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第2章自分の本当の声を定着させる「発声レッスン」

目次

発声基本知識1声が出る「声帯」はどこにあるか?

あなたは、声がどこから出るかご存じですか?「喉!」それは誰だって知っていますよね。

では、喉のどのあたりから声が出るか考えたことがありますか?こう言うと「??」と疑問符がつく人も多いと思います。

前置きはこれくらいにして、自分の声が出る場所はズバリ「声帯」。

その声帯のある場所もわからない……という人のために、瞬時に確認できる方法をお教えしましょう。まず、顎を下げながら、口を軽く開け、思い切り「ハッ」と息を吸ってみてください。そうすると、喉の奥のほうで冷たく感じる場所があるはずです。

「あれ?冷たく感じないなぁ」という人は、さらに息を思い切りスピードよく深めに吸ってください。どうでしょうか。今度は冷たく感じたのではないでしょうか。その冷たく感じた場所、そこが声帯のある場所です。

声帯には左右に「ハの字」の形をしたヒダのようなものがついており、ふだん、黙っているときは開いた状態になっています。

しかし、声を出そうとすると、そのヒダがくっついて「A(あ)」とか「I(い)」という音に変換され、声として出る仕組みになっています。

そして、冷たく感じるというのは、声帯が正常な状態である証拠。

何度試しても冷たく感じないようでしたら、声帯やその周辺に炎症や疾患が起きている可能性があるので、医師に診てもらうといいかもしれません。

発声基本知識2母音「あ」の声で、あなたの最良の声がわかる

本題はいよいよここから。あなたの声帯の出番です。

まず、顎を大きく下げ、口をしっかり開けた状態にします。次に両手の人差し指で、耳の頬側の出っ張っている軟骨のすぐ横を押さえてください。上下に骨があり、その境にくぼみがありますよね。確認できましたか。このくぼみ周辺が顎関節と呼ばれる場所です。

このくぼみの部分を軽く人差し指で押さえながら顎を下げた状態にして、指を2本分縦に入るくらい口を開けます。

そして、下の歯の裏の部分に舌先をつけて、ハリのある少し大きめの声で「あいうえお」の「あ」を発してみてください。

では、手順を整理します(あなたの本当の声を探す参照)。こうして発した「あ」の声。

実はこれがあなたにとって一番言いやすい高さの声なのです。言い換えれば、いくらしゃべっても疲れない声、他人が聞き取りやすい声なのです。試しに、もう1回、「あ」と発してみてください。

「思ったより、自分の声は低いなぁ(高いなぁ)……」と自分の声の意外性に気づいた人もいるのではないでしょうか。

一方で、ストレスを感じることなく自然体に声が出せたはずです。そう、このストレスを感じることなく自然体に声が出せるというところがミソ。それはとりもなおさず、もっとも自分らしい声である証拠なのです。

そこで、まずは「あ」の発声レッスンを日ごろから行ってみてください。朝、起きたら、歯を磨くついでに鏡に向かってやってみる。

東京渋谷の交差点のような人混みの騒がしい場所や、誰もいないトイレでやってみる。これだけでも、自分の声の最適なポジションが確認できるようになります。

最適なポジションが確認できれば、それを商談・プレゼン・面接・電話応対などで生かせることもわかってきます。「あ」と発することで、自分の声の最適なポジションを知る。まずはこれです。

発声基本知識3母音それぞれの発声は口の開け方によって違う

「あ」という言葉を発すると、なぜ自分の声の最適なポジションを知ることができるのでしょう。「い」や「う」といったほかの母音ではダメなのでしょうか。

実は「あ」は「あいうえお」の中でも軸になる母音であることが関係しています。

そのことをお話しする前に、あなたにお尋ねしますが、ふだん「あ」「い」「う」「え」「お」を発するとき、どんな口の開け方をしていますか。

どれも半開きでしょうか?口をパクパクさせているだけでしょうか?それはいただけません。

正確に言うと、「あ」「い」「う」「え」「お」を発するとき、説明母音の正しい発声法、イラスト母音の正しい発声法を参考に以下のように口を開いてほしいのです。

すべてに共通して言えるのは、下の歯の裏の部分に舌先をつけて声を出すこと。

いずれにしても、「あ」「い」「う」「え」「お」の発声は、口の開け方によってどれも違ってくることがこれでおわかりいただけると思います。

発声の基本メソッド1口を開けた「開口形」と口を横に開いた「閉口形」という2種類の発音

「あ」「い」「う」「え」「お」の発声をするときに、あなたはもう1つ、あることに気づいたでしょうか。

まず、イラスト母音の正しい発声法のイラストにある「う」と「お」のところをご覧ください。口が丸みを帯びた形で開いていますよね。これは顎が開いたままなので、私はこの状態を「開口形」と呼んでいます。

「い」と「え」はどうでしょう。同じく口は開いているものの、細長く、横に広がっています。この状態を「閉口形」と呼んでいます。

つまり、「お」と「う」には口を縦方向に丸く開くという共通点があり、「い」と「え」には口を横に開くという共通点があるのです。

では、「あ」はどうでしょう。こちらは口を丸く開き、口をやや横に広げるという点においては、開口形と閉口形のどちらにも該当します。

しかも、「あ」「い」「う」「え」「お」の中で一番大きな声で言えるし、響きやすいという特徴もあります。だから、「あいうえお」の中でも、「あ」は軸になる母音なのです。

