに上下に移動させるコツ▼話すときに上半身を揺らさない。「会話の船酔い」のクセは直そうコツ▼机や電話の近くに、子どもやペットの写真を貼る。写真を見ながら話すと早口にならないコツ▼冒頭の耳障りな「えー」「あのー」をやめるだけで、立派に聞こえるコツ▼語尾を上げる話し方は、不快な印象を与えるのでやめるコツ▼デートでは男性は「ゆっくり話す」、女性は「高めの声」で相手の心をつかむコツ▼初対面の相手は、事前に情報を集め、あとは臨機応変に対応するコツ▼感情はシンクロするので、叱るときは「低い声×ゆっくり」話すのが基本コツ▼話が弾まない相手には「質問力」で乗り切る。「鉄板質問」も用意するコツ▼会話のとっかかりや沈黙は、相手の小物をさりげなくほめて乗り切るコツ▼断るときは「きっぱり×明るく」が基本コツ▼残念な報告は「低い声×速く」で手際よく行うコツ▼上手な謝り方は、頭の中でフレーズを用意しておき、穏やかな口調でゆっくりとコツ▼本番直前に緊張感を最大に高める。本番が始まれば、腹式呼吸で緊張を解くコツ▼ハプニング、失敗が起こったら……素直に白状して笑いをとるコツ▼無理に全員に聞かせようとせず、聞いてくれる数人に「ターゲット」を絞るコツ▼原稿通りに再現するより、アドリブ感を大事にするほうが、話は盛り上がるコツ▼本番前のリハーサルでは、ひとりでもいいから客席で聞いてもらうコツ▼話をするときに必須の飲み物は「水」。お茶やコーヒーはNGコツ▼本番前の食事は軽めに。お腹いっぱいだと、声がしっかり出ないコツ▼リハーサルは、本番と同じ衣装を着た状態で行う

おわりに本書は私の人生初の本です。企画段階から合わせると、じつに3年がかりの「大作」となってしまいました。いまはもう感謝の思いでいっぱいです。10代でアナウンス技術を学びはじめて25年あまり。局アナ時代も含めて、プロのアナウンサーとして活動を始めて20年になりました。これまでの経験をもとに「魚住式メソッド」を立ち上げ、話し方のレッスンを行ってきましたが、それを書籍としてまとめるのは意外なほど大変な作業でした。人前で話すスキルについては自分の中でも確たるものが出来上がっていたつもりでしたが、いままで教えてきたスキルをきちんと言語化し、50のコツとして体系化するというのは、未知の世界だったからです。大変でしたが、反面すごく楽しい作業でもあり、また、自分にとってもスキルを見直すいい経験となりました。私がこの本を書いたのには、あるひとつの思いがありました。日本人はどうしても、自分を思い切って表現することが苦手です。だからこれを読んでいただいて、ためらわずに堂々と自分を表現してほしい、その思いがありました。話すことはコミュニケーションの要です。スピーチやプレゼンだけでなく、ちょっと改まった席での会話、恋人や友達との会話……。仕事も人間関係も、すべて「話すこと」で成り立っています。私たちは「話す」ことにあまりに無頓着ではないでしょうか。その場にいる人が楽しめるようにちょっと工夫したり、準備をすれば、みんなで素晴らしい時間を共有することができます。そうすることで、人間関係がよくなり、友人が増え、仲間が増え、仕事も、デートも、合コンも、就活も、すべてがうまく回りはじめます。この間、とても嬉しいことがありました。私のスピーチレッスンのスクールに来てくださっていた女性二人の結婚が決まったのです。二人ともずっと婚活をしていたのですが、なかなかうまくいかないとおっしゃっていて、思い切ってスピーチレッスンを受けに来られました。最初はどちらも高めの声で、早くしゃべるタイプでした。でも結婚するなら、母性を感じられる落ち着いた女性のほうが選ばれる確率は高くなりますよね。そこでゆっくり話すようにお教えしたところ、スクールを修了したのち縁があり、トントン拍子に結婚が決まったのです。「レッスンで自分に自信がもてたことも大きかった」とおっしゃってくださいました。声と話し方を変えただけで文字通り、人生が変わったのです。この本を手にとってくださったすべての方の人生が、彼女たちと同じように、いい方向に回りはじめることを祈ってやみません。最後になりましたが、魚住式メソッドの立ち上げから、運営、そして現在に至るまで、時間や労力を惜しまず、まるで自分の事のように協力してくれた友人たち。そばにいていつも私を応援し支えてくれる家族。そして私にたくさんの「気づき」を与えてくれた受講生の皆様。本当にありがとうございます。深く感謝申し上げます。また、本書を上梓するにあたっては、編集スタッフの皆様に本当にお世話になりました。スタッフの皆様のご尽力がなければこの日を迎えることができませんでした。この場を借りて厚くお礼を申し上げます。そして……なんといっても、本書を最後まで読んでくださった皆様。本当にありがとうございました。本書がきっかけとなり、声と話し方に少しでも自信が生まれ、新しい人生がはじまる契機になれば、著者として望外の喜びです。2015年7月魚住りえ

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