あなたがはまったタバコの罠
〓タバコの罠
「あなたはどうしてタバコを吸っているのですか?」これは、私のセラピーでも必ず する質問です。この問いかけに対して、「タバコを吸うとリラックスできるから」「ス トレス解消のため」などと答える人は少なくありません。けれどもそれは大きな間違 いです。喫煙者は知らず知らずのうちに、タバコの罠にはまっているのです。その罠 は、あなたがいつまでもタバコを吸い続けるように仕向けます。あなたは、タバコと 縁を切らない限りその罠から抜け出すことはできません。 これらの罠から抜け出すには、あなたが囚われてしまった罠に隠されたからくりを しっかりと見極めることが重要です。では、少しずつそのからくりを解き明かしてい きましょう。
二コチンの特徴
禁煙を妨げる諸悪の根源は、ニコチンです。タバコにはニコチンが含まれているこ とは周知の事実で、このエコチンには依存性があることも多くの人が知っているはず です。しかし、その依存性がどれほどのものかについては、「実はよく知らない」と いう人もいるのではないでしょうか。あるいは、ニコチンの正体を知ってしまったが ゆえに、「自分はすでにニコチン中毒だから、禁煙は無理」と思っている人もいるか もしれません。 けれども、あきらめる必要はありません。その思い込みをいったん捨てて、もう一 度おさらいしてみましょう。ニコチンの正体を知れば、自分がどうしてタバコをやめ られないのか、またそれとは逆にどうすればタバコをやめられるのかが理解できるは ずです。 ・ニコチンの依存性 ニコチンは依存性が極めて高く、たった1本のタバコでも中毒になるほどです。薬物は、体内に投与されてからその効果が表れるまでの時間が短ければ短いほど、依存 性も高いということがわかっています。あなたがタバコの煙を一服吸い込むたびにニ コチンが肺から脳に少しずつ運ばれます。そのスピードは約7秒と速く、それはなん と、血管に注入されたヘロインにも勝るほどです。 ・ニコチンの減少スピードと禁断症状 体内から減少するスピードも速いのがニコチンの特徴です。血液中のニコチン量は 喫煙の30 分後には約2分の1まで減り、1時間後には約4分の1まで減少します。そ のため、ある程度の時間がたつと気づかない程度ながらも禁断症状が引き起こされ、 また次のタバコが吸いたくなるのです。 タバコの禁断症状は、ちょうどお腹が空いたときに食べ物を求める感覚に似ていま す。そう、体がニコチンを求めると落ち着きを失ってそわそわするあの感覚です。薬 物中毒者が禁断症状を引き起こし、次の薬物を懇願して取り乱している姿を想像して ください。生まれてから一度も薬物を摂取したことがない人が、このような状況に陥 ることはありません。それと同様に、生まれてから一度もタバコを吸ったことがない 人は、タバコが吸いたくてそわそわすることなど絶対にないのです。タバコを吸ったときにほっとしたり、リラックスして、集中力が戻つたように感じられるのは、その 前の段階に原因があります。喫煙者は、イライラして落ち着かない、無性にタバコが 吸いたくなる状態を自ら作り出しているのです。 幸い、ニコチンは、依存性は高いにもかかわらず、やめるのが簡単です。ただし、 やめるためには、まず自分がニコチン中毒であることを認めなければなりません。 ・ニコチンが引き起こす勘違い 喫煙により欠乏したニコチンが補充されると「タバコが吸いたい」という欲求は一 時的に満たされます。ところがここでまた、さらなる勘違いが起こります。今まで無 意識のうちにインプツトされ続けていた「タバコを吸うとリラックスする、ほっとす る」という間違った情報が、あなたの中で確固たる事実になってしまうのです。そこ が、ニコチンの恐ろしさなのですが、喫煙者はそれに気づいていません。こうしてタ バコを吸う行為が至福の喜びであるかのように思い込まされるわけです。 一度このサイクルにはまってしまうと、なかなか抜け出すことができません。しか も喫煙を繰り返しているうちに、同量のエコチンでは満足できなくなってしまいます。 より多量のエコチンを摂取するために、タバコの本数が次第に増えていくのです。
タバコの洗脳から抜け出す
タバコは洗脳上手