いずれにしても、母音の発声は、開口形・閉口形によってどれも違ってくるとしたら、「あ」だけではなく、そのほかの母音の正しい発声の仕方も習得する必要があります。

次にそのためのノウハウをお伝えするので、読みながら実践していきましょう。

発声の基本メソッド2開口形の発声「AOUレッスン」

最初に、開口形の母音の正しい発声の仕方から始めましょう。

開口形の発声を行うにあたっては、「あ」「う」「お」ではなく「あ」「お」「う」の順番で行ってください。そのほうが、だんだんと口がつぼんでいくためやりやすいからです。口の開け方は、次のポイントになります。

また、前述したように、顎を大きく下げ、顎関節のくぼみ(上下の骨の境目)を両手の人差し指で押さえることも忘れないように。

その部分を押さえながら、上下の顎の骨が開いた状態を確認しながら思い切り大きな声で「あ」「お」「う」と発してください。

小さな声だと声帯のヒダがピタッとくっつかないため、ハリのある声が出ないからです。ですから、「これ以上は出ない」という声で発声してください。

しかし、ビギナーはいきなり「あ」「お」「う」(以下、「AOU」)から始めるのではなく、「あ」「お」「あ」(以下、「AOA」)の練習から始めることをお勧めします。

「AOU」の中でもUの発音はもっとも難しく、つぶれやすいという特徴があります。

そのため、A(大きく口が開いた状態)から、O(Aよりも気持ち口をつぼめた状態)を経て、Uに移行すると、人によっては開いていた顎が無意識のうちに閉じてしまい、Uの発音がうやむやになってしまうことがあるからです。

そこでまずは「AOA」のレッスンを行い、顎を大きく開いたまま、「Aで大きく口を開く→Oで気持ち口をつぼめて開く→Aで再び大きく口を開く」コツをマスターしてほしいのです。

その際、注意していただきたいのは、A→O→Aの順番で声を出したとき、最初のAと最後のAが同じポジション(音程・トーン)にくるようにすること。

最後のAが上がってしまったり下がってしまったりすることのないように、最初のAを発するときと同じ口の開け方を心がけ、同じ響きで発するように努めましょう。

このようにして、「AOA」の口の開け方・声の出し方に慣れてきたら、いよいよ「AOU」のレッスンを行う番です。

Uは先ほども述べたように、人差し指を1本包むくらいの感じで唇をつぼめると同時に、タコの口のように唇を思い切り前に突き出した状態で声を発してください。

要するに、「Aで大きく口を開く→Oで気持ち口をつぼめて開く→Uで口をさらにつぼめ、唇を前に突き出す」の流れをマスターするのです。なお、Uを発するときも、顎を大きく開くのを忘れずに。

顎関節の上下の骨が開いたまま(人差し指で押さえたくぼみがキープできたまま)、Uがきちんと言えるかがポイントになります。

もちろん、初めのうちは慣れないため戸惑うこともあるかもしれません。今までとは違う発声を行うわけですから、不自然さやぎこちなさを感じることもあるでしょう。

しかし、この項で述べたことをいつも意識しながら「AOUレッスン」を行えば、自然とできるようになります。

発声の基本メソッド3閉口形の発声「IEAレッスン」

開口形の「AOUレッスン」に続いて、今度は閉口形の「IEAレッスン」です。口の開け方は、次の通りです。

IとEを発する際の最大の注意点は、「これ以上、横に行かない」というところまで口を横に開き、なおかつ「これ以上、上がらない」というところまで口角を上げること。

また、このレッスンでA(あ)を発するときは口を大きく開けないで、IやEと同じように横に広げるようにします。

端的に言うと、「Iで口を横に開き、口角を上げる→Eでさらに口を横に開き、口角を上げる→Aで口を横に開く」コツをマスターするのです。その状態でニコッとしながら、リラックスした感じでIを発すると、声帯のヒダがピタッとくっつきやすくなります。

試しに、Iと発してみてください。今までとはちょっと声の質が違う感じがしませんか。いい感じの声がしませんか。それもそのはず。

声帯のヒダがピタッとくっつくというのは、自分にとって一番言いやすい状態にあるからです。

そして、口をさらに横に開いたまま、口角をさらに上げた状態で、ニコッとしながらEと発してください。

このときも声帯は同じようにピタッとくっついているので、やはり、いい感じの声がすると思います。「AOUレッスン」と同じように、これもこまめに行ってみてください。

発声の基本メソッド4開口形と閉口形の発声「IEAOUレッスン」

「AOUレッスン」と「IEAレッスン」が、ある程度マスターできるようになったら、最後は母音全部のレッスンを通しで行ってみましょう。

名づけて、「IEAOUレッスン」。それにしても、なぜIEOAUなのか?実はこれにもきちんとした理由があります。

おさらいを兼ねて言うと、IとEは閉口形、Aは閉口形と開口形の両方に共通し、OとUは開口形です。つまり、この順番で行うと、自然体に無理なく口を動かせるというメリットがあるのです。

これがたとえば、「AIUEO」の順番通りだとしたらどうでしょう。

口を横に大きく広げたかと思えば、次は顎を大きく開いて発声しなければなりませんし、その次は、また口を横に大きく広げなければならない……といったように口の形が混ざってしまいます。

すると、口が動かしづらくなり、発声がしにくくなってしまいます。順番のメリットはほかにもあります。それはIから発すると、声帯のヒダが一番くっつきやすくなるため、言いやすいこと。

これは喉──声帯に負担がかかっていない証拠で、おしなべて言うと、閉口形から入ったほうが声帯のためにもいいのです。

いずれにしても、母音全部のレッスンを通しで行うときは、「IEAOUレッスン」を心がけ、暇を見つけては繰り返すようにしましょう。

数日も行えば(人によっては数時間で)、自分でもびっくりするくらい、いい感じの声になっていることを実感するに違いありません。

発声の応用メソッド1開口形と閉口形の発声で、あなたはどちらが話しやすいか?

