禁煙は愛です。この本を「自分には禁煙はむつかしいかも」、と少しでも思っているすべての人に捧げます。
「吸いたい気持ち」がスッキリ消えるリセット禁煙●目次序章とりあえずここだけは読んでください胃潰瘍の本当の原因は?禁煙できないのは「意志が弱い」から?私が「リセット禁煙」にたどり着くまで禁煙に成功した患者さんの言葉を励みに「やめられない」本当の原因を掘り下げる禁煙をめぐる科学研究の進歩「体の依存」よりも「心の依存」が問題ノンスモーカーはわかっちゃいない!?「頑張ってやめる」以外の方法がある本書の使用上の注意
第1章「努力型禁煙」が失敗する理由
あるお母さんからの手紙普通の禁煙支援が空回りするわけ「1本だけのつもりが……」「止まらない回路」は一生消えない1本でも吸うと、次々と自動的に吸いたくなる「あなたは、自分の意志でタバコを吸うのですか?」タバコは習慣?努力型禁煙の苦悩努力型だと、何年たってもまた吸いたくなる「吸いたい気持ち」の消し方は誰も教えてくれない!
第2章リセット禁煙法のしかけ
「質問の力」を利用する「くせ」は、どこからきたのか?本当に厄介なのは「くせ」ではなく「欲求」「減らしてやめよう」はほぼ失敗するタバコは本数を減らせば減らすほどおいしくなる「軽いタバコ」のウソメンソールの罠自然にやめられた人の実態タバコは麻薬以上にたちが悪い本当にある「水依存症」禁断症状は軽いが、依存性は麻薬並み「タバコと上手に付き合っている人」の胸の内は?
第3章「タバコのメリット」の真実
スモーカーは脳波が遅い!?ニコチンの二つの作用タバコの味がわかるようになる「魔の瞬間」タバコで解消できるのは「ニコチン切れのストレス」だけスモーカーが勘違いしていることタバコを吸い始めると、集中力が低下する
そのストレスは、タバコが生み出したものだった
第4章それでも吸いたくなる「カラクリ」
喫煙者の脳はドーパミンの反応が弱い「失楽園仮説」喫煙者に「さわやかな朝」はない食後に吸いたくなる本当の理由隣で吸っている人が気の毒に思えるようにタバコなしでは幸せを感じにくくなる元気づけの1本の真実喫煙で喜びの感度が鈍ってしまった少年たち
第5章よくある疑問・不安に答えます
Q障害者の子どもがいるので、どうしても禁煙できません。1日ひと箱、20本くらい吸ってしまいます。Q禁煙すると体重が増えませんか?Q土日は吸わなくても平気なのですが……。Q時々わけもわからず無性に吸いたくなることがあるのですが……。Qコミュニケーションの手段になると思うのですが……。Q結局、気の持ちようということですか?Qどうしても間がもたなくなってくるのです。手持ち無沙汰で。Q主人が吸っているのでやめられません。Q太く短く生きるというのもありだと思います。先生はどう思いますか。Qつい他人と比較して、つらいことがあると吸いたくなってしまいます。Q禁煙できれば、とは思うのですが、実際に禁煙のことを考えると、やっぱり不安になってしまうのです。Q自分にはタバコ以外の趣味がないのですが……。Qどうしてタバコ以外では楽しみが感じにくくなるのに、タバコに対しては脳の反応が強くなるのですか?子どもたちにはタバコを吸ってもらいたくないのですが……
第6章いよいよリセット開始!