多くの喫煙者は、自分がタバコに依存していることをなかなか認めようとはしませ ん。前にも述べましたが、「あなたはどうしてタバコを吸っているのですか?」とい う問いかけに対して、もつともらしい理由をなんとかひねり出そうとします。「どう してかっていわれても……、習慣だから」とか「つい、なんとなく……」と、曖味な がらもどうにかタバコを吸う理由(しかも、タバコを吸うことに正当性があるかのよ うな理由)を探し出します。例えば、喫煙者の主張には次のようなものがあります。 ①ストレス解消になる ②退屈しのぎになる ③集中力が高まる ④リラックスできる
しかし、よく考えてみるとそれらは、いずれもタバコ依存によつて仕向けられた幻 想に過ぎません。マンガでも説明したように、タバコがあなたに次のタバコを吸わせ、 その場しのぎはできるものの、タバコを吸うことによってまた次のタバコがほしくな ってしまいます。これではまるで囚われの身、いわばタバコの奴隷です。 そう、それこそがタバコの恐ろしさです。喫煙者はタバコの奴隷になって、自ら進 んで体に毒物を与え続けています。その毒性から目を背け、延々と負のサイクルを繰 り返しているのです。
問題は、身体的依存よりも心理的依存
このような悪循環の背景には、ニコチンの依存性もさることながらもうひとつ大き な要因が絡んでいます。それは、「タバコがやめられないのは、禁断症状が強いせいだ」 という勘違いです。 いまだに「禁煙には禁断症状がつきもので、身体的に大変な苦痛が伴う」と思って いて、「自分にはとても耐えられそうにない」「そんなつらさを味わうくらいなら、タ バコで不健康になってもかまわない」などと考える人が驚くほどたくさんいます。もちろん、禁煙による身体的な禁断症状はゼロではありませんが、ヘロインなどの麻薬 物質に比べれば極々微々たるものです。その証しに、「ニコチンが切れて幻覚が見える」 「禁煙が原因で大暴れして、逮捕された」などという話は、聞いたことがないはずです。 ニコチン切れが引き起こす症状には、イライラや集中力の低下、食欲の増進、抑う つなどの禁断症状(離脱症状ともいいますが、本書では一般になじみ深い禁断症状を 用います)があげられますが、気づかずに過ごせる人も大勢います。また禁断症状が 表れる期間は、 一般的には3日から5日程度とされ、3週間もすれば体内から完全に 抜けてしまいます。 問題は身体的に起こるごく軽い禁断症状よりも、「タバコを吸うと落ち着く」「タバ コなしの人生なんて考えられない」「仕事の区切りにタバコは欠かせない」「食後の一 服は習慣だから」などといつた喫煙をプラスの経験としてとらえている心理状態です。 これらの思い込みも「所詮タバコの洗脳によつて引き起こされているだけなのだ」と いうことが理解できれば、「禁煙なんて簡単だ」と思えてきませんか?
洗脳から解放されるメリット
タバコによる洗脳から解放されて得られるメリットといえば、真っ先に思い浮かぶ のが「健康と金銭面の負担が軽減されること」でしょう。もちろんこの2つについて は、いうまでもないのですが、それ以外にも精神面で大きなメリットがあります。例 えば、タバコ依存を断ち切る勇気、禁煙という目標を達して得られる自信などです。 また、禁煙できれば、世に多く存在する嫌煙者に対して肩身の狭い思いをせずにす むという点も見逃せません。昨今、世の中からどんどん喫煙可能な場所が消えていま す。もはやこの流れは、進みこそすれ後戻りすることはないでしょう。にもかかわら ず、喫煙者は自らの健康を害すると知りながら、ほんのつかの間得られる満足感(し かもその満足感は、ニコチン依存がもたらす勘違いによって引き起こされる幻想)の ために、必死になって喫煙場所を確保しなければならないのです。他にも、外出先で タバコがないことに気づいたときに感じる焦り、喫煙後の衣服や髪の毛についたニオ イ、日臭を抑えるためのエチケットに要する手間暇など、タバコを吸っていなければ 煩わさずにすむことがいろいろあります。 私がタバコをやめて一番よかったと思うのは、タバコに翻弄されない人生を手に入 れられたことです。奴隷のような生活から解放され、自分の人生そのものを楽しめる 自由は、何ものにも代え難い喜びです。
まさか? タバコに1000万円!