ここで、第1章で述べたことを思い出してください。私は次のようなことを言いました。

「はじめまして。○○○○(自分のフルネーム)です。よろしくお願いします」という言葉を口にしたとき、「はじめまして」が言いやすい(言いづらい)人もいれば、「よろしくお願いします」が言いやすい(言いづらい)人もいる。

誰でも、必ずどちらかが言いやすく、どちらかが言いづらい。その謎をここで解き明かしましょう。

まず「はじめまして」に注目してください。HAで始まり、TEで終わりますよね。HAは開口形&閉口形。TEは完全な閉口形。ということは、この言葉は閉口形ということになります。

「よろしくお願いします」はどうでしょう。YOで始まり、SUで終わっています。YOは開口形。SUは無声音──この末尾の母音Uは、実際にはほとんど発音されません──となるため、その前の文字であるMAで判断してください。

すると母音はAですから開口形兼閉口形。したがって、こちらは開口形ということになります。

  • 「はじめまして」が言いやすい人は、閉口形の発声が得意。
  • 「はじめまして」が言いづらい人は、閉口形の発声が苦手。
  • 「よろしくお願いします」が言いやすい人は、開口形の発声が得意。
  • 「よろしくお願いします」が言いづらい人は、開口形の発声が苦手。

ウソか本当か、「AOUレッスン」と「IEAレッスン」を思い出してみてください。

「AOUレッスン」が比較的すんなりいった人もいれば、そうでない人もいたと思います。「IEAレッスン」が比較的すんなりいった人もいれば、そうでない人もいたと思います。

両方、すんなりいった人はまずいないでしょう。これも理屈はまったく同じです。

「AOUレッスン」が比較的すんなりいった人は開口形が得意で、そうでない人は開口形が苦手。「IEAレッスン」が比較的すんなりいった人は閉口形が得意で、そうでない人は閉口形が苦手……。

「はじめまして」が言いやすい(言いづらい)理由、「よろしくお願いします」が言いやすい(言いづらい)理由が、これで納得いただけたのではないでしょうか。

でも、どちらかが苦手なことがわかっても落ち込むことはありません。むしろ、わかっただけでも大きな収穫というもの。なぜなら、この苦手意識を克服するためにこの本をこうして書き著しているのですから。

発声の応用メソッド2開口形と閉口形それぞれの発声のポイント

開口形と閉口形の苦手意識は、どうすれば克服できるのでしょうか。

閉口形の母音(IとE)を発するときは、口を横に開き、口角を上げることがポイントになります。笑顔をなるべく意識しながら、にっこりとした表情でしゃべるようにしてください。

「はじめまして」を例にとると、「IEAレッスン」のところでも述べたように、この言葉は閉口形となるので、最初の「HA」を発するときは口を大きく開けるのではなく、できるだけ横に広げるようにして、最後の「TE」は口を思い切り横に開くようにするのです。

その際、いずれも口角を上げることを忘れないようにしましょう。そうすれば、おのずとにっこりとした表情になります。開口形の言葉の場合は、やわらかくできるだけゆっくりとした口調でしゃべることが大切になってきます。

おさらいを兼ねて言うと、開口形の母音を発するときは、大なり小なり、丸みを帯びた形で口を開けなければなりません。ということは、急いでしゃべると、口(喉)が疲れてくるし、人によってしどろもどろ状態になります。

これでは相手も聞き取りづらくなります。しかし、やわらかくゆっくり母音を発すれば、しゃべり方も楽になるし、相手も聞き取りやすくなります。

ですから、「よろしくお願いします」を例にとると、最初の「YO」を発するときは顎を大きく開きながら口をつぼめ、最後の「SU」は無声音なので、軽く「ス」とゆっくり言えばいいわけです。そうすれば、おのずとやわらかく、ゆっくりとした口調でしゃべることができるようになります。

発声の応用メソッド3自己紹介に必要なあなたの名前にも開口形と閉口形がある

これで「はじめまして」(閉口形)と「よろしくお願いします」(開口形)の要領はだいたいつかめたと思います。

しかし、これだけではまだ不十分。今度は中間部分の「○○○○(自分のフルネーム)です」にも注意を払う必要があります。

まず、しっかりと認識してほしいのは、あなたの名前(フルネーム)にも開口形と閉口形があるということです。

たとえば、あなたの名前が三浦耕平(みうら・こうへい)さんだとします。三浦の「み(MI)」は母音がIのわけですから、閉口形で始まります。耕平の「い(I)」も同じく母音がI。これも閉口形です。

ということは、当然、閉口形の発声となるので、口を横に開き、口角を上げるように意識することが大切です。つまり、にっこりとした表情で穏やかな口調でしゃべるように心がければいいのです。そうすれば、相手は好印象を抱くこと間違いないし、何よりも自分の表情や心もポジティブになります。

では、あなたの名前が村田真由(むらた・まゆ)さんだとしたらどうでしょう。村田の「む(MU)」は母音がU。開口形で始まります。真由の「ゆ(YU)」も同じく母音がU。開口形で終わります。

そうなると、最初も最後も、口をつぼめることがポイントになるため、やわらかくゆっくりとした口調でしゃべればいいわけです。そうすれば、相手に正確に自分の名前が伝わりやすくなります。