血液中のニコチンは3日で抜ける肉体的な禁断症状はすぐ消える安心してください。今までとは違います本来の「優しいお母さん」に戻れる車の運転が変わったという人も同じ景色が違って見えるようにもなるスモーカーという実は恵まれたポジション最後のステップついにリセット完了リセット後の3つの注意点巻末資料①依存症から抜け出す8つのステップ巻末資料②大麻・ハーブ──子どもに広がる究極のウソ巻末資料③家族を禁煙させたい人へ──本書利用のポイント
胃潰瘍の本当の原因は?突然ですが、あなたは胃潰瘍の原因は何だと思いますか。ストレスとお考えになった人が多いのではないでしょうか。では、ピロリ菌という菌の名前を聞いたことはありませんか?実は、ストレスで胃潰瘍、というのは古い考え方になりつつあります。というのは、胃潰瘍を繰り返す人には胃の中にピロリ菌が棲んでいることが多く、このピロリ菌を退治すれば、胃潰瘍が治ってしまい再発も起きなくなる場合が非常に多いからです。ストレスに弱い人が、胃潰瘍になるのではなく、胃の中に菌がいたのです。では、あなたはストレスで喘息発作が起きると思いますか?これも、そうだと思う人が多いと思います。しかしこれも誤りであるとわかってきました。20年位前から、画期的な新薬(吸入ステロイド薬という発作の予防薬)が使用可能となり、それまでは、何度も何度も発作を繰り返し治療に苦労していた患者さんの中から、発作がピタッとおさまる人が次々と出てくるようになったのです。この二つの「事件」は、私が医者になってから起きました。ですので、内科医だった私は、その前後での医者の患者に対する説明の変化を、身をもって体験しました。ひと言でいえば、ストレスそのもののせい、あるいは本人のストレスに対する精神的な弱さや育てられ方のせいと考えられていた病気が、全くそうではなかったということを体験したのです。思えば、本当に悲惨なことが起こっていました。胃潰瘍でいえば、同じ職場で同じ仕事をしているのにある人は胃潰瘍を繰り返し、別の人は平気でぴんぴんしている。そしてその胃潰瘍の人は、ストレスに弱いというレッテルまではられて、「自分は精神的に弱いからこんなことになってしまう」と苦しんでいたのです。そんな人たちにとって、ピロリ菌の発見は大きな朗報になるはずでした。ところが、ピロリ菌の発見者オーストラリアのマーシャル(Marshall)博士も大変な苦労をしていました。彼の発見を誰も認めてくれなかったからです。なにしろ胃潰瘍がストレスで起きると誰もが信じ切っていましたし、専門の医学者も、胃酸や消化液の渦巻いている胃の中に菌が棲んでいるなどとても信じられなかったのです。彼は最後には、自分で見つけたピロリ菌を自分で飲んで、自ら胃潰瘍になってみせる、ということまでしたのです。その甲斐あってか、現在は胃・十二指腸潰瘍のピロリ菌説を疑う医者はほとんどいません。そして、ピロリ菌はその中にアルカリ性のアンモニアを作る酵素を持っており、これで胃酸を中和していたのでした。気管支喘息でも悲劇が進行していました。当時ある有力大学の小児科教授が書いた『母原病』という本が大ベストセラーとなり、気管支喘息は母親の育て方が悪いから子どもが甘やかされてなるのだ、と大まじめに信じられていたからです。子どもたちは親から引き離され、乾布摩擦や運動を集団で行って鍛えなおすという試みがあちこちでなされていました。私も呼吸器が専門なのでよくわかるのですが、喘息の子どもには本当にいい子が多いのです。親を心配させまいとして、大丈夫だよ、と一生懸命苦しいのを我慢したり、親の「なるべく薬に頼らず強く育ってほしい」という期待に応えようと、本気で頑張るのです。そして「母原病」の原因呼ばわりされた母親たち、彼女たちの苦しみも大変なものだったことでしょう。ところがこうした苦悩は、先ほど紹介した吸入ステロイド薬の登場で一気に解消されていきます。発作の予防ができるようになったからです。それは救急外来での風景が激変するくらいのものでした。昔は夜の救急外来といえば喘息の子どもであふれていたものですが、それが見事に減ったのです。禁煙できないのは「意志が弱い」から?さて、胃潰瘍や、気管支喘息の事例は私たちに何を教えてくれるのでしょうか。それは、本当は、真の原因がわかっていない場合でも、人々はいろいろと原因を知りたがり、ついには専門家も含めて誤った考え方を信じてしまうということです。そしてその原因として想定されやすいのがストレスや養育歴、そして精神的な強さ・弱さだとわかります。こうして自分を責めたり、見当違いの努力を繰り返したりしてしまいます。