一喫煙は一生の問題
2013年のWHOの発表によると、タバコが原因で死亡した人の数は、年間 約600万人、約6秒に1人がタバコによつて命を落としていることになります。 500人乗りのジャンボジエツト機が、世界のどこかで毎日30 台以上も墜落し続け ている状況を想像してみてください。その「世界のどこか」には、もちろん日本も含 まれています。それでも「自分は大丈夫」と飛行機に乗り続けることができますか? ところで、マンガでも語られていましたが、喫煙者が一生タバコを吸い続けた場合 の金額は、なんと―。1000万円です。ただしこれは、20 歳から平均寿命の84歳 まで吸い続けた場合を想定した場合の概算ですから、あなたにそのまま当てはまるわ けではありません。また、吸っている銘柄や本数によつても数字は変わってきます。 それでも、自分の喫煙条件に当てはめて計算してみると、算出された金額に驚きを隠せないはずです。何しろその金額は、「あなたがタバコを吸っていなければ使わずに すんだ(あるいはすむ)金額」なのですから。
税金を払って不健康を手に入れるローン
おそらくあなたも最初の1本を吸ったときは、まさか一生の間にそんな大金を費や すことになるとは思ってもいなかったでしょう。それもそのはず、1箱はワンコイン で手に入りますし、なくなったら手軽に補充できてしまいます。実は、ここにもタバ コの罠が潜んでいます。もし、1箱が何万円もするとしたら、「気軽には買えない」 と思うに違いありません。ところが不思議なもので、ワンコインを何度も払うことに はさほど抵抗を感じないものです。 喫煙者は、「タバコをやめたい」と思いながらもタバコに火をつけ、1本吸い終わ るとまた「タバコが吸いたい」と思ってしまうサイクルにはまり込んでいます。つま り、最初の1本を吸った時点でニコチン依存者として、延々とその対価を払い続ける 顧客リストに並ぶわけです。喫煙歴が長ければ長いほど支払つた金額が膨らむためシ ョックが大きく、その現実から目を背けたくなる心理も理解できます。なぜなら、喫
煙は健康を害するためにわざわざローンを払い続けているようなもの。まさか自分が、 そんな愚かしいことをしてきたとはそうそう簡単に認めたくはないでしよう。 しかも日本では、そのローンのうち6割以上が税金です。人体に有害な物質が入っ ていることがわかっていても、この国からタバコがなくならないのは当然ですね。
今やめれば損失は最小限
ここで皆さんに勘違いしていただきたくないのは、私は「タバコは、命の危険があ るからやめましょう」とか「お金がかかるからやめましょう」といっているわけでは ありません。命の危険があつても、どんなにお金がかかっても、皆さんが心からタバ コを愛し、タバコを吸うたびに全てを忘れて幸せを実感しているというのであれば、 一向にかまわないのです。しかし、今吸っているタバコは、ただなんとなく無意識の うちに吸っているのではありませんか?・煙を吸い込むと喉が痛い、手足が冷たい、 吐き気がするというときでさえも、タバコを吸わずにいられない状態になっている自 分に嫌気が差しているのではありませんか? 果たして、大金をはたいた上に命を危 険にさらしてまでしがみつく価値がタバコにあるのでしょうか。ここまでいっても、まだなんとかして喫煙を正当化しようとする人もいます。その ような人々は、「自分の叔父はヘビースモーカーだったが平均寿命よりも長生きした」 とか、「今まで相当な本数を吸ってきたけれど健康診断で一度も引っかかったことが ない」などと豪語します。しかし、それが喫煙を続けてよい理由になると私には思え ません。ヘビースモーカーだった叔父さんが長生きしたからといつて、その人も長生 きできるとは限りませんよね?・食事内容は?・運動量は?・そもそも遺伝子が全く 同じなわけではありません。また、今まで健康診断の結果に問題がなかった人がこの 先もずっと健康でいられる保証だってどこにもないはずです。 「タバコをやめたい」と思いながらこの先もずっとタバコを吸い続けるなんて、本 当におかしな話なのです。今までタバコに費やしてきたお金のことを考えると、「な んてもったいないことをしてきたのだろう」と思うかもしれません。でも、今ならそ の損害をあなた自身の手で最小限にとどめることができます。そう、それが禁煙です。 タバコの洗脳から抜け出すことで、あなたは大金をはたいて不健康を買う必要がなく なるのです。もう自分をごまかすのはやめて、そろそろ現実としっかり向き合いまし ょう。今がその絶好のチャンスです。今まで心の中で黒い影のようにくすぶつていた がんや病気に対する恐怖心、金銭面の負担からようやく解放されるのです。
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