発声の応用メソッド42つの発声法が混ざった名前の場合のポイント

世の中、フルネームの母音が開口形(閉口形)で始まり、開口形(閉口形)で終わる人ばかりとは限りません。

水戸の黄門様こと徳川光圀(とくがわ・みつくに)のように、開口形(TO)で始まって、閉口形(NI)で終わる人もたくさんいます。

京セラの創業者・稲盛和夫(いなもり・かずお)さんのように、閉口形(I)で始まって、開口形(O)で終わる人もたくさんいます。

では、そういう人はどのような口調で自己紹介をすればいいかというと、まず苗字と名前を区切ることから始めてください。

そして、苗字の最初と最後の母音、名前の最初と最後の母音を意識するのです。

たとえば、徳川光圀ですと、徳川はTO・KU・GA・WAと全母音にわたって開口形が含まれています(GAとWAは開口形兼閉口形)。これに対し、光圀はMI・TU・KU・NIと最初と最後の母音は閉口形です。

したがって、「徳川光圀です」と言う場合は、苗字を口にするときはやわらかくゆっくりとした口調でしゃべり、名前を口にするときはにっこりとした表情で穏やかな口調でしゃべるようにすればいいのです。

では、稲盛和夫の場合はどうでしょう。

稲盛はI・NA・MO・RIと最初と最後の母音は閉口形。和夫はKA・ZU・Oと全母音が開口形(KAは開口形兼閉口形)になっています。

つまり、苗字を口にするときは、にっこりとした表情で穏やかな口調で、名前を口にするときは、やわらかくゆっくりとした口調でしゃべればいいのです。

発声の応用メソッド5自己紹介の名前の最後にくる「です」「ます」の発声ポイント

ところで、フルネームの開口形・閉口形を問わず、自己紹介する場合は、にっこりとした表情で穏やかな口調で締めくくったほうがいいときもあれば、やわらかくゆっくりとした口調で締めくくったほうがいい場合もあります。

なぜだか、わかりますか?自己紹介するとき、「はじめまして。村田真由。よろしくお願いします」とは言いませんよね。「村田真由です」と、必ず「です」をつけます。

「です」の「す(SU)」は無声音です。ということは、その1つ手前の「で(DE)」の閉口形の母音が判断材料になるわけです。

したがって、「村田真由です」というときは、にっこりとした表情で穏やかな口調でしゃべったほうが好ましいのです。

では、「村田真由と申します」という場合はどうでしょう。

「ます(MASU)」の「す(SU)」は無声音のため、その1つ手前の「ま(MA)」の発声が重要になってきます。

MAの母音は開口形と閉口形を兼ねています。つまり、こちらの場合は開口形なので、やわらかくゆっくりした口調でしゃべることが大切になってくるのです。

発声の応用メソッド6開口形と閉口形の違いを知っていればさまざまな場面で使える

「開口形の言葉はやわらかくできるだけゆっくりとした口調でしゃべる」「閉口形の言葉はにっこりとした表情で穏やかな口調でしゃべる」これが基本の発声です。

これは先ほど例に挙げた、「はじめまして」「よろしくお願いします」といった言葉以外にも、日々のいろいろな場面で使うことができます。

たとえば「ありがとう」という言葉があります。この言葉はAの母音で始まり、Uの母音で終わるので開口形です。ということは、やわらかくできるだけゆっくりとした口調でしゃべったほうがいいということになります。

この「ありがとう」を口にするとき、あなたはどんな言い方をしていますか。

部下や後輩にお茶を入れてもらったときなど、温かみを感じない無機質な言い方をしていませんか。あるいは「ありがと」と、最後の「う」が抜けたような、つっけんどんな言い方をしていませんか。

それだと感謝の気持ちがあまり伝わらないため、部下や後輩もそれほどうれしいとは感じないと思います。ですから、そういうときこそ、やわらかくできるだけゆっくりとした口調で「ありがとう」と言ってあげてほしいのです。

そうすれば、感謝の気持ちが必ず伝わるし、部下や後輩の存在価値を高めることにもなります。

では、「行ってらっしゃい」という言葉はどうでしょう。こちらは最初の母音も最後の母音もI。閉口形の典型です。

したがって、部下が「打ち合わせに行ってきます」と言ってきたら、「行ってらっしゃい」と、にっこりとした表情で穏やかな口調で送り出してあげてほしいのです。

くどいようですが、その際、口角を上げることも忘れないように。そうやって、笑顔で送り出してあげれば、部下のモチベーションもアップするに違いありません。

あるいは、あなたが職場の仲間に向かって「行ってきます」という場合も、笑顔を大切にするべきです。

「行ってきます」の最初の母音はI。最後のSUは無声音。SUの1つ手前の開口形と閉口形を兼ね備えたMAの母音が重要になってきます。つまり、「行ってきます」も閉口形なので、同じくにっこりとした表情で穏やかな口調を心がけてほしいのです。

そうすれば「あいつ、やる気満々だな」「テンション高いな」ということで、それに触発されて、職場のメンバーの士気も高まるに違いありません。

発声の応用メソッド7会話はどの母音で始まり、どの母音で終わるかに注意する

こうして見ると、声の出し方・発声の仕方によって、周りの人に与える印象がだいぶ違ってくることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

だとしたら、これからは「この言葉は開口形かな?閉口形かな?」といったことを意識しながら、どの母音で始まり、どの母音で終わるかに敏感になるといいと思うのです。

実際、私たちが常套語のように用いている開口形・閉口形の言葉は、ほかにもたくさんあります。

こんにちは(開口形)おつかれさま(開口形)いただきます(閉口形)いらっしゃいませ(閉口形)「おつかれさま」という言葉1つとっても、退社するときに、上司からやわらかくゆっくりとした口調で言われたら、なんとなく気分が良くなりますよね。

いかにもねぎらわれたという気持ちに変わります

退社後、同僚と居酒屋に入ったとき、開口一番、お店の人から「いらっしゃいませ」と、にっこりとした表情で穏やかに言われたらどうでしょう。

ホッとします。あるいは、穏やかではないものの、笑顔で威勢よく「いらっしゃーい」と言われても気分がいいですよね。

「よーし、商談もまとまったことだし、今夜は飲むぞ!」と上機嫌になります。そうです。母音の特性を生かした発声法は格好のコミュニケーション・ツールとなってくれるのです。