特に私が気の毒に感じたのは、この人たちは、当時原因と信じられていたストレス社会や育てられ方について怒りや恨みを表明することはほとんどなく、弱い自分が悪いんだと自分を責める傾向にあったことです。
禁煙をめぐってもよく似た状況が起きているのではないか、と私は考えています。禁煙失敗の原因として、意志が弱いから、ストレスがあったので、などの言葉をよく聞くからです。確かにその場その場の状況を尋ねると、胃潰瘍や喘息発作の場合と同じように、説得力があり、当人や周囲がそう考えるのも当然だなあと思います。しかしその一方で、それでは、タバコを吸わない人はそんなに意志が強い人たちなのか、あるいは特別なストレス解消法を知っているのかという気もします。また、本当に意志の強さ・弱さだけの問題なのか、という気もします。現に、他のことではしっかりした意志の強い人が、禁煙だけはうまくいかないということも起こります。つまり禁煙がうまくいかない理由には、単に我慢強いかどうかとは別の何かの原因があるのでは、と思うのです。例えば、普通「意志が強い」といえば決めたことをちゃんとやるというような意味ですよね。鉄棒の逆上がりができるまで頑張るとか。そこで例としては適切ではないかもしれませんが、仮にここに2人の父親がいて、その最愛の娘が誘拐されてしまったとします。2人とも、はじめは「絶対、見つけ出すぞ」と頑張ります。ところが、いつまでたっても見つからず、警察や政治家も頼りにならなかったとしたら、どうでしょう。そのうち、「仕方がないか……」と先にあきらめてしまうのは、「意志の強い」父親でしょうか、それとも「意志の弱い」父親でしょうか?ごく単純に考えてみてください。もちろん、「意志の弱い」父親ですよね(現に最後まであきらめず、子どもを外国から取り返した親もいます)。私は、依存症も同じではないかと思うのです。依存症者は、いつも大切に酒やタバコ、薬物を確保しています。ところが、その大切な依存対象を「体に悪いよ」「周りの迷惑だよ」と取り上げられそうな状況になってきたわけです。その時、「大切だけど仕方ないか……」と先にあきらめてしまうのは?そう、先ほどの父親同様、「意志が弱い」人かもしれないのです。驚きでしょうか?少なくとも、意志の強さ・弱さと依存症脱出は、直接関係のない、別の次元の話だと思うのです。なぜならビジネスマンでも、仕事のことなら何でも意志が強くてしっかりしているのに、禁煙だけは、お酒だけは、女だけは、ギャンブルだけはやめられないという人は、大勢いるからです。この話を聞くと、特に子どものように「またか。お前は本当に意志の弱いやつだ!」と叱られて悩んでいた場合、心がふっと軽くなります。実際、「自分は意志が弱いからできない」という思い込み自体が成功の妨げになりますから、「そうではないかも」と気づくだけでも大きな前進になります。私が「リセット禁煙」にたどり着くまでさて、私はこの10年ほど、受験生の禁煙支援を振り出しに、ストレスにさらされている人でも禁煙できるような方法の開発に一貫して取り組んできました。そして、タバコに対する考え方そのものを気づきの力によって変えることで、ほとんど我慢することなく禁煙できる場合があると気づきました。特に参考になったのは、『禁煙セラピー』(ロングセラーズ)という世界中でベストセラーになっている禁煙本です。実際に私の診ていた2人の若い女性がこの本を読んで禁煙できたよ、と立て続けに報告してくれたのです。恥ずかしながら、その時私はこの本のことを知りませんでした。そこで早速読んでみたのですが、私にとってこの本は文字どおり人生観を変えるほどの衝撃で、こんな素晴らしい本があるとは、と感嘆するばかりでした。そして、私が禁煙の本を書くことなど一生ないと感じました。それでその後は、その本を次々と喫煙者にすすめていたのですが、なかなか読んでもらえなかったり、読んでも意味がわからなかったりと、思ったようには禁煙を支援することができませんでした。そこで最後には、自分で『禁煙セラピー』の内容を直接患者さんに話してなんとかするしかないと決心しました。
ところが、私は当時、毎年20~30人の肺ガンや結核、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の人を看取るという非常に忙しい状況でした。それで勉強する時間がとれません。そこで自分で『禁煙セラピー』を音読してテープに吹き込み、車の中で繰り返し聞いて頭に叩き込み、一生懸命患者さん相手に再現してみたのです。始めてみてすぐに気づいたのは、かなり工夫しないと時間ばかりかかってしまう、ということでした。それから、できるだけ科学的で具体的な説明を加えていくと理解しやすい、ということもわかりました。そして質問の力による気づきの連鎖、つまり「リセット禁煙」という方法にたどり着いたのです。リセット禁煙でもうまくいかない人はたくさんいましたし、まだまだ不完全な状態とは感じていましたが、とにかくこの方法を皆に知ってほしいと自費出版したのが2003年のことです。禁煙に成功した患者さんの言葉を励みにところが、リセット禁煙を開発した後の年月こそが、苦労の連続でした。「吸いたい気持ちがなくなった」「まるで先生にマインドコントロールされているみたい」「なぜこんなに楽なのか不思議で仕方ない」。これらは皆、リセット禁煙で禁煙をした人の実際の言葉なのですが、こうした言葉を紹介すればするほど、仲間の医者からは白い目で見られる日が続いたのです。学会発表の場で罵声を浴びたこともあります。自分から、これは、と思う研究者を訪ねて行って、リセット禁煙の説明に努めたこともあります。しかし反応はにぶく、場合によっては、何か裏のねらいがあるのではないかと勘繰られる始末でした。実際、もうイヤになってしまったことも何度かあります。もともと私は、自分で自分を売り込むのが苦手で恥ずかしく、余計傷ついてしまうのです。それでしばらく落ち込んでいて、それからまた元気を出してと、そんなことの繰り返しでした。それを支えてくれたのは、何といっても、実際の禁煙外来の患者さんからの反応といえるでしょう。本当に多くの患者さんに感謝してもらえたのです。また、『リセット禁煙のすすめ』『二重洗脳』などの本が着実に売れ続けていることも大変励みになりました。おかげで少しずつ賛同者も増え、まだまだ専門家の間では異端児扱いなのですが、少しずつ、むしろ一般の人たちの間で認められつつあります。「やめられない」本当の原因を掘り下げるさて、リセット禁煙では、「どうやったら禁煙できるか」ではなく、「なぜタバコを吸い続けてしまうのか」に焦点を当てていきます。そんなの、ストレスがあるからだよ、意志が弱いからだよ、と思われた方、ちょっと待ってください。そして、本書の冒頭に紹介した「胃潰瘍の原因がストレス」とか、「ストレスで喘息」という考え方が生み出した悲劇を思い出してほしいのです。そう、意志が弱い、ストレスがある、以外の本当の原因がタバコにもあるかもしれないのです。そもそも、吸わない人は、なぜタバコなしでやっていけるのでしょう。「それは吸ったことがないから」という返事が
聞こえてきそうですが、そう、問題はまさにそこにあると思うのです。なにしろ彼ら彼女らは、タバコを吸っていないことで、さほど苦労しているようには見えないからです。そこでこの本では「吸ったことがない」というのはどういうことなのか、それを徹底的に掘り下げていきます。そしてその「吸ったことのない人」が、タバコを繰り返し吸うと何が起きるのかということを見ていきます。喫煙の結果、人は何を経験し、脳や心のどの機能にどんな変化が生ずるのか調べていきます。ところで、先生は「依存症」とおっしゃりたいのでしょう、と思われた人もあるかもしれません。ある意味正解です。でも私は実は「依存症」という言葉があまり好きではないのです。なぜならば、「依存症」という言葉の定義はいろいろありますが、基本的には「やめられない」ということです。するとこんな具合になってしまいます。「依存症って何ですか?」「やめられないことだよ」「なぜやめられないの?」「依存症だから」。堂々巡りになってしまうのです。何の説明にもなっていません。ですので、本書ではできるだけ依存症という言葉を使わないで、タバコによる脳と心の変化そのものに焦点を当てていきます。そして、その変化のうち、何が対処可能で何がそうでないのかを、それぞれ明らかにしていきます。禁煙をめぐる科学研究の進歩例えばニコチンによる脳・神経の変化について非常にわかりやすい実験が、2008年にレイラ(Layla)らによって発表されています。それはゼブラフィッシュと呼ばれる実験用の動物を用いた実験です。同じ実験は金魚でも行うことができます。まず金魚を水槽に入れ、水槽の半分を黒い紙でおおって暗くし、残りの半分はおおわずにおくと、金魚は夜行性なので暗い部分に集まってきます。さてそこで、水槽に仕切りを入れて金魚を明るいほうに移動させてから、そこへニコチンを1滴たらすのです。そしてそのまま20分間明るい場所でニコチンの混じった水を経験させます。それがすんだら今度は、同じように半分だけ黒い紙でおおった別の水槽を用意して、金魚をそちらに移します。すると金魚は、もはや暗いほうに集まることはなく、明るいほうをしきりに泳ぐようになるのです。この様子はテレビでも紹介されたので、ご覧になった人もあるかもしれません。ニコチンを経験した金魚が、微妙に行きつ戻りつしつつも水槽の明るい側に引き寄せられるように泳いでくる様子が、まるで喫煙所に吸い寄せられる喫煙者のようだと感じた人も多いはずです。ニコチン依存症が「体」の病気であることのもっと直接的な証拠は、2007年のナクビ(Naqvi)らによる発見です。ある何度も何度も禁煙に失敗していた筋金入りの喫煙者が、「島」と呼ばれる特定の場所の脳梗塞で急に禁煙ができてしまったというのです。本人は「吸う気自体がなくなってしまったようだ、不思議でたまらない」と言っていたらしいのですが、その後、その「島」に脳梗塞がある人ばかりを集めた研究で、ない人と比べて100倍も禁煙しやすいことが
的にコカイン依存症にして、コカインレバーをひっきりなしに押すようになったネズミでも、レバー押しが止まることがわかりました。ということは、将来は、人間でもこの「島」という場所をうまく麻痺させてやれば、吸いたい気持ちをなくすことができるかもしれません。あるいは、吸いたい気持ちが湧いてきたら、脳の外から電磁波などを使って「島」に対して何かできるようになるかもしれません。夢の技術は着実に実現に近づきつつあります。
注目を集めているのは、何といってもバレニクリンという飲み薬の臨床効果といえるでしょう。この薬には、ニコチンの代わりに、脳内のアセチルコリン受容体に結合する作用があります。そのおかげで、タバコを吸っていなくても、吸い
たい気持ちが起こらず、逆にタバコを吸っても、おいしくありません。この効き目はまさに画期的なもので、禁煙外来で決められたプログラムに従って3か月間通院した人のうち、85%もの人が禁煙開始に成功しています。それまではせっかく禁煙を始めても、半日も続かなかった、というような人が、次々と禁煙を開始できるようになったのです。残されている課題はこれをいかに継続するか、という問題だけといえるでしょう。もちろん、それが難しいのですが……。この本では、こうした最新の科学の成果も紹介しながら、いかに楽に、確実に禁煙するかを考えていきます。もちろん現時点では、こうすれば確実に禁煙できます、という方法はまだ見つかっていません。実際バレニクリンを使用しても、1年後には約7割の人が再喫煙をしてしまっており、まだまだ道は遠いのです。しかし、かなりいい感じで、本人も不思議になるくらい楽に禁煙できる人が出てきているのも確かです。「体の依存」よりも「心の依存」が問題その中で私が特に重要視しているのは、その人のタバコに対する考え方(認知)そのものです。