それによって、周りの士気が上がり、誰からも好感を持たれるようになるのです。しかし、今まで述べてきたことは最良の声を出すための必要最低条件であって十分条件ではありません。では、そのほかに、どういったことを心がけたらいいのでしょうか。

呼吸について1声に自信のない人の呼吸は口呼吸

あなたは息を吸うとき、鼻から吸っていますか?それとも口から吸っていますか?いきなりこう言われたら、戸惑ってしまう人が多いのではないでしょうか。

もし、あなたがそうだとしたら、おそらく口から息を吸う「口呼吸」をしているはずです。念のため、鼻でゆっくり息を吸ってから、口で「フー」と吐く。これを数回繰り返してみてください。

どうです?違和感を覚えますか?それとも違和感なくできますか?もし、違和感を覚えるようなら、これはもう完全にいつも口呼吸をしている証拠。これからは、ぜひとも鼻呼吸に切り替えてください。

口呼吸は呼吸が浅く、声帯に息が直接冷たい風となって当たるため、声が枯れやすくなるという難点があります。呼吸が浅いと、短いフレーズしか口にできなくなります。

そのため、話もブツブツと細切れ状態となり、相手に不快感を与えることにもなりかねません。

商談やプレゼンの発表や就活面接のとき、そうなったらもう完全にアウト。

電話営業ならば、相手にガチャンと切られてしまうのがオチです。

しかし、鼻呼吸を習慣にしてしまえば、そんな心配もなくなります。

むしろ、いいことずくめです。

詳細はこの後、お話ししますが、鼻で息を吸えば、息が長く続くため、脳にもたくさんの酸素が行きわたるようになります。それによって、心を落ち着かせたり、頭の回転が良くなる効果が期待できます。

また、何よりも鼻から息を吸うことで、お腹にも自然と息が入っていくので、「腹式呼吸」を楽に行うことができます。

つまり、いちいち腹式呼吸を意識しなくても、鼻から吸って、声を出すようにすれば、おのずと腹式呼吸の状態でしゃべれるようになるのです。

呼吸について2鼻呼吸をすることによるたくさんのメリット

鼻呼吸には、具体的にどんなメリットがあるのでしょう。

まず、先ほども述べたように、鼻呼吸をすると、脳にも酸素が多く回るようになるため、心が落ち着いた状態になる点を挙げることができます。

自分で試してみるとわかりやすいと思いますが、口呼吸はイコール胸呼吸のため、「ハアハア」といったように、なんとなくせわしさがあります。ところが、鼻から息を吸うと、「間」ができます。この「間」が重要ポイントで、間があるといろいろなことが冷静に考えられるという利点があるのです。

たとえば、上司が部下と一緒に得意先に商談に赴いたとします。ところが、プリントアウトしたその企画書を部下が持参し忘れました。もうすでに、2人は得意先の玄関口にいます。引き返す時間などありません。

そういうとき、上司はとにもかくにも鼻呼吸に切り替えたほうがいいのです。そうすれば、部下に対してカッとなったり、興奮することもなく、心を落ち着かせることができます。

むしろ、「自分のタブレットに社内にいる別の部下からデータを送ってもらおう」といったように、対処策がひらめく可能性もあるのです。

呼吸について3最高のパフォーマンスは鼻呼吸から生まれる

鼻呼吸のメリットはほかにもたくさんあります。

この本のテーマに即して言うと、鼻呼吸を行うことによって、ハリのあるよく通る声が出せるようになる点も大きなメリットの1つです。

鼻呼吸をすれば息(空気)がおのずとお腹に入るようになり、お腹にしっかり溜まった空気を口から出せば、声にもハリが出るようになるからです。

これが口呼吸だと、息(空気)が胸に溜まってしまいお腹にまで入っていかなくなります。ということは、吐く息の量も限界があり、どうしても息がもれやすい声になってしまうのです。

鼻呼吸によってもたらされる声の恩恵はそれだけではありません。

人間の自律神経は交感神経と副交感神経から成り立っていて、何かに集中していたり、緊張しているときなどは交感神経が高まり、リラックスしているときは副交感神経が高まるようになっています。

鼻呼吸はイコール深呼吸。つまり、深呼吸をすることによって交感神経の働きが弱まり、副交感神経の働きが高まるようになるのです。

副交感神経の働きが高まるとどうなるか。だんだんとリラックスしていくわけですから、緊張感が緩和され、血圧や心拍数も下がるようになります。大切なのはここからで、そうなればその状態があなたの声にも反映されるようになります。

商談の場、プレゼンの場、面接の場などにおいては、鼻から息を吸うたびに「間」ができるため、ひと呼吸おいて、ゆったりとした口調でしゃべれるようになります。

商談や面接などで、相手から突っ込んだ質問をされても、焦ったり、気が動転することもありません。

鼻呼吸をすることで、相手の話を傾聴しながら言うべきことが頭の中で整理できるため、声がうわずることもなければ、モゴモゴとこもることもありません。ゆったりとした口調はそのままキープが可能です。

それによって、より自分らしい最高のパフォーマンスが発揮できるようになるのです。

ちなみに、声の出し方とは直接関係ありませんが、イライラしているときは、鼻の穴を指で左右片方ずつ押さえながら鼻呼吸を行ってみるのも1つの方法です。

右の鼻の穴から息を吸って吐く。左の鼻の穴から息を吸って吐く。これは通常の鼻呼吸を行うよりも倍の時間がかかります。しかし、そうすることによって呼吸が瞬く間に整い、イライラが解消。

心がみるみる落ち着いてきます。

問題を抱えていても冷静な判断が下せるし、いいアイディアも湧いてきます。意外と効果があるので試しにやってみてはいかがでしょうか。

腹式呼吸法1「腹式呼吸」は横隔膜を使う

さて、鼻呼吸の大切さがおわかりいただけたら、次はいよいよそれをベースにした腹式呼吸を行う番です。

その前にあなたにお尋ねしますが、横隔膜が身体のどこにあるかご存じですか?エッ?なんとなく?でも、腹式呼吸を行うためには横隔膜を意識しなければならないので、位置を知っておくことも重要です。

そこで、はじめに横隔膜のある場所を確認しておきましょう。まず、喉のあたりから下に向かって骨をたどっていってください。すると、みぞおちのあたりで骨がなくなる箇所があります。

そこから、両手で外側に向けて、骨(肋骨の最下部)をたどってみましょう。そのあたりから、おへそのあたりまでのゾーン。ここに横隔膜があります。

この横隔膜を使って(意識して)発声をしていくのが、私が編み出した「島田式腹式呼吸発声法」なのです。

腹式呼吸法2簡単!1分でできる「腹式呼吸法」

それではさっそく、「島田式腹式呼吸発声法」を説明しましょう。

「島田式腹式呼吸発声法」

  • 1.下腹部に両手を軽く当てる。
  • 2.鼻から息を吸う。
  • 3.お腹がふくらんだ状態をキープする。
  • 4.お腹がふくらんだ状態をキープしたまま、口から息をスーッと吐く。

※息を吐くとき大切なのは、インナーマッスルを鍛えるのとは異なり、お腹のふくらみをキープすること。胴体を土管のように筒状に保つイメージです。以上が、基本動作。

この基本動作をマスターしたら……、

5.今度は口から息を吐くとき、お腹のふくらみをキープしたまま(胴体が土管のように筒状になったままの状態)で、「あ」「あ」「あ」と声を出す。

※「あ」の声を発するときは、顎を大きく開き、口をしっかり開ける(指が2本分縦に入るくらいの大きさ)。そして、下の歯の裏の部分に舌先をつける(「発声基本知識2母音「あ」の声で、あなたの最良の声がわかる」参照)。

いずれにしても、声を出すとき、お腹のふくらみを意識し、胴体を土管の状態にすれば、「あ」の声はかなり響いていきます(逆にお腹がゆるまった状態だと、声は響くこともなく、遠くへ飛んでいかなくなります)。

また、せっかくなので前述した「AOUレッスン」「IEAレッスン」、そして「IEAOUレッスン」も併せて行ってみてください。各々15秒。

これならトータル1分間で行えます。

それと、この腹式呼吸発声法を行う前に、第1章で述べた「声を出す前の3分間ストレッチ」も必ず行ってください。

今日からさっそくレッスンを始めれば、数日後には(早い人は数時間後)自分でもびっくりするほどの声の響きを感じるに違いありません。

腹式呼吸法の応用1腹式呼吸ができれば声の大きさを自由に調節できる

腹式呼吸発声法を行えば、ハリのあるよく通る声が出せるようになり、かなり響くようになります。しかし、なかにはこう反論する人もいるかもしれません。

「あまり効果を感じないし、相変わらず、声がか細く小さいような感じがする……」そういう人はズバリ息を吐く量──息圧に問題があります。

ロウソクの灯を息で吹き消すときのことを思い出してください。「フーッ」と強く吹けば、簡単に消えますが、弱いとなかなか消えませんよね。これは息圧が弱い証拠。

同様に、吐く息の量が足らないと、小さく、か細い声しか出ないのです。息の量は声の大きさと比例するのです。

こういうと、またまた「私は生まれつき声が小さいから、今さら大きな声なんて出せないよ」と反論する人がいるかもしれませんが、それは思い違いもいいところ。勝手にそう思い込んでいるだけにすぎません。

たとえば、ボリュームの調節が10段階可能のオーディオ機器があるとします。

ふだんはボリュームをレベル3にして音楽を聴いていても、「もっと大きな音で聴きたい」というときは、レベルを4、5とどんどん上げることができます。

逆に「小さな音で聴こう」というときは、レベルを2や1に下げることもできます。あなたの声も同じ。その気になればボリュームのレベルをどんどん上げていくことができるのに、自分はこれくらいの声しか出せないと勝手に思い込んでいるだけなのです。

あなたが知らないだけであって、今よりももっと大きな声・力のある声が出せるようになるのです。

腹式呼吸法の応用2腹式呼吸を使って「息圧を強くするためのレッスン」

大きな声・力のある声が出せるようになるためには、息圧を強くするためのレッスンを行う必要があります。

やり方としては、以下の手順を踏むようにしてください。

息圧を強くするためのレッスン1.姿勢を正す息圧を強くするためのレッスンを行うにあたって大切なことがあります。それは「姿勢」です。立ってレッスンを行う場合は、両足に同じように重心をかけ、足の親指を意識して立つようにしましょう。そうすることで自然と姿勢がピンと真っすぐになります。このとき、カカトは地面に着くか着かないかくらい、リラックスした状態に保っておきます。

座って行う場合は、足の親指に力を入れ、椅子にお尻が軽く乗るくらいの感じで、あまり深く腰掛けないようにしましょう。腰に手を当て押したとき、反発するくらいの状態がベストです。いずれにせよ、この姿勢を保てば、お腹に息が自然と入りやすくなります。

2.基本レッスンまずは、鼻で息を吸い、口から息を吐くことを慣らすためのレッスンです。鼻でたっぷりと息を吸い、お腹にとにかくいっぱい息を溜めてから、無声音で「スー」と思い切り息を吐き切る練習から始めましょう。

お腹は凹まないように、ふくらんだ状態のまま、「スー」という無声音がうるさく感じるくらいがちょうどいいかもしれません。これを5回ほど行ってください。

3.1秒に1回ずつ息を吐くレッスン「こんにちは」「お世話になります」というとき、「こ」や「お」といった語頭がモゴモゴした感じで不明瞭だと、その後に続く言葉も小さく不明瞭になります。

そうならないためには、最初の言葉を勢いづける必要があり、これはそのためのレッスンです。1秒間に1回、「スッ」と鋭く息を吐く感じで、これを「スッスッスッ」と合計3秒行うようにしましょう。この「スッスッスッ」を1セットとし、少し間を置くなどして、5~10セットほど繰り返してください。

「スッスッスッ」と息を吐き切ったら、鼻で息を吸い、お腹にしっかり溜めてから、再び「スッスッスッ」と息を吐き切るのがポイントになります。

4.2秒かけて1回ずつ息を吐くレッスン「はじめまして。○○○○(自分のフルネーム)です。よろしくお願いします」というフレーズを口にする場合、ある程度の秒数がかかります。

ということは、ある程度長いフレーズを大きな声・力のある声・よく通る声でしゃべらなくてはなりません。そのためのレッスンがこれ。1秒で鼻から息を吸い、2秒かけて口から「スーッ」と息を吐く。再び、1秒で鼻から息を吸い、2秒かけて口から「スーッ」と息を吐く。これも5~10回ほど繰り返すようにしましょう。これは語尾までしっかり言えるようにするためのものです。

5.3秒かけて1回ずつ息を吐くレッスン2秒かけて1回ずつ息を吐くレッスンの次は、3秒かけて1回ずつ息を吐くレッスンです。

このレッスンはちょっと難しいのでイラストを交えながら説明していきましょう(イラスト3秒かけて1回ずつ息を吐くレッスン参照)。

a.おへそのあたりにどちらかの手を当て、鼻から息をたっぷりと吸う。

b.お腹をふくらませた状態で、お腹に溜めた息を口から吐きながら、その手を大きな円を描くように(頭でイメージしながら)、胸から顔へと持っていく。

c.さらに手を頭上へと大きく伸ばす。

d.おへそにある息を、グルッと円を描くかのように移動させ、おへそのあたりまで戻す。

ポイントは手を使うこと。

まず、片手をおへそに当て、グルッと大きな円を描くように移動させ、おへそのあたりまで戻すようにします。このとき、息を手の動きと連動させて同じ位置に持っていくようにイメージしてください。胸、顔、頭上を経由して、またおへそに戻ってくるまでの時間を3秒とし、その間に息を吐き切ること。

ビギナーは息を吐きながら、「1、2、3」と心の中で唱えてもいいでしょう。これも5~10回ほど繰り返すようにしてください。

6.4秒かけて息を吐くレッスン「この商品でお間違えございませんか?」「コーヒー、紅茶、どちらになさいますか?」「この予算でご検討していただけますか?」こう言うとき、語尾を上げますよね。

語尾をきちんと上げるためには、息を吐き切らなければなりません。そのためのレッスンがこれです。まず、肘を伸ばし、片方の手の人差し指を目線よりも少し上に持っていきます。

そうしたら、人差し指の爪に向けて息をスーッと4秒かけて吹きかけるようにしましょう(イラスト4秒かけて息を吐くレッスン参照)。

これも基本は同じで、必ず鼻から息を吸い、お腹にしっかり溜めてから、吐くようにすること。4秒のタイムは片方の指で「1、2、3、4」と数えます。

ちなみに、人差し指を目線よりも少し上に持ってくることには理由があり、語尾を上げるときは息も上に向かって吐くため、それをスムーズに行えるようにするためです。これも5~10回ほど繰り返すようにしてください。

声の出し方1TPOに応じて声の大きさをギアチェンジする

「最速最短!最良の声を出すためのレッスン」もいよいよ佳境に入りました。

続いては、場面に応じて、一瞬で声を変えるためのレッスンです。言うまでもないことですが、声のボリュームにもTPOというものがあります。

お通夜の席で喪主に向かって大声で「このたびはご愁傷様です」とは言いませんよね。

何十人もいるプレゼンの場で小さな声で「これから弊社の新サービスについてご説明させていただきます」とは言いませんよね。

そうです。静かにしなければならない場所とザワザワした場所とでは、当然音量が違ってきます。つまり、声のギアチェンジも必要になってくるのです。

その場合の基本も「あ」の発声音です。「あ」を発するときは、顎を大きく開き、口をしっかり開けること(指が2本分縦に入るくらいの大きさ)。そして、下の歯の裏の部分に舌先をつけること。目線は相手の目元あたりに持っていくようにしてください。

あなたがこれまで行ってきたレッスンの「あ」は、あくまで喫茶店や会社の応接室などで「1対1で話すときのボリューム」です。

これを通常のボリューム(声量)だとしたら、数字で表した場合「5」。しかし、お通夜の席、あるいは病院の待合室などで、小声で話すときは、「2」か「3」に下げるようにするのです。

試しに、「はじめまして。○○○○(自分のフルネーム)です。よろしくお願いします」と小さな声で言ってみましょう。

どうでしょうか?5のボリュームが2か3になりましたか?ポイントは姿勢を変えずに相手の口元を見る程度に目線だけを下げること。

そうすると、通常よりも低い声になり、息のスピードも緩やかになるはずです。これも何度か練習すればクリアできるようになります。

では、会議室やプレゼンの場など、大勢の人がいる前でしゃべるときは、どれくらいのボリュームにすればいいかというと、通常の5に対し、8くらいに設定します。

そう、約1・5倍です。

こう言うと「大きな声を出すと、声そのものが高くなりうわずってしまう」と思う人もいるかもしれませんが、それは当たり前のこと。大きな声を出すと、誰でも若干高めになるのです。

キーキーするような甲高い声は考えものですが、声のトーンが少し高めで、なおかつ息のスピードも若干アップテンポになっていれば大丈夫です。

このとき、目線はやや上を見るようにします。

しかし、顔を上げたりはしないでください。姿勢などはそのままで、目線だけを少し上げて遠くを見るような感じです。

これも試しに「はじめまして。○○○○(自分のフルネーム)です。よろしくお願いします」と大きな声で言ってみてください。

どうですか?うまく言えましたか?場面に応じて声を3段階にギアチェンジする。これも最良の声を出すために大切なことなのです。

声の出し方2相手に合わせて目線の高さを変えて話す

通常、人と会話をするときは、相手の眉間のあたりに目線を置いて話すのが精神的にもリラックスでき、一番好ましいと言われています。

しかし、相手かあなたのどちらかの声が、高すぎたり低すぎたりすると、お互いにどことなく不自然さを感じるようになります。そのせいでコミュニケーションがうまく図れないなんていうこともあります。

そうならないために、次の2点に注意を払うことが重要になってきます。

■自分よりも声が高めの人に対しては、ちょっと上目にして、通常のときよりもトーンを少し上げて話す。

■自分よりも声が低めの人に対しては、ちょっと下目にして、通常のときよりもトーンを少し下げて話す。

目線の位置と声のトーンは相関関係にあり、上目にすると声のトーンが上げやすくなり、下目にすると声のトーンが下げやすくなるからです。

試しにこれも自分でテストしてみてください。

「あ」と発したとき、おそらく上目にすると声のトーンが上げやすくなり、下目にすると声のトーンが下げやすくなるはずです。

この要領で、他人との会話に臨んでほしいのです。

ちなみに、セミナーやプレゼンの席などで大勢の人の前で話すときなども、遠くを意識して上目にすると声のトーンが上げやすくなり、よく響きわたるようになります。

声の出し方3最短の声のレッスンでCAになった就活生

さて、これで「最短最速!最良の声を出すためのレッスン」はひと通り終了です。すんなりといったレッスンもあれば、そうでないレッスンもあったと思います。

しかし、1回や2回試してうまくいかなかったからといって、凹む必要はありません。

大切なのは、この本の「はじめに」でも記したように「すなお」に取り組むこと。「すぐに、ならったことを、おもいきって」やってほしいのです。そうすれば、人生が劇的に変わるようになります。

いや、ミラクルさえ起きるようになります。

数年前になりますが、私は就活に励む女子大生にこの章で述べたレッスンを懇切丁寧にレクチャーしたことがありました。彼女と初めて会ったときの第一印象は「すごい美人!」。でも、お話をうかがうと、どうやら数百万円もかけて美容整形や歯の矯正をしたらしいのです。

──それでも就活がうまくいかない……。

──書類選考や筆記試験でパスしても面接で毎回落とされる……。

こう嘆く彼女でしたが、初めてお会いした瞬間から、私にはその理由が手に取るようにわかりました。声がとにかく小さく、表情が暗いのです。そして、口呼吸しているのもすぐにわかりました。

ちなみに、彼女の夢はCA(キャビンアテンダント)になることでしたが、声が小さく、表情が暗いというのはCAにとって致命的。

合格できない原因がそこにあることは明白です。

しかも、面接まで2週間を切っていて、切羽詰まった状況でした。航空会社の面接もこれがラスト。

うまくいかなかったら、彼女の夢もついえてしまいます。そこでさっそくレッスンの開始です。

なかでも私がとくに力を注いだのは、口を横に開いて口角を上げてしゃべる「IEAレッスン」と鼻呼吸をベースにした「息圧を強くするためのレッスン」の2つでした。

「彼女の表情が暗いのは笑顔がないから。笑顔がない人はどんなに美人であっても面接官のウケが悪くなる。だとしたら、口を横に開いて口角を上げてしゃべるクセを短期間で身につけてもらおう。

声と表情は連動しているから、閉口形の母音の発声が変われば、表情もおのずと笑顔に変わる」「声が小さいのは口呼吸のせいでお腹から声が出ていないからだ。よし、これも短期間で鼻呼吸のクセを身につけてもらい、なおかつ大きな声が出せるように息圧を強くするためのレッスンにも励んでもらおう」

私はこう踏んだのです。

彼女の場合、「IEAレッスン」は比較的うまくいきましたが、問題は鼻呼吸でした。

今までの習慣によって、口呼吸のほうが楽なようで、鼻呼吸に切り替えると、とたんに息苦しくなってしまうらしいのです。しかし、ここが踏ん張りどころです。

「数日もすれば(鼻呼吸に)慣れてきて、息苦しさもなくなりますよ」と励まし続け、彼女は苦手な鼻呼吸をマスターしました。

すると別人かと驚くぐらい表情も明るくハリのある声に変わり、いざ本番の面接を迎えることになったのです。その結果、どうなったと思いますか?ミラクルが起きました。

なんとラストの航空会社の面接試験にみごと合格!晴れてCAになることができたのです。これはけっして特殊なケースではありません。同じようなミラクルはあなたにも十分起こり得ます。

そのためには、この章で私が述べてきたこと、そして次章以降で述べることを、あなたの声が変わるまで繰り返し実践してほしいのです。

そうすれば、短期間で最良の声が出せるようになり、ビジネスでも成果が出て、ひいては最良の人生が送れるようになるのです。

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