なぜなら、半年~1年たってから再喫煙してしまう場合、その原因はいわゆる「体の依存」が原因とはいえないからです。なぜそう言い切れるかわかりますか?単純な話です。半年~1年も吸っていなければ、体からニコチンは、もう、そう、抜けてしまっているからです。いわゆるニコチンが切れてきたぞ、という現象はもう起きません。ところが現実には吸いたい気持ちが湧いてくる。それはなぜか、と考えれば、もう一つの問題、「心の依存」が残っているからと考えざるを得ません。長い目で見ると、この心の問題こそが大切なのです。その中でも「タバコに対する考え方がカギを握っているのでは」というのが私の仮説です。心の問題というと難しく聞こえるかもしれません。しかし、逆にいえば、心の整理さえついてしまえば、簡単に禁煙できるかもしれないということでもあります。例えば、あなたの身近に、案外いい加減でずぼらな男なのに、禁煙だけはうまくできてしまったという人はいませんか。「もうやめたんだ」とか言って、平気そうにしていたりするのです。なんであいつに禁煙できて自分にはできないのだろう?と不思議な気持ちがする人もあるかもしれません。この人たちはとりたてて努力しているようには見えません。頑張って我慢しているというよりは、何かタバコに関して気持ちに整理がついてしまって、関心が薄れてしまったようにすら見えます。こうした様子をモデルに、この本では禁煙を始めた後、吸いたい気持ちが薄れてしまうような、あるいは吸いたい気持ちが起きたとしても気持ちの整理がつきやすくなるような方法を探ります。いやそれどころか、うまくやると、吸いたい気持ち自体がほとんど起きなくなってしまう人もあります。そうなれば、もはやさほどの我慢も努力も必要ありません。ノンスモーカーはわかっちゃいない!?結局気持ちの問題か、と思われたかもしれません。しかし最新の心理療法には目を見張るものがあります。例えば、認知行動療法と呼ばれる心理療法を受けた人をコンピューターによる脳画像で調べると、脳の画像上に変化が検出されてくるのです。うつ病などの本格的な精神病であっても、抗うつ剤と類似の変化が観察され、しかも、認知行動療法のほうが、薬物療法よりも再発が少ないという報告もあります。この本では、リセット禁煙という「気づきの連鎖」を利用した禁煙方法を紹介します。「気づきの連鎖」と書きましたが、どちらかといえば、気づきによる「学習」に近いかもしれません。私の考えを率直にいえば、アラスカのエスキモーも、ニューヨークのアーティストも、ボルネオの漁師も、タバコを吸う理由は皆一緒。そして禁煙に失敗する理由も一緒なのです。その共通する部分を深く掘り下げて理解、つまり学習することができれば、気持ちの整理への大きな前進になるのです。「結局、どういうこと?」。そうお感じの方もいらっしゃるでしょうね。スッキリした、簡単な答えが知りたい、という気持ちは誰でもお持ちのはずですから。
しかし、残念ながら、この問題に関する限り、今のところそれは困難です。というのは本当にタバコから解放されるためには、本心からタバコの虚しさを信じる必要があります。しかし、単に「タバコは何の役にも立たないから」と言ってみたところで、信じることはできません。どうしても、タバコにまつわるいろいろな思い込みを拭い去っていく必要があるのです。このプロセスを「気づきの連鎖反応」と呼んでいます。一つ強調しておきたいのは、これはスモーカーだけの問題ではないということです。実は意外に思われるかもしれませんが、ノンスモーカーもタバコについてはよく理解できていないのです。つまり非喫煙者も私が本書で紹介する「気づき」を得ているわけではないのです。逆に全くわかっていない人が大半です。だから「タバコくらい」という無理解な言葉が出るのです。私の患者に、63歳から吸い始めたおばあさんがいます。「どうしてまた、その年になってから吸い始めたの」と尋ねてみました。すると、「主人に先立たれて」という返事。寂しそうにしていた彼女に、お友達が「落ち着くよ」とすすめてくれた、その1本で、タバコの罠に落ちてしまったのです。もしそのおばあさんがタバコの罠について理解できていたら、気づきを得ていたら、違った結果になっていたのではと思います。結局、たまたま吸い始めるきっかけがなかっただけで、63歳になるまでタバコの本質は何もわかっていなかったのです。「頑張ってやめる」以外の方法があるというわけで、まずはタバコをどうするかとか、禁煙できるかどうかということはいったん脇において、純粋に「科学の本」を読むような気持ちでのんびり読んでみてください。おそらく小学校高学年くらいの理解力と素直さ、そして、積極的な気持ちさえあれば、リセット禁煙は成功します。実際、小学校高学年くらいを対象にリセット禁煙の話をする時が一番盛り上がります。この場合の目的は喫煙の予防ですね。いずれにしても、はっきり申し上げることができるのは、この方法に、強い意志や長期間の忍耐はいらないということです。リセット禁煙では、うまくいくと、まるで「暗示にかかったように、不思議なほど、タバコを吸いたい気持ちが消えて」しまいますから。これは、いろいろな「気づき」を、順序よく連鎖的に積み重ねていく禁煙法です。一つ一つの気づきにかかる時間はほんの一瞬。必要なのは意志力ではなく「開かれた心」なのです。通常何かを成し遂げるには「意志力で頑張る」ほかないと考えられていますが、それ以外にも、変化を生み出す方法があることを実体験してみましょう。きっとその体験は、その後の人生の大きな財産となるでしょう。スモーカーは皆、禁煙を考えると不安な気持ちになるものです。本当に大丈夫かな、と思えてくるのです。私のリセッ
ト禁煙に関する本を購入したものの、いろいろなことが心配になって、気づいたら1年間本棚にしまったままになっていたという人もいました。しかし、あなたは、今、実際に本書を手にとってくださっています。そしてここまで読んできた。そんな素直な心の持ち主にリセット禁煙は向いています。「うまくいくかな」なんて、気にしないでください。だって、失敗しても、元のスモーカーに戻るだけ。何も失うものはないのですから。ひょっとして、この本を読んだだけで禁煙できたら儲けもの。そんな軽い気持ちで読み始めてください。ちょっとした出会いが奇跡を生むのです。本書の使用上の注意この本は非常に強力な禁煙ツールです。ただし、その力を発揮させるためにいくつか簡単な使用上の注意があります。それは、途中をとばさず順番に、最後まで読むということです。連鎖反応を起こすためには、この順番が重要だからです。特に前半は、多少、じらされているように感じるという人もあります。しかしこれは、その後、リセットをするための準備なのだ、と考えてください。まずしゃがんでからジャンプするのです。きっと前半じらされた分だけ、後半からはどんどん文章に引き込まれ、思いがけない展開が起こってきます。そして、読み終えるころには全く新しい気分を味わっているはずです。見方を変えると、始めるだけなら、とにかく禁煙を始め、タバコをひたすら我慢する「努力型禁煙」のほうが、楽な選択肢かもしれません。私の出す質問についていちいち考える必要がないからです。しかし、「努力型禁煙」は始めた後が悲惨です。いつまでも我慢しないといけません。失敗する人も多いのです。あなたは、できることならタバコをやめたい、あるいはやめさせたいと思っていますね。しかもできるだけ苦しまずに。だとしたら、ここは、そのことに年がら年中取り組んで、タバコのことばかり考えている、「禁煙支援中毒」の私のアドバイスに素直に従ってみてください。きっとこの本に会えてよかった、他の人にもすすめたいと思っていただけると思います。リセット禁煙はどんな立場の人たちにも有効です。本書ではストレスにさらされている人の代表として、子育て中のお母さんを取り上げます。さまざまな人間関係にストレスを抱えている人はもちろん、そうでない人も、自分のストレスを思い浮かべながら読んでみてください。では早速、リセット禁煙へご案内いたしましょう